(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163190
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ベンゾアゼピン化合物含有医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/675 20060101AFI20221018BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221018BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61K31/675
A61P43/00 123
A61P7/10
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129393
(22)【出願日】2022-08-15
(62)【分割の表示】P 2021540578の分割
【原出願日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2019064357
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千原 遠見彦
(72)【発明者】
【氏名】宇野 真悟
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紅斑、多汗、及び掻痒等の、トルバプタンの副作用を低減するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】式(1):
で表される化合物又はその金属塩4~20mgが、10分以上かけて経血管投与されるように用いられる、式(1)又はその金属塩を含有する医薬組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
で表される化合物又はその金属塩4~20mgが、10分以上かけて経血管投与されるよ
うに用いられる、式(1)又はその金属塩を含有する医薬組成物。
【請求項2】
式(1)で表される化合物又はその金属塩が、平均2/3(mg/分)以下の速さで投与
されるように用いられる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
式(1)で表される化合物又はその金属塩4~20mgが、10分~4時間かけて経血管
投与されるように用いられる、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
式(1)で表される化合物又はその金属塩の投与により皮膚又は皮下組織に生じる副作用
を低減するための、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
式(1)で表される化合物又はその金属塩の投与により皮膚又は皮下組織に生じる副作用
が、紅斑、多汗、及び掻痒からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4に
記載の医薬組成物。
【請求項6】
心不全における体液貯留、肝硬変における体液貯留、又は抗利尿ホルモン不適合分泌症候
群(SIADH)による低ナトリウム血症、あるいは常染色体優性多発性嚢胞腎の治療用
である、請求項1~5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
治療のため、一回の投与で、式(1)で表される化合物又はその金属塩4~20mgを投
与することが必要な患者用である、請求項1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
凍結乾燥組成物又は水溶液組成物である、請求項1~7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記金属塩が、2ナトリウム塩である、請求項1~8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の医薬組成物が、当該医薬組成物に含有される式(1)で
表される化合物又はその金属塩量が4~20mgとなるよう容器に備えられた、医薬製剤
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベンゾアゼピン化合物含有医薬組成物等に関する。なお、本明細書に記載さ
れる文献は、下記先行技術文献(特許文献及び非特許文献)として挙げた文献を含め、全
ての文献につき、記載される全ての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ベンゾアゼピン化合物であるトルバプタンは、バソプレシンV2受容体拮抗作用を有し
ており、利尿薬等として活用されている。トルバプタンの構造式を以下の式(2)に示す
。
【0003】
【0004】
ただ、トルバプタンは水難溶性であるため、剤形及び投与経路等の点において制限が多
い。そこで、水溶性であるトルバプタンのプロドラッグについて研究開発がなされている
。例えば特許文献1では、優れた水溶性を有するトルバプタンのプロドラッグが提案され
ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、トルバプタン及びトルバプタンのプロドラッグは、投与すると、重篤ではない
ものの副作用(特に皮膚又は皮下組織における副作用)が生じる場合があり、副作用を低
減させることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のトルバプタンのプロドラッグを特定の速さで投与することにより
、副作用を低減させることができる可能性を見出し、さらに改良を重ねた。
【0008】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
式(1):
【0009】
【0010】
で表される化合物又はその金属塩4~20mgが、10分以上かけて経血管投与されるよ
うに用いられる、式(1)又はその金属塩を含有する医薬組成物。
項2.
式(1)で表される化合物又はその金属塩が、平均2/3(mg/分)以下の速さで投与
されるように用いられる、項1に記載の医薬組成物。
項3.
式(1)で表される化合物又はその金属塩4~20mgが、10分~4時間かけて経血管
投与されるように用いられる、項1又は2に記載の医薬組成物。
項4.
式(1)で表される化合物又はその金属塩の投与により皮膚又は皮下組織に生じる副作用
を低減するための、項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
項5.
式(1)で表される化合物又はその金属塩の投与により皮膚又は皮下組織に生じる副作用
が、紅斑、多汗、及び掻痒からなる群より選択される少なくとも1種である、項4に記載
の医薬組成物。
項6.
心不全(好ましくはうっ血性心不全)における体液貯留、肝硬変における体液貯留、又は
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)による低ナトリウム血症、あるいは常染
色体優性多発性嚢胞腎の治療用である、項1~5のいずれかに記載の医薬組成物。
項7.
