(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163249
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】入浴装置及び入浴システム
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
A61H33/00 310L
A61H33/00 310N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068059
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000103471
【氏名又は名称】オージー技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】井本 幸弘
【テーマコード(参考)】
4C094
【Fターム(参考)】
4C094AA01
4C094BB04
4C094BB16
4C094CC03
4C094CC05
4C094CC08
4C094CC09
4C094DD14
(57)【要約】
【課題】車椅子兼ストレッチャータイプの搬送車を、シャワー浴槽で利用可能な入浴装置を提供する。
【解決手段】仰臥位でシャワー浴を行うシャワー浴槽31と、搬送車1と、を備え、搬送車1は、台車部2と、臀部受け部、背凭れ部及び脚受け部を有し台車部2上に載置される搭乗部3と、を備え、搭乗部3は、台車部2と分離可能であるとともに、入浴者が座位で搭乗する椅子状態と、入浴者が仰臥位で搭乗する担架状態とに姿勢変更可能であり、搭乗部2が担架状態のとき、台車部2を連結したシャワー浴槽31と台車部2との間で往復移動可能である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仰臥位でシャワー浴を行うシャワー浴槽と、搬送車と、を備え、
前記搬送車は、台車部と、臀部受け部、背凭れ部及び脚受け部を有し前記台車部上に載置される搭乗部と、を備え、前記搭乗部は、前記台車部と分離可能であるとともに、前記入浴者が座位で搭乗する椅子状態と、前記入浴者が仰臥位で搭乗する担架状態とに姿勢変更可能であり、
前記搭乗部が前記担架状態のとき、前記台車部を連結した前記シャワー浴槽と前記台車部との間で往復移動可能である、
ことを特徴とする入浴装置。
【請求項2】
前記搬送車と前記シャワー浴槽との連結手段として、前記搬送車及び前記シャワー浴槽はそれぞれ、1つの係合部材及び1つの被係合部材を備えるか、あるいは、1つの被係合部材及び1つの係合部材を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の入浴装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の入浴装置と、前記シャワー浴槽とは異なる少なくとも1種類の浴槽と、を備え、
前記浴槽と前記搬送車とを用いて前記入浴者を入浴させることが可能である、
ことを特徴とする入浴システム。
【請求項4】
前記浴槽として、仰臥位で湯中浴を行う仰臥位浴槽、及び/又は、座位でシャワー浴を行う座位シャワー浴槽、を備え、
前記入浴者を前記仰臥位浴槽で入浴させる場合、前記搭乗部は前記担架状態であり、前記入浴者を前記座位シャワー浴槽で入浴させる場合、前記搭乗部は前記椅子状態である、
ことを特徴とする請求項3に記載の入浴システム。
【請求項5】
前記搭乗部が前記担架状態のとき、前記台車部を連結した前記仰臥位浴槽と前記台車部との間で往復移動可能である、
ことを特徴とする請求項4に記載の入浴システム。
【請求項6】
前記椅子状態の前記搭乗部は、前記台車部とともに前記座位シャワー浴槽の内部に挿入される、
