(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163394
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】鳥害防止器具の移送装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20221019BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20221019BHJP
A01M 29/32 20110101ALI20221019BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/00
A01M29/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068290
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】390009999
【氏名又は名称】日動電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100121474
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】元家 正信
(72)【発明者】
【氏名】木村 英生
【テーマコード(参考)】
2B121
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121BB27
2B121EA30
2B121FA12
5G352AC02
5G352AE04
5G367BB11
(57)【要約】
【課題】電線間に落線防止ロープが架け渡されている場合であっても、かかる箇所を容易に越えて鳥害防止器具を電線に沿って移送する。
【解決手段】この移送装置1は、線条体と線条体支持具2とを備えた鳥害防止器具を電線に沿って移送するための移送装置であり、本体部50と装着部60とを備えている。本体部50は、長尺状の筒状部材であって内部に電線を挿通可能に構成されているとともに、その長手方向の一端側から他端側にわたって切欠部51が形成されている。他方、装着部60は、線条体支持具2が装着可能に構成されているとともに、係止突起57を支点として本体部50に揺動可能に取り付けられている。この移送装置1を単位移送装置として複数個の単位移送装置1が連結自在に構成されており、これらを連結したときに各切欠部51も繋ぎ合わされて一連の切欠部となるように構成されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線条体と線条体支持具とを備えた鳥害防止器具を電線に沿って移送するための鳥害防止器具の移送装置であって、
本体部と装着部とを備え、
前記本体部は、長尺状の筒状部材であって、内部に電線を挿通可能に構成されているとともに、その長手方向の一端側から他端側にわたって切欠部が形成されており、
前記装着部は、前記線条体支持具が装着可能に構成されているとともに、前記本体部に揺動可能に取り付けられている、ことを特徴とする鳥害防止器具の移送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鳥害防止器具の移送装置を単位移送装置として複数個の単位移送装置が連結自在に構成されており、
各単位移送装置を連結したときに各切欠部も繋ぎ合わされて一連の切欠部となるように構成されている、ことを特徴とする鳥害防止器具の移送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鳥害防止器具の移送装置において、
前記本体部に1又は2以上の装着部が設けられている、ことを特徴とする鳥害防止器具の移送装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の移送装置を用いて鳥害防止器具を電線に取り付けるための方法であって、
予め線条体を係合させた複数の線条体支持具を各装着部に装着させた前記移送装置を、間接活線工具を用いて前記切欠部の隙間から電線に取り付けるステップと、
間接活線工具により最初の線条体支持具を装着部から取り外して電線に取り付けるステップと、
前記移送装置を電線に沿って移動させた上、次の線条体支持具を間接活線工具により装着部から取り外して電線に取り付けるステップと、を含むことを特徴とする鳥害防止器具の電線への取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に取り付けることにより鳥の飛来や営巣を防ぐ鳥害防止器具を電線に沿って移送するための移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
