(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163303
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】制御装置、受信装置、センサ装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4913 20200101AFI20221019BHJP
【FI】
G01S7/4913
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068161
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮路 泰輔
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084BA36
5J084DA01
5J084DA08
5J084EA12
(57)【要約】
【課題】APDに印加する電圧を適切に設定する。
【解決手段】制御部300は、APD200に入射する光の量が所定量以下となるタイミングで降伏電圧V
BRを推定している。所定量は、例えば、実質的にゼロである。光源から出射されたビームを走査部100によって反射することで照射されたビームの反射ビーム又は散乱ビームと、太陽光等の外部の光と、がAPD200に入射しないタイミングにおいて、APDに入射する光の量が実質的にゼロに近づく。APD200による光の検出において、制御部300は、推定された降伏電圧V
BRに所定比V
APD/V
BRを乗じて得られる電圧V
MでAPD200を動作させている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
APDに入射する光の量が所定量以下となるタイミングで前記APDの降伏電圧を推定し、推定された前記降伏電圧に所定比を乗じて得られる電圧で前記APDを動作させる制御部を備える制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記制御部は、前記降伏電圧に対する動作電圧の比と、増倍率と、の所定の関係を参照して、前記APDを動作させる前記電圧を決定する、制御装置。
【請求項3】
降伏電圧に対する動作電圧の比と、増倍率と、の所定の関係を参照して決定された電圧でAPDを動作させる制御部を備える制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置において、
前記制御部は、前記APDへの電圧の印加によって前記APDから出力される信号に基づいて、前記降伏電圧を推定する、制御装置。
【請求項5】
前記APDと、
請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置と、
を備える受信装置。
【請求項6】
走査部と、
請求項5に記載の受信装置と、
を備えるセンサ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のセンサ装置において、
前記制御部は、前記走査部の受光方向が遮光部に向けられるタイミングで、前記降伏電圧を推定する、センサ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のセンサ装置において、
前記走査部の前記受光方向が前記遮光部に向けられるタイミングにおいて、前記走査部は、ビームを照射しない、センサ装置。
【請求項9】
コンピュータが、APDに入射する光の量が所定量以下となるタイミングで前記APDの降伏電圧を推定し、推定された前記降伏電圧に所定比を乗じて得られる電圧で前記APDを動作させる、制御方法。
【請求項10】
コンピュータが、降伏電圧に対する動作電圧の比と、増倍率と、の所定の関係を参照して決定された電圧でAPDを動作させる、制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、請求項9又は10に記載の制御方法を実行させるプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、受信装置、センサ装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LiDAR(Light Detection And Ranging)等の様々なセンサ装置が開発されている。センサ装置は、レーザ等の光源から出射されたビームを走査するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、ポリゴンミラー等の走査部と、走査部によって走査されたビームの反射ビームを検出するアバランシェフォトダイオード(APD)と、を備えている。
【0003】
