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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163409
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20221019BHJP
   B60N 2/20 20060101ALI20221019BHJP
   A47C 1/024 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/20
A47C1/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068319
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】深見 大介
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087DE10
3B099AA05
3B099BA04
(57)【要約】
【課題】 回転部材を回転可能に支持する機構を備える乗物用シートにおいて、ガタツキの発生を抑制することが可能な乗物用シートの一例を開示する。
【解決手段】 ヒンジ機構10は、固定部材11と回転部材12との間に配置され、連結具13が貫通した環状のワッシャ14であって、固定部材11に対して回転部材12を離間させる向きの弾性力を発揮するワッシャ14を備えている。連結具13は、固定部材11を貫通した小径部13A、当該小径部13Aより直径が大きく、かつ、ワッシャ14を貫通した大径部13Bを有している。そして、固定部材11には、回転部材12から離間する向きに凹んだ凹部11Aであって、当該凹み方向に連結具13が貫通した凹部11Aが設けられている。さらに、大径部13Bの少なくとも一部が凹部11A内に位置し、かつ、回転部材12に対する固定部材11の位置が大径部13Bにより決められている。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に搭載される乗物用シートにおいて、
固定部材及び回転部材と、
前記回転部材を前記固定部材に対して回転可能に連結する連結具であって、前記固定部材及び前記回転部材を貫通した棒状の連結具と、
前記固定部材と前記回転部材との間に配置され、前記連結具が貫通した環状のワッシャであって、前記固定部材に対して前記回転部材を離間させる向きの弾性力を発揮するワッシャとを備え、
前記固定部材及び前記回転部材のうち一方の部材を第1部材とし、他方の部材を第2部材としたとき、
前記連結具は、前記第1部材を貫通した小径部、当該小径部より直径が大きく、かつ、前記ワッシャを貫通した大径部を有しており、
前記第1部材及び前記第2部材のうちいずれか一方の部材には、他方の部材から離間する向きに凹んだ凹部であって、当該凹み方向に前記連結具が貫通した凹部が設けられ、
さらに、前記大径部の少なくとも一部が前記凹部内に位置し、かつ、前記他方の部材に対する前記一方の部材の位置が前記大径部により決められている乗物用シート。
【請求項2】
前記大径部は、前記他方の部材を貫通している請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記一方の部材は、前記第1部材である請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記第1部材は、前記固定部材である請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記ワッシャは、波状に構成された波座金である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記回転部材は、シートバックフレームの少なくとも一部を構成する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物に搭載される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、バックブラケットにアンカープレートが段付きボルトを介して回転可能に連結されている。そして、バックブラケットとアンカープレートとの間には、隙間が設けられ、かつ、当該隙間には、波座金(「ウェイブワッシャ」ともいう。)が配置されている。
【0003】
さらに、当該発明では、段付きボルトの小径部が波座金を貫通し、かつ、波座金が段付きボルトの大径部とバックブラケットとにより挟まれているとともに、当該大径部がアンカープレートを貫通し、かつ、波座金とアンカープレートとの間に空隙が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-3575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明では、波座金とアンカープレートとの間に空隙が設けられているので、アンカープレートは、波座金と段付きボルトの頭部との間で変位可能な構成となる。このため、特許文献1に記載の発明では、アンカープレートのガタツキが発生してしまう。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、回転部材を回転可能に支持する機構を備える乗物用シートにおいて、ガタツキの発生を抑制することが可能な乗物用シートの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
乗物に搭載される乗物用シートは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0008】
すなわち、当該構成要件は、固定部材(11)及び回転部材(12)と、回転部材(12)を固定部材(11)に対して回転可能に連結する連結具(13)であって、固定部材(11)及び回転部材(12)を貫通した棒状の連結具(13)と、固定部材(11)と回転部材(12)との間に配置され、連結具(13)が貫通した環状のワッシャ(14)であって、固定部材(11)に対して回転部材(12)を離間させる向きの弾性力を発揮するワッシャ(14)とを備えていることである。