ことを特徴とする請求項4に記載の入浴システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体障害者等を入浴させる入浴装置及び入浴システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車椅子の乗座部分の上昇に合わせて背シートがリクライニングすることで、座位を維持できる入浴者を椅座位の姿勢から仰臥姿勢へ自動変換できる車椅子兼ストレッチャーを用いて、寝浴用の特殊浴槽で入浴させる特殊入浴システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来技術では、寝浴用の特殊浴槽で入浴させることが記載されているだけであり、車椅子兼ストレッチャーを用いてシャワー浴を行うシャワー浴槽で入浴させることは記載されていない。また、シャワー浴槽を含む複数種類の浴槽に対して車椅子兼ストレッチャーを利用できる構成についても記載されていない。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、車椅子兼ストレッチャータイプの搬送車を、シャワー浴槽で利用可能な入浴装置を提供することを目的とする。また、車椅子兼ストレッチャータイプの搬送車を、シャワー浴槽を含む複数種類の浴槽に対して利用可能な入浴システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下の手段を提供する。
【0007】
本発明の入浴装置は、仰臥位でシャワー浴を行うシャワー浴槽と、搬送車と、を備え、前記搬送車は、台車部と、臀部受け部、背凭れ部及び脚受け部を有し前記台車部上に載置される搭乗部と、を備え、前記搭乗部は、前記台車部と分離可能であるとともに、前記入浴者が座位で搭乗する椅子状態と、前記入浴者が仰臥位で搭乗する担架状態とに姿勢変更可能であり、前記搭乗部が前記担架状態のとき、前記台車部を連結した前記シャワー浴槽と前記台車部との間で往復移動可能である、ことを特徴とする。これによれば、座位姿勢を維持できる入浴者及び座位姿勢を維持できない入浴者の双方に対して、仰臥位状態でのシャワー浴を提供することができる。
【0008】
本発明の入浴装置において、好ましい実施態様では、前記搬送車と前記シャワー浴槽との連結手段として、前記搬送車及び前記シャワー浴槽はそれぞれ、1つの係合部材及び1つの被係合部材を備えるか、あるいは、1つの被係合部材及び1つの係合部材を備える。これによれば、搬送車とシャワー浴槽との連結手段をコンパクトにすることができる。このため、例えば、台車部をシャワー浴槽から離間させて介助者が搭乗部上の入浴者の洗身やケアをする際、連結手段が邪魔になり難い。また、搬送車の台車部もコンパクトにすることができるため、搬送車を移動させる際の操作性を向上することができる。
【0009】
本発明の入浴システムは、前記入浴装置と、前記シャワー浴槽とは異なる少なくとも1種類の浴槽と、を備え、前記浴槽と前記搬送車とを用いて前記入浴者を入浴させることが可能である、ことを特徴とする。これによれば、シャワー浴槽と、シャワー浴槽とは異なる少なくとも1種類の浴槽に対して1つの搬送車を利用できるため、浴槽ごとに専用の搬送車を購入し取り揃える必要をなくすことができる。
【0010】
本発明の入浴システムにおいて、好ましい実施態様では、前記浴槽として、仰臥位で湯中浴を行う仰臥位浴槽、及び/又は、座位でシャワー浴を行う座位シャワー浴槽、を備え、前記入浴者を前記仰臥位浴槽で入浴させる場合、前記搭乗部は前記担架状態であり、前記入浴者を前記座位シャワー浴槽で入浴させる場合、前記搭乗部は前記椅子状態である。これによれば、搬送車を仰臥位浴槽又は座位シャワー浴槽に対して利用することができる。
【0011】
本発明の入浴システムにおいて、好ましい実施態様では、前記搭乗部が前記担架状態のとき、前記台車部を連結した前記仰臥位浴槽と前記台車部との間で往復移動可能である。これによれば、搭乗部上の入浴者を仰臥位浴槽で入浴させることができる。また、仰臥位浴槽専用の搬送車を購入し取り揃える必要をなくすことができる。
【0012】
