(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163423
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
H01G4/30 513
H01G4/30 512
H01G4/30 201C
H01G4/30 201K
H01G4/30 201F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068343
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【弁理士】
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】村松 諭
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC02
5E001AC09
5E001AD02
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ06
5E082JJ12
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】積層体の側面に外部電極を有する積層セラミックコンデンサであって、内部電極層が積層方向おいて重なる領域である有効領域を拡大させ、大容量化を図ることができる積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】本発明に係る積層セラミックコンデンサは、複数の誘電体層が積層される積層体と該積層体の両端面に引き出される第1の内部電極層と該積層体の両端面及び両側面の何れにも引き出されない第2の内部電極層とを備える。該積層体は複数の内部電極層が対向する内層部と両主面側に位置する主面側外層部と両側面側に位置する側面側外層部と両端面側に位置する端面側外層部とを備える。両側面側外層部には、第2の内部電極層に接続される接続導体が配置される。第1及び第2の外部電極は第1の内部電極層と接続され、第3及び第4の外部電極は第2の内部電極層が接続導体を介して接続される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の積層された誘電体層と、前記誘電体層上に積層された複数の内部電極層とを有し、積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、積層方向直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、前記積層方向および前記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面を有する積層体と、
前記第1の端面上に配置されている第1の外部電極と、
前記第2の端面上に配置されている第2の外部電極と、
前記第1の側面上に配置されている第3の外部電極と、
前記第2の側面上に配置されている第4の外部電極と、
を有する、積層セラミックコンデンサであって、
前記積層体は、
前記複数の内部電極層が対向する内層部と、
前記第1の側面側に位置し、前記第1の側面と前記第1の側面側の前記内層部の最表面とその最表面の延長線上との間に位置する前記複数の誘電体層から形成される第1の側面側外層部と、
前記第2の側面側に位置し、前記第2の側面と前記第2の側面側の前記内層部の最表面とその最表面の延長線上との間に位置する前記複数の誘電体層から形成される第2の側面側外層部と、
前記第1の端面側に位置し、前記第1の端面と前記第1の端面側の前記内層部の最表面とその最表面の延長線上との間に位置する前記複数の誘電体層から形成される第1の端面側外層部と、
前記第2の端面側に位置し、前記第2の端面と前記第2の端面側の前記内層部の最表面とその最表面の延長線上との間に位置する前記複数の誘電体層から形成される第2の端面側外層部と、
を有し、
前記複数の内部電極層は、前記複数の誘電体層上に配置され、前記第1の端面および前記第2の端面に引き出された第1の内部電極層と、
前記複数の誘電体層上に配置され、前記第1の主面および前記第2の主面、前記第1の側面、前記第2の側面ならびに前記第1の端面、前記第2の端面のいずれにも引き出されていない第2の内部電極層と、を有し、
前記第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には、前記第2の内部電極層に接続される接続導体が配置され、前記第2の内部電極層は前記接続導体を介して前記第3の外部電極および前記第4の外部電極と接続される、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記内層部に位置する前記誘電体層の組成と、前記第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の組成は異なり、
前記内層部に位置する前記誘電体層の組成と、前記第1の端面側外層部および第2の端面側外層部の組成は同じである、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記接続導体は、前記第1の内部電極層および前記第2の内部電極層を構成する金属と同種の金属で形成される、請求項1または請求項2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記第1の側面側外層部および前記第2の側面側外層部の厚みは、5μm以上30μm以下である、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記第1の端面側外層部および前記第2の端面側外層部の厚みは、10μm以上70μm以下である、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部電極と誘電体層とが交互に複数積層された積層体と、内部電極と電気的に接続され、積層体の表面に形成された外部電極とを備えた電子部品が知られている。
【0003】
そのような電子部品の1つとして、特許文献1には、積層体の両端面に外部電極を設けるとともに、両側面に外部端子を設けた積層セラミックコンデンサが記載されている。この積層セラミックコンデンサでは、積層体の両端面に引き出された信号用内部電極と、積層体の両側面に引き出された接地用内部電極とが誘電体層を介して交互に積層されている。そして、積層体の両端面に、信号用内部電極と電気的に接続される外部電極が設けられ、積層体の両側面に、接地用内部電極と電気的に接続される接地用外部端子が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサでは、接地用内部電極は、積層体の両側面に引き出される部分を有するので、信号用内部電極と接地用内部電極とが積層方向において重なる領域である有効領域が小さくなり、その分、静電容量が小さくなるという問題がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、積層体の側面に外部電極を有する積層セラミックコンデンサであって、内部電極層が積層方向おいて重なる領域である有効領域を拡大させ、大容量化を図ることができる積層セラミックコンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る積層セラミックコンデンサは、複数の積層された誘電体層と、誘電体層上に積層された複数の内部電極層とを有し、積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、積層方向直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、積層方向および長さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面を有する積層体と、第1の端面上に配置されている第1の外部電極と、第2の端面上に配置されている第2の外部電極と、第1の側面上に配置されている第3の外部電極と、第2の側面上に配置されている第4の外部電極と、を有する、積層セラミックコンデンサであって、積層体は、複数の内部電極層が対向する内層部と、第1の側面側に位置し、第1の側面と第1の側面側の内層部の最表面とその最表面の延長線上との間に位置する複数の誘電体層から形成される第1の側面側外層部と、第2の側面側に位置し、第2の側面と第2の側面側の内層部の最表面とその最表面の延長線上との間に位置する複数の誘電体層から形成される第2の側面側外層部と、第1の端面側に位置し、第1の端面と第1の端面側の内層部の最表面とその最表面の延長線上との間に位置する複数の誘電体層から形成される第1の端面側外層部と、第2の端面側に位置し、第2の端面と第2の端面側の内層部の最表面とその最表面の延長線上との間に位置する複数の誘電体層から形成される第2の端面側外層部と、を有し、複数の内部電極層は、複数の誘電体層上に配置され、第1の端面および第2の端面に引き出された第1の内部電極層と、複数の誘電体層上に配置され、第1の主面および第2の主面、第1の側面、第2の側面ならびに第1の端面、第2の端面のいずれにも引き出されていない第2の内部電極層と、を有し、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には、第2の内部電極層に接続される接続導体が配置され、第2の内部電極層は接続導体を介して第3の外部電極および第4の外部電極と接続される、積層セラミックコンデンサである。