一定の強度の光がAPDに入射することで、APDには電流が流れる。APDに流れる電流は、APDの増倍率が高くなるほど高くなる。増倍率は、APDに印加される逆バイアス電圧に応じて変動する。増倍率は、APDの降伏電圧の近傍において逆バイアス電圧を増加させると急激に増加する。
【0004】
特許文献1に記載されているように、降伏電圧は、温度によって変動することがある。特許文献1には、温度による降伏電圧の変動によらず一定の増倍率を得るための方法について記載されている。この方法では、APDに印加する逆バイアス電圧を変化させて、APDに所定電流が流れる逆バイアス電圧、すなわち、降伏電圧を検出している。APDを用いた測定においては、降伏電圧に所定比を乗じて得られる電圧をAPDに印加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
APDに印加する電圧を制御する方法として、例えば特許文献1に記載されているように、検出された降伏電圧に所定比を乗じて得られる電圧をAPDに印加することがある。しかしながら、この方法では、降伏電圧を検出する際にAPDに光が入射すると、APDに入射した光子に起因する電流がAPDによって増倍され得る。このため、降伏電圧の検出に誤差が生じ得る。また、上述した方法では、任意の増倍率を得るための所定比が明らかになっていない。このため、降伏電圧が検出されたとしても、APDを任意の増倍率に設定し得ないことがある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、APDに印加する電圧を適切に設定することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
APDに入射する光の量が所定量以下となるタイミングで前記APDの降伏電圧を推定し、推定された前記降伏電圧に所定比を乗じて得られる電圧で前記APDを動作させる制御部を備える制御装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
降伏電圧に対する動作電圧の比と、増倍率と、の所定の関係を参照して決定された電圧でAPDを動作させる制御部を備える制御装置である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、
前記APDと、
上記制御装置と、
を備える受信装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、
走査部と、
上記受信装置と、
を備えるセンサ装置である。
【0012】
請求項9に記載の発明は、
コンピュータが、APDに入射する光の量が所定量以下となるタイミングで前記APDの降伏電圧を推定し、推定された前記降伏電圧に所定比を乗じて得られる電圧で前記APDを動作させる、制御方法である。
【0013】
請求項10に記載の発明は、
コンピュータが、降伏電圧に対する動作電圧の比と、増倍率と、の所定の関係を参照して決定された電圧でAPDを動作させる、制御方法である。
【0014】
請求項11に記載の発明は、
コンピュータに、上記制御方法を実行させるプログラムである。
【0015】
請求項11に記載の発明は、
上記プログラムを記憶した記憶媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る受信装置を示す機能ブロック図である。
【
図2】動作電圧V
APDと増倍率Mとの関係の温度依存性の一例を示すグラフである。
【
図3】降伏電圧V
BRに対する動作電圧V
APDの比と増倍率Mとの関係の一例を示すグラフである。
【
図5】
図4に示した開口及び遮光部を第3方向の負方向から見た図である。
【
図6】
図4に示したセンサ装置における制御部による制御のタイミングチャートの一例を示す図である。
【
図7】制御部のハードウエア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態及び実施例について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0018】
本明細書において、「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞は、特に断りのない限り、同様の名称が付された構成を単に区別するために付されたものであり、構成の特定の特徴(例えば、順番又は重要度)を意味するものではない。
【0019】
図1は、実施形態に係る受信装置20を示す機能ブロック図である。
【0020】
受信装置20は、APD(アバランシェフォトダイオード)200及び制御部300を備えている。
【0021】