本発明の入浴システムにおいて、好ましい実施態様では、前記椅子状態の前記搭乗部は、前記台車部とともに前記座位シャワー浴槽の内部に挿入される。これによれば、搭乗部上の入浴者を座位シャワー浴槽で入浴させることができる。また、座位シャワー浴槽専用の搬送車を購入し取り揃える必要をなくすことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入浴者が搭乗する搭乗部が椅子状態と担架状態とに姿勢変更可能な搬送車を、シャワー浴槽で利用可能な入浴装置を提供することができる。また、搭乗部が椅子状態と担架状態とに姿勢変更可能な搬送車を、シャワー浴槽を含む複数種類の浴槽に対して利用可能な入浴システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1に係る搬送車の斜視図である。
【
図2】同搬送車の脚受け部を折り畳み、左側の上肢用サイドフェンス及び腰部用サイドフェンスを倒した状態を示す斜視図である。
【
図4】脚受け部を収納したときの同搬送車の正面図である。
【
図5】担架状態の搭乗部が上限位置にあるときの同搬送車の正面図である。
【
図6】担架状態の搭乗部が上限位置にあるときの同搬送車の部分断面図であり、断面は、左右方向に対して垂直な平面であって搭乗部の左右方向の中心を通る平面で切断した断面である。
【
図7】本発明の実施形態1に係るシャワー浴槽の斜視図である。
【
図8】同シャワー浴槽の天井部の部分底面図である。
【
図9】同搬送車と同シャワー浴槽とが連結した状態を示す斜視図である。
【
図10】同搬送車と同シャワー浴槽の連結構造を説明するための断面斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態2に係る入浴装置の斜視図である。
【
図12】本発明の実施形態3に係る入浴装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
本発明の実施形態1の入浴装置に用いる搬送車を、
図1~
図6を用いて説明する。ここで、
図1に示すように、方向を表す前後、左右、上下は搬送車1に着座した入浴者から見た方向とする。
図1に示すように、搬送車1は、台車部2と、台車部2の上に台車部2と分離可能に設けられた搭乗部3とを備えており、搭乗部3は昇降可能である。台車部2は台車フレーム4の4箇所に車輪5を備え、床面を走行可能に構成されている。台車フレーム4の上には搭乗部3を分離可能に載置するための2つのレール6が設けられている。台車フレーム4の側面には台車部2をシャワー浴槽31(後述の
図7参照)に連結するための台車側連結部7が設けられており、台車側連結部7は、シャワー浴槽31に対して搬送車1を位置決めするためのローラ7aと、搬送車1をシャワー浴槽31に連結固定するためのフック7bとを有している。
【0016】
搭乗部3は、背凭れ部8、臀部受け部9、脚受け部10、上肢用サイドフェンス11、腰部用サイドフェンス12及び搭乗部フレーム13を有している。搭乗部フレーム13には複数のローラ14が設けられ、ローラ14によって搭乗部3が台車部2のレール6上を移動可能になっている。背凭れ部8、臀部受け部9及び脚受け部10にはそれぞれ背部マット15a、臀部マット15b及び脚部マット15cが敷設されている。左右の上肢用サイドフェンス11は後方に倒した状態にすることができ、
図2では左側の上肢用サイドフェンス11が後方に倒れた状態になっている。左右の腰部用サイドフェンス12は下方に倒した状態にすることができ、
図2では左側の腰部用サイドフェンス12が下方に倒れた状態になっている。例えば、入浴者が搬送車1の左側から搭乗部3に移乗する際、左側の上肢用サイドフェンス11及び腰部用サイドフェンス12を倒した状態にすれば移乗がしやすくなる。
【0017】
搬送車1には、背凭れ部8を後方に傾斜させるとともにほぼ水平状態にもなるリクライニング機構を設けており、リクライニング機構について
