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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163260
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】歯科用治療具
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/85 20170101AFI20221019BHJP
   A61C 19/06 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
A61C5/85
A61C19/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068086
(22)【出願日】2021-04-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】502375758
【氏名又は名称】朝倉 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100086863
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 英世
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 光史
【テーマコード(参考)】
4C052
4C159
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052HH10
4C159DD10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】窩洞の修復と同時に、治療が終了した歯とその隣接歯との間で、既に接点ができており、しかも治療の終了後に容易に外すことのできる歯科用治療具を提供する。
【解決手段】フィルム状のストリップ1と、該ストリップ1の任意の位置に穿設され、該ストリップ1の一面側に僅かに突出し、その中央部分に開口部2を有するエンボス3と、該エンボス3を中心に、上記ストリップ1の長辺に対して斜向する方向に設けられた切り欠き線4とを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状のストリップと、
該ストリップの任意の位置に穿設され、該ストリップの一面側に僅かに突出し、その中央部分に開口部を有するエンボスと、
該エンボスを中心に、上記ストリップの長辺に対して斜向する方向に設けられた切り欠き線と
を有することを特徴とする歯科用治療具。
【請求項2】
上記ストリップのエンボス突出側の外側に、上記開口部を覆い簡易に剥がすことができる覆い片が設けられていることを特徴とする請求項1記載の歯科用治療具。
【請求項3】
上記エンボスが、上記ストリップの短辺方向で、長辺のいずれかの位置に近い位置に設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の歯科用治療具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯のう蝕部分を切削して形成される複雑窩洞の修復に用いる歯科用治療具に関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕した歯(以下「う蝕歯」という)の治療方法として、う蝕部分を切削して窩洞を形成し、その窩洞内に、例えば歯科用の光硬化性樹脂のコンポジットレジン(以下「CRレジン」という)等が充填される。この様なCRレジンには、例えば、フロアブルコンポジットレジンが使用される。
【0003】
上記窩洞は各種分類法により分類されており、G.V.Blackによる分類(I級窩洞~V級窩洞)、Davidによる分類(VI級窩洞)がある。
【0004】
