(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163237
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】電磁波成形装置及び電磁波成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/08 20060101AFI20221018BHJP
B29C 33/24 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B29C33/08
B29C33/24
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131869
(22)【出願日】2022-08-22
(62)【分割の表示】P 2019211587の分割
【原出願日】2019-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】518455354
【氏名又は名称】株式会社micro-AMS
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 文夫
(72)【発明者】
【氏名】香川 慎吾
(57)【要約】
【課題】減圧バッグによって成形型の型締め及び成形型のキャビティ内の減圧状態の維持の両方を行うことができるとともに、成形する成形体のサイズ、形状等の自由度を高めることができる電磁波成形装置及び電磁波成形方法を提供する。
【解決手段】電磁波成形装置1は、成形型2、減圧バッグ3、加熱源6A及び減圧ポンプ4を備える。成形型2は、成形用材料80から成形体8が成形されるキャビティ20と、キャビティ20と外表面201とに繋がる減圧経路22とを有する。減圧バッグ3は、可撓性を有するシート材30によって袋形状に形成されており、成形型2を内部に収容する。加熱源6Aは、キャビティ20内の成形用材料80及び成形型2の少なくとも一方を加熱する。減圧ポンプ4は、減圧バッグ3内を減圧するとともに、減圧経路22を介してキャビティ20内を減圧する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用材料から成形体が成形されるキャビティ、及び前記キャビティと外表面とに繋がる減圧経路を有する成形型と、
可撓性を有するシート材によって袋形状に形成され、前記成形型を内部に収容する減圧バッグと、
前記キャビティ内の成形用材料及び前記成形型の少なくとも一方を加熱する加熱源と、
前記減圧バッグ内を減圧するとともに、前記減圧経路を介して前記キャビティ内を減圧する減圧ポンプと、
前記減圧バッグ内に一部が配置され、前記減圧経路と前記減圧ポンプとに接続された減圧配管と、を備え、
前記減圧配管には、前記減圧バッグによって閉じられることなく前記減圧ポンプによって前記キャビティ内を減圧するために用いられる先端開口と、前記減圧ポンプによって前記減圧バッグ内を減圧するために用いられ、前記減圧バッグ内が減圧されたときに前記減圧バッグによって閉じられる通気孔とが形成されている、電磁波成形装置。
【請求項2】
前記減圧バッグは、前記成形型の出し入れを可能にするための開口部と、前記開口部を閉じて、前記減圧バッグ内を密封するための開口チャックとを有する、請求項1に記載の電磁波成形装置。
【請求項3】
前記加熱源は、前記減圧バッグを介して前記成形型に電磁波を照射する電磁波照射源、又は前記成形型の両側に配置された一対の電極間に加わる交流電圧によって前記キャビティ内の成形用材料及び前記成形型に交番電界を印加する誘電加熱源によって構成されている、請求項1又は2に記載の電磁波成形装置。
【請求項4】
可撓性を有するシート材によって袋形状に形成された減圧バッグ内に、成形用材料がキャビティ内に配置された成形型が配置される配置工程と、
前記減圧バッグ内及び前記キャビティ内が減圧され、前記減圧バッグが前記成形型に密着して前記減圧バッグによる型締め力が前記成形型に作用する減圧工程と、
前記キャビティ内の成形用材料及び前記成形型の少なくとも一方が加熱されて、前記キャビティ内の成形用材料が溶融する加熱工程と、
前記型締め力が前記成形型に作用する状態において、前記キャビティ内の溶融した成形用材料が冷却されて成形体が成形される冷却工程と、を含み、
前記配置工程においては、前記成形型における前記キャビティに繋がる減圧経路と、前記減圧バッグの外部に配置された減圧ポンプとに接続され、前記キャビティ内を減圧するための先端開口及び前記減圧バッグ内を減圧するための通気孔が形成された減圧配管の一部が、前記減圧バッグ内に配置され、
前記減圧工程においては、前記通気孔を介して前記減圧バッグ内が減圧されるとともに前記先端開口及び前記減圧経路を介して前記キャビティ内が減圧された後、前記減圧バッグによって前記通気孔が閉じられて、前記先端開口及び前記減圧経路を介して前記キャビティ内が減圧される、電磁波成形方法。
【請求項5】
前記加熱工程においては、前記減圧バッグの表面に電磁波を照射する電磁波照射源、又は前記成形型の両側に配置された一対の電極間に加わる交流電圧によって、前記キャビティ内の成形用材料及び前記成形型に交番電界を印加する誘電加熱源を用いる、請求項4に記載の電磁波成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波成形装置及び電磁波成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂等の樹脂成形品を成形する方法としては、射出成形法、ブロー成形法、プレス成形法等がある。これらの成形方法においては、金属製の成形型である金型が使用されている。金型を製造する際には、金属材料を三次元的に切削加工する必要があり、この切削加工に手間がかかるといった弱点がある。一方、成形型を用いずに熱可塑性樹脂の成形を可能にした成形方法としては、3Dプリンター等として知られる積層造形法がある。積層造形法においては、成形型が不要である一方、成形された樹脂成形品に積層界面が残ることによる特性上の弱点がある。これらの成形方法の弱点が克服された成形方法として、例えば、特許文献1,2に示される、非金属材料からなる成形型及び電磁波を用いた熱可塑性樹脂の成形方法がある。
【0003】
特許文献1の樹脂成形方法においては、金型の代わりにゴム型が用いられ、ゴム型の表面から照射される電磁波によって、ゴム型のキャビティ内の熱可塑性樹脂が加熱されて、熱可塑性樹脂の成形品が得られる。この樹脂成形方法においては、ゴム型のキャビティ内が真空手段によって真空状態にされ、キャビティ内に熱可塑性樹脂が充填されやすくしている。
【0004】
また、特許文献2の熱可塑性樹脂成形品の成形方法においては、ゴム型内の熱可塑性樹脂が電磁波によって加熱されるときに、真空手段によってゴム型内の圧力が外部の圧力よりも低くなり、ゴム型を構成する一対のゴム型部が互いに接近して、容積が縮小したゴム型内に熱可塑性樹脂成形品が成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-216448号公報