図2、3を用いて説明する。背凭れ部8は搭乗部フレーム13に回動可能に取り付けられている。背凭れ部8の背面側には背凭れ部8をリクライニングさせる際や搬送車1を移動させる際に介助者が把持するための把持部16が設けられている。
【0018】
リクライニング機構は、搭乗部フレーム13の後方部分に設けられたガイド板17と、背凭れ部8に回動可能に設けられたリクライニング片18と、リクライニング片18を回動させる操作具19とからなる。
図3に示すように、ガイド板17には、前後方向に形成された上辺が直線状の溝17aから前方に向かって斜め下方向に延びる3個の凹部17bが形成されている。リクライニング片18の下端には突起18aが設けられ、リクライニング片18の取付端部18bはリクライニング回転軸18cに回動可能に取り付けられている。操作具19は、リクライニング片18の取付端部18bに回動可能に取りつけられた連結部材19aによってリクライニング片18と繋がっている。突起18aが最も前方の凹部17bに嵌合すると背凭れ部8は
図1の状態になり、突起18aが後方の2つの凹部17bに嵌ると背凭れ部8は所定角度で傾斜した状態となる。突起18aがガイド板17の凹部17bに嵌合しているとき、背凭れ部8を若干前方へ押した状態で操作具19を上方へ動かすと、リクライニング片18が回動して突起18aが凹部17bから外れる。そして、突起18aを別の凹部17bに嵌合させることで、背凭れ部8の傾斜角度を変更することができる。突起18aを凹部17bに嵌合させず背凭れ部8を倒していくと、
図5に示すように背凭れ部8をほぼ水平状態にすることができる。このとき、突起18aは溝17aの後端部17aaの近傍に位置する。
【0019】
脚受け部10は、
図1、4に示すように、搭乗部フレーム13に回動可能に連結された第1脚受けフレーム10aと、第1脚受けフレーム10aに回動可能に連結された第2脚受けフレーム10bと、第2脚受けフレーム10bの先端に設けられたフットレスト10cと、第2脚受けフレーム10bに掛け渡された踵受け10dとを有している。第1脚受けフレーム10aは
図1の状態から下方に回動してほぼ鉛直状態になるとともに、第2脚受けフレーム10bは第1脚受けフレーム10aに対して上方に折り曲げられるので、
図4に示すように、脚受け部10は台車部2の前方で臀部受け部9の下方の空間に収納された状態にすることができる。また、
図1の状態から脚受け部10を上方に回動させて固定することができ、
図5に示すように、脚受け部10は、臀部受け部9側から先端に向かって、ほぼ水平から緩やかに上方に傾斜した状態になる。
【0020】
以上のように、搬送車1の搭乗部3は、
図1に示す姿勢の椅子状態、及び、
図5に示す姿勢の担架状態になることが可能であり、担架状態では背凭れ部8、臀部受け部9及び脚受け部10がほぼ平坦な状態になっている。すなわち、搭乗部3は、入浴者が座位で搭乗する椅子状態と、入浴者が仰臥位で搭乗する担架状態とに姿勢変更可能である。
【0021】
搬送車1では搭乗部3が昇降可能であり、搭乗部3の昇降機構について
図5、6を用いて説明する。
図5は搭乗部3が上限位置のときの搬送車1を示しており、下限位置の搭乗部3を仮想線で示している。台車フレーム4は、上フレーム20、下フレーム21、第1フレーム22、第2フレーム23及び第3フレーム24を有している。第1フレーム22と第2フレーム23は、それらの中央部のXフレーム軸22cで軸支されてX形状に構成されている。第1フレーム22の下フレーム21側の端部には第1フレームローラ22aが軸支され、もう一方の端部は第1フレーム軸22bによって上フレーム20に軸支され回動可能である。第2フレーム23の上フレーム20側の端部には第2フレームローラ23aが軸支され、もう一方の端部は第2フレーム軸23bによって下フレーム21に軸支され回動可能である。第3フレーム24の一端部は連結管25によって第2フレーム23の中間位置に連結されており、その第2フレーム23の中間位置と第3フレーム24の一端部は一緒に移動する。
【0022】