治療のため、一回の投与で、式(1)で表される化合物又はその金属塩4~20mgを投
与することが必要な患者用である、項1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
項8.
凍結乾燥組成物又は水溶液組成物である、項1~7のいずれかに記載の医薬組成物。
項9.
前記金属塩が、2ナトリウム塩である、項1~8のいずれかに記載の医薬組成物。
項10.
項1~9のいずれかに記載の医薬組成物が、当該医薬組成物に含有される式(1)で表さ
れる化合物又はその金属塩量が4~20mgとなるよう容器(好ましくはバイアル)に備
えられた、医薬製剤。
【発明の効果】
【0011】
特定のトルバプタンのプロドラッグを含有し、且つ副作用が低減された医薬組成物が提
供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、特定のトルバプタンのプロドラッグを含有し、特定の速さで投与するように
用いられる医薬組成物等を好ましく包含するが、これに限定されるわけではなく、本開示
は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0013】
本開示に包含される医薬組成物は、次の式(1):
【0014】
【0015】
で表される化合物又はその金属塩を含有し、好ましくは、式(1)で表される化合物の金
属塩を含有する。なお、式(1)で表される化合物を、「化合物(1)」ということがあ
る。また、当該化合物(1)又はその塩を含有する医薬組成物を「本開示の組成物」とい
うことがある。
【0016】
化合物(1)又はその金属塩が、本開示の組成物に含有される、特定のトルバプタンの
プロドラッグである。当該特定のトルバプタンのプロドラッグとしては、特に化合物(1
)の金属塩が好ましい。
【0017】
化合物(1)の金属塩としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩あるいは亜鉛
塩が好ましく、より具体的には、例えばナトリウム塩(1若しくは2ナトリウム塩)、カ
リウム塩(1又は2カリウム塩)、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩等が好ましい
。中でも、特に2ナトリウム塩が好ましい。次に化合物(1)の2ナトリウム塩の構造式
を示す。
【0018】
【0019】
なお、化合物(1)又はその金属塩は、公知の方法又は公知の方法から容易に想到でき
る方法により製造することができる。例えば、特許文献1(国際公開第2007/074
915号)に記載の方法(特に実施例に記載の方法)により、製造することができる。
【0020】
本開示の組成物は、化合物(1)又はその金属塩4~20mgが、10分以上かけて経
血管投与されるように用いられる。経血管投与としては、経静脈投与が好ましい。また、
経血管投与に用いることから、本開示の組成物の剤形としては、例えば注射剤、点滴剤等
が好ましい。なお、当該化合物(1)又はその金属塩4~20mgとの範囲において、上
限または下限は例えば4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、
9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、1
4.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、又
は19.5mgであってもよい。例えば、当該範囲は、5~19mg、6~18mg、6
.5~17.5mg、7~17mg、7.5~16.5mg、又は8~16mg程度であ
ってもよい。
【0021】
また、経血管投与にかかる時間は、10分~4時間程度が好ましい。当該投与時間範囲
において、上限または下限は例えば、15分、20分、25分、30分、35分、40分
、45分、50分、55分、1時間、1時間5分、1時間10分、1時間15分、1時間
20分、1時間25分、1時間30分、1時間35分、1時間40分、1時間45分、1
時間50分、1時間55分、2時間、2時間5分、2時間10分、2時間15分、2時間
20分、2時間25分、2時間30分、2時間35分、2時間40分、2時間45分、2
時間50分、2時間55分、3時間、3時間5分、3時間10分、3時間15分、3時間
20分、3時間25分、3時間30分、3時間35分、3時間40分、3時間45分、3
時間50分、又は3時間55分程度であってもよい。例えば、当該投与時間範囲は、15
~4時間程度又は30分~4時間程度がより好ましく、30分~3時間程度又は30分~
2時間程度がさらに好ましく、45分~2時間程度又は45分から1時間30分程度がよ
りさらに好ましい。
【0022】
また、本開示の組成物は、式(1)で表される化合物又はその金属塩が、平均2/3(
mg/分)以下の速さで投与されるように用いられることが好ましい。つまり、平均2/
3(mg/分)以下であって0(mg/分)より大きい速さで投与されるように用いられ
ることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば平均1.5、1.4、1.3、1
.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.45、0.4、0.
