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特開2022-163118涙液分泌能・涙液安定性を改善するための飲食品または製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163118
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】涙液分泌能・涙液安定性を改善するための飲食品または製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7016 20060101AFI20221018BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/7032 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/736 20060101ALI20221018BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20221018BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20221018BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20221018BHJP
   A23C 9/152 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
A61K31/7016
A61P27/04
A61K31/702
A61K31/7032
A61K31/736
A23L33/125
A23L33/135
A23L2/00 F
A23L2/52
A23C9/152
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123087
(22)【出願日】2022-08-02
(62)【分割の表示】P 2019542313の分割
【原出願日】2018-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2017176895
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】305018395
【氏名又は名称】協同乳業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】坪田 一男
(72)【発明者】
【氏名】松本 光晴
(57)【要約】      (修正有)
【課題】涙液分泌能及び/又は涙液安定性を改善するための組成物である、飲食品または製剤を提供する。
【解決手段】ラクトース、およびマルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナン、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、セロビオース、キシロオリゴ糖、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、ペクチン、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンおよび還元難消化性デキストリンからなる群より選択される1種類以上の水溶性難消化性成分が有効成分として配合された製剤である。本発明の飲食品または製剤は、ドライアイを予防または軽減するために利用できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
涙液分泌能及び/又は涙液安定性を改善するための製剤であって、
ラクトース、および
マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナン、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、セロビオース、キシロオリゴ糖、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、ペクチン、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンおよび還元難消化性デキストリンからなる群より選択される1種類以上の水溶性難消化性成分が有効成分として配合された、前記製剤。
【請求項2】
水溶性難消化性成分が、以下:
(a)マルチトール、ガラクトオリゴ糖、およびグルコマンナンからなる群より選択される1種類以上の水溶性難消化性成分;
(b)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンからなる群より選択される2種類の水溶性難消化性成分の組合せ;または
(c)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナン;
である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
さらにプロバイオティクスを含む、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
ラクトース、および
マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナン、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、セロビオース、キシロオリゴ糖、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、ペクチン、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンおよび還元難消化性デキストリンからなる群より選択される1種類以上の水溶性難消化性成分を有効成分とする、涙液分泌及び/又は涙液安定性障害を有する疾患あるいは症状の予防または治療・改善剤。
【請求項5】
涙液分泌及び/又は涙液安定性障害を有する疾患あるいは症状が、ドライアイ(乾燥性角結膜炎を包含する)、ドライアイ症候群、VDT症候群またはシェーグレン症候群である、請求項4に記載の予防または治療・改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性難消化性成分が配合された、涙液分泌能及び/又は涙液安定性を改善するための飲食品または製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
涙液は、目の表面を覆って目を守る様々な役割を果たしている。
【0003】
ドライアイは、涙液の分泌量が減少したり(涙液分泌能低下)、涙液の質が低下することによって目の表面を潤す力が低下した(涙液安定性低下)状態をいう。ドライアイの原因としては、高齢化、ストレス、シェーグレン症候群などの疾患があげられる。また、近年は、これらの要因以外にも、パソコンやスマートフォンの利用、コンタクトレンズ装用、エアコン利用等の影響によりドライアイの患者数も増加傾向にある。
【0004】
上記のように、現代人がおかれている環境は、ドライアイになりやすい要因を多く含むものであり、ドライアイ患者のみならず、通常の生活者でもドライアイを予防する事への関心は高い。
【0005】
一方、イヌリンのような消化不能炭水化物が、バクテロイデス門の胃腸管微生物相対フィルミクテス門の微生物相の比を上昇させることによって、血中のブドウ糖の上昇を抑制することが知られており、そのことによりドライアイ症候群の治療の可能性が示唆されているが(特許文献1)、具体的な記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2014-528925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、涙液分泌能及び/又は涙液安定性を改善するための組成物である、飲食品または製剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、水溶性難消化性成分(オリゴ糖、糖アルコール含む)が涙液分泌能及び/又は涙液安定性の改善に有効であることを見出した。当該知見に基づいて、本発明は完成された。
【0009】
すなわち、一態様において、本発明は以下のとおりであってよい。
【0010】
[1] 涙液分泌能及び/又は涙液安定性を改善するための飲食品であって、マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナン、ラクトース、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、セロビオース、キシロオリゴ糖、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、ペクチン、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンおよび還元難消化性デキストリンからなる群より選択される1種類以上の水溶性難消化性成分が配合された、前記飲食品。
【0011】
[2] ドライアイを予防または軽減するための、上記[1]に記載の飲食品。
【0012】
[3] 飲食品に配合される水溶性難消化性成分が、以下:
(a)マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンおよびラクトースからなる群より選択される1種類以上の水溶性難消化性成分;
(b)マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンおよびラクトースからなる群より選択される2種類の水溶性難消化性成分の組合せ;
(c)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンからなる群より選択される2種類の水溶性難消化性成分の組合せ;
(d)マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンおよびラクトース;または
(e)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナン;
である、上記[1]または[2]に記載の飲食品。
【0013】
[4] 水溶性難消化性成分を、液体、懸濁液及び乳濁液から選択される飲食品中0.01%w/w~20%w/w含む、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の飲食品。
【0014】
[5] 飲食品が、乳製品または清涼飲料水である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の飲食品。
【0015】
[6] 乳製品が、乳飲料、チーズ、発酵乳、乳酸菌飲料およびアイスクリーム類からなる群より選択される、上記[5]に記載の飲食品。
【0016】
