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特開2022-163252サーバラック用電気錠、サーバラック扉施解錠システムおよび後付電気錠
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  • 特開-サーバラック用電気錠、サーバラック扉施解錠システムおよび後付電気錠 図1
  • 特開-サーバラック用電気錠、サーバラック扉施解錠システムおよび後付電気錠 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163252
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】サーバラック用電気錠、サーバラック扉施解錠システムおよび後付電気錠
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/00 20060101AFI20221019BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20221019BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
E05B65/00 N
E05B47/00 R
E05B49/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068068
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】521160579
【氏名又は名称】アルコ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】吉見 ▲つぐ▼
(72)【発明者】
【氏名】酒井 尚春
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真文
(72)【発明者】
【氏名】長尾 友樹
(72)【発明者】
【氏名】笠間 眞哉
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 健治
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 博昭
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA00
2E250BB09
2E250DD07
2E250FF18
(57)【要約】
【課題】サーバラックの扉に後付けすることができる、サーバラック用電気錠を提供する。
【解決手段】電気錠14は、表面パネル31、本体32および連動ロッド33を備えている。表面パネル31は、サーバラック2の扉4の外面に配置される。本体32は、扉4の内面に配置され、扉4に形成されている既存の孔35が利用されて、その孔35に挿通されるねじ34により表面パネル31に固定される。連動ロッド33は、スイングハンドル13の開方向の回動に伴って右側に移動する。本体32には、ソレノイド43が備えられており、ソレノイド43のプランジャ45が進出位置に進出した状態では、連動ロッド33に取り付けられたストッパ41がプランジャ45に当接し、スイングハンドル13の回動が規制されることにより、扉4が施錠される。ソレノイド43への通電により、ソレノイド43のプランジャ45が進出位置から退避位置に退避すると、扉4が解錠される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の孔が形成されたパネルを有する扉と、前記扉に設けられ、前記扉を開ける際に閉位置から開方向に回動操作される操作部材とを備えるサーバラックに用いられる電気錠であって、
前記扉の外面に配置される表面パネルと、
前記扉の内面に前記扉を挟んで前記表面パネルと対向して配置される本体と、
前記操作部材の前記開方向の回動に伴って所定方向に移動する連動部材と、を含み、
前記本体は、前記孔に前記扉の内面側から挿通される締結具により、前記表面パネルに固定され、
前記本体には、進出位置と退避位置とに変位可能なプランジャを有するソレノイドと、前記プランジャと一体的に移動する規制部とが備えられ、
前記ソレノイドは、前記プランジャが前記進出位置に進出した状態で、前記操作部材が前記閉位置から前記開方向に操作されるときの前記連動部材の所定部の移動経路上に前記規制部が位置し、前記プランジャが前記退避位置に退避した状態で、前記規制部が前記移動経路上に位置しないように配置されている、サーバラック用電気錠。
【請求項2】
前記本体には、前記操作部材が前記閉位置にある状態における前記所定部の位置と前記プランジャが前記進出位置に進出した状態における前記規制部の位置との間を検知位置とし、前記所定部が検知位置に存在していることを検知するセンサがさらに備えられている、請求項1に記載のサーバラック用電気錠。
【請求項3】
サーバラックの扉に設けられた電気錠と、
認証情報を受け付ける受付部と、
認証情報を記憶する記憶部と、
制御部と、を含み、
前記電気錠は、
扉の外面に配置される表面パネルと、
前記扉の内面に前記扉を挟んで前記表面パネルと対向して配置される本体と、
前記扉を開ける際に閉位置から開方向に回動操作される操作部材の前記開方向の回動に伴って所定方向に移動する連動部材と、を含み、
前記本体には、
進出位置と退避位置とに変位可能なプランジャを有するソレノイドと、
前記プランジャと一体的に移動する規制部と、が備えられ、
前記ソレノイドは、前記プランジャが前記進出位置に進出した状態で、前記操作部材が前記閉位置から前記開方向に操作されるときの前記連動部材の所定部の移動経路上に前記規制部が位置し、前記プランジャが前記退避位置に退避した状態で、前記規制部が前記移動経路上に位置しないように配置され、
前記制御部は、
前記受付部が認証情報を受け付けたことに応じて、受け付けた認証情報と前記記憶部に記憶されている認証情報とを比較し、両者が一致する場合に認証成立と判断し、両者が一致しない場合に認証不成立と判断する認証処理を行い、
前記認証成立と判断した場合に、前記ソレノイドへの通電を許可する通電許可信号を出力する、サーバラック扉施解錠システム。
【請求項4】
前記本体には、前記操作部材が前記閉位置にある状態における前記所定部の位置と前記プランジャが前記進出位置に進出した状態における前記規制部の位置との間を検知位置とし、前記所定部が前記検知位置に存在していることを検知するセンサがさらに備えられており、
前記制御部から前記通電許可信号を受信した後、前記センサの出力から前記所定部が前記検知位置に到達したと判断したことに応じて、前記ソレノイドに駆動電流を供給する通電制御部、をさらに含む、請求項3に記載のサーバラック扉施解錠システム。
【請求項5】