APD200は、受信装置20に入射する光を検出している。一定の強度の光がAPD200に入射することで、APD200には電流が流れる。APD200に流れる電流は、APD200の増倍率Mが高くなるほど高くなる。増倍率Mは、APD200に印加される逆バイアス電圧、すなわち、APD200の動作電圧VAPDに応じて変動する。APD200に光が入射しているか否かにかかわらず、増倍率Mは、APD200の降伏電圧VBRの近傍において動作電圧VAPDを増加させると急激に増加する。
【0022】
制御部300は、APD200に入射する光の量が所定量以下となるタイミングで降伏電圧VBRを推定している。降伏電圧VBRは、理論上、増倍率Mが無限大となる電圧である。しかしながら、降伏電圧VBRの推定における降伏電圧VBRは、増倍率Mが比較的大きな所定値となる電圧にしてもよい。APD200による光の検出において、制御部300は、推定された降伏電圧VBRに所定比VAPD/VBRを乗じて得られる電圧VMでAPD200を動作させている。所定量は、例えば、実質的にゼロである。この例において、所定量は、厳密なゼロでなくてもよい。例えば、APD200に実質的に電流が流れない程度にAPD200に光が入射していてもよい。また、後述する実施例に係るセンサ装置10においては、不図示の光源から出射されたビームを走査部100によって反射することで照射されたビームの反射ビーム又は散乱ビームと、太陽光等の外部の光と、がAPD200に入射しないタイミングにおいて、APDに入射する光の量が実質的にゼロに近づく。
【0023】
仮に、APD200に入射する光の量が所定量より多くなるタイミングで降伏電圧VBRを推定した場合、APD200に入射した光子に起因する電流がAPD200によって増倍されて、降伏電圧VBRの推定に誤差が生じ得る。これに対して、本実施形態によれば、APD200に入射する光の量が所定量より高くなるタイミングで降伏電圧VBRを推定した場合と比較して、APD200に入射した光子に起因する電流がAPD200によって増倍されることを抑制することができ、降伏電圧VBRの推定の誤差を抑制することができる。
【0024】
図2は、動作電圧V
APDと増倍率Mとの関係の温度依存性の一例を示すグラフである。
図3は、降伏電圧V
BRに対する動作電圧V
APDの比と、増倍率Mと、の関係の一例を示すグラフである。
【0025】
図2において、グラフの横軸は、APD200の動作電圧V
APD(単位:V)を示している。
図3において、グラフの横軸は、降伏電圧V
BRに対する動作電圧V
APDの比を示している。また、
図2及び
図3において、グラフの縦軸は、APD200の増倍率Mを示している。
図2における各曲線は、APD200の温度につき-20℃、-10℃、0℃、10℃、15℃、25℃、40℃、50℃、60℃及び85℃についての特性を示している。増倍率Mが1.E+02以上の範囲において、各温度の特性は、動作電圧V
APDの高電圧側に向けて、昇温順に並んでいる。
【0026】
増倍率Mは、Millerの近似式によって、以下の式(1)によって示されるようになる。
【数1】
ただし、kは、イオン化率比であり、nは、不純物プロファイル等、APD200の素子構造で決定される値である。イオン化率比kは、電子のイオン化率αに対する正孔のイオン化率βの比β/αによって表される。
【0027】
図2に示すように、動作電圧V
APDと増倍率Mとの関係は、APD200の温度に依存して変動する。これに対して、
図3に示すように、降伏電圧V
BRに対する動作電圧V
APDの比と、増倍率Mと、の関係は、理論上、APD200の温度によらず一定となる。
【0028】
制御部300は、
図3に示す関係等、降伏電圧V
BRに対する動作電圧V
APDの比と、増倍率Mと、の所定の関係を参照して、APD200に印加される電圧V
Mを決定している。降伏電圧V
BRが既に推定されている場合、制御部300は、当該関係を参照することで、任意の増倍率Mを得るための所定比V
APD/V
BR、すなわち、APD200に印加すべき電圧V
Mを決定することができる。
【実施例0029】
図4は、実施例に係るセンサ装置10を示す図である。
図5は、
図4に示した開口510及び遮光部520を第3方向Zの負方向から見た図である。
【0030】
図4及び
図5において、第1方向X、第2方向Y又は第3方向Zを示す矢印は、当該矢印の基端から先端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の正方向であり、かつ当該矢印の先端から基端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の負方向であることを示している。
図4において第1方向Xを示す黒点付き白丸は、紙面の奥から手前に向かう方向が第1方向Xの正方向であり、かつ紙面の手前から奥に向かう方向が第1方向Xの負方向であることを示している。
