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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163308
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】異常検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/9013 20210101AFI20221019BHJP
【FI】
G01N27/9013
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068171
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000192626
【氏名又は名称】神鋼鋼線工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】榊 一平
(72)【発明者】
【氏名】河村 睦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 郁郎
(72)【発明者】
【氏名】道下 孝一
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA11
2G053AB21
2G053BA03
2G053BA14
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA03
2G053DA02
2G053DA07
2G053DA08
2G053DB07
2G053DB20
2G053DB25
(57)【要約】
【課題】線状体における異常を的確に検査することが可能な異常検査装置を提供する。
【解決手段】異常検査装置1は、検査対象のケーブル100における異常を検査するための装置である。この異常検査装置1は、連結部材4によって互いに連結された画像検査装置2と渦流探傷センサ31を含む渦流探傷装置3とを備える。画像検査装置2は、ケーブル100の外周面の画像データを取得する撮像部23を含む。渦流探傷装置3は、ケーブル100の挿通を許容する挿通孔311Aが形成された基体311と、当該基体311に巻回されケーブル100に渦電流を発生させる検査コイル312とを有する渦流探傷センサ31を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の線状体における異常を検査するための異常検査装置であって、
前記線状体の外周面の画像データを取得する撮像部を含む画像検査装置と、
前記線状体の挿通を許容する挿通孔が形成された基体と、当該基体に巻回され前記線状体に渦電流を発生させる検査コイルとを有する渦流探傷センサを含む渦流探傷装置と、
前記画像検査装置と前記渦流探傷センサとを連結する連結部材と、を備える、異常検査装置。
【請求項2】
前記渦流探傷センサは、前記基体を保持する架台を有し、
前記渦流探傷装置は、前記検査コイルとは別個独立のコイルであって前記架台に固定される参照コイルを含む、請求項1に記載の異常検査装置。
【請求項3】
前記架台は、非磁性材料から構成されている、請求項2に記載の異常検査装置。
【請求項4】
前記渦流探傷装置は、前記架台に固定され、前記参照コイルの電流と前記検査コイルの電流との差に基づく探傷信号を出力する探傷処理器を含む、請求項2又は3に記載の異常検査装置。
【請求項5】
前記架台は、前記検査コイルの径方向内側における前記検査コイルと前記線状体との間の間隙を、前記線状体の径に応じて調整可能な間隙調整部を有する、請求項2~4のいずれか1項に記載の異常検査装置。
【請求項6】
前記間隙調整部は、前記検査コイルの径方向の中心が前記線状体の中心軸上に位置するように、前記間隙を調整可能である、請求項5に記載の異常検査装置。
【請求項7】
前記画像検査装置は、金属磁性材料から構成され、前記撮像部が取付けられるフレーム部材を含み、
前記渦流探傷装置は、前記検査コイルとは別個独立のコイルであって、非磁性材料から構成された支持体を介して前記フレーム部材に固定される参照コイルを含む、請求項1に記載の異常検査装置。
【請求項8】
前記画像検査装置は、前記線状体に沿って移動するための移動機構を含み、
前記渦流探傷装置は、前記画像検査装置の移動に応じて前記線状体に沿って移動する、請求項1~7のいずれか1項に記載の異常検査装置。
【請求項9】
前記画像検査装置は、金属磁性材料から構成され、前記撮像部が取付けられるフレーム部材を含み、
前記連結部材は、少なくとも前記渦流探傷センサによる検査時において、前記線状体の軸方向における前記検査コイルと前記フレーム部材との間の離間距離が前記検査コイルの外径の0.1倍以上の距離で安定するように、前記フレーム部材と前記渦流探傷センサとを連結する、請求項1~8のいずれか1項に記載の異常検査装置。
【請求項10】
前記渦流探傷センサは、前記検査コイルを覆うように前記基体に取付けられ、磁気を遮蔽するシールド材を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の異常検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜材ケーブル等の線状体における異常を検査するための異常検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
斜張橋などの主塔から斜め方向へ張られて橋桁を支える斜材ケーブル等の線状体における損傷などの異常を検査する技術として、渦流探傷センサを用いた技術が知られている。この種の渦流探傷センサが例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示される渦流探傷センサは、検査対象の線状体に沿って移動可能に当該線状体に外嵌されるコイルボビンと、そのコイルボビンに巻回される検査コイルと、を備えている。渦流探傷センサでは、コイルボビンの挿通孔に線状体が挿通された状態において、検査コイルは線状体に渦電流を発生させる。線状体に異常箇所が存在する場合、当該異常箇所において渦電流の流れが変わるので、検査コイルの電流が変化する。
【0004】