台車部2はアクチュエータ26を有しており、アクチュエータ26の伸縮によって、第1フレーム22及び第2フレーム23が回動、スライド移動することで上フレーム20が昇降可能となっている。アクチュエータ26は、駆動側を第1アクチュエータ軸26aによって下フレーム21に軸支され、もう一方は第2アクチュエータ軸26bによって第3フレーム24に軸支されている。アクチュエータ26の駆動によって、第3フレーム24と連結している第2フレーム23が第2フレーム軸23bの回りに回動し、第2フレームローラ23aが上フレーム20の表面上をスライド移動するとともに、第1フレーム22が第1フレーム軸22bの回りに回動し、第1フレームローラ22aが下フレーム21の表面上をスライド移動することで、上フレーム20が昇降する。これにより、搭乗部3が下限位置と上限位置との間で昇降する。
【0023】
図2、4、5に示すように、台車部2には足で操作するフットスイッチ27a、27b、連結解除ペダル28及びブレーキペダル29が設けられている。フットスイッチ27a、27bは搭乗部3を下降、上昇させるものである。フットスイッチ27aを足で踏んでいる間は搭乗部3が下降し、フットスイッチ27aから足を離すと下降が止まる。また、フットスイッチ27aを足で踏んでいる間に搭乗部3が下限位置に到達した場合には下降が止まる。フットスイッチ27bを足で踏んでいる間は搭乗部3が上昇し、フットスイッチ27bから足を離すと上昇が止まる。また、フットスイッチ27bを足で踏んでいる間に搭乗部3が上限位置に到達した場合には上昇が止まる。連結解除ペダル28はリンク片28a(
図10参照)でフック7bと繋がっており、連結解除ペダル28を踏むことでフック7bがシャワー浴槽31から外れ台車部2とシャワー浴槽31との連結が解除される。ブレーキペダル29を踏んで下がった状態にすることで、アジャスタ30が床面に圧接されて搬送車1を床面上で動かないようにすることができる。ブレーキペダル29を上がった状態にすると、アジャスタ30が床面に圧接された状態を解除することができる。
【0024】
図7は、入浴者を仰臥位でシャワー浴させるシャワー浴槽(仰臥位シャワー浴槽)である。シャワー浴槽31は、固定台部31aと側部31bと天井部31cとを有して、側面視片仮名の「コ」の字形状となり、左右両側方及び前方が開放されている。固定台部31aは、その上面31a1が後方へ若干傾斜していると共に、その周縁が上方からの湯水が側方へ漏れないように適宜高さの壁31a2で囲まれ、また、上面31a1の後方部位に排水口31a3が設けられている。固定台部31aの下側の床面上には下枠32が設置され、下枠32上に第1支柱33aが立設され、固定台部31aの上面31a1に固定された第2支柱33bと第1支柱33aとで支えられた上枠34が設けられている。上枠34上には3本のレール35a~35cが設けられており、このうち2本のレール35a、35b間の距離は、搬送車1の2本のレール6間の距離と同じである。2本のレール35a、35bの高さは搬送車1の搭乗部3が上限位置に上昇したときの2本のレール6の高さと同じである。なお、レール35cを備えていることで、搬送車1に比べてレール間の距離が大きい別の搬送車をシャワー浴槽31に連結する際にはレール35a、35cを使用することができる。
【0025】
天井部31cは、
図8に示すように、複数の噴射ノズル36が左右両側に対向配置されている。噴射ノズル36は、天井部31cの下面に、それらの対向方向の中心位置からほぼ等距離離れて配置され、かつ、それらの湯水の噴射方向が固定台部31aの上面31a1の中心に向かうように傾斜して設置されている。天井部31cは、噴射ノズル36から噴射された湯水が飛散し天井部31c下面に付着した水滴を側方に流して被介助者に当たり難くするため、中央部が高くなるよう上方に湾曲した形状に形成されている。
【0026】
図7に示すように、シャワー浴槽31には、搬送車1の台車側連結部7が連結するための浴槽側連結部37が設けられており、浴槽側連結部37は、ケース37aの上面に1つの係入穴37bが形成された構成を備えている。搬送車1がシャワー浴槽31に連結する際、台車側連結部7のローラ7aがケース37aを挟み込み、フック7bが係入穴37bに入り込む。搬送車1がシャワー浴槽31に連結した状態を
