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特開2022-163429サーマルプリントヘッド及びその製造方法、並びにサーマルプリンタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163429
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド及びその製造方法、並びにサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/345 20060101AFI20221019BHJP
   B41J 2/335 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
B41J2/345 J
B41J2/335 101H
B41J2/335 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068352
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JC06
2C065JH06
2C065JH08
2C065JH09
2C065JH10
2C065JH12
2C065JH14
2C065KJ04
2C065KJ16
(57)【要約】
【課題】良好な印字性能を確保したサーマルプリントヘッドを提供する。また、当該サーマルプリントヘッドの製造方法を提供する。さらに、当該サーマルプリントヘッドを備えたサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】絶縁体と、絶縁体上に配置されている蓄熱層33と、蓄熱層33上に配置され、かつ、溝部38を有する保護膜34Aと、蓄熱層33上に配置され、かつ、溝部38に埋め込まれている発熱抵抗体40と、発熱抵抗体40に電気的に接続している個別電極31と、発熱抵抗体40に電気的に接続している櫛歯部32Aを有する共通電極32と、発熱抵抗体40及び保護膜34Aを覆う保護膜34Bと、を備え、個別電極31は、共通電極32の櫛歯部32Aと離間し、かつ、櫛歯部32Aと対向している、サーマルプリントヘッド100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体と、
前記絶縁体上に配置されている蓄熱層と、
前記蓄熱層上に配置され、かつ、溝部を有する第1の保護膜と、
前記蓄熱層上に配置され、かつ、前記溝部に埋め込まれている発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体に電気的に接続している個別電極と、
前記発熱抵抗体に電気的に接続している櫛歯部を有する共通電極と、
前記発熱抵抗体及び前記第1の保護膜を覆う第2の保護膜と、を備え、
前記個別電極は、前記共通電極の櫛歯部と離間し、かつ、前記櫛歯部と対向している、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記発熱抵抗体は、前記個別電極上及び前記櫛歯部上に配置されている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記個別電極及び前記共通電極は、前記発熱抵抗体上及び前記第1の保護膜上に配置されている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記発熱抵抗体と前記第2の保護膜との境界面は、前記第1の保護膜と前記第2の保護膜との境界面より前記絶縁体側にある、請求項1~3のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記第2の保護膜の、前記第1の保護膜が位置する側の反対側の主面のうち、前記主面の法線方向から視て前記発熱抵抗体と重畳している部分は平坦面である、請求項1~4のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記発熱抵抗体の、前記第2の保護膜が位置する側の主面が凹状の曲面を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記絶縁体は、基板である、請求項1~6のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記基板は、セラミックからなる、請求項7に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタ。
【請求項10】
絶縁体上に蓄熱層を形成し、
前記蓄熱層上に、櫛歯部を有する共通電極、及び個別電極を形成し、
前記蓄熱層上、前記個別電極上、及び前記櫛歯部上にレジストを形成し、
前記レジストを用いて、溝部を有する第1の保護膜を形成し、