[7] マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンからなる群より選択される2種類または全ての水溶性難消化性成分の組合せが、牛乳または乳飲料に配合されてなる、上記[1]または[2]に記載の飲食品。
【0017】
[8] さらにプロバイオティクスを含む、上記[1]ないし[3]のいずれか1項に記載の飲食品。
【0018】
[9] 涙液分泌能及び/又は涙液安定性を改善するための製剤であって、マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナン、ラクトース、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、セロビオース、キシロオリゴ糖、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、ペクチン、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンおよび還元難消化性デキストリンからなる群より選択される1種類以上の水溶性難消化性成分が配合された、前記製剤。
【0019】
[10] 水溶性難消化性成分が、以下:
(a)マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンおよびラクトースからなる群より選択される1種類以上の水溶性難消化性成分;
(b)マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンおよびラクトースからなる群より選択される2種類の水溶性難消化性成分の組合せ;
(c)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンからなる群より選択される2種類の水溶性難消化性成分の組合せ;
(d)マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンおよびラクトース;または
(e)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナン;
である、上記[9]に記載の製剤。
【0020】
[11] さらにプロバイオティクスを含む、上記[9]または[10]に記載の製剤。
【0021】
[12] マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナン、ラクトース、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、セロビオース、キシロオリゴ糖、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、ペクチン、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンおよび還元難消化性デキストリンからなる群より選択される1種類以上の水溶性難消化性成分を有効成分とする、涙液分泌及び/又は涙液安定性障害を有する疾患あるいは症状の予防または治療・改善剤。
【0022】
[13] 涙液分泌及び/又は涙液安定性障害を有する疾患あるいは症状が、ドライアイ(乾燥性角結膜炎を包含する)、ドライアイ症候群、VDT症候群またはシェーグレン症候群である、上記[12]に記載の予防または治療・改善剤。
【発明の効果】
【0023】
本発明の飲食品または製剤は、涙液分泌能及び/又は涙液安定性を改善できるものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、水溶性難消化性成分混合物(ガラクトオリゴ糖、マルチトール、グルコマンナン)添加牛乳による涙液分泌能改善効果の評価結果を示すグラフである。
図2図2は、実施例2の結果に関して層別解析によるVAS scoreの群間差を示すグラフである。
図3図3は、実施例2の結果に関して層別解析によるVAS scoreの群内変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
【0026】
本明細書において水溶性難消化性成分とは、食物に含まれる成分のうち、ヒトの消化酵素では分解することが困難な成分であって水溶性のものを意味する。本明細書において「水溶性難消化性成分」は、ヒトの消化酵素では分解することができない水溶性食物繊維類を中心にオリゴ糖、二糖類および糖アルコール等も包含する成分を意味する概念である。本明細書において「水溶性難消化性成分」とは、特に断りがない限り、単独または組み合わせのいずれも意味する。
【0027】
(飲食品)
本発明の一態様は、水溶性難消化性成分が配合された涙液分泌能及び/又は涙液安定性を改善するための飲食品に関する。
【0028】
本発明の飲食品に含まれる水溶性難消化性成分は、マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナン、ラクトース、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、セロビオース、キシロオリゴ糖、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、ペクチン、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンおよび還元難消化性デキストリンからなる群より選択される1種類以上の水溶性難消化性成分である。好ましくは、本発明の飲食品に含まれる水溶性難消化性成分は、前記の群より選択される2種類以上の水溶性難消化性成分の組合せであってもよい。