35、0.3、0.25、0.2、0.15、0.1、0.05、0.04、0.03、
0.02、又は0.01(mg/分)であってもよい。例えば、式(1)で表される化合
物又はその金属塩が、平均1~0.05(mg/分)の速さ、平均0.5~0.1(mg
/分)の速さ、あるいは平均0.3~0.1(mg/分)の速さで投与されるように用い
られ得る。
【0023】
また、本開示の組成物は、式(1)で表される化合物又はその金属塩の投与により皮膚
又は皮下組織に生じる副作用を低減するために、好ましく用いることができる。式(1)
で表される化合物又はその金属塩という特定のトルバプタンのプロドラッグを、上述した
特定の速さで投与することにより、トルバプタン又はそのプロドラッグの投与により生じ
るおそれのある皮膚又は皮下組織に生じる副作用を低減することができる。
【0024】
当該皮膚又は皮下組織に生じる副作用としては、例えば紅斑、多汗、及び掻痒を挙げる
ことができる。本開示の組成物によれば、1種または2種以上の当該皮膚又は皮下組織に
生じる副作用を好ましく低減することができる。
【0025】
本開示の組成物は、トルバプタンの用途と同じ用途に用いることができ、特に公知のト
ルバプタンの用途と同じ用途に好ましく用いることができる。例えば、バソプレシン受容
体(特にV2受容体)拮抗薬として好ましく用いることができる。より具体的には、例え
ば心不全(好ましくはうっ血性心不全)における体液貯留、肝硬変における体液貯留、抗
利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)による低ナトリウム血症、又は常染色体優
性多発性嚢胞腎の治療のために、好ましく用いることができる。なお、常染色体優性多発
性嚢胞腎の治療とは、ここでは好ましくは常染色体優性多発性嚢胞腎の腎容積増加抑制及
び/又は腎機能低下抑制のことをいう。
【0026】
中でも、ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留の治療、
ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留の治療、あるいは、
腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性のう胞腎
の進行抑制、に好ましく用いることができる。
【0027】
また、本開示の組成物は、上記の治療のために、一回の投与で、式(1)で表される化
合物又はその金属塩4~20mgを投与することが必要な患者のために、好ましく用いる
ことができる。特に、一回の投与で当該量を投与する場合に、皮膚又は皮下組織に生じる
副作用を生じる患者のために、より好ましく用いることができる。なお、本開示の組成物
の投与対象の年齢は特に制限されない。例えば、成人に投与されることが好ましく、成人
に上記条件を満たすように投与されることがより好ましい。
【0028】
本開示の組成物は、特に制限はされないが、式(1)で表される化合物又はその金属塩
を含む凍結乾燥組成物又は水溶液組成物であることが好ましい。
【0029】
水溶液組成物はそのまま経血管投与に供することができ、上述した時間をかけて(例え
ば10分以上、好ましくは30分以上かけて、より好ましくは約60分かけて)、緩徐に
経血管投与される。また、水溶液組成物は、水(当該水は、例えば経血管投与技術分野に
おいて公知の他成分を含んでいてもよく、このようなものとして好ましくは生理食塩液、
ブドウ糖注射液、又は各種輸液製剤等が挙げられる)に希釈して、経血管投与に供するこ
ともできる。水溶液組成物の投与形態は、特に制限はされないが、輸液用バックやバイア
ルから点滴で投与することも可能であり、注射用シリンジを用いて緩徐に投与することも
可能である。より、精密に投与したい場合は、例えば輸液ポンプやシリンジポンプ等の装
置を用いて、長時間かけて一定速度で投与することも可能である。凍結乾燥組成物は、特
に制限はされないが、水(当該水は、例えば経血管投与技術分野において公知の他成分を
含んでいてもよく、このようなものとして好ましくは生理食塩液、ブドウ糖注射液、又は
各種輸液製剤等が挙げられる)に溶解して(すなわち、構成して)得られた水溶液組成物
を経血管投与に供することができる。また、凍結乾燥組成物から得られた水溶液組成物を
、さらに水(当該水は、例えば経血管投与技術分野において公知の他成分を含んでいても
よく、このようなものとして好ましくは生理食塩液、ブドウ糖注射液、又は各種輸液製剤
等が挙げられる)に希釈して、経血管投与に供することもできる。
【0030】
当該凍結乾燥組成物又は水溶液組成物は、二糖を含有することが好ましい。
【0031】
二糖としては、二糖を構成する2つの糖のうち少なくとも片方がグルコースである二糖