前記通電制御部は、前記センサの出力から前記所定部が前記検知位置を通過し終えたと判断したことに応じて、前記ソレノイドへの駆動電流の供給を停止する、請求項4に記載のサーバラック扉施解錠システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記通電許可信号の出力開始から所定時間が経過したことに応じて、前記ソレノイドへの通電を禁止する通電禁止信号を出力する、請求項3または4に記載のサーバラック扉施解錠システム。
【請求項7】
扉の外面に配置される表面パネルと、
前記扉の内面に前記扉を挟んで前記表面パネルと対向して配置される本体と、
前記扉を開ける際に閉位置から開方向に回動操作される操作部材の前記開方向の回動に伴って所定方向に移動する連動部材と、を含み、
前記本体には、
進出位置と退避位置とに変位可能なプランジャを有するソレノイドと、
前記プランジャと一体的に移動する規制部と、が備えられ、
前記ソレノイドは、前記プランジャが前記進出位置に進出した状態で、前記操作部材が前記閉位置から前記開方向に操作されるときの前記連動部材の所定部の移動経路上に前記規制部が位置し、前記プランジャが前記退避位置に退避した状態で、前記規制部が前記移動経路上に位置しないように配置され、
前記本体には、前記操作部材が前記閉位置にある状態における前記所定部の位置と前記プランジャが前記進出位置に進出した状態における前記規制部の位置との間を検知位置とし、前記所定部が検知位置に到達したことを検知するセンサがさらに備えられている、後付電気錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバラック用電気錠、サーバラック扉施解錠システムおよび後付け電気錠に関する。
【背景技術】
【0002】
データセンタのサーバ室には、多数のサーバラックが設けられ、各サーバラックには、ファイルを管理するファイルサーバやデータベースを管理するデータベースサーバなどの各種のサーバが収容されている。
【0003】
シングルテナント方式を採用したデータセンタでは、テナントごとにサーバラックが割り当てられ、他のテナントのユーザによるサーバへのアクセスを防止するため、各サーバラックの扉に錠が設けられる。データセンタの警備システムの一例では、各サーバラックの扉を施錠および解錠するキー(鍵)を保管するキー保管箱がサーバ室の中に設置されている。キー保管箱には、カードリーダが備えられており、テナントのユーザによって専用のICカードがカードリーダにかざされると、ICカードからカードリーダに識別情報が読み出され、その識別情報を用いた認証に成功すると、そのテナントのサーバラックのキーが収納されているキー収納部の蓋が開かれる。ユーザは、キー収納部から取り出したキーでサーバラックの扉を解錠して、サーバラック内のサーバにアクセスすることができる。一方、識別情報を用いた認証に成功せずに、サーバラックの扉が開かれると、警報が発せられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-133538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サーバラックの扉に設けられた錠が電気錠または電子錠であれば、ICカードをカードリーダにかざすだけで、キーを用いずに、サーバラックの扉を解錠することができる。しかし、サーバラックの扉の錠を鍵により施解錠(施錠および解錠)される錠から電気錠または電子錠に変更するには、現状、錠を付け替えるか、または、扉を交換するしかなく、高額の費用がかかってしまう。
【0006】
本発明の目的は、サーバラックの扉に後付けすることができる、サーバラック用電気錠を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、サーバラックの扉の施解錠をキー(鍵)を用いずに行うことができる、サーバラック扉施解錠システムを提供することである、
【0008】
本発明のさらに他の目的は、消費電力を低く抑えることができる、後付電気錠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係るサーバラック用電気錠は、多数の孔が形成されたパネルを有する扉と、扉に設けられ、扉を開ける際に閉位置から開方向に回動操作される操作部材とを備えるサーバラックに用いられる電気錠であって、扉の外面に配置される表面パネルと、扉の内面に扉を挟んで表面パネルと対向して配置される本体と、操作部材の開方向の回動に伴って所定方向に移動する連動部材とを含み、本体は、孔に扉の内面側から挿通される締結具により、表面パネルに固定され、本体には、進出位置と退避位置とに変位可能なプランジャを有するソレノイドと、プランジャと一体的に移動する規制部とが備えられ、ソレノイドは、プランジャが進出位置に進出した状態で、操作部材が閉位置から開方向に操作されるときの連動部材の所定部の移動経路上に規制部が位置し、プランジャが退避位置に退避した状態で、規制部が移動経路上に位置しないように配置されている。
【0010】
この構成によれば、サーバラック用電気錠は、表面パネル、本体および連動部材を備えている。表面パネルは、サーバラックの扉の外面に配置される。本体は、扉の内面に配置される。連動部材は、操作部材の開方向の回動に伴って所定方向に移動する。操作部材は、扉に設けられ、扉を開ける際に閉位置から開方向に回動操作される。
【0011】
本体には、ソレノイドが備えられており、ソレノイドのプランジャには、プランジャと一体的に移動する規制部が設けられている。プランジャが進出位置に進出した状態では、操作部材が閉位置から開方向に操作されるときの連動部材の所定部の移動経路上に規制部が位置する。そのため、操作部材が閉位置から開方向に回動操作されて、連動部材が所定方向に移動すると、連動部材の所定部が規制部に当接し、連動部材のそれ以上の移動が阻害される。したがって、操作部材をそれ以上に回動操作することができず、扉を開けることができない。すなわち、操作部材が閉位置にあり、ソレノイドのプランジャが進出位置に進出した状態では、サーバラックの扉が施錠されている。
【0012】
ソレノイドに駆動電流が供給されて、プランジャが進出位置から退避位置に退避すると、規制部が所定部の移動経路上から外れる。これにより、連動部材の所定方向の移動が許容されるので、操作部材を回動操作して、扉を開けることができる。すなわち、ソレノイドへの通電により、ソレノイドのプランジャが進出位置から退避位置に退避すると、サーバラックの扉が解錠される。
【0013】
よって、サーバラックの扉の施解錠(施錠および解錠)をキー(鍵)を用いずに遠隔操作により行うことができる。
【0014】
また、本体は、表面パネルに対してサーバラックの扉を挟んで対向する位置に配置され、扉のパネルに形成されている既存の孔が利用されて、その孔に扉の内面側から挿通される締結具により、表面パネルに固定される。これにより、扉に穴開け加工を行わなくても、電気錠を扉に容易に後付けすることができる。そのため、サーバラックの扉の錠をキーにより施解錠される錠から電気錠に変更するのに要するコストを低減できる。