架空電線に鳥類が飛来すると電気設備の事故や排泄物による公害の原因となるため、従来から、架空電線への鳥類の飛来を防止すべく架空電線に鳥害防止器具が取り付けられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の鳥害防止器具は、電線の上側にテグス等の線条体を離隔した状態で保持するようにした鳥害防止器具であって、線条体支持具としての固定支持具及び自由支持具を備えており、これら固定支持具及び自由支持具を所定間隔を置いて電線上に配置することにより電線の上側に線条体を懸架して鳥類の飛来を防止するようにしたものである。
【0004】
かかる特許文献1に記載の鳥害防止器具は、現在主流となりつつある間接活線工法により電線に取り付けられる点に特色があり、具体的には、予め複数の線条体支持具を連結片によって互いに連結するとともに各線条体支持具に予め線条体を係合しておき、このように一体化させたものを纏めて、作業者は絶縁ヤットコ等の絶縁操作棒を用いて電線上のある箇所に装着し、その位置で最初の線条体支持具を固定した後、他の線条体支持具については連結を解除して電線上を所定の位置までスライド移動させて順次固定するというものである。
【0005】
つまり、各線条体支持具に予め線条体を係合しておくとともに、各線条体支持具の電線への装着を一箇所で行い、後は絶縁操作棒等の間接活線工具を使用して電線上をスライド移動させることにより各所に移送して順次固定するというものであり、これよって間接活線工法による電線への取付作業を効率的に行えるという利点があった。
【0006】
なお、特許文献1では、線条体支持具としての固定支持具と自由支持具とが同一構造を有しているが、両者が異なる構造からなる場合もあり、また、線条体支持具がすべて電線に強固に固定される固定支持具のみからなる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-80800号公報
【特許文献2】特開2012-34434号公報
【特許文献3】特開2001-186646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、各電線には、特許文献2・3に示すように、断線時等における電線の落下を防止するために、隣接する電線間にわたって落線防止用のロープ(以下、「落線防止ロープ」という。)が架け渡されていることがある。落線防止ロープは通常、巻付けグリップと呼ばれる吊り下げ部材によって各電線に取り付けられているが、このような落線防止ロープが電線間に架け渡されている場合、特許文献1に記載の方法によって電線上のある箇所から各線条体支持具を電線に沿ってスライド移動させようとしても、落線防止ロープが架け渡されている箇所を越えて線条体支持具を移送することができないという問題があった。
【0009】
このため、当該箇所で一旦線条体支持具を電線から取り外し、それを越えた位置で再度電線上に線条体支持具を取り付ける等の工夫が必要とされていたが、各線条体支持具には予め線条体が係合されているため、一旦電線から取り外した線条体支持具は落線防止ロープの上側を跨いで当該箇所を越える必要があった。さもなければ、電線の上側に懸架すべき線条体が落線防止ロープの下側を潜ることになり、用をなさないからである。しかし、絶縁操作棒等の間接活線工具によってそれを行うのは極めて難儀であり、作業性に劣るという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、電線間に落線防止ロープが架け渡されている場合であっても、かかる箇所を越えて鳥害防止器具を電線に沿って移送することができる鳥害防止器具の移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成したことを特徴する。
すなわち、本発明は、線条体と線条体支持具とを備えた鳥害防止器具を電線に沿って移送するための鳥害防止器具の移送装置であって、
本体部と装着部とを備え、
前記本体部は、長尺状の筒状部材であって、内部に電線を挿通可能に構成されているとともに、その長手方向の一端側から他端側にわたって切欠部が形成されており、