が好ましく、具体的にはスクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース等が挙げら
れ、特に スクロースが好ましい。二糖は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用い
ることができる。
【0032】
二糖の含有量は、化合物(1)又はその金属塩の含有量を1質量部としたとき、例えば
0.5~70質量部であることが好ましく、0.8~60質量部であることがより好まし
く、1~15質量部であることがさらに好ましい。
【0033】
なお、特に組成物が凍結乾燥組成物である場合には、化合物(1)又はその金属塩と二
糖との合計含有量が、組成物全体の65質量%以上であることが好ましく、66、67、
68、69、又は70質量%以上であることがより好ましい。
【0034】
当該凍結乾燥組成物又は水溶液組成物は、さらに緩衝剤(buffering agent)を好まし
く含有する。緩衝剤としては、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤が好ましく、特に、リン酸緩衝
剤が好ましく、より具体的には、例えばリン酸水素2ナトリウム(リン酸水素ナトリウム
水和物)及び/又はリン酸2水素ナトリウムが好ましく挙げられる。
【0035】
また、当該凍結乾燥組成物又は水溶液組成物は、pH調整剤を必要に応じて含有してい
てもよい。pH調整剤としては、具体的には、酸性pH調整剤としては塩酸、酢酸、リン
酸などが、塩基性pH調整剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウ
ム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等が例示される。
【0036】
また、これらの他、当該凍結乾燥組成物又は水溶液組成物は、薬学的に許容される担体
、特に凍結乾燥医薬製剤分野で公知の成分を、必要に応じて含有させてもよい。
【0037】
本開示の組成物(特に凍結乾燥組成物又は水溶液組成物)は、滅菌等により、無菌化さ
れていることが好ましい。滅菌方法は特に制限はされず、例えば水溶液調製時に無菌ろ過
を行う方法が例示される。
【0038】
本開示の組成物は、公知の方法、例えば凍結乾燥医薬製剤の調製方法に基づいて調製す
ることができる。より具体的には例えば、凍結乾燥組成物又は水溶液組成物については、
化合物(1)又はその金属塩及び二糖、並びに必要に応じて緩衝剤やpH調整剤等を水と
ともに混合して溶解させ、水溶液組成物を調製することができる。また、上記の通り、凍
結乾燥組成物は、当該水溶液組成物を凍結乾燥させることによって調製することができる
。
【0039】
なお、本開示は、本開示の組成物を適量備えた医薬製剤も包含する。このような医薬製
剤としては、本開示の組成物に含有される式(1)で表される化合物又はその金属塩量が
4~20mgとなるよう容器に備えられた、医薬製剤が好ましい。当該医薬製剤は、一回
又は複数回投与用の医薬製剤として好ましく用いることができる。なお、当該化合物(1
)又はその金属塩4~20mgとの範囲において、上限または下限は例えば5、6、7、
8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19mgであっ
てもよい。例えば、当該範囲は、5~19mg、6~18mg、7~17mg、又は8~
16mg程度であってもよい。また、このような医薬製剤としては、特に凍結乾燥組成物
(好ましくはケーキ状組成物)又は水溶液組成物が前記必要量だけ充填されたバイアル剤
等が好ましく例示される。
【0040】
本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する
(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of
.")。
【0041】
また、上述した各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開
示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。
【実施例0042】
以下、本開示に包含される主題をより具体的に説明するが、当該主題は下記の例に限定
されるものではない。
【0043】
化合物(1)の金属塩の製造
特許文献1(国際公開第2007/074915号)の実施例(特に実施例1、3、及
び9)に記載の方法に従って、化合物(1)及びその2ナトリウム塩を調製した。当該2
ナトリウム塩を化合物Aとして、以下の検討に用いた。当該調製は、具体的には、次のよ