図9に示し、台車側連結部7と浴槽側連結部37の状態を
図10に示す。台車側連結部7は、前述のローラ7aとフック7bの他に、フック7bが取り付けられる軸7cと、軸7cに巻装されたバネ部材7dとを有する。フック7bは、バネ部材7dで時計回り方向(フック7bが係入穴37bに入る方向)に付勢されている。 浴槽側連結部37は、前述のケース37aと係入穴37bの他に、ケース37a内部に設けられた連結レバー37cと、検知スイッチ37dとを有している。検知スイッチ37dは、例えばリミットスイッチである。
【0027】
搬送車1がシャワー浴槽31に連結されると、
図10に示すように、搬送車1側のフック7bがシャワー浴槽31側のケース37a上面の係入穴37bに入り、連結レバー37cを押下する。それに伴い、検知スイッチ37dの接点押圧体37eが押下されることで、搬送車1がシャワー浴槽31に連結されたことが検知される。
【0028】
ここで、担架を備えた搬送車をシャワー浴槽に連結させて、担架をシャワー浴槽にスライド移動させることが、特開2019-37534号公報に記載されている。この公報に記載された搬送車には、シャワー浴槽との連結手段として搬送車の長手方向に所定の間隔をあけて設けられた一対のフック状の連結部が設けられ、連結部が係入する一対の係入穴がシャワー浴槽に設けられている。これに対し実施形態1では、搬送車1とシャワー浴槽31との連結手段として、搬送車1は1つの係合部材(フック7b)を備え、シャワー浴槽31は1つの被係合部材(係入穴37b)を備えている。この構成によれば、前記公報に記載の入浴装置に比べて、浴槽側連結部37をコンパクトにすることができる。このため、例えば、台車部2をシャワー浴槽31から離間させて介助者が搭乗部3上の入浴者の洗身やケアをする際、浴槽側連結部37が邪魔になり難い。また、搬送車1の台車部2もコンパクトにすることができるため、搬送車1を移動させる際の操作性を向上することができる。なお、係合部材をシャワー浴槽31に設け、被係合部材を搬送車1に設けてもよい。
【0029】
次に、座位姿勢を維持できる入浴者に対して、搬送車1を用いて入浴(シャワー浴)させる場合について説明する。
[移乗、搬送]
まず、搬送車1の搭乗部3を椅子状態とし、脚受け部10を臀部受け部9の下方の空間に収納した状態にした後、入浴者を搬送車1に移乗させる。ここで、例えば搬送車1の左側から入浴者を搬送車1に移乗させる場合には、
図2又は
図4の仮想線で示すように左側の上肢用サイドフェンス11及び腰部用サイドフェンス12を倒した状態にする。入浴者を搬送車1に乗せたら、脚受け部10、上肢用サイドフェンス11及び腰部用サイドフェンス12を
図1に示す状態にした後、シャワー浴槽31の近くまで搬送する。
【0030】
[洗身、連結]
続いて、搭乗部3を担架状態に姿勢変更するとともに、搭乗部3を上昇させ上限位置に達した状態(
図5に示す状態)にする。この状態で入浴者の身体を洗う洗身作業を行う。なお、搭乗部3を、搭乗部3がとり得る任意の高さに昇降させて洗身作業を行ってもよい。洗身作業の後、
図9に示すように搬送車1をシャワー浴槽31の側面に沿うように連結させる。
【0031】
[入浴]
続いて、搭乗部3を搬送車1からシャワー浴槽31の方へスライドさせてシャワー浴槽31内のレール35a、35b上に移動させた後、天井部31cの噴射ノズル36から湯水を噴射することにより、搭乗部3上の入浴者をシャワー浴させることができる。
【0032】
[退浴、搬送]
入浴が終わると搭乗部3をシャワー浴槽31から搬送車1の台車部2上へ移動させた後、搬送車1とシャワー浴槽31との連結を解除する。その後、入浴者の身体を拭くなどし、搭乗部3を椅子状態にして入浴者を元の場所まで搬送する。そして、脚受け部10を臀部受け部9の下方の空間に収納した状態にし、必要に応じて上肢用サイドフェンス11及び腰部用サイドフェンス12を倒した状態にした後、入浴者を搬送車1から別の車椅子等に移乗させて入浴作業を終了する。