【0008】
この発明に係る積層セラミックコンデンサは、積層体の第1の端面上に第1の外部電極層が配置され、そして第2の端面上に第2の外部電極が配置されるとともに、第1の側面上に第3の外部電極が配置され、第2の側面上に第4の外部電極が配置されているが、積層体において、内層部の幅方向に所望の大きさで内部電極層を配置させることができるので、このような積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極層が高さ方向において重なる領域である有効領域を拡大させることができ、その結果、有効体積の向上による大容量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、積層体の側面に外部電極を有する積層セラミックコンデンサであって、内部電極層が積層方向おいて重なる領域である有効領域を拡大させ、大容量化を図ることができる積層セラミックコンデンサを提供し得る。
【0010】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサ(3端子型積層セラミックコンデンサ)の一例を示す外観斜視図である。
【
図2】この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサ(3端子型積層セラミックコンデンサ)の一例を示す上面図である。
【
図3】
図2の線III-IIIにおける断面図である。
【
図7】
図5に示す側面側外部電極層の変形例を示した断面図である。
【
図8】
図3の線VIII-VIIIにおける断面図である。
【
図10】この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサを構成する積層体の分解斜視図である。
【
図11】本発明にかかる積層セラミックコンデンサの製造工程において準備される第1の内部電極層のパターンが形成された誘電体シートの斜視図である。
【
図12】本発明にかかる積層セラミックコンデンサの製造工程において準備される第2の内部電極層のパターンが形成された誘電体シートの斜視図である。
【
図13】本発明にかかる積層セラミックコンデンサの製造工程において製造される内層用の積層ブロックの斜視図である。
【
図14】(a)ないし(e)は、側面側外層部用ブロックの製造工程の説明図である。
【
図15】内層用短冊状ブロックに対して第1の側面側外層部および第2の側面側外層部用の短冊状ブロックが圧着された状態を示した図である。
【
図16】本発明にかかる積層セラミックコンデンサの製造工程において製造される積層チップの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.積層セラミックコンデンサ
この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサについて説明する。この実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサは、3端子型積層セラミックコンデンサである。
【0013】
図1は、この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサ(3端子型積層セラミックコンデンサ)の一例を示す外観斜視図である。
図2は、この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサ(3端子型積層セラミックコンデンサ)の一例を示す上面図である。
図3は、
図2の線III-IIIにおける断面図である。
図4は、
図2の線IV-IVにおける断面図である。
図5は、
図2の線V-Vにおける断面図である。
図6は、
図2の線VI-VIにおける断面図である。
図7は、
図5に示す側面側外部電極層の変形例を示した断面図である。
図8は、
図3の線VIII-VIIIにおける断面図である。
図9は、
図3の線IX-IXにおける断面図である。
図10は、この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサを構成する積層体の分解斜視図である。
【0014】
図1に示すように、積層セラミックコンデンサ10は、たとえば、直方体状の積層体12と、外部電極30とを含む。
【0015】
(A)積層体
積層体12は、積層された複数の誘電体層14と、誘電体層14上に積層された複数の内部電極層16とを有する。誘電体層14と内部電極層16は、高さ方向xに積層される。
また、積層体12は、複数の内部電極層16として、複数の第1内部電極層16aおよび複数の第2内部電極層16bを有する。
【0016】
積層体12は、高さ方向xに相対する第1の主面12aおよび第2の主面12bと、高さ方向xに直交する幅方向yに相対する第1の側面12cおよび第2の側面12dと、高さ方向xおよび幅方向yに直交する長さ方向zに相対する第1の端面12eおよび第2の端面12fとを有する。この積層体12には、角部および稜線部に丸みがつけられている。なお、角部とは、積層体の隣接する3面が交わる部分のことであり、稜線部とは、積層体の隣接する2面が交わる部分のことである。また、第1の主面12aおよび第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12d、ならびに第1の端面12eおよび第2の端面12fの一部または全部に凹凸などが形成されていてもよい。
【0017】
積層体12の寸法は、特に限定されない。
【0018】
積層体12は、内層部18と、高さ方向xにおいて内層部18を挟みこむように配置された第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bと、を有する。
【0019】
内層部18は、複数の誘電体層14と複数の内部電極層16とを含む。内層部18は、高さ方向xにおいて、最も第1の主面12a側に位置する内部電極層16から最も第2の主面12b側に位置する内部電極層16までを含む。内層部18では、複数の内部電極層16が誘電体層14を介して対向して配置されている。内層部18は、静電容量を発生させ、実質的にコンデンサとして機能する部分である。
【0020】
第1の主面側外層部20aは、第1の主面12a側に位置する。第1の主面側外層部20aは、第1の主面12aと第1の主面12aに最も近い内部電極層16との間に位置する複数の誘電体層14の集合体である。
第2の主面側外層部20bは、第2の主面12b側に位置する。第2の主面側外層部20bは、第2の主面12bと第2の主面12bに最も近い内部電極層16との間に位置する複数の誘電体層14の集合体である。
第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bで用いられる誘電体層14は、内層部18で用いられる誘電体層14と同じものであってもよい。
【0021】
第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bの高さ方向xの寸法は、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0022】
なお、積層体12は、第1の側面12c側に位置し、第1の側面12cと第1の側面12c側の内層部18の最表面との間に位置する複数の誘電体層14から形成される第1の側面側外層部22aを有する。
同様に、積層体12は、第2の側面12d側に位置し、第2の側面12dと第2の側面12d側の内層部18の最表面との間に位置する複数の誘電体層14から形成される第2の側面側外層部22bを有する。
【0023】
第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの幅方向yの寸法は、5μm以上30μm以下であることが好ましい。これにより、積層セラミックコンデンサ10の有効面積を大きくすることができるため、取得容量を向上させる効果を有する。
【0024】
第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの幅方向yの寸法は、高さ方向xに沿って、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの寸法を複数箇所で測定し、複数箇所における測定値に基づいて算出された平均値を意味する。
