(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016324
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】能動型ベントのクリック補償を有する聴覚装置
(51)【国際特許分類】
H04R 25/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
H04R25/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021107585
(22)【出願日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】PA202070471
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ ヒアリング エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN Hearing A/S
【住所又は居所原語表記】Lautrupbjerg 7, 2750 Ballerup, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョナス ラウン ハンセン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ベントが開閉される際の音響的不快感を緩和することが可能な能動型ベントのクリック補償を有する聴覚装置及びその作動方法を提供する。
【解決手段】ユーザの外耳道に挿入するための耳栓1に、ベント4を開閉するように構成されたベントバルブ装置6を備える聴覚装置であって、ベントバルブ装置を操作するときにベントによって発せられる音を表す所定のオーディオ信号を取得する信号プロセッサ22は、ベントバルブ装置が操作されるのとほぼ同時に所定のオーディオ信号の位相反転バージョンをレシーバ2に出力することによって、ベントの音を打ち消す。所定のオーディオ信号は、聴覚装置の製造中に取得されてもよく、例えば聴覚装置のフィッティング中に、耳内のマイクロホン9によって拾われてもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴覚装置のユーザの外耳道に挿入するための耳栓を有する聴覚装置であって、
前記聴覚装置は、
第1のマイクロホンと、
信号プロセッサと、
メモリと、
コントローラと、
レシーバと、を備え、
前記耳栓は、ベントであって、前記ベントを開閉するように構成されたベントバルブ装置を有する前記ベントを備え、
前記コントローラは、前記信号プロセッサからの第1の信号に基づいて、前記ベントバルブ装置を第1の位置又は第2の位置に電気的に操作するように構成されており、
前記聴覚装置は、
前記ベントバルブ装置が前記第1の位置と前記第2の位置との間で操作されるときに前記ベントによって発せられる音を表す所定のオーディオ信号を取得し、
所定の前記オーディオ信号を前記メモリに記憶するように構成されており、
前記信号プロセッサは、
前記メモリ内の所定の前記オーディオ信号にアクセスし、
前記ベントバルブ装置が操作されるのとほぼ同時に、所定の前記オーディオ信号の位相反転バージョンを前記レシーバに出力するように構成されている、聴覚装置。
【請求項2】
前記ベントバルブ装置が前記第1の位置へ操作されるときに前記信号プロセッサによって出力される所定の前記オーディオ信号の前記位相反転バージョンは、前記ベントバルブ装置が前記第2の位置へ操作されるときに前記信号プロセッサによって出力される所定の前記オーディオ信号の前記位相反転バージョンとは異なる、請求項1に記載の聴覚装置。
【請求項3】
前記レシーバは、前記耳栓内に配置されている、請求項1又は2に記載の聴覚装置。
【請求項4】
前記ベントバルブ装置の前記第1の位置は、開位置であり、
前記ベントバルブ装置の前記第2の位置は、閉位置である、請求項1から3のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項5】
前記ベントバルブ装置の前記第1の位置は、閉位置であり、
前記ベントバルブ装置の前記第2の位置は、開位置である、請求項1から3のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項6】
所定の前記オーディオ信号の前記位相反転バージョンは、前記ベントバルブ装置が操作される度に前記ベントバルブ装置によって発せられる音を実質的に打ち消すように適応される、請求項1から5のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項7】
所定の前記オーディオ信号は、前記聴覚装置の製造中に取得され、
所定の前記オーディオ信号は、前記聴覚装置の前記信号プロセッサがアクセス可能な前記メモリに記憶される、請求項1から6のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項8】
前記耳栓は、前記レシーバに隣接する第2のマイクロホンを備え、
前記第2のマイクロホンは、前記ベントバルブ装置が操作されるときに前記ベントによって発せられる音を拾うように構成されており、
前記聴覚装置は、前記第2のマイクロホンによって拾われた前記音の表現を、所定の前記オーディオ信号として、前記聴覚装置の前記信号プロセッサがアクセス可能な前記メモリに記憶するように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項9】
前記聴覚装置は、ワイヤレスリモートコントロール信号を受信するためのワイヤレストランシーバを備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の聴覚装置。
【請求項10】
前記ワイヤレストランシーバは、外部装置からのワイヤレス信号を介して、少なくとも一つの指示を受信するように構成されており、
前記指示は、前記信号プロセッサに、
前記ベントバルブ装置を操作するために、前記コントローラに前記第1の信号を送ることと、
前記ベントバルブ装置が操作されるのとほぼ同時に、所定の前記オーディオ信号の位相反転バージョンを前記レシーバに出力することを開始させる、請求項9に記載の聴覚装置。
【請求項11】
聴覚装置の作動方法であって、
前記聴覚装置は、
第1のマイクロホンと、
信号プロセッサと、
メモリと、
レシーバと、
前記聴覚装置の耳栓に形成されたベント内に配置されたベントバルブ装置の位置を操作するためのコントローラと、を備え、
前記方法は、
前記ベントバルブ装置が位置を変えるときの前記ベントの音を表す所定のオーディオ信号を取得するステップと、
所定の前記オーディオ信号を前記メモリに記憶するステップと、
前記ベントバルブ装置を操作するために、前記信号プロセッサから前記コントローラに第1の信号を提供するステップと、
前記ベントバルブ装置が操作されるのとほぼ同時に、所定の前記オーディオ信号の位相反転バージョンを前記レシーバに出力するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記ベントバルブ装置が開位置から閉位置へ位置を変えるときの前記ベントの音の表現を取得するステップは、前記ベントバルブ装置が前記閉位置から前記開位置に位置を変えるときの前記ベントの音の表現を取得するステップとは別である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ベントバルブ装置が位置を変えるときの前記ベントの前記音の表現を取得するステップは、
前記聴覚装置の製造中に実行され、
前記ベントバルブ装置が位置を変える音を決定するステップと、