前記溝部に、前記個別電極及び前記共通電極と電気的に接続する発熱抵抗体を形成し、
前記発熱抵抗体及び前記第1の保護膜を覆う第2の保護膜を形成し、
前記個別電極は、前記共通電極の櫛歯部と離間し、かつ、前記櫛歯部と対向している、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項11】
絶縁体上に蓄熱層を形成し、
前記蓄熱層上にレジストを形成し、
前記レジストを用いて、溝部を有する第1の保護膜を形成し、
前記溝部に発熱抵抗体を形成し、
前記発熱抵抗体上及び前記第1の保護膜上に、櫛歯部を有する共通電極、及び個別電極を形成し、
前記発熱抵抗体、前記第1の保護膜、前記共通電極、及び前記個別電極を覆う第2の保護膜を形成し、
前記個別電極は、前記共通電極の櫛歯部と離間し、かつ、前記櫛歯部と対向している、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記第1の保護膜は、前記第1の保護膜となる材料ペーストを焼成することにより形成される、請求項10又は11に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記発熱抵抗体は、抵抗体ペーストを前記第1の保護膜の前記溝部に埋め込み、前記抵抗体ペーストを焼成することにより形成される、請求項10~12のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記発熱抵抗体はスクリーン印刷により形成される、請求項10~13のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記発熱抵抗体はマスクを用いて形成される、請求項10~13のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記マスクはステンシルマスクである、請求項15に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記第1の保護膜は焼成工程を経て形成され、
前記レジストは、前記焼成工程及び有機剥離工程からなる群から選択される1工程以上の工程により除去される、請求項10~16のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記発熱抵抗体の、前記第2の保護膜が位置する側の主面が凹状の曲面を有する、請求項10~17のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、サーマルプリントヘッド及びその製造方法、並びにサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、例えば、ヘッド基板上に主走査方向に並ぶ多数の発熱部を備えている。各発熱部は、ヘッド基板にグレーズ層を介して形成した抵抗体層上に、その一部を露出させるようにして、共通電極と個別電極をそれらの端部を対向させて積層することにより形成されている。共通電極と個別電極間を通電することにより、上記抵抗体層の露出部(発熱部)がジュール熱により発熱する。当該熱を印刷媒体(バーコードシートやレシートを作成するための感熱紙等)に伝えることにより、印刷媒体への印刷がなされる。
【0003】
例えば、物流センター等では、物品の仕分け、内容明細、及び伝票番号をラベルに印刷して、当該ラベルを用いることで、検品作業の簡素化や効率化を図っている。
【0004】
しかしながら、近年、トレーサビリティが重要視され、製造所固有記号や製造年月日、消費期限など、あらゆる情報がラベルやレシートなどの印刷媒体に記載されるようになり、さらに食料品などでは、栄養成分表示の義務化やアレルギー表示の変更など、物流分野における印字情報量及びラベル印刷量が増加傾向にある。
【0005】
増加傾向にある大量の印刷を可能にするためには、サーマルプリントヘッドが高速且つ高精細で印刷媒体に情報を印字する必要がある。高速且つ高精細で印刷する(印字性能を良好にする)ためには発熱部ピッチを狭くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-159866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発熱部はグレーズ層のうち上方に膨出した部分に形成されており、発熱部を覆うように保護膜が配置されている。しかしながら、保護膜によって発熱部の端部を完全に覆うためには、発熱部の端部の被覆性を考慮して保護膜を厚く形成する必要がある。保護膜を介して印刷媒体に発熱部から発生する熱を伝えるため、保護膜が厚すぎると印刷媒体に効率よく熱を伝えられず、印字性能が低下せるおそれがある。本実施形態の一態様は、良好な印字性能を確保したサーマルプリントヘッドを提供する。また、本実施形態の他の一態様は、当該サーマルプリントヘッドの製造方法を提供する。また、本実施形態の他の一態様は、当該サーマルプリントヘッドを備えたサーマルプリンタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態は、溝部を有する第1の保護膜を用いて、個別電極及び共通電極と電気的に接続する発熱抵抗体を溝部に形成し、発熱抵抗体を覆う第2の保護膜を薄く形成することにより、サーマルプリントヘッドの印字性能を良好にすることができる。本実施形態の一態様は以下のとおりである。