【0025】
ここで、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの幅方向yの寸法の測定方法は次の通りである。
すなわち、まず、積層セラミックコンデンサ10の幅方向yと高さ方向xを含むWT断面を露出させる。次に、WT断面の第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bの幅方向yの端部と、幅方向yの両外側に位置する2つ側面側外層部のうちのいずれか一方の第1の側面側外層部22aまたは第2の側面側外層部22bとが同一視野に収まるように光学顕微鏡により撮像する。撮像箇所は、高さ方向xにおいて、上部、中央部、および下部の3箇所である。そして、上部、中央部、および下部において、第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bの幅方向yの端部から、第1の側面12cまたは第2の側面12dに向かって幅方向yに平行な複数の線分をそれぞれ引き、それぞれの線分の長さを測定する。このように測定した線分の長さについて、上部、中央部、および下部それぞれの平均値を算出する。そして、それぞれの平均値をさらに平均化することにより、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの幅方向yの寸法を得る。
【0026】
第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bには、第2の内部電極層16bに接続される接続導体17が配置され、第2の内部電極層16bは接続導体17を介して第3の外部電極30cおよび第4の外部電極30dに接続される。接続導体17の詳細は、後述される。
【0027】
なお、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bは、例えば、焼成後に内層部18、主面側外層部20a,20bおよび端面側外層部24a,24bとなる積層体チップを作製した後、積層体チップの両側面にセラミックグリーンシートを貼り付けて焼成することにより形成することができる。なお、両側面にセラミックグリーンシートとなるセラミックスラリーを塗布してもよい。
【0028】
また、積層体12は、第1の端面側12e側に位置し、第1の端面12eと第1の端面12e側の内層部18の最表面との間に位置する複数の誘電体層14から形成される第1の端面側外層部24aを有する。
同様に、積層体12は、第2の端面12f側に位置し、第2の端面12fと第2の端面12f側の内層部18の最表面との間に位置する複数の誘電体層14から形成される第2の端面側外層部24bを有する。
【0029】
第1の端面側外層部24aおよび第2の端面側外層部24bの長さ方向zの寸法は、10μm以上70μm以下であることが好ましい。これにより外部からの水分侵入を抑制し、絶縁性を担保することができる。また、所定の静電容量を満たすために、有効面積を確保することができる。
【0030】
内層部18に位置する誘電体層14の組成と、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの組成は異なり、内層部18に位置する誘電体層14の組成と、第1の端面側外層部24aおよび第2の端面側外層部24bの組成は同じである。これにより、側面側外層部の組成を変更し、より緻密にすることができるため、外部からの水分侵入を抑制し、より高品質なチップを作成することができる。
【0031】
具体的には、内層部18に位置する誘電体層14の組成は、BaTiO3が主成分となる誘電体セラミックを用いる。また、これらの主成分にMn化合物、Ni化合物などの副成分を添加したものを用いてもよい。
【0032】
第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの組成は、BaTiO3が主成分となる誘電体セラミックを用いる。また、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bには、上記の主成分に加えて、Mg化合物の副成分が添加されている。ここで、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bにMg化合物の副成分が添加されることにより、内層部18に位置する誘電体層14の組成と、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの組成は異なることになる。なお、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bには、内層部18と同様にMn化合物、Ni化合物などの副成分がさらに添加されていてもよい。
【0033】
第1の端面側外層部24aおよび第2の端面側外層部24bの組成は、BaTiO3が主成分となる誘電体セラミックを用いる。また、これらの主成分にMn化合物、Ni化合物などの副成分を添加したものを用いてもよい。
【0034】
ここで、内層部18に位置する誘電体層14の組成と、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの組成の測定方法は、次の通りである。
すなわち、積層セラミックコンデンサ10を、例えば、破断や研磨によって断面を形成することで内部を観察できる状態とする。そして、その断面部を波長分散型X線分析装置(WDX)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、組成分析を行うことで、内層部18、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの組成を分析することができる。また、第1の端面側外層部24a、第2の端面側外層部24bにおいても同様な方法で分析することができる。
【0035】
焼成後の誘電体層14の厚みは、0.3μm以上4.0μm以下であることが好ましい。
積層される誘電体層14の枚数は、20枚以上1000枚以下であることが好ましい。なお、この誘電体層14の枚数は、内層部18の誘電体層14の枚数と、第1の主面側外層部20aおよび第2の主面側外層部20bの誘電体層14の枚数との総数である。
【0036】
なお、
図7に示すように、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bは、幅方向yに複数設けられていてもよい。具体的には、第1の側面側外層部22aは、外側第1の側面側外層部22a
1および内側第1の側面側外層部22a
2を備え、第2の側面側外層部22bは、外側第2の側面側外層部22b
1および内側第2の側面側外層部22b
2を備えていてもよい。
【0037】
外側第1の側面側外層部22a1は、積層体12の第1の側面12c側に位置し、外側第2の側面側外層部22b1は、積層体12の第2の側面12d側に位置する。
内側第1の側面側外層部22a2は、内層部18側、すなわち、外側第1の側面側外層部22a1よりも幅方向yの内側に位置し、内側第2の側面側外層部22b2は、内層部18側、すなわち、外側第2の側面側外層部22b1よりも幅方向yの内側に位置する。
【0038】
なお、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bが、複数設けられていることは、外側第1の側面側外層部22a1と内側第1の側面側外層部22a2との焼結性の違い、および外側第2の側面側外層部22b1と内側第2の側面側外層部22b2との焼結性の違いにより、光学顕微鏡を用いて観察することで容易に境界を確認することができる。すなわち、外側第1の側面側外層部22a1および内側第1の側面側外層部22a2との間、および外側第2の側面側外層部22b1および内側第2の側面側外層部22b2との間には、境界が存在する。
【0039】
この変形例において、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bは、例えば、BaTiO3などの主成分からなるペロブスカイト構造を有する誘電体セラミック材料からなる誘電体で構成されている。これらの主成分に、Siが添加剤として含まれている。
【0040】
外側第1の側面側外層部22a1および外側第2の側面側外層部22b1は、内側第1の側面側外層部22a2および内側第2の側面側外層部22b2と比べて、Siの含有量が多いことが好ましい。すなわち、外側第1の側面側外層部22a1および外側第2の側面側外層部22b1において、Tiに対するSiのモル比は、内側第1の側面側外層部22a2および内側第2の側面側外層部22b2のTiに対するSiのモル比よりも高い。例えば、外側第1の側面側外層部22a1および外側第2の側面側外層部22b1におけるTiに対するSiのモル比は3.5以上6.0以下であり、内側第1の側面側外層部22a2および内側第2の側面側外層部22b2におけるTiに対するSiのモル比は0.02以上3.5以下である。なお、各モル比は、WDX分析もしくはTEMにより測定できる。