決定された前記音を記憶に適した表現に変換するステップと、
前記聴覚装置の前記信号プロセッサがアクセス可能な不揮発性メモリに前記表現を記憶するステップと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ベントバルブ装置が位置を変えるときの前記ベントバルブ装置の前記音の表現を取得するステップは、
前記聴覚装置のフィッティング中に実行され、
前記レシーバに隣接する第2のマイクロホンを設けるステップと、
前記コントローラを使用して、前記ベントバルブ装置が位置を変えるように操作するステップと、
前記第2のマイクロホンを使用して、前記ベントバルブ装置が位置を変える前記音を拾うステップと、
前記第2のマイクロホンからの前記音を記憶に適した表現に変換するステップと、
前記聴覚装置の前記信号プロセッサがアクセス可能な不揮発性メモリに前記表現を記憶するステップと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記聴覚装置には、ワイヤレストランシーバが設けられており、
前記方法は、
前記ワイヤレストランシーバを介して、前記ベントバルブ装置を操作する指示を受信するステップと、
前記ベントバルブ装置を操作するために、前記信号プロセッサから前記コントローラへの前記第1の信号を生成するステップと、
前記レシーバへの前記ベントバルブ装置が位置を変える前記音の位相反転バージョンを表す所定の前記オーディオ信号を生成するステップと、を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、聴覚装置に関する。より具体的には、本発明は、制御可能なベントを有する聴覚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
聴覚装置は、人に音を提供したり、人の聴覚損失を軽減するように適応された小さな電子装置である。通常、この機能は、指示に従って聴覚装置内の一つ又は複数のマイクロホンによって拾われた周囲からの音を増幅し、レシーバと称される聴覚装置内の小型ラウドスピーカによって音響的にその音を再生することによって実施される。人によって知覚されにくい周波数がこれらの周波数においてその人の聴覚閾値を超えるレベルまで増幅されるように、指示を用いて、その人の聴覚損失を軽減させるために聴覚装置の増幅が適応される。
【0003】
現代の聴覚装置は、マイクロホンからのアナログ信号をサンプリングし、それらをアナログ-デジタルコンバータでデジタル信号に変換することによって、デジタル領域で増幅を行う機能を有する。その後、デジタル信号は、処理のために聴覚装置内のデジタル信号プロセッサに供給され、処理されたデジタル信号は、次いで、レシーバを駆動するのに適した電気信号に変換され、レシーバは、処理された電気信号を音として再生する。デジタル領域において信号を処理することは、幾つかの利点を有する。主な利点は、聴覚装置のパワー及び能力にかかわらず、聴覚装置における電子機器の物理的なサイズを非常に小さく抑えることができることである。聴覚装置の動作における所望の変更、例えば、指示の変更は、単に、別のプログラムをロードして実行すること、又は信号プロセッサにおける主要な処理パラメータを変更することにすぎない。例えばフィードバック抑制のようなアナログ領域で実行することが困難又は全く不可能な信号処理も、デジタル領域で実行することは比較的容易である。デジタル信号処理の更なる利点は、例えば、使用中に聴覚装置の選択された部分を一時的に起動する又は一時停止するためのロジックオン/オフ動作が簡単に利用できることである。
【0004】
近年、聴覚装置にワイヤレス通信を取り入れることにより、聴覚装置をリモートコントロールすることが可能になり、通常、近距離の低電力通信に適したデジタル通信プロトコルを使用している携帯電話やTVなどの外部ソースからの音声信号のワイヤレスストリーミングが提供される。リモートコントロールによって、聴覚装置の増幅を特定の状況に適合するように調整することが可能となり、会話、コンサート、アウトドアなどに適したモードといった特定の動作モードがユーザによって選択可能である。ストリーミングされた音を受信する機能を有する聴覚装置の中には、増幅の指示の提供を欠くものもある。
【0005】
多くの聴覚装置は、例えば、外耳道から作製された型に合わせて耳栓を作製することによって、あるいは、例えば、シリコーンベースのエラストマ材料といった弾性材料から作製された一般的な形状のドームとして耳栓を作製することによって、ユーザの外耳道にぴったりとフィットするように作製されたプラグ又はシェルとして形成された耳栓を備える。耳栓は、快適性、安定性、及び衛生上の理由から、通常、滑らかな外面を有するプラスチック材料から作製される。あるタイプの聴覚装置では、レシーバが、ユーザの耳の後ろに装着されたハウジング内に取り付けられており、再生のためにハウジング内のレシーバから外耳道内の出口に音を伝える短い管を介して、外耳道にフィットしている耳栓に接続されている。このタイプは、耳掛け型(behind-the-ear)(BTE)聴覚装置として知られている。関連するタイプの聴覚装置では、レシーバが、代わりに耳栓内に取り付けられており、ワイヤを介して聴覚装置ハウジングに接続されている。このタイプは、耳内レシーバ型(receiver-in-ear)(RIE)聴覚装置として知られている。別のタイプの聴覚装置では、電子機器及びマイクロホンが、耳栓内に完全に配置されるように十分に小さく作られており、外耳道内に配置するため、又は完全に配置するための一体型ユニットを形成している。これらの装置は、耳穴型(in-the-ear)(ITE)聴覚装置又は超小型耳穴型(completely-in-canal)(CIC)聴覚装置として知られている。耳栓を外耳道にぴったりとフィットさせる目的は、ひとつには、使用中に耳栓を外耳道内に快適且つ確実に納めておくことであり、ひとつには、不快なフィードバック、即ち「ハウリング」をもたらし得るレシーバからの増幅された音が聴覚装置のマイクロホンへ到達することを排除することである。
【0006】
しかしながら、外耳道内での耳栓がぴったりとフィットすることによっても、いくつかの問題が提示される。耳栓は、外耳道内で閉じた空洞を形成するので、外耳道内に湿気がたまってしまう。これは、聴覚装置の電子機器に危険をもたらし、ユーザに不快感を与える可能性がある。閉じた空洞はまた、閉塞効果、又は「耳閉塞感」効果として知られる効果も生じさせ、ユーザに不快感を与える可能性がある。これは、特にこの効果によってユーザ自身の声の知覚が劇的に変化してしまうからである。これら両方の問題は、聴覚装置の製造中に、ベントと呼ばれる細長い貫通管を耳栓内に配置し、外耳道から耳栓の外側への空気及び湿気用の通路を提供することによって軽減することができる。ベントの寸法は、通常、聴覚装置によって補償される聴力損失の種類及び重症度に合うように適合される。
【0007】
前述のように、聴覚装置のベントは、閉塞を軽減し、快適性を向上させる。これのトレードオフは、指向性及び低周波数の再生に関する性能の低下であり、これら両方の要因は、特に音楽を聴くときに、聴覚装置の音質に大きな影響を及ぼすものである。ベントはまた、聴覚装置のフィードバック経路を損なうこともあるが、これは、聴覚装置の信号プロセッサによって実行される特別なフィードバック抑制アルゴリズムによってある程度防げる場合もある。従って、例えば、ユーザが音楽を聴きたい場合にはベントを閉じ、ユーザが会話に参加したい場合にはベントを開くなど、ユーザの目下のニーズに応じて、開状態から閉状態に変化可能な耳栓内のベントを作ることは有益である。
【0008】