【0009】
本実施形態の一態様は、絶縁体と、前記絶縁体上に配置されている蓄熱層と、前記蓄熱層上に配置され、かつ、溝部を有する第1の保護膜と、前記蓄熱層上に配置され、かつ、前記溝部に埋め込まれている発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体に電気的に接続している個別電極と、前記発熱抵抗体に電気的に接続している櫛歯部を有する共通電極と、前記発熱抵抗体及び前記第1の保護膜を覆う第2の保護膜と、を備え、前記個別電極は、前記共通電極の櫛歯部と離間し、かつ、前記櫛歯部と対向している、サーマルプリントヘッドである。
【0010】
また、本実施形態の他の一態様は、上記サーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタである。
【0011】
また、本実施形態の他の一態様は、絶縁体上に蓄熱層を形成し、前記蓄熱層上に、櫛歯部を有する共通電極、及び個別電極を形成し、前記蓄熱層上、前記個別電極上、及び前記櫛歯部上にレジストを形成し、前記レジストを用いて、溝部を有する第1の保護膜を形成し、前記溝部に、前記個別電極及び前記共通電極と電気的に接続する発熱抵抗体を形成し、前記発熱抵抗体及び前記第1の保護膜を覆う第2の保護膜を形成し、前記個別電極は、前記共通電極の櫛歯部と離間し、かつ、前記櫛歯部と対向している、サーマルプリントヘッドの製造方法である。
【0012】
また、本実施形態の他の一態様は、絶縁体上に蓄熱層を形成し、前記蓄熱層上にレジストを形成し、前記レジストを用いて、溝部を有する第1の保護膜を形成し、前記溝部に発熱抵抗体を形成し、前記発熱抵抗体上及び前記第1の保護膜上に、櫛歯部を有する共通電極、及び個別電極を形成し、前記発熱抵抗体、前記第1の保護膜、前記共通電極、及び前記個別電極を覆う第2の保護膜を形成し、前記個別電極は、前記共通電極の櫛歯部と離間し、かつ、前記櫛歯部と対向している、サーマルプリントヘッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態によれば、良好な印字性能を確保したサーマルプリントヘッドを提供することができる。また、当該サーマルプリントヘッドの製造方法を提供することができる。さらに、当該サーマルプリントヘッドを備えたサーマルプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドを説明する部分斜視図である。
図2図2は、主走査方向Xにおける図1のA-A線に沿う部分断面図である。
図3図3は、副走査方向Yにおける図1のB-B線に沿う部分断面図である。
図4図4は、発熱抵抗体周辺の拡大断面図である。
図5図5は、発熱抵抗体の拡大斜視図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その1)。
図7図7は、主走査方向Xにおける図6のA-A線に沿う部分断面図である。
図8図8は、副走査方向Yにおける図6のB-B線に沿う部分断面図である。
図9図9は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その2)。
図10図10は、主走査方向Xにおける図9のA-A線に沿う部分断面図である。
図11図11は、副走査方向Yにおける図9のB-B線に沿う部分断面図である。
図12図12は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その3)。
図13図13は、主走査方向Xにおける図12のA-A線に沿う部分断面図である。
図14図14は、副走査方向Yにおける図12のB-B線に沿う部分断面図である。
図15図15は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その4)。
図16図16は、主走査方向Xにおける図15のA-A線に沿う部分断面図である。
図17図17は、副走査方向Yにおける図15のB-B線に沿う部分断面図である。
図18図18は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その5)。
図19図19は、主走査方向Xにおける図18のA-A線に沿う部分断面図である。
図20図20は、副走査方向Yにおける図18のB-B線に沿う部分断面図である。
図21図21は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その6)。