【0041】
Siは焼結助剤として働くため、積層セラミックコンデンサ10の製造時の焼成により得られる外側第1の側面側外層部22a1および外側第2の側面側外層部22b1は、内側第1の側面側外層部22a2および内側第2の側面側外層部22b2よりも緻密な構造となる。これにより、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの強度を向上させることができる。その結果、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bに亀裂や欠けが生じ難くなり、内部への水分の侵入を抑制することができる。
【0042】
(B)内部電極層
積層体12は、複数の内部電極層16として、複数の第1内部電極層16aおよび複数の第2内部電極層16bを有する。
すなわち、複数の内部電極層16は、複数の誘電体層14上に配置され、第1の端面12eおよび第2の端面12fに引き出される第1の内部電極層16aと、複数の誘電体層14上に配置され、第1の主面12aおよび第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12d、ならびに第1の端面12eおよび第2の端面12fのいずれにも引き出されていない第2の内部電極層16bと、を有している。
【0043】
第1の内部電極層16aは、
図8に示すように、略矩形に形成され、長さ方向zの中央部において、幅方向yの両端辺に切り欠き部26を有している。すなわち、第1の内部電極層16aは、誘電体層14の幅方向yの寸法に対して、切り欠き部26の分だけ幅方向yの寸法の小さい大きさを有している。
第1の内部電極層16aは、長さ方向zにおいて、積層体12の第1の端面12eおよび第2の端面12fにまで延伸している。第1の内部電極層16aは、幅方向yにおいて、切り欠き部26を除いて第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bと接する位置まで延伸している。
また、切り欠き部26に対向するように、第1の側面側外層部22aにおいて、後述される第1の接続導体17aが配置される。
【0044】
第2の内部電極層16bは、外部電極30が配置される第1の端面12eおよび第2の端面12fとは接触しない形状を有する。すなわち、
図9に示すように、第2の内部電極層16bは、幅方向yにおいて、第1の側面側外層部22aと第2の側面側外層部22bと接する位置まで延伸している。また、第2の内部電極層16bは、長さ方向zにおいて、その一方端部は積層体12の第1の端面12eにまでは延伸せず、その他方端部は積層体12の第2の端面12fにまでは延伸していない。したがって、誘電体層14の大きさを基準とすると、第2の内部電極層16bの長さ方向zにおける一方端部は、長さ方向zにおいて、第1の端面12eから所定の距離だけ内側に位置し、第2の内部電極層16bの長さ方向zにおける他方端部は、長さ方向zにおいて、第2の端面12fから所定の距離だけ内側に位置している。
第2の内部電極層16bは、後述される第2の接続導体17bを介して、積層体12の第1の側面12cおよび第2の側面12dに設けられた第3の外部電極30cおよび第4の外部電極30dに接続される。言い換えると、第2の内部電極層16bは、幅方向yに突出して第3の外部電極30cおよび第4の外部電極30dと接続するための引き出し部を有していない。
第2の内部電極層16bの幅方向yにおける最大寸法は、第1の内部電極層16aの幅方向yにおける最大寸法と略同一である。
【0045】
第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bは、例えばNiを含む。なお、第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bは、Ni以外に、例えば、Cu、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Auなどの金属を含んでいてもよい。
第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bは、共材として、誘電体層14に含まれる誘電体セラミックと同じ誘電体材料を含んでいてもよい。
【0046】
第1の内部電極層16aと第2の内部電極層16bとを含む内部電極層16の積層枚数は、例えば、20枚以上1000枚以下である。
第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bの厚みは、例えば、0.1μm以上0.8μm以下であることが好ましい。
【0047】
第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bは、SiおよびTiを含んでいる。幅方向yにおける寸法が均一である第2の内部電極層16bに含まれるTiに対するSiのモル比は、第2の内部電極層16bの幅方向yにおける中央部と比べて、幅方向yにおける端部の方が大きい。すなわち、第2の内部電極層16bの幅方向yにおける端部には、Siが偏析している。同様に、第1の内部電極層16aの幅方向yにおける端部にも、Siが偏析している。
第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bに含まれるTiとSiのそれぞれの量は、例えば、積層セラミックコンデンサ10を研磨して、第2の内部電極層16bを露出させた後、波長分散型X線分析装置(WDX)を用いて求めることができる。
【0048】
(C)接続導体
接続導体17は、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの内部に配置されている。
接続導体17は、第1の内部電極層16aと同じ高さ位置の層に配置される第1の接続導体17aと、第2の内部電極層16bと同じ高さ位置の層に配置される第2の接続導体17bとを含む。
【0049】
第1の接続導体17aは、第1の内部電極層16aの切り欠き部26とは所定の間隔をあけて対向する位置に配置され、第1の内部電極層16aとは電気的に接続されない。第1の接続導体17aは、積層体12の第1の側面12cおよび第2の側面12dから露出され、その露出部分は、第3の外部電極30cおよび第4の外部電極30dにより覆われている。また、第1の接続導体17aは、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bとなる部分の誘電体層14上に配置されている。
【0050】
第2の接続導体17bは、第2の内部電極層16bと第3の外部電極30cおよび第2の内部電極層16bと第4の外部電極30dとを電気的に接続するように配置されている。また、第2の接続導体17bは、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bとなる部分の誘電体層14上に配置されている。
これにより、幅方向yの側面側外層部の形成と同時に内部電極層16と外部電極30に至るパスを形成することができるため、複数端子を有する形状の部品においても、幅方向yの側面側外層部を均一に形成かつ薄くすることができ、有効面積が増え、取得容量を向上させることができる。
【0051】
接続導体17は、例えば、Ni、Pd、Ag、Cu、Sn、Ag-Pd合金等を用いることができる。
接続導体17は、第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bを構成する金属と同種の金属で形成されることが好ましい。これにより、焼成時に同時に焼結して、特に、第2の内部電極層16bと接続導体17とのつながりを維持することができるため、所望の特性を得ることができる。
【0052】
接続導体17の長さ方向zの長さは、第2の内部電極層16bの長さ方向zと同じ長さで形成されることが好ましいが、異なる長さで配置されていてもよい。
接続導体17の高さ方向xの厚みは、第2の内部電極層16bの高さ方向xの厚みと同じ厚みであることが好ましいが、異なる厚みで配置されていてもよい。
【0053】
(D)外部電極
積層体12の第1の端面12e側および第2の端面12f側、ならびに第1の側面12c側および第2の側面12d側には、外部電極30が配置される。外部電極30は、第1の外部電極30a、第2の外部電極30b、第3の外部電極30cおよび第4の外部電極30dを有する。
【0054】