いくつかの聴覚装置では、耳栓は、使用中に外耳道に適合する弾性材料から作られたドームと置き換えられる。このようなドームは、耳栓と比較して非常に軽量で快適であるという利点を有する。ドームは、開いた構成又は閉じた構成を有してよく、開いた構成は、耳栓内でベントの機能性を提供し、閉じた構成は、ベントのない閉じた耳栓の機能性を提供する。
【0009】
最近では、いくつかの聴覚装置製造業者が、即ち、ユーザによって操作される電動式のベントバルブ装置を提供することによって、聴覚装置の使用中に耳栓又はドームのベントを開閉することを可能にする能動型ベントを提案している。提案された能動型ベントバルブ装置のいくつかは、双安定型ベントバルブ装置として考案されている。双安定型ベントバルブ装置は、通常、ベントバルブ装置内で一方向に電流が印加されると、ベント内の通路を開き、ベントバルブ装置内で逆方向に電流が印加されると、ベント内の通路を閉じる。信号が、ベントバルブ装置の位置を変化させるのに十分な強さを有する、例えば数ミリ秒などの短期間の電流として、ベントバルブ装置に印加される。従って、このようなベントバルブ装置は、ベントバルブ装置が開状態から閉状態へ、又はその逆へ切り換えられる際に、電気信号の提供を必要とするだけなので、ベントバルブ装置の状態が変化する際に、補聴器バッテリから電流を流せばいいだけである。同じように電気的に開閉可能な弾性ドームも提案されている。ベントバルブ装置を電気的に開閉する機構のさらなる詳細は、本出願の範囲外である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ベントバルブ装置を開閉することによって、聴覚装置内のベントの音響インピーダンスを変化させることが、欧州特許第2835987号から知られている。ユーザが操作可能な電磁アクチュエータを用いることにより、ベントは、要求に応じて、閉位置、半開位置、又は開位置に設定され得る。即ち、このベントバルブ装置は、3安定装置である。しかしながら、欧州特許第2835987号は、ベントバルブ装置がその音響インピーダンスを変化させる速度に関して言及しておらず、ベントが開閉される際のユーザへの音響的不快感を緩和するための補償手段を開示していない。
【0011】
通常、ベントが開閉される度に、ベントバルブ装置の作動によって、ユーザの外耳道内ではっきり聞こえるクリック音が発せられる。これは、バルブ装置の動きが非常に速く、それに応じてベントバルブ装置によって引き起こされる外耳道内での急速な圧力変化によるためである。このようなクリック音は、ユーザにとって非常に不快である可能性があり、ベントバルブ装置がベントを閉じているときに生じる閉塞に注意が向いてしまう可能性もある。従って、ベントが開閉する際にベントバルブ装置によって発せられるクリック音に対してある種の補償を提供することが望ましい。本出願では、「音」及び「音波」という概念が、空気の体積、この場合、聴覚装置の耳栓によって外耳道内に閉じ込められた空気の体積における圧力変化を表すために、互換的に使用される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の実施形態によれば、聴覚装置が考案される。この聴覚装置は、聴覚装置のユーザの外耳道に挿入するための耳栓を有する聴覚装置である。当該聴覚装置は、第1のマイクロホンと、信号プロセッサと、メモリと、コントローラと、レシーバとを備え、耳栓は、ベントであって、ベントを開閉するように構成されたベントバルブ装置を有するベントを備え、コントローラは、信号プロセッサからの第1の信号に基づいて、ベントバルブ装置を第1の位置又は第2の位置に電気的に操作するように構成されており、聴覚装置は、ベントバルブ装置が第1の位置と第2の位置との間で操作される際にベントによって発せられる音を表す所定のオーディオ信号を取得し、所定のオーディオ信号をメモリに記憶するように構成されており、信号プロセッサは、メモリ内の所定のオーディオ信号にアクセスし、ベントバルブ装置が操作されるのとほぼ同時に、所定のオーディオ信号の位相反転バージョンをレシーバに出力するように構成されている。
【0013】
このように、ベントバルブ装置が動くことで生じる圧力変化を補償するために聴覚装置のレシーバを用い、ベントバルブ装置の動きと同期してレシーバダイヤフラムを同じ量だけベントバルブ装置とは反対方向に動かして反対の極性の音波を生成することでベントによって発せられる音を打ち消すことによって、ベントのクリック補償が提供される。従って、ベントバルブ装置が一方向にある距離を動くと、レシーバは、ほぼ同時に同じ距離を反対方向へと動き、これによって、ベントバルブ装置の動きによって生じる瞬間的な過圧力/不足圧力を補償するように同量の空気が反対方向へと動かされる。最終的には、ベントバルブ装置の動きからの寄与(contribution)と、所定のオーディオ信号の位相反転バージョンを生成するレシーバからの寄与との和が、ゼロ又はゼロに近くなるという結果になる。ベントのクリックがこのようにして補償されるときにレシーバによって再生される他の音は、影響を受けない。能動型ベントは、信号プロセッサによって制御されるので、ベントクリック補償信号も、信号プロセッサによって有利に生成される。
【0014】
所与の音波と同じ形状及び同じ振幅を有するが位相は反転している別の音波を、当該所与の音波と同時に提供することによって、当該所与の音波を打ち消すことはよく知られた原理である。ベントバルブ装置が操作されるときのベントの音が、その位相を反転させた状態で、ベントバルブ装置自体が操作されるのとほぼ同時に再生されると、その瞬間にベントが発する音は打ち消される。ここで、「ほぼ同時に」という語は、ベントバルブ装置が操作されるときにベントによって発せられる音より1ms未満以前、又は1ms未満以降に、好ましくはベントバルブ装置が操作されるときにベントによって発せられる音より100μs未満以前、又は100μs未満以降に、より好ましくはベントバルブ装置が操作されるときにベントによって発せられる音の10μs未満以前、又は10μs未満以降に、位相反転された音波が生じることを意味するように定義される。
【0015】
聴覚装置の好ましい実施形態において、ベントバルブ装置が第1の位置に操作されるときに信号プロセッサによって出力される所定のオーディオ信号の位相反転バージョンは、ベントバルブ装置が第2の位置に操作されるときに信号プロセッサによって出力される所定のオーディオ信号の位相反転バージョンとは異なる。これは、レシーバによって生成される音が、ベントバルブ装置がとり得る2つの位置に対して異なるという利点を有する。即ち、ベントバルブ装置が開位置から閉位置に操作されるときに第1の音が生成され、ベントバルブ装置が閉位置から開位置に操作されるときに第2の音が生成される。第1の音と第2の音との違いは、第2の音が、第1の音とは異なる位相、異なる(例えば、反転された)振幅、又は異なるスペクトル構成を有することを含んでもよい。ベントバルブ装置が第1の位置へ操作される音を表す音信号は、第1の音信号と称されることがある。ベントバルブ装置が第2の位置へ操作される音は、第2の音信号と称されることがある。例えば、ベントバルブ装置の第1の位置が閉位置であり、ベントバルブ装置の第2の位置が開位置である場合、ベントバルブ装置が開位置から閉位置へ操作される音を表す第1の音信号は、ベントバルブ装置が閉位置から開位置へ操作される音を表す第2の音信号と共に、聴覚装置メモリに有益に記憶される。例えば、ベントバルブ装置の第1の位置が開位置であり、ベントバルブ装置の第2の位置が閉位置である場合、ベントバルブ装置が閉位置から開位置へ操作される音を表す第1の音信号は、ベントバルブ装置が開位置から閉位置へ操作される音を表す第2の音信号と共に、聴覚装置メモリに有益に記憶される。
【0016】