【0015】
しかも、本体の外側に表面パネルが配置されるので、扉の外側から本体(ソレノイドのプランジャ)を物理的に操作することはできない。そのため、扉の外側からの物理的な操作による不正な解錠を防止でき、扉に後付けされる電気錠であっても、扉に内蔵される電気錠と同様のセキュリティを確保することができる。
【0016】
本体には、操作部材が閉位置にある状態における所定部の位置とプランジャが進出位置に進出した状態における規制部の位置との間を検知位置とし、所定部が検知位置に存在していることを検知するセンサがさらに備えられていることが好ましい。
【0017】
操作部材が閉位置から開方向に回動操作されたときに、連動部材の所定部が規制部に当接する前に、所定部がセンサの検知位置に到達する。そのため、扉を解錠する場合に、所定部が検知位置に到達したことに応じて、ソレノイドへの通電を開始して、プランジャを進出位置から退避位置に退避させるようにすれば、それ以前からソレノイドの通電がなされていなくても、操作部材の回動操作が阻害されずにすむ。これにより、ソレノイドの通電時間の短縮を図ることができ、ソレノイドによる消費電力の低減を図ることができる。その結果、多数のサーバラックが設けられたサーバ室では、サーバ室全体の消費電力を低く抑えることができる。また、多数のサーバラックの扉が一斉に解錠された場合に、ソレノイドの通電時間が長いと、電源の電流が多くなるので、それを考慮した電流容量を電源に確保する必要があるが、ソレノイドの通電時間が短ければ、電源の電流の増大が抑制されるので、低い電流容量の電源を採用することができ、電源にかかるコストの低減を図ることができる。
【0018】
本発明の他の局面に係るサーバラック扉施解錠システムは、サーバラックの扉に設けられた電気錠と、認証情報を受け付ける受付部と、認証情報を記憶する記憶部と、制御部とを含み、電気錠は、扉の外面に配置される表面パネルと、扉の内面に扉を挟んで表面パネルと対向して配置される本体と、扉を開ける際に閉位置から開方向に回動操作される操作部材の開方向の回動に伴って所定方向に移動する連動部材とを含み、本体には、進出位置と退避位置とに変位可能なプランジャを有するソレノイドと、プランジャと一体的に移動する規制部とが備えられ、ソレノイドは、プランジャが進出位置に進出した状態で、操作部材が閉位置から開方向に操作されるときの連動部材の所定部の移動経路上に規制部が位置し、プランジャが退避位置に退避した状態で、規制部が移動経路上に位置しないように配置され、制御部は、受付部が認証情報を受け付けたことに応じて、受け付けた認証情報と記憶部に記憶されている認証情報とを比較し、両者が一致する場合に認証成立と判断し、両者が一致しない場合に認証不成立と判断する認証処理を行い、認証成立と判断した場合に、ソレノイドへの通電を許可する通電許可信号を出力する。
【0019】
この構成によれば、サーバラックの扉に設けられた電気錠は、表面パネル、本体および連動部材を備えている。表面パネルは、サーバラックの扉の外面に配置される。本体は、扉の内面に配置される。連動部材は、操作部材の開方向の回動に伴って所定方向に移動する。操作部材は、扉に設けられ、扉を開ける際に閉位置から開方向に回動操作される。
【0020】
本体には、ソレノイドが備えられており、ソレノイドのプランジャには、プランジャと一体的に移動する規制部が設けられている。プランジャが進出位置に進出した状態では、操作部材が閉位置から開方向に操作されるときの連動部材の所定部の移動経路上に規制部が位置する。そのため、操作部材が閉位置から開方向に回動操作されて、連動部材が所定方向に移動すると、連動部材の所定部が規制部に当接し、連動部材のそれ以上の移動が阻害される。したがって、操作部材をそれ以上に回動操作することができず、扉を開けることができない。すなわち、操作部材が閉位置にあり、ソレノイドのプランジャが進出位置に進出した状態では、サーバラックの扉が施錠されている。
【0021】
サーバラック扉施解錠システムには、認証情報を受け付ける受付部と、認証情報を記憶する記憶部と、制御部とが含まれる。受付部に認証情報が受け付けられると、制御部により、その受け付けられた認証情報と記憶部に記憶されている認証情報とが比較されて、両者が一致する場合、認証成立と判断され、両者が一致しない場合、認証不成立と判断される。認証成立と判断した場合に、ソレノイドへの通電を許可する通電許可信号が出力される。
【0022】
通電許可信号の出力後、ソレノイドに駆動電流が供給されて、プランジャが進出位置から退避位置に退避すると、規制部が連動部材の所定部の移動経路上から外れる。これにより、連動部材の所定方向の移動が許容されるので、操作部材を回動操作して、扉を開けることができる。すなわち、ソレノイドへの通電により、ソレノイドのプランジャが進出位置から退避位置に退避すると、サーバラックの扉が解錠される。
【0023】
よって、サーバラックの扉の施解錠(施錠および解錠)をキー(鍵)を用いずに遠隔操作により行うことができる。
【0024】
本体には、操作部材が閉位置にある状態における所定部の位置とプランジャが進出位置に進出した状態における規制部の位置との間を検知位置とし、所定部が検知位置に存在していることを検知するセンサがさらに備えられ、サーバラック扉施解錠システムには、制御部から通電許可信号を受信した後、センサの出力から所定部が検知位置に到達したと判断したことに応じて、ソレノイドに駆動電流を供給する通電制御部がさらに含まれることが好ましい。
【0025】
この構成では、操作部材が閉位置から開方向に回動操作されたときに、連動部材の所定部が規制部に当接する前に、所定部がセンサの検知位置に到達する。そのため、扉を解錠する場合に、所定部が検知位置に到達したことに応じて、ソレノイドへの通電を開始して、プランジャを進出位置から退避位置に退避させるようにすれば、それ以前からソレノイドの通電がなされていなくても、操作部材の回動操作が阻害されずにすむ。これにより、ソレノイドの通電時間の短縮を図ることができ、ソレノイドによる消費電力の低減を図ることができる。その結果、多数のサーバラックが設けられたサーバ室では、サーバ室全体の消費電力を低く抑えることができる。また、多数のサーバラックの扉が一斉に解錠された場合に、ソレノイドの通電時間が長いと、電源の電流が多くなるので、それを考慮した電流容量を電源に確保する必要があるが、ソレノイドの通電時間が短ければ、電源の電流の増大が抑制されるので、低い電流容量の電源を採用することができ、電源にかかるコストの低減を図ることができる。
【0026】
通電制御部は、センサの出力から所定部が検知位置を通過し終えたと判断したことに応じて、ソレノイドへの駆動電流の供給を停止してもよい。
【0027】
この構成により、ソレノイドの通電時間を最短にすることができる。その結果、システムの動作電力を低減させることができる。
【0028】
制御部は、通電許可信号の出力開始から所定時間が経過したことに応じて、ソレノイドへの通電を禁止する通電禁止信号を出力してもよい。