【0029】
一つの好ましい態様において、本発明の飲食品に含まれる水溶性難消化性成分は、
(a)マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンおよびラクトースからなる群より選択される1種類以上の水溶性難消化性成分;
(b)マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンおよびラクトースからなる群より選択される2種類の水溶性難消化性成分の組合せ;
(c)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンからなる群より選択される2種類の水溶性難消化性成分の組合せ;
(d)マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンおよびラクトース;または
(e)マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナン;
であってもよい。
【0030】
本発明の飲食品は、上記の水溶性難消化性成分に加えて、他の成分を含んでいてもよい。そのような他の成分としては、例えばターメリック、フラクタン、ラクチュロース、ラフィノース、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キトサンオリゴ糖、環状オリゴ糖、パラチノースなどが含まれる。
【0031】
マルチトールは、4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルシトールであり、還元麦芽糖とも呼ばれる。
【0032】
ガラクトオリゴ糖は、4'-ガラクトシルラクトースである。
【0033】
グルコマンナンは、グルコースとマンノースがおよそ2:3の割合でβ-1,4-結合で直鎖上に連なった多糖である。本発明に用いるグルコマンナンの重合度は特に限定されない。
【0034】
フラクトオリゴ糖は、スクロース(グルコースとフルクトースがα-1,2-グリコシド結合した糖)のフルクトース部分に、さらに1または複数のD-フルクトースがβ-2,1-グリコシド結合により結合した多糖である。本発明に用いるフラクトオリゴ糖の重合度は特に限定されない。本発明に用いるフラクトオリゴ糖として好ましいものには、ケストース、ニストース、フラクトシルニストースが挙げられる。
【0035】
イソマルトオリゴ糖は、グルコースを基本構成単位とする多糖であって、α-1,6-結合、α-1,4-結合、α-1,3-結合を1カ所以上含むものである。本発明に用いるイソマルトオリゴ糖の重合度は特に限定されない。本発明に用いるイソマルトオリゴ糖として好ましいものには、イソマルトース、イソマルトトリオース、パノースが挙げられる。
【0036】
キシロオリゴ糖は、キシロースが2~7個程度、β-1,4-結合した構造を有する多糖である。
【0037】
ペクチンは、ガラクツロン酸がα-1,4-結合したポリガラクツロン酸が主成分の複合多糖類である。本発明に利用可能なペクチンの分子量は特に限定されない。
【0038】
レジスタントスターチは、ヒトの小腸までの消化器官において消化されずに大腸に届くデンプンおよびデンプン分解物の総称である。レジスタントスターチ(RS)は、その特性により4つのタイプに分類される。タイプ1(RS1)は精製度の低い穀粒のようなα-アミラーゼ等の消化酵素が作用しないデンプン、タイプ2(RS2)はアミロース含量の多いデンプン、タイプ3(RS3)は加熱調理等により糊化した後、冷めていく過程で構造が変化した老化デンプン、タイプ4(RS4)は加工デンプン(化学修飾デンプン)である。本発明においては、いずれのタイプのレジスタントスターチを用いてもよい。
【0039】
難消化性デキストリンは、デンプンに微量の酸を添加して高温で加水分解し、α-アミラーゼおよびグルコアミラーゼで加水分解したものより精製された食物繊維である。難消化性デキストリンは、平均分子量約2,000のグルカンであり、デンプンが本来有するα-1,4-結合およびα-1,6-結合に加え、α-1,2-結合およびα-1,3-結合などを有して、原料デンプンと比較して枝分かれの発達した構造を有している。還元難消化性デキストリンは、難消化性デキストリンに対して還元処理を行ったものである。
【0040】
本発明の飲食品における水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せの添加量は特に限定されないが、好ましくは、水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せを0.01%w/w~20%w/w、好ましくは0.5%w/w~15%w/w、更に好ましくは1%w/w~10%w/w、含む。
【0041】
水溶性難消化性成分の組合せが飲食品に配合される場合、水溶性難消化性成分の各成分の比率は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。例えば、水溶性難消化性成分の各成分は、水溶性難消化性成分の全体に対して、少なくとも1%以上、10%以上、20%以上、の比率で含まれることが好ましい。水溶性難消化性成分の各成分は、水溶性難消化性成分の全体に対して等量ずつ含まれていてもよい。
【0042】
本発明の水溶性難消化性成分の組合せの好ましい例は、マルチトール、ガラクトオリゴ糖、グルコマンナンおよびラクトース;または、マルチトール、ガラクトオリゴ糖およびグルコマンナンである。