渦流探傷センサは、検査コイルの電流変化に基づいて、線状体の異常を検出することができる。また、渦流探傷センサは、コイルボビンを線状体に沿って移動させることにより、線状体の軸方向における異常を連続的に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4101110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、渦流探傷センサによる線状体における異常の検査では、線状体の形状的な影響を受ける場合がある。例えば、錆の堆積によって線状体の外周面に膨れが生じた異常箇所が存在する場合、検査コイルと線状体との間の間隙が変動するため、線状体における異常の検査に影響を与える虞がある。このため、線状体における異常を的確に検査するためには、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、線状体における異常を的確に検査することが可能な異常検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係る異常検査装置は、検査対象の線状体における異常を検査するための装置である。この異常検査装置は、前記線状体の外周面の画像データを取得する撮像部を含む画像検査装置と、前記線状体の挿通を許容する挿通孔が形成された基体と、当該基体に巻回され前記線状体に渦電流を発生させる検査コイルとを有する渦流探傷センサを含む渦流探傷装置と、前記画像検査装置と前記渦流探傷センサとを連結する連結部材と、を備える。
【0009】
この異常検査装置によれば、連結部材によって互いに連結された画像検査装置と渦流探傷センサとを用いて、線状体の異常を検査することができる。具体的には、渦流探傷装置の渦流探傷センサは、基体の挿通孔に線状体が挿通された状態で、検査コイルの電流変化に基づいて線状体の異常を検出することができる。しかも、画像検査装置においては、撮像部が線状体の外周面の画像データを取得する。この画像データに基づいて、線状体の外周面の異常を検出することができる。異常検査装置では、渦流探傷センサによって主として線状体の内部の異常を検出することができるとともに、撮像部による画像データに基づいて線状体の外周面の状態を把握することができる。これにより、異常検査装置は、線状体における異常を的確に検査することが可能である。
【0010】
上記の異常検査装置において、前記渦流探傷センサは、前記基体を保持する架台を有し、前記渦流探傷装置は、前記検査コイルとは別個独立のコイルであって前記架台に固定される参照コイルを含むことが望ましい。
【0011】
この態様では、渦流探傷センサは、参照コイルの電流と検査コイルの電流との差に基づいて、外乱の影響を排除しつつ線状体の異常を検出することができる。しかも、参照コイルが渦流探傷センサを構成する架台に固定されているので、検査コイルと参照コイルとの間の位置関係を一定に保持することができる。このため、参照コイル及び検査コイルを用いた線状体における異常の検出精度の向上を図ることができるだけでなく、参照コイルと検査コイルとを互いに近くに配置することが可能となるため、検出精度の向上を図りつつ渦流探傷装置をコンパクト化することができる。
【0012】
上記の異常検査装置において、前記架台は、非磁性材料から構成されていることが望ましい。
【0013】
この態様では、渦流探傷センサを保持する架台が非磁性材料から構成されているので、架台における検査コイルによる渦電流の発生が抑制される。これにより、渦流探傷センサは、線状体の異常を精度よく検出することができる。
【0014】
上記の異常検査装置において、前記渦流探傷装置は、前記架台に固定され、前記参照コイルの電流と前記検査コイルの電流との差に基づく探傷信号を出力する探傷処理器を含むことが望ましい。
【0015】
この態様では、探傷処理器は、参照コイルの電流と検査コイルの電流との差に基づく探傷信号を出力する。探傷処理器から出力される探傷信号に基づいて線状体の異常を検査することができる。しかも、探傷処理器は、渦流探傷センサを構成する架台であって、参照コイルが固定される架台に固定されるので、検査コイル、参照コイル及び探傷処理器の三者間の位置関係を一定に保持することができる。このため、参照コイル及び検査コイルを用いた線状体における異常の検出精度の更なる向上を図ることが可能であり、且つ、渦流探傷装置の更なるコンパクト化が可能となる。
【0016】
上記の異常検査装置において、前記架台は、前記検査コイルの径方向内側における前記検査コイルと前記線状体との間の間隙を、前記線状体の径に応じて調整可能な間隙調整部を有することが望ましい。
【0017】
この態様では、架台の間隙調整部は、径の異なる複数種類の線状体に対応して、検査コイルの径方向内側における検査コイルと線状体との間の間隙を調整可能である。このため、渦流探傷装置は、径の異なる複数種類の線状体の異常の検出に用いることが可能である。
【0018】
上記の異常検査装置において、前記間隙調整部は、前記検査コイルの径方向の中心が前記線状体の中心軸上に位置するように、前記間隙を調整可能であることが望ましい。
【0019】
この態様では、間隙調整部は、検査コイルの径方向の中心が線状体の中心軸上に位置するように線状体と検査コイルとの間の間隙を調整する。これにより、渦流探傷センサにおける基体の挿通孔に線状体が挿通された状態で、検査コイルの中心に対して線状体が径方向に偏在することを抑制できる。このため、渦流探傷センサは、線状体の異常を精度よく検出することができる。
【0020】
上記の異常検査装置において、前記画像検査装置は、金属磁性材料から構成され、前記撮像部が取付けられるフレーム部材を含み、前記渦流探傷装置は、前記検査コイルとは別個独立のコイルであって、非磁性材料から構成された支持体を介して前記フレーム部材に固定される参照コイルを含む構成であってもよい。
【0021】
この態様では、渦流探傷装置は、参照コイルの電流と検査コイルの電流との差に基づいて、外乱の影響を排除しつつ線状体の異常を検出することができる。しかも、参照コイルが非磁性材料から構成された支持体を介してフレーム部材に固定されているので、参照コイルとフレーム部材との間の距離を支持体の介在に応じて一定に保持することができる。これにより、参照コイルが金属磁性材料から構成されたフレーム部材に固定される場合において、参照コイル及び検査コイルを用いた線状体の異常の検出精度が低下することを抑制できる。
【0022】
上記の異常検査装置において、前記画像検査装置は、前記線状体に沿って移動するための移動機構を含み、前記渦流探傷装置は、前記画像検査装置の移動に応じて前記線状体に沿って移動することが望ましい。
【0023】
この態様では、画像検査装置は、移動機構により線状体に沿って移動する。画像検査装置の移動中において撮像部によって取得された画像データに基づいて、線状体の外周面の状態を、線状体の軸方向において連続的に把握できる。また、渦流探傷装置が画像検査装置の移動に応じて線状体に沿って移動することにより、渦流探傷センサは線状体の軸方向における異常を連続的に検出することができる。
【0024】