【0033】
次に、座位姿勢を維持できない入浴者に対して、搬送車1を用いて入浴(シャワー浴)させる場合について説明する。
[移乗、搬送]
まず、搬送車1の搭乗部3を担架状態とした後、入浴者を搬送車1に移乗させる。例えば、搬送車1の左側から入浴者を搬送車1に移乗させる場合には、左側の上肢用サイドフェンス11及び腰部用サイドフェンス12を倒した状態にする。そして、入浴者を搬送車1に乗せたら、シャワー浴槽31の近くまで搬送する。なお、搭乗部3を、搭乗部3がとり得る任意の高さに昇降させて移乗作業を行えばよい。
【0034】
[洗身、連結]、[入浴]
入浴者の洗身作業、搬送車1とシャワー浴槽31との連結作業、入浴作業については、座位姿勢をとることができる入浴者に対して説明した[洗身、連結]の過程及び[入浴]の過程と同様の作業を行えばよい。
【0035】
[退浴、搬送]
入浴が終わると搭乗部3をシャワー浴槽31から搬送車1の台車部2上へ移動させた後、搬送車1とシャワー浴槽31との連結を解除する。その後、入浴者の身体を拭くなどし、入浴者を元の場所まで搬送する。そして、上肢用サイドフェンス11及び腰部用サイドフェンス12を倒した状態にした後、入浴者を搬送車1から別の搬送車等に移乗させて入浴作業を終了する。
【0036】
以上のように、搬送車1及びシャワー浴槽31を備えた入浴装置によれば、座位姿勢を維持できる入浴者及び座位姿勢を維持できない入浴者の双方に対して、仰臥位状態でのシャワー浴を提供することができる。このため、入浴者の身体の状態に合うようなシャワー浴用の入浴装置を、シャワー浴槽31と姿勢変更可能な搬送車1とで提供することができる。なお、シャワー浴槽31は左右両側方及び前方が開放されていたが、左右いずれかの側方及び前方が開放された構成のシャワー浴槽であってもよい。
【0037】
(実施形態2)
図11は実施形態2に係る入浴装置であり、浴槽38に搬送車1を連結した状態を示している。浴槽38は、入浴者を仰臥位状態で浴槽内の湯水に浸漬させて入浴させるための浴槽、すなわち仰臥位で湯中浴を行う仰臥位湯中浴槽である。浴槽38内には浴槽38の底壁を貫通して支柱39が立設され、支柱39の上端部に受け枠40が設けられ、受け枠40上に3本のレール41a~41cが設けられている。2本のレール41a、41b間の距離は、搬送車1の2本のレール6間の距離と同じである。2本のレール41a、41bの高さは搬送車1の搭乗部3が上限位置に上昇したときの2本のレール6の高さと同じである。なお、レール41cを備えていることで、搬送車1に比べてレール間の距離が大きい別の搬送車を浴槽38に連結する際にはレール41a、41cを使用することができる。また、浴槽38は昇降するように構成されている。
【0038】
浴槽38の長辺側の側面には、搬送車1が浴槽38に連結するための浴槽側連結部42が設けられており、その構造はシャワー浴槽31に設けられている浴槽側連結部37と同様である。搬送車1が浴槽38に連結する際の仕組みは、搬送車1がシャワー浴槽31に連結する仕組みと同様であるため説明を省略する。
【0039】
次に、座位姿勢を維持できる入浴者に対して、搬送車1を用いて入浴(湯中浴)させる場合について説明する。実施形態1において座位姿勢を維持できる入浴者に対して説明した[移乗、搬送]、[洗身、連結]の各過程において、シャワー浴槽31が浴槽38に代わるだけであって作業内容はほぼ同じであるため説明を省略する。以下に、入浴以降の過程について説明する。
【0040】
[入浴]
連結の過程が終了すると、搭乗部3を搬送車1から浴槽38の方へスライドさせて浴槽38内のレール41a、41b上に移動させた後、浴槽38を上昇させる。浴槽38内には湯水が貯められており、浴槽38が所定の高さまで上昇することにより、搭乗部3上の入浴者を入浴させることができる。
【0041】
[退浴、搬送]