いくつかの実施形態において、レシーバは、聴覚装置の耳栓内に配置されている。これらの実施例は、耳内レシーバ型(RIE)又は耳穴型(ITE)聴覚装置であってもよい。これに関連して、このような聴覚装置は、レシーバをベントに非常に近接させられるという利点を提供するので、ベントのクリック音を同時に補償するために、位相反転された所定のオーディオ信号をレシーバに同時に送出することを単純化できる。
【0017】
対照的に、一部のBTE聴覚装置においては、レシーバは通常、BTEハウジング内に取り付けられ、耳の後ろにあるBTEハウジングの出口と耳栓との間の一つの管を介して、その音出力を提供する。音速が有限であること、及び、ベントが耳栓内に配置されているということに起因して、管の長さは、ベントバルブ装置が操作されるときにベントによって発せられる音を打ち消すためにレシーバによって発せられる位相反転された所定のオーディオ信号のタイミングに影響を及ぼす。位相反転された所定のオーディオ信号のタイミングにおけるこの変動の大きさは、レシーバと耳栓の音出口との間の距離で1センチメートル当たり約30μsの差の大きさである。
【0018】
いくつかの実施形態において、所定のオーディオ信号の位相反転バージョンは、ベントバルブ装置が操作される度にベントバルブ装置が発する音を実質的に打ち消すように適応されている。これは、振幅、タイミング、及び位相の整合に関して、所定のオーディオ信号の位相反転バージョンが、ベントバルブ装置によって発せられる音に非常に類似していることを必要とする。このタスクは、ベントバルブ装置を操作するためのコントローラへの第1の信号と、ベントによって発せられるベントバルブ装置の音を打ち消すために所定のオーディオ信号の位相反転バージョンを発するレシーバへの所定のオーディオ信号と、の両方を生成する信号プロセッサによって有益に実施される。ベントによって発せられる音がこのようにして打ち消されると、ユーザは、前述のような単に開いているベント又は閉じているベントを有することの効果以外に、ベントが開かれる又は閉じられることに気付くことさえないであろう。
【0019】
一実施形態において、所定のオーディオ信号は、聴覚装置の製造中に取得され、所定のオーディオ信号は、聴覚装置の信号プロセッサがアクセス可能なメモリに記憶される。これは、聴覚装置が使用され始める瞬間からベントクリック補償が完全に機能するという利点を有する。例えば音響実験室の防音ボックス内の音響カプラにおける測定によってベントバルブ装置の音を決定することによって、測定が聴覚装置の製品開発中に実行されてもよく、ベントバルブ装置が操作されるときにベントによって発せられる音が、聴覚装置のメモリに記録及び記憶されてもよい。その後、聴覚装置は、ベントバルブ装置が操作される度に、レシーバによってこれらの音の位相反転バージョンを発するように構成される。
【0020】
ほとんどの場合、聴覚装置の製造中に所定のオーディオ信号を取得することによって、十分なベントクリック補償が提供されるが、状況によっては、例えば、医療従事者に所定のオーディオ信号をその場で取得する手助けをしてもらうことは有益であり得る。一部の聴覚装置は、例えば、能動型ノイズ低減、聴覚装置アンチフィードバックシステム(DFS)、又は閉塞キャンセルの目的のために、耳栓内に配置されたレシーバに隣接する第2のマイクロホンを有する。この耳内のマイクロホンは、ベントバルブ装置が操作されるときにベントによって発せられる音を拾うように、有益に使用され、構成されてよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、耳栓は、レシーバに隣接する第2のマイクロホンを備える。第2のマイクロホンは、ベントバルブ装置が操作されるときにベントによって発せられる音を拾うように構成されており、聴覚装置は、第2のマイクロホンによって拾われた音の表現を、所定のオーディオ信号として、聴覚装置の信号プロセッサがアクセス可能なメモリに記憶するように構成されている。この目的のために、耳栓が耳内に配置されている間にユーザの鼓膜に向いた耳内のマイクロホンを使用することによって、例えばフィッティングセッション中に医療従事者によってベントバルブ装置が操作される音を記録することができ、その後、得られた音は、所定のオーディオ信号の位相反転バージョンとして聴覚装置レシーバによって再生されるように、所定のオーディオ信号として聴覚装置のメモリに記憶されてよい。ベントバルブ装置が開位置へ操作される音は、ベントバルブ装置が閉位置へ操作される音とは別に記録されてもよい。これは、聴覚装置が2つの状況を区別し、対応する所定のオーディオ信号の位相反転バージョンを聴覚装置レシーバによって再生するためである。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、聴覚装置は、聴覚装置を動作させるためのワイヤレスリモートコントロール信号を受信するためのワイヤレストランシーバを備える。聴覚装置は、静かな環境、交通騒音、会話、音楽鑑賞などの様々なリスニング目的に適応した、いくつかの選択可能な聴覚プログラムを含むことが好ましい。ユーザの希望に合わせてリモートコントロール信号を生成して送信するためのワイヤレスリモートコントロール装置の存在により、様々なプログラムが選択可能である。ワイヤレスリモートコントロール装置は、専用のワイヤレスリモートコントロール装置、又は、例えば、スマートフォン又は同様のコンシューマ装置で実行されるリモートコントロールアプリであってもよい。ワイヤレスリモートコントロール信号は、例えば、プログラム選択コマンド若しくは音量変更コマンドであってもよく、又は、聴覚装置の耳栓のベント内のベントバルブ装置を開くコマンド若しくは閉じるコマンドであってもよい。各コマンドは、聴覚装置オペレーティングシステムによって実行される1組の所定のコマンドをアクティブ化する。受信したコマンドが特定のプログラムに変更するためのコマンドである場合、1組の所定のコマンドは、聴覚装置の信号プロセッサにおいて様々なパラメータを変更するように構成されてもよく、あるいは、例えばフィードバックキャンセルなどの特定の機能をオン又はオフにするように構成されてもよい。
【0023】
いくつかのプログラム選択コマンドは、特定のプログラムが選択されたときに、ベントバルブ装置を操作する指示を本質的に含んでもよい。例えば、会話目的に合わせて調整されたある聴覚プログラムは、ベントバルブ装置を開位置へ操作することによってベントを開く指示を含んでもよい。これは、その状況では開かれたベントが有益であると考えられるためである。一方、音楽鑑賞のために調整された別の聴覚プログラムは、代わりに、ベントバルブ装置を閉位置へ操作することによってベントを閉じる指示を含んでもよく、これにより、このプログラムが選択されたときに閉じられたベントの利点をユーザに提供することができる。当然ながら、要求に応じてベントを単に開く又は閉じるコマンドも、ユーザに利用可能であってよい。
【0024】
