(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163144
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20221018BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20221018BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61M5/315 502
A61M5/20 510
A61M5/28
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022126774
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2019550174の分割
【原出願日】2018-03-12
(31)【優先権主張番号】17160487.9
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ダスバッハ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・シャーダー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・クナイプ
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ラウ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ノーバー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善された薬物送達デバイスを提供する。
【解決手段】薬物送達デバイスであって、長手方向軸を有し、長手方向軸に沿って動くことができるプランジャ10と、プランジャ10が長手方向軸に沿って動くように解放されるときにプランジャ10を案内するように、プランジャ10の少なくとも1つの部材10.2に係合するように適用された案内湾曲部2.18とを含む、薬物送達デバイスに関する。案内湾曲部2.18は、湾曲スロット2.20またはスロット2.20の一部として形成される。スロット2.20またはスロット2.20の一部は、案内するプランジャ10の一部がスロット面の1つのみ、たとえば内側湾曲スロット面に係合し、反対のたとえば外側湾曲スロット面2.21および/またはケース2に接触しないように構成される。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1)であって、長手方向軸(L)を有し、
プランジャ解放機構(12)を含み、
該プランジャ解放機構は、少なくとも、
長手方向軸(L)に沿って動くことができるプランジャ(10)と、
該プランジャ(10)が長手方向軸(L)に沿って動くように解放されるときにプランジャ(10)を案内するように、プランジャ(10)の少なくとも1つの部材(10.1、10.2、10.3)に係合するように適用された案内湾曲部(2.18)とを含む、前記薬物送達デバイス。
【請求項2】
ケース(2)および/またはスリーブを含み、案内湾曲部(2.18)は、ケース(2)上および/またはスリーブ上に配置される、請求項1に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項3】
案内湾曲部(2.18)は、湾曲セクション(2.19)を含む、請求項1または2に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項4】
プランジャ(10)は、該プランジャ(10)から径方向外方に延びる第1のプランジャボス(10.2)を含み、ケース(2)は、長手方向軸(L)に沿ったプランジャ(10)の動きを抑制または制限するように、第1のプランジャボス(10.2)に係合するように適用されたケーススロット(2.3)を含み、プランジャ(10)は、第1のプランジャボス(10.2)がケーススロット(2.3)から係合解除され、したがってプランジャ(10)を解放し軸方向並進運動するように回転されるように構成され、湾曲セクション(2.19)は、ケーススロット(2.3)からのプランジャボス(10.2)の係合解除の間および/または後にプランジャ(10)の少なくとも1つの部材(10.1、10.2、10.3)に係合するように配置される、請求項2または3に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項5】
ケーススロット(2.3)は、軸方向並進運動を抑制するように第1のプランジャボス(10.2)に係合するように適用された表面(2.11、2.16)を含み、該表面(2.11、2.16)は、回転方向(R1、R2)の端が丸みを帯びており、そこにおいてプランジャ(10)は回転してケーススロット(2.3)から係合解除されるように構成され、したがって表面(2.11、2.16)の丸みを帯びた端は、第1のプランジャボス(10.2)であるプランジャ(10)の部材(10.1、10.2、10.3)によって係合されるように構成された湾曲セクション(2.19)の曲がり目の内側を形成する、請求項4に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項6】
湾曲セクション(2.19)は、プランジャ(10)の少なくとも1つの部材(10.1、10.2、10.3)に係合するように構成された曲がり目の外側を含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項7】
第1のプランジャボス(10.2)は、少なくとも湾曲セクション(2.19)の内側曲がり目に係合するように構成された領域内において丸みを帯びている、請求項4~6のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項8】
湾曲セクション(2.19)は、プランジャ(10)がプランジャの軸方向並進運動の大部分の間回転される案内湾曲部(2.18)の長さにわたって延びる、請求項3~7のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項9】
案内湾曲部(2.18)は、放物線の一部の形を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項10】
プランジャ(10)の少なくとも1つの部材(10.1、10.2、10.3)は、第1のプランジャボス(10.2)がケーススロット(2.3)内に係合されるとき、放物線の頂点に係合される、請求項9に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項11】
支承部(16)は、プランジャ(10)の遠位端上に配置され、薬剤容器(3)のストッパ(6)に係合する、請求項1~10のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項12】
第1のプランジャボス(10.2)に係合するように適用されたケーススロット(2.3)の表面(2.11、2.16)は、軸方向の力がプランジャ(10)に印加されたときに該プランジャ(10)にトルクを引き起こすように傾斜している、請求項4~11のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項13】
プランジャ(10)によって係合されるように適用されたストッパ(6)を有する薬剤容器(3)をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項14】
薬剤容器(3)は、薬剤を含む、請求項13に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項15】
薬物送達デバイス(1)を製造する方法であって:
長手方向軸(L)に沿って動くことができるプランジャ(10)を提供する工程と、
案内湾曲部(2.18)を提供する工程と、
プランジャ(10)が長手方向軸(L)に沿って動くように解放されるときにプランジャ(10)を案内するように、案内湾曲部(2.18)がプランジャ(10)の少なくとも1つの部材(10.1、10.2、10.3)に係合するように、プランジャ(10)と案内湾曲部(2.18)を組み立てる工程と
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、薬物送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
注射を投与することは、使用者および医療専門家にとって精神的にも物理的にもいくつかの危険および難題をもたらす作業である。注射デバイスは通常、手動デバイスおよび自動注射器の2つのカテゴリーに分けられる。従来の手動デバイスでは、薬剤を針の中に通すための手動力が必要とされる。これは通常、注射中に継続して押されなければならない何らかの形のボタン/プランジャによって行われる。この手法には多数の不都合が伴う。たとえば、ボタン/プランジャが時期尚早に解放された場合には注射が中断することになり、意図された用量を送達することができない。さらに、ボタン/プランジャを押すために必要な力が大きすぎることもある(たとえば、使用者が高齢または子供である場合)。また、注射デバイスを位置合わせすること、注射を投与すること、および注射中に注射デバイスを動かさずに保つことは器用さを必要とすることがあるが、この器用さが一部の患者(たとえば、高齢の患者、子供、関節炎の患者など)にはないこともある。
【0003】
自動注射デバイスは、自己注射を患者にとってより容易なものにすることを目的とする。従来の自動注射器では、注射を投与するための力をばねによって提供することができ、トリガボタンまたは他の機構を使用して注射を起動することができる。自動注射器は、単回使用デバイスであっても再使用可能なデバイスであってもよい。
【0004】
特許文献1には、薬剤の送達が開始されたことを示す可聴フィードバックを提供するようにプランジャと相互作用する鋭いまたは段状の端を含むプランジャ解放機構を有する自動注射器が開示されている。特許文献2には、弾性分岐セクションの肩部を含む解放装置を有する注射デバイスが開示されている。肩部は、本体の端に係合し、したがって駆動部材を未解放位置でロックしたままにする。肩部は、駆動部材およびばねを解放するための解放装置内の対応するカム面と相互作用するカム面を有する。特許文献3には、シリンジハウジングに対してプランジャの回転が拘束される注射デバイスが開示されている。
【0005】
改善された薬物送達デバイスが依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP2823841A1
【特許文献2】WO2005/097238A2
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/185178A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、改善された薬物送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の薬物送達デバイスによって達成される。