【特許文献2】特開2011-240539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、ゴム型の全体が圧力容器内に配置され、圧力容器に接続された真空手段によって圧力容器内を減圧することにより、ゴム型のキャビティ内も減圧して、キャビティ内に熱可塑性樹脂が充填されやすくしている。この場合には、ゴム型の外表面及びキャビティ内のいずれも減圧状態となるため、ゴム型を構成する一対のゴム型部が開かないようにするための型締め力を別途付与する必要がある。
【0007】
一方、特許文献2においては、ゴム型のキャビティに真空手段が接続されて、キャビティ内が直接減圧される。これにより、ゴム型の外表面には大気圧が作用する一方、キャビティ内が減圧状態になり、ゴム型を構成する一対のゴム型部に型締め力を作用させることができる。
【0008】
しかし、特許文献2に示される、真空手段によってゴム型のキャビティ内を直接減圧する方法によると、キャビティ内を減圧することが困難になる場合があることが判明した。例えば、成形する成形品が大型化する場合、成形する成形品の形状が複雑化する場合等には、ゴム型等の成形型を3つ以上の分割型部に分割することが想定される。この場合に、3つ以上の分割型部同士の間の分割面(又はパーティングライン)が広範囲に配置され、分割面の全体を閉じることが難しくなる。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、減圧バッグによって成形型の型締め及び成形型のキャビティ内の減圧状態の維持の両方を行うことができるとともに、成形する成形体のサイズ、形状等の自由度を高めることができる電磁波成形装置及び電磁波成形方法を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様は、
成形用材料から成形体が成形されるキャビティ、及び前記キャビティと外表面とに繋がる減圧経路を有する成形型と、
可撓性を有するシート材によって袋形状に形成され、前記成形型を内部に収容する減圧バッグと、
前記キャビティ内の成形用材料及び前記成形型の少なくとも一方を加熱する加熱源と、
前記減圧バッグ内を減圧するとともに、前記減圧経路を介して前記キャビティ内を減圧する減圧ポンプと、
前記減圧バッグ内に一部が配置され、前記減圧経路と前記減圧ポンプとに接続された減圧配管と、を備え、
前記減圧配管には、前記減圧バッグによって閉じられることなく前記減圧ポンプによって前記キャビティ内を減圧するために用いられる先端開口と、前記減圧ポンプによって前記減圧バッグ内を減圧するために用いられ、前記減圧バッグ内が減圧されたときに前記減圧バッグによって閉じられる通気孔とが形成されている、電磁波成形装置にある。
【0011】
本発明の第2態様は、
可撓性を有するシート材によって袋形状に形成された減圧バッグ内に、成形用材料がキャビティ内に配置された成形型が配置される配置工程と、
前記減圧バッグ内及び前記キャビティ内が減圧され、前記減圧バッグが前記成形型に密着して前記減圧バッグによる型締め力が前記成形型に作用する減圧工程と、
前記キャビティ内の成形用材料及び前記成形型の少なくとも一方が加熱されて、前記キャビティ内の成形用材料が溶融する加熱工程と、
前記型締め力が前記成形型に作用する状態において、前記キャビティ内の溶融した成形用材料が冷却されて成形体が成形される冷却工程と、を含み、
前記配置工程においては、前記成形型における前記キャビティに繋がる減圧経路と、前記減圧バッグの外部に配置された減圧ポンプとに接続され、前記キャビティ内を減圧するための先端開口及び前記減圧バッグ内を減圧するための通気孔が形成された減圧配管の一部が、前記減圧バッグ内に配置され、
前記減圧工程においては、前記通気孔を介して前記減圧バッグ内が減圧されるとともに前記先端開口及び前記減圧経路を介して前記キャビティ内が減圧された後、前記減圧バッグによって前記通気孔が閉じられて、前記先端開口及び前記減圧経路を介して前記キャビティ内が減圧される、電磁波成形方法にある。
【発明の効果】
【0012】
(第1態様の電磁波成形装置)
前記電磁波成形装置は、可撓性を有するシート材によって袋状に形成された減圧バッグを用いることにより、成形型の型締め及び成形型のキャビティ内の減圧状態の維持の両方を可能にし、大型、複雑形状等の成形体の成形を可能にする。
【0013】
成形体を成形する際には、減圧バッグ内に、成形用材料がキャビティ内に配置された成形型が配置され、減圧ポンプによって減圧バッグ内及びキャビティ内が減圧される。そして、減圧バッグ内の気体が外部に排出されることにより、減圧バッグが潰れて成形型に密着し、減圧バッグによる型締め力が成形型に作用する。
【0014】
これにより、成形型には、減圧バッグに囲まれた種々の方向から型締め力が作用する。そして、成形型のキャビティ内から成形体を取り出すために、成形型に形成された分割面の全体を適切に閉じることができる。そのため、例えば3つ以上の分割型部に分割された成形型が用いられて、大型、複雑形状等の成形体が成形される場合であっても、減圧バッグによって成形型に型締め力が適切に作用する。
【0015】
また、減圧バッグによる成形型の型締めが行われた状態において、加熱源によってキャビティ内の成形用材料及び成形型の少なくとも一方が加熱される。そして、キャビティ内の成形用材料が発熱し、又はキャビティ内の成形用材料が成形型からの伝熱によって加熱されて、成形用材料が溶融する。その後、成形用材料が冷却されて固化し、成形体が得られる。
【0016】
それ故、前記電磁波成形装置によれば、減圧バッグによって成形型の型締め及び成形型のキャビティ内の減圧状態の維持の両方を行うことができるとともに、成形する成形体のサイズ、形状等の自由度を高めることができる。
【0017】
(第2態様の電磁波成形方法)
前記電磁波成形方法においては、配置工程、減圧工程、加熱工程及び冷却工程が行われて、成形用材料から成形体が成形される。特に、減圧工程においては、可撓性を有するシート材によって袋状に形成された減圧バッグが用いられて、成形型の型締め及び成形型のキャビティ内の減圧状態の維持の両方が行われる。
【0018】
それ故、前記電磁波成形方法によれば、前記電磁波成形装置の場合と同様に、減圧バッグによって成形型の型締め及び成形型のキャビティ内の減圧状態の維持の両方を行うことができるとともに、成形する成形体のサイズ、形状等の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる、電磁波照射源を用いた電磁波成形装置を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1にかかる、減圧バッグ内の減圧を行う前の、電磁波照射源を用いた電磁波成形装置を示す、