第2の態様によれば、聴覚装置の作動方法が考案される。当該聴覚装置は、第1のマイクロホンと、信号プロセッサと、メモリと、レシーバと、聴覚装置の耳栓に形成されたベント内に配置されたベントバルブ装置の位置を操作するためのコントローラとを備える。当該方法は、ベントバルブ装置が位置を変えるときのベントの音を表す所定のオーディオ信号を取得するステップと、所定のオーディオ信号をメモリに記憶するステップと、ベントバルブ装置を操作するために、信号プロセッサからコントローラに第1の信号を提供するステップと、ベントバルブ装置が操作されるのとほぼ同時に、所定のオーディオ信号の位相反転バージョンをレシーバに出力するステップと、を含む。このようにして、聴覚装置は、ベントバルブ装置が操作されるときにベントによって発せられる音を補償することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、ベントバルブ装置が開位置から閉位置に位置を変えるときのベントの音の表現を取得するステップは、ベントバルブ装置が閉位置から開位置に位置を変えるときのベントの音の表現を取得するステップとは別のステップである。ベントバルブ装置が閉じるときには、通常、外耳道内の空気圧は急激に上昇する。所定のオーディオ信号の位相反転バージョンのおかげで、レシーバは、ベントバルブ装置が閉じる際に、ベントによって発せられる音を補償するために対応する空気圧の急激な低下を提供する。しかしながら、代わりに、ベントバルブ装置が開くときには、通常、外耳道内の空気圧が急激に下がり、この場合、レシーバは、ベントバルブ装置が開く際に、ベントによって発せられる音を補償するために対応する空気圧の急激な上昇を提供する。このようにして、聴覚装置は、ベントバルブ装置が開くときと、ベントバルブ装置が閉じるときの両方において、ベントによって発せられる音の補償を有利に提供する。
【0026】
いくつかの実施形態において、ベントバルブ装置が位置を変えるときのベントの音の表現を取得するステップは、聴覚装置の製造中に実行され、ベントバルブ装置が位置を変える音を決定するステップと、決定された音を記憶に適した表現に変換するステップと、聴覚装置の信号プロセッサがアクセス可能な不揮発性メモリに表現を記憶するステップとを含む。これにはいくつかの利点がある。ベントバルブ装置が操作される音の表現は、使用に向けてデジタル化されて聴覚装置のメモリに記憶される前に、場合によっては聴覚装置オペレーティングシステム及び/又は聴覚装置の初期設定が聴覚装置のメモリに記憶されるのと同時に、制御された製造環境で実行される録音として取得される。これにより、聴覚装置のフィッティング中及び使用中に、医療従事者が誤って設定することを心配せず、且つユーザが、ベントバルブ装置が開閉するときにベントが音を発することに気付くことさえなく、ベントクリック補償を目立たずに実行することが可能になる。
【0027】
聴覚装置の製造中に取得されるベントバルブ装置が操作される音の表現は、聴覚装置のユーザの大多数にとって適切なものであり得るが、場合によっては、特定の聴覚装置において操作される実際のベントバルブ装置が、聴覚装置に記憶されている「標準的な」ベントクリック補償信号から過度に逸脱する音を発する場合があり、その結果、理想的ではない補償音を発してしまうことがある。これは、例えば、外耳道が、製造中に聴覚装置について記録された「理想的な」条件からあまりにも大きく逸脱する特異なサイズ又は形状を有する場合に当てはまる。
【0028】
そのような場合においてベントクリック補償を提供するために、いくつかの実施形態では、ベントバルブ装置が位置を変えるときのベントバルブ装置の音の表現を取得するステップは、聴覚装置のフィッティング中に実行され、レシーバに隣接する第2のマイクロホンを設けるステップと、コントローラを使用して、位置を変えるようにベントバルブ装置を操作するステップと、第2のマイクロホンを使用して、ベントバルブ装置が位置を変える音を拾うステップと、第2のマイクロホンからの音を記憶に適した表現に変換するステップと、聴覚装置の信号プロセッサがアクセス可能な不揮発性メモリに表現を記録するステップとを含む。これにより、医療従事者は、聴覚装置に指示をしてベントバルブ装置をその場で操作させ、第2のマイクロホン及び聴覚装置自体の信号プロセッサを使用してこのように生成された音を記録させることができる。次いで、その記録は、医療従事者によって(好ましくは、聴覚装置によって提供される、通常フィッティングソフトウェアだけがアクセス可能な特別なモードを使用して)聴覚装置メモリに記憶され、結果として得られるベントクリック補償音は、その場でベントバルブ装置の実際の音にぴったり合わせられてよい。これにより、より正確なベントクリック補償を提供することができる。
【0029】
いくつかの実施例において、当該方法は、ワイヤレストランシーバが聴覚装置に設けられることを含む。当該方法は、ワイヤレストランシーバを介してベントバルブ装置を操作する指示を受け取るステップと、ベントバルブ装置を操作するために、信号プロセッサからコントローラへの第1の信号を生成するステップと、レシーバへのベントバルブ装置が位置を変える音の位相反転バージョンを表す所定のオーディオ信号を生成するステップとを含む。これは、ベントを操作するため及び同時にベントクリック補償信号を提供するための両方に、信号プロセッサを使用できるという利点を提供する。ベントバルブ装置を操作しながら、ベントクリック補償を提供する容易で信頼性のある方法が、本明細書によって得られる。
【0030】
次に、図面を参照して、聴覚装置をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】能動型ベントを有する従来技術の聴覚装置を示す。
【
図2】ベントクリック補償を有する聴覚装置の原理ブロックを概略的に示す。
【
図3】聴覚装置において逆位相音を提供することを示すフローチャートを示す。
【
図4a】ベント音及び逆位相音の同時性を示すタイミング図である。
【
図4b】ベント音及び逆位相音の同時性を示すタイミング図である。
【
図5a】開位置にある能動型ベントを有する耳栓の縦断面を示す。
【
図5b】閉位置にある能動型ベントを有する耳栓の縦断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、聴覚装置用の従来技術の耳栓1であって、ユーザへ音を再生するためのレシーバ2を有する耳栓1を示す。レシーバ2は、レシーバ2の前方の開口(図示せず)に取り付けられた交換可能なワックスガード3を有する。ワックスガード3の目的は、レシーバ2を損傷する可能性のある耳垢及び湿気が、ユーザの外耳道から耳栓1に入ることを防止することである。ベントバルブ装置6を有するベント4が、レシーバ2に隣接している。ベントバルブ装置6は、2つの位置のうちの一つをとることによって、ベント4の音響インピーダンスを変化させることができる。一方の位置は、開かれたベントに対応し、他方の位置は、閉じられたベントに対応する。ベントバルブ装置6の位置は、好ましくは電気的に操作される。レシーバ2は、レシーバ2によって音響的に再生される音を表す電気信号を受信するために、レシーバワイヤ5を介して聴覚装置(
図1では不図示)に接続されている。
【0033】
第1の例では、ベントバルブ装置6は、使用中に、開かれたベントに対応する位置にあってもよい。これにより、ユーザに、ベントを有する聴覚装置の利点及び不利な点の両方が提供される。場合によっては、例えば音楽鑑賞のときなど、先に述べたように、例えばベントに関連する音の低周波再生が良くないので、ベントがユーザにとって不利になる可能性がある。この場合、ユーザは、ベントバルブ装置6を閉じられたベントに対応する位置に動かすように聴覚装置に指示してもよく、有利には、複数の利用可能な聴覚装置プログラムの中から、閉じられたベントに対応する位置にベントバルブ装置6を動かすことによってベント4を閉じる内部指示を含む聴覚装置プログラムを選択することによって、その指示が実行される。別の場合には、ユーザは、ベント4が開いていることを望むことがあり、従って、ベントバルブ装置6を開かれたベントに対応する位置に動かす内部指示を含む別の聴覚装置プログラムを選択してもよい。そのようなプログラムは、例えば、閉じられたベント又はベントが存在しないことに関連する閉塞効果がユーザの問題となり得る会話などの状況において聴覚装置を最適に機能させるように、有益に調整されてもよい。
【0034】