【0009】
例示的な実施形態は、従属請求項において提供される。
【0010】
本開示によれば、薬物送達デバイスは、長手方向軸を有し、プランジャ解放機構を含む
。プランジャ解放機構は、少なくとも、長手方向軸に沿って動くことができるプランジャと、プランジャが長手方向軸に沿って動くように解放されるときにプランジャを具体的には衝突または衝撃なしに案内するように、プランジャの少なくとも1つの部材に係合するように適用された案内湾曲部とを含む。こうして、プランジャは、長手方向軸に沿って動かされながら明確なやり方で回転が阻止される、または回転される。
【0011】
例示的な一実施形態では、案内湾曲部は、プランジャの案内がデバイスの他の部材に対するいかなる衝撃または衝突もなく行われるように構成される。具体的には、案内湾曲部は、摩擦によって、プランジャの動きを減衰または減速させるように構成される。たとえば、案内湾曲部の湾曲面は、コーティングを含むことができる。
【0012】
例示的な一実施形態では、薬物送達デバイスは、中空注射針とストッパとを有する容器を収容するように適用されたケースを含む。薬物送達デバイスは、駆動ばねと、駆動ばねの負荷をストッパに送るように適用されたプランジャとをさらに含む。案内湾曲部は、駆動ばねが拡張しプランジャの方に向けてその力が減少する間、プランジャの動きを減衰または減速させるように構成される。
【0013】
例示的な一実施形態では、案内湾曲部およびプランジャの一部は、互いに関係し相互作用する。具体的には、案内湾曲部は、所定角度の丸みを帯びている、または凸面を含むことができる。さらに、案内湾曲部によって案内されるプランジャの一部は、それに応じて丸みを帯びている、または凸面を含むことができる。
【0014】
例示的な一実施形態では、案内湾曲部は、プランジャの一部が、最初は案内湾曲部との係合状態で維持され最後は案内湾曲部から係合解除するように構成される。
【0015】
例示的な一実施形態では、案内湾曲部は、片側湾曲部である。換言すると:案内湾曲部は、スロットの一部ではない。具体的には、片側案内湾曲部は、デバイス内を案内するプランジャの一部と対向して配置される注射デバイスの一部の外面に形成される。
【0016】
あるいは、案内湾曲部は、湾曲スロットまたはスロットの一部として形成することもできる。スロットまたはスロットの一部は、案内するプランジャの一部がたとえば内側湾曲スロット面であるスロット面のうちの1つだけに係合し、たとえば外側湾曲スロット面である反対側には接触しないように構成される。
【0017】
例示的な一実施形態では、薬物送達デバイスは、さらにケースおよび/またはスリーブを含み、案内湾曲部は、ケース上および/またはスリーブ上に配置される。こうして、プランジャは、長手方向軸に沿って動かされながらケースおよび/またはスリーブに対して明確なやり方で回転が阻止される、または回転される。
【0018】
例示的な一実施形態では、案内湾曲部は、湾曲セクションを含む。したがって、プランジャは、長手方向軸に沿って動かされながら明確なやり方で回転される。これは、プランジャの動きを、たとえば駆動ばねである駆動機構の力プロファイルに適用させること、具体的には、駆動ばねが拡張してその力が減少する間、実質的に一定の力によるプランジャの動きを達成することに使用される。湾曲セクションは、やはりまた、プランジャの長手方向軸周りの回転を長手方向軸に沿った並進運動に、またはその逆に移行することにも使用される。プランジャが回転から長手方向軸に沿った並進運動に移行されることにより、プランジャの一部、たとえば案内湾曲部に係合される部材または径方向外方に延びる他の部材が、たとえばケースまたはスリーブである他の構成要素に衝突することが抑制され、それによってたとえばプランジャが解放されたときに発生し得る、プランジャの回転中の衝突による可聴および/または触覚フィードバックが防止または軽減される。そのような
可聴および/または触覚フィードバックは、用量の終了を示すと考える使用者もおり、紛らわしい恐れがある。
【0019】
例示的な一実施形態では、プランジャは、プランジャから径方向外方に延びる第1のプランジャボスを含み、ケースは、長手方向軸に沿ったプランジャの動きを抑制または制限するように、第1のプランジャボスに係合するように適用されたケーススロットを含み、プランジャは、第1のプランジャボスがケーススロットから係合解除され、したがってプランジャを解放し軸方向並進運動するように回転されるように構成され、湾曲セクションは、ケーススロットからのプランジャボスの係合解除の間および/または後にプランジャの少なくとも1つの部材に係合するように配置される。
【0020】
例示的な一実施形態では、ケーススロットは、軸方向並進運動を抑制するように第1のプランジャボスに係合するように適用された表面を含み、この表面は、回転方向の端が丸みを帯びており、そこにおいてプランジャは回転してケーススロットから係合解除されるように構成され、したがってこの表面の丸みを帯びた端は、第1のプランジャボスであるプランジャの一部によって係合されるように構成された湾曲セクションの曲がり目の内側を形成する。
【0021】
例示的な一実施形態では、湾曲セクションは、プランジャの少なくとも1つの部材に係合するように構成された曲がり目の外側を含む。解放中のプランジャの回転遊びは、こうして制限される。この曲がり目の外側に係合するプランジャの一部は、曲がり目の内側に係合するプランジャの一部と同じであっても異なっていてもよい。
【0022】
例示的な一実施形態では、第1のプランジャボスは、少なくとも、湾曲セクションの内側曲がり目に係合するように構成された領域内において丸みを帯びている。
【0023】
例示的な一実施形態では、湾曲セクションは、案内湾曲部の長さのうち、プランジャが薬物送達デバイス内に配置可能な薬剤容器のストッパに当接する前に限りプランジャが回転されるような長さにわたって延びる。湾曲セクションは、プランジャが、比較的短い軸方向距離だけ移動すれば回転と並進運動との間で移行するような範囲を有することができ、間隙は、第1のプランジャボスがケーススロット内に係合されたときにプランジャとストッパとの間に設けられ、この間隙は、ストッパがトルクを受けないようにプランジャがストッパに係合する前に回転が止まるのに十分長い。したがって、ストッパがトルクを受けそれが摩擦の原因となり得ることが回避される。
【0024】
別の例示的な実施形態では、湾曲セクションは、案内湾曲部の長さのうち、プランジャの軸方向並進運動の大部分の間プランジャが回転されるような長さにわたって延びる。
【0025】
例示的な一実施形態では、案内湾曲部は、放物線の一部の形を含む。
【0026】
例示的な一実施形態では、プランジャの少なくとも1つの部材は、第1のプランジャボスがケーススロット内に係合されるとき、放物線の頂点に係合される。そして、プランジャが解放されると、プランジャの一部は放物線に沿って頂点から遠ざかり、したがって、プランジャは、第1のプランジャボスがケーススロットから係合解除されると最初は回転し、そして回転が減速するにつれて次第に並進運動するようになる。
【0027】
例示的な一実施形態では、支承部は、プランジャの遠位端上に配置され、薬剤容器のストッパに係合する。支承部は、プランジャの回転がストッパを回転させないまたはそれにトルクをかけないように、プランジャの残りの部分に対するプランジャの遠位先端の長手方向軸周の自由回転を可能にするように配置される。支承部は、玉軸受または滑り軸受と
することができる。支承部は、プランジャと一体であってよく、または別個の部材として配置することもできる。
【0028】
例示的な一実施形態では、ケーススロットの、第1のプランジャボスに係合するように適用された表面は、たとえば使用者によってまたは駆動ばねによってまたは線形アクタ(actor)によって軸方向の力がプランジャに印加されたときにプランジャにトルクを引き起こすように傾斜している。それによって、薬物送達を開始するためのプランジャの解放が容易になり得る。
【0029】
例示的な一実施形態では、薬物送達デバイスは、プランジャによって係合されるように適用されたストッパを有する薬剤容器をさらに含む。
【0030】
例示的な一実施形態では、薬剤容器は、薬剤を含む。
【0031】
湾曲セクションおよび第1のプランジャボスは、プランジャボスが湾曲セクションから時期尚早に係合解除されることを防ぐために、湾曲セクションと第1のプランジャボスとの間の摩擦を増加させる材料を含むことができる。さらに、湾曲セクションの半径は変化してもよく、または湾曲セクションは、これを達成するために平坦化してもよい。
【0032】
例示的な一実施形態では、プランジャ解放機構は、ニードルシュラウドをさらに含み、プランジャは、第2のプランジャボスを含み、シュラウドリブは、ニードルシュラウド上に配置され、ニードルシュラウドが伸長位置にあるときプランジャの回転を抑制するように第2のプランジャボスに係合するように適用され、ニードルシュラウドが後退位置にあるとき第1のプランジャボスを係合解除するように適用される。したがって、第1のプランジャボスは、ニードルシュラウドがたとえば注射部位に押し付けられることにより後退位置へと動かされない限り、ケーススロットの傾斜表面からの係合解除が阻止される。
【0033】
例示的な一実施形態では、プランジャ解放機構は、ニードルシュラウドがプランジャに対して近位方向に軸方向に動かされたときに、第1のプランジャボスが回転してケーススロットから出るようにシュラウドリブと相互作用するように適用されたプランジャ上のプランジャリブをさらに含む。これは、第1のプランジャボスに係合するように適用されたケーススロットの表面が傾斜していない場合でも、回転を支援する、またはケーススロットから係合解除するようにプランジャを能動的に回転させるように適用される。
【0034】
例示的な一実施形態では、シュラウドリブは、プランジャに対する遠位方向のニードルシュラウドの動きを制限するように第2のプランジャボスに係合するように適用された遠位面を含む。
【0035】
例示的な一実施形態では、シュラウドばねは、ケースに対して遠位方向にニードルシュラウドを付勢するように配置される。
【0036】
例示的な一実施形態では、駆動ばねは、ケースの近位部材内に配置され、シリンジ内に配置されるストッパを変位させるためにプランジャを遠位方向に付勢するように構成される。
【0037】
例示的な一実施形態では、薬物送達デバイスは、自動注射器とすることができる。
【0038】
本開示の一態様によれば、薬物送達デバイスを製造する方法は、
- 長手方向軸に沿って動くことができるプランジャを提供する工程と、
- 案内湾曲部を提供する工程と、
- プランジャが長手方向軸に沿って動くときにプランジャを案内するように、案内湾曲部がプランジャの少なくとも1つの部材に係合するように、プランジャと案内湾曲部を組み立てる工程と:
を含む。
【0039】