う蝕歯を治療するには、図14(a)の様な、う蝕歯(治療を要する歯:以下「要治療歯」という)Aに形成した窩洞B内に、図14(b)に示す様にCRレジンを充填し、充填されたCRレジンの形状を整形して、窩洞Bを図14(c)のように修復している。
【0005】
窩洞修復に使用される治療具としては、同図(b)に示すような要治療歯Aの外周にあてがうフィルム状の歯科用治療具(ストリップと呼ばれている)が知られている。その歯科用治療具(ストリップ100)が、同図(b)のように、要治療歯Aの窩洞B部分の外周にあてがわれて、要治療歯Aの外周に壁を作り(辺縁封鎖し)、封鎖された(囲まれた)窩洞B内にCRレジンを充填して、CRレジンを所定の形態に整え、該CRレジンに光を照射してCRレジンを硬化させ、窩洞B部分を修復するものである。
【0006】
歯科治療、特に臼歯部のII級窩洞の修復治療においては、図15のように、修復した歯(修復歯)A’と、それと隣接する歯(以下「隣接歯」という)Dの接触点X同士が常時接触しているか、咬合時に接触する状態に回復することが望ましいとされる。
【0007】
接触点X同士の接触不良は、咀嚼や発音機能の障害、歯周組織の損傷、う蝕の発生、歯の傾斜・捻転・移動等の障害等を引き起こすからとされている。
【0008】
窩洞Bの修復(回復)治療では樹脂フィルム製のテープ状(25μm~50μm程度の厚さ)の治療具(ストリップ100)が使用されている。先行例として発明された治療具を使用した窩洞修復方法は、要治療歯Aと隣接歯Dの間に挿入したテープ状の治療具(ストリップ100)を窩洞B修復後も残す(配置したままにする)ため、窩洞修復した修復歯A’と隣接歯Dの接触点X同士が直に接触せず、接触点Xの回復については必ずしも十分とはいえなかった。また、テープ状の治療具(ストリップ100)が噛み合いで位置ずれするという難点もあった。
【0009】
本件発明者は、後述する特許文献1の図面の中に示される図16図18に示すように、ストリップ100の短辺中央部から長手方向にミシン目400が入り、且つその中央部に凹部H(凹みであって開孔していない)があって、治療の際、まず、その凹部HにCRレジンを注入して所定の光を当て、小片CR’を形成する。そのうちストリップ100の出っ張った側(上記凹部Hの反対側H’)を隣接歯Dに当てながら、要治療歯Aを囲う様に該ストリップ100を置き、要治療歯Aの窩洞Bに同じくCRレジンを注入して、光を当て、そこでCRレジンを硬化させる。その後図18に示す様に、ミシン目400より上側のストリップ100を取り払うことで、修復歯A’側の小片CR’が隣接歯D側の接触点Xと接触して、両歯に接触点Xが残る様にしている。
【0010】
他方、後述する特許文献2では、図19及び図20に示す様に、ストリップ100の縦方向にミシン目410が入り、その上方部に、上部が完全解放の開口部Kが設けられたストリップ100のものと、同じくストリップ100の縦方向にミシン目410が入り、下部も上部も閉じて、同じくそこにミシン目410が入り、上部が閉じられることによって開孔部K’が設けられたストリップ100のものの治療具が提案されている。
【0011】
開口部Kが設けられたストリップ100の構成では、治療の際、最初に該開口部KにCRレジンを、特に隣接歯側に出っ張らせながら、盛り付けてあって、予め光を当て硬化させてある。その出っ張らせた側を隣接歯Dに当てながら、要治療歯Aを囲う様に該ストリップ100を置き、要治療歯Aの窩洞Bに同じくCRレジンを注入して、光を当て、そこでCRレジンを硬化させる。その後下のミシン目410を中心にストリップ100を両側から引っ張り、該ミシン目410を中心に両側にそれぞれのストリップ100を引き出す。もちろんこの時ミシン目410は破れ、そこを中心に左右のストリップ100は切り離される。
【0012】
他方開孔部K’が設けられたストリップ100の構成では、治療の前に、最初に該開孔部K’にCRレジンを、特に隣接歯D側に出っ張らせながら、盛り付けおいて、光を当て硬化させ、隣接歯Dと接触できるように予め適度に出っ張った部分が作られる。その出っ張らせた側を隣接歯Dに当てながら、要治療歯Aを囲う様に該ストリップ100を置き、要治療歯Aの窩洞Bに同じくCRレジンを注入して、光を当て、そこでCRレジンを硬化させる。その後上下のミシン目410を中心にストリップ100を両側から引っ張り、両ミシン目410を中心に両側にそれぞれのストリップ100を引き出す。もちろんこの時両ミシン目410は破れ、そこを中心に左右のストリップ100は切り離される。