前記装着部は、前記線条体支持具が装着可能に構成されているとともに、前記本体部に揺動可能に取り付けられている、ことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、移送装置の本体部に長手方向の一端側から他端側にわたって切欠部が形成されているため、切欠部の隙間から電線に被せることにより容易に電線に装着することができる。そして、本体部の内部に電線を位置させた状態で電線上をスライド移動させることにより、装着部に装着した線条体支持具を電線に沿って移送することができる。
【0013】
また、落線防止ロープが架け渡されている箇所に至ったときでも、本体部にその長手方向にわたって一端側から他端側まで切欠部が設けられているとともに、線条体支持具を装着した装着部が揺動可能に構成されているため、同箇所を越えて線条体支持具を電線に沿って移送することができる。
【0014】
さらに、装着部が揺動可能に構成されていることから、落線防止ロープが架け渡されている箇所を越える際も、線条体が落線防止ロープの下を潜るようなことがなく、常にそれを電線の上側に位置させることができる。
【0015】
本発明の好ましい実施態様の一つとして、上記の移送装置を単位移送装置として複数個の単位移送装置が連結自在に構成されており、各単位移送装置を連結したときに各切欠部も繋ぎ合わされて一連の切欠部となるように構成されていてもよい。
【0016】
かかる構成により、線条体支持具の数に応じて適宜移送装置を連結することにより、必要な数の線条体支持具を一度に移送させることができ、利便性が向上する。
【0017】
本発明の好ましい実施態様の一つとして、前記本体部に1又は2以上の装着部が設けられていてもよい。
【0018】
また、本発明に係る鳥害防止器具の電線への取付方法は、前記の移送装置を用いて鳥害防止器具を電線に取り付けるための方法であって、
予め線条体を係合させた複数の線条体支持具を各装着部に装着させた前記移送装置を、間接活線工具を用いて前記切欠部の隙間から電線に取り付けるステップと、
間接活線工具により最初の線条体支持具を装着部から取り外して電線に取り付けるステップと、
前記移送装置を電線に沿って移動させた上、次の線条体支持具を間接活線工具により装着部から取り外して電線に取り付けるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、電線間に落線防止ロープが架け渡されている場合であっても、かかる箇所を容易に越えることができるため、間接活線工法による鳥害防止器具の電線への取付作業を効率的に行うことできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態で用いられる線条体支持具の斜視図。
【
図2】本実施形態で用いられる線条体支持具の側面図であり、(A)は第1揺動部材と第2揺動部材が開状態にある図(但し、係合縁部は係合舌片部のフリー領域にある)、(B)は第1揺動部材と第2揺動部材が閉状態にある図(係合縁部は係合舌片部の係合領域にある)。
【
図3】(A)は第1揺動部材の斜視図、(B)は第2揺動部材の斜視図。
【
図7】(A)は装着部の正面図、(B)は装着部の側面図。
【
図8】本実施形態の移送装置に線条体支持具を装着した状態の斜視図。
【
図10】本実施形態の鳥害防止器具を電線に取り付けた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下において、上下方向は
図8における上下方向をいうものとする。この上下方向が概ね本発明の実施形態に係る鳥害防止器具の移送装置を電線に取り付けたときの鉛直方向に相当するものである。
【0022】
本発明の実施形態に係る鳥害防止器具の移送装置1は、移送装置1自体を電線Wに取り付けて鳥害防止器具を電線Wに沿って移送させるというものであり、移送装置1は電線Wに取り付けられるものの、移送中の鳥害防止器具(線条体支持具2)は電線Wには取り付けられていない点に特徴があるものである。
以下では、まず鳥害防止器具について説明し、次いで移送装置1について説明する。
【0023】
《鳥害防止器具》
本実施形態で用いられる鳥害防止器具は、
図10に示すとおり、線条体Lと線条体支持具2とを備える。
【0024】
線条体Lは、電線Wの上に架け渡されるものであり、耐候性に優れたテグスで構成されている。この線条体Lは、後述するとおり、線条体支持具2の線条体係合部3に係合されるものであるが、予め一定の長さ毎に接着剤によってコイル状に巻回保形されており、これを解いて使用するようになっている。このコイル状に保形するための接着は、線条体Lを展伸させることでコイルが容易に解ける程度の接着力に設定してある(以上の点につき、特許文献1、段落[0021]、