上記の異常検査装置において、前記画像検査装置は、金属磁性材料から構成され、前記撮像部が取付けられるフレーム部材を含み、前記連結部材は、少なくとも前記渦流探傷センサによる検査時において、前記線状体の軸方向における前記検査コイルと前記フレーム部材との間の離間距離が前記検査コイルの外径の0.1倍以上の距離で安定するように、前記フレーム部材と前記渦流探傷センサとを連結することが望ましい。
【0025】
この態様では、画像検査装置は、金属磁性材料から構成されるフレーム部材を備えている。金属磁性材料は、渦流探傷センサによる渦流探傷に影響を与える材料である。このため、渦流探傷センサの検査コイルの近傍にフレーム部材が存在する場合には、渦流探傷センサによる線状体の異常の検出精度が低下する虞がある。そこで、連結部材は、少なくとも渦流探傷センサによる検査時において、線状体の軸方向における検査コイルとフレーム部材との間の離間距離が検査コイルの外径の0.1倍以上の距離で安定するように、フレーム部材と渦流探傷センサとを連結する。これにより、フレーム部材に起因して渦流探傷センサによる線状体の異常の検出精度が低下することを抑制できる。
【0026】
上記の異常検査装置において、前記渦流探傷センサは、前記検査コイルを覆うように前記基体に取付けられ、磁気を遮蔽するシールド材を有する構成であってもよい。
【0027】
この態様では、検査コイルによる磁気がシールド材から外側に漏洩するのを遮蔽できる。これにより、シールド材の外側に配置される磁性材料などが検査コイルによる磁気の影響を受けるのを抑制できる。このため、当該磁性材料における渦電流の発生を抑制できるので、渦流探傷センサによる線状体の異常の検出精度が低下することを抑制できる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、線状体における異常を的確に検査することが可能な異常検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る異常検査装置の全体構成を示す側面図である。
図2】第1実施形態に係る異常検査装置に備えられる画像検査装置の構成を示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る異常検査装置に備えられる渦流探傷装置の構成を示す図である。
図4】渦流探傷装置による探傷結果の一例を示すグラフである。
図5】本発明の第2実施形態に係る異常検査装置の全体構成を示す側面図である。
図6】第2実施形態に係る異常検査装置に備えられる画像検査装置の構成を示す斜視図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る異常検査装置の全体構成を示す側面図である。
図8】第3実施形態に係る異常検査装置に備えられる渦流探傷装置の構成を示す図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る異常検査装置の全体構成を示す側面図である。
図10】第4実施形態に係る異常検査装置に備えられる渦流探傷装置の渦流探傷センサを示す図である。
図11】本発明の第5実施形態に係る異常検査装置の全体構成を示す側面図である。
図12】第5実施形態に係る異常検査装置に備えられる渦流探傷装置の渦流探傷センサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る異常検査装置について、図面に基づいて説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1図4を参照しながら、第1実施形態に係る異常検査装置1について説明する。この異常検査装置1は、検査対象の線状体における異常を検査するための装置である。線状体としては、例えば、斜張橋などの主塔から斜め方向へ張られて橋桁を支える斜材ケーブル等のケーブル100が挙げられる。ケーブル100は、図3に示されるように、円筒形状の外管101の内部に複数の鋼線102が収容された構造を有していてもよい。また、鋼線102としては、その表面に亜鉛メッキなどのメッキが施されたものもある。異常検査装置1は、ケーブル100の外周面を構成する外管101の損傷や、鋼線102における減肉、錆、メッキの消耗などの異常を検査する。
【0032】
図1に示されるように、異常検査装置1は、画像検査装置2と、渦流探傷装置3と、連結部材4とを備えている。
【0033】
連結部材4は、画像検査装置2と渦流探傷装置3とがケーブル100の軸方向に並ぶように、画像検査装置2と渦流探傷装置3の渦流探傷センサ31とを連結する。連結部材4は、例えばワイヤロープから構成されている。連結部材4は、金属磁性材料から構成されていてもよいが、非磁性材料から構成されていることが好ましく、非磁性且つ電気絶縁性を有する材料から構成されていることが特に好ましい。
【0034】
画像検査装置2は、主としてケーブル100の外管101の損傷を検査するための、ケーブル100に沿って自走する自走式の装置である。図1及び図2に示されるように、画像検査装置2は、フレーム部材21と、車輪22と、撮像部23と、制御部24と、バッテリー25と、駆動モーター26と、エンコーダ27とを備えている。
【0035】
フレーム部材21は、ケーブル100が通される通路を区画する部材である。フレーム部材21を構成する材料は特に限定されるものではないが、本実施形態では、フレーム部材21は、金属磁性材料から構成されている。フレーム部材21は、ケーブル100に沿った長手方向の両端を規定する環状の一対の端部規定部211と、各端部規定部211から内側に突出した複数の車輪支持部212と、一方の端部規定部211から外側に突出した連結固定部213と、を有している。なお、連結固定部213には、連結部材4が固定される。
【0036】
車輪22は、フレーム部材21の車輪支持部212に回転可能に取付けられ、この状態でケーブル100の外周面に当接する。車輪22の設置数は、特に限定されない。
【0037】
駆動モーター26は、車輪22を回転させる駆動源である。駆動モーター26は、フレーム部材21に取付けられる。車輪22及び駆動モーター26は、画像検査装置2がケーブル100に沿って移動するための移動機構を構成する。すなわち、画像検査装置2は、駆動モーター26の駆動によってケーブル100の外周面に当接した車輪22が回転することにより、ケーブル100に沿って移動(自走)する。
【0038】
エンコーダ27は、駆動モーター26の回転を検知することにより、画像検査装置2のケーブル100に沿った移動距離を示す移動距離データを取得する。
【0039】
撮像部23は、フレーム部材21の端部規定部211に取付けられる。撮像部23は、ケーブル100の外周面の画像データを取得する。撮像部23によってケーブル100の外周面における周方向の全体の画像データを取得できるように、撮像部23の取付位置及び取付数が設定される。