図22図22は、主走査方向Xにおける図21のA-A線に沿う部分断面図である。
図23図23は、副走査方向Yにおける図21のB-B線に沿う部分断面図である。
図24図24は、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッドを説明する断面図である。
図25図25は、主走査方向Xにおける図24のA-A線に沿う部分断面図である。
図26図26は、副走査方向Yにおける図24のB-B線に沿う部分断面図である。
図27図27は、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その1)。
図28図28は、主走査方向Xにおける図27のA-A線に沿う部分断面図である。
図29図29は、副走査方向Yにおける図27のB-B線に沿う部分断面図である。
図30図30は、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その2)。
図31図31は、主走査方向Xにおける図30のA-A線に沿う部分断面図である。
図32図32は、副走査方向Yにおける図30のB-B線に沿う部分断面図である。
図33図33は、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その3)。
図34図34は、主走査方向Xにおける図33のA-A線に沿う部分断面図である。
図35図35は、副走査方向Yにおける図33のB-B線に沿う部分断面図である。
図36図36は、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その4)。
図37図37は、主走査方向Xにおける図36のA-A線に沿う部分断面図である。
図38図38は、副走査方向Yにおける図36のB-B線に沿う部分断面図である。
図39図39は、サーマルプリントヘッドを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本実施形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。本実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
具体的な本実施形態の一態様は、以下の通りである。
【0018】
<1> 絶縁体と、前記絶縁体上に配置されている蓄熱層と、前記蓄熱層上に配置され、かつ、溝部を有する第1の保護膜と、前記蓄熱層上に配置され、かつ、前記溝部に埋め込まれている発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体に電気的に接続している個別電極と、前記発熱抵抗体に電気的に接続している櫛歯部を有する共通電極と、前記発熱抵抗体及び前記第1の保護膜を覆う第2の保護膜と、を備え、前記個別電極は、前記共通電極の櫛歯部と離間し、かつ、前記櫛歯部と対向している、サーマルプリントヘッド。
【0019】
<2> 前記発熱抵抗体は、前記個別電極上及び前記櫛歯部上に配置されている、<1>に記載のサーマルプリントヘッド。
【0020】
<3> 前記個別電極及び前記共通電極は、前記発熱抵抗体上及び前記第1の保護膜上に配置されている、<1>に記載のサーマルプリントヘッド。
【0021】
<4> 前記発熱抵抗体と前記第2の保護膜と第1の保護膜と前記第2の保護膜との境界面より前記絶縁体側にある、<1>~<3>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0022】
<5> 前記第2の保護膜の、前記第1の保護膜が位置する側の反対側の主面のうち、前記主面の法線方向から視て前記発熱抵抗体と重畳している部分は平坦面である、<1>~<4>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0023】
<6> 前記発熱抵抗体の、前記第2の保護膜が位置する側の主面が凹状の曲面を有する、<1>~<5>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0024】
<7> 前記絶縁体は、基板である、<1>~<6>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0025】
<8> 前記基板は、セラミックからなる、<7>に記載のサーマルプリントヘッド。
【0026】
<9> <1>~<8>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタ。
【0027】