積層体12の第1の端面12eには、第1の外部電極30aが配置される。第1の外部電極30aは、積層体12の第1の端面12eから延伸して第1の主面12a、第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12dのそれぞれの一部を覆うように配置される。また、第1の外部電極30aは、積層体12の第1の端面12eにおいて露出している第1の内部電極層16aに電気的に接続されている。なお、第1の外部電極30aは、積層体12の第1の端面12e上のみに配置されてもよい。
【0055】
積層体12の第2の端面12fには、第2の外部電極30bが配置される。第2の外部電極30bは、積層体12の第2の端面12fから延伸して第1の主面12a、第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12dのそれぞれの一部を覆うように配置される。また、第2の外部電極30bは、積層体12の第2の端面12fにおいて露出している第1の内部電極層16aに電気的に接続されている。なお、第2の外部電極30bは、積層体12の第2の端面12f上のみに配置されてもよい。
【0056】
積層体12の第1の側面12cには、第3の外部電極30cが配置される。第3の外部電極30cは、第1の側面12cから延伸して第1の主面12aおよび第2の主面12bの一部を覆うように配置される。第3の外部電極30cは、積層体12の第1の側面12cにおいて露出している第2の内部電極層16bに接続される第2の接続導体17bを介して電気的に接続されている。なお、第3の外部電極30cは、積層体12の第1の側面12c上のみに配置されてもよい。
【0057】
積層体12の第2の側面12dには、第4の外部電極30dが配置される。第4の外部電極30dは、第2の側面12dから延伸して第1の主面12aおよび第2の主面12bの一部を覆うように配置される。第4の外部電極30dは、積層体12の第2の側面12dにおいて露出している第2の内部電極層16bに接続される第2の接続導体17bを介して電気的に接続されている。なお、第4の外部電極30dは、積層体12の第2の側面12d上のみに配置されてもよい。
【0058】
外部電極30は、積層体12の表面に配置される下地電極層32と、下地電極層32を覆うように配置されためっき層34とを含むことが好ましい。
【0059】
下地電極層32は、第1の下地電極層32a、第2の下地電極層32b、第3の下地電極層32cおよび第4の下地電極層32dを有する。
【0060】
第1の下地電極層32aは、積層体12の第1の端面12eの表面に配置され、第1の端面12eから延伸して第1の主面12a、第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12dのそれぞれの一部を覆うように形成される。
第2の下地電極層32bは、積層体12の第2の端面12fの表面に配置され、第2の端面12fから延伸して第1の主面12a、第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12dのそれぞれの一部を覆うように形成される。
なお、第1の下地電極層32aは、積層体12の第1の端面12eの表面のみに配置されてもよいし、第2の下地電極層32bは、積層体12の第2の端面12fの表面にのみ配置されてもよい。
【0061】
第3の下地電極層32cは、積層体12の第1の側面12cの表面に配置され、第1の側面12cから延伸して第1の主面12aおよび第2の主面12bのそれぞれの一部を覆うように形成される。
第4の下地電極層32dは、積層体12の第2の側面12dの表面に配置され、第2の側面12dから延伸して第1の主面12aおよび第2の主面12bのそれぞれの一部を覆うように形成される。
なお、第3の下地電極層32cは、積層体12の第1の側面12cの表面のみに配置されてもよいし、第4の下地電極層32dは、積層体12の第2の側面12dの表面のみに配置されてもよい。
【0062】
下地電極層32は、焼付け層、導電性樹脂層、薄膜層等から選ばれる少なくとも1つを含む。
以下、下地電極層32を上記の焼付け層、導電性樹脂層、薄膜層とした場合の各構成について説明する。
【0063】
(焼付け層の場合)
焼付け層は、ガラス成分と金属成分とを含む。焼付け層のガラス成分は、B、Si、Ba、Mg、Al、Li等から選ばれる少なくとも1つを含む。焼付け層の金属成分としては、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含む。焼付け層は、複数層であってもよい。焼付け層は、ガラス成分および金属成分を含む導電性ペーストを積層体12に塗布して焼付けたものである。焼付け層は、内部電極層16および誘電体層14を有する積層チップと積層チップに塗布した導電性ペーストとを同時焼成したものでもよく、内部電極層16および誘電体層14を有する積層チップを焼成して積層体12を得た後に、積層体12に導電性ペーストを塗布して焼付けたものでもよい。なお、焼付け層を内部電極層16および誘電体層14を有する積層チップと積層チップに塗布した導電性ペーストとを同時に焼成する場合には、焼付け層は、ガラス成分の代わりに誘電体材料を添加したものを焼き付けて焼付け層を形成することが好ましい。
【0064】
第1の端面12eに位置する第1の下地電極層32aの高さ方向x中央部における第1の端面12eおよび第2の端面12fを結ぶ方向の厚みは、3μm以上70μm以下程度であることが好ましい。
また、第2の端面12fに位置する第2の下地電極層32bの高さ方向x中央部における第1の端面12eおよび第2の端面12fを結ぶ方向の厚みは、3μm以上70μm以下程度であることが好ましい。
【0065】
第1の側面12cに位置する第3の下地電極層32cの高さ方向x中央部における第1の側面12cおよび第2の側面12dを結ぶ方向の厚みは、3μm以上70μm以下程度であることが好ましい。
また、第2の側面12dに位置する第4の下地電極層32dの高さ方向x中央部における第1の側面12cおよび第2の側面12dを結ぶ方向の厚みは、3μm以上70μm以下程度であることが好ましい。
【0066】
第1の端面12eから延伸して、第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部、ならびに第1の側面12cの一部および第2の側面12dの一部上に下地電極層32を設ける場合には、第1の主面12aおよび第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12d上に位置する第1の下地電極層32aである長さ方向zの中央部における第1の主面12aおよび第2の主面12bを結ぶ高さ方向xの厚みは、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
また、第2の端面12fから延伸して、第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部、ならびに第1の側面12cの一部および第2の側面12dの一部上に下地電極層32を設ける場合には、第1の主面12aおよび第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12d上に位置する第2の下地電極層32bである長さ方向zの中央部における第1の主面12aおよび第2の主面12bを結ぶ高さ方向xの厚みは、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
【0067】
第1の側面12cから延伸して、第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部上に下地電極層32を設ける場合には、第1の主面12aおよび第2の主面12b上に位置する第3の下地電極層32cである幅方向yの中央部における第1の主面12aおよび第2の主面12bを結ぶ高さ方向xの厚みは、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
また、第2の側面12dから延伸して、第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部上に下地電極層32を設ける場合には、第1の主面12aおよび第2の主面12b上に位置する第4の下地電極層32dである幅方向yの中央部における第1の主面12aおよび第2の主面12bを結ぶ高さ方向xの厚みは、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
【0068】
(導電性樹脂層の場合)
導電性樹脂層は、複数層であってもよい。
導電性樹脂層は、焼付け層上に焼付け層を覆うように配置されるか、積層体12上に直接配置されてもよい。
導電性樹脂層は、熱硬化性樹脂および金属を含む。
導電性樹脂層は、下地電極層32上を完全に覆っていてもよいし、下地電極層32の一部を覆っていてもよい。