【0040】
バッテリー25は、フレーム部材21に取付けられる。バッテリー25は、撮像部23及び駆動モーター26に電力を供給する電源である。
【0041】
制御部24は、フレーム部材21に取付けられる。制御部24は、撮像部23に撮像制御信号を入力するとともに、駆動モーター26に駆動制御信号を入力する。制御部24からの撮像制御信号が入力された撮像部23は、当該撮像制御信号に従ってケーブル100の外周面の画像データを取得する。また、制御部24からの駆動制御信号が入力された駆動モーター26は、当該駆動制御信号に従って回転駆動する。
【0042】
画像検査装置2においては、撮像部23がケーブル100の外周面の画像データを取得する。この画像データに基づいて、ケーブル100の外周面の状態を把握することができる。また、画像検査装置2は、駆動モーター26の駆動による車輪22の回転に応じてケーブル100に沿って移動(自走)する。画像検査装置2の移動中において撮像部23によって取得された画像データに基づいて、ケーブル100の外周面の状態を、ケーブル100の軸方向において連続的に把握することができる。
【0043】
渦流探傷装置3は、主としてケーブル100の鋼線102における減肉、錆、メッキの消耗などの異常を検査するための装置である。図1及び図3に示されるように、渦流探傷装置3は、渦流探傷センサ31と、参照コイル32と、探傷処理器33と、を備えている。
【0044】
渦流探傷センサ31は、ケーブル100の挿通を許容する挿通孔311Aが形成された基体311と、当該基体311に巻回される検査コイル312と、第1架台34A及び第2架台34Bと、を有している。
【0045】
基体311は、合成樹脂などの非磁性材料から構成されている。基体311は、半円筒形状の一対の半割部材3111により構成される。一対の半割部材3111は、蝶番3112を介して開閉自在に接続される。一対の半割部材3111は、閉じた状態においてケーブル100の挿通を許容する挿通孔311Aが形成される。換言すると、一対の半割部材3111は、閉じた状態においてケーブル100を挟み込む。
【0046】
基体311の挿通孔311Aにケーブル100が挿通された状態では、基体311に巻回された検査コイル312の径方向内側にケーブル100が配置される。検査コイル312は、交流電流が流れることにより磁界が発生し、検査コイル312の径方向内側に配置されたケーブル100に渦電流を発生させる。本実施形態では、検査コイル312は、複数本のコイル素線の束の一端及び他端にそれぞれ接続端子3121が設けられた構造を有し、各接続端子3121同士が接続されることにより、基体311に巻回されるコイルを構成する。
【0047】
ケーブル100に異常箇所が存在する場合、当該異常箇所において渦電流の流れが変わるので、検査コイル312の電流が変化する。このため、渦流探傷センサ31は、基体311の挿通孔311Aにケーブル100が挿通された状態で、検査コイル312の電流変化に基づいてケーブル100の異常を検出することができる。
【0048】
また、渦流探傷装置3は、渦流探傷センサ31が連結部材4によって画像検査装置2と連結されているので、画像検査装置2の移動(自走)に応じてケーブル100に沿って移動する。このように渦流探傷装置3がケーブル100に沿って移動することにより、渦流探傷センサ31は、ケーブル100の軸方向における異常を連続的に検出することができる。
【0049】
ここで、渦流探傷センサ31によるケーブル100に対する渦流探傷の結果について、図4のグラフを参照しながら説明する。図4に示すグラフは、渦流探傷センサ31による渦流探傷の結果を示す探傷信号の信号強度(V)と、渦流探傷装置3の移動に応じた渦流探傷センサ31の移動距離(mm)との関係を示す。なお、ケーブル100においては、原点D0から距離D1、距離D3、距離D5だけそれぞれ離れた領域は正常箇所であり、原点D0から距離D2、距離D4、距離D6、距離D7だけそれぞれ離れた領域は異常が生じた異常箇所であるものとする。原点D0から距離D2だけ離れた異常箇所は、鋼線102に減肉及び錆の異常が生じている。原点D0から距離D4だけ離れた異常箇所は、鋼線102に減肉の異常が生じている。原点D0から距離D6だけ離れた異常箇所は、鋼線102にメッキの消耗及び錆の異常が生じている。原点D0から距離D7だけ離れた異常箇所は、鋼線102にメッキの消耗の異常が生じている。
【0050】
図4のグラフから明らかなように、渦流探傷センサ31による探傷信号の信号強度(V)は、検査コイル312の径方向内側に配置されたケーブル100における正常箇所と異常箇所との間で、検査コイル312の電流変化に応じて異なる値を示す。しかも、ケーブル100における異常箇所では、異常の種類(減肉、錆、メッキの消耗)ごとに探傷信号の信号強度(V)が異なる。したがって、渦流探傷センサ31は、検査コイル312の電流変化に基づいて、ケーブル100の鋼線102における減肉、錆、メッキの消耗などの異常を検出することができる。
【0051】
図1及び図3に戻り、参照コイル32は、検査コイル312とは別個独立のコイルであって、円筒形状の支持体321に巻回されたコイルである。支持体321は、渦流探傷センサ31の基体311と同様に、合成樹脂などの非磁性材料から構成されている。参照コイル32を備えた渦流探傷装置3では、渦流探傷センサ31は、参照コイル32の電流と検査コイル312の電流との差に基づいて、外乱の影響を排除しつつケーブル100の異常を検出することができる。
【0052】
探傷処理器33は、筐体331に収容された表示部332、電源部333及び処理部334を含んで構成される。電源部333は、検査コイル312及び参照コイル32に電力を供給する電源である。処理部334は、検査コイル312の電流と参照コイル32の電流との差に基づく探傷信号を出力する。処理部334から出力される探傷信号は、渦流探傷センサ31による渦流探傷の結果を示す信号である。探傷信号は、表示部332に入力される。表示部332は、入力された探傷信号の波形を表示する。
【0053】
第1架台34A及び第2架台34Bは、渦流探傷センサ31において、基体311を保持するための架台である。渦流探傷センサ31において、第1架台34Aと第2架台34Bとは、検査コイル312の径方向に所定の間隔をあけて互いに対向するように配置される。渦流探傷センサ31においては、検査コイル312が巻回された基体311は、第1架台34Aと第2架台34Bとの間に配置された状態で、両架台34A,34Bに固定される。具体的には、渦流探傷センサ31においては、基体311がネジ部材などによって第1架台34A及び第2架台34Bに固定される。