図1のII-II断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1にかかる、減圧バッグ内の減圧を行った後の、電磁波照射源を用いた電磁波成形装置を示す、
図1のIII-III断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1にかかる、複数の分割型部に分割された成形型を示す断面斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態1にかかる、他の成形型を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1にかかる、減圧バッグが開けられた状態の電磁波成形装置を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態1にかかる、減圧バッグの開口部を閉じる開口チャックの周辺を拡大して示す斜視断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態1にかかる、成形体の一例を示す斜視断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態1にかかる、他の電磁波成形装置を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態1にかかる、誘電加熱源を用いた電磁波成形装置を示す断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態1にかかる、減圧バッグ内の減圧を行う前の、誘電加熱源を用いた電磁波成形装置を示す、
図10のXI-XI断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態1にかかる、減圧バッグ内の減圧を行った後の、誘電加熱源を用いた電磁波成形装置を示す、
図10のXII-XII断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態2にかかる、減圧バッグ内の減圧を行う前の、電磁波照射源を用いた電磁波成形装置を示す、
図1のII-II断面相当図である。
【
図14】
図14は、実施形態2にかかる、減圧バッグ内の減圧を行った後の、電磁波照射源を用いた電磁波成形装置を示す、
図1のIII-III断面相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前述した電磁波成形装置及び電磁波成形方法にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態の電磁波成形装置1は、
図1~
図3及び
図10~
図12に示すように、成形型2、減圧バッグ3、加熱源6A,6B及び減圧ポンプ4を備える。成形型2は、成形用材料80から成形体8が成形されるキャビティ20と、キャビティ20と外表面201とに繋がる減圧経路22とを有する。減圧バッグ3は、可撓性を有するシート材30によって袋形状に形成されており、成形型2を内部に収容する。加熱源6A,6Bは、キャビティ20内の成形用材料80及び成形型2の少なくとも一方を加熱する。減圧ポンプ4は、減圧バッグ3内を減圧するとともに、減圧経路22を介してキャビティ20内を減圧する。
【0021】
まず、電磁波成形装置1について詳説する。
図8に示すように、電磁波成形装置1は、例えば、成形体8を少量生産する用途、金型の製作に不向きな複雑形状を有する成形体8を成形する用途、大型の成形体8を成形する用途等に用いてもよい。電磁波成形装置1は、例えば、車両、電化製品、種々の試作品等として用いられる成形体8を成形するために用いてもよい。
図8には、電磁波成形装置1によって成形する成形体8の一例を概略的に示す。
【0022】
(成形型2)
図4に示すように、成形型2は、金属以外の絶縁性を有する種々の材料によって構成される。成形型2には、電磁波Xの照射、交番電界Yの印加等を受けたときに、成形用材料80と異なる加熱特性を有し、かつ成形された成形体8を離型可能な性質を有する種々の材料が用いられる。成形型2は、例えば、ゴム材料によって形成されたゴム型、樹脂材料によって形成された樹脂型、セラミックス材料によって構成されたセラミックス型、セメント材料によって形成されたセメント型、又は石膏材料によって形成された石膏型等によって構成してもよい。
【0023】
ゴム材料には、シリコーンゴム、フッ素ゴム等があり、樹脂材料には、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等があり、セラミックス材料には、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などの無機化合物の成形体8(焼結体)等がある。
【0024】
成形型2は、成形用材料80に比べて電磁波Xを吸収しにくい材料、成形用材料80に比べて電磁波Xを吸収しやすい材料、成形用材料80に比べて誘電損失が小さい材料、成形用材料80に比べて誘電損失が大きい材料等によって成形することができる。誘電損失の値は、絶縁体としての物質の種類に応じて決まる。また、誘電損失は、誘電正接tanδの値に応じて決まる。
【0025】
成形型2は、成形体8の形状を有するマスターモデルの形状を転写して成形してもよく、3Dプリンター等によって三次元形状に形成してもよい。3Dプリンターによって成形型2を形成する場合には、キャビティ20を形成する成形面202に残された、積層による段差形状が平滑になる加工を加えることができる。
【0026】
図4に示すように、成形型2は、2つの分割型部21に分割して形成してもよく、3つ以上の分割型部21に分割して形成してもよい。分割型部21同士の間には、パーティングラインを構成する分割面204が形成されている。成形型2は、
図4に示すように、複数の分割型部21の互いの位置が固定された固定型としてもよく、
図9に示すように、複数の分割型部21の互いの位置が相対的に変化してキャビティ20の容積を縮小可能な可動型としてもよい。
【0027】
成形型2は、全体が同じ材料によって形成された単一型としてもよく、部分的に異なる材料が用いられた複合型としてもよい。複合型は、例えば、
図5に示すように、キャビティ20を形成する成形面202に沿って形成された成形表面層211と、成形型2の成形表面層211以外の部分としての一般部210とによって形成してもよい。この場合に、成形表面層211は、一般部210に比べて電磁波Xを吸収しやすい材料又は誘電損失が大きい材料によって構成する。成形表面層211は、誘電損失を大きくするために、例えば、カーボンブラック、グラファイト、炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、黒鉛及び二酸化マンガンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の物質を含有していてもよい。
【0028】