図5において第3方向Zを示すX付き白丸は、紙面の手前から奥に向かう方向が第3方向Zの正方向であり、かつ紙面の奥から手前に向かう方向が第3方向Zの負方向であることを示している。
【0031】
第1方向Xは、鉛直方向に直交する水平方向に平行な一方向である。第3方向Zの負方向から見て、第1方向Xの正方向は、水平方向の右から左に向かう方向となっており、第1方向Xの負方向は、水平方向の左から右に向かう方向となっている。第2方向Yは、鉛直方向に平行な方向である。第2方向Yの正方向は、鉛直方向の下から上に向かう方向となっており、第2方向Yの負方向は、鉛直方向の上から下に向かう方向となっている。第3方向Zは、水平方向に平行かつ第1方向Xに直交する一方向である。第1方向Xの正方向から見て、第3方向Zの正方向は、水平方向の右から左に向かう方向となっており、第3方向Zの負方向は、水平方向の左から右に向かう方向となっている。
【0032】
第1方向X、第2方向Y、第3方向Z、水平方向及び鉛直方向の関係は、本実施例に係る関係に限定されない。第1方向X、第2方向Y、第3方向Z、水平方向及び鉛直方向の関係は、センサ装置10の配置に応じて異なる。例えば、第3方向Zが鉛直方向に平行になっていてもよい。
【0033】
センサ装置10は、走査部100、APD200、制御部300、電圧源310及び筐体500を備えている。走査部100、APD200、制御部300及び電圧源310は、筐体500の内部に収容されている。制御部300は、筐体500の外部に設けられていてもよい。
【0034】
走査部100は、不図示のレーザ等の光源から時間的に繰り返して出射された複数のビームを反射している。具体的には、走査部100は、
図5に示す走査線Lに向けて複数のビームを反射している。また、走査部100は、走査線Lが位置する方向から走査部100に向かう光をAPD200に向けて反射している。走査線Lは、第3方向Zに垂直であって後述する開口510が位置する仮想平面に投影された走査線である。一例において、走査部100は、直交する2つの所定の回転軸の周りに回転又は揺動可能なMEMSミラーである。この例において、走査部100は、2つの回転軸のうちの一方を回転又は搖動させることで、走査部100に入射するビームを上記仮想平面上で第1方向Xに走査している。走査部100は、2つの回転軸のうちの他方を回転又は搖動させることで、走査部100に入射するビームを上記仮想平面上で第2方向Yに走査している。走査部100の走査の各フレームにおいて、走査部100は、走査線Lの第2方向Yの正方向側から走査線Lの第2方向Yの負方向側に向けて複数のビームを反射している。走査部100は、MEMSミラーと異なる走査部、例えばポリゴンミラーやガルバノミラーであってもよい。
【0035】
図4に示す第1矢印BA1、第2矢印BA2及び第3矢印BBの各々の基端から先端に向かう方向は、走査部100のビーム照射方向の一例を示している。走査部100は、不図示の光源から出射されたビームの反射によって、ビーム照射方向に向けてビームを照射可能になっている。光源からのビームの出射タイミングを調整することで、走査部100のビーム照射方向には、走査部100によってビームが実際に照射されてもよいし、又は照射されなくてもよい。走査部100のビーム照射方向は、走査部100の駆動によって、時間に応じて変動している。走査部100によるビームの照射は、上述した例に限定されない。例えば、走査部100は、ビーム照射方向が可変な光源であってもよい。
【0036】
図4に示す第1矢印BA1、第2矢印BA2及び第3矢印BBの各々の先端から基端に向かう方向は、走査部100の受光方向の一例を示している。走査部100は、受光方向から走査部100に向かう光をAPD200に向けて反射している。走査部100の受光方向は、走査部100の駆動によって、時間に応じて変動している。
【0037】
筐体500の第3方向Zの正方向側の側面には、開口510が設けられている。
図4の第1矢印BA1又は第2矢印BA2に基端から先端に向かう方向よって示されるビーム照射方向によって例示されるように、不図示の光源から出射されたビームを走査部100によって反射することで開口510に向けて照射されたビームは、開口510を通じて、筐体500の外部に向けて照射されている。
図5に示す例において、第3方向Zの負方向側から見て、開口510は四角形となっている。第3方向Zの負方向側から見た開口510の形状は
図5に示す例に限定されない。
【0038】
走査部100によって開口510を通じて筐体500の外部に向けて照射されたビームは、筐体500の外部に存在する不図示の物体によって反射又は散乱される。本実施例では、