導電性樹脂層は、熱硬化性樹脂を含むため、例えばめっき膜や導電性ペーストの焼成物からなる導電層よりも柔軟性に富んでいる。このため、積層セラミックコンデンサ10に物理的な衝撃や熱サイクルに起因する衝撃が加わった場合であっても、導電性樹脂層が緩衝層として機能し、積層セラミックコンデンサ10へのクラックを防止することができる。
【0069】
導電性樹脂層に含まれる金属としては、Ag、Cu、Ni、Sn、Biまたは、それらを含む合金を使用することができる。
また、金属粉の表面にAgコーティングされた金属粉を使用することもできる。金属粉の表面にAgコーティングされたものを使用する際には金属粉としてCu、Ni、Sn、Bi又はそれらの合金粉を用いることが好ましい。導電性金属にAgの導電性金属粉を用いる理由としては、Agは金属の中でもっとも比抵抗が低いため電極材料に適しており、Agは貴金属であるため酸化せず耐候性が高いためである。また、上記のAgの特性は保ちつつ、母材の金属を安価なものにすることが可能になるためである。
【0070】
さらに、導電性樹脂層に含まれる金属としては、Cu、Niに酸化防止処理を施したものを使用することもできる。
なお、導電性樹脂層に含まれる金属としては、金属粉の表面にSn、Ni、Cuをコーティングした金属粉を使用することもできる。金属粉の表面にSn、Ni、Cuをコーティングされたものを使用する際には金属粉としてAg、Cu、Ni、Sn、Bi又はそれらの合金粉を用いることが好ましい。
【0071】
導電性樹脂層に含まれる金属は、導電性樹脂全体の体積に対して、35vol%以上75vol%以下で含まれていることが好ましい。
導電性樹脂層に含まれる金属の平均粒径は、特に限定されない。導電性フィラーの平均粒径は、例えば、0.3μm以上10μm以下程度であってもよい。
導電性樹脂層に含まれる金属は、主に導電性樹脂層の通電性を担う。具体的には、導電性フィラー同士が接触することにより、導電性樹脂層内部に通電経路が形成される。
【0072】
導電性樹脂層に含まれる金属は、球形状、扁平状などのものを用いることができるが、球形状金属粉と扁平状金属粉とを混合して用いるのが好ましい。
【0073】
導電性樹脂層の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの公知の種々の熱硬化性樹脂を使用することができる。その中でも、耐熱性、耐湿性、密着性などに優れたエポキシ樹脂は最も適切な樹脂の一つである。
導電性樹脂層に含まれる樹脂は、導電性樹脂全体の体積に対して、25vol%以上65vol%以下で含まれていることが好ましい。
【0074】
また、導電性樹脂層には、熱硬化性樹脂とともに、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、ベース樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂の硬化剤としては、フェノール系、アミン系、酸無水物系、イミダゾール系、活性エステル系、アミドイミド系など公知の種々の化合物を使用することができる。
【0075】
第1の端面12eおよび第2の端面12fに位置する積層体12の高さ方向x中央部に位置する導電性樹脂層の厚みは、例えば、10μm以上150μm以下程度であることが好ましい。
また、第1の側面12cおよび第2の側面12dに位置する積層体12の高さ方向x中央部に位置する導電性樹脂層の厚みは、例えば、10μm以上150μm以下程度であることが好ましい。
【0076】
(薄膜層の場合)
下地電極層32として薄膜層を設ける場合は、薄膜層は、スパッタリング法または蒸着法等の薄膜形成法により形成され、金属粒子が堆積された1μm以下の層である。
【0077】
めっき層34は、第1のめっき層34a、第2のめっき層34b、第3のめっき層34cおよび第4のめっき層34dを含む。
第1のめっき層34a、第2のめっき層34b、第3のめっき層34cおよび第4のめっき層34dとしては、例えば、Cu、Ni、Sn、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0078】
第1のめっき層34aは、第1の下地電極層32aを覆うように配置される。
第2のめっき層34bは、第2の下地電極層32bを覆うように配置される。
第3のめっき層34cは、第3の下地電極層32cを覆うように配置される。
第4のめっき層34dは、第4の下地電極層32dを覆うように配置される。
【0079】
めっき層34は、複数層により形成されていてもよい。この場合、めっき層34は、下地電極層32上に形成されるNiめっきによる下層めっき層と、下層めっき層上に形成されるSnめっきによる上層めっき層の2層構造であることが好ましい。
すなわち、第1のめっき層34aは、第1の下層めっき層と、第1の下層めっき層の表面に位置する第1の上層めっき層とを有する。
第2のめっき層34bは、第2の下層めっき層と、第2の下層めっき層の表面に位置する第2の上層めっき層とを有する。
第3のめっき層34cは、第3の下層めっき層と、第3の下層めっき層の表面に位置する第2の上層めっき層とを有する。
第4のめっき層34dは、第4の下層めっき層と、第4の下層めっき層の表面に位置する第2の上層めっき層とを有する。
【0080】
Niめっきによる下層めっき層は、下地電極層32が積層セラミックコンデンサ10を実装基板等に実装する際のはんだによって侵食されることを防止するために用いられ、Snめっきによる上層めっき層は、積層セラミックコンデンサ10を実装基板等に実装する際の半田の濡れ性を向上させて、容易に実装することができるようにするために用いられる。
めっき層一層あたりの厚みは、2.0μm以上、15.0μm以下であることが好ましい。
【0081】
なお、下地電極層32を設けずにめっき層だけで外部電極30を形成してもよい。
以下、図示はしていないが、下地電極層32を設けずにめっき層を設ける構造について説明する。
【0082】
第1の外部電極30aないし第4の外部電極30dのいずれかまたはそれぞれは、下地電極層32が設けられず、めっき層が積層体12の表面に直接形成されていてもよい。すなわち、積層セラミックコンデンサ10は、第1の内部電極層16aと、第2の内部電極層16bに電気的に接続されるめっき層を含む構造であってもよい。このような場合、前処理として積層体12の表面に触媒を配設した後で、めっき層が形成されてもよい。
【0083】
なお、下地電極層32を設けずに積層体12上に直接めっき層を形成する場合は、下地電極層32の厚みを削減した分を低背化、すなわち、薄型化または積層体12の厚み、すなわち内層部18の厚みに転化できるため、薄型チップの設計自由度を向上させることができる。
【0084】
めっき層は、積層体12の表面に形成される下層めっき電極と、下層めっき電極の表面に形成される上層めっき電極とを含むことが好ましい。下層めっき電極および上層めっき電極はそれぞれ、例えば、Cu、Ni、Sn、Pb、Au、Ag、Pd、Bi又はZnなどから選ばれる少なくとも1種の金属または当該金属を含む合金を含むことが好ましい。
更に、下層めっき電極は、半田バリア性能を有するNiを用いて形成されることが好ましく、上層めっき電極は、半田濡れ性が良好なSnやAuを用いて形成されることが好ましい。
【0085】
また、例えば、第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bがNiを用いて形成される場合、下層めっき電極は、Niと接合性のよいCuを用いて形成されることが好ましい。なお、上層めっき電極は必要に応じて形成されればよく、第1の外部電極30aないし第4の外部電極30dはそれぞれ、下層めっき電極のみで構成されてもよい。めっき層は、上層めっき電極を最外層としてもよいし、上層めっき電極の表面にさらに他のめっき電極を形成してもよい。
【0086】
ここで、下地電極層32を設けずにめっき層だけで外部電極30を形成する場合、下地電極層32を設けずに配置するめっき層の1層あたりの厚みは、1μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0087】
さらに、めっき層は、ガラスを含まないことが好ましい。めっき層の単位体積あたりの金属割合は、99体積%以上であることが好ましい。
【0088】
積層体12、第1の外部電極30aないし第4の外部電極30dを含む積層セラミックコンデンサ10の長さ方向zの寸法をL寸法とし、積層体12、第1の外部電極30aないし第4の外部電極30dを含む積層セラミックコンデンサ10の高さ方向xの寸法をT寸法とし、積層体12、第1の外部電極30aないし第4の外部電極30dを含む積層セラミックコンデンサ10の幅方向yの寸法をW寸法とする。
積層セラミックコンデンサ10の寸法は、特に限定されないが、長さ方向zのL寸法が1.0mm以上3.2mm以下、幅方向yのW寸法が0.5mm以上2.5mm以下、高さ方向xのT寸法が0.3mm以上2.5mm以下である。なお、積層セラミックコンデンサ10の寸法は、マイクロスコープにより測定することができる。