成形型2のキャビティ20の形状、換言すれば電磁波成形装置1によって成形する成形体8の形状は、製品として用いられる種々の樹脂の成形部品の形状にすることができる。キャビティ20の形状は、種々の形状にしてもよく、例えば、車両のボディの形状、種々のケースの形状、機能部品の形状、円柱、角柱等としてもよい。
【0029】
図4に示すように、成形型2には、成形する成形体8の形状に沿った空間であるキャビティ20と、キャビティ20の適宜箇所に繋がって、キャビティ20内を真空引きするときの真空引き通路となる減圧経路22とが形成されている。成形型2の複数の分割型部21は、キャビティ20内に成形された成形体8の取り出しが可能となる状態で分割されている。
【0030】
減圧経路22は、キャビティ20の成形面202と成形型2の外表面201とを、1箇所において繋ぐだけでなく、複数箇所において繋いでいてもよい。減圧経路22は、キャビティ20における容積が大きな部位の成形面202に開口するように形成してもよい。また、減圧経路22は、キャビティ20の成形面202における、成形用材料80が充填されにくい部位又はキャビティ20内のガス(残留気体)が抜けにくい部位に開口するように形成してもよい。
【0031】
減圧経路22を形成するこれらの部位としては、例えば、
図1に示すように、キャビティ20における行き詰まりとなる端部203等がある。なお、成形型2の外表面201とは、成形型2の外側に位置する表面のことをいう。キャビティ20内のガスには、空気の他、樹脂等から気化してキャビティ20内に残留する物質等がある。
【0032】
成形型2が弾性変形可能なゴム材料によって形成された場合には、減圧バッグ3による型締め力を受けて成形型2が変形してもよい。成形型2が変形する際には、キャビティ20の容積が縮小し、キャビティ20内に残留するガスが抜き出され、キャビティ20内に成形する成形体8の形状が整えられる。
【0033】
図9に示すように、成形型2を構成する複数の分割型部21は、キャビティ20の容積を縮小させるように相対移動可能にしてもよい。キャビティ20は、複数の分割型部21同士の間に形成される。分割型部21同士が組み合わさってキャビティ20が形成された状態においては、減圧バッグ3による型締め力を受けて分割型部21同士が互いに接近すると、キャビティ20の容積が縮小される。一方、成形体8の成形後に分割型部21同士が互いに離されたときには、キャビティ20内から、成形された成形体8が取り出される。
【0034】
(成形用材料80)
図1及び
図2に示すように、成形用材料80の種類は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂の他、金属化合物等を含むセラミックス粒子等としてもよい。セラミックス粒子には、熱可塑性樹脂等の樹脂のバインダーが含有されていてもよい。成形用材料80の形態は、不定形の粒子、所定形状を有する固形物、加熱溶融された液状物等としてもよい。また、粒子、固形物、液状物等の形態を有する成形用材料80は、互いに組み合わされて用いられてもよい。
【0035】
粒状又は固形状の成形用材料80が用いられる場合には、減圧バッグ3内に成形型2が配置される前に、成形用材料80が成形型2のキャビティ20内に配置されていてもよい。また、粒状又は液状の成形用材料80は、減圧バッグ3内に配置された成形型2のキャビティ20内に投入してもよい。また、粒状又は固形状の成形用材料80の一部を、減圧バッグ3の外部において成形型2のキャビティ20内に配置し、粒状の成形用材料80の残部又は液状の成形用材料80は、減圧バッグ3内に配置された成形型2のキャビティ20内に配置してもよい。
【0036】
(加熱源6A,6B)
図1及び
図3に示すように、加熱源6A,6Bは、減圧バッグ3の表面に電磁波Xを照射する電磁波照射源6A、又は、
図12に示すように、成形型2の両側に配置された一対の電極61間に加わる交流電圧によって、キャビティ20内の成形用材料80及び成形型2に交番電界Yを印加する誘電加熱源6Bによって構成されている。電磁波照射源6Aは、電磁波Xとしての近赤外線又はマイクロ波を用いたものとし、誘電加熱源6Bは、一対の電極61によって交番電界Yを発生させる、電磁波としての高周波を用いたものとする。
図1~
図3は、電磁波照射源6Aが用いられた電磁波成形装置1について示し、
図10~
図12は、誘電加熱源6Bが用いられた電磁波成形装置1について示す。
【0037】
近赤外線は、0.78μm~2μmの波長領域を含む電磁波Xとして表され、マイクロ波は、0.1mm~1mの波長領域を含む電磁波Xとして表され、高周波は、1m~100mの波長領域を含む電磁波として表される。加熱源6A,6Bは、成形用材料80、成形型2及び減圧バッグ3の各材質に応じて、最適なものが選択される。
【0038】
成形用材料80に比べて成形型2及び減圧バッグ3が近赤外線を透過しやすい性質を有する場合には、
図1及び
図3に示すように、近赤外線を利用した電磁波照射源6Aを用いてもよい。この場合は、例えば、成形型2及び減圧バッグ3に透明又は半透明のゴム材料を用い、成形用材料80に不透明の樹脂材料を用いる場合として想定される。この場合には、減圧バッグ3の表面から成形型2及び成形用材料80に向けて近赤外線が照射され、減圧バッグ3及び成形型2を透過した近赤外線が成形用材料80に吸収されて、成形用材料80が発熱し加熱される。
【0039】
一方、近赤外線を利用した電磁波照射源6Aは、成形用材料80及び一般部210に比べて近赤外線を吸収しやすい成形表面層211が成形型2に形成されている場合に用いてもよい。この場合には、成形用材料80は、近赤外線によって発熱した成形表面層211からの熱伝導を受けて加熱される。
【0040】
成形用材料80の誘電損失が成形型2及び減圧バッグ3の誘電損失に比べて大きい場合には、
図1及び
図3に示すように、マイクロ波を利用した電磁波照射源6Aを用いてもよい。この場合は、例えば、成形用材料80に誘電性を高くするための物質が添加された場合として想定される。この場合には、減圧バッグ3の表面から成形型2及び成形用材料80に向けてマイクロ波が照射され、減圧バッグ3及び成形型2を透過したマイクロ波が成形用材料80に吸収されて、誘電損失によって成形用材料80が発熱し加熱される。また、この場合には、成形用材料80は、マイクロ波によって発熱した成形型2からの熱伝導を受けて加熱されてもよい。
【0041】
一方、マイクロ波を利用した電磁波照射源6Aは、成形用材料80及び一般部210に比べて誘電損失が大きい成形表面層211が成形型2に形成されている場合、又は成形用材料80の誘電損失に比べて成形型2の誘電損失が大きい場合に用いてもよい。これらの場合には、成形用材料80は、誘電損失によって発熱した成形表面層211又は成形型2からの熱伝導を受けて加熱される。
【0042】
成形用材料80の誘電損失が成形型2及び減圧バッグ3の誘電損失に比べて大きい場合には、