【0013】
以上の様な構成により、要治療歯Aと隣接歯Dとの接触点Xが残る様に、窩洞Bを修復する歯の治療が行われることになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第5554760号
【特許文献2】特許第5469639号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このうち、特許文献1の構成では、凹部H内に小片CR’が残された上方のストリップ100を上方に分離して除去して、その凹部Hによってできた小片CR’の突出した部分が隣接歯Dの同じく突出した部分に当たるように出来るとしている。しかし、この上方のストリップ100にできていた凹部Hは、その治療中、凹部Hの外面H’が隣接歯Dの接触点Xに触れており、治療中に凹部H内部の小片CR’が直接隣接歯Dの接触点Xに触れているわけではないため、窩洞Bの修復後に、上方のストリップ100を持ち上げて分離しようとした場合、その持ち上げと共に、隣接歯Dまで上方に引き上げることになる。すなわち、治療が終了する前は、ストリップ100の凹部Hの外面H’が隣接歯Dの接触点Xに触れているだけに、その接触点Xは余計な隙間は無いわけであるから、治療(窩洞Bの修復)後に上方のストリップ100が持ち上げられた場合は、その接触点Xによって、隣接歯Dも上方に引っ張りあげられてしまい、却って隣接歯Dに悪影響を及ぼす。
【0016】
本来、接点のある隣接歯同士は、その接触点Xで安定しており、凹部H内部の小片CR’を隣接歯Dの新しい接触点Xにするために、上方のストリップ100を持ち上げると、隣接歯Dには、その接触点Xに対し逆方向(接触点Xに向かおうとする方向と逆方向)に力が一時的に働いて、無理やり接触点Xの再接合が行われる結果となる。すると、該隣接歯D自身に、予期せぬ方向に力が働いて、該隣接歯Dに悪影響を及ぼすことになりかねない。この力は、治療が終了した側の歯(窩洞Bの修復歯A’)にも、逆向きの力(反力)が働き、同じく悪影響を与える結果となる。
【0017】
接触点Xを介して並んだ歯、一本一本は、本来動かないものであり、余計な力が働いて、動かされると、口腔部の骨からそれらの歯が浮き出ることにもなりかねないが、歯が浮き出ることは、(虫歯を抜き取る等の)余程のことがない限り、起きないという論文の報告もある。
【0018】
また、下方のストリップ100は、最終的に、残余部として残るが、図17及び図18に示されるように、垂直方向にミシン目410でできた横分離部があれば、そのミシン目410を境に、ストリップ100を横方向に互いに引き裂くことで、残余部が残らないとしている(同文献の[0040]にその様な記載がある)。
【0019】
しかし、残余部が残らないようにと、上記図16~18及び同文献1の[0040]に示された、ストリップ100の凹部Hの下方にミシン目410でできた横分離部を設けた構成では、図上ストリップ100長手方向に対して垂直方向にそのミシン目410が設けられており、治療(窩洞Bの修復)前に、CRレジン等で予め小片CR’を作るのに、横方向に長いストリップ100では、手に持ってCRレジンを硬化させる際に、どうしてもミシン目410が下方に向いたままとなってその様な予備処理が行われるため、このミシン目410に沿ってCRレジンが流れ込んでしまい、光を当ててこれを硬化させた際、この横分離部(ミシン目410)では、CRレジンの硬化によって、簡単に分離できなくなってしまうという問題があった。
【0020】