図2参照)。
【0025】
線条体支持具2は、
図1及び2に示すように、線条体係合部3と電線取付部4とを備える。線条体係合部3は、線条体支持具2の上部に位置し、その先端部に線条体Lを係合できるようになっている。本実施形態では、線条体係合部3の最上端には係合溝3aが設けられており、この係合溝3a内に線条体Lを位置させることができるようになっている。なお、符号3bは、ビス孔であり、係合溝3a内に線条体Lを位置させた上で、この孔に図示しないビスを通すことによって線条体Lが係合溝3aから抜け出さないようになっている。
【0026】
他方、電線取付部4は、そこに電線Wを取り付けることにより線条体支持具2自体を電線Wに固定できるようになっている部位であり、様々な形式のものが考えられる中、本実施形態では揺動部材で電線Wを挟み込む把持式のものについて例示している。
【0027】
具体的には、本実施形態で用いられる線条体支持具2は、支軸部21(
図3参照)を中心に開閉自在に構成された第1揺動部材10と第2揺動部材20とを備えており、この第1揺動部材10と第2揺動部材20の間に電線Wを挟み込むことにより把持できるようになっている。
【0028】
このうち、第1揺動部材10は、
図3(A)に示すように、その上部が線条体係合部3となっており、両者は一体的に構成されている。また、線条体係合部3の基端部付近には軸受部11が設けられており、この軸受部11の下方には、半円筒状の第1把持部12が設けられている。さらに、第1把持部12の下方には断面視円弧状に湾曲しつつ一側に突出した係合舌片部13が設けられている。この係合舌片部13の湾曲面は揺動中心である支軸部21を中心とする円弧面となっており、この円弧面の内側面(係合舌片部13の上側面)には複数の係合爪13aが設けられた係合領域と、係合爪部13aが設けられていないフリー領域とに区画されている。フリー領域は、係合領域よりも係合舌片部13の先端側に位置する。なお、本実施形態では、係合爪13aは3つ設けられている。
【0029】
他方、第1把持部12の円筒状の外壁、すなわち、第1揺動部材10において係合舌片部13が設けられている側とは反対側の第1把持部の外壁には、第1ばね脚部14が設けられている。この第1ばね脚部14は、第1把持部12の円筒状面の一部が切り起されたような切り起し部として構成されており、本実施形態では、円筒状面の左右に各1個、合計2個設けられている。
【0030】
第2揺動部材20は、
図3(B)に示すように、その上部に支軸部21とこの支軸部21を間に挟んでその左右両側に第2ばね脚部24が設けられている。支軸部21は、前述した軸受部11に嵌着するようになっており、両者を嵌着させることによって第1揺動部材10と第2揺動部材20とが一体化するとともに、支軸部21を中心に揺動自在に開閉するようになっている。そして、この状態で第1揺動部材10と第2揺動部材20とを開方向に揺動させていくと、第1ばね脚部14と第2ばね脚部24とが当接して、これ以上の開方向への揺動を規制するとともに、第1ばね脚部14と第2ばね脚部24との弾発力により第1揺動部材10と第2揺動部材20の揺動が閉方向に付勢されるようになっている。
【0031】
第2揺動部材20の支軸部21の下方には、半円筒状の第2把持部22が設けられており、この第2把持部22と前述した第1把持部12とで電線Wを挟持できるようになっている。この第2把持部22の下方には係合舌片部13が挿入される係合孔部23が設けられている。そして、この係合孔部23の上側縁部が係合縁部23aとなって係合舌片部13の係合爪13aと係合することにより第1揺動部材10と第2揺動部材20の揺動をその位置で固定できるようになっている。つまり、係合孔部23の係合縁部23aが係合舌片部13の係合領域にある場合は、係合縁部23aと係合爪13aとが係合して第1揺動部材10と第2揺動部材20の揺動はその位置で固定されることになる。他方、係合孔部23の係合縁部23aが係合舌片部13のフリー領域(前述のとおり、フリー領域は係合領域よりも係合舌片部13の先端側にある)に位置する場合は、第1揺動部材10と第2揺動部材20は揺動自在な状態にあるが、そこからさらに第1揺動部材10と第2揺動部材20とを開方向に揺動させて、ちょうど係合舌片部13が係合孔部23から抜け出そうとする状態までくると、第1ばね脚部14と第2ばね脚部24とが当接するようになっており、これにより、さらなる第1揺動部材10と第2揺動部材20の開方向への揺動には第1ばね脚部14と第2ばね脚部24の弾発力に逆らって力を加えなければならないようになっている。