【0029】
本発明のさらに他の局面に係る後付電気錠は、扉の外面に配置される表面パネルと、扉の内面に扉を挟んで表面パネルと対向して配置される本体と、扉を開ける際に閉位置から開方向に回動操作される操作部材の開方向の回動に伴って所定方向に移動する連動部材とを含み、本体には、進出位置と退避位置とに変位可能なプランジャを有するソレノイドと、プランジャと一体的に移動する規制部とが備えられ、ソレノイドは、プランジャが進出位置に進出した状態で、操作部材が閉位置から開方向に操作されるときの連動部材の所定部の移動経路上に規制部が位置し、プランジャが退避位置に退避した状態で、規制部が移動経路上に位置しないように配置され、本体には、操作部材が閉位置にある状態における所定部の位置とプランジャが進出位置に進出した状態における規制部の位置との間を検知位置とし、所定部が検知位置に到達したことを検知するセンサがさらに備えられている。
【0030】
この構成によれば、外付電気錠は、表面パネル、本体および連動部材を備えている。表面パネルは、サーバラックの扉の外面に配置される。本体は、扉の内面に配置される。連動部材は、操作部材の開方向の回動に伴って所定方向に移動する。操作部材は、扉に設けられ、扉を開ける際に閉位置から開方向に回動操作される。
【0031】
本体には、ソレノイドが備えられており、ソレノイドのプランジャには、プランジャと一体的に移動する規制部が設けられている。プランジャが進出位置に進出した状態では、操作部材が閉位置から開方向に操作されるときの連動部材の所定部の移動経路上に規制部が位置する。そのため、操作部材が閉位置から開方向に回動操作されて、連動部材が所定方向に移動すると、連動部材の所定部が規制部に当接し、連動部材のそれ以上の移動が阻害される。したがって、操作部材をそれ以上に回動操作することができず、扉を開けることができない。すなわち、操作部材が閉位置にあり、ソレノイドのプランジャが進出位置に進出した状態では、サーバラックの扉が施錠されている。
【0032】
ソレノイドに駆動電流が供給されて、プランジャが進出位置から退避位置に退避すると、規制部が所定部の移動経路上から外れる。これにより、連動部材の所定方向の移動が許容されるので、操作部材を回動操作して、扉を開けることができる。すなわち、ソレノイドへの通電により、ソレノイドのプランジャが進出位置から退避位置に退避すると、サーバラックの扉が解錠される。
【0033】
よって、サーバラックの扉の施解錠(施錠および解錠)をキー(鍵)を用いずに遠隔操作により行うことができる。
【0034】
また、本体は、表面パネルに対してサーバラックの扉を挟んで対向する位置に配置される。これにより、本体の外側に表面パネルが配置されるので、扉の外側から本体(ソレノイドのプランジャ)を物理的に操作することはできない。そのため、扉の外側からの物理的な操作による不正な解錠を防止でき、扉に後付けされる電気錠であっても、扉に内蔵される電気錠と同様のセキュリティを確保することができる。
【0035】
本体には、操作部材が閉位置にある状態における所定部の位置とプランジャが進出位置に進出した状態における規制部の位置との間を検知位置とし、所定部が検知位置に存在していることを検知するセンサがさらに備えられている。
【0036】
操作部材が閉位置から開方向に回動操作されたときに、連動部材の所定部が規制部に当接する前に、所定部がセンサの検知位置に到達する。そのため、扉を解錠する場合に、所定部が検知位置に到達したことに応じて、ソレノイドへの通電を開始して、プランジャを進出位置から退避位置に退避させるようにすれば、それ以前からソレノイドの通電がなされていなくても、操作部材の回動操作が阻害されずにすむ。これにより、ソレノイドの通電時間の短縮を図ることができ、ソレノイドによる消費電力の低減を図ることができる。その結果、多数のサーバラックが設けられたサーバ室では、サーバ室全体の消費電力を低く抑えることができる。また、多数のサーバラックの扉が一斉に解錠された場合に、ソレノイドの通電時間が長いと、電源の電流が多くなるので、それを考慮した電流容量を電源に確保する必要があるが、ソレノイドの通電時間が短ければ、電源の電流の増大が抑制されるので、低い電流容量の電源を採用することができ、電源にかかるコストの低減を図ることができる。
【0037】
規制部は、プランジャの一部であってもよいし、プランジャと別体に形成されて、プランジャに固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、サーバラックの扉に電気錠を後付けすることができ、これにより、サーバラックの扉の施解錠をキー(鍵)を用いずに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施形態に係るサーバラック扉施解錠システムの構成を示す図である。
図2】電気錠の構成を示す後面図(扉の内面側から見た図)である。
図3図2に示される切断面線A-Aにおける扉の断面図である。
図4】ユーザがサーバラックを利用する際に、データ収集サーバによって行われる処理の流れを示す図である。
図5】解除処理の流れを示すフローチャートである。
図6】電気錠の他の構成を示す後面図(扉の内面側から見た図)である。
図7図6に示される切断面線B-Bにおける扉の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0041】
<サーバラック扉施解錠システム>
図1は、本発明の一実施形態に係るサーバラック扉施解錠システム1の構成を示す図である。
【0042】
サーバラック扉施解錠システム1は、データセンタなど、多数のサーバラック2が設けられたサーバ室3を有する施設に組まれて、各サーバラック2の扉4を遠隔操作により施解錠(施錠および解錠)するシステムである。各サーバラック2には、ファイルを管理するファイルサーバやデータベースを管理するデータベースサーバなどの各種のサーバが収容されている。
【0043】
各サーバラック2の扉4は、右側の端部に回動軸線を有し、その回動軸線を中心に、その正面から見て右側に開く右開きの構成である。以下、左右方向については、扉4を正面(前面)から見た状態を基準に規定する。扉4が右開きの構成である場合を例にとるが、扉4が左開きであってもよく、その場合、以下の説明における各部の構成が左右反転されるとよい。扉4は、四角枠状の外周部の内側に、矩形板状のハンドル支持パネル11とハニカムメッシュ状の放熱パネル12とを左右に並べた構成を有している。
【0044】
ハンドル支持パネル11には、スイングハンドル13が設けられている。スイングハンドル13は、扉4が閉じられた状態で、ハンドル支持パネル11に沿った状態で上下に延びている。このスイングハンドル13が閉位置に位置する状態から、スイングハンドル13の下端が前側に引き上げられた後、スイングハンドル13が反時計回りの方向(すなわち、右側)に回動されると、扉4が開く。