【0043】
本発明の飲食品における水溶性難消化性成分の添加量は特に限定されないが、量が多すぎる場合には下痢の副作用の可能性があるので、好ましい1回の摂取量は、水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せが0.2g~40g、好ましくは1g~30g、更に好ましくは2g~20gである。200mlの飲料の場合は、全体の重量に対してを0.1%w/w~20%w/w、好ましくは0.5%w/w~15%w/w、更に好ましくは1%w/w~10%w/w、含む。200mlの飲料の場合は、例えば、飲料に含まれるマルチトールの濃度は0.1%w/w~3%w/w、好ましくは0.5%w/w~2.5%w/w、0.8%w/w~1.5%w/wであってよく、飲料に含まれるガラクトオリゴ糖の濃度は0.1%w/w~3%w/w、好ましくは0.5%w/w~2.5%w/w、0.8%w/w~1.5%w/wであってよく、そして、飲料に含まれるグルコマンナンの濃度は、0.05%w/w~3.0%w/w、好ましくは0.1%w/w~2.5%w/w、更に好ましくは0.1%w/w~2.0%w/wであってよく、飲料に含まれるラクトースの濃度は、好ましくは、1%w/w~10%w/wである。上記の濃度は、飲料の重量に対する濃度である。なお、1日あたりの摂取量は上記1回の摂取量の1回ないしは2回分が好ましく、1回あたりの量を2回等に分割して摂取することも可能である。
【0044】
本発明の飲食品は、水溶性難消化性成分に加えて、プロバイオティクスを含んでいてもよい。本明細書においてプロバイオティクスは、摂取することによりヒトに有益な作用をもたらす生きた微生物を意味する。本発明の飲食品に含まれるプロバイオティクスは特に限定されないが、当該技術分野において乳酸菌と理解される微生物、例えば、ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する微生物、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)に属する微生物、ラクトコッカス・ラクティス、エンテロコッカスフェカリス、ペディオコッカス・ペントサセウスが挙げられる。プロバイオティクスは、上記微生物の単独の株を含むものであってもよく、又は、複数の種若しくは株の組合せを含むものであってもよい。
【0045】
ラクトバチルス属に属する微生物の例として、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・デリブルエッキ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ロイテリが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
ビフィドバクテリウム属に属する微生物の例として、ビフィドバクテリウム・アニマリス・アニマリス、ビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクティス、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラタム、ビフィドバクテリウム・カテニュラタム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス及びビフィドバクテリウム・アドレスセンティスが挙げられるが、これらに限定されない。これらのうち、好ましくはビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクティスを用いることができる。ビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクティスの一態様として、LKM512株を用いることができる。LKM512株は、受託番号FERMP-21998として受託機関(NITE特許生物寄託センター)から入手することができる。
【0047】
本発明の飲食品に含まれるプロバイオティクスの量は特に限定されないが、例えば、飲食品100gあたり、2×103~8×1012cfu、好ましくは2×105~8×1011cfu、より好ましくは2×107~8×1010cfuを含むように配合することができる。本明細書においてcfuとは、コロニー形成ユニットを意味する。cfuは、当業者に知られたいずれの方法を用いて測定してもよいが、例えば、微生物をリン酸緩衝液(PBS)で希釈し、当該希釈液をMRS培地上にまき、37℃で48時間嫌気培養した後、生育したコロニーの数をカウントすることにより測定することができる。
【0048】
本発明の飲食品は、食品または飲料である限り特に限定されないが、好ましくは乳製品もしくは洋生菓子、または清涼飲料である。乳製品は、生乳または加工乳を原料に使用した食品または飲料である限り特に限定されないが、例えば、乳飲料、チーズ、発酵乳、乳酸菌飲料およびアイスクリーム類が含まれる。好ましい乳製品は乳飲料または乳酸菌飲料である。洋生菓子は、特に限定されないが、乳製品を原料に使用したもの、例えばプリンが含まれる。清涼飲料は、乳製品及び乳酸菌飲料以外の飲料であって、アルコール分1%未満を含有する飲料である限り特に限定されないが、例えばジュース(果物飲料および/または野菜飲料)、コーヒー飲料、茶系飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、豆乳類、等が含まれる。
【0049】