【0032】
以上のように構成された線条体支持具2は、第1揺動部材10の軸受部11に第2揺動部材20の支軸部21を嵌着することにより組み立てられる。このとき、係合孔部23の係合縁部23aが係合舌片部13のフリー領域に位置するようにしておく。この状態で、第1ばね脚部14と第2ばね脚部24の弾発力に逆らって力を作用させて第1揺動部材10と第2揺動部材20とを開方向に揺動させると、係合舌片部13が係合孔部23から完全に抜け出して、両者の間に電線Wを通すことができる程度の隙間が形成される。この隙間から電線Wを通して第1把持部12と第2把持部22の間に電線Wを位置させ、開方向に加えていた力を解除すると、第1ばね脚部14と第2ばね脚部24の弾発力により第1揺動部材10と第2揺動部材20とが閉方向に揺動するとともに、係合舌片部13の先端部が係合孔部23内に挿通した状態となる。これにより上記隙間が閉じられて、電線Wは第1把持部12と第2把持部22の間に位置するとともに、線条体支持具2を電線W上に仮止めすることができる。
【0033】
なお、以上の操作は、通常、係合孔部23の係合縁部23aが係合舌片部13のフリー領域に位置する状態で第2揺動部材20を電線Wの上から被せるようにして、開状態にある第1揺動部材10の下端部と第2揺動部材20の下端部の間の空間に電線Wを位置させた上で、絶縁操作棒等の間接活線工具により第1揺動部材10の下端部を下方に引っ張ることにより一挙になされるものであり、線条体支持具2の電線Wへの仮止めをワンタッチで行えるという利点がある。
【0034】
そして、線条体支持具2を電線W上に本止めするには、第1揺動部材10と第2揺動部材20とをさらに閉方向に揺動させ、係合縁部23aを係合領域に位置させる。これにより、係合縁部23aと係合爪13aとが係合し、第1揺動部材10と第2揺動部材20の揺動が固定されるとともに、電線Wは第1把持部12と第2把持部22との間で挟持されることになる。以上の操作も間接活線工具を用いてなされることになる。なお、本実施形態の線条体支持具2はすべて電線W上に強固に固定されるタイプのものである。
【0035】
このように、本実施形態で使用される線条体支持具2は間接活線工具により容易に電線に装着することができる。
【0036】
なお、符号30は、異なる太さ(外径)の電線に対応するためのアダプターである。このアダプター30はゴム製で、円筒を2分割したような半割状に構成されており、その一方部材31を第1把持部12に、他方部材32を第2把持部22に装着できるようになっている。具体的には、一方部材31に設けられた凸部31bを第1把持部12に設けられた孔16に、他方部材32に設けられた凸部32bを第2把持部に設けられた孔26に、それぞれ嵌入させることにより、一方部材31を第1把持部12に、他方部材32を第2把持部22に装着できるようになっている。なお、本実施形態において一方部材31と他方部材32とは同一の形状に構成されている。
【0037】
また、アダプター30の一方部材31及び他方部材32の中心部には対応する位置にそれぞれ溝部31a・32aが形成されており、両溝部31a・32aを合致させることで一端側から他端側に挿通する挿通孔33が形成されるようになっている(
図2(B)参照)。この挿通孔33の内径は装着する電線の太さ(外径)と対応しており、第1揺動部材10と第2揺動部材20とを閉じることでこの挿通孔33内(溝部31a・32a内)に電線Wが挟まれるようになっている。
【0038】
《鳥害防止器具の移送装置》
次に、本実施形態に係る鳥害防止器具の移送装置1について説明する。
本実施形態に係る移送装置1は、
図5に示すとおり、本体部50と装着部60とを備える。
【0039】
本体部50は、長尺状の円筒状部材であって、この円筒状部材の内部に電線Wを挿通可能に構成されているとともに、その長手方向の一端側から他端側にわたって切欠部51が延在している。切欠部51は、ここを介して電線Wを内部に挿入するための挿入口であるとともに、落線防止ロープ100を吊り下げるために電線Wに設けられた吊り下げ部材101(その一例が特許文献2の「巻付けグリップ金具」又は特許文献3の「巻付けグリップ」である。)を一端側から他端側に通過させるための隙間となるものである。したがって、切欠部51の隙間の大きさは、それを押し広げることにより電線Wを挿入できる程度の大きさであるとともに、一端側から他端側に吊り下げ部材101を通過させることができる程度の大きさに構成されている。
【0040】