図4の第1矢印BA1又は第2矢印BA2の先端から基端に向かう方向によって示される受光方向によって例示されるように、当該物体によって反射又は散乱されたビームが、走査部100に入射し、走査部100によってAPD200に向けて反射される。つまり、センサ装置10から送信されるビームの光軸と、センサ装置10の外部に存在する物体から反射又は散乱されてセンサ装置10によって受信されるビームの光軸と、が同軸となっている。センサ装置10の光学系は、本実施例に係る光学系に限定されない。例えば、筐体500の外部に存在する不図示の物体によって反射又は散乱されたビームが、走査部100に入射することなく、APD200に入射してもよい。この場合、センサ装置10から送信されるビームの光軸と、センサ装置10の外部に存在する物体から反射又は散乱されてセンサ装置10によって受信されるビームの光軸と、が互いにずれている。
【0039】
図5に示すように、第3方向Zの負方向から見て、遮光部520は、走査線Lの一部分と重なっている。
図5に示す例では、遮光部520は、開口510に対して第2方向Yの正方向側に位置している。遮光部520が設けられる位置は、
図5に示す例に限定されない。例えば、遮光部520は、開口510に対して第2方向Yの負方向側に位置していてもよいし、又は開口510に対して第1方向Xの正方向側又は負方向側に位置していてもよい。さらに、第3方向Zの負方向から見て、遮光部520は、開口510の周囲の複数の位置に設けられていてもよい。例えば、2つの遮光部520が開口510に対して第2方向Yの正方向側及び負方向側の双方に位置していてもよいし、又は開口510に対して第1方向Xの正方向側及び負方向側の双方に位置していてもよい。
【0040】
本実施例において、制御部300は、走査部100の受光方向が遮光部520に向けられるタイミングで、降伏電圧V
BRを推定している。
図4の第3矢印BBの先端から基端に向かう方向によって示される受光方向によって例示されるように、走査部100の受光方向が遮光部520に向けられているタイミングでは、走査部100の受光方向が開口510に向けられているタイミングと比較して、太陽光等の筐体500の外部の光が走査部100に入射しにくくなっている。したがって、走査部100の受光方向が遮光部520に向けられるタイミングで降伏電圧V
BRを推定する場合、走査部100の受光方向が開口510に向けられるタイミングで降伏電圧V
BRを推定する場合と比較して、筐体500の外部の光が走査部100を経由してAPD200に入射することを抑制することができる。制御部300が降伏電圧V
BRを推定するタイミングは、本実施例に係るタイミングに限定されない。例えば、制御部300は、走査部100の受光方向が開口510に向けられているタイミングで、降伏電圧V
BRを推定してもよい。
【0041】
本実施例において、走査部100は、走査部100の受光方向が遮光部520に向けられているタイミングで、ビームを照射していない。走査部100の受光方向が遮光部520に向けられているタイミングで走査部100ビームを照射していない場合、走査部100の受光方向が遮光部520に向けられているタイミングで走査部100ビームを照射している場合と比較して、走査部100によって照射されて遮光部520で反射又は散乱されたビームが、制御部300が降伏電圧VBRを推定するタイミングにおいてAPD200に入射することを抑制することができる。走査部100によってビームが照射されるタイミングは、上述した例に限定されない。例えば、走査部100は、走査部100の受光方向が遮光部520に向けられているタイミングで、ビームを照射してもよい。
【0042】
図6は、
図4に示したセンサ装置10における制御部300による制御のタイミングチャートの一例を示す図である。
【0043】
図6の上段において図の左側から右側に延びる矢印は、時間軸を示している。
図6の時間軸の左部分に付された矢印によって示される第1非測定時間区間TB1は、走査部100の受光方向が遮光部520に向けられている時間区間を示している。
図6の時間軸の中央部分に付された矢印によって示される測定時間区間TAは、第1非測定時間区間TB1の後において走査部100の受光方向が開口510に向けられている時間区間を示している。
図6の時間軸の右部分に付された矢印によって示される第2非測定時間区間TB2は、測定時間区間TAの後において走査部100の受光方向が遮光部520に向けられている時間区間を示している。
【0044】
図6の中段のタイミングチャートは、電圧源310によってAPD200に印加される電圧Vのタイミングチャートを示している。電圧Vを示すタイミングチャートにおいて、「0」が付された破線は、電圧ゼロを示している。電圧Vを示すタイミングチャートにおいて、電圧ゼロを示す破線よりも上側では電圧Vが正となっていて、電圧ゼロを示す破線よりも下側では電圧Vが負となっている。
【0045】