【0045】
放熱パネル12には、電気錠14が後付けされている。電気錠14には、I/O(Input/Output)ターミナル15が接続されており、電気錠14は、I/Oターミナル15から出力される駆動信号により施錠状態と解錠状態とに切り替えられる。電気錠14の施錠状態では、スイングハンドル13の回動が禁止され、扉4を開けることができない。電気錠14の解錠状態では、スイングハンドル13の回動が許容され、スイングハンドル13の回動により扉4を開けることができる。
【0046】
また、サーバ室5には、ゲートウェイサーバ16が設けられている。各I/Oターミナル15の入力端子には、ゲートウェイサーバ16から解錠信号が入力されるようになっている。I/Oターミナル15に解錠信号が入力されている間、電気錠14が解錠状態となる。
【0047】
サーバ室5にはさらに、タッチパネル17と、タッチパネル17に接続されたバーコードリーダ18とが設けられている。タッチパネル17は、バーコードリーダ18の操作パネルとして使用される。タッチパネル17の操作により、バーコードリーダ18が読取可能な状態にされ、その後、バーコードリーダ18に二次元バーコードがかざされると、バーコードリーダ18に二次元バーコードが読み取られる。
【0048】
ゲートウェイサーバ16およびタッチパネル17には、それぞれLAN(Local Area Network)ケーブル21,22の一端が接続されている。LANケーブル21,22の他端は、スイッチングハブ23に接続されている。スイッチングハブ23は、LANケーブル24を介して、たとえば、管理室25に設置されているスイッチングハブ26に接続されている。管理室25には、データ収集サーバ27が設けられている。データ収集サーバ27には、LANケーブル28の一端が接続され、LANケーブル28の他端は、スイッチングハブ26に接続されている。これにより、データ収集サーバ27は、ゲートウェイサーバ16およびタッチパネル17との間でデータ通信を行うことができる。
【0049】
<電気錠>
図2は、電気錠14の構成を示す後面図(扉4の内面側から見た図)である。図3は、図2に示される切断面線A-Aにおける扉4の断面図である。
【0050】
電気錠14は、表面パネル31、本体32および連動ロッド33を備えている。
【0051】
表面パネル31は、樹脂またはアルミニウムもしくは鉄などの金属からなり、略矩形板状に形成されている。表面パネル31は、扉4の外面において、スイングハンドル13に対して右側に間隔を空けて配置されている。
【0052】
本体32は、扉4の内面において、扉4を挟んで表面パネル31と対向する位置に配置されている。本体32の外形は、表面パネル31の外形よりも小さい略矩形状をなし、本体32は、扉4の外面側から見たときに、表面パネル31の陰に完全に隠れている。
【0053】
本体32は、複数本(たとえば、4本)のねじ34により、表面パネル31に対して固定される。具体的には、本体32には、ねじ34を挿通させるねじ挿通孔が扉4の裏面(後面)と直交する前後方向(以下、単に「前後方向」という。)に貫通して形成されており、表面パネル31には、本体32の各ねじ挿通孔と対応する位置に、凹状のねじ穴が形成されている。そして、本体32の各ねじ挿通孔にねじ34が裏側(表面パネル31側と反対側)から挿通され、各ねじ34が放熱パネル12のハニカムメッシュ状を構成する六角形状の孔35に挿通されて、各ねじ34の先端部が表面パネル31のねじ穴にねじ込まれることにより、本体32が表面パネル31に対して固定される。
【0054】
なお、放熱パネル12は、ハニカムメッシュ状に限らず、たとえば、多数の円形孔(パンチング孔)が形成された構成でもよく、ねじ34を挿通可能なサイズの多数の孔が放熱パネル12を貫通して形成されていれば、その孔の形状や配置はとくに限定されない。
【0055】
また、本体32には、左右の両端部に、ロッド支持壁36が形成されている。左右のロッド支持壁36は、それぞれ扉4の内面側(裏側)に突出して上下方向に延び、扉4の裏面に沿った左右方向に互いに間隔を空けて対向している。
【0056】
連動ロッド33は、たとえば、丸棒状に形成されている。連動ロッド33は、本体32の左右のロッド支持壁36に遊挿されて、扉4の裏面に沿った左右方向に延び、ロッド支持壁36により、左右方向に移動可能に支持されている。連動ロッド33のスイングハンドル13側(左側)と反対側の端部は、リンクアーム37の一方の端部に、前後方向に延びる連結軸38を中心に回動可能に接続されている。リンクアーム37の他方の端部は、スイングハンドル13と一体的に回動するように設けられたロックアーム39の先端部に、前後方向に延びる連結軸40を中心に回動可能に接続されている。
【0057】
この構成により、スイングハンドル13の下端が前側に引き上げられた後、スイングハンドル13が右側に回動されると、ロックアーム39がスイングハンドル13と一体的に回動し、そのロックアーム39の回動がリンクアーム37を介して連動ロッド33に伝達されることにより、連動ロッド33が右側に直線的に移動する。
【0058】
連動ロッド33には、本体32の左右のロッド支持壁36の間に位置する部分に、四角柱状のストッパ41がねじ42により位置調整可能に取り付けられている。ストッパ41は、スイングハンドル13の回動による連動ロッド33の移動の範囲内において、左右のロッド支持壁36に当接しない位置に位置調整して固定される。
【0059】
また、本体32には、ソレノイド43が備えられている。本体32の右側のロッド支持壁36の左側面には、ソレノイドブラケット44が固定されており、ソレノイド43は、ソレノイドブラケット44に支持されている。ソレノイド43は、プランジャ45を上方に向けて、プランジャ45が進出位置に進出した状態では、ストッパ41の移動経路上に規制部の一例としてのプランジャ45の先端部46が位置し、プランジャ45が退避位置に退避した状態では、プランジャ45の先端部46がストッパ41の移動経路の下方に位置して、その移動経路上に位置しないように配置されている。
【0060】
さらに、本体32には、透過型フォトセンサ47が備えられている。スイングハンドル13が閉位置に位置する状態(スイングハンドル13が回動されていない初期状態)では、ソレノイド43のプランジャ45の位置に対して左側に離間した位置に、連動ロッド33に取り付けられたストッパ41が位置している。透過型フォトセンサ47は、スイングハンドル13が閉位置に位置する状態でのストッパ41の位置とプランジャ45の位置との間を検知位置とし、発光素子48から出射されるセンサ光が検知位置を通って受光素子49に入射するように配置されている。
【0061】
また、本体32には、図示されていないが、ソレノイド43に駆動電流を供給するドライバなどを含む回路基板が備えられている。
【0062】
<利用認証処理>
図4は、ユーザがサーバラック2を利用する際に、データ収集サーバ27によって行われる処理の流れを示す図である。