【0054】
本実施形態では、参照コイル32は、第1架台34Aに固定される。つまり、参照コイル32は、渦流探傷センサ31を構成する架台に固定される。これにより、検査コイル312と参照コイル32との間の位置関係を一定に保持することができる。このため、参照コイル32及び検査コイル312を用いたケーブル100における異常の検出精度の向上を図ることができるだけでなく、参照コイル32と検査コイル312とを互いに近くに配置することが可能となるため、検出精度の向上を図りつつ渦流探傷装置3をコンパクト化することができる。
【0055】
また、探傷処理器33は、第2架台34Bに固定される。つまり、探傷処理器33は、渦流探傷センサ31を構成する架台に固定される。しかも、探傷処理器33は、参照コイル32が固定される第1架台34Aと対を成す第2架台34Bに固定される。これにより、検査コイル312、参照コイル32及び探傷処理器33の三者間の位置関係を一定に保持することができる。このため、参照コイル32及び検査コイル312を用いたケーブル100における異常の検出精度の更なる向上を図ることが可能であり、且つ、渦流探傷装置3の更なるコンパクト化が可能となる。
【0056】
第1架台34A及び第2架台34Bは、非磁性材料から構成されている。第1架台34A及び第2架台34Bを構成する非磁性材料としては、合成樹脂や非磁性ステンレス鋼などを挙げることができる。第1架台34A及び第2架台34Bが非磁性材料から構成されることにより、検査コイル312が巻回された基体311を保持するための第1架台34A及び第2架台34Bにおいて、検査コイル312による渦電流の発生が抑制される。このため、渦流探傷センサ31は、ケーブル100の異常を精度よく検出することができる。
【0057】
第1架台34A及び第2架台34Bは、それぞれ、架台本体341と、一対の間隙支持部342と、間隙調整部材343とを含んで構成される。
【0058】
架台本体341は、第1架台34A及び第2架台34Bの本体部分を構成する。第1架台34A及び第2架台34Bの架台本体341は、それぞれ、基体311が固定される基体固定部3411を有している。第1架台34Aの架台本体341は、基体固定部3411の反対側に位置する部分に参照コイル32が固定される参照コイル固定部3412を有するとともに、連結部材4が固定される連結固定部3413を有している。一方、第2架台34Bの架台本体341は、基体固定部3411の反対側に位置する部分に探傷処理器33が固定される処理器固定部3414を有している。
【0059】
一対の間隙支持部342は、基体固定部3411に固定された基体311に巻回された検査コイル312の径方向に直交する方向、すなわちケーブル100の軸方向に互いに離間するように、架台本体341に取付けられる。一対の間隙支持部342は、検査コイル312の径方向に延びる長孔3421を有し、当該長孔3421に挿通されるボルト3422を含む締結具によって架台本体341に取付けられる。
【0060】
間隙調整部材343は、一対の間隙支持部342に取付けられ、この状態でケーブル100の外周面に当接する部材である。間隙調整部材343は、非磁性且つ電気絶縁性を有する材料から構成される。
【0061】
第1架台34Aの連結固定部3413と、画像検査装置2におけるフレーム部材21の連結固定部213とに連結部材4が固定されることにより、画像検査装置2と渦流探傷センサ31とが連結部材4を介して連結される。このように画像検査装置2と渦流探傷センサ31とが連結された状態で、画像検査装置2がケーブル100に沿って移動(自走)すると、当該画像検査装置2に牽引されるように、渦流探傷センサ31、参照コイル32及び探傷処理器33によって構成される渦流探傷装置3の全体がケーブル100に沿って移動する。この際、第1架台34A及び第2架台34Bにおいては、ケーブル100の外周面に間隙調整部材343が当接している。
【0062】
間隙調整部材343は、第1架台34A及び第2架台34Bの基体固定部3411に固定された基体311に巻回された検査コイル312の径方向内側において、ケーブル100の外周面に当接する。これにより、間隙調整部材343は、検査コイル312の径方向内側における検査コイル312とケーブル100との間の間隙を一定に保持する機能を有している。
【0063】
検査コイル312の径方向における間隙調整部材343の位置は、一対の間隙支持部342が架台本体341に取付けられるときの、長孔3421に対するボルト3422の挿通位置に応じて調整可能である。すなわち、一対の間隙支持部342に取付けられた間隙調整部材343は、検査コイル312の径方向内側における検査コイル312とケーブル100との間の間隙を調整可能な間隙調整部としての機能を有している。
【0064】
例えば、間隙調整部材343は、検査コイル312の径方向内側における検査コイル312とケーブル100との間の間隙を、ケーブル100の径に応じて調整する。これにより、間隙調整部材343は、径の異なる複数種類のケーブル100に対応して、検査コイル312の径方向内側における検査コイル312とケーブル100との間の間隙を調整可能である。このため、渦流探傷装置3は、径の異なる複数種類のケーブル100の異常検出に用いることが可能である。
【0065】
また、間隙調整部材343は、検査コイル312の径方向の中心がケーブル100の中心軸上に位置するように、検査コイル312とケーブル100との間の間隙を調整する。これにより、渦流探傷センサ31における基体311の挿通孔311Aに挿通されて検査コイル312の径方向内側にケーブル100が配置された状態で、検査コイル312の中心に対してケーブル100が径方向に偏在することを抑制できる。このため、渦流探傷センサ31は、ケーブル100の異常を精度よく検出することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る異常検査装置1は、連結部材4によって互いに連結された画像検査装置2と渦流探傷センサ31とを用いて、ケーブル100の異常を検査することができる。具体的には、渦流探傷装置3の渦流探傷センサ31は、基体311の挿通孔311Aにケーブル100が挿通された状態で、検査コイル312の電流変化に基づいてケーブル100の異常を検出することができる。しかも、画像検査装置2においては、撮像部23がケーブル100の外周面の画像データを取得する。この画像データに基づいて、ケーブル100の外周面の状態を把握することができる。異常検査装置1では、渦流探傷センサ31によって主としてケーブル100の内部の鋼線102の異常を検出することができるとともに、撮像部23による画像データに基づいてケーブル100の外周面を構成する外管101の状態を把握することができる。これにより、異常検査装置1は、ケーブル100における異常を的確に検査することが可能である。