本開示の適用性のさらなる範囲は、本明細書の以下に示される詳細な説明から明らかになろう。しかし、当業者にはこの詳細な説明から本開示の趣旨および範囲内で様々な変更および改変が明らかであるので、詳細な説明および具体的な例は、本開示の例示的な実施態様を示すが、例示としてのみ示されると理解されたい。
【0040】
本開示は、例示としてのみ与えられ、本開示を制限するものではない以下に示される詳細な説明および添付の図面からより十分に理解できるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1A】本開示による解放機構を含む薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の概略図である。
【
図1B】解放機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図1C】解放機構の別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図1D】組み立て中の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の長手方向断面図である。
【
図1E】組み立て中の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の概略側面図である。
【
図2】本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態のシュラウドロック機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図3】本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の制御サブアセンブリの例示的な一実施形態の分解斜視図である。
【
図4】本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の駆動サブアセンブリの例示的な一実施形態の分解斜視図である。
【
図5】本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態のプランジャ解放機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図6】組み立て中の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態のプランジャ解放機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図7】組み立て後の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態のプランジャ解放機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図8A】組み立て後の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の長手方向断面図である。
【
図8B】組み立て後の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の概略側面図である。
【
図9A】使用前の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態のシュラウドロック機構の例示的な一実施形態の長手方向断面図である。
【
図9B】使用前の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態のシュラウドロック機構の例示的な一実施形態の概略側面図である。
【
図10A】使用中の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の長手方向断面図である。
【
図10B】使用中の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の概略側面図である。
【
図11】使用中の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態のプランジャ解放機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図12A】使用中の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の長手方向断面図である。
【
図12B】使用中の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の概略側面図である。
【
図13A】使用後の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の長手方向断面図である。
【
図13B】使用後の、本開示による薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の概略側面図である。
【
図14A】使用前、使用中および使用後の、プランジャ解放機構の別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図14B】使用前、使用中および使用後の、プランジャ解放機構の別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図14C】使用前、使用中および使用後の、プランジャ解放機構の別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図14D】使用前、使用中および使用後の、プランジャ解放機構の別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図14E】使用前、使用中および使用後の、プランジャ解放機構の別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図15A】使用前、使用中および使用後の、プランジャ解放機構の別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図15B】使用前、使用中および使用後の、プランジャ解放機構の別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図15C】使用前、使用中および使用後の、プランジャ解放機構の別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図15D】使用前、使用中および使用後の、プランジャ解放機構の別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図16A】案内湾曲部の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図16B】案内湾曲部の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図16C】案内湾曲部の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図17A】案内湾曲部を含むプランジャ解放機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図17B】案内湾曲部を含むプランジャ解放機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図17C】案内湾曲部を含むプランジャ解放機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図18】薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の詳細図である。
【
図19A】薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の詳細図である。
【
図19B】薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の詳細図である。
【
図19C】薬物送達デバイスの例示的な一実施形態の詳細図である。
【
図20A】プランジャ解放機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図20B】プランジャ解放機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【
図20C】プランジャ解放機構の例示的な一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
すべての図面において、対応する部材には同じ参照符号が印付けられている。
【0043】
図1Aは、長手方向軸Lを有する薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態を示している。デバイス1は、自動注射器として構成することができる。
【0044】
デバイス1は、プランジャ解放機構12を含む。
【0045】
プランジャ解放機構12は、少なくとも、長手方向軸Lに沿って動くことができるプラ
ンジャ10と、プランジャ10が長手方向軸Lに沿って動くように解放されるときにプランジャ10を案内するように、プランジャ10の少なくとも1つの部材に係合するように適用された案内湾曲部2.18とを含む。したがって、プランジャ10は、長手方向軸Lに沿って動かされながら明確なやり方で回転が阻止される、または回転される。
【0046】
本開示によれば、案内湾曲部2.18は、プランジャ10が解放されるとき、衝突または衝撃なしにプランジャ10の少なくとも1つの部材を案内する。
【0047】
例示的な一実施形態では、薬物送達デバイス1は、中空注射針4とストッパ6とを有するたとえば充填済みシリンジである容器3(以下、容器をシリンジ3と呼ぶ)を収容するように適用されたケース2を含む。薬物送達デバイス1は、駆動ばね9と、駆動ばね9の負荷をストッパ6に送るように適用されたプランジャ10とをさらに含む。案内湾曲部2.18は、駆動ばね9が拡張しプランジャ10に対するその力が減少する間にプランジャ10の動きを減衰または減速させるように構成される。
【0048】
図1Bは、プランジャ解放機構12の例示的な一実施形態を示している。案内湾曲部2.18は、プランジャ10をデバイス1の他の部材に対するいかなる影響または衝突なしに案内するように構成される。具体的には、案内湾曲部2.18は、摩擦によってプランジャ10の動きを減衰または減速させるように構成される。たとえば、案内湾曲部2.18の湾曲面は、コーティングを含むことができる。
【0049】
例示的な一実施形態では、案内湾曲部2.18とプランジャの10の一部、具体的には第1のプランジャボス10.2は、相互に関係し相互作用する。具体的には、案内湾曲部2.18は、所定角度の丸みを帯びている、または凸面を含むことができる。さらに、案内湾曲部2.18によって案内されるプランジャ10の一部は、それに応じて丸みを帯びている、または凸面を含むことができる。
【0050】