また、凹部H内に充填される充填材(充填剤とも書くが本願では充填材に統一する)の種類によっては、上記ミシン目410が仮にうまく裂けたとしても、このミシン目410を裂く時に、(音で表現すればピチピチとなる)振動が起こって、該ミシン目410近傍側(の小片CR’)が剥がれ落ちてしまうことが多く、結局隣接歯Dとの接触点Xを作るべき小片CR’全体が離脱してしまうことになり、当初の目的を達成することも明らかとなった。なお、一緒に離脱する原因は、充填材の種類にもよるが、図16(a)の凹部H内下方の斜線面部分だけでは小片CR’の保持が難しく、それがために小片CR’全体が離脱してしまうからである。
【0021】
一方、もう一つの特許文献2の構成では、上記と異なり、ストリップ100に小片CR’を設けるための凹部Hなどの存在はなく、ストリップ100の上方が開放している開口部Kが設けられる構成と、ストリップ100の板面の中に開孔部K’が設けられる構成とが示されている。
【0022】
これらの構成は、小片CR’をこの開口部K乃至開孔部K’に設けてそこに予め小片CR’を設けて、隣接歯Dの出っ張った部分とこの小片CR’とが、互いに接触点Xとなって、治療(窩洞Bの修復)の前後で変わりはなく、優れたものである。
【0023】
しかし、上述と同様に、治療(窩洞Bの修復)後、ストリップ100を外すために、ミシン目410でできた横分離部ができており、上述の構成と同じく、該ミシン目410は、図上ストリップ100長手方向に対して垂直方向に設けられているため、治療(窩洞Bの修復)前に、CRレジン等で予め小片CR’を作るのに、横方向に長いストリップ100では、手に持ってCRレジンを硬化させる際に、どうしてもミシン目410が下方に向いままとなってその様な予備処理が行われるため、このミシン目410に沿ってCRレジンが流れ込んでしまうことになる。従って、光を当ててこれを硬化させた際、この横分離部(ミシン目410)では、CRレジンの硬化によって、簡単に分離できなくなってしまうという同様な問題があった。
【0024】
本発明は、以上のような問題に鑑み創案されたものであって、窩洞の修復と同時に、治療が終了した歯とその隣接歯との間で、既に接点ができており、しかも治療の終了後に容易に外すことのできる歯科用治療具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る歯科用治療具の構成は、
フィルム状のストリップ1と、
該ストリップ1の任意の位置に穿設され、該ストリップ1の一面側に僅かに突出し、その中央部分に開口部2を有するエンボス3と、
該エンボス3を中心に、上記ストリップ1の長辺に対して斜向する方向に設けられた切り欠き線4と
を有することを基本的特徴としている。
【0026】
上記構成によれば、ストリップ1に設けられたエンボス3に開口部2が設けられているため、治療(窩洞Bの修復)前に、CRレジン等の充填材をその開口部2に充填し光を照射して硬化させ、後に隣接歯Dに直接当たることになる部分(後に接触点Xとなる部分)を予め作っておく。そして、治療(窩洞Bの修復)に、そのストリップ1を要治療歯Aの周りにセットする。この際、当然のことながら、上記開口部2から突出していてCRレジン等の硬化した部分は、隣接歯Dとの間で接触点Xとなっている。そして、一部残ったこのストリップ1に囲まれた窩洞BにさらにCRレジン等を充填し、光を当て、硬化させる。その後、上記切り欠き線4を中心に互いに反対方向に引っ張れば、既に出来ていた接触点Xを中心に、治療が終了した修復歯A’とその隣接歯Dとが、何らの負荷も掛からず並ぶことになる。
【0027】
上記切り欠き線4は、上述した様な従来例の場合構成の場合と異なり、上述のように、ストリップ1の長辺に対して斜向する方向に設けられているため、歯の治療を行う者がストリップ1を手に持った場合、切り欠き線4が下方に位置することがなく(切り欠き線4は垂直方向よりも例えば45度斜め方向に斜行する状態になっている)、予め(治療前)開口部2にCRレジン等の充填材を充填した際に、その切り欠き線4に沿って、流れ出ることはない。
【0028】