<10> 絶縁体上に蓄熱層を形成し、前記蓄熱層上に、櫛歯部を有する共通電極、及び個別電極を形成し、前記蓄熱層上、前記個別電極上、及び前記櫛歯部上にレジストを形成し、前記レジストを用いて、溝部を有する第1の保護膜を形成し、前記溝部に、前記個別電極及び前記共通電極と電気的に接続する発熱抵抗体を形成し、前記発熱抵抗体及び前記第1の保護膜を覆う第2の保護膜を形成し、前記個別電極は、前記共通電極の櫛歯部と離間し、かつ、前記櫛歯部と対向している、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【0028】
<11> 絶縁体上に蓄熱層を形成し、前記蓄熱層上にレジストを形成し、前記レジストを用いて、溝部を有する第1の保護膜を形成し、前記溝部に発熱抵抗体を形成し、前記発熱抵抗体上及び前記第1の保護膜上に、櫛歯部を有する共通電極、及び個別電極を形成し、前記発熱抵抗体、前記第1の保護膜、前記共通電極、及び前記個別電極を覆う第2の保護膜を形成し、前記個別電極は、前記共通電極の櫛歯部と離間し、かつ、前記櫛歯部と対向している、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【0029】
<12> 前記第1の保護膜は、前記第1の保護膜となる材料ペーストを焼成することにより形成される、<10>又は<11>に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0030】
<13> 前記発熱抵抗体は、抵抗体ペーストを前記第1の保護膜の前記溝部に埋め込み、前記抵抗体ペーストを焼成することにより形成される、<10>~<12>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0031】
<14> 前記発熱抵抗体はスクリーン印刷により形成される、<10>~<13>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0032】
<15> 前記発熱抵抗体はマスクを用いて形成される、<10>~<13>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0033】
<16> 前記マスクはステンシルマスクである、<15>に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0034】
<17> 前記第1の保護膜は焼成工程を経て形成され、前記レジストは、前記焼成工程及び有機剥離工程からなる群から選択される1工程以上の工程により除去される、<10>~<16>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0035】
<18> 前記発熱抵抗体の、前記第2の保護膜が位置する側の主面が凹状の曲面を有する、<10>~<17>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0036】
<サーマルプリントヘッド>
(第1の実施形態)
本実施形態に係るサーマルプリントヘッドについて図面を用いて説明する。
【0037】
図1は、サーマルプリントヘッドを示す部分斜視図である。図2は、主走査方向Xにおける図1のA-A線に沿う部分断面図である。図3は、副走査方向Yにおける図1のB-B線に沿う部分断面図である。図1図3は、サーマルプリントヘッドの一部分(1個のサーマルプリントヘッドに相当)を示しており、本実施形態では、この1個のサーマルプリントヘッドを個片状のサーマルプリントヘッド100とする。サーマルプリントヘッド100は、絶縁体である基板15と、基板15上の蓄熱層33と、蓄熱層33上の複数の個別電極31と、蓄熱層33上の共通電極32と、蓄熱層33上、複数の個別電極31上、及び共通電極32上の、溝部38を有する保護膜34Aと、蓄熱層33上、個別電極31上、及び共通電極32上に配置され、かつ、溝部38に埋め込まれている複数の発熱抵抗体40と、複数の発熱抵抗体40及び保護膜34Aを覆う保護膜34Bと、を備える。発熱抵抗体40は、個別電極31及び共通電極32と電気的に接続している。個別電極31のそれぞれは、発熱抵抗体40のそれぞれを挟むように共通電極32の櫛歯部32Aと離間し、かつ、櫛歯部32Aと対向している。また、発熱抵抗体40は個別電極31及び共通電極32を流れる電流により発熱する発熱抵抗部41を含む。複数の発熱抵抗部41は、個別電極31及び共通電極32の間において、各発熱抵抗部41が独立して形成されている。図1は、複数の発熱抵抗部41の図示を省略している。複数の発熱抵抗部41は、蓄熱層33上において直線状に配置されている。
【0038】
本実施形態において、複数の発熱抵抗部41が直線状に延びる方向を主走査方向X、主走査方向Xに対して垂直で、かつ、基板15の上面に対して平行な方向を副走査方向Y、基板15の厚さに対応する方向を厚さ方向Zとする。言い換えれば、厚さ方向Zは、主走査方向X及び副走査方向Yのそれぞれに対して垂直な方向である。また、基板15から視て蓄熱層33が位置している方向を上方向、蓄熱層33から視て基板15が位置している方向を下方向とする。