一態様において本発明の飲食品は、健康食品であってよく、例えば特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品または機能性表示食品)に分類されるものであってもよい。
【0050】
本発明の飲食品は、それを摂取した対象の涙液分泌能・涙液安定性を改善することができる。本発明の飲食品について涙液分泌能・涙液安定性を改善する効果は、当該飲食品の摂取前後で涙液分泌能・涙液安定性の変化を評価することにより確認することができる。涙液分泌能・涙液安定性は、例えば、涙液量の評価や、涙液層破壊時間(BUT)の評価により確認することができる。涙液量を測定する方法としては、例えば涙液量検査用綿糸/ろ紙などを用いるシルマー試験が挙げられる。涙液層破壊時間の評価は、フルオレセイン色素を点眼し、目を開けたまま瞬きをしない状態で涙液層が乾燥する時間を測定するものである。
【0051】
一態様において、本発明の飲食品はドライアイ(乾燥性角結膜炎を包含する)、ドライアイ症候群、VDT症候群、シェーグレン症候群など涙液分泌障害を有する疾患あるいは症状を予防又は軽減するための飲食品であることができる。本発明の飲食品を摂取させる対象は、特に限定されない。ドライアイであると診断された患者のみならず、ドライアイ気味(ドライアイ予備群)の対象(これをドライアイ症候群という)、ドライアイを予防することを希望する対象など、通常の生活者も対象となりえる。
【0052】
本発明において、「ドライアイ」とは、涙液の分泌量が減少したり、涙液の質が低下することによって眼の表面を潤す力が低下した状態で、涙液層の安定性が低下する疾患であり、BUTが5秒以下、かつ自覚症状がある場合をいう。「ドライアイ予備群」とは、上記ドライアイ条件に該当しないが、どちらか片方の条件を満たす兆候を示す場合をいう。
【0053】
(製剤)
本発明の一態様は、水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せを含む涙液分泌能を改善するための製剤に関する。本発明の製剤に含まれる水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せについては、上記飲食品の項目において定義したとおりである。
【0054】
本発明の製剤における水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せの量は特に限定されないが、好ましくは、1回の摂取または投与あたり、水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せを0.1g~20g、好ましくは0.5g~20g、更に好ましくは1g~10g含むように配合される。別の態様において、本発明の製剤は、特にそれが液体、懸濁液または乳濁液である場合、水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せを、製剤中0.01%w/w~20%w/w、好ましくは0.5%w/w~15%w/w、更に好ましくは1%w/w~10%w/w、の割合で配合されているものであってもよい。ただし、グルコマンナンは、水に難溶性であるため、好ましくは、製剤中0.01%w/w~1%w/w、より好ましくは、製剤中0.1%w/w~1%w/w含まれてもよい。
【0055】
水溶性難消化性成分の組合せが本発明の製剤に配合される場合、水溶性難消化性成分の各成分の比率は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。水溶性難消化性成分の各成分の比率は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。例えば、水溶性難消化性成分の各成分は、水溶性難消化性成分の全体に対して、少なくとも5%以上、10%以上、20%以上、の比率で含まれることが好ましい。水溶性難消化性成分の各成分は、水溶性難消化性成分の全体に対して等量ずつ含まれていてもよい。
【0056】
本発明の製剤は、上記の水溶性難消化性成分に加えて、他の成分を含んでいてもよい。そのような他の成分の例としては、上記飲食品の項目において記載した成分が挙げられる。
【0057】
本発明の製剤は、さらにプロバイオティクスを含んでいてもよい。本発明の製剤に含まれるプロバイオティクスについては、上記飲食品の項目において定義したとおりである。この態様において本発明の製剤は、水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せとプロバイオティクスとが同一の組成物中に含まれるものであってもよく、あるいは水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せを含む組成物及びプロバイオティクスを含む組成物で構成される組合せ組成物であってもよい。組合せ組成物の場合、水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せを含む組成物とプロバイオティクスを含む組成物は、同時に摂取または投与するものであってもよく、あるいは別々に摂取または投与するものであってもよい。
【0058】
本発明の製剤におけるプロバイオティクスの量は特に限定されないが、1回の摂取または投与あたり、2×103~8×1012cfu、好ましくは2×105~8×1011cfu、より好ましくは2×107~8×1010cfuを含むように配合することができる。
【0059】