【0009】
これにより、当該乗物用シートに係るワッシャ(14)は、固定部材(11)と回転部材(12)との間に配置されて固定部材(11)に対して回転部材(12)を離間させる向きの弾性力を発揮するので、固定部材(11)に対する回転部材(12)のガタツキの発生が抑制され得る。
【0010】
ところで、当該乗物用シートが組み立てられる際に、仮に、特許文献1に記載の発明のごとく、ワッシャ(14)が連結具(13)の大径部(13B)と第1部材(11)とで挟まれた状態になると、ワッシャ(14)と第2部材(12)との間に空隙が発生するので、ガタツキの発生を抑制することができない。なお、第1部材(11)とは、固定部材(11)及び回転部材(12)のうち一方の部材をいう。第2部材(12)とは、他方の部材をいう。
【0011】
これに対して、当該乗物用シートでは、連結具(13)は、第1部材(11)を貫通した小径部(13A)、当該小径部(13A)より直径が大きく、かつ、ワッシャ(14)を貫通した大径部(13B)を有しており、第1部材(11)及び第2部材(12)のうちいずれか一方の部材(11)には、他方の部材(12)から離間する向きに凹んだ凹部(11A)であって、当該凹み方向に連結具(13)が貫通した凹部(11A)が設けられ、さらに、大径部(13B)の少なくとも一部が凹部(11A)内に位置し、かつ、他方の部材(12)に対する一方の部材(11)の位置が大径部(13B)により決められている。
【0012】
このため、大径部(13B)により固定部材(11)に対する回転部材(12)の位置が決められ、かつ、ワッシャ(14)が大径部(13B)に対応する位置に保持される。したがって、当該乗物用シートが組み立てられる際に、ワッシャ(14)が大径部(13B)と第1部材(11)とで挟まれてしまうことが確実に回避され得るので、固定部材(11)に対する回転部材(12)のガタツキの発生が確実に抑制され得る。
【0013】
なお、「他方の部材(12)に対する一方の部材(11)の位置が大径部(13B)により決められている」とは、例えば、凹部(11A)の底部、つまり一方の部材(11)に大径部(13B)が直接的に接触している状態、又はスペーサ等の間座を介して一方の部材(11)に大径部(13B)が間接的に接触している状態等をいう。
【0014】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
図2】第1実施形態に係るヒンジ機構を示す図である。
図3】第1実施形態に係るヒンジ機構を示す図である。
図4】第1実施形態に係るヒンジ機構を示す図である。
図5】第1実施形態に係るヒンジ機構を示す図である。
図6】第1実施形態に係るヒンジ機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0017】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシートであって、4人又は5人乗り車両の後部座席に用いられるシートに本開示に係る乗物用シートが適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0018】
したがって、当該乗物用シートは、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0019】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シートは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0020】
(第1実施形態)
<1.乗物用シートの概要>
本実施形態係る後部座席用の乗物用シート1は、図1に示されるように、シートクッション3及びシートバック5等を少なくとも備える。シートクッション3は着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック5は着席者の背部を支持するための部位である。
【0021】
バックフレーム本体5Aは、図2に示されるように、ヒンジ機構10を介して車両ボディ(図示せず。)に固定される。なお、シートクッション3は、車両ボディに対して直接的又は間接的に固定されている。
【0022】
バックフレーム本体5Aは、シートバック5の骨格を構成するシートバックフレームの一部である。なお、シートバックフレームは、バックフレーム本体5A及び可動ブラケット等を有して構成されている。
【0023】
<2.ヒンジ機構>
<2.1 ヒンジ機構の概要>
ヒンジ機構10は、図3及び図4に示されるように、固定部材11、回転部材12、連結具13及びワッシャ14等を少なくとも有して構成されている。本実施形態に係る固定部材11は、車両ボディに固定された不動の固定ブラケットにて構成されている。
【0024】
回転部材12は、第1位置と第2位置との間で回転又は揺動する。そして、回転部材12には、ボルト等の締結具を介してバックフレーム本体5Aが固定されている。つまり、回転部材12は、シートバックフレームの一部を構成する可動ブラケットである。
【0025】
なお、第1位置は、図3の実線で示される位置であって、シートバック5が略直立した状態となる位置である。第2位置は、図3の二点鎖線で示される位置であって、シートバック5が前方側に倒伏した状態となる位置である。
【0026】
連結具13は、図5に示されるように、回転部材12を固定部材11に対して回転可能に連結する棒状の連結ピンである。当該連結具13は、固定部材11及び回転部材12を貫通している。
【0027】
ワッシャ14は、固定部材11と回転部材12との間に配置され、連結具13が貫通した環状の座金のである。そして、当該ワッシャ14は、固定部材11に対して回転部材12を離間させる向きの弾性力を発揮する。なお、本実施形態に係るワッシャ14は、波状に構成された波座金(ウェイブワッシャともいう。)である。