【0039】
基板15は、絶縁体であり、例えば、セラミックからなる。セラミックとしては、例えば、アルミナ等を用いることができる。放熱性の観点から、比較的、熱伝導率が大きいアルミナを基板15に用いることが好ましい。
【0040】
基板15上には、熱を蓄積する機能を有する蓄熱層33(グレーズ層ともいう)が積層されている。蓄熱層33は、後述の発熱抵抗部41から発生する熱を蓄積する。蓄熱層33は、絶縁性材料を用いることができ、例えば、ガラスの主成分である酸化シリコン、窒化シリコンを用いることができる。蓄熱層33の厚さ方向Zにおける寸法は、特に限定されず、例えば、5~100μmであり、好ましくは10~30μmである。
【0041】
蓄熱層33上には、金属ペーストから形成される、個別電極31及び共通電極32が設けられている。個別電極31及び共通電極32は、金属ペーストをスクリーン印刷等によって塗布し、その後焼成し、電極パターンを形成することにより得られる。
【0042】
金属ペーストとしては、例えば、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、及び金等の金属粒子などを含むペーストを用いることができる。金属の特性及びイオン化傾向の観点から、銅、銀、白金、及び金であることが好ましく、金属の特性、イオン化傾向及びコスト低減の観点から、銀であることがより好ましい。また、金属ペーストに含まれる溶剤は、金属粒子を均一に分散させる機能を有し、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、脂環族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、水等の1種または2種以上を混合したものなどが挙げられるがこれに限られない。
【0043】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、炭酸ジメチル等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンベンゼン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサンノン等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等、これらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等や、これらモノエーテル類の酢酸エステル等である。
【0044】
脂肪族系溶剤としては、例えば、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。脂環族系溶剤としては、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレン、テトラリン等が挙げられる。アルコール系溶剤(上述のグリコールエーテル系溶剤を除く)としては、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0045】
金属ペーストは、必要に応じて、分散剤、表面処理剤、耐摩擦向上剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、酸化防止剤、有機顔料、無機顔料、消泡剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、可塑剤、難燃剤、保湿剤、イオン捕捉剤等を含有することができる。
【0046】
各個別電極31は、概ね副走査方向Yに延伸する帯状をしており、それらは、互いに導通していない。そのため、各個別電極31には、サーマルプリントヘッドが組み込まれたプリンタが使用される際に、個別に、互いに異なる電位が付与されうる。各個別電極31の端部には、図示しない個別パッド部が接続されている。
【0047】
共通電極32は、サーマルプリントヘッドが組み込まれたプリンタが使用される際に複数の個別電極31に対して電気的に逆極性となる部位である。共通電極32は、櫛歯部32Aと、櫛歯部32Aを共通につなげる共通部32Bと、を有する。共通部32Bは基板15の上方側の縁に沿って主走査方向Xに形成される。なお、副走査方向Yにおいて、個別電極31から視て共通電極32がある方向を副走査方向Yの上方側とする。各櫛歯部32Aは、副走査方向Yに延伸する帯状をしている。各櫛歯部32Aの先端部は、各個別電極31の先端部に対して副走査方向Yに沿って所定間隔を隔てて対向させられている。このような構成にすることにより、発熱抵抗体40のピッチを狭くすることができるため、高精細な印字が可能となる。
【0048】