【0063】
サーバラック扉施解錠システム1では、たとえば、テナントごとにサーバラック2が割り当てられている。テナントのユーザがサーバラック2内のサーバを操作するには、サーバラック2の利用の申請を行う必要がある。サーバラック2の利用の申請は、たとえば、インターネットに接続されたPC(パーソナルコンピュータ)などの端末から利用申請サイトにアクセスし、端末のディスプレイに表示される利用申請画面に、ユーザを識別する情報(ユーザID)、サーバラック2の利用を希望する期間(利用申請期間)およびメールアドレスなどの必要事項を入力することにより行われる。
【0064】
利用申請画面で入力された情報は、端末からデータ収集サーバ27に送信される。データ収集サーバ27が利用申請画面で入力された情報を受信すると、その情報がデータ収集サーバ27に利用申請情報として登録される(サーバラック利用申請登録)。その後、データ収集サーバ27では、二次元バーコードが作成されて、その二次元バーコードの作成に用いたバーコード作成情報が認証情報として利用申請情報と対応づけて登録される。
【0065】
登録時またはユーザにより指定された利用申請期間の開始日から所定日数前に、データ収集サーバ27から利用申請情報に含まれるメールアドレス宛に、二次元バーコードを記載した電子メールが送信される(二次元バーコード付きメール送信)。
【0066】
サーバラック2の利用日になると、ユーザは、利用申請時に登録したメールアドレスに受信した電子メールに記載された二次元バーコードを紙に印刷してサーバ室3に持参するか、または、その二次元バーコードを表示可能なスマートフォンなどの端末をサーバ室3に持参して、サーバ室3に設置されているバーコードリーダ18に二次元バーコードをかざす。バーコードリーダ18に二次元バーコードがかざされると、バーコードリーダ18に二次元バーコードが読み取られ、その読み取られたスキャン情報が認証情報としてタッチパネル17経由でデータ収集サーバ27に送信される。
【0067】
スキャン情報(認証情報)を受信したデータ収集サーバ27では、その受信したスキャン情報がバーコード作成情報(認証情報)として登録されているか否かが判断される。スキャン情報がバーコード作成情報として登録されていると判断された場合には、バーコード作成情報と対応づけて登録されている利用申請期間に現在日時が含まれているか否かが判断される。そして、現在日時が利用申請期間に含まれていると判断された場合、認証成立と判断されて、データ収集サーバ27からサーバ室3のゲートウェイサーバ16に通電許可信号が送信される(通電許可信号送信)。通電許可信号は、サーバラック2の扉4に設けられた電気錠14のソレノイド43の通電を許可、つまり解錠を許可する信号であり、通電許可信号には、その解錠を許可するサーバラック2を指定する情報が含まれる。
【0068】
通電許可信号の送信から所定時間が経過すると、データ収集サーバ27からゲートウェイサーバ16に通電禁止信号が送信される(通信禁止信号送信)。
【0069】
一方、データ収集サーバ27が受信したスキャン情報がバーコード作成情報として登録されていない場合、または、スキャン情報がバーコード作成情報として登録されているが、現在日時が利用申請期間に含まれていない場合には、認証不成立と判断されて、データ収集サーバ27からサーバ室3のタッチパネル17にエラー信号が送信される(エラー信号送信)。このエラー信号をタッチパネル17が受信すると、タッチパネル17の画面に、認証エラーが発生した旨が表示される。
【0070】
<解錠処理>
図5は、解除処理の流れを示すフローチャートである。
【0071】
ゲートウェイサーバ16では、解除処理が行われる。解除処理では、まず、データ収集サーバ27から通電許可信号を受信したか否かが判断される(ステップS1)。通電許可信号を受信していない場合(ステップS1のNO)、解除処理はその先に進まない。
【0072】
ゲートウェイサーバ16が通電許可信号を受信していない状態では、サーバラック2の扉4に設けられた電気錠14のソレノイド43に駆動電流が供給されておらず、ソレノイド43のプランジャ45が進出位置に進出し、プランジャ45の先端部46がストッパ41の移動経路上に位置している。そのため、スイングハンドル13が閉位置から回動操作されて、連動ロッド33が右側に移動すると、連動ロッド33に取り付けられたストッパ41がプランジャ45の先端部46に当接し、連動ロッド33がそれ以上に右側に移動することが阻止される。したがって、スイングハンドル13をそれ以上に回動操作することができず、扉4を開けることができない。
【0073】
ゲートウェイサーバ16が通電許可信号を受信すると、通電許可信号を受信したと判断されて(ステップS1のYES)、次に、通電許可信号に含まれる情報から指定されるサーバラック2の電気錠14の透過型フォトセンサ47が出力する信号に基づいて、連動ロッド33に取り付けられたストッパ41が透過型フォトセンサ47の検知位置に到達したか否かが判断される(ステップS2)。透過型フォトセンサ47が出力する信号は、I/Oターミナル15を介して、ゲートウェイサーバ16に入力されている。
【0074】
ユーザが扉4を開けるために、スイングハンドル13を閉位置から回動操作すると、スイングハンドル13のわずかな回動により、連動ロッド33が右側に移動し、ストッパ41が透過型フォトセンサ47の検知位置に到達する。ストッパ41が透過型フォトセンサ47の検知位置に到達すると、ストッパ41により発光素子48からのセンサ光が遮られて、受光素子49にセンサ光が入射しなくなるので、その変化からストッパ41が透過型フォトセンサ47の検知位置に到達したと判断できる。ストッパ41が透過型フォトセンサ47の検知位置に到達したと判断されると(ステップS2のYES)、ゲートウェイサーバ16からI/Oターミナル15に解錠信号が送信される(ステップS3)。
【0075】
I/Oターミナル15が解錠信号を受信すると、I/Oターミナル15から電気錠14の回路基板に駆動信号が送信され、これに応じて、電気錠14の回路基板からソレノイド43に駆動電流が供給される。これにより、ソレノイド43のプランジャ45が進出位置から退避位置に退避し、プランジャ45の先端部46がストッパ41の移動経路の下方に移動する。そのため、スイングハンドル13の回動操作が続けられて、連動ロッド33が右側にさらに移動しても、ストッパ41がプランジャ45に当接しないので、スイングハンドル13を開位置まで回動させることができ、扉4を開けることができる。
【0076】
連動ロッド33の移動により、ストッパ41が透過型フォトセンサ47の検知位置を通過すると、発光素子48からのセンサ光が受光素子49に入射するようになる。したがって、ゲートウェイサーバ16では、センサ光が受光素子49に入射していない状態からセンサ光が受光素子49に入射する状態に切り替わったことを以て、ストッパ41が透過型フォトセンサ47の検知位置を通過したと判断することができる。ストッパ41が透過型フォトセンサ47の検知位置を通過したと判断されると(ステップS4のYES)、ゲートウェイサーバ16からI/Oターミナル15への解錠信号の送信が停止される(ステップS5)。