図12に示すように、高周波を利用した誘電加熱源6Bを用いてもよい。この場合は、例えば、成形用材料80に誘電性を高くするための物質が添加された場合として想定される。この場合には、成形型2が収容された減圧バッグ3の両側に配置された一対の電極61に高周波の交流電圧が印加され、成形用材料80、成形型2及び減圧バッグ3に高周波の交流電圧による交番電界Yが印加されたときに、誘電損失によって成形用材料80が発熱し加熱される。
【0043】
一方、高周波を利用した誘電加熱源6Bは、成形用材料80及び一般部210に比べて誘電損失が大きい成形表面層211が成形型2に形成されている場合、又は成形用材料80の誘電損失に比べて成形型2の誘電損失が大きい場合に用いてもよい。これらの場合には、成形用材料80は、誘電損失によって発熱した成形表面層211又は成形型2からの熱伝導を受けて加熱される。
【0044】
また、
図12に示すように、一対の電極61は、成形型2の複数の分割型部21の外側から、複数の分割型部21を押圧するために用いてもよい。この場合には、一対の電極61を利用して、分割型部21同士が互いに離れないように、成形型2の型締めを行うことができる。この場合には、複数の分割型部21が、減圧バッグ3による型締め力と一対の電極61による型締め力とを受けることになり、複数の分割型部21の型締めがより効果的に行われる。
【0045】
(他の加熱源)
また、図示は省略するが、加熱源には、3MHzよりも小さな周波数の電磁波、換言すれば100mを超える波長領域を含む電磁波を用いた誘導加熱源を用いてもよい。この場合には、電気伝導性を有する導電部材が内部又は外部に配置された成形型を用いる。導電部材は、成形型の材料に含有された導電性フィラーであってもよく、成形型の外部に配置されたプレート等であってもよい。
【0046】
誘導加熱源においては、導電部材に交番磁界を形成するための誘導加熱コイルが用いられる。そして、誘導加熱コイルに流れる、3MHzよりも小さな周波数の交流電流によって、導電部材に交番磁界が形成され、交番磁界に伴う渦電流によって導電部材が発熱する。これにより、導電部材からの伝熱によってキャビティ20内の成形用材料80が加熱される。
【0047】
また、電磁波照射源6A、誘電加熱源6B又は誘導加熱源を用いてキャビティ20内の成形用材料80を加熱する際には、通電によって発熱するヒータ、温風を発生させる温風加熱源等を併用して、成形型2を介してキャビティ20内の成形用材料80を加熱してもよい。この場合には、成形用材料80の加熱温度の部分的な偏りを抑制し、成形用材料80の全体ができるだけ均一に加熱されるようにすることができる。誘電加熱源6Bを用いる場合には、ヒータは一対の電極61内に設けてもよい。また、この場合には、一対の電極61内には、キャビティ20内の成形用材料80が溶融した後に、成形型2を冷却するための冷却水が流れる冷却流路を形成してもよい。
【0048】
(減圧ポンプ4)
図1に示すように、減圧ポンプ4は、真空ポンプとも呼ばれ、減圧バッグ3内及び成形型2のキャビティ20内の真空引きを行うものである。減圧ポンプ4は、減圧バッグ3内のガス(残留気体)を吸い出して、減圧バッグ3内及び成形型2のキャビティ20内を大気圧よりも低い減圧状態(真空状態)にする。
【0049】
減圧バッグ3内のガスが吸い出されるときには、減圧バッグ3が撓んでしぼむことによって、減圧バッグ3から成形型2に圧力が作用し、成形型2の複数の分割型部21が相対的に移動することが防止される。そして、減圧バッグ3によって成形型2が型締めされる。また、成形型2のキャビティ20内も減圧状態になることによって、キャビティ20内にガスが残らないようにし、キャビティ20内に成形される成形体8に空洞、欠け等が形成されないようにする。
【0050】
(減圧配管5)
図1に示すように、本形態の電磁波成形装置1は、減圧ポンプ4によって減圧バッグ3内を減圧するための減圧配管5を備える。減圧配管5は、減圧バッグ3内に配置された成形型2の減圧経路22と、減圧バッグ3の外部に配置された減圧ポンプ4とに接続されている。減圧配管5の一部は減圧バッグ3内に配置されており、減圧配管5の残部は減圧バッグ3の外部に配置されている。減圧配管5は、減圧ポンプ4によって、減圧バッグ3内の真空引きと成形型2のキャビティ20内の真空引きとを行うために用いられる。換言すれば、本形態の減圧配管5は、成形型2のキャビティ20内と減圧バッグ3内との両方を減圧する構成を有する。
【0051】
減圧配管5の先端部51は、成形型2の外表面201における、減圧経路22の形成部位に形成された装着部23に装着されるよう構成されている。減圧配管5の先端部51と成形型2の装着部23とは、繰り返し着脱可能な形状に形成されている。減圧配管5には、その流路50を開閉することが可能な、後述するバルブ53が設けられていてもよい。本形態の減圧配管5は、減圧ポンプ4に接続される側の部位にフレキシブル配管部54を有する。
【0052】
(減圧バッグ3)
図6及び
図7に示すように、減圧バッグ3を構成するシート材30は、可撓性を有するシリコーンフィルムによって形成されている。シリコーンフィルムは、シリコーンシート、シリコーンゴムフィルム、シリコーンゴムシート等とも呼ばれる。シート材30には、透明又は半透明のシリコーンフィルムを用いることができる。この場合には、成形型2に透明又は半透明のシリコーンゴムを用いることができる。そして、減圧バッグ3の外部から、減圧バッグ3及び成形型2を透かし見て、キャビティ20内の成形用材料80の成形状態を確認することができる。
【0053】
減圧バッグ3は、成形用材料80に比べて近赤外線を透過しやすい材料、又は成形用材料80もしくは成形型2に比べて誘電損失が小さい材料によって構成してもよい。また、成形表面層211が形成された成形型2を用いる場合には、減圧バッグ3は、成形表面層211に比べて近赤外線を透過しやすい材料、又は成形表面層211に比べて誘電損失が小さい材料によって構成してもよい。
【0054】
減圧バッグ3を構成するシート材30は、可撓性だけでなく、伸縮性も有していることが好ましい。シート材30が伸縮性も有することにより、減圧バッグ3が成形型2に、より密着しやすくすることができる。また、シート材30は、非粘着性又は離型性を有し、成形型2等から容易に離れることが好ましい。
【0055】
シート材30は、シリコーンフィルム以外にも、可撓性及び伸縮性を有する種々のゴムフィルムによって構成してもよい。また、シート材30は、少なくとも可撓性を有する樹脂フィルムによって構成してもよい。シート材30には、耐熱性に優れた材料を用いることが好ましい。シート材30は、例えば、フッ素ゴムフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム等によって構成してもよい。
【0056】
減圧バッグ3は、折り返された1枚のシート材30の適宜箇所を接着剤によって接着して形成してもよい。また、減圧バッグ3は、2枚のシート材30を接着剤によって接着して形成してもよい。減圧バッグ3は、樹脂のシート材30を用いて形成する場合には、シート材30を溶融させて接合して形成してもよい。