保護膜34Aは、溝部38を有する。個別電極31及び共通電極32等は、保護膜34Aで覆われており、個別電極31及び共通電極32等を摩耗、腐食、酸化等から保護する。保護膜34Aは絶縁性の材料を用いることができ、例えば、非晶質ガラスからなる。保護膜34Aはガラスペーストを厚膜印刷した後、焼成することにより形成される。保護膜34Aの厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、1~10μm程度である。
【0049】
発熱抵抗体40は、個別電極31及び共通電極32と電気的に接続しており、個別電極31及び共通電極32からの電流が流れた部分が発熱する。具体的には、外部から駆動IC等に送信される印字信号に従って発熱用電圧が個別に印加される発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)が、選択的に発熱させられる。発熱抵抗部41は、印字信号に従って個別に通電されることにより、選択的に発熱させられる。このように発熱することによって印字ドットが形成される。発熱抵抗体40は、個別電極31及び共通電極32を構成する材料よりも抵抗率が高い材料を用い、例えば、酸化ルテニウムなどを用いることができる。
【0050】
発熱抵抗体40は、保護膜34Aの溝部38に抵抗体ペーストを埋め込み、焼成することによって形成することができる。本実施形態では、発熱抵抗体40の厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、1~10μm程度である。
【0051】
発熱抵抗体40となる抵抗体ペーストは、焼成することにより、収縮する。例えば、溝部38を完全に埋めるように抵抗体ペーストを供給したとしても焼成により、図4に示すように微視的に視ると発熱抵抗体40の保護膜34Bと接している面は、保護膜34Aの保護膜34Bと接している面より基板15側にある。言い換えると、発熱抵抗体40と保護膜34Bとの境界面は、保護膜34Aと保護膜34Bとの境界面より基板15側(下側)にある。なお、保護膜34Aと保護膜34Bとが互いに同じ材料等で境界を判別しにくい場合は、保護膜34Bの主面(保護膜34Bの、保護膜34Aが位置する側の反対側の主面)から保護膜34Bの厚さ分離れた部分を保護膜34Aと保護膜34Bとの境界面とする。発熱抵抗体40と保護膜34Bとの境界面が保護膜34Aと保護膜34Bとの境界面より基板15側にあると、発熱抵抗体40の端部が保護膜34Aと保護膜34Bとの境界面より基板15側にあるため、保護膜34Bにより発熱抵抗体40の端部を完全に覆うことができるため好ましい。
【0052】
また、保護膜34Bの、保護膜34Aが位置する側の反対側の主面のうち、当該主面の法線方向から視て発熱抵抗体40と重畳している部分は平坦面であってもよい。本明細書等において、「平坦面」とは、平均面粗さが0.5μm以下の表面を含む。なお、平均面粗さは、例えば、JIS B 0601:2013やISO 25178に準拠して求めることができる。発熱抵抗体40と重畳している部分が平坦面であると、サーマルプリントヘッドのプラテンローラと接しやすくなるため好ましい。
【0053】
発熱抵抗体40は、図5に示すように、主面(蓄熱層33が位置する側の面と反対側の面)が凹状の曲面40Aを有していてもよい。発熱抵抗体40を形成する工程において、抵抗体ペーストが保護膜34Aの溝部38に埋め込まれて焼成されるため、抵抗体ペーストが保護膜34Aとの表面張力により主面が凹状の曲面40Aを有する場合がある。発熱抵抗体40の主面が凹状の曲面40Aを有していると、被覆よく保護膜34B等を形成することできるため好ましい。
【0054】
発熱抵抗体40及び保護膜34A等は、保護膜34Bで覆われており、保護膜34Bは、発熱抵抗体40及び保護膜34A等を摩耗、腐食、酸化等から保護する。保護膜34Bは絶縁性の材料を用いることができ、例えば、非晶質ガラスからなる。保護膜34Bはガラスペーストを厚膜印刷した後、焼成することにより形成される。保護膜34Bの厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、2~8μm程度である。この範囲の厚さであると、耐圧不良を抑制でき、かつ、良好な印字品質を維持することが可能なサーマルプリントヘッド100を得ることができるため好ましい。保護膜34Bを薄くしても発熱抵抗体40の端部を完全に覆うことができ、サーマルプリントヘッド100の印字性能を良好にすることができる。
【0055】
ここで、本実施形態のサーマルプリントヘッド100の製造方法について説明する。
【0056】
図6図8に示すように、まず、基板15を用意し、基板15上に蓄熱層33を形成する。次に、蓄熱層33上に配線層30を形成する。
【0057】
蓄熱層33は、例えば、ガラスペーストをスクリーン印刷等により塗布し、塗布されたガラスペーストを乾燥させ、その後、焼成処理を行うことにより形成することができる。焼成処理は、例えば、800~1200℃で10分~1時間行う。蓄熱層33の厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、25μmである。