【0077】
I/Oターミナル15への解錠信号の送信が停止されると、I/Oターミナル15から電気錠14の回路基板への駆動信号の送信が停止され、これに応じて、電気錠14の回路基板からソレノイド43への駆動電流の供給が停止される。これにより、ソレノイド43のプランジャ45が退避位置から進出位置に進出し、プランジャ45の先端部46がストッパ41の移動経路上に移動する。
【0078】
プランジャ45の先端部46は、図2に示されるように、左側ほど上側に位置するように傾斜がつけられている。そのため、プランジャ45の先端部46がストッパ41の移動経路上に位置している状態で、スイングハンドル13が開位置から閉位置に向けて戻されても、連動ロッド33が左側に移動する途中、ストッパ41がプランジャ45の先端部46に当接したときに、ストッパ41からプランジャ45の先端部46に入力される力がプランジャ45を押し下げる力に変換されて、プランジャ45が押し下げられる。その結果、ストッパ41がプランジャ45の先端部46を乗り越えて左側にさらに移動し、スイングハンドル13が閉位置まで戻る。
【0079】
また、ストッパ41が透過型フォトセンサ47の検知位置を通過したと判断されなくても(ステップS4のNO)、データ収集サーバ27からゲートウェイサーバ16に通電禁止信号が送信されて、ゲートウェイサーバ16が通電禁止信号を受信すると(ステップS6のYES)、ゲートウェイサーバ16からI/Oターミナル15への解錠信号の送信が停止される(ステップS5)。
【0080】
<作用効果>
以上のように、サーバラック2の扉4に設けられた電気錠14は、表面パネル31、本体32および連動ロッド33を備えている。表面パネル31は、サーバラック2の扉4の外面に配置される。本体32は、扉4の内面に配置される。連動ロッド33は、スイングハンドル13の開方向の回動に伴って右側に移動する。スイングハンドル13は、扉4に設けられ、扉4を開ける際に閉位置から開方向に回動操作される。
【0081】
本体32には、ソレノイド43が備えられており、ソレノイド43のプランジャ45が進出位置に進出した状態では、スイングハンドル13が閉位置から開方向に操作されるときのストッパ41の移動経路上にプランジャ45の先端部46が位置する。そのため、スイングハンドル13が閉位置から開方向に回動操作されて、連動ロッド33が右側に移動すると、連動ロッド33に取り付けられたストッパ41がプランジャ45の先端部46に当接し、連動ロッド33のそれ以上の移動が阻害される。したがって、スイングハンドル13をそれ以上に回動操作することができず、扉4を開けることができない。すなわち、スイングハンドル13が閉位置にあり、ソレノイド43のプランジャ45が進出位置に進出した状態では、サーバラック2の扉4が施錠されている。
【0082】
サーバラック扉施解錠システム1には、二次元バーコードを読み取ることにより認証情報であるスキャン情報を受け付けるバーコードリーダ18と、認証情報であるバーコード作成情報を記憶するデータ収集サーバ27とが含まれる。バーコードリーダ18にスキャン情報が読み取られると、データ収集サーバ27により、そのスキャン情報とデータ収集サーバ27に記憶(登録)されているバーコード作成情報とが比較されて、両者が一致する場合、認証成立と判断され、両者が一致しない場合、認証不成立と判断される。認証成立と判断した場合に、ソレノイド43への通電を許可する通電許可信号が出力される。
【0083】
通電許可信号の出力後、ソレノイド43に駆動電流が供給されて、プランジャ45が進出位置から退避位置に退避すると、プランジャ45の先端部46がストッパ41の移動経路上から外れる。これにより、連動ロッド33の右側への移動が許容されるので、スイングハンドル13を回動操作して、扉4を開けることができる。すなわち、ソレノイド43への通電により、ソレノイド43のプランジャ45が進出位置から退避位置に退避すると、サーバラック2の扉4が解錠される。
【0084】
よって、サーバラック2の扉4の施解錠(施錠および解錠)をキー(鍵)を用いずに遠隔操作により行うことができる。
【0085】
本体32には、スイングハンドル13が閉位置にある状態におけるストッパ41の位置とプランジャ45が進出位置に進出した状態におけるプランジャ45の先端部46の位置との間を検知位置とし、ストッパ41が検知位置に存在していることを検知する透過型フォトセンサ47が備えられている。
【0086】
スイングハンドル13が閉位置から開方向に回動操作されたときに、連動ロッド33のストッパ41がプランジャ45の先端部46に当接する前に、ストッパ41が透過型フォトセンサ47の検知位置に到達する。そのため、扉4を解錠する場合に、ストッパ41が検知位置に到達したことに応じて、ソレノイド43への通電を開始して、プランジャ45を進出位置から退避位置に退避させることにより、それ以前からソレノイド43の通電がなされていなくても、スイングハンドル13の回動操作が阻害されずにすむ。これにより、ソレノイド43の通電時間の短縮を図ることができ、ソレノイド43による消費電力の低減を図ることができる。その結果、多数のサーバラック2が設けられたサーバ室3では、全体の消費電力を低く抑えることができる。また、多数のサーバラック2の扉4が一斉に解錠された場合に、ソレノイド43の通電時間が長いと、電源の電流が多くなるので、それを考慮した電流容量を電源に確保する必要があるが、ソレノイド43の通電時間が短ければ、電源の電流の増大が抑制されるので、低い電流容量の電源を採用することができ、電源にかかるコストの低減を図ることができる。
【0087】
また、透過型フォトセンサ47の出力からストッパ41が検知位置を通過し終えたと判断したことに応じて、ソレノイド43への駆動電流の供給が停止される。これにより、ソレノイド43の通電時間を最短にすることができる。その結果、システムの動作電力を低減させることができる。
【0088】
また、本体32は、表面パネル31に対してサーバラック2の扉4を挟んで対向する位置に配置され、扉4の表面パネル31に形成されている既存の孔35が利用されて、その孔35に扉4の内面側から挿通されるねじ34により、表面パネル31に固定される。これにより、扉4に穴開け加工を行わなくても、電気錠14を扉4に容易に後付けすることができる。そのため、サーバラック2の扉4の錠をキーにより施解錠される錠から電気錠14に変更するのに要するコストを低減できる。
【0089】
しかも、本体32の外側に表面パネル31が配置されるので、扉4の外側から本体32(ソレノイド43のプランジャ45)を物理的に操作することはできない。そのため、扉4の外側からの物理的な操作による不正な解錠を防止でき、扉4に後付けされる電気錠14であっても、扉4に内蔵される電気錠14と同様のセキュリティを確保することができる。