【0057】
減圧バッグ3は、少なくとも成形型2の全体が収容される大きさに形成されている。減圧バッグ3は、成形型2の出し入れを可能にするための開口部31と、開口部31を閉じて、減圧バッグ3内を密封するための開口チャック32とを有する。また、減圧バッグ3には、減圧配管5が挿入された挿入口33が形成されており、挿入口33の周縁は封止材によって封止されている。
【0058】
図7に示すように、開口部31は、四角形に形成された減圧バッグ3の1辺に形成されている。開口チャック32は、減圧バッグ3における、開口部31を形成するシート材30の一対の端部を挟み込んで封止するものである。開口チャック32は、溝が形成された雌側チャック部321と、溝に嵌合される凸部が形成された雄側チャック部322との組み合わせによって形成されている。
【0059】
また、成形型2が大型になる場合等には、減圧バッグ3は、成形型2及び減圧配管5の両側に一対のシート材30を配置した後、一対のシート材30の周縁を閉じて形成してもよい。換言すれば、成形型2及び減圧配管5が一対のシート材30の間に配置された後に、一対のシート材30の周縁を密閉性のあるジッパー等によって閉じて、成形型2及び減圧配管5の一部が内部に配置された減圧バッグ3を形成してもよい。
【0060】
(減圧バッグ3及び減圧配管5の通気孔52)
図6に示すように、減圧バッグ3は、真空パックとも呼ばれ、減圧バッグ3内を大気圧よりも低い減圧状態(真空状態)に維持することができるものである。減圧バッグ3は、成形型2を型締めする機能と、成形型2のキャビティ20内を減圧状態に維持する機能とを有する。
【0061】
図1、
図3及び
図6に示すように、本形態の減圧配管5は、減圧バッグ3内を減圧するための通気孔52を有する。通気孔52は、減圧配管5における、減圧バッグ3内に配置される部位の側面に形成されている。減圧配管5においては、先端部51の先端開口511から成形型2のキャビティ20内の真空引きが可能であるとともに、通気孔52から減圧バッグ3内の真空引きが可能である。減圧配管5の先端部51の先端開口511及び通気孔52は、減圧ポンプ4によって真空引きを行うための吸引口となる。
【0062】
減圧ポンプ4によって減圧バッグ3内の真空引きを行うときには、減圧配管5の先端部51の先端開口511からキャビティ20内の真空引きが行われると同時に、減圧配管5の通気孔52から減圧バッグ3内の真空引きが行われる。このとき、減圧ポンプ4と減圧配管5の通気孔52との距離が減圧ポンプ4と減圧配管5の先端部51の先端開口511との距離よりも短い、減圧バッグ3内の隙間がキャビティ20内の隙間よりも大きい等の理由により、通気孔52から吸引されるガスの流量が先端開口511から吸引されるガスの流量よりも多くなる。そして、キャビティ20内が減圧される速度よりも減圧バッグ3内が減圧される速度が速くなり、減圧バッグ3内のガス抜きがキャビティ20内のガス抜きよりも先に終わる。
【0063】
また、
図3に示すように、減圧バッグ3内のガスがなくなるに連れて減圧バッグ3のシート材30が、減圧配管5及び成形型2に密着していく。減圧バッグ3内のガスがなくなっていく過程、又は減圧バッグ3内のガスがほとんどなくなったときに、減圧バッグ3のシート材30によって通気孔52が塞がれる。通気孔52が塞がれると、減圧ポンプ4によって真空引きが行われる部位は、減圧配管5の先端部51の先端開口511のみとなり、この先端開口511からキャビティ20内のガスが吸引される。こうして、減圧バッグ3によって成形型2の型締めが行われるとともに、キャビティ20内のガスが適切に吸引される。
【0064】
このような減圧配管5の側面に形成された通気孔52を、真空引きを行うための吸引口として使用する工夫により、極めて簡単な構造によって、減圧バッグ3内及びキャビティ20内を効果的に減圧することができる。そして、キャビティ20内の真空度を高めることができる。
【0065】
なお、電磁波成形装置1においては、減圧ポンプ4に繋がる減圧配管5を2系統の分岐配管に分岐し、第1の分岐配管を成形型2の減圧経路22に接続するとともに、第2の分岐配管を減圧バッグ3に接続する構成を採用してもよい。
【0066】
図1及び
図6に示すように、通気孔52は、減圧配管5における、減圧バッグ3内に配置される部位の側面の1箇所に形成してもよく、複数箇所に形成してもよい。通気孔52は、減圧バッグ3内に成形型2が配置された状態において、成形型2によって塞がれず、かつ減圧バッグ3によって直ちに塞がれない位置に形成されている。通気孔52は、減圧配管5における、減圧バッグ3内に配置される部位の側面の、減圧バッグ3を構成するシート材30に対向する部位を除く部位に形成することが好ましい。具体的には、通気孔52は、例えば、減圧配管5における、減圧バッグ3内に配置される部位の側面の、シート材30と平行な方向又はシート材30に対して傾斜する方向に形成することができる。
【0067】
減圧配管5は、減圧ポンプ4に対して着脱可能であってもよい。この場合には、
図1及び
図6に示すように、減圧配管5には、減圧配管5が減圧ポンプ4から外されたときに、減圧バッグ3内の減圧状態を維持するためのバルブ53を設けることが好ましい。成形型2、減圧バッグ3、減圧配管5及びバルブ53は、減圧ポンプ4から切り離された一つのセットとして扱うことができる。バルブ53には、作業者の手動操作によって開閉されるボールバルブ、ニードルバルブ等が用いられる。
【0068】
減圧ポンプ4から減圧配管5が外されるときには、バルブ53によって減圧配管5の流路50が閉じられ、減圧バッグ3内の圧力が維持される。減圧バッグ3内が減圧された状態においてバルブ53によって減圧配管5の流路50が閉じられると、減圧バッグ3が成形型2及び減圧配管5に密着する状態が維持され、成形型2に型締め力が作用する状態が維持される。
【0069】
減圧ポンプ4から、減圧バッグ3及び成形型2に配置された減圧配管5が外されることにより、成形体8の成形後に成形型2内の成形用材料80が冷却されて固化するまでの間に、減圧ポンプ4を、別の減圧バッグ3、成形型2及び減圧配管5が用いられた別の成形体8の成形に使用することができる。そして、減圧バッグ3内に配置された成形型2を任意の冷却場所に移動させることができる。また、成形型2及び成形用材料80を冷却する場所及び時間を容易に確保することができる。
【0070】
(電磁波成形方法)
次に、電磁波成形装置1を用いた電磁波成形方法について詳説する。
電磁波成形方法においては、配置工程、減圧工程、加熱工程及び冷却工程が行われて、成形用材料80から成形体8が成形される。
【0071】
(配置工程)
配置工程においては、
図2及び
図6に示すように、可撓性を有するシート材30によって袋形状に形成された減圧バッグ3内に、成形用材料80がキャビティ20内に配置された成形型2が配置される。
【0072】