本体部50の長手方向の一端部は大径の連結用受け口52となっており、その内径は他端部53の外径と合致するように構成されている。これにより、複数の移送装置1を用意し、そのうちの一つの移送装置1の連結用受け口52に他の移送装置1の他端部53を嵌入することにより、互いに連結自在になっている。つまり、
図5に示す移送装置1を単位移送装置として、これを複数個連結することで、必要な数の線条体支持具2を搭載することできるようになっている。
【0041】
また、本体部50の外側には、その長手方向に平行に連結棒挿通部54が一体的に設けられている。この連結棒挿通部54は円筒状で、その内部に長手方向の一端側から他端側にわたって連結棒挿入孔54aが設けられており、連結棒55が挿通されるようになっている(
図9参照)。この連結棒挿通部54には、挿入された連結棒55を止めねじ(不図示)で固定するための孔56が設けられている(
図6(B)参照)。本実施形態では、この孔56は2箇所に設けられている。
【0042】
本実施形態において、この連結棒55は、複数の移送装置1を連結するために用いられるものであり、一の移送装置1の一端部と他の移送装置1の他端部とを上述したように嵌合連結させた上で、さらにこの連結を確実にするために、複数の移送装置1の連結棒挿通部54の位置を互いに合致させてそれらを貫くように連結棒55を挿通させることにより、これら複数の移送装置1を一体化させるものである。なお、各移送装置1に設けられた切欠部51は、各移送装置1を連結させた状態では長手方向に真っ直ぐに一連となるように構成されている。
【0043】
さらに、本体部50の切欠部51を挟んで連結棒挿通部54が設けられている側とは反対側の外面には、後述する装着部60を揺動自在かつ着脱自在に係止する係止突起57が設けられている。この係止突起57は、円筒状の突起であり、その外周には小径部となる環状溝部57aが形成されており、この環状溝部57aに後述する装着部60の係止孔部63の縁部を係止させることにより、装着部60を吊り下げ状態で揺動自在に支持するようになっている。
【0044】
次に、装着部60について説明する。
装着部60は、線条体支持具2を装着可能に構成されているとともに、その上部を支点として本体部50に揺動可能かつ着脱自在に取り付けられている。具体的には、装着部60は、断面視略コの字状に形成されており、一対の対向壁61・61と、これら対向壁61・61を一側で繋ぐ奥壁62とを備える。装着部60の上部には係止孔部63が形成されている。本実施形態では、係止孔部63は奥壁62の上部に形成されている。
【0045】
本実施形態の係止孔部63は、
図7(A)に示すとおり、大小二つの円が交差した交差円状をしており、上方から順に小径孔部63aと大径孔部63bとを有する。このうち、大径孔部63bは、本体部50の係止突起57を挿通可能な大きさに形成されている。他方、小径孔部63aは、係止突起57の小径部である環状溝部57aには嵌まり込むが、ここからは係止突起57を奥壁62とは垂直な方向に引き抜けない大きさに形成されている。
【0046】
これにより、装着部60を本体部50に取り付けるに当たっては、まず、本体部50の係止突起57を係止孔部63の大径孔部63bに挿通させ、次いで、係止突起57の環状溝部57aに係止孔部63の縁部が位置するようにして係止突起57を上方にスライドさせて小径孔部63a内に移動させる。これにより、係止突起57の環状溝部57aと小径孔部63aとが係合し、装着部60は抜け止め状態でかつ係止突起57回りに揺動自在に取り付けられることになる。なお、この状態で手を放しても装着部60が本体部50から脱落することはない。係合孔部63が装着部60の上部(具体的には装着部60の重心より上部)に設けられているとともに、小径孔部63aが大径孔部63bの上方に位置するため、装着部60の自重により、係止突起57の環状溝部57aは小径孔部63a内にとどまるからである。
【0047】
また、本実施形態の装着部60には、線条体支持具2の装着をより確実にするために、各対向壁61・61の開口側(奥壁62とは反対側)の部位に抜け止め用の係止爪64が設けられている。これにより、装着した線条体支持具2が開口側から不用意に脱離することを防止することができる。また、各対向壁61・61の内側には開口側から奥側に向かって延びる二本の平行な係止凸条65・65が設けられており、この二本の係止凸条65・65の間に、線条体支持具2の両側部にそれぞれ設けられた二本の係止凸条15・15のいずれかを位置させることにより、両者が係合するようになっている。これにより、装着部60内における線条体支持具2の上下方向の移動を規制している。