しかもエンボス3の開口部2は小さな径であるので、治療前にそこにCRレジン等が充填された際は、開口部2の中央において出来るだけ小さくなる様に働き集まろうとする表面張力が作用するため、それがために余計に該充填物が切り欠き線4に沿って、流れ出ることがなくなる。この様に表面張力が作用する場合は、開口部2に充填されるCRレジン等が、切り欠き線4に沿って、流れ出ることがさらになくなる。
【0029】
従って、上記構成によれば、窩洞Bの修復と同時に、治療が終了した修復歯A’とその隣接歯Dとの間で、既に接触点Xができており、しかも切り欠き線4にCRレジン等が流れ出すおそれがないため、治療の終了後に容易に外すことが可能となる。
【0030】
仮に、エンボス3の開口部2の径につき、充填されたものが開口部2の中央において出来るだけ小さくなる様に働き集まろうとする表面張力が作用し得ない程の径である場合もある。その様な場合に備えて、2つ目の発明では、上記ストリップ1のエンボス3突出側の外側に、上記開口部2を覆い簡易に剥がすことができる覆い片5が設けられている構成を提案する。
【0031】
この構成では、予め(治療前)開口部2にCRレジン等を充填した際に、本来ならこの充填物が開口部2から流れ出てしまうところであるが、覆い片5があるため、流れ出すことがない。そのため、治療(窩洞Bの修復)前に、CRレジン等の充填物をその開口部2に充填し光を当てるなどして硬まった後に、覆い片5を剥がして使用する。簡易に剥がすことができる素材としては、その片側に、簡単に剥がすことができる粘着剤が添付された、樹脂で出来たテープ状のもの等がある(もちろん上記の様に使用できれば、その他の素材のものでも良い)。
【0032】
本願発明の3つ目の構成は、上記エンボス3が、上記ストリップ1の短辺方向で、長辺のいずれかの位置に近い位置に設けられたことを特徴としている。
【0033】
エンボス3の中央部分に開口部2があるため、ストリップ1のどこにエンボスが設けられるかによって、色々な使い方ができるようになる。
【0034】
ストリップ1の幅方向のいずれかに近い方に(開口部2の設けられた)エンボス3があれば、歯肉が後退してしまった人の上記窩洞Bの修復治療では、隣接歯Dとの接触点Xが歯肉より離れた位置になるため、エンボス3が(従って開口部2も)ストリップ1の片側(例えば下歯の歯肉が後退している場合は上辺側)に寄っていると、ストリップ1を要治療歯Aにセットした際に、歯肉より離れた位置に接触点Xが作りやすくなる。さらにより高い位置に接触点Xを持っていきたければ、ストリップ1を斜めにセットすれば、その様な位置に接触点Xを持っていくことができる。
【0035】
逆に、指肉が後退していなければ、エンボス3が(従って開口部2も)それとは逆側(例えば下辺側)に寄って位置するストリップ1を使用する様にすれば良い。また隣接歯Dとの間で、本歯科用治療具を入れて接触点Xを適切な場所にセットしながら要治療歯Aの治療を行う際に、高さ方向に十分な高さがない場合でも簡単に治療が行えるようになる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る歯科用治療具によれば、窩洞の修復と同時に治療が終了した歯とその隣接歯との間で、既に接点ができており、しかも治療終了後に容易に外すことが可能となるという優れた効果を奏し得る。
【0037】
また、3つ目の本発明の構成によれば、窩洞の修復治療において、歯肉が後退してしまっている場合或いはその逆の場合(また隣接歯との間で高さ方向に十分な高さがない場合)でも、隣接歯との間で容易に接点を作りながら、そのまま窩洞の修復治療ができ、窩洞の修復治療が簡単に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施例1の構成を示すもので、(a)は該治療具の平面図、(b)はその正面図である。
図2】CRレジン等の充填材をエンボス3開口部2内に充填する状態を示す斜視図である。
図3】エンボス3開口部2内に充填された上記充填材を光の照射によって、硬化させる状態を示す斜視図である。
図4】上記開口部2内で充填材が硬化した状態を示す正面図である。
図5】実施例1にかかる治療具のストリップ1を要治療歯A周りにセットし、エンボス3開口部2からせりでた充填材と隣接歯Dとの間に接触点Xができている状態を示す説明図である。