【0028】
<2.2 連結具及びその周囲の詳細構成>
連結具13は、図6に示されるように、小径部13A及び大径部13Bが設けられ段付きピンである。小径部13Aは、固定部材11に設けられた貫通穴を貫通した円柱状又は円筒状の部位である。
【0029】
大径部13Bは、小径部13Aより直径が大きく、かつ、ワッシャ14及び回転部材12に設けられた貫通穴を貫通した円柱状又は円筒状の部位である。なお、大径部13B側に設けられた鍔状のフランジ部13C、及び小径部13A側に設けられた鍔状のフランジ部13Dは、連結具13の抜け止め部である。
【0030】
因みに、小径部13A、大径部13B及びフランジ部13Cは、切削加工等の機械加工や冷間鍛造等の塑性加工にて一体成形された部位である。フランジ部13Dは、連結具13が固定部材11及び回転部材12に挿入された後、カシメ加工等の塑性加工にて形成された部位である。
【0031】
固定部材11には凹部11Aが設けられている。当該凹部11Aは、回転部材12から離間する向き(図6では、紙面上向き)に凹んだ部位であって、当該凹み方向(図6では、紙面上下方向)に連結具13が貫通している。
【0032】
つまり、凹部11Aに小径部13Aが貫通した貫通穴が設けられている。なお、本実施形態に係る凹部11Aは、固定部材11にプレス加工等の塑性加工が施されて構成された部位である。
【0033】
そして、大径部13Bの少なくとも一部が凹部11A内に位置し、かつ、回転部材12に対する固定部材11の位置が大径部13Bにより決められている。つまり、本実施形態では、大径部13Bが凹部11Aに直接的に接触することにより、回転部材12に対する固定部材11の位置が決められている。
【0034】
<3.本実施形態に係る乗物用シート(特に、ヒンジ機構)の特徴>
本実施形態に係るヒンジ機構10は、ワッシャ14を備えている。当該ワッシャ14は、固定部材11と回転部材12との間に配置され、連結具13が貫通した環状の座金であって、固定部材11に対して回転部材12を離間させる向きの弾性力を発揮する。
【0035】
これにより、当該ワッシャ14は、固定部材11と回転部材12との間に配置されて固定部材11に対して回転部材12を離間させる向きの弾性力を発揮するので、固定部材11に対する回転部材12のガタツキの発生が抑制され得る。
【0036】
ところで、当該乗物用シート1が組み立てられる際に、仮に、特許文献1に記載の発明のごとく、ワッシャ14が連結具13の大径部13Bと固定部材11とで挟まれた状態になると、ワッシャ14と回転部材12との間に空隙が発生するので、ガタツキの発生を抑制することができない。
【0037】
これに対して、当該ヒンジ機構10に係る連結具13は、固定部材11を貫通した小径部13A、当該小径部13Aより直径が大きく、かつ、ワッシャ14を貫通した大径部13Bを有している。
【0038】
そして、固定部材11には、回転部材12から離間する向きに凹んだ凹部11Aであって、当該凹み方向に連結具13が貫通した凹部11Aが設けられている。さらに、大径部13Bの少なくとも一部が凹部11A内に位置し、かつ、回転部材12に対する固定部材11の位置が大径部13Bにより決められている。
【0039】
このため、大径部13Bにより固定部材11に対する回転部材12の位置が決められ、かつ、ワッシャ14が大径部13Bに対応する位置に保持される。したがって、当該ヒンジ機構10が組み立てられる際に、ワッシャ14が大径部13Bと固定部材11とで挟まれてしまうことが確実に回避され得るので、固定部材11に対する回転部材12のガタツキの発生が確実に抑制され得る。
【0040】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、大径部13Bが凹部11Aに直接的に接触することにより、回転部材12に対する固定部材11の位置が大径部13Bにより決められていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0041】
すなわち、当該開示は、例えば、大径部13Bが凹部11Aに平ワッシャ等を介して間接的に接触することにより、回転部材12に対する固定部材11の位置が大径部13Bにより決められた構成であってもよい。
【0042】
上述の実施形態では、小径部13Aが固定部材11を貫通し、大径部13Bが回転部材12を貫通する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、小径部13Aが回転部材12を貫通し、大径部13Bが固定部材11を貫通する構成であってもよい。
【0043】
上述の実施形態では、固定部材11に凹部11Aが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、回転部材12に凹部11Aが設けられた構成であってもよい。
【0044】
上述の実施形態に係るワッシャ14は、波座金であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ばね座金、曲げ座金又は皿ばね等にてワッシャ14が構成されていてもよい。
【0045】
上述の実施形態では、シートバック5のヒンジ機構10に本開示が適用されたものであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、その他のヒンジ機構にも適用可能である。
【0046】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0047】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1… 乗物用シート 3…シートクッション
5… シートバック 5A…バックフレーム
10… ヒンジ機構 11…固定部材 11A… 凹部
12… 回転部材 13…連結具 13A… 小径部
13B… 大径部 14…ワッシャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6