【0090】
<電気錠の他の構成>
図6は、電気錠14の他の構成を示す後面図(扉4の内面側から見た図)である。図7は、図6に示される切断面線B-Bにおける扉4の断面図である。
【0091】
図6および図7に示される電気錠14は、表面パネル61、本体62およびスイングアーム63を備えている。
【0092】
表面パネル61は、樹脂またはアルミニウムもしくは鉄などの金属からなり、略矩形板状に形成されている。表面パネル61は、扉4の外面において、スイングハンドル13に対して右側に間隔を空けて配置されている。
【0093】
本体62は、扉4の内面において、扉4を挟んで表面パネル61と対向する位置に配置されている。本体62の外形は、表面パネル61の外形よりも小さい略矩形状をなし、本体62は、扉4の外面側から見たときに、表面パネル61の陰に完全に隠れている。
【0094】
本体62は、裏面ブラケット64を備えている。裏面ブラケット64は、樹脂またはアルミニウムもしくは鉄などの金属からなり、複数本(たとえば、4本)のねじ65により、表面パネル61に対して固定される。具体的には、裏面ブラケット64には、ねじ65を挿通させるねじ挿通孔が前後方向に貫通して形成されており、表面パネル61には、裏面ブラケット64の各ねじ挿通孔と対応する位置に、凹状のねじ穴が形成されている。そして、裏面ブラケット64の各ねじ挿通孔にねじ65が裏側(表面パネル61側と反対側)から挿通され、各ねじ65が放熱パネル12のハニカムメッシュ状を構成する六角形状の孔35に挿通されて、各ねじ65の先端部が表面パネル61のねじ穴にねじ込まれることにより、裏面ブラケット64が表面パネル61に対して固定される。
【0095】
スイングアーム63は、スイングハンドル13の回動軸66に支持されて、スイングハンドル13と一体的に回動するように設けられ、その回動軸66から本体62に向けて右斜め下側に延びている。
【0096】
また、本体62には、ソレノイド67が備えられている。裏面ブラケット64には、ソレノイドブラケット68が固定されており、ソレノイド67は、ソレノイドブラケット68に支持されている。ソレノイド67は、プランジャ69を左側に向けて、プランジャ69が進出位置に進出した状態では、スイングアーム63の先端部71の移動経路上に規制部の一例としてのプランジャ69の先端部72が位置し、プランジャ69が退避位置に退避した状態では、プランジャ69の先端部72がスイングアーム63の先端部71の移動経路の右側に位置して、その移動経路上に位置しないように配置されている。
【0097】
さらに、本体62には、回路基板73が備えられている。回路基板73には、ソレノイド67に駆動電流を供給するドライバなどが含まれる。また、回路基板73には、透過型フォトセンサ74が支持されている。スイングハンドル13が閉位置に位置する状態(スイングハンドル13が回動されていない初期状態)では、ソレノイド67のプランジャ69の位置に対して左斜め下側に離間した位置に、スイングアーム63の先端部71が位置している。透過型フォトセンサ74は、スイングハンドル13が閉位置に位置する状態でのスイングアーム63の先端部71の位置とプランジャ69の先端部72の位置との間を検知位置とし、発光素子75から出射されるセンサ光が検知位置を通って受光素子76に入射するように配置されている。
【0098】
図6および図7に示される電気錠14の構成によっても、図2および図3に示される電気錠14の構成と同様の作用効果を奏することができる。
【0099】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0100】
たとえば、バーコードリーダ18が二次元バーコードを読み取ることにより、認証情報がバーコードリーダ18に受け付けられるとしたが、バーコードリーダ18がなくても、サーバ室5のタッチパネル17が操作されて、タッチパネル17に認証情報が入力されることにより、認証情報がタッチパネル17に受け付けられて、タッチパネル17からデータ収集サーバ27に認証情報が送信され、データ収集サーバ27より、タッチパネル17から受信した認証情報とデータ収集サーバ27に記憶(登録)されている認証情報とが比較されて、両者が一致する場合、認証成立と判断され、両者が一致しない場合、認証不成立と判断されてもよい。
【0101】
また、サーバラック扉施解錠システム1では、データ収集サーバ27の操作により、バーコードリーダ18やタッチパネル17を使用した認証なしで、データ収集サーバ27から通電許可信号を送信して、特定のサーバラック2の扉4を解除することもできる。
【0102】
電気錠14には、透過型フォトセンサ47,74が備えられているとしたが、図2および図3に示される電気錠14では、ストッパ41が検知位置に存在することを検知できるセンサであればよく、図6および図7に示される電気錠14では、スイングアーム63の先端部71が検知位置に存在することを検知できるセンサであればよい。すなわち、透過型フォトセンサ47,74に代えて、たとえば、近接センサなどが採用されてもよい。
【0103】
また、電気錠14の表面パネル31,61には、各種の情報を表示する表示器が設けられてもよい。表示器の種類は、とくに限定されないが、たとえば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、7セグメントLED(light emitting diode)、LEDランプなどを採用することができる。
【0104】
たとえば、液晶ディスプレイが採用される場合、サーバラック2内の室温を検出する温度センサが設けられて、サーバラック2内の室温が液晶ディスプレイに表示されてもよい。また、液晶ディスプレイには、もちろん、サーバラック2内の室温以外の情報を表示させてもよく、その表示内容は、とくに限定されない。
【0105】
また、複数色のLEDランプが設けられて、そのLEDランプの発色および点灯数の組合せにより、サーバラック扉施解錠システム1で発生している異常の内容が報知されてもよい。
【0106】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1:サーバラック扉施解錠システム
2:サーバラック
4:扉
13:スイングハンドル(操作部材)
14:電気錠(サーバラック用電気錠、後付電気錠)
16:ゲートウェイサーバ(通電制御部)
18:バーコードリーダ(受付部)
27:データ収集サーバ(記憶部、制御部)
31,61:表面パネル
32,62:本体
33:連動ロッド(連動部材)
34:ねじ(締結具)
35:孔
41:ストッパ(所定部)
43,67:ソレノイド
45,69:プランジャ
46,72:先端部(規制部)
47:透過型フォトセンサ(センサ)
63:スイングアーム(連動部材)
71:先端部(所定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7