図6】充填材と隣接歯Dとの間に接触点Xができた状態で、治療(窩洞Bの修復)を行った状態を示す説明図である。
図7】充填材と隣接歯Dとの間に接触点Xができた状態のまま、上記ストリップ1を除いた状態を示す説明図である。
図8】エンボス3開口部2の径が広くて、そのままでは充填材が硬化する前にそこから離脱してしまう場合に、エンボス3突出側の外側に、上記開口部2を覆い簡易に剥がすことができる覆い片5が設けられている、実施例2に係る構成を示す、(a)はその平面図、(b)はその正面図である。
図9】上記実施例2の構成で、CRレジン等の充填材をエンボス3開口部2内に充填する状態を示す斜視図である。
図10】エンボス3開口部2内に充填された上記充填材を光の照射によって、硬化させた状態を示す斜視図である。
図11】充填材が硬化した後に、上記覆い片5を取り除く状態を示す斜視図である。
図12】エンボス3が、上記ストリップ1の短辺方向で、(a)は長辺上部の位置に近い位置に設けられている、又(b)は長辺下部の位置に近い位置に設けられている実施例3の構成を示す平面図である。
図13】上記実施例の構成と同じであるが、開口部2を覆いつつ、そこから簡易に剥がすことができる覆い片5が設けられており、(a)は長辺上部の位置に近い位置に設けられている、又(b)は長辺下部の位置に近い位置に設けられている構成を示す平面図である。
図14】要治療歯Aの窩洞B部分の外周にストリップ100があてがわれて、要治療歯Aの外周に壁を作り(辺縁封鎖し)、封鎖された(囲まれた)窩洞B内にCRレジンを充填して、CRレジンを所定の形態に整え、該CRレジンに光を照射してCRレジンを硬化させ、窩洞B部分を修復する状態を示す説明図である。
図15】修復歯A’と隣接歯Dが接触点Xを介して接触するようになり、回復した状態を示す説明図である。
図16】従来技術として特許文献1に示された窩洞修復に使用される治療具の使用状態を示す説明図である。
図17】同じく特許文献1に示された窩洞修復に使用される治療具の使用状態を示す説明図である。
図18】同じく特許文献1に示された窩洞修復に使用される治療具の使用状態を示す説明図である。
図19】従来技術として特許文献2に示された窩洞修復に使用される治療具の使用状態を示す説明図である。
図20】同じく特許文献2に示された窩洞修復に使用される治療具の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【実施例0040】
図1図7は発明を実施する実施例1を示すものである。図中、1はストリップ、2は開口部、3はエンボス、4は切り欠き線を、各示している。
【0041】
この実施例1の構成では、ストリップ1は、フィルム状の薄いもの(例えば25μm~50μm程度の厚さ)で構成されており、簡単に湾曲させたり折ったりすることのできる、口腔内に入れて良いものならその素材に限定はなく、例えば可撓性のあるプラスチック材等を用いている。
【0042】
エンボス3は、ストリップ1の任意の位置(図面上はストリップ1の中央部)に設けられ、所謂透かし彫りの様に、肉眼でやっと確認できる程度の薄身の凹部分が設けられている状態で形成されており、上記ストリップ1が可撓性を有することから、パンチング等で穿設されることで、該エンボス3と上記開口部2とが一緒に作られている。後述するように、ここにCRレジン(歯科用の光硬化性樹脂)等の充填材を入れて、開口部2からその充填材の一部表面を突出させ、隣接歯との間に接触点Xが形成できる程度に、該充填材を保持できる容積がこのエンボス3内に形成されている。ただし、エンボス3と開口部2との間において、そこにできる充填材の接着面を程よく確保し、CRレジン等の充填材の載りを良くするため、エンボス3とその中央部分に形成される開口部2との間には、それぞれの径に差がある(エンボス3の径>開口部2の径)。
【0043】
切り欠き線4は、上記エンボス3を中心に、上記ストリップ1の長辺に対して斜向する方向に設けられたミシン目で構成されており、製造工程上は、先にエンボス3及び開口部2が形成された後、該切り欠き線4を入れる。或いはエンボス3及び開口部2の形成と同時に、切り欠き線4も形成しても良い。