本発明の製剤は、医薬品または医薬部外品であってもよい。したがって、本発明の製剤は医薬組成物であってもよい。あるいは、本発明の製剤はサプリメント等の食品であってもよい。サプリメントは、特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品または機能性表示食品)に分類されるものであってもよいが、これに限定されない。
【0060】
本発明の製剤の形態は、ヒトが摂取またはヒトに投与するのに適した形態である限り特に限定されず、例えば、液体、懸濁液(分散液状)、乳濁液、半固体、ペースト、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、ゼリー剤または丸剤の形態であってもよい。ここで、本発明の製剤が液体、懸濁液または乳濁液である場合、当該製剤は液剤、内服液剤および/またはドリンク剤の形態であってもよい。
【0061】
また、本発明の製剤は、甘味料、防腐剤、着色料、酸化防止剤、もしくは香料等の添加剤、または医薬的に許容可能な賦形剤若しくは担体を含んでいてもよい。本明細書において「医薬的に許容可能な」とは、動物、たとえばヒトに投与した際に毒性、刺激、アレルギー性、または他の不都合な反応を生じない成分であって、配合物の他の成分と適合する成分を意味する。医薬的に許容可能な賦形剤若しくは担体は、当該技術分野において慣用されている成分を利用できる。
【0062】
本発明の製剤の涙液分泌能及び/又は涙液安定性の改善効果は、上記飲食品の項目において説明した方法により確認することができる。一態様において、本発明の製剤はドライアイ等の涙液分泌及び/又は涙液安定性障害を有する疾患あるいは症状を予防または軽減するための製剤であることができる。また、本発明の製剤を摂取させるまたは投与する対象も、上記飲食品の項目において記載したとおりである。
【0063】
(涙液分泌能及び/又は涙液安定性の改善方法)
本発明はまた、本発明の飲食品または製剤を、対象に摂取させるもしくは投与することを含む、対象の涙液分泌能及び/又は涙液安定性を改善する方法に関する。
【0064】
本発明はまた、対象の涙液分泌能及び/又は涙液安定性を改善する方法において使用するための、上記の水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せが配合された飲食品または製剤に関する。本発明はさらに、涙液分泌能及び/又は涙液安定性を改善する飲食品または製剤の製造のための、上記の水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せの使用に関する。
【0065】
一態様において、涙液分泌能を改善することは、ドライアイ等の涙液分泌及び/又は涙液安定性障害を有する疾患あるいは症状を予防または治療することであってもよい。
【0066】
本明細書において「対象」とは、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0067】
本発明について全般的に記載したが、さらに理解を得るために参照する特定の実施例をここに提供する。しかし、これらは例示目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例0068】
(実施例1:水溶性難消化性成分による涙液分泌能改善効果の評価)
<方法>
7週齢の雌のC57BL/6マウス(日本チャールズリバー)を3群(n=4/群)に分け、以下を投与する群とした。
・第1群:5%(w/w)ラクトース(蒸留水に溶解した水溶液)
・第2群:5%(w/w)ラクトース+1%(w/w)ガラクトオリゴ糖+1%(w/w)マルチトール+1%(w/w)グルコマンナン(蒸留水に溶解した水溶液)
・第3群(対照):蒸留水
上記の溶液を0.5mL/匹を1日2回(午前、午後)、19日間、反復強制経口投与した。
【0069】
投与2週間後に、ストレス負荷処置を4日間行った。ストレス負荷処置は、次のようにして行った。1日4時間、呼吸/排泄可能な処置を施した50mlポリプロピレン製遠沈管内に拘束した。拘束中、マウス顔面に風速0.5~1.0m/sで送風した。拘束処置時間以外は、ケージ内で餌と飲料は自由摂取で飼育した。
【0070】
涙液分泌能の測定は、投与前、投与2週間後(ストレス負荷前)、ストレス負荷2日目、及びストレス負荷5日目に、次のように行った。マウスの左右の外眼角に綿糸(ZONE-QUICK(登録商標)、昭和薬品化工株式会社)を15秒間挿入し、綿糸が涙液の浸透により褐色変色した長さを、0.5mmの精度で測定した。左右の眼について得られた結果の平均値を、個体の涙液分泌量とした。
【0071】
<結果>
結果を図1に示す。対照である第3群では、ストレス負荷により涙液分泌量が減少する様子が観察された。5%ラクトースを投与した第1群では、涙液分泌量の若干の低下が観察されたが、対照群ほどには涙液分泌量の減少は見られなかった。5%ラクトースおよび他の水溶性難消化性成分の組合せを含む溶液を投与した第2群では、涙液分泌量はストレス負荷前と同程度に維持されていた。この結果は、水溶性難消化性成分または水溶性難消化性成分の組合せが涙液分泌能の改善に有効であることを示している。
【0072】
また、涙液分泌能の測定の際に各マウスの体重も測定したが、試験期間を通じて体重減少はほとんど見られなかった。
【0073】
(実施例2:水溶性難消化性成分によるドライアイ予防効果の評価)
<方法>
1.被験者