聴覚装置が能動型ベントを有することの利点は明らかであるけれども、少なくとも一つの欠点が存在する。それは、ベントバルブ装置6の操作に起因して、外耳道に配置された耳栓1を有する聴覚装置を装着しているユーザの外耳道内の空気圧が瞬間的に変化してしまうために、ベントバルブ装置6が開閉される度に、ベントバルブ装置6が、空気圧波、即ち、音を生成してしまうことである。この音は、ベントバルブ装置6の開閉時に、聴覚装置を装着しているユーザにとって非常に不快であり得るポップ音又はクリック音として現れる。
【0035】
図2は、ITE聴覚装置の一実施形態として示される耳栓1を概略的に示す。聴覚装置は、ベントバルブ装置が開閉されるときにベントバルブ装置によって発せられるクリック音を軽減するように構成されている。使用中、ITE聴覚装置は、ユーザの外耳道内に配置され、その一部はユーザの外耳20の一部の形状によって保持され、また別の一部は外耳道自体の形状によって保持される。耳栓1は、周囲から音響信号を拾い、音響信号を電気信号に変換するための外部マイクロホン8を備える。外部マイクロホン8は、外部マイクロホン8からの電気信号をデジタル信号に変換するためのA/Dコンバータ21に接続されている。A/Dコンバータ21からのデジタル信号は、信号プロセッサ22の第1の入力部に出力される。信号プロセッサ22は、A/Dコンバータ21からのデジタル信号に対して種々の演算操作を実施することによりユーザの聴覚損失を軽減することを目的として、聴覚損失指示に従って外部マイクロホン8によって拾われた信号の増幅を提供するように適応されている。増幅された信号は、レシーバ2に提供されるのに適した形態に変換される。レシーバ2は、増幅された信号を、ユーザが聞くための音響信号に変換するように構成されている。ワイヤレストランシーバ23は、アンテナ24によって拾われたワイヤレス信号を受信し、ワイヤレス信号を信号プロセッサ22の第2の入力部に提供される電気信号に変換するように構成されている。ワイヤレス信号は、例えば、リモートコントロール信号又はITE聴覚装置による再生を意図したオーディオストリーミング信号であってもよい。
【0036】
前述の理由から、ベント4が耳栓1に組み込まれている。ベント4は、耳栓1の本体に貫通管として形成されており、使用中に、耳栓1の外側からユーザの外耳道内に存在する部分への音響経路をITE聴覚装置に提供する。ベント4は、ベント4によって提供される音響経路を閉じる又は封止することができるベントバルブ装置6を有する。ベントバルブ装置6は、信号プロセッサ22からの専用の電気出力信号によって制御されるベントバルブ装置コントローラ10によって駆動される。ベントバルブ装置コントローラ10は、ベントバルブ装置6を2つの可能な位置のいずれか、即ち、開位置又は閉位置、に操作することができるバイナリ装置であることが好ましい。これは、ベントバルブ装置コントローラ10が、ベントバルブ装置6を開く又は閉じるときに、聴覚装置のバッテリ(
図2では不図示)から電流を流せばいいという固有の利点を有し、ベントバルブ装置6を操作するときに電力を節約できる。いくつかの実施形態では、ベントバルブ装置6の現在位置に関する情報が、ベントバルブ装置コントローラ10によって検出され、次いで、ベントバルブ装置6の現在位置の情報が信号プロセッサ22に伝えられる。
【0037】
信号プロセッサ22は、ベントバルブ装置コントローラ10に適切な電気信号を印加することによってベントバルブ装置6を制御し、そうすることで、ベントバルブ装置6が開位置にある場合にはベントバルブ装置6を閉じ、又は、ベントバルブ装置6が閉位置にある場合にはベントバルブ装置6を開く。このようにしてベントバルブ装置6が操作されると、
図2に示すように、外耳道内の空気圧の瞬間的な変化により、ベント4から音が発せられる。このようにベントバルブ装置6を操作することによって発せられる音を打ち消すために、信号プロセッサ22は、ベント4から発せられる音と実質的に同一だが逆位相である所定のオーディオ信号を同時に送出するように構成されている。そうすると、2つの音が互いに打ち消し合う。従って、理想的には、ベント4からの空気圧寄与が増加すると、レシーバ2からの空気圧寄与がそれに応じて減少する。逆もまた同様である。
【0038】
ベントバルブ装置6を開閉すると同時にレシーバ2から位相が反転した所定の音を送出する結果として、ベント4及びレシーバ2からのそれぞれの空気圧変化の寄与が合わさって、ユーザの外耳道において合計でゼロとなり、よって、ベントバルブ装置6の開閉中に、ベント4から発せられる音が低減又は排除される。
【0039】
所定の音は、信号プロセッサ22がアクセス可能な聴覚装置メモリ(
図2では不図示)に記憶されており、いくつかの実施形態では、聴覚装置の製造中に、信号プロセッサ22によって実行されるソフトウェアコードへ埋め込まれてもよい。通常、ベントバルブ装置6の開閉は、例えば、聴覚装置のワイヤレスリモートコントロール装置(
図2では不図示)からワイヤレストランシーバ23を介してワイヤレスコマンドを受け取った結果として、聴覚装置オペレーティングシステムによって実施される。コマンドは、ベントバルブ装置コントローラ10にベントバルブ装置6を操作するように指示する直接コマンドであってもよく、あるいは、現在実行されているプログラムとは異なる聴覚装置の別のプログラムを選択するコマンドであってもよく、当該別のプログラムは、ベントバルブ装置6の現在の位置に応じて、ベントバルブ装置6に他方の位置をとるように要求する。即ち、ベントバルブ装置6が閉じている場合には、開くよう要求する、又はその逆である。どちらの場合も、信号プロセッサ22は、聴覚装置メモリから所定の音を取得し、信号プロセッサ22がベントバルブ装置コントローラ10に駆動信号を送るのと同時に、所定の音の位相反転バージョンをレシーバ2に出力するように構成されている。所定の音は、ベントバルブ装置6が開かれるときは、ベント4の第1の所定の音であり、ベントバルブ装置6が閉じられるときは、ベント4の第2の所定の音であることが好ましい。
【0040】
代替の実施形態では、製造中に、信号プロセッサ22の聴覚装置メモリには所定の音が記憶されない。その代わりに、医療従事者が、聴覚装置のフィッティング中に、ベントバルブ装置コントローラ10に指示してベントバルブ装置6をその場で開閉させ、したがって、ベント4がいずれの場合にも音を発する。この指示は、例えば、聴覚装置の特別なモードを起動することによって与えられてもよく、当該特別なモードは、ユーザの聴力損失及び他のニーズに合わせて聴覚装置をフィットさせるために、医療従事者によって使用されるフィッティングソフトウェアのオプションとして利用可能であることが好ましい。ベントバルブ装置6が開閉するときにベント4によって発せられる音は、聴覚装置の内部マイクロホン9によって拾われ、続いて、
図2で「レシーバからの音」及び「ベント操作からの音」としてそれぞれ示される曲線によって示唆されるように、ベントバルブ装置6が操作される毎の音響信号としてのレシーバ2による後の位相反転再生のために、1組の所定の音の表現として聴覚装置メモリに記憶される。これにより、耳栓1、ベント4、及びユーザの外耳道の対応する大きさにおけるサイズ及び形状の様々な構成に所定の音を適合することができるというさらなる利点が得られる。このようにして、レシーバ2によって生成される所定の音の位相反転バージョンが、ベント4によって発せられる音に対して個別に最適化されることが保証される。
【0041】
ここで、耳栓1における能動型ベント4の音を補償するための手順を、
図2及び
図3を参照してより詳細に説明する。
図3は、