【0058】
配線層30は、後に形成される個別電極31及び共通電極32となる。配線層30は、個別電極31及び共通電極32となる上述の金属ペーストをスクリーン印刷等によって塗布し、その後焼成することで得られる。
【0059】
次に、図9図11に示すように、配線層30をエッチングして個別電極31及び共通電極32を形成する。
【0060】
次に、図12図14に示すように、蓄熱層33上、個別電極31上、及び共通電極32上にレジスト36を形成する。当該レジスト36が存在する領域には、後に発熱抵抗体40が形成される。レジスト36の形状パターンの不良は、後に形成される発熱抵抗体40の形状パターンの不良と関連するため、エッチング条件を適宜調整して精度よくレジスト36を形成することが好ましい。レジスト36を所望の形状にすることにより所望の形状の溝部38を形成でき、溝部38により所望の発熱抵抗体40を得ることができる。このため、レジスト36の形状パターンを精度よく加工することにより、発熱抵抗体40の形状パターンの不良を低減することができる。
【0061】
次に、図15図17に示すように、レジスト36が設けられていない、蓄熱層33上、個別電極31上、及び共通電極32上に保護膜34Aを形成する。保護膜34Aは、例えば、非晶質ガラスからなる。保護膜34Aは、保護膜34Aとなる材料ペースト(例えばガラスペースト)を厚膜印刷した後、焼成することにより形成される。
【0062】
次に、図18図20に示すように、保護膜34Aを形成する際における焼成工程によりレジスト36が除去されて保護膜34Aに溝部38が形成される。レジスト36は、有機剥離工程を施して除去してもよい。有機剥離工程に用いることができる溶剤は、例えば、東京応化工業株式会社製の剥離液10等が挙げられる。
【0063】
このように、レジスト36を用いて保護膜34Aを形成することにより、フッ酸等の取り扱いに十分注意する必要があるエッチャントを用いなくても容易に保護膜34Aに溝部38を形成することができる。
【0064】
次に、図21図23に示すように、溝部38を埋め込むように発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)となる抵抗体ペーストを形成する。溝部38には、スクリーン印刷又はステンシルマスクなどのマスクを用いて抵抗体ペーストが供給される。例えば、ステンシルマスクを用いて抵抗体ペーストを供給することにより、印字の精度が向上するため好ましい。抵抗体ペーストは、例えば、酸化ルテニウムを含む。
【0065】
次に、上述の抵抗体ペーストを焼成することにより、発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)を形成する。
【0066】
発熱抵抗体40を形成する工程において、抵抗体ペーストが保護膜34Aの溝部38に埋め込まれて焼成されるため、抵抗体ペーストが保護膜34Aとの表面張力により発熱抵抗体40の主面が凹状の曲面40Aを有する場合がある。発熱抵抗体40の主面が凹状の曲面40Aを有していると、被覆よく保護膜34B等を形成することできるため好ましい。
【0067】
次に、図1図3に示したように、保護膜34Bを形成する。保護膜34Bは、例えば、非晶質ガラスからなる。保護膜34Bはガラスペーストを厚膜印刷した後、焼成することにより形成される。
【0068】
以上の工程により、本実施形態のサーマルプリントヘッド100を製造することができる。
【0069】
本実施形態によれば、溝部38に埋め込まれるように発熱抵抗体40が形成されるため、保護膜34Bを薄くしても発熱抵抗体40の端部を完全に覆うことができ、サーマルプリントヘッド100の印字性能を良好にすることができる。また、1つの発熱抵抗体を基にウェットエッチング等により複数の発熱抵抗体を形成することなく、保護膜34Aの溝部38に発熱抵抗体40を形成するため、個々の発熱抵抗体のパターン形状の不良を低減することができる。
【0070】
(第2の実施形態)
本実施形態に係るサーマルプリントヘッドについて図面を用いて説明する。
【0071】
図24は、サーマルプリントヘッドを示す部分斜視図である。図25は、主走査方向Xにおける図24のA-A線に沿う部分断面図である。図26は、副走査方向Yにおける図24のB-B線に沿う部分断面図である。図24図26は、サーマルプリントヘッドの一部分(1個のサーマルプリントヘッドに相当)を示しており、本実施形態では、この1個のサーマルプリントヘッドを個片状のサーマルプリントヘッド100Aとする。サーマルプリントヘッド100Aは、絶縁体である基板15と、基板15上の蓄熱層33と、蓄熱層33上の溝部38を有する保護膜34Aと、蓄熱層33上に配置され、かつ、溝部38に埋め込まれている複数の発熱抵抗体40と、発熱抵抗体40上及び保護