うにして行った。なお、以下の具体的な調製方法の記載においては、当該化合物(1b)
が化合物(1)にあたり、化合物(1b)の2ナトリウム塩が化合物Aにあたる。
【0044】
【0045】
トルバプタン1.0g及び1H-テトラゾール460mgを塩化メチレン30mlに溶解
し、該溶液に室温攪拌下、ジベンジルジイソプロピルホスホラミジト1.2gを滴下し、
同温度で2時間攪拌した。
【0046】
得られた反応液を-40℃に冷却し、該溶液にメタクロル過安息香酸920mgの塩化
メチレン溶液6mlを滴下した。この混合物を、同温度で30分、更に0℃で30分攪拌
した。反応混合物をチオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和重曹水で洗浄し、無水硫酸ナトリウ
ムで乾燥した。得られた反応混合物を濾過し、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフ
ィー(溶出溶媒:n-ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製することにより、化合物
(1a-1)のアモルファスフォーム1.5g(収量97.2%)を得た。
【0047】
【0048】
化合物(1a-1)5.3gをエタノール100mlに溶解した。5%パラジウム炭素
2gを触媒として用い、常温、常圧下で10分間、該溶液を接触還元した。該溶液から触
媒を濾去し、得られた濾液を濃縮した(4.2g)。得られた残渣をメタノール-水より
結晶化した。結晶を濾取し、減圧下乾燥(五酸化二リン)することにより、化合物(1b
)の白色粉末3.5g(収量88.5%)を得た。
【0049】
さらに、化合物(1b)276mg (0.52ミリモル)のメタノール溶液(2ml
)に氷冷下1N-水酸化ナトリウム水溶液 1.0mlを加え、得られる混合物を5分間
撹拌した。反応混合物を減圧下に濃縮し、残渣をアセトン-水から再結晶して、化合物(
1b)の2ナトリウム塩221mgを白色粉末として得た。
【0050】
なお、特許文献1の実施例に記載の方法に従い、化合物(1)のカルシウム塩、マグネ
シウム塩、若しくは亜鉛塩も製造した。
【0051】
化合物Aの凍結乾燥製剤の調製
下記表1に記載の組成に従って、化合物A、スクロース、リン酸水素ナトリウム水和物
、及びリン酸二水素ナトリウムを注射用水に溶解し、水酸化ナトリウムでpHを8.5に
調整し、表1の組成の水溶液を調製した。組成の水溶液を無菌ろ過後、滅菌されたガラス
バイアルに5.21mL充填した。さらに、-40℃以下に凍結後、真空に減圧し、棚温
を-10℃にして水分を除去した後、棚温を30℃にして残存水分を除去することで、表
2の組成の無菌の凍結乾燥組成物(バイアル入り)を得た。
【0052】
なお、表1は1mL当たりの量を示し、表2はバイアル当たりの量を示す。また、25
mg製剤には、1バイアル当たり26.5mgの有効成分(化合物A)が含まれる。
【0053】
【0054】
【0055】
得られた0mg製剤及び25mg製剤それぞれに、注射用水5mLを加えて凍結乾燥組
成物(凍結乾燥ケーキ)を溶解し、注射用水溶液とした。25mg製剤は、注射用水5m
Lを加えて溶解すると、5mg/mLの有効成分(化合物A)が含まれる表1の水溶液組
成物(25mg製剤注射用水溶液)が5.21mL再構成される。そして、下記表3の組成
に従って、25mg製剤注射用水溶液及び0mg製剤注射用水溶液並びに生理食塩液(生
理食塩水)を混合し、各投与液を調製した。
【0056】
【0057】
シリンジポンプを用い、表3に記載の投与時間をかけて、得られた各投与液を経静脈投
与した。各投与液を投与した被験者数は、いずれも健常成人男性(20~40歳)6人(
N=6)とした。
【0058】
投与開始後24時間までに認められた、皮膚または皮下組織に現れ得る副作用(紅斑、
多汗、又は掻痒)を発症した人数を記録した。結果を表4に示す。7.5mg又は15m
gの化合物Aを含む投与液を1分間又は5分間で静脈内投与すると紅斑、多汗、又は掻痒
が高頻度に発現した(表4:投与液3~6の投与結果)。一方、7.5mg又は15mg
の化合物Aを含む投与液を2時間かけて緩徐に投与すると、紅斑、多汗、又は掻痒等皮膚
または皮下組織に現れ得る副作用は全く認められなかった(表4:投与液1~2の投与結
果)。また、表4には、それぞれの投与液を投与した被験者におけるトルバプタンの最高
血中濃度(Cmax)も併せて示す。
【0059】
【0060】
以下に処方例1~35を示す。表5には1mLあたりの量(mg)を、表6にはバイア
ル当たりの量(mg)を、それぞれ示す。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】