【0067】
ここで、検査コイル312からの離間距離が検査コイル312の外径の2倍程度以下の範囲(探傷影響範囲)内に、検査対象のケーブル100以外の磁性材料から構成された部材が存在すると、当該部材が渦流探傷センサ31による渦流探傷に影響を与える虞がある。このため、通常、構成要素として磁性材料を含む参照コイル32、探傷処理器33及び画像検査装置2は、前記探傷影響範囲の外側に位置するように配置される。また、参照コイル32は、検査対象のケーブル100以外の磁性材料から構成された部材に対して参照コイル32の外径の2倍程度以上の距離で離れるように配置する必要がある。なお、参照コイル32の外径は、検査コイル312の外径よりも小さい値に設定されている。
【0068】
これに対し、本実施形態では、参照コイル32は、検査コイル312との間の離間距離が検査コイル312の外径の0.1倍以上となるように、第1架台34Aに固定される。同様に、探傷処理器33は、検査コイル312との間の離間距離が検査コイル312の外径の0.1倍以上となるように、第2架台34Bに固定される。つまり、参照コイル32及び探傷処理器33は、架台34A,34Bに固定されることにより、前記探傷影響範囲内において、検査コイル312との間の離間距離が検査コイル312の外径の0.1倍以上の距離で一定に保持されている。これにより、参照コイル32及び探傷処理器33が前記探傷影響範囲内に配置されても、参照コイル32及び探傷処理器33に起因して渦流探傷センサ31によるケーブル100の異常の検出精度が低下することを抑制できる。また、参照コイル32及び探傷処理器33を前記探傷影響範囲内に配置することが可能であるので、渦流探傷センサ31の検出精度の低下を抑制しつつ渦流探傷装置3をコンパクト化することができる。
【0069】
また、既述の通り、渦流探傷センサ31と連結部材4を介して連結される画像検査装置2は、金属磁性材料から構成されるフレーム部材21を備えている。フレーム部材21が前記探傷影響範囲内に存在する場合には、渦流探傷センサ31によるケーブル100の異常の検出精度が低下する虞がある。これに対し、連結部材4は、ケーブル100に沿って自走する画像検査装置2に渦流探傷装置3の全体が牽引されるように、画像検査装置2と渦流探傷センサ31とを連結する。このように画像検査装置2が渦流探傷装置3の全体を牽引するので、少なくとも渦流探傷センサ31による検査時においては連結部材4が引っ張られた状態となり、ケーブル100の軸方向における検査コイル312とフレーム部材21との間の離間距離が安定する。連結部材4は、少なくとも渦流探傷センサ31による検査時において、ケーブル100の軸方向における検査コイル312とフレーム部材21との間の離間距離が検査コイル312の外径の0.1倍以上の距離で安定するように、フレーム部材21と渦流探傷センサ31の第1架台34Aとを連結する。画像検査装置2と渦流探傷センサ31とが連結部材4によって連結されることにより、フレーム部材21は、前記探傷影響範囲内において、検査コイル312との間の離間距離が検査コイル312の外径の0.1倍以上の距離で一定に保持される。これにより、フレーム部材21が前記探傷影響範囲内に配置されても、フレーム部材21に起因して渦流探傷センサ31によるケーブル100の異常の検出精度が低下することを抑制できる。また、フレーム部材21が前記探傷影響範囲内に配置されるように画像検査装置2と渦流探傷センサ31とを連結部材4によって連結することが可能であるので、渦流探傷センサ31の検出精度の低下を抑制しつつ異常検査装置1をコンパクト化することができる。しかも、前記探傷影響範囲内において画像検査装置2と渦流探傷センサ31とを互いに近くに配置することが可能であるので、画像検査装置2及び渦流探傷センサ31による、ケーブル100の軸方向における検査の不能な範囲を小さくすることができる。
【0070】
なお、渦流探傷装置3の探傷処理器33は、異常検査装置1とは別の管理装置(例えば、地上に設置された管理装置)と無線通信するための通信機能を有するように構成されていてもよい。この場合、探傷処理器33は、渦流探傷センサ31による渦流探傷の結果を示す信号であって、処理部334から出力された探傷信号を、無線通信によって管理装置に送信する。これにより、渦流探傷センサ31によるケーブル100における異常の検出中にリアルタイムで、探傷信号の波形などの情報を地上の管理装置において確認することができる。
【0071】
また、画像検査装置2の制御部24には、撮像部23により取得された画像データ、エンコーダ27により取得された移動距離データなどの各種データを記録する記録媒体が装着されてもよい。或いは、制御部24は、地上の管理装置と無線通信するための通信機能を有するように構成されていてもよい。この場合、制御部24は、画像データや移動距離データなどの各種データを無線通信によって管理装置に送信する。これにより、画像検査装置2によるケーブル100の外周面における異常の検査中にリアルタイムで、画像データや移動距離データなどの各種データを地上の管理装置において確認することができる。
【0072】
また、制御部24は、渦流探傷装置3における探傷処理器33の表示部332に表示される情報の撮像を指令する探傷撮像指令が付加された撮像制御信号を、撮像部23に入力するように構成されていてもよい。探傷撮像指令が付加された撮像制御信号の入力があった場合、撮像部23は、探傷撮像指令に従って探傷処理器33の表示部332を撮像した画像データを示す探傷画像データを取得する。探傷画像データには、表示部332に表示された探傷信号の波形などの情報が含まれる。撮像部23により探傷画像データが取得されると、制御部24は、当該探傷画像データを無線通信によって管理装置に送信する。これにより、探傷画像データを地上の管理装置において確認することができる。
【0073】
(第2実施形態)
図5及び図6を参照しながら、第2実施形態に係る異常検査装置1について説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0074】
第2実施形態に係る異常検査装置1は、第1実施形態と同様に、連結部材4によって連結された画像検査装置2と渦流探傷センサ31を含む渦流探傷装置3とを備えている。第1実施形態では、画像検査装置2は、駆動モーター26の駆動による車輪22の回転に応じてケーブル100に沿って自走する自走式の装置である。これに対し、第2実施形態では、画像検査装置2は、駆動モーター26及びエンコーダ27の設置が省略され、牽引装置5によって牽引されることによりケーブル100に沿って移動するように構成されている。