【0089】
図1に示す積層セラミックコンデンサ10は、積層体12の第1の端面12e上に第1の外部電極層30aが配置され、そして第2の端面12f上に第2の外部電極30bが配置されるとともに、第1の側面12c上に第3の外部電極30cが配置され、第2の側面12d上に第4の外部電極30dが配置されているが、積層体12において、内層部18の幅方向yに所望の大きさで内部電極層16を配置させることができるので、このような積層セラミックコンデンサ10において、内部電極層16が高さ方向xにおいて重なる領域である有効領域を拡大することができ、その結果、有効体積の向上による大容量化を図ることができる。
【0090】
2.積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本発明にかかる積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。
【0091】
(A)内層用短冊状ブロックの製造工程
まず、誘電体層用の誘電体シートおよび内部電極層用の導電性ペーストが準備される。誘電体シートおよび内部電極層用の導電性ペーストは、バインダおよび溶剤を含む。バインダおよび溶剤は、公知のものであってもよい。
【0092】
誘電体層用の誘電体シートとして、以下に説明するような組成によるシートが準備される。
【0093】
内層部18に位置する誘電体層14の組成は、BaTiO3が主成分となる誘電体セラミックを用いる。また、これらの主成分にMn化合物、Ni化合物などの副成分を添加したものを用いてもよい。
【0094】
なお、後述される第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの組成は、BaTiO3が主成分となる誘電体セラミックを用いる。また、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bには、上記の主成分に加えて、Mg化合物の副成分が添加されている。ここで、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bにMg化合物の副成分が添加されることにより、内層部18に位置する誘電体層14の組成と、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの組成は異なることになる。なお、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部には、内層部18と同様にMn化合物、Ni化合物などの副成分がさらに添加されていてもよい。
【0095】
第1の端面側外層部24aおよび第2の端面側外層部24bの組成は、BaTiO3が主成分となる誘電体セラミックを用いる。また、これらの主成分にMn化合物、Ni化合物などの副成分を添加したものを用いてもよい。
【0096】
誘電体層用の誘電体シートとして、上述したような組成によるシートを用いることにより、内層部18に位置する誘電体層14の組成と、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bの組成は異なり、内層部18に位置する誘電体層14の組成と、第1の端面側外層部24aおよび第2の端面側外層部24bの組成は同じである構造を得ることができる。
【0097】
続いて、
図11および
図12に示すように、誘電体層用の誘電体シート40上に、内部電極層用の導電性ペーストが、たとえば、スクリーン印刷やグラビア印刷などにより所定のパターンで印刷される。これにより、
図11に示すような第1の内部電極層のパターン42aが形成された誘電体シート44aが準備され、
図12に示すような第2の内部電極層のパターン42bが形成された誘電体シート44bが準備される。
【0098】
次に、
図13に示すように、内部電極層のパターンが印刷されていない誘電体層用の誘電体シート40が所定枚数積層されることにより、第2の主面側の第2の主面側外層部20bとなる部分が形成される。その後、第2の主面側外層部20bとなる部分の上に、第1の内部電極層のパターンが形成された誘電体シート44aと第2の内部電極層のパターンが形成された誘電体シート44bとを交互に積層することにより、内層部18となる部分が形成され、さらに、この内層部18となる部分の上に、内部電極層のパターンが印刷されていない誘電体層用の誘電体シート40が所定枚数積層されることにより、第1の主面側の第1の主面側外層部20aとなる部分が形成される。これにより、積層シートが作製される。
【0099】
続いて、積層シートを静水圧プレスなどの手段により積層方向にプレスし内層用の積層ブロック46が作製される。
【0100】
次に、
図13に示すように、内部電極層のパターンの印刷された誘電体シート40を含む内層用の積層ブロック46が、積層体12の内部電極層16となる部分が露出する側面となりうる面に沿うように、ひとつの積層体12の幅方向yの寸法に短冊状に長さ方向zの切断線100に沿ってカットし、内層用短冊状ブロック48を作製する。
【0101】
(B)側面側外層用短冊状ブロックの製造工程
次に、第1の側面側外層部、第2の側面側外層部の作製方法を説明する。
【0102】
まず、
図14(a)に示すように、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部となる部分に対応する側面側外層部用を製造するための誘電体シート50が複数枚準備される。
【0103】
次に、準備された誘電体シート50に、
図14(b)に示すように、接続導体17となる導電性ペーストを、例えば、スクリーン印刷やグラビア印刷などにより帯状になるように所定の接続導体用のパターン52を印刷し、接続導体用のパターンが形成された誘電体シート54が複数枚準備される。
【0104】
その後、内部電極層のパターンが印刷されていない誘電体層用の誘電体シート40が所定枚数積層されることにより、第2の主面12a側の第2の主面側外層部20bとなる部分が形成される。その後、接続導体用のパターンが形成された誘電体シート54が複数枚積層され、第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bとなる部分が形成される。この第1の側面側外層部22aおよび第2の側面側外層部22bとなる部分の上に、内部電極層のパターンが印刷されていない誘電体層用の誘電体シート40が所定枚数積層されることにより、第1の主面12a側の第1の主面側外層部20aとなる部分が形成される。これにより、
図14(c)で示すように、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部用の積層シートが作製される。
【0105】
続いて、
図14(d)で示すように、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部用の積層シートが静水圧プレスなどの手段により積層方向にプレスされることにより、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部用の積層ブロック56が作製される。
【0106】
最後に、準備した第1の側面側外層部および第2の側面側外層部用の積層ブロック56を、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部の幅方向yの厚みとなる寸法となるように等間隔に長さ方向zの切断線102に沿って短冊状にカットし、
図14(e)に示すように、第1の側面側外層部および第2の側面側外層部用の短冊状ブロック58を作製する。この時のカットは、帯状に印刷した接続導体の長尺方向とは直交する方向にカットする。言い換えると、複数の帯状の接続導体に跨る方向にカットされる。
【0107】
(C)積層チップの製造工程
側面側外層用短冊状ブロックの製造工程において作製された第1の側面側外層部および第2の側面側外層部用の短冊状ブロック58の一方側面と、内層用短冊状ブロックの製造工程において作製された内層用短冊状ブロック48の一方の内部電極層露出面と、を貼り合わせる。この時、作製された内層用短冊状ブロック48の一方の内部電極層露出面と作製された第1の側面側外層部および第2の側面側外層部用の短冊状ブロック58の接続導体とが接続されるように位置合わせを行い張り合わされ、その後、圧着される。
【0108】
続いて、側面側外層用短冊状ブロックの製造工程において作製された別の第1の側面側外層部および第2の側面側外層部用の短冊状ブロック58の一方側面と、内層用短冊状ブロックの製造工程において作製された内層用短冊状ブロック48の他方の内部電極層露出面とを貼り合わせる。この時、作製された内層用短冊状ブロック48の一方の内部電極層露出面と作製された第1の側面側外層部および第2の側面側外層部用の短冊状ブロック58の接続導体とが接続されるように位置合わせを行い張り合わされ、その後、圧着される。