20歳から60歳のVDT(Visual Display Terminals)作業を日常的に行っている健常な日本人男女の118名の候補者に、血圧・脈拍数測定、涙液層破壊時間(BUT)、シルマーテスト、眼の症状に関するアンケートをおこなって、その結果から、将来ドライアイの発症が予想されるドライアイ予備群(BUTが5秒以下または自覚症状のどちらか片方の条件を満たす兆候を示す)を被験者として選出した。
【0074】
但し、眼に関する治療を行っている者(試験の3ヶ月以内に眼の手術を受けた者も含む)、試験の3ヶ月以内に本試験に影響を及ぼす可能性のある医薬、食品等を服用している者等は除外した。選出された54名の被験者を無作為に振り分けて、27名を試験飲料群とし、残りの27名をプラセボ群とし試験を実施した。試験後、試験飲料の未摂取回数がプロトコルの総摂取回数の10%を超えた被験者をプロトコル違反としデータ解析から除外した。
データ解析に供した被験者のバックグラウンドは下記表1に示す通りである。
【0075】
【表1】
【0076】
2.試験飲料
成分無調整乳および脱脂粉乳をベースに、有効成分としてガラクトオリゴ糖1.5% (w/w)、マルチトール1.0% (w/w)、グルコマンナン 0.1% (w/w)を添加したもの(有効成分として乳中のラクトースも5%(w/w)量含まれている)を試験飲料(=食物繊維類添加牛乳)とした。プラセボはショ糖や乳タンパク質原料、香料等を用いて、食感、風味および味が試験飲料と殆ど同じ飲料を作製した。いずれも殺菌後、ラベルのない白色の紙パックに200mL/本ずつ封入し試験に供した。
【0077】
3.試験デザイン
本試験は、無作為化二重盲検並行群間比較試験で、ドライアイ症状が悪化する11月から12月にかけて実施した。試験飲料群とプラセボ群は各飲料200mLを1日1回、3週間摂取した。BUT検査は、試験前(Week 0)と試験飲料またはプラセボ摂取3週目(Week 3)に対象の左眼にて実施した。Week 0は試験飲料摂取前の基本値を測定するために水200ml摂取後に上記試験を実施した。アンケート試験は、試験飲料またはプラセボ摂取前(Week 0)、1週目(Week 1)、2週目(Week 2)、3週目(Week 3)に実施した。
【0078】
測定当日のスケジュールは、前日から13時間以上の絶食(絶食期間は水は自由摂取)を行い、試験当日の午前9時台に各飲料を摂取した。BUT検査1時間前よりVDT作業を禁止、検査10分前より読書を禁止した。試験期間中は、試験開始前からの生活習慣を維持してもらったが、試験飲料以外の牛乳や乳製品の摂取は禁止した。
【0079】
4.眼科検査
BUTは、角膜のフルオレセイン染色スコアをもとに角結膜上皮障害を評価した(Ocul Surf 14, 255-63 (2016))。すなわち、保存料を含まない1% フルオレセイン色素2μLを涙液動態の変化を避けるためにマイクロピペットで眼に点眼後、開瞼してから涙液層が破綻するまでの時間を3回測定し、平均値を算出した。シルマーテストは、涙液分泌機能検査用試験紙(Tear production measuring strips;以下、シルマー試験紙)を眼の下結膜円蓋の外1/3に5分間置いた。5分後に試験紙を外し、濡れている長さを測定した。結膜の染色との干渉を避けるために、バックグラウンド値を測定する際は、BUT測定後、10分間の間隔を置いてシルマーテストを実施した。
【0080】
5.アンケートを用いた目の自覚症状の評価
目の自覚症状はVisual analogue scale(VAS)評価にてWeek 0、Week 1、Week 2、Week 3の計4回実施した。VAS評価の設問は12問で、被験者は、各設問に対し100mmの水平な直線上(片端が“全く症状が気にならない(スコア=0)”、もう片端が“耐えられない(スコア=100)” )に自覚症状のレベルをマークした。定規を使って、スコア=0からの長さをmm単位で測定しスコア化した。設問項目は、以下の通り;目が乾く、目があけづらい、目がゴロゴロする、目が痛い、目が赤い、涙が出る、目やにが出る、目がかゆい、目がかすむ、まぶしい、目が重い、目が疲れる。
【0081】
<結果>
1.BUTの変化
BUT値は、Week 3の値からWeek 0の値を引いたBUT変化量において、試験飲料群(0.17 ± 0.28秒)はプラセボ群(-0.69 ± 0.39秒)と比較して有意に(p < 0.05)高い値を示した(表2)。また、Week 0からWeek 3への群内変化に関しては、プラセボ群のみ有意な減少(悪化)が認められた。これらは、11月から12月への季節変動に伴う涙液安定性の悪化(BUT値の低下)を試験飲料が抑えて、且つBUT値にしてWeek 0の時点から0.17ポイント回復させたことを示す。
【0082】
【表2】
【0083】
2.眼の自覚症状
Week 0のBUTおよびシルマーテスト・スコアが10以上(正常値)であった被験者を除外して層別解析し、群間差が認められたものを図 2に示す。「目がゴロゴロする」の項目で、Week 3に試験飲料群がプラセボ群と比較して有意に(p < 0.05)低い値を示した(図 2A)。また、Week 2に「目が痛い」と「目が赤い」の項目で、試験飲料群がプラセボ群と比較して有意に(それぞれp < 0.01、p < 0.05)低い値を示した(図 2B 及びC)。Week 0と摂取後(Week 1~Week 3)で群内変化が認められたものを、図 3に示す。「目が乾く」(Week 1~3)、「目がゴロゴロする」(Week 3)、「目が痛い」(Week 2)、「目やにが出る」(Week 1)、「目がかゆい」(Week 1)、「目がかすむ」(Week 3)の項目において、プラセボ群では変化が認められなかったが、試験飲料群のみが有意に改善した。
図1
図2
図3