図2に示すタイプの聴覚装置の信号プロセッサ22における、能動型ベント4によって発せられる音を低減又は排除するための位相反転音の適用の方法(アルゴリズムなど)を示すフローチャートである。アルゴリズムのステップ301において、聴覚装置が始動され、聴力損失を軽減するための指示が信号プロセッサ22にロードされ、既定のプログラムが選択される。ステップ302において、ベントバルブ装置6が操作されるときにベント4によって発せられる音を表すデータが、聴覚装置メモリに記憶される。ここで、いくつかの実施形態では、ステップ302は、聴覚装置の製造中に実行されてもよく、即ち、データは、聴覚装置が使用されるときには既に、聴覚装置メモリ内に存在してもよいことに留意されたい。
【0042】
ステップ303において、ベントバルブ装置6の現在位置が判定される。ベントバルブ装置6が閉位置にある場合、方法又はアルゴリズムはステップ304へと分岐し、ステップ304では、信号プロセッサ22によってベント4を開く指示が要求される。ベント4を開く指示が受信されると、方法又はアルゴリズムはステップ305に進み、ステップ305では、信号プロセッサ22は、信号をベントバルブ装置コントローラ10に送り、同時に、ベントバルブ装置6が開く音に対応する位相反転された所定の音を送出する。次に、方法又はアルゴリズムは、ステップ303に戻り、ベントバルブ装置6の開位置を現在の状態として更新する。
【0043】
ステップ303において、ベントバルブ装置6が開位置にあると判定される場合、方法又はアルゴリズムは、代わりにステップ306へと分岐し、ステップ306では、ベント4を閉じる指示が信号プロセッサ22によって要求される。ベント4を閉じる指示が受信されると、方法又はアルゴリズムはステップ307に進み、ステップ307では、信号プロセッサ22は、信号をベントバルブ装置コントローラ10に送信し、同時に、ベントバルブ装置6が閉じる音に対応する位相反転された所定の音を送出する。次に、方法又はアルゴリズムは、ステップ303に戻り、ベントバルブ装置6の閉位置を現在の状態として更新する。
【0044】
図4aは、
図2に示す実施形態に関して、ベント4内のベントバルブ装置6がベントを閉じるときにベント4が発する音の一例を示すタイミング図である。タイミング図では、x軸に沿って時間がマークされ、y軸に沿って空気圧がマークされている。
図4a及び
図4bにおいて、x軸の目盛りは任意に選択されるが、例えば、1ms/目盛、又は100ms/目盛、好ましくは10ms/目盛であってもよい。t=0においてベント4を閉じるための信号が送信されると、主に機械的制限に起因して、ベントバルブ装置6は動き始める前に遅れを示し、結果として、時間t=T1で局大値に達するまで、ベント4からの空気圧寄与が上昇し、時間t=T1から再び下降し始める。時間t=T2において、ベント4からの空気圧寄与は、公称空気圧よりも著しく低下し、局小値に達する。次いで、ベント4からの空気圧寄与は、t=T3において公称空気圧で収束する前に、減衰振動で数回上下に変動する。
【0045】
図4bは、
図2に示す実施形態に関して、ベントバルブ装置6が閉じるときにベント4によって発せられる音を打ち消すためにレシーバ2によって発せられる位相反転された所定の音の一例を示すタイミング図である。このタイミング図は、明確性のために、
図4aのタイミング図と並べられており、単位は
図4aの単位と同じである。t=0において、レシーバ2のダイヤフラムをベントバルブ装置6とは逆方向に動かす前にレシーバ2からの位相反転された所定の音を対応する期間遅らせることによって、ベントバルブ装置6の遅延が模倣され、これにより、位相反転された所定の音を再生するレシーバ2からの空気圧寄与は、時間t=T1で局小値に達するまで下がり、時間t=T1から再び上昇し始める。時間t=T2において、レシーバ2からの空気圧寄与は、公称空気圧を大幅に超えて上昇し、局大値に達する。次いで、レシーバ2からの空気圧寄与は、t=T3で公称空気圧に収束する前に、ベントバルブ装置6の動きとは逆をたどり続ける。
【0046】
総じて、ベント4の出口及びレシーバ2の出口の両方がユーザの外耳道の閉じた体積に閉じ込められているという事実から、ベント4及びレシーバ2からの空気圧変化の寄与は、互いに打ち消される。従って、前述したように、ベントバルブ装置6が操作されるときにユーザが経験し得る不快な音は、排除されるか又は少なくとも大幅に低減される一方で、能動型ベントの利点は保持される。
【0047】
図5a及び
図5bは、一実施形態による、能動型ベントを有するレシーバハウジング50の縦断面を図示する。レシーバハウジング50は、略円筒形状を有し、レシーバハウジング50の遠位端でレシーバワイヤ5を介して聴覚装置回路(図示せず)に接続されており、且つレシーバハウジング50の近位端でレシーバ音出口管53の一端に接続されているレシーバ2を備える。レシーバ音出口管53の他端は、ベント出口55によって所定の位置に保持されている。能動型ベントは、ソレノイドコイル51と、ベントバルブ装置6に取り付けられた永久磁石52とを備える。磁石52は、トロイダル磁石であってもよい。複数のベント入口54が、ソレノイドコイル51とベント出口55との間のレシーバハウジング壁に分散されている。ベント出口55は、レシーバハウジング50の近位端の内径を制限するリング又は内側ブッシェルとして具現化される。レシーバハウジング50の近位端には、フランジ56が配置されている。フランジ56の目的は、レシーバハウジングが、例えば
図1に図示されるように、耳栓内に取り付けられたときに、耳栓(不図示)とレシーバハウジング50との間に密閉状態を形成することである。
【0048】
ベントバルブ装置6は、
図5aに示される第1の位置、即ち開位置と、
図5bに示される第2の位置の位置、即ち閉位置との間を動くように構成されている。ベントバルブ装置6及び永久磁石52は、第1の位置(開位置)と第2の位置(閉位置)との間のベントバルブ装置6の摺動運動を容易にするように、レシーバ音出口管53に一緒に取り付けられている。この摺動運動は、永久磁石52を引きつける磁場、又はそれを遠ざける磁場を生成するために電流をソレノイドコイル51に印加することによって開始される。ソレノイドコイル51を通る一方向の電流は、永久磁石52を引きつけ、それによってベントが開き、ソレノイドコイル51を通る逆方向の電流は、永久磁石52を遠ざけ、それによってベントが閉じる。
【0049】
図5aに示されるベントバルブ装置6の第1の位置(開位置)において、ソレノイドコイル51は、永久磁石52をレシーバハウジング50の遠位端に向かって引きつけ、そうすることで、複数のベント入口54とベント出口55との間に空気が流れるための通路を作り出す。耳栓(不図示)とレシーバハウジング50との間が密閉されているので、耳栓及びレシーバハウジング50が外耳道内で意図された場所に取り付けられている場合、当該通路は、空気が外耳道(図示せず)から逃げることができる唯一の通路である。
【0050】
図5bに示されるベントバルブ装置6の第2の位置(閉位置)において、ソレノイドコイル51は、永久磁石52をレシーバハウジング50の近位端に向かって遠ざけ、そうすることで、複数のベント入口54とベント出口55との間の通路が閉じられる。ベントバルブ装置6の縁がベント出口55の縁に当接すると、ベントバルブ装置6及びベント出口55は、外側から外耳道内の空気をトラップする密閉状態を形成する。
【0051】
図5bに示すように、ベントバルブ装置6が第2の位置(閉位置)に到達すると、終端に当たって、第1のクリック音を発する。いくつかの実施形態によれば、この第1のクリック音は、聴覚装置(不図示)の信号プロセッサに、ベントバルブ装置6のクリック音を打ち消す所定の第1の音信号を同時にレシーバ2へ提供させることによって補償されてもよい。
【0052】