【0109】
次に、
図15に示すような、側面側外層部用短冊状ブロック58の貼り付け完了後の集合体60を、積層体の端面となりうる面に沿って所定のピッチで、幅方向zの切断線104に沿ってカットを行うことで、チップ状に個片化し、積層チップ62を得る。
【0110】
作製した積層チップをバレル研磨などにより積層チップ62の角部および稜線部に丸みがつけられてもよい。
【0111】
そして、切り出された積層チップ62が焼成されることにより、
図16に示すような積層体12が作製される。焼成温度は、誘電体層14や内部電極層16の材料にもよるが、900℃以上1400℃以下であることが好ましい。
【0112】
(D)外部電極の形成工程
(下地電極層)
続いて、焼成して得られた積層体12の第1の側面12c上に第3の外部電極30cの第3の下地電極層32cが形成され、積層体12の第2の側面12d上に第4の外部電極30dの第4の下地電極層32dが形成される。
下地電極層32として焼付け層を形成する場合には、ガラス成分と金属成分とを含む導電性ペーストを塗布し、その後、焼付け処理を行い、下地電極層32として焼付け層が形成される。このときの焼付け処理の温度は、700℃以上900℃以下であることが好ましい。
【0113】
ここで、焼付け層の形成方法としては、様々な方法を用いることができる。たとえば、導電性ペーストをスリットから押し出して塗布する工法を用いることができる。この工法の場合、導電性ペーストの押し出し量を多くすることで、第1の側面12c上および第2の側面12d上だけでなく、第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部にまで下地電極層32を形成することができる。
また、ローラー転写法を用いて形成することもできる。ローラー転写法の場合、第1の側面12c上および第2の側面12d上だけでなく、第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部にまで下地電極層32を形成するとき、ローラー転写の際の押し付け圧力を強くすることで第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部にまで下地電極32を形成することが可能となる。
【0114】
次に、焼成して得られた積層体12の第1の端面12e上に第1の外部電極30aの第1の下地電極層32aが形成され、積層体12の第2の端面12f上に第2の外部電極30bの第2の下地電極層32bが形成される。
第3の外部電極30cおよび第4の外部電極30dの各下地電極層32の形成時と同様、下地電極層32として焼付け層を形成する場合には、ガラス成分と金属成分とを含む導電性ペーストを塗布し、その後、焼付け処理を行い、下地電極層32として焼付け層が形成される。このときの焼付け処理の温度は、700℃以上900℃以下であることが好ましい。
【0115】
また、第1の外部電極30aおよび第2の外部電極30bの下地電極層32として焼付け層の形成方法としては、ディップ法を用いて形成することができる。これにより、第1の端面12eおよび第2の端面12fだけでなく、第1の主面12aの一部、第2の主面12bの一部、第1の側面12cの一部および第2の側面12dの一部にまで延びるように形成することができる。
【0116】
なお、焼付け処理に関しては、第3の外部電極30cの第3の下地電極層32c、第4の外部電極30dの第4の下地電極層32d、第1の外部電極30aの第1の下地電極層32aおよび第2の外部電極30bの第2の下地電極層32bを同時に焼付けてもよいし、第3の外部電極30cの第3の下地電極層32cおよび第4の外部電極30dの第4の下地電極層32dと、第1の外部電極30aの第1の下地電極層32aおよび第2の外部電極30bの第2の下地電極層32bとを、それぞれ別々に焼付けてもよい。
【0117】
(導電性樹脂層)
なお、下地電極層32を導電性樹脂層で形成する場合は、以下の方法で導電性樹脂層を形成することができる。なお、導電性樹脂層は、焼付け層の表面に形成されてもよく、焼付け層を形成せずに導電性樹脂層を単体で積層体12上に直接形成してもよい。
【0118】
導電性樹脂層の形成方法としては、熱硬化性樹脂および金属成分を含む導電性樹脂ペーストを焼付け層上もしくは積層体12上に塗布し、250℃以上550℃以下の温度で熱処理を行い、樹脂を熱硬化させ、導電性樹脂層を形成する。この時の熱処理時の雰囲気は、N2雰囲気であることが好ましい。また、樹脂の飛散を防ぎ、かつ、各種金属成分の酸化を防ぐため、酸素濃度は100ppm以下に抑えることが好ましい。
【0119】
なお、導電性樹脂ペーストの塗布方法としては、下地電極層32を焼付け層で形成する方法と同様、たとえば、導電性樹脂ペーストをスリットから押し出して塗布する工法やローラー転写法を用いて形成することができる。
【0120】
(薄膜層)
また、下地電極層32を薄膜層で形成する場合は、マスキングなどを行い、外部電極30を形成したいところにスパッタリング法または蒸着法等の薄膜形成法により下地電極層を形成することができる。薄膜層で形成された下地電極層は金属粒子が堆積された1μm以下の層とする。
【0121】
(めっき電極)
なお、下地電極層32を設けずに、内部電極層16および接続導体17が、積層体12から露出する部分にめっき電極を設けてもよい。その場合は、以下の方法で形成することができる。
【0122】
積層体12の第1の端面12eおよび第2の端面12fにめっき処理を施し、内部電極層16の露出部分に下層めっき電極を形成する。同様に、積層体12の第1の側面12cおよび第2の側面12dにめっき処理を施し、接続導体17の露出部分に下層めっき電極を形成する。めっき処理を行うにあたっては、電解めっき、無電解めっきのどちらを採用してもよいが、無電解めっきはめっき析出速度を向上させるために、触媒などによる前処理が必要となり、工程が複雑化するというデメリットがある。したがって、通常は、電解めっきを採用することが好ましい。めっき工法としては、バレルめっきを用いることが好ましい。また、必要に応じて、下層めっき電極の表面に形成される上層めっき電極を同様に形成してもよい。
【0123】
続いて、必要に応じて、下地電極層32の表面、導電性樹脂層の表面もしくは下層めっき電極の表面、上層めっき電極の表面に、めっき層34が形成される。
より詳細には、本実施の形態では焼付け層である下地電極層32上に下層めっき層としてNiめっき層が形成され、上層めっき層としてSnめっき層が形成される。Niめっき層およびSnめっき層は、たとえばバレルめっき法により、順次形成される。めっき処理を行うにあたっては、電解めっき、無電解めっきのどちらを採用してもよい。ただし、無電解めっきはめっき析出速度を向上させるために、触媒などによる前処理が必要となり、工程が複雑化するというデメリットがある。従って、通常は、電解めっきを採用することが好ましい。
【0124】
上述のようにして、本実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサ10が製造される。
【0125】
なお、以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0126】
10 積層セラミックコンデンサ
12 積層体
12a 第1の主面
12b 第2の主面
12c 第1の側面
12d 第2の側面
12e 第1の端面
12f 第2の端面
14 誘電体層
16 内部電極層
16a 第1の内部電極層
16b 第2の内部電極層
17 接続導体
17a 第1の接続導体
17b 第2の接続導体
18 内層部
20a 第1の主面側外層部
20b 第2の主面側外層部
22a 第1の側面側外層部
22b 第2の側面側外層部
24a 第1の端面側外層部
24b 第2の端面側外層部
30 外部電極
30a 第1の外部電極
30b 第2の外部電極
30c 第3の外部電極
30d 第4の外部電極
32 下地電極層
32a 第1の下地電極層
32b 第2の下地電極層
32c 第3の下地電極層
32d 第4の下地電極層
34 めっき層
34a 第1のめっき層
34b 第2のめっき層
34c 第3のめっき層
34d 第4のめっき層
40 誘電体層用の誘電体シート
42a 第1の内部電極層用のパターン
42b 第2の内部電極層用のパターン
44a 第1の内部電極層用のパターンが形成された誘電体シート
44b 第2の内部電極層用のパターンが形成された誘電体シート
46 内層用の積層ブロック
48 内層用短冊状ブロック
50 側面側外層部用の誘電体シート
52 接続導体用のパターン
54 接続導体用のパターンが形成された誘電体シート
56 側面側外層部用の積層ブロック
58 側面側外層部用短冊状ブロック
60 集合体
62 積層チップ
x 高さ方向
y 幅方向
z 長さ方向