【0048】
なお、切欠部51と装着部60の揺動中心となる係止突起57の位置関係についていうと、本実施形態では、切欠部51が下方を向くように本体部50を配置したときに、係止突起57の突出方向が側方(鉛直方向との関係では水平方向)を向くような位置関係となっている。これにより、本実施形態では、切欠部51を下方に位置させた状態で装着部60は本体部50の側部を支点として吊り下げ状に揺動可能となっている。
【0049】
《本実施形態の使用方法》
本実施形態の鳥害防止器具の移送装置1は以下のように使用される。
まず、予め必要な数の線条体支持具2を用意するとともに、各線条体支持具2の線条体係合部3に線条体Lを係合しておく。間接活線工法においては、線条体支持具2を電線Wに装着してからそれに線条体Lを絶縁操作棒等の間接活線工具を用いて係合させることは著しく困難なため、予め各線条体支持具2に線条体Lを係合しておくことが必要となる。なお、本実施形態では、線条体Lが所定の長さ毎に予め接着剤によってコイル状に巻回した状態に保形されているため、各線条体支持具2に線条体Lを係合するに当たって、線条体Lが絡まったり、作業の邪魔になったりすることがない。
【0050】
また、線条体支持具2の数に合わせて必要な数の装着部60を用意し、それに合わせて本体部50も必要な数だけ連結しておく。具体的には、一の本体部50の連結用受け口52に他の本体部50の他端部53を嵌入することにより複数の本体部50を互いに嵌合連結させるとともに、連結棒挿通部54に必要な長さの連結棒55を挿通し、図示しない止めねじで連結棒55を固定する。そして、このように連結して一体化させた移送装置1の各装着部60に線条体支持具2を装着し、各線条体支持具2が装着部60にしっかり固定されていることを確認する。
【0051】
なお、各線条体支持具2の配列は、最初に取り付けるべき線条体支持具2が移送装置1の移送方向とは反対側の最も端の装着部60に装着され、次に取り付けるべき線条体支持具2は移送方向に沿ってその隣の装着部60に、さらにその次に取り付けるべき線条体支持具2はさらにその隣の装着部60に、という順に配列される。
【0052】
次いで、この移送装置1を電線Wに取り付ける。それには、移送装置1の切欠部51を押し広げるようにしてその隙間から本体部50の内部に電線Wを挿入すればよい。本実施形態では、切欠部51から本体部50内に電線Wを挿入するだけで移送装置1を電線Wに取り付けることができるため、間接活線工具によって容易に電線Wへの取付作業を行うことができる。
【0053】
このようにして移送装置1を電線Wにセッティングした後、最初に取り付ける線条体支持具2を装着部60から取り外し、電線Wに固定する。上述のとおり、最初に取り付ける線条体支持具2は移送方向とは反対側の最も端の装着部60に装着されている。かかる作業も、作業者は高所作業車のバケットの中から絶縁操作棒を使用して間接活線工法により行う。
【0054】
それが終了すると、次の線条体支持具2の取付箇所まで移送装置1を移動させる。この作業も絶縁操作棒を使用した間接活線工法により行われる。その際、本実施形態では、本体部50にその長手方向にわたって一端側から他端側まで切欠部51が設けられているとともに、各装着部60が揺動可能に構成されているため、たとえ電線W上に落線防止ロープ100が架け渡された箇所があっても、容易にその箇所を越えていくことができる。また、その際、線条体Lが落線防止ロープ100の下を潜るようなこともない。
【0055】
具体的には、電線Wから垂下する吊り下げ部材101については切欠部51の隙間を通過させることにより、また、落線防止ロープ100についてはそれと当接した装着部60が揺動することにより、移送装置1全体を落線防止ロープ100が架け渡された箇所を越えて移動させることができる。このため、予め線条体Lが係合された複数の線条体支持具2を電線Wに沿って簡単に移送させることができ、間接活線工法による鳥害防止器具の電線Wへの取付作業を効率的に行うことができる。
【0056】
このようにして次の取付箇所まで移送装置1を移動させると、次に取り付けるべき線条体支持具2を装着部60から取り外し、電線Wに取り付ける。上述のとおり、次に取り付けるべき線条体支持具2は、移送方向に沿って最初の線条体支持具2の隣側の装着部60に装着されている。本実施形態では、絶縁操作棒を使用して線条体支持具2を装着部60から容易に取り出せるとともに、前述したように絶縁操作棒を使用して容易に線条体支持具2を電線Wに固定できるため、間接活線工法による取付作業を効率的に行うことができる。