図6の下段のタイミングチャートは、APD200に印加される電圧Vに基づいて、APD200から出力される信号の統計値Sのタイミングチャートを示している。第1非測定時間区間TB1又は第2非測定時間区間TB2において走査部100によってビームが照射されていない場合、統計値Sは、例えば、第1非測定時間区間TB1又は第2非測定時間区間TB2の少なくとも一部分の時間区間においてAPD200から出力される信号の平均値である。統計値Sは、平均値と異なる統計値であってもよい。例えば、統計値Sは、第1非測定時間区間TB1又は第2非測定時間区間TB2の少なくとも一部分の時間区間においてAPD200から出力される信号の分散値であってもよい。第1非測定時間区間TB1又は第2非測定時間区間TB2の一部分の時間区間において走査部100によってビームが照射される場合、統計値Sは、例えば、第1非測定時間区間TB1又は第2非測定時間区間TB2のうち走査部100によってビームが照射される時間区間を除いた少なくとも一部分の時間区間において、APD200から出力される信号の平均値である。統計値Sは、平均値と異なる統計値であってもよい。例えば、統計値Sは、第1非測定時間区間TB1又は第2非測定時間区間TB2のうち走査部100によってビームが照射される時間区間を除いた少なくとも一部分の時間区間においてAPD200から出力される信号の分散値であってもよい。統計値Sを示すタイミングチャートにおいて、「D」が付された破線は、既定値Dを示している。統計値Sを示すタイミングチャートにおいて、既定値Dを示す破線よりも上側では統計値Sが既定値Dより大きくなっており、既定値Dを示す破線よりも下側では統計値Sが既定値Dより小さくなっている。既定値Dは、APD200に印加される電圧Vが降伏電圧V
BRとなる場合に統計値Sがとる値である。
【0046】
図6を用いて、制御部300の制御の一例について説明する。
【0047】
まず、第1非測定時間区間TB1の時刻t1まで、制御部300は、電圧源310によってAPD200に電圧Vを印加させている。第1非測定時間区間TB1の時刻t1まで、統計値Sは、既定値Dより小さくなっている。第1非測定時間区間TB1の時刻t1まで印加される電圧Vは、降伏電圧VBRの近傍の電圧である。
【0048】
次いで、制御部300は、統計値Sと既定値Dとの差の絶対値が第1非測定時間区間TB1の時刻t1までの統計値Sと既定値Dとの差の絶対値より小さくなるように、電圧源310によってAPD200に印加される電圧Vを制御している。具体的には、第1非測定時間区間TB1の時刻t1において、制御部300は、電圧Vを増加させている。時刻t1における電圧Vの増加によって、統計値Sは時刻t1において増加している。第1非測定時間区間TB1の時刻t1以降の統計値Sと既定値Dとの差の絶対値は、第1非測定時間区間TB1の時刻t1までの統計値Sと既定値Dとの差の絶対値より小さくなっている。制御部300は、電圧Vを変動させることで、統計値Sが既定値Dに近づく電圧Vを検出することで、降伏電圧VBRを推定している。
【0049】
次いで、制御部300は、第1非測定時間区間TB1から測定時間区間TAにかけて、推定された降伏電圧VBRに所定比VAPD/VBRを乗じて得られる電圧VMを電圧源310によってAPD200に印加している。APD200に電圧VMが印加された状態において、走査部100によって開口510を通じて筐体500の外部に向けて照射されたビームが、筐体500の外部に存在する物体によって反射又は散乱される。また、APD200に電圧VMが印加された状態において、当該物体によって反射又は散乱されたビームが、走査部100に入射し、走査部100によってAPD200に向けて反射される。このようにして、APD200に電圧VMが印加された状態において、センサ装置10は、当該物体を測定している。したがって、APD200の増倍率を所望の増倍率にした状態で当該物体を測定することができる。
【0050】
次いで、制御部300は、測定時間区間TAから第2非測定時間区間TB2にかけて、電圧源310によってAPD200に印加される電圧Vを増加させている。第2非測定時間区間TB2において、制御部300は、第1非測定時間区間TB1と同様にして、降伏電圧VBRを推定する。
【0051】
図6に示す例では、第1非測定時間区間TB1において、APD200に印加される電圧Vが一度の更新によって増加されている。しかしながら、第1非測定時間区間TB1において電圧Vが更新される回数は一回に限らず、複数回であってもよい。
【0052】
制御部300は、走査部100の受光方向が遮光部520に向けられている複数の時間区間において、第1非測定時間区間TB1又は第2非測定時間区間TB2に関して説明した上述した動作と同様の動作を繰り返すことで、降伏電圧VBRの推定を繰り返している。したがって、制御部300は、走査部100の受光方向が開口510に向けられている時間区間において、APD200の増倍率を所望の増倍率にすることができる。