例示的な一実施形態では、案内湾曲部2.18は、プランジャ10の一部が、最初は案内湾曲部2.18との係合が維持され、最後は案内湾曲部2.18から係合解除するように構成される。
【0051】
例示的な一実施形態では、案内湾曲部2.18は、片側湾曲部である。換言すると:案内湾曲部2.18は、スロットの一部ではない。具体的には、片側案内湾曲部2.18は、デバイス1内を案内するプランジャ10の一部と対向して配置される薬物送達デバイス1の一部の外面に形成される。
【0052】
具体的には、案内湾曲部2.18は、プランジャ10が、回転しケース2に衝突してから遠位方向Dに並進運動するのではなく、回転から遠位方向Dの並進運動にスムーズに移るように、摩擦によりプランジャ10の動きを減速させる湾曲セクション2.19を含む。
【0053】
図1Cは、プランジャ解放機構12の別の例示的な実施形態を示している。案内湾曲部2.18は、湾曲スロット2.20またはスロット2.20の一部として形成される。スロット2.20またはスロット2.20の一部は、案内するプランジャ10の一部がスロット面の1つのみ、たとえば内側湾曲スロット面に係合し、反対のたとえば外側湾曲スロット面2.21および/またはケース2に接触しないように構成される。
【0054】
図1Dは、組み立て中の、本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の長手方向断面図である。薬物送達デバイス1は、前方ケース2.1と後方ケース2.2とを含むケース2を含む。ケース2は、シリンジ3などの薬剤容器を保持するように適用され
る。シリンジ3は、充填済みシリンジとすることができ、遠位端に配置された針4を有する。薬物送達デバイス1および/またはシリンジ3が組み立てられるとき、保護ニードルシース5は、針4に着脱可能に連結される。保護ニードルシース5は、ゴムのニードルシースまたは(ゴムおよび全体的もしくは部分的に塑性のシェルから構成される)剛性のニードルシースとすることができる。ストッパ6は、シリンジ3を近位方向に封止し、シリンジ3内に収容された薬剤Mを針4を通って変位させるために配置される。別の例示的な実施形態では、薬剤容器は、薬剤Mを含み、着脱可能な針に(たとえば、ねじ山、スナップ、摩擦などにより)係合するカートリッジとすることができる。
【0055】
例示的な一実施形態では、ケース2の遠位端には、キャップ11が着脱可能に配置される。キャップ11は、保護ニードルシース5、ケース2、および/またはケース2内に嵌め込み式にされるニードルシュラウド7に係合するように配置される要素(たとえば、突起、フック、狭いセクションなど)を含むことができる。キャップ11は、(たとえば、ケース2に対してキャップ11を捩じり、かつ/または引っ張ることによって)キャップ11の取り外しを容易にするための把持機能11.5を含むことができる。
【0056】
例示的な一実施形態では、ケース2に対してニードルシュラウド7を遠位方向Dに付勢するように、シュラウドばね8が配置される。
【0057】
例示的な一実施形態では、ケース2内に駆動ばね9が配置される。プランジャ10は、駆動ばね9の力をストッパ6へ送る働きをする。例示的な一実施形態では、プランジャ10は中空であり、駆動ばね9はプランジャ10内に配置され、ケース2に対してプランジャ10を遠位方向Dに付勢する。別の例示的な実施形態では、プランジャ10は中実とすることができ、駆動ばね9は、プランジャ10の近位端に係合することができる。さらに、駆動ばね9は、プランジャ10の外径の周りに巻き付けられ、シリンジ3内に延びることもできる。
【0058】
例示的な一実施形態では、プランジャ解放機構12は、ケース2に対するニードルシュラウド7の後退前のプランジャ10の解放を防ぎ、ニードルシュラウド7が十分な後退させられた後にプランジャ10を解放するように配置される。
【0059】
例示的な一実施形態では、第1のシュラウドロック機構14は、キャップ11が定位置にあるときにケース2に対するニードルシュラウド7の後退を防ぐように配置され、それによって(たとえば、落とした場合、出荷または包装中など)薬物送達デバイス1の意図しない起動が回避される。第1のシュラウドロック機構14は、キャップ11上の1つまたはそれ以上の可撓ビーム11.3と、可撓ビーム11.3の各々を受けるように適用されたニードルシュラウド7内のそれぞれの数のアパーチャ7.6とを含むことができる。キャップ11が薬物送達デバイス1に取り付けられるとき、可撓ビーム11.3は、ケース2上の径方向の止め具2.15に当接する。径方向の止め具2.15は、アパーチャ7.6からの可撓ビーム11.3の係合解除を阻止する。キャップ11が薬物送達デバイス1に取り付けられるとき、ケース2に対する近位方向Pのキャップ11の軸方向運動は、キャップ11上のリブ11.4がケース2に当接することによって制限される。キャップ11がケース2に対して遠位方向Dに引っ張られると、可撓ビーム11.3は、アパーチャ7.6の縁に当接して偏向し、アパーチャ7.6から係合解除し、それによってキャップ11およびキャップ11に取り付けられた保護ニードルシース5の取り外しが可能になる。例示的な一実施形態では、可撓ビーム11.3および/またはアパーチャ7.6は、可撓ビーム11.3をアパーチャ7.6から係合解除するのに必要な力を低減させるために傾斜していてよい。
【0060】
図1Eは、組み立て中の本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の概略
側面図である。
図1Bの例示的な実施形態では、ケース2は見やすいように取り外されている。
図1Bおよび
図2は、薬物送達デバイス1が注射部位から除去された後にニードルシュラウド7をケース2に対してある軸方向位置にロックするように適用された第2のシュラウドロック機構15を示している。例示的な一実施形態では、第2のシュラウドロック機構15は、薬物送達デバイス1が注射部位から除去された後にケース2上の止め具2.12に近位に当接するように適用された少なくとも1つの可撓シュラウドビーム7.1をニードルシュラウド7上に含む。シュラウドビーム7.1と止め具2.12の当接は、ケース2に対する近位方向Pのニードルシュラウド7の並進運動を阻止する。使用前、キャップ11が薬物送達デバイス1に取り付けられるとき、キャップ11は、可撓シュラウドビーム7.1に係合して径方向内方に偏向させるように適用され、それによってシュラウドビーム7.1は近位方向Pに止め具2.12を通過することが可能になり、したがってニードルシュラウド7は、ケース2に対して近位方向Pに並進運動することができるようになる。
【0061】
例示的な一実施形態では、薬物送達デバイス1は、少なくとも2つのサブアセンブリ、たとえば制御サブアセンブリ1.1および駆動サブアセンブリ1.2から形成され、それによってサブアセンブリ1.1、1.2の製造時間および場所ならびにシリンジ3との最終的な組み立てに関する柔軟性が可能になる。
【0062】
図3は、本開示による薬物送達デバイス1の制御サブアセンブリ1.1の例示的な一実施形態の分解斜視図である。例示的な一実施形態では、制御サブアセンブリ1.1は、キャップ11と、ニードルシュラウド7と、シュラウドばね8と、前方ケース2.1とを含む。制御サブアセンブリ1.1を組み立てるには、シュラウドばね8がニードルシュラウド7に挿入され、シュラウドばね8とともにニードルシュラウド7が前方ケース2.1に挿入される。キャップ11は、ニードルシュラウド7の遠位端の上に配置される。
【0063】
図4は、本開示による薬物送達デバイス1の駆動サブアセンブリ1.2の例示的な一実施形態の分解斜視図である。例示的な一実施形態では、駆動サブアセンブリ1.2は、プランジャ10と、駆動ばね9と、後方ケース2.2とを含む。たとえばシリンジ3内の薬剤Mの粘性または体積を変更する場合、駆動サブアセンブリ1.2の部材を変更するだけでよいことが当業者には理解されよう。駆動サブアセンブリ1.2を組み立てるには、駆動ばね9がプランジャ10に挿入され、プランジャ10が後方ケース2.2に近位方向Pに挿入され、それによって駆動ばね9が圧縮される。プランジャ10および駆動ばね9は、圧縮位置に達した後、後方ケース2.2に対してある角度、たとえば約30°だけ回転され、プランジャ10が後方ケース2.2に係合される。例示的な一実施形態では、後方ケース2.2は、プランジャ10および駆動ばね9が圧縮位置に達する前にプランジャ10に係合してこの回転を引き起こすカム表面を有することができる。
【0064】
図5は、組み立て中の、本開示による薬物送達デバイス1のプランジャ解放機構12の例示的な一実施形態の概略図である。プランジャ解放機構12は、ケース2に対するニードルシュラウド7の後退前のプランジャ10の解放を防ぎ、ニードルシュラウド7が十分に後退させられた後にプランジャ10を解放するように配置される。例示的な一実施形態では、プランジャ解放機構12は、相互に作用する、プランジャ10と、後方ケース2.2と、ニードルシュラウド7とを含む。例示的な一実施形態では、ニードルシュラウド7は、ケース2に対する軸方向運動に制限され、プランジャ10は、軸方向の並進運動およびケース2に対する回転が可能である。
【0065】
例示的な一実施形態では、プランジャ10は、ケース2内のケーススロット2.3に係合するように適用された第1のプランジャボス10.2と、ニードルシュラウド7上のシュラウドリブ7.7に係合するように適用された第2のプランジャボス10.1と、ニー
ドルシュラウド7上のシュラウドリブ7.7に係合するように適用されたプランジャリブ10.3とを含む。例示的な一実施形態では、シュラウドリブ7.7は、プランジャリブ10.3に係合するように適用された近位面7.8と、第2のプランジャボス10.1に係合するように適用された遠位面7.9および長手方向面7.10とを含む。例示的な一実施形態では、ケーススロット2.3は、第1の回転方向R1の回転力を第1のプランジャボス10.2に印加するように適用された第1の傾斜表面2.9と、第1のプランジャボス10.2に当接してケース2に対するプランジャ10の第1の回転方向R1の回転を制限するように適用された壁2.10と、第1の回転方向R1とは反対の第2の回転方向R2の回転力を第1のプランジャボス10.2に印加するように適用された第2の傾斜表面2.11とを含む。
【0066】
駆動サブアセンブリ1.2の組み立てプロセスの例示的な一実施形態では、駆動ばね9とともにプランジャ10が後方ケース2.2に挿入される。第1のプランジャボス10.2がケーススロット2.3と軸方向に位置合わせされると、プランジャ10は第1の回転方向R1に回転され、それから第1のプランジャボス10.2が壁2.10に当接するまで第1のプランジャボス10.2がケーススロット2.3内を動かされる。この位置で、第1の傾斜表面2.9は、第2の回転方向R2の第1のプランジャボス10.2の動きを阻止し、したがってプランジャ10がケース2に対して回転しないようにする。
【0067】
(保護ニードルシース5が針4上に配置された状態で)シリンジ3が制御アセンブリ1.1に挿入された後、制御サブアセンブリ1.1に駆動サブアセンブリ1.2が連結される。例示的な一実施形態では、後方ケース2.2上の1対の弾性ビーム2.13(