図5aに示すように、ベントバルブ装置6が第1の位置(開位置)に到達すると、ベント出口55の縁に当たって、第2のクリック音を発する。いくつかの実施形態によれば、この第2のクリック音は、聴覚装置の信号プロセッサに、ベントバルブ装置6の第2のクリック音を打ち消す所定の第2の音信号を同時にレシーバ2へ提供させることによって補償されてもよい。
【0053】
このように、能動型ベントが操作されるときに能動型ベントによって発せられるクリック音を補償することができる聴覚装置が考案される。
以下の項目は、本願出願時の特許請求の範囲に記載された要素である。
(項目1)
聴覚装置のユーザの外耳道に挿入するための耳栓を有する聴覚装置であって、
前記聴覚装置は、
第1のマイクロホンと、
信号プロセッサと、
メモリと、
コントローラと、
レシーバと、を備え、
前記耳栓は、ベントであって、前記ベントを開閉するように構成されたベントバルブ装置を有する前記ベントを備え、
前記コントローラは、前記信号プロセッサからの第1の信号に基づいて、前記ベントバルブ装置を第1の位置又は第2の位置に電気的に操作するように構成されており、
前記聴覚装置は、
前記ベントバルブ装置が前記第1の位置と前記第2の位置との間で操作されるときに前記ベントによって発せられる音を表す所定のオーディオ信号を取得し、
所定の前記オーディオ信号を前記メモリに記憶するように構成されており、
前記信号プロセッサは、
前記メモリ内の所定の前記オーディオ信号にアクセスし、
前記ベントバルブ装置が操作されるのとほぼ同時に、所定の前記オーディオ信号の位相反転バージョンを前記レシーバに出力するように構成されている、聴覚装置。
(項目2)
前記ベントバルブ装置が前記第1の位置へ操作されるときに前記信号プロセッサによって出力される所定の前記オーディオ信号の前記位相反転バージョンは、前記ベントバルブ装置が前記第2の位置へ操作されるときに前記信号プロセッサによって出力される所定の前記オーディオ信号の前記位相反転バージョンとは異なる、項目1に記載の聴覚装置。
(項目3)
前記レシーバは、前記耳栓内に配置されている、項目1又は2に記載の聴覚装置。
(項目4)
前記ベントバルブ装置の前記第1の位置は、開位置であり、
前記ベントバルブ装置の前記第2の位置は、閉位置である、項目1から3のいずれか一項に記載の聴覚装置。
(項目5)
前記ベントバルブ装置の前記第1の位置は、閉位置であり、
前記ベントバルブ装置の前記第2の位置は、開位置である、項目1から3のいずれか一項に記載の聴覚装置。
(項目6)
所定の前記オーディオ信号の前記位相反転バージョンは、前記ベントバルブ装置が操作される度に前記ベントバルブ装置によって発せられる音を実質的に打ち消すように適応される、項目1から5のいずれか一項に記載の聴覚装置。
(項目7)
所定の前記オーディオ信号は、前記聴覚装置の製造中に取得され、
所定の前記オーディオ信号は、前記聴覚装置の前記信号プロセッサがアクセス可能な前記メモリに記憶される、項目1から6のいずれか一項に記載の聴覚装置。
(項目8)
前記耳栓は、前記レシーバに隣接する第2のマイクロホンを備え、
前記第2のマイクロホンは、前記ベントバルブ装置が操作されるときに前記ベントによって発せられる音を拾うように構成されており、
前記聴覚装置は、前記第2のマイクロホンによって拾われた前記音の表現を、所定の前記オーディオ信号として、前記聴覚装置の前記信号プロセッサがアクセス可能な前記メモリに記憶するように構成されている、項目1から7のいずれか一項に記載の聴覚装置。
(項目9)
前記聴覚装置は、ワイヤレスリモートコントロール信号を受信するためのワイヤレストランシーバを備える、項目1から8のいずれか一項に記載の聴覚装置。
(項目10)
前記ワイヤレストランシーバは、外部装置からのワイヤレス信号を介して、少なくとも一つの指示を受信するように構成されており、
前記指示は、前記信号プロセッサに、
前記ベントバルブ装置を操作するために、前記コントローラに前記第1の信号を送ることと、
前記ベントバルブ装置が操作されるのとほぼ同時に、所定の前記オーディオ信号の位相反転バージョンを前記レシーバに出力することを開始させる、項目9に記載の聴覚装置。
(項目11)
聴覚装置の作動方法であって、
前記聴覚装置は、
第1のマイクロホンと、
信号プロセッサと、
メモリと、
レシーバと、
前記聴覚装置の耳栓に形成されたベント内に配置されたベントバルブ装置の位置を操作するためのコントローラと、を備え、
前記方法は、
前記ベントバルブ装置が位置を変えるときの前記ベントの音を表す所定のオーディオ信号を取得するステップと、
所定の前記オーディオ信号を前記メモリに記憶するステップと、
前記ベントバルブ装置を操作するために、前記信号プロセッサから前記コントローラに第1の信号を提供するステップと、
前記ベントバルブ装置が操作されるのとほぼ同時に、所定の前記オーディオ信号の位相反転バージョンを前記レシーバに出力するステップと、
を含む、方法。
(項目12)
前記ベントバルブ装置が開位置から閉位置へ位置を変えるときの前記ベントの音の表現を取得するステップは、前記ベントバルブ装置が前記閉位置から前記開位置に位置を変えるときの前記ベントの音の表現を取得するステップとは別である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記ベントバルブ装置が位置を変えるときの前記ベントの前記音の表現を取得するステップは、
前記聴覚装置の製造中に実行され、
前記ベントバルブ装置が位置を変える音を決定するステップと、
決定された前記音を記憶に適した表現に変換するステップと、
前記聴覚装置の前記信号プロセッサがアクセス可能な不揮発性メモリに前記表現を記憶するステップと、を含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記ベントバルブ装置が位置を変えるときの前記ベントバルブ装置の前記音の表現を取得するステップは、
前記聴覚装置のフィッティング中に実行され、
前記レシーバに隣接する第2のマイクロホンを設けるステップと、
前記コントローラを使用して、前記ベントバルブ装置が位置を変えるように操作するステップと、
前記第2のマイクロホンを使用して、前記ベントバルブ装置が位置を変える前記音を拾うステップと、
前記第2のマイクロホンからの前記音を記憶に適した表現に変換するステップと、
前記聴覚装置の前記信号プロセッサがアクセス可能な不揮発性メモリに前記表現を記憶するステップと、を含む、項目11に記載の方法。
(項目15)
前記聴覚装置には、ワイヤレストランシーバが設けられており、
前記方法は、
前記ワイヤレストランシーバを介して、前記ベントバルブ装置を操作する指示を受信するステップと、
前記ベントバルブ装置を操作するために、前記信号プロセッサから前記コントローラへの前記第1の信号を生成するステップと、
前記レシーバへの前記ベントバルブ装置が位置を変える前記音の位相反転バージョンを表す所定の前記オーディオ信号を生成するステップと、を含む、項目11に記載の方法。
【符号の説明】
【0054】
1:耳栓
2:レシーバ
3:ワックスガード
4:ベント
5:レシーバワイヤ
6:ベントバルブ装置
8:外部マイクロホン
9:内部マイクロホン
10:ベントバルブ装置コントローラ
20:外耳の一部
21:A/Dコンバータ
22:信号プロセッサ
23:ワイヤレストランシーバ
24:アンテナ
50:レシーバハウジング
51:ソレノイドコイル
52:トロイダル磁石
53:レシーバ音出口管
54:ベント入口
55:ベント出口
56:フランジ
301:開始
302:音を記憶する
303:ベント位置を確認する
304:閉、ベントを開く指示を受信する
305:閉、ベントを開き、ベントを開く音を再生する
306:開、ベントを閉じる指示を受信する
307:開、ベントを閉じ、ベントを閉じる音を再生する
【外国語明細書】