【0053】
図5及び
図6に示す例では、制御部300は、走査部100の走査の1フレームのうちの始期の時間区間において降伏電圧V
BRを推定している。しかしながら、制御部300による降伏電圧V
BRの推定が行われるタイミングは、この例に限定されない。例えば、遮光部520が開口510に対して第2方向Yの負方向側に位置する場合、制御部300は、走査部100の走査の1フレームのうちの終期の時間区間において降伏電圧V
BRを推定することができる。また、例えば、遮光部520が開口510に対して第1方向Xの正方向又は負方向側に位置する場合、制御部300は、走査部100の走査の1フレームのうち走査部100のビーム照射方向が遮光部520に向けられる各タイミングで降伏電圧V
BRを推定することができる。
【0054】
図5に示す例では、開口510に対して第2方向Yの正方向側に位置する遮光部520の第1方向Xの幅が、走査線Lが形成される走査範囲の第1方向Xの幅以上となっている。この場合、開口510に対して第2方向Yの正方向側に位置する遮光部520の第1方向Xの幅が上記走査範囲の第1方向Xの幅未満である場合と比較して、制御部300による降伏電圧V
BRの推定が行われる時間区間を長くすることができる。開口510に対して第2方向Yの正方向側に位置する遮光部520の第1方向Xの幅は、
図5に示す例に限定されない。例えば、開口510に対して第2方向Yの正方向側に位置する遮光部520の第1方向Xの幅は、上記走査範囲の第1方向Xの幅未満であってもよい。
【0055】
図7は、制御部300のハードウエア構成を例示する図である。制御部300は、集積回路400を用いて実装されている。集積回路400は、例えばSoC(System-on-a-Chip)である。
【0056】
集積回路400は、バス402、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410及びネットワークインタフェース412を有する。バス402は、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410及びネットワークインタフェース412が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410及びネットワークインタフェース412を互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ404は、マイクロプロセッサ等を用いて実現される演算処理装置である。メモリ406は、RAM(Random Access Memory)等を用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス408は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等を用いて実現されるストレージデバイスである。
【0057】
入出力インタフェース410は、集積回路400を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。入出力インタフェース410には走査部100、APD200及び電圧源310が接続されている。
【0058】
ネットワークインタフェース412は、集積回路400をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、例えばCAN(Controller Area Network)ネットワークである。ネットワークインタフェース412がネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0059】
ストレージデバイス408は、制御部300の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ404は、これらのプログラムモジュールをメモリ406に読み出して実行することで、制御部300の各々の機能を実現する。
【0060】
集積回路400のハードウエア構成は、
図7に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ406に格納されてもよい。この場合、集積回路400は、ストレージデバイス408を備えていなくてもよい。
【0061】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0062】
例えば、制御部300は、降伏電圧VBRに対する動作電圧VAPDの比と、増倍率Mと、の所定の関係を参照することなく、APD200に印加される電圧VMを決定してもよい。
【0063】
例えば、制御部300は、APD200に入射する光の量が所定量より多くなるタイミングで降伏電圧VBRを推定してもよい。