図1Bに示す)が、前方ケース2.1内の凹部2.14(
図3に示す)内へカチッと留まって駆動サブアセンブリ1.2を制御サブアセンブリ1.1にロックするように適用される。駆動サブアセンブリ1.2が制御サブアセンブリ1.1に連結されると、ニードルシュラウド7は、(たとえば、組立治具の使用により)近位に並進運動し、それによってシュラウドリブ7.7がプランジャリブ10.3に当接する。
図6に示すように、シュラウドリブ7.7がプランジャリブ10.3を押すと、プランジャリブ10.3の角度によってプランジャ10がケース2に対して第2の回転方向R2に回転され、第1のプランジャボス10.2は、第1の傾斜表面2.9に沿って第2の傾斜表面2.11の上へと進む。第1のプランジャボス10.2が第2の傾斜表面2.11上に配置されるとき、駆動ばね9の力は、第2の傾斜表面2.11の角度のため、プランジャ10に第2の回転方向R2の回転力をかける。
【0068】
図7に示すように、ニードルシュラウド7が(たとえば、組立治具を取り外すことによって)解放されるとき、ニードルシュラウド7は、シュラウドリブ7.7が第2のプランジャボス10.1に当接するまで、シュラウドばね8の力を受けてケース2に対して遠位方向Dに並進運動する。たとえば、シュラウドリブ7.7の遠位面7.9は、第2のプランジャボス10.1に当接し、ニードルシュラウド7をケース2に対してある軸方向位置に維持することができる。シュラウドリブ7.7はプランジャ10がケース2に対して第2の回転方向R2に回転するのを防ぐので、第1のプランジャボス10.2は、ケーススロット2.3からの係合解除が阻止される。たとえば、シュラウドリブ7.7の長手方向面7.10は、第2のプランジャボス10.1に当接して、プランジャ10の回転を防ぐ。
【0069】
図8Aは、最終の組み立て後の、本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の長手方向断面図であり、
図8Bは、最終の組み立て後の、本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の概略側面図であり、ケース2は見やすいように取り外されている。
【0070】
例示的な一実施形態では、駆動サブアセンブリ1.2と制御サブアセンブリ1.1の最終の組み立て後、薬物送達デバイス1は、たとえば駆動ばね9からの負荷によりたとえば高い応力がかかる構成要素内のクリープを減少させるために、温度制御された環境(たとえば、コールドチェーン収納)で保つことができる。
【0071】
薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の例示的な動作シーケンスは、次の通りである:
【0072】
該当する場合、薬物送達デバイス1を包装から取り出す。シリンジ3内の薬剤は、観察窓(図示せず)を通して視覚的に検査することができる。観察窓は、シリンジ3と位置合わせされるケース2の透明部材またはケース2内の切り抜きとすることができる。
【0073】
キャップ11は、ケース2から離れる方へ遠位方向Dに引っ張ることによって取り外す。キャップ11がケース2に対して遠位に並進運動されると、キャップ11が保護ニードルシース5に係合し、キャップ11が遠位方向Dに引っ張られると保護ニードルシース5を針4から引き抜き、可撓ビーム11.3がニードルシュラウド7内のアパーチャ7.6から係合解除される。可撓ビーム11.3は、径方向の止め具2.15に径方向にそれ以上当接しなくなるまでアパーチャ7.6内で遠位に並進運動し、アパーチャ7.6の近位表面(傾斜していてよい)に係合し、径方向に偏向してアパーチャ7.6から係合解除される。シリンジ3は、ケース2に対して定位置に固定されており、したがってキャップ11を遠位方向Dに引っ張っても、シリンジ3のいかなる軸方向運動も起こらない。例示的な一実施形態では、シリンジ3はまた、ケース2に対して(たとえば、ケース2および/またはニードルシュラウド7との締まり嵌めにより)回転不能である。
【0074】
図9Aは、使用前の、本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の長手方向断面図である。
図9Bは、使用前の、本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の概略側面図であり、ケース2は見やすいように取り外されている。
【0075】
キャップ11が取り外されるとき、ニードルシュラウド7は、ケース2に対して第1の伸長位置FEPになり、ケース2から遠位方向Dに突出する。第1の伸長位置FEPは、第2のプランジャボス10.1がシュラウドリブ7.7に当接することによって画成される。
【0076】
図10Aは、使用中の、本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の長手方向断面図である。
図10Bは、使用中の、本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の概略側面図であり、ケース2は見やすいように取り外されている。
【0077】
図10Aおよび10Bに示すように、薬物送達デバイス1が注射部位に押し付けられるとき、ニードルシュラウド7は、シュラウドばね8の付勢力に逆らってケース2に対して第1の伸長位置FEPから後退位置RPへと近位に並進運動する。
【0078】
図11は、ニードルシュラウド7が後退位置RPにあるときのプランジャ解放機構12の例示的な一実施形態を示している。ニードルシュラウド7が第1の伸長位置FEPから後退位置RPへ並進運動するとき、ニードルシュラウド7が遠位に並進運動し、それによって第2のプランジャボス10.1は、
図8に示す位置から始まり、シュラウドリブ7.7の遠位になるまでシュラウドリブ7.7に沿って進められる。第2のプランジャボス10.1がシュラウドリブ7.7の遠位になると、プランジャ10は、ケース2に対する第2の回転方向R2の回転がそれ以上阻止されなくなる。したがって、プランジャ10にかかる駆動ばね9の力およびケーススロット2.3内での第1のプランジャボス10.2と第2の傾斜表面2.11の係合が、プランジャ10をケース2に対して回転させる。例示
的な一実施形態では、ニードルシュラウド7は、ニードルシュラウド7が後退位置RPにありプランジャ10がケース2に対して回転するときに第2のプランジャボス10.1を収容するために、シュラウドリブ7.7の近位にアパーチャ、凹部、またはスロットを含むことができる。
【0079】
例示的な一実施形態では、シュラウドリブ7.7(たとえば、長手方向面7.10上)は、ニードルシュラウド7が第1の伸長位置FEPから後退位置RPへと並進運動すると第2のプランジャボス10.1に当接するように適用された抵抗機能(たとえば、突起、傾斜、凹部など)を含むことができる。第2のプランジャボス10.1が抵抗機能に当接するとき、注射部位に対して薬物送達デバイス1を押し付けるための抵抗の増大の形で、触覚フィードバックが提供される。触覚フィードバックは、薬物送達デバイス1を注射部位に対してさらに押し下げたときに針4が注射部位内へと挿入されることを示すことに使用される。ニードルシュラウド7が後退位置RPに到達する前に薬物送達デバイス1が注射部位から除去された場合、ニードルシュラウドおよびニードルシュラウド7のような再配置は、シュラウドばね8の力を受けてその最初の位置へ再び延びる。ニードルシュラウド7が後退位置RPにあるとき、針4は注射部位に挿入されている。針4の貫入深さは、たとえば、ケース2に対するニードルシュラウド7の後退を制限すること、ケース2に対するシリンジ3の軸方向の位置を修正すること、針4の長さを修正することなどによって変えることができることが当業者には理解されよう。したがって、本開示の薬物送達デバイス1は、皮下注射、皮内注射、および/または筋肉内注射に使用することができる。
【0080】
図12Aは、使用中の、本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の長手方向断面図である。
図12Bは、使用中の、本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の概略側面図であり、ケース2は見やすいように取り外されている。
【0081】
プランジャ10が第2の回転方向R2に十分な距離だけ回転し、それによって第1のプランジャボス10.2がケーススロット2.3から係合解除するとき、プランジャ10は、駆動ばね9の力を受けてケース2に対して軸方向に自由に並進運動し、ストッパ6を押してシリンジ3から針4を通じて薬剤Mを送達する。
【0082】
例示的な一実施形態では、シュラウドリブ7.7からの第2のプランジャボス10.1および/またはケーススロット2.3からの第1のプランジャボス10.2の係合解除は、薬剤Mの送達が始まったことを示す可聴フィードバックを提供することができる。ケース2の観察窓は、薬剤Mの変位の進行を評価するために、プランジャ10がシリンジ3内で前進しているという視覚フィードバックを可能にすることができる。
【0083】
図13Aは、使用後の、本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の長手方向断面図である。
図13Bは、使用後の、本開示による薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の概略側面図であり、ケース2は見やすいように取り外されている。
【0084】
薬物送達デバイス1が注射部位から除去されると、ニードルシュラウド7は、シュラウドばね8の付勢力を受けて後退位置RPから第2の伸長位置SEPへケース2に対して遠位に並進運動する。第2の伸長位置SEPでは、ニードルシュラウド7は針4の遠位先端を越えて延び、ケース2に対してある軸方向位置にロックされる。第2の伸長位置SEPは、針刺し負傷を防止し、また、(ニードルシュラウド7が第2の伸長位置SEPから近位に動くことができないため)薬物送達デバイス1が使用済みであることを示すことができる。例示的な一実施形態では、第2の伸長位置SEPにおいて、ニードルシュラウド7は、第1の伸長位置FEPよりもケース2からたとえば2mmさらに突出する。ニードルシュラウド7は、ニードルシュラウド7が第1の伸長位置FEPではなく第2の伸長位置SEPにあるときに視覚的にアクセス可能な部分上に、印(たとえば、赤色の輪、文字、
図形)を含むことができる。この印は、薬物送達デバイス1が使用済みであることを示すことができる。
【0085】
図14A~
図14Eは、本開示による薬物送達デバイス1のプランジャ解放機構12の別の例示的な実施形態の概略図である。プランジャ解放機構12は、ケース2に対するニードルシュラウド7の後退前のプランジャ10の解放を防止し、ニードルシュラウド7が十分に後退させられた後にプランジャ10を解放するように配置される。例示的な一実施形態では、プランジャ解放機構12は、相互に作用する、プランジャ10と、後方ケース2.2と、ニードルシュラウド7とを含む。例示的な一実施形態では、ニードルシュラウド7は、ケース2に対する軸方向運動に制限され、プランジャ10は、軸方向の並進運動およびケース2に対する回転が可能である。