【0044】
次に、上記実施例1の歯科用治療具の使用の仕方を説明する。
【0045】
まず、歯科治療をする者が、要治療歯Aに窩洞Bを形成する。そして、図2に示す様に、該ストリップ1のエンボス3の開口部2に向けて、CRレジン等の充填材を注入し、図3に示す様に、エンボス3の開口部2に光を照射し、エンボス3の開口部2内に溜まった上記充填材を硬化させる。図4は、そうやってストリップ1の開口部2内で硬まった充填材CRの状態を示している。該充填材CRは、エンボス3よりわずかにせり出した状態で硬まっている。
【0046】
この状態のストリップ1を、図5に示す様に、要治療歯Aに対して巻き付ける。即ち、ストリップ1のエンボス3の開口部2から突出した充填材CRの一番出っ張った側が、隣接歯Dの同じく一番出っ張った側とくっつき、そこに接触点Xを作る様に、ストリップ1を要治療歯Aの周りにセットする。
【0047】
その後、図6に示す様に、窩洞Bに同じ材質の充填材を盛り、その形を整えた後、光を照射し、後から盛った充填材を硬化せしめる。
【0048】
最後に修復歯A’と隣接歯Dとの間に接触点Xが出来たことを確認しながら、切り欠き線4部分を引きちぎり、ストリップ1をそこから取り去る。その様に治療をすることによって、図7に示す様に、修復歯A’と隣接歯Dとが接触した状態で並び、即ちXが接点となった状態で両歯が並び、治療は終了する。
【0049】
上記実施例1の構成によれば、窩洞Bの修復と同時に治療が終了した歯A’とその隣接歯Dとの間で、既に接触点Xができており、しかも治療終了後に切り欠き線4を千切ってストリップ1を外すことで、要治療歯Aの治療が簡単に終了することとなる。修復歯A’と隣接歯Dとの間に接触点Xが出来た後は、千切られるストリップ1に充填材がくっついて離脱するようなこともない。
【実施例0050】
図8図11は、2つ目の発明の実施例構成を示している。図中、上記実施例1と同じ1~4のものは、同じ構成を示している。
【0051】
上記実施例1との違いは、エンボス3の開口部2に対して、そこに準備段階で盛られるCRレジン等の充填材に表面張力が作用することができない程度に、その径が大きい場合の構成であって、もし、そこに上記充填材を注入した場合、そのままでは充填材が硬化する前にそこから離脱してしまう様なケースを想定した構成である。本実施例2の構成では、図8に示す様に、エンボス3突出側の外側に、上記開口部2を覆い簡易に剥がすことができる覆い片5が設けられている。上記実施例1の図2及び図3と同様に、図9に示す様に、該ストリップ1のエンボス3の開口部2に向けて、CRレジン等の充填材を注入し、図10に示す様に、エンボス3の開口部2に光を照射し、エンボス3の開口部2内に溜まった上記充填材を硬化させる。エンボス3の開口部2内に溜まった上記充填材が硬化した後、図11に示す様に、覆い片5を剥離して使用する。
【0052】
その際、ここでは特に図示していないが、図4と同様に、充填材CRは、エンボス3よりわずかにせり出した状態で硬まっている。
【0053】
それ以外は、実施例1と同じようにして使用する。一応説明すると、上記状態となったストリップ1を、図5に示す様に、要治療歯Aに対して巻き付ける。即ち、ストリップ1のエンボス3の開口部2から突出した充填材CRの一番出っ張った側が、隣接歯Dの同じく一番出っ張った側とくっつき、そこに接触点Xを作る様に、ストリップ1を要治療歯Aの周りにセットする。
【0054】
その後、図6に示す様に、窩洞Bに同じ材質の充填材を盛り、その形を整えた後、光を照射し、後から盛った充填材を硬化せしめる。
【0055】
最後に修復歯A’と隣接歯Dとの間に接触点Xが出来たことを確認しながら、切り欠き線4部分を引きちぎり、ストリップ1をそこから取り去る。その様に治療をすることによって、図7に示す様に、修復歯A’と隣接歯Dとが接触した状態で並び、即ちXが接点となった状態で両歯が並び、治療は終了する。この接触点Xが出来た後は、修復歯A’自身とそこに充填された充填材CRとの接触力が大きいため、千切られるストリップ1に充填材CRがくっついて離脱するようなこともない。