【0075】
画像検査装置2のフレーム部材21は、牽引ロープ51の一端が固定される牽引固定部214を有している。一端が牽引固定部214に固定された牽引ロープ51の他端は、牽引装置5に固定される。つまり、画像検査装置2は、牽引ロープ51を介して牽引装置5に連結されている。
【0076】
牽引装置5は、画像検査装置2がケーブル100に沿って移動するように当該画像検査装置2を牽引する。牽引装置5の構造は、特に限定されない。牽引装置5としては、例えば、ウインチ装置や、一般的に「ドローン」と称される無人飛行体などを挙げることができる。牽引装置5は、画像検査装置2がケーブル100に沿って移動するための移動機構を構成する。
【0077】
画像検査装置2は、牽引装置5に牽引されて車輪22が回転することにより、ケーブル100に沿って移動する。画像検査装置2の移動中において撮像部23によって取得された画像データに基づいて、ケーブル100の外周面の状態を、ケーブル100の軸方向において連続的に把握することができる。
【0078】
また、渦流探傷装置3は、渦流探傷センサ31が連結部材4によって画像検査装置2と連結されているので、牽引装置5の牽引による画像検査装置2の移動に応じて、ケーブル100に沿って移動する。このように渦流探傷装置3がケーブル100に沿って移動することにより、渦流探傷センサ31は、ケーブル100の軸方向における異常を連続的に検出することができる。
【0079】
(第3実施形態)
図7及び図8を参照しながら、第3実施形態に係る異常検査装置1について説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0080】
第3実施形態に係る異常検査装置1は、第1実施形態と同様に、連結部材4によって連結された画像検査装置2と渦流探傷センサ31を含む渦流探傷装置3とを備えている。第1実施形態では、連結部材4は、ワイヤロープから構成されている。これに対し、第3実施形態では、連結部材4は、画像検査装置2のフレーム部材21と渦流探傷センサ31の第1架台34Aとを連結する棒状の第1連結部材41と、フレーム部材21から渦流探傷センサ31側に延びて渦流探傷センサ31の第2架台34B側の部分を支持する棒状の第2連結部材42と、を有している。なお、第1連結部材41は、第1架台34Aの架台本体341を貫通し、この状態で第1架台34Aに対して固定部材411によって固定される。
【0081】
第1連結部材41及び第2連結部材42は、非磁性の剛性を有する材料から構成される。第1連結部材41及び第2連結部材42は、例えばワイヤロープと比較して、ケーブル100の軸方向における検査コイル312とフレーム部材21との間の離間距離を、より確実に一定に保持することができる。具体的には、第1連結部材41及び第2連結部材42は、ケーブル100の軸方向における検査コイル312とフレーム部材21との間の離間距離が検査コイル312の外径の0.1倍以上の距離で安定するように、フレーム部材21と第1架台34Aとを連結するとともに、渦流探傷センサ31の第2架台34B側の部分を支持する。これにより、金属磁性材料から構成されるフレーム部材21に起因して渦流探傷センサ31によるケーブル100の異常の検出精度が低下することを、より確実に抑制できる。
【0082】
また、第1実施形態では、第1架台34A及び第2架台34Bは、架台本体341と、一対の間隙支持部342と、間隙調整部材343とを含んで構成される。これに対し、第3実施形態では、第1架台34A及び第2架台34Bは、一対の間隙支持部342及びそれに取付けられた間隙調整部材343を具備しておらず、架台本体341と、間隙調整部材35とを含んで構成される。
【0083】
第1架台34A及び第2架台34Bの架台本体341における基体固定部3411には、渦流探傷センサ31の基体311が固定されている。第1架台34Aの架台本体341における参照コイル固定部3412には、参照コイル32が固定されている。第2架台34Bの架台本体341における処理器固定部3414には、探傷処理器33が固定されている。
【0084】
本実施形態では、渦流探傷センサ31の基体311が固定される第1架台34Aが剛性を有する第1連結部材41によってフレーム部材21と連結され、且つ、渦流探傷センサ31の第2架台34B側の部分が剛性を有する第2連結部材42によって支持される。このため、検査コイル312の径方向内側における検査コイル312とケーブル100との間の間隙を、第1連結部材41及び第2連結部材42によって一定に保持することができる。
【0085】
間隙調整部材35は、検査コイル312の径方向内側における検査コイル312とケーブル100との間の間隙を調整するための部材である。間隙調整部材35は、非磁性且つ電気絶縁性を有する材料から構成される。間隙調整部材35は、検査コイル312の径方向内側における検査コイル312とケーブル100との間の間隙を、より確実に一定に保持する。また、間隙調整部材35は、検査コイル312の径方向の中心がケーブル100の中心軸上に位置するように、検査コイル312とケーブル100との間の間隙を調整する。これにより、渦流探傷センサ31における基体311の挿通孔311Aに挿通されて検査コイル312の径方向内側にケーブル100が配置された状態で、検査コイル312の中心に対してケーブル100が径方向に偏在することを抑制できる。このため、渦流探傷センサ31は、ケーブル100の異常を精度よく検出することができる。
【0086】
(第4実施形態)
図9及び図10を参照しながら、第4実施形態に係る異常検査装置1について説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0087】
第4実施形態に係る異常検査装置1は、第1実施形態と同様に、連結部材4によって連結された画像検査装置2と渦流探傷センサ31を含む渦流探傷装置3とを備えている。第1実施形態では、渦流探傷装置3を構成する渦流探傷センサ31、参照コイル32及び探傷処理器33が、第1架台34A及び第2架台34Bに固定される。これに対し、第4実施形態では、渦流探傷装置3は、第1架台34A及び第2架台34Bを具備していない。そして、渦流探傷装置3においては、渦流探傷センサ31の基体311が連結部材4を介して画像検査装置2のフレーム部材21に連結され、参照コイル32及び探傷処理器33はフレーム部材21に固定されている。
【0088】
連結部材4は、少なくとも渦流探傷センサ31による検査時において、ケーブル100の軸方向における検査コイル312とフレーム部材21との間の離間距離が検査コイル312の外径の0.1倍以上の距離で安定するように、フレーム部材21と渦流探傷センサ31の基体311とを連結する。これにより、フレーム部材21と渦流探傷センサ31とが互いに近くに配置されても、フレーム部材21に起因して渦流探傷センサ31によるケーブル100の異常の検出精度が低下することを抑制できる。