【0086】
例示的な一実施形態では、プランジャ10は、ニードルシュラウド7上のシュラウドリブ7.7に係合するように適用された第2のプランジャボス10.1と、ケース2内のケーススロット2.3に係合するように適用された第1のプランジャボス10.2と、ニードルシュラウド7上のシュラウドリブ7.7に係合するように適用されたプランジャリブ10.3とを含む。例示的な一実施形態では、シュラウドリブ7.7は、プランジャリブ10.3に係合するように適用された近位面7.8と、第2のプランジャボス10.1に係合するように適用された遠位面7.9とを含む。例示的な一実施形態では、ケーススロット2.3は、第1の回転方向R1の回転力を第1のプランジャボス10.2に印加するように適用された第1の傾斜表面2.9と、第1のプランジャボス10.2に当接してケース2に対する第1の回転方向R1のプランジャ10の回転を制限するように適用された壁2.10と、横断表面2.16とを含む。
【0087】
図14Aは、駆動サブアセンブリ1.2の組み立て中の、本開示による薬物送達デバイス1のプランジャ解放機構12の例示的な一実施形態の概略図である。
【0088】
駆動サブアセンブリ1.2の組み立てプロセスの例示的な一実施形態では、駆動ばね9とともにプランジャ10が後方ケース2.2に挿入される。第1のプランジャボス10.2がケーススロット2.3と軸方向に位置合わせされると、プランジャ10は第1の回転方向R1に回転され、それから第1のプランジャボス10.2が壁2.10に当接するまで第1のプランジャボス10.2がケーススロット2.3内を動かされる。この位置で、第1の傾斜表面2.9は、第2の回転方向R2の第1のプランジャボス10.2の動きを阻止し、したがってプランジャ10がケース2に対して回転しないようにする。
【0089】
(保護ニードルシース5が針4上に配置された状態で)シリンジ3が制御サブアセンブリ1.1に挿入された後、制御サブアセンブリ1.1に駆動アセンブリ1.2が連結される。例示的な一実施形態では、後方ケース2.2上の1対の弾性ビーム2.13(
図1Bに示す)は、前方ケース2.1内の凹部2.14(
図3に示す)内へカチッと留まって駆動サブアセンブリ1.2を制御サブアセンブリ1.1にロックするように適用される。
図14Bは、制御サブアセンブリ1.1に連結されている駆動サブアセンブリ1.2を示し、ニードルシュラウド7は、近位に(たとえば、組立治具の使用により)並進運動し、それによってシュラウドリブ7.7がプランジャリブ10.3に当接される。
図14Cに示すように、シュラウドリブ7.7がプランジャリブ10.3を押すと、プランジャリブ10.3の角度によってプランジャ10がケース2に対して第2の回転方向R2に回転され、第1のプランジャボス10.2は、第1の傾斜表面2.9に沿って横断表面2.16上へと進む。
【0090】
図14Dに示すように、ニードルシュラウド7が(たとえば、組立治具を取り外すことによって)解放されるとき、ニードルシュラウド7は、シュラウドリブ7.7が第2のプ
ランジャボス10.1に当接するまで、シュラウドばね8の力を受けてケース2に対して遠位方向Dに並進運動する。たとえば、シュラウドリブ7.7の遠位面7.9は、第2のプランジャボス10.1に当接し、ニードルシュラウド7をケース2に対してある軸方向位置に維持することができる。第1のプランジャボス10.2は、遠位方向Dで横断表面2.16に当接するため、ケーススロット2.3からの係合解除が阻止される。
【0091】
図14Eは、ニードルシュラウド7が後退位置RPにあるときのプランジャ解放機構12の例示的な一実施形態を示している。ニードルシュラウド7が第1の伸長位置FEPから後退位置RPへ並進運動するとき、ニードルシュラウド7が遠位に並進運動し、それによってシュラウドリブ7.7は、
図14Dに示す位置から始まり、プランジャリブ10.3に沿って進められ、それによって第1のプランジャボス10.2が、それがケーススロット2.3から係合解除されるまで横断表面2.16に沿って第2の回転方向R2に回転され、それによってプランジャ10が解放される。次いで、駆動ばね9の力を受けて、プランジャ10は、ケース2に対して軸方向に並進運動し、シリンジ3から薬剤Mを送達する。この例示的な一実施形態では、ニードルシュラウド7がプランジャリブ10.3に当接して押し付けるときの抵抗の増大の形で、触覚フィードバックが提供される。触覚フィードバックは、薬物送達デバイス1を注射部位に対してさらに押し付ければ針の挿入が開始するもしくは開始することになる、または薬剤の送達が始まることになることを示すことができる。
【0092】
例示的な一実施形態では、横断表面2.16は、プランジャ10の意図しない解放を防ぐために、凹形の形状に置き換えることができ、または凹形の形状を含むことができる。
【0093】
別の例示的な実施形態では、プランジャ10は、第2のプランジャボス10.1を有さず、プランジャリブ10.3を上記とは異なる角度で配置することができ、ケーススロット2.3は、ケース2の横軸に対して傾斜していなくてよい。この例示的な実施形態では、薬物送達デバイス1が組み立てられるとき、第1のプランジャボス10.2がケーススロット2.3に係合するので、プランジャ10は、ケース2に対してある軸方向位置に維持される。しかし、ケーススロット2.3は、第1のプランジャボス10.2にいかなる回転力も与えない(または、別の例示的な実施形態では、ケーススロット2.3は、第1のプランジャボス10.2がケーススロット2.3から意図せず係合解除しないことを確実にするために、第1のプランジャボス10.2に第1の回転方向R1の回転力を与えるように傾斜していてよい)。
【0094】
例示的な一実施形態では、薬物送達デバイス1内で使用されるシリンジ3は、約1mlの薬剤Mを収容することが可能なシリンジとすることができる。別の例示的な実施形態では、薬物送達デバイス1内で使用されるシリンジ3は、約2mlの薬剤Mを収容することが可能なシリンジとすることができる。
【0095】
本開示による薬物送達デバイス1は、従来の薬物送達デバイスと比較すると、たとえばプランジャ10のみが駆動ばね9の比較的強い力を受けるため、増加した貯蔵寿命を有することができる。
【0096】
たとえば、異なる粘性の薬物を含む薬剤もしくは再構成された薬剤を送達する、または薬剤の用量を注射するのに必要な時間を変更するために、駆動ばね9を変更してプランジャ10に印加される力を変えることができるので、本開示による薬物送達デバイス1は、プラットフォームとして使用することができる。
【0097】
キャップ11は、あらゆる種類の注射デバイスまたは薬物送達デバイスへの適用に適している。
【0098】
図15Aは、組み立て中の、薬物送達デバイスのプランジャ解放機構12の別の例示的な実施形態の概略図である。
【0099】
薬物送達デバイス1は、本明細書において開示され図示されるような薬物送達デバイス1とすることができる。
図15Aに示すプランジャ解放機構は、
図5、6、7および
図11に示すプランジャ解放機構、または
図14A~
図14Eに示すプランジャ解放機構に取って代わることができる。
【0100】
図15Aに示すプランジャ解放機構12は、ケース2に対するニードルシュラウド7の後退前のプランジャ10の解放を防ぎ、ニードルシュラウド7が十分に後退させられた後にプランジャ10を解放するように配置される。例示的な一実施形態では、プランジャ解放機構12は、相互に作用する、プランジャ10と、後方ケース2.2と、ニードルシュラウド7とを含む。例示的な一実施形態では、ニードルシュラウド7は、ケース2に対する軸方向運動に制限され、プランジャ10は、軸方向の並進運動およびケース2に対する回転が可能である。
【0101】
例示的な一実施形態では、プランジャ10は、ニードルシュラウド7上のシュラウドリブ7.7に係合するように適用された第2のプランジャボス10.1と、ケース2内のケーススロット2.3に係合するように適用された第1のプランジャボス10.2と、ニードルシュラウド7上のシュラウドリブ7.7に係合するように適用されたプランジャリブ10.3とを含む。例示的な一実施形態では、シュラウドリブ7.7は、プランジャリブ10.3に係合するように適用された近位面7.8と、第2のプランジャボス10.1に係合するように適用された遠位面7.9および長手方向面7.10とを含む。例示的な一実施形態では、ケーススロット2.3は、第1の回転方向R1の回転力を第1のプランジャボス10.2に印加するように適用された第1の傾斜表面2.9と、第1のプランジャボス10.2に当接してケース2に対する第1の回転方向R1のプランジャ10の回転を制限するように適用された壁2.10と、第1の回転方向R1とは反対の第2の回転方向R2の回転力を第1のプランジャボス10.2に印加するように適用された第2の傾斜表面2.11とを含む。
【0102】
近位面7.8およびプランジャリブ10.3の一方または両方は、近位面7.8およびプランジャリブ10.3が互いに軸方向に当接するとき、近位方向Pにシュラウドリブ7.7に印加されるおよび/または遠位方向Dにプランジャ10に印加される軸方向力が、第2の回転方向R2にプランジャ10を回転させるトルクを生成するように、傾斜していてよい。
【0103】
駆動サブアセンブリ1.2の組み立てプロセスの例示的な一実施形態では、駆動ばね9とともにプランジャ10が後方ケース2.2に挿入される。第1のプランジャボス10.2がケーススロット2.3と軸方向に位置合わせされると、プランジャ10は第1の回転方向R1に回転され、それから第1のプランジャボス10.2が壁2.10に当接するまで第1のプランジャボス10.2がケーススロット2.3内を動かされる。この位置で、第1の傾斜表面2.9は、第2の回転方向R2の第1のプランジャボス10.2の動きを阻止し、したがってプランジャ10がケース2に対して回転しないようにする。
【0104】
(保護ニードルシース5が針4上に配置された状態で)シリンジ3が制御サブアセンブリ1.1に挿入された後、制御サブアセンブリ1.1に駆動サブアセンブリ1.2が連結される。例示的な一実施形態では、後方ケース2.2上の1対の弾性ビーム2.13(
図1Bに示す)が、前方ケース2.1内の凹部2.14(
図3に示す)内へカチッと留まって駆動サブアセンブリ1.2を制御サブアセンブリ1.1にロックするように適用される
。駆動サブアセンブリ1.2が制御サブアセンブリ1.1に連結されると、ニードルシュラウド7は、(たとえば、組立治具を用いて、または組立治具なしで)近位に並進運動し、それによってシュラウドリブ7.7がプランジャリブ10.3に当接する。
図15Bに示すように、シュラウドリブ7.7がプランジャリブ10.3を押すと、プランジャリブ10.3の角度および/または近位面7.8の角度によってプランジャ10がケース2に対して第2の回転方向R2に回転され、第1のプランジャボス10.2は、第1の傾斜表面2.9に沿って第2の傾斜表面2.11の上へと進む。第1のプランジャボス10.2が第2の傾斜表面2.11上に配置されるとき、駆動ばね9の力は、第2の傾斜表面2.11の角度のため、プランジャ10に第2の回転方向R2の回転力をかける。