粒子状の成形用材料80を使用する場合には、キャビティ20を形成する凹部に成形用材料80が配置された後に、複数の分割型部21を互いに組み合わせてもよい。また、分割型部21に形成された減圧経路22又は投入口(図示略)から、互いに組み合わされた分割型部21によるキャビティ20内に粒子状の成形用材料80が投入されてもよい。また、成形用材料80の一部は、減圧バッグ3内に配置された成形型2のキャビティ20内に、減圧バッグ3の外部から投入してもよい。
【0073】
図2及び
図6に示すように、配置工程においては、減圧ポンプ4に減圧配管5が接続され、減圧配管5の一部が減圧バッグ3内に配置されて、減圧バッグ3における、減圧配管5の挿入口33が封止された状態が形成されている。そして、減圧バッグ3の開口部31から、成形用材料80が配置された成形型2が減圧バッグ3内に挿入され、減圧配管5の先端部51に、成形型2の装着部23が装着される。減圧バッグ3は、可撓性を有しているため、成形型2の大きさ及び形状に応じて任意に変形することができる。減圧バッグ3内に成形型2が配置された後には、減圧バッグ3の開口部31が開口チャック32によって閉じられる。これにより、成形型2が配置された減圧バッグ3の内部が密閉される。
【0074】
(減圧工程)
図3に示すように、減圧工程においては、減圧バッグ3内及びキャビティ20内が減圧され、減圧バッグ3が成形型2に密着して減圧バッグ3による型締め力が成形型2に作用する。減圧工程においては、減圧ポンプ4によって減圧配管5を介して減圧バッグ3内のガス及び成形型2のキャビティ20内のガスが吸引される。このとき、減圧配管5の通気孔52から減圧バッグ3内のガスが吸引され、また、減圧配管5の先端部51の先端開口511からキャビティ20内のガスが吸引される。そして、減圧バッグ3によって通気孔52が閉じられて、減圧バッグ3内のガス抜きが停止された後、キャビティ20内のガス抜きが継続される。
【0075】
より具体的には、キャビティ20内の圧力損失が大きい等の理由により、減圧ポンプ4による減圧が開始された後、通気孔52が塞がれていない間は、キャビティ20内のガスは吸引されにくい。換言すれば、減圧ポンプ4によって、減圧配管5の先端部51の先端開口511からのキャビティ20内のガスの吸引力に比べて、減圧配管5の通気孔52からの減圧バッグ3内のガスの吸引力が強くなる。ただし、減圧配管5の通気孔52から減圧バッグ3内のガスが吸引されるときには、減圧配管5の先端部51の先端開口511からキャビティ20内のガスも吸引される。
【0076】
減圧バッグ3内が減圧されて減圧バッグ3がしぼんでくると、減圧バッグ3のシート材30が減圧配管5及び成形型2に密着してくる。そして、
図3に示すように、減圧バッグ3がしぼむ過程において、シート材30によって通気孔52の全体が閉じられたときには、減圧配管5の先端部51の先端開口511のみが開口した状態になり、減圧配管5の先端部51の先端開口511からキャビティ20内が減圧される。
【0077】
(加熱工程)
加熱工程においては、キャビティ20内の成形用材料80及び成形型2の少なくとも一方が加熱されて、キャビティ20内の成形用材料80が溶融する。加熱工程においては、電磁波照射源6A又は誘電加熱源6Bが用いられる。電磁波照射源6Aとして近赤外線が用いられる場合には、キャビティ20内の成形用材料80が近赤外線を吸収することによって、成形用材料80が発熱して溶融する。
【0078】
電磁波照射源6Aとしてマイクロ波が用いられる場合には、マイクロ波による誘電損失によって成形型2が発熱し、成形型2からの伝熱によってキャビティ20内の成形用材料80が加熱される。また、誘電加熱源6Bによる高周波が用いられる場合には、高周波の交番電界Yによる誘電損失によって成形型2が発熱し、成形型2からの伝熱によってキャビティ20内の成形用材料80が加熱される。
【0079】
また、近赤外線もしくはマイクロ波の電磁波X又は高周波の交番電界Yのいずれを用いる場合においても、成形型2に成形表面層211が形成されているときには、成形表面層211を発熱させ、成形表面層211からの伝熱によってキャビティ20内の成形用材料80が加熱されてもよい。
【0080】
加熱工程においては、減圧バッグ3から成形型2に型締め力が継続して作用するよう、減圧ポンプ4による真空引きを継続することが好ましい。
図9に示すように、キャビティ20の容積を縮小可能な成形型2が用いられる場合には、加熱工程においてキャビティ20内の成形用材料80が溶融すると、減圧バッグ3による型締め力を受けて、成形型2を構成する複数の分割型部21同士が互いに接近する。また、弾性変形可能な成形型2が用いられる場合には、キャビティ20内の成形用材料80が溶融すると、減圧バッグ3による型締め力を受けて、成形型2が変形してキャビティ20の容積が縮小されることもある。
【0081】
(冷却工程)
冷却工程においては、型締め力が成形型2に作用する状態において、キャビティ20内の溶融した成形用材料80が冷却されて固化し、成形体8が得られる。冷却工程においては、減圧バッグ3、成形型2及び成形用材料80に残留する熱が、空気の自然対流によって放熱されてもよく、ファン等による空気の強制対流によって放熱されてもよい。
【0082】
冷却工程においては、減圧ポンプ4から、減圧バッグ3及び成形型2に配置された減圧配管5が外された状態で、成形型2を放置してもよい。このときには、減圧配管5に設けられたバルブ53が閉じられて、減圧配管5の流路50及び減圧バッグ3内の減圧状態が維持された状態で、減圧ポンプ4が減圧配管5から外される。
【0083】
加熱工程及び冷却工程においては、一対の電極61を、成形型2の複数の分割型部21の外側から、複数の分割型部21を押圧するために用いてもよい。そして、成形型2には、減圧バッグ3による型締め力と一対の電極61による型締め力とを作用させることができる。
【0084】
成形型2のキャビティ20内の成形用材料80が冷却されて固化したときには、減圧バッグ3の開口部31から開口チャック32が外され、開口部31から成形型2が取り出される。そして、成形型2の複数の分割型部21が互いに離され、分割型部21同士の間から成形後の成形体8が取り出される。
【0085】
(作用効果)
本形態の電磁波成形装置1は、可撓性を有するシート材30によって袋状に形成された減圧バッグ3を用いることにより、成形型2の型締め及び成形型2のキャビティ20内の減圧の両方を可能にし、大型、複雑形状等の成形体8の成形を可能にする。
【0086】
成形体8を成形する際には、減圧バッグ3内に、成形用材料80がキャビティ20内に配置された成形型2が配置され、減圧ポンプ4によって減圧バッグ3内及びキャビティ20内が減圧される。そして、減圧バッグ3内のガスが外部に排出されることにより、減圧バッグ3が潰れて(しぼんで)成形型2に密着し、減圧バッグ3による型締め力が成形型2に作用する。
【0087】
これにより、成形型2には、減圧バッグ3に囲まれた種々の方向から型締め力が作用する。そして、分割型部21同士の間に形成された分割面204の全体を適切に閉じることができる。そのため、例えば3つ以上の分割型部21に分割された成形型2が用いられて、大型、複雑形状等の成形体8が成形される場合であっても、減圧バッグ3によって型締め力が適切に作用する。