【実施例0056】
図12及び図13は、エンボス3が、上記ストリップ1の短辺方向で、長辺のいずれかの位置に近い位置に設けられている、実施例1と同様な構成(図12)と、実施例2と同様な構成(図13)とを各示している。
【0057】
そのうち図12(a)は、エンボス3が、上記ストリップ1の短辺方向で、長辺上部の位置に近い位置に設けられている構成の、又図12(b)は、エンボス3が、上記ストリップ1の短辺方向で、長辺下部の位置に近い位置に設けられている構成の、各平面図を示している。
【0058】
図13(a)(b)は、エンボス3突出側の外側に、上記開口部2を覆い簡易に剥がすことができる覆い片5が設けられている構成の、図12(a)(b)の構成に対応する構成を示している。
【0059】
これらの使用の仕方は、上記実施例1及び2と同じである。
【0060】
これら実施例3の構成では、エンボス3の中央部分に開口部2があるため、ストリップ1のどこにエンボスが設けられるかによって、色々な使い方ができるようになる。
【0061】
ストリップ1の幅方向のいずれかに近い方に(開口部2の設けられた)エンボス3があれば、歯肉が後退してしまった人の上記窩洞Bの修復治療では、隣接歯Dとの接触点Xが歯肉より離れた位置になるため、エンボス3が(従って開口部2も)ストリップ1の片側(例えば上辺側)に寄っていると、ストリップ1を要治療歯Aにセットした際に、歯肉より離れた位置に接触点Xが作りやすくなる。さらにより高い位置に接触点Xを持っていきたければ、ストリップ1を斜めにセットすれば、その様な位置に接触点Xを持っていくことができる。
【0062】
逆に、指肉が後退していなければ、エンボス3が(従って開口部2も)それとは逆側(例えば下辺側)に寄って位置するストリップ1を使用する様にすれば良い。
【0063】
また隣接歯Dとの間で、本歯科用治療具を入れて接触点Xを適切な場所にセットしながら要治療歯Aの治療を行う際に、高さ方向に十分な高さがない場合でも、簡単に治療が行えるようになる。
【0064】
これらの構成は、上歯と下歯との間で全く逆に用いられる。すなわち、歯肉が後退してしまった人の、要治療歯Aの治療では、上歯には図12(b)及び図13(b)のものが、また下歯には図12(a)及び図13(a)のものが用いられるのが良い。
【0065】
他方歯肉が後退していない人(例えば子供)の、要治療歯Aの治療では、上歯には図12(a)及び図13(a)のものが、また下歯には図12(b)及び図13(b)のものが用いられるのが良い。
【0066】
また隣接歯Dとの間で、本歯科用治療具を入れて接触点Xを適切な場所にセットしながら要治療歯Aの治療を行う際に、高さ方向に十分な高さがない場合でも、上記と同様な用い方となる。
【0067】
本実施例3の構成によれば、窩洞Bの修復治療において、歯肉が後退してしまっている場合或いはその逆の場合(また隣接歯Dとの間で高さ方向に十分な高さがない場合)でも、隣接歯Dとの間で容易に接触点Xを作りながら、そのまま窩洞Bの修復治療ができ、窩洞Bの修復治療が簡単に行えるようになる。
【0068】
尚、本発明の歯科用治療具は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の歯科用治療具は、上記実施例1~3で、II級窩洞Bの修復に用いられる場合を一例として説明したが、本発明の歯科用治療具は、それ以外の窩洞Bの修復に用いられることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1、100 ストリップ
2 開口部
3 エンボス
4 切り欠き線
5 覆い片
400、410 ミシン目
A 要治療歯
A’ 修復歯
B 窩洞
CR 充填材
CR’ 小片
D 隣接歯
H 凹部
H’ 凹部外面
K 開口部
K’ 開孔部
X 接触点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20