【0105】
図15Cに示すように、ニードルシュラウド7が(たとえば、組立治具を取り外すことによって)解放されるとき、ニードルシュラウド7は、シュラウドリブ7.7が第2のプランジャボス10.1に当接するまで、シュラウドばね8の力を受けてケース2に対して遠位方向Dに並進運動する。たとえば、シュラウドリブ7.7の遠位面7.9は、第2のプランジャボス10.1に当接し、ニードルシュラウド7をケース2に対してある軸方向位置に維持することができる。シュラウドリブ7.7はプランジャ10がケース2に対して第2の回転方向R2に回転するのを防ぐので、第1のプランジャボス10.2は、ケーススロット2.3からの係合解除が阻止される。たとえば、シュラウドリブ7.7の長手方向面7.10は、第2のプランジャボス10.1に当接して、プランジャ10の回転を防ぐ。
【0106】
図15Dは、ニードルシュラウド7が後退位置RPにあるときのプランジャ解放機構12を示している。ニードルシュラウド7は第1の伸長位置FEPから後退位置RPへ並進運動するとき、ニードルシュラウド7は遠位方向Dに並進運動し、それによって第2のプランジャボス10.1は、
図3に示す位置から始まり、シュラウドリブ7.7の遠位になるまでシュラウドリブ7.7に沿って進められる。第2のプランジャボス10.1がシュラウドリブ7.7の遠位になると、プランジャ10は、ケース2に対する第2の回転方向R2の回転がそれ以上阻止されなくなる。したがって、プランジャ10にかかる駆動ばね9の力およびケーススロット2.3内での第1のプランジャボス10.2と第2の傾斜表面2.11の係合が、プランジャ10をケース2に対して第2の回転方向R2に回転させる。
【0107】
プランジャ10が第2の回転方向R2に十分な距離だけ回転し、それによって第1のプランジャボス10.2がケーススロット2.3から係合解除するとき、プランジャ10は、駆動ばね9の力を受けてケース2に対して遠位方向Dに軸方向に自由に並進運動し、ストッパ6を押してシリンジ3から針4を通じて薬剤Mを送達する。
【0108】
例示的な一実施形態では、シュラウドリブ7.7からの第2のプランジャボス10.1および/またはケーススロット2.3からの第1のプランジャボス10.2の係合解除は、薬剤Mの送達が始まったことを示す可聴フィードバックを提供することができる。
【0109】
例示的な一実施形態では、第2の回転方向R2のプランジャ10の回転は、たとえば第2のプランジャボス10.1、第1のプランジャボス10.2、およびたとえば前方ケース2.1または後方ケース2.2であるケース2の表面に当接するプランジャリブ10.3のうちの少なくとも1つである、プランジャ10の一部によって制限される。
図15Dに示す実施形態では、第2の回転方向R2のプランジャ10の回転は、後方ケース2.2の表面に当接するプランジャリブ10.3によって制限される。
【0110】
プランジャ10がケース2に当接することによって、プランジャ10が解放されたことを示す可聴および/または触覚フィードバックが生成される。
【0111】
このフィードバックの発生および大きさは、プランジャ10およびケース2の材料、プランジャ10の回転速度、ならびに、ケース2に衝突するたとえばプランジャリブ10.3であるプランジャ10の一部の大きさによって決まり得る。回転速度は、たとえば第2の傾斜表面2.11であるケース2と、たとえば第1のプランジャボス10.2であるプランジャ10との間の摩擦、プランジャ10の慣性モーメント、駆動ばね9の力、および第2の傾斜表面2.11の角度によって決まる。
【0112】
いくつかの実施形態では、この可聴フィードバックを回避するまたは軽減することが好ましいこともある。
【0113】
これは、
図16A~
図16Cに概略的に示すように、ケーススロット2.3からの第1のプランジャボス10.2の解放の間にプランジャ10の動きを案内することによって達成することができる。この目的のため、案内湾曲部2.18は、たとえば後方ケース2.2であるケース2内に配置される。案内湾曲部2.18は、たとえば第2のプランジャボス10.1、第1のプランジャボス10.2およびプランジャリブ10.3のうちの少なくとも1つである、プランジャの一部に係合する。
図16A~
図16Cでは、プランジャ10の前記部材は、円形断面を有するように示されている。当業者には、前記部材は、さらに、
図15A~
図15Dまたは
図5、6、7、11、14A~
図14Eのいずれかに示すようなたとえば第2のプランジャボス10.1、第1のプランジャボス10.2およびプランジャリブ10.3のいずれかの形状である、異なる形状を有することもできると理解されよう。さらに、第2のプランジャボス10.1、第1のプランジャボス10.2およびプランジャリブ10.3は、
図16A~
図16Cに示す円形断面を含むピンを有することもでき、またはこの形状を有するピンをプランジャ10上の他の場所に設けることもできる。
【0114】
案内湾曲部2.18は、プランジャ10が、回転しケース2に衝突してから遠位方向Dに並進運動するのではなく、回転から遠位方向Dの並進運動にスムーズに移るように、摩擦により第2の回転方向R2におけるプランジャ10の動きを減速させる湾曲セクション2.19を含む。
図16Aでは、プランジャ10の一部、たとえば第1のプランジャボス10.2は、第2の回転方向R2に回転している。
図16Bでは、プランジャ10の前記部材は、回転がほぼ終わり、湾曲セクション2.19によって回転から遠位方向Dの並進運動へと案内されている。
図16Cでは、プランジャ10の前記部材は、遠位方向Dに並進運動している。
【0115】
図17A~
図17Cは、案内湾曲部2.18および改変された第1のプランジャボス10.2および改変されたケーススロット2.3を含むプランジャ解放機構12を概略的に示している。案内湾曲部2.18は、たとえばプランジャリブ10.3である、プランジャ10の一部に係合する。案内湾曲部2.18は、プランジャ10が回転から遠位方向Dの並進運動にスムーズに移るように、摩擦により第2の回転方向R2におけるプランジャ10の動きを減速させる湾曲セクション2.19を含む。
図17Aでは、たとえばプランジャリブ10.3であるプランジャ10の一部は、第2の回転方向R2に回転している。
図17Bでは、プランジャ10の前記部材は、回転がほぼ終わり、湾曲セクション2.19によって回転から遠位方向Dの並進運動へと案内されている。
図17Cでは、プランジャ10の前記部材は、遠位方向Dに並進運動している。
図15A~
図15Dに示す第1のプランジャボス10.2は角が比較的尖った五角形断面を有し、
図15A~
図15Dに示す第2の傾斜表面2.11は傾斜しているが、
図17A~
図17Cに示す第2の傾斜表面2.11は、第2の回転方向R2に向いている端が丸みを帯び、したがって案内湾曲部2.18の湾曲セクション2.19の一部を形成しており、第1のプランジャボス10.2も、その角のうち、プランジャ10が解放されるときに第2の傾斜表面2.11の前記端
に係合する角が丸みを帯びている。こうして、可聴フィードバックは回避または軽減され、その一方でたとえば遠位方向Dおよび/または近位方向Pである軸方向のプランジャ10の並進運動中、プランジャ10の第1または第2の回転方向R1、R2の遊びは制限される。
【0116】
【0117】
図18および
図19A~
図19Cは、薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の詳細図である。プランジャ10は、1つ、2つまたはそれ以上の案内ピンを含む。案内ピンは、
図5、6、7、11、14A~14E、15A~
図15Dのいずれかに示すような第2のプランジャボス10.1、第1のプランジャボス10.2およびプランジャリブ10.3のいずれかとして具現化される、または案内ピンは、第2のプランジャボス10.1、第1のプランジャボス10.2およびプランジャリブ10.3に加えて設けることもできる。案内ピンは、たとえば前方ケース2.1もしくは後方ケース2.2または内側ケースもしくは外側ケース内である、ケース2内に配置された案内湾曲部2.18内に係合する。一代替実施形態では、案内湾曲部2.18は、たとえばニードルシュラウド7内であるスリーブ内に配置される。
図19A~
図19Cは、案内湾曲部2.18の解かれた図(uncoiled view)である。
【0118】
例示的な一実施形態では、案内湾曲部2.18が内部に配置されるプランジャ10またはスリーブは、枢動される。プランジャ10が枢動される場合、支承部16は、プランジャ10の遠位端上に配置され、プランジャ10が回転されるときにストッパ6がトルクを受けることを回避するようにストッパ6に係合するように適用される。案内湾曲部2.18は、プランジャ10が遠位方向Dにおけるプランジャの並進運動の大部分の間回転される案内湾曲部2.18の長さにわたって延びる湾曲セクション2.19を含む。例示的な一実施形態では、案内湾曲部2.18は、放物線の一部の形を有することができ、案内ピンは、解放前は放物線の頂点に係合しており、解放されると放物線に沿って頂点から遠ざかるように動く。案内湾曲部2.18の長い湾曲延長部により、プランジャ10の解放中の可聴フィードバックを回避または軽減させることができる。
図19Aは、解放直後のプランジャ10を示している。
図19Bは、解放後に遠位方向Dに移動しているプランジャ10を示している。
図19Cは、遠位方向Dに少なくともほぼ完全に移動したプランジャ10を示している。
【0119】
図20A~
図20Cは、案内湾曲部2.18および改変された第1のプランジャボス10.2および改変されたケーススロット2.3を含むプランジャ解放機構12を概略的に示している。案内湾曲部2.18は、たとえばプランジャリブ10.3である、プランジャ10の一部に係合する。案内湾曲部2.18は、プランジャ10が回転から遠位方向Dの並進運動にスムーズに移るように、摩擦により第2の回転方向R2におけるプランジャ10の動きを減速させる湾曲セクション2.19を含む。
図20Aでは、たとえばプランジャリブ10.3であるプランジャ10の一部は、第2の回転方向R2に回転している。
図20Bでは、プランジャ10の前記部材は、回転がほぼ終わり、湾曲セクション2.19によって回転から遠位方向Dの並進運動へと案内されている。
図20Cでは、プランジャ10の前記部材は、遠位方向Dに並進運動している。
図15A~
図15Dに示す第1のプランジャボス10.2は角が比較的尖った五角形断面を有し、
図15A~
図15Dに示す第2の傾斜表面2.11は傾斜しているが、
図20A~
図20Cに示す第2の傾斜表面2.11は、第2の回転方向R2に向いている端が丸みを帯び、したがって案内湾曲部2.18の湾曲セクション2.19を形成しており、第1のプランジャボス10.2も、その角のうち、プランジャ10が解放されるときに第2の傾斜表面2.11の前記端に係合する角が丸みを帯びている。こうして、可聴フィードバックは回避または軽減され、その
一方でたとえば遠位方向Dおよび/または近位方向Pである軸方向のプランジャ10の並進運動中、プランジャ10の第1または第2の回転方向R1、R2の遊びは制限される。したがって、