【0057】
以下同様にして移送装置1を電線Wに沿って移動させながら、線条体支持具2を順次電線Wに固定していく。このようにしてすべての線条体支持具2を固定し終わると、鳥害防止器具の電線Wへの取付作業が終了する。
【0058】
《変形例》
以上、本発明に実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態の構成に限定されるものではない。本実施形態では、一つの本体部に一つの装着部が設けられていたが、必ずしも装着部は本体部に一つである必要はなく、一つの本体部に複数個の装着部が設けられていてもよい。また、本実施形態では、一つの装着部に一つの線条体支持具が装着されるように構成されていたが、一つの装着部に複数個の線条体支持具が装着されるように構成されていてもよい。
【0059】
本実施形態では、移送装置同士が連結されるように構成されていたが、必ずしも連結可能に構成されている必要はなく、例えば、本体部を長尺状の単一部材で構成し、そこに必要な数の装着部を設けてもよい。
【0060】
本実施形態では、移送装置同士が嵌合方式によって連結されるように構成されていたが、連結自在に構成する場合であっても、必ずしも嵌合方式による連結に限られるものではなく、他の方式ないし構造によって連結自在に構成されていてもよい。また、本実施形態では、嵌合方式による連結を補強するために移送装置同士が連結棒によって連結されていたが、必ずしも連結棒による連結は必須のものではない。あるいは逆に、連結棒のみによって移送装置同士が連結されるように構成されていてもよい。
【0061】
本実施形態では、装着部を揺動自在に構成するために係止突起と係止孔部とを係止させるように構成したが、必ずしもこの構成に限定されるものではなく、他の構成によって揺動自在に構成されていてもよい。また、本実施形態では、装着部が本体部に着脱自在に構成されていたが、必ずしも着脱自在に構成されている必要はない。
【0062】
本実施形態の移送装置に用いられる鳥害防止器具(線条体及び線条体支持具)は特定の構成を有していたが、必ずしも上記構成のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、線条体支持具が互いに揺動自在な第1揺動部材と第2揺動部材との間に電線を挟み込むことにより電線に取り付けられるタイプのものであったが、これに代えて、例えば特許文献1に記載に記載されているようなねじ式のもの、具体的には、ねじ体の操作により上下動可能な押し板を設け、この押し板と対向面との間に電線を挟み込むことにより電線に取り付けられるタイプのものであってもよい。
【0063】
本実施形態の線条体支持具はすべて電線に強固に固定されるタイプのものであったが、必ずしもこのようなタイプのものに限定されず、特許文献1に記載されているように線条体支持具が固定支持具と自由支持具とからなる場合であってもよい。また、線条体支持具が固定支持具と自由支持具とからなる場合でもあっても、固定支持具と自由支持具とが同一構造を有しているものに限定されず、両者が異なる構造を有するものであってもよい。
【0064】
本実施形態では、線条体が予め一定の長さ毎に接着剤によってコイル状に巻回保形されていたが、必ずしもこのように構成されている必要はない。また、本実施形態の線条体は耐候性に優れたテグスで構成されていたが、線条体の素材はテグスに限られるものではなく、他の素材であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 移送装置
2 線条体支持具
3 線条体係合部
3a 係合溝
3b ビス孔
4 電線取付部
10 第1揺動部材
11 軸受部
12 第1把持部
13 係合舌片部
13a 係合爪
14 第1ばね脚部
15 係止凸条
16 孔
20 第2揺動部材
21 支軸部
22 第2把持部
23 係合孔部
23a 係合縁部
24 第2ばね脚部
26 孔
30 アダプター
31 一方部材
31a 溝部
31b 凸部
32 他方部材
32a 溝部
32b 凸部
33 挿通孔
50 本体部
51 切欠部
52 連結用受け口
53 他端部
54 連結棒挿通部
54a 連結棒挿入孔
55 連結棒
56 止めねじ用の孔
57 係止突起
57a 環状溝部
60 装着部
61 対向壁
62 奥壁
63 係止孔部
63a 小径孔部
63b 大径孔部
64 抜け止め用の係止爪
65 係止凸条
100 落線防止ロープ
101 吊り下げ部材
L 線条体
W 電線