【0089】
参照コイル32は、非磁性材料から構成された支持体321を介してフレーム部材21に固定される。具体的には、参照コイル32は、参照コイル32の外径の0.1倍以上の距離だけフレーム部材21から離間するように、支持体321を介してフレーム部材21に固定される。つまり、参照コイル32は、支持体321を介してフレーム部材21に固定されることにより、フレーム部材21との間の離間距離が支持体321の介在に応じて参照コイル32の外径の0.1倍以上の距離で一定に保持されている。これにより、参照コイル32が金属磁性材料から構成されたフレーム部材21に固定される場合において、参照コイル32及び検査コイル312を用いたケーブル100の異常の検出精度が低下することを抑制できる。
【0090】
渦流探傷センサ31においては、検査コイル312の径方向内側における検査コイル312とケーブル100との間の間隙が、複数の間隙調整部材35によって調整される。複数の間隙調整部材35は、非磁性且つ電気絶縁性を有する材料から構成される。複数の間隙調整部材35は、ケーブル100の外周面に当接した状態において、検査コイル312の径方向の中心がケーブル100の中心軸上に位置するように、検査コイル312とケーブル100との間の間隙を調整する。
【0091】
渦流探傷センサ31は、画像検査装置2がケーブル100に沿って移動すると、当該画像検査装置2に牽引されるようにケーブル100に沿って移動する。渦流探傷センサ31は、画像検査装置2のフレーム部材21に固定された探傷処理器33と接続線36を介して電気的に接続される。
【0092】
画像検査装置2のフレーム部材21上において、参照コイル32は、接続線36を介して探傷処理器33と電気的に接続される。参照コイル32及び探傷処理器33は、フレーム部材21に固定されることにより、画像検査装置2の移動に応じてケーブル100に沿って移動する。
【0093】
例えば、渦流探傷装置3を構成する渦流探傷センサ31、参照コイル32及び探傷処理器33のうち、渦流探傷センサ31だけを画像検査装置2の移動に応じてケーブル100に沿って移動させ、参照コイル32及び探傷処理器33を地上などに配置して移動させない構成を想定したとする。この場合、探傷処理器33と渦流探傷センサ31との間を電気的に接続する接続線36の長さが増大するだけではなく、渦流探傷センサ31のケーブル100に沿った移動に制限が加えられる虞がある。この場合には、ケーブル100の軸方向の全長に亘ってケーブル100の異常を検出することが困難となる。
【0094】
これに対し、本実施形態では、渦流探傷センサ31が画像検査装置2に牽引されるようにケーブル100に沿って移動し、且つ、参照コイル32及び探傷処理器33がフレーム部材21に固定されることによりケーブル100に沿って移動する。つまり、渦流探傷装置3を構成する渦流探傷センサ31、参照コイル32及び探傷処理器33がいずれも、画像検査装置2の移動に応じてケーブル100に沿って移動する。このように渦流探傷装置3がケーブル100に沿って移動することにより、渦流探傷センサ31は、ケーブル100の軸方向における異常を連続的に検出することができる。
【0095】
(第5実施形態)
図11及び図12を参照しながら、第5実施形態に係る異常検査装置1について説明する。ここでは、第4実施形態と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0096】
第5実施形態では、渦流探傷センサ31が基体311及び検査コイル312に加えてシールド材313を有している。第5実施形態に係る異常検査装置1は、渦流探傷センサ31がシールド材313を有している点において第4実施形態と異なっており、その他の構成要素については第4実施形態と同様である。
【0097】
シールド材313は、検査コイル312を覆うように基体311に取付けられ、検査コイル312による磁気を遮蔽する。シールド材313を構成する材料としては、磁気の遮蔽が可能であれば特に限定されるものではないが、例えばSUS430などの透磁性を有する材料を挙げることができる。
【0098】
検査コイル312をシールド材313で覆う構成の渦流探傷センサ31では、検査コイル312による磁気がシールド材313から外側に漏洩するのを遮蔽できる。これにより、連結部材4を介して渦流探傷センサ31と連結された画像検査装置2のフレーム部材21が、検査コイル312による磁気の影響を受けるのを抑制できる。このため、金属磁性材料から構成されたフレーム部材21における渦電流の発生を抑制できる。この結果、連結部材4を介して互いに連結されるフレーム部材21と渦流探傷センサ31との間の距離が短い場合であっても、フレーム部材21に起因して渦流探傷センサ31によるケーブル100の異常の検出精度が低下することを抑制できる。
【0099】
なお、検査コイル312をシールド材313で覆う構成の渦流探傷センサ31は、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態に係る異常検査装置1にも適用することができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態に係る異常検査装置1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0101】
上記の実施形態では、斜張橋などの橋桁を支える斜材ケーブルを検査対象とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。検査対象は、磁性材料から構成された線状体であればよく、例えば、エレベータ装置に適用されるケーブルや、クレーン装置に適用されるケーブルなどであってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 異常検査装置
2 画像検査装置
21 フレーム部材
22 車輪
23 撮像部
26 駆動モーター(移動機構)
3 渦流探傷装置
31 渦流探傷センサ
311 基体
311A 挿通孔
312 検査コイル
313 シールド材
32 参照コイル
321 支持体
33 探傷処理器
34A 第1架台
34B 第2架台
343 間隙調整部材(間隙調整部)
35 間隙調整部材(間隙調整部)
4 連結部材
5 牽引装置(移動機構)
100 ケーブル(線状体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12