図20A~
図20Cの案内湾曲部2.18は、曲がり目の内側だけにあり曲がり目の外側にはない湾曲セクション2.19を含み、それに反して
図16A~
図19Cの実施形態は、曲がり目の内側と外側の両方を含む。湾曲セクション2.19および第1のプランジャボス10.2は、プランジャボス10.2が湾曲セクション2.19から時期尚早に係合解除されることを防ぐために、湾曲セクション2.19と第1のプランジャボス10.2との間の摩擦を増加させる材料を含むことができる。さらに、湾曲セクション2.19の半径は変化してもよく、または湾曲セクション2.19は、これを達成するために平坦化してもよい。
【0120】
【0121】
例示的な一実施形態では、図示の薬物送達デバイスは、自動注射器とすることができる。
【0122】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0123】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0124】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことがで
きる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0125】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0126】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0127】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0128】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセン
ディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0129】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0130】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0131】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0132】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0133】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0134】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然とし
て含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本開示に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0135】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0136】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0137】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0138】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0139】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0140】
本明細書に記載の物質、配合、装置、方法、システムおよび実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または削除)は、本開示の全範囲および趣旨から逸脱することなく
行うことができ、本開示は、そのような修正、および本開示のあらゆる均等物もすべて包含することが当業者には理解されよう。
【符号の説明】
【0141】
1 薬物送達デバイス
1.1 制御サブアセンブリ
1.2 駆動サブアセンブリ
2 ケース
2.1 前方ケース
2.2 後方ケース
2.3 ケーススロット
2.9 第1の傾斜表面
2.10 壁
2.11 第2の傾斜表面
2.12 止め具
2.13 弾性ビーム
2.14 凹部
2.15 径方向止め具
2.16 横断表面
2.18 案内湾曲部
2.19 湾曲セクション
2.20 湾曲スロット
2.21 湾曲スロット面
3 シリンジ
4 針
5 保護ニードルシース
6 ストッパ
7 ニードルシュラウド
7.1 可撓シュラウドビーム
7.6 アパーチャ
7.7 シュラウドリブ
7.8 近位面
7.9 遠位面
7.10 長手方向面
8 シュラウドばね
9 駆動ばね
10 プランジャ
10.1 第2のプランジャボス
10.2 第1のプランジャボス
10.3 プランジャリブ
11 キャップ
11.3 可撓ビーム
11.4 リブ
11.5 把持機能
12 プランジャ解放機構
14 第1のシュラウドロック機構
15 第2のシュラウドロック機構
16 支承部
D 遠位方向
FEP 第1の伸長位置
M 薬剤
P 近位方向
R1 第1の回転方向
R2 第2の回転方向
RP 後退位置
SEP 第2の伸長位置
【手続補正書】
【提出日】2022-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1)であって、長手方向軸(L)を有し、
プランジャ解放機構(12)を含み、
該プランジャ解放機構は、少なくとも、
長手方向軸(L)に沿って動くことができるプランジャ(10)と、
該プランジャ(10)が長手方向軸(L)に沿って動くように解放されるときにプランジャ(10)を案内するように、プランジャ(10)の少なくとも1つの部材(10.1、10.2、10.3)に係合するように適用された案内湾曲部(2.18)とを含み、ここで、案内湾曲部(2.18)は、湾曲セクション(2.19)を含み、ここで、プランジャ(10)は、該プランジャ(10)から径方向外方に延びる第1のプランジャボス(10.2)を含み、ケース(2)は、長手方向軸(L)に沿ったプランジャ(10)の動きを抑制または制限するように、第1のプランジャボス(10.2)に係合するように適用されたケーススロット(2.3)を含み、ここで、プランジャ(10)は、第1のプランジャボス(10.2)がケーススロット(2.3)から係合解除され、したがってプランジャ(10)を解放し軸方向並進運動するように回転されるように構成され、そして、ここで、湾曲セクション(2.19)は、ケーススロット(2.3)からのプランジャボス(10.2)の係合解除の間および/または後にプランジャ(10)の少なくとも1つの部材(10.1、10.2、10.3)に係合するように配置される、前記薬物送達デバイス。
【請求項2】
ケース(2)および/またはスリーブを含み、案内湾曲部(2.18)は、ケース(2)上および/またはスリーブ上に配置される、請求項1に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項3】
ケーススロット(2.3)は、軸方向並進運動を抑制するように第1のプランジャボス(10.2)に係合するように適用された表面(2.11、2.16)を含み、ここで、該表面(2.11、2.16)は、回転方向(R1、R2)の端が丸みを帯びており、この回転方向(R1、R2)の端が丸みを帯びているケーススロット(2.3)の表面においてプランジャ(10)は回転してケーススロット(2.3)から係合解除されるように
構成され、したがって表面(2.11、2.16)の丸みを帯びた端は、第1のプランジャボス(10.2)であるプランジャ(10)の部材(10.1、10.2、10.3)によって係合されるように構成された湾曲セクション(2.19)の曲がり目の内側を形成する、請求項1に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項4】
湾曲セクション(2.19)は、プランジャ(10)の少なくとも1つの部材(10.1、10.2、10.3)に係合するように構成された曲がり目の外側を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項5】
第1のプランジャボス(10.2)は、少なくとも湾曲セクション(2.19)の内側曲がり目に係合するように構成された領域内において丸みを帯びている、請求項1~4のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項6】
湾曲セクション(2.19)は、プランジャ(10)がプランジャの軸方向並進運動の大部分の間回転される案内湾曲部(2.18)の長さにわたって延びる、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項7】
案内湾曲部(2.18)は、放物線の一部の形を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項8】
プランジャ(10)の少なくとも1つの部材(10.1、10.2、10.3)は、第1のプランジャボス(10.2)がケーススロット(2.3)内に係合されるとき、放物線の頂点に係合される、請求項7に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項9】
支承部(16)は、プランジャ(10)の遠位端上に配置され、薬剤容器(3)のストッパ(6)に係合する、請求項1~8のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項10】
第1のプランジャボス(10.2)に係合するように適用されたケーススロット(2.3)の表面(2.11、2.16)は、軸方向の力がプランジャ(10)に印加されたときに該プランジャ(10)にトルクを引き起こすように傾斜している、請求項1~9のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項11】
プランジャ(10)によって係合されるように適用されたストッパ(6)を有する薬剤容器(3)をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項12】
薬剤容器(3)は、薬剤を含む、請求項11に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項13】
薬物送達デバイス(1)を製造する方法であって:
長手方向軸(L)に沿って動くことができるプランジャ(10)を提供する工程と、
案内湾曲部(2.18)を提供する工程と、
プランジャ(10)が長手方向軸(L)に沿って動くように解放されるときにプランジャ(10)を案内するように、案内湾曲部(2.18)がプランジャ(10)の少なくとも1つの部材(10.1、10.2、10.3)に係合するように、プランジャ(10)と案内湾曲部(2.18)を組み立てる工程と
を含む、前記方法。
【外国語明細書】