入浴が終わると浴槽38を降下させ、搭乗部3を浴槽38から搬送車1の台車部2上へ移動させた後、搬送車1と浴槽38との連結を解除する。その後、入浴者の身体を拭くなどし、搭乗部3を椅子状態にして入浴者を元の場所まで搬送する。そして、脚受け部10を臀部受け部9の下方の空間に収納した状態にし、必要に応じて上肢用サイドフェンス11及び腰部用サイドフェンス12を倒した状態にした後、入浴者を搬送車1から別の車椅子等に移乗させて入浴作業を終了する。
【0042】
次に、座位姿勢を維持できない入浴者に対して、搬送車1を用いて入浴(湯中浴)させる場合について説明する。実施形態1において座位姿勢を維持できない入浴者に対して説明した[移乗、搬送]、[洗身、連結]の各過程において、シャワー浴槽31が浴槽38に代わるだけであって作業内容はほぼ同じであるため説明を省略する。また、[入浴]の過程は、この実施形態2において座位姿勢を維持できる入浴者に対して説明した[入浴]過程と同様であるため説明を省略する。以下に、退浴以降の過程について説明する。
【0043】
[退浴、搬送]
入浴が終わると浴槽38を降下させ、搭乗部3を浴槽38から搬送車1の台車部2上へ移動させた後、搬送車1と浴槽38との連結を解除する。その後、入浴者の身体を拭くなどし、入浴者を元の場所まで搬送する。そして、上肢用サイドフェンス11及び腰部用サイドフェンス12を倒した状態にした後、入浴者を搬送車1から別の搬送車等に移乗させて入浴作業を終了する。
【0044】
(実施形態3)
図12は実施形態3に係る入浴装置であり、浴槽として、座位でシャワー浴を行うシャワー浴槽(座位シャワー浴槽)43を示している。シャワー浴槽43では、後方側壁が開閉可能な扉43aとなっており、扉43aを開くことで搬送車1をシャワー浴槽43内に出入りさせることができる。シャワー浴槽43の内側の側面には複数の噴射ノズル44が設けられている。搬送車1の搭乗部3を椅子状態として、台車部2とともに搬送車1の全体をシャワー浴槽43内に挿入するように構成されている。
【0045】
シャワー浴槽43は座位姿勢を維持できる入浴者に対してシャワー浴させることができる。すなわち、搭乗部3が椅子状態の搬送車1に入浴者を移乗させた後、シャワー浴槽43の近くまで搬送し、必要に応じて洗身を行った後、搬送車1をシャワー浴槽43内に挿入して扉43aを閉める。そして、噴射ノズル44から湯水を噴射してシャワー浴を行う。シャワー浴が終了すると搬送車1をシャワー浴槽43から出して入浴者の身体を拭くなどした後、入浴者を元の場所まで搬送し、入浴者を搬送車1から別の車椅子等に移乗させて入浴作業を終了する。
【0046】
そして、シャワー浴槽(仰臥位シャワー浴槽)31と、浴槽(仰臥位湯中浴槽)38及び/又はシャワー浴槽(座位シャワー浴槽)43とを備え、これらの浴槽と搬送車1を用いて入浴者を入浴させる入浴システムを構成することができる。すなわち、シャワー浴槽31と、シャワー浴槽31とは異なる少なくとも1種類の浴槽とを備える入浴システムを構成することができる。この構成によれば、1つの搬送車を、シャワー浴槽を含む複数種類の浴槽に利用できるため、浴槽ごとに専用の搬送車を購入し取り揃える必要をなくすことができる。
【0047】
なお、実施形態1~3で説明した各浴槽とは異なる種類の浴槽として、昇降扉を備えた浴槽であって、昇降扉を下げ、浴槽内に椅子状態の搭乗部をスライドさせた後、扉を上げて入浴させる浴槽を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、入浴介助に用いる入浴装置及び入浴システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 搬送車
2 台車部
3 搭乗部
7 台車側連結部
7a ローラ
7b フック
8 背凭れ部
9 臀部受け部
10 脚受け部
31 (仰臥位)シャワー浴槽
37 浴槽側連結部
37a ケース
37b 係入穴
38 浴槽
42 浴槽側連結部
43 (座位)シャワー浴槽