【0088】
また、減圧バッグ3が成形型2に密着したときには、成形型2のキャビティ20内が減圧されている一方、減圧バッグ3の外部は大気圧とすることができる。これにより、減圧バッグ3の外部とキャビティ20内との差圧によって、減圧バッグ3から成形型2へ作用する型締め力をより強くすることができる。
【0089】
また、減圧配管5に形成された通気孔52から減圧バッグ3内が減圧されることにより、減圧バッグ3内が先に減圧された後に、キャビティ20内に残留するガスが効果的に抜き出される。これにより、簡単な構成の電磁波成形装置1によって、キャビティ20内の真空度を効果的に高めることができる。
【0090】
また、成形する成形体8によっては、成形用材料80が充填されにくい、成形体8の端部203が複数存在する等の複雑な形状があり、キャビティ20内を減圧するための真空引きを、成形型2の外表面201の複数箇所から行いたい場合がある。この場合において、成形型2が減圧バッグ3内に配置される構成により、減圧バッグ3内の全体が減圧されるため、成形型2及び減圧配管5に特別な構造上の工夫をしなくても、キャビティ20内の真空引きを成形型2の外表面201の複数箇所から容易に行うことができる。
【0091】
また、減圧バッグ3による成形型2の型締めが行われた状態において、電磁波照射源6A又は誘電加熱源6Bによってキャビティ20内の成形用材料80及び成形型2の少なくとも一方が加熱される。そして、キャビティ20内の成形用材料80が発熱し、又はキャビティ20内の成形用材料80が成形型2からの伝熱によって加熱されて、成形用材料80が溶融する。その後、成形用材料80が冷却されて固化し、成形体8が得られる。
【0092】
それ故、本形態の電磁波成形装置1及び電磁波成形方法によれば、減圧バッグ3によって成形型2の型締め及び成形型2のキャビティ20内の減圧状態の維持の両方を行うことができるとともに、成形する成形体8のサイズ、形状等の自由度を高めることができる。
【0093】
<実施形態2>
本形態においては、減圧バッグ3から成形型2に、型締め力をより適切に作用させるための工夫をしている。
成形型2には、形成されたキャビティ20の形状によって、部分的な強度の違いがある。特に、キャビティ20の形状に応じて、成形型2を構成する材料の厚みが薄い部位の強度が、他の部位に比べて低くなる。そして、減圧バッグ3によって成形型2が型締めされるときには、成形型2の部分的な強度の違いによって成形型2が変形しやすくなる。
【0094】
(型締め部材25)
本形態においては、キャビティ20の形状を受けて成形型2が変形しやすい場合であっても、一対の型締め部材25を用いて成形型2の強度を補う。成形型2は、キャビティ20を開放可能にするよう、2つ又は3つ以上の分割型部21に分割されている。
図13及び
図14に示すように、本形態の成形型2における、複数の分割型部21の分割方向の両側には、成形型2よりも硬い材料によって構成された型締め部材25が一対に配置される。一対の型締め部材25は、減圧バッグ3内に成形型2が配置されるときに、成形型2を間に挟み込むように成形型2の両側に配置される。そして、一対の型締め部材25は、成形型2とともに減圧バッグ3内に配置される。
【0095】
一対の型締め部材25には、セラミックス等によって構成されたタイル材を用いてもよい。一対の型締め部材25は、成形型2よりも硬い種々の材料から構成することができる。
【0096】
本形態においても、成形型2は、複数の分割型部21が組み合わされた状態において分割型部21同士が相対的に移動不能である固定型としてもよく、複数の分割型部21が組み合わされた状態において分割型部21同士が相対的に移動可能である移動型としてもよい。成形型2を固定型とする場合には、成形型2は、弾性変形可能な材料によって構成し、減圧バッグ3及び一対の型締め部材25による型締め力を受けて変形可能とすることができる。
【0097】
成形型2を移動型とする場合には、成形型2は、種々の材料によって構成し、減圧バッグ3及び一対の型締め部材25による型締め力を受けてキャビティ20の容積を縮小させるように相対移動可能とすることができる。
【0098】
本形態の電磁波成形方法の配置工程においては、減圧バッグ3内に配置される成形型2の両側に、成形型2よりも硬い材料によって構成された型締め部材25が一対に配置される。また、固定型としての成形型2が用いられる場合には、複数の分割型部21の間から成形体8が離型される方向の両側に一対の型締め部材25を配置する。また、移動型としての成形型2が用いられる場合には、複数の分割型部21が相対移動する方向の両側に一対の型締め部材25を配置する。
【0099】
そして、本形態の電磁波成形方法の減圧工程においては、減圧バッグ3から一対の型締め部材25を介して複数の分割型部21に型締め力が作用する。移動型としての成形型2が用いられる場合には、減圧バッグ3及び一対の型締め部材25による型締め力を受けて、複数の分割型部21がキャビティ20の容積を縮小させるように相対移動する。
【0100】
本形態においては、減圧バッグ3による型締め力が一対の型締め部材25を介して複数の分割型部21に作用することにより、成形型2の薄肉部及び厚肉部のいずれに対しても、できるだけ均一に型締め力を作用させることができる。これにより、減圧バッグ3による成形型2の型締めをより適切に行うことができる。
【0101】
本形態の電磁波成形装置1及び電磁波成形方法における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0102】
<他の実施形態>
キャビティ20に連通する減圧経路22の形成部位は、成形型2の外表面201の複数箇所に形成してもよい。この場合には、減圧バッグ3内が真空引きされる際に、複数箇所の減圧経路22からキャビティ20内を真空引きすることができる。特に、複数の減圧経路22は、
図1に示すように、キャビティ20における行き詰まりとなる端部203に連通される位置に形成してもよい。
【0103】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本発明から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1 電磁波成形装置
2 成形型
20 キャビティ
201 外表面
202 成形面
21 分割型部
210 一般部
211 成形表面層
22 減圧経路
23 装着部
25 型締め部材
3 減圧バッグ
30 シート材
31 開口部
32 開口チャック
321 雌側チャック部
322 雄側チャック部
33 挿入口
4 減圧ポンプ
5 減圧配管
51 先端部
511 先端開口
52 通気孔
53 バルブ
6A 電磁波照射源
6B 誘電加熱源
61 電極
8 成形体
80 成形用材料
X 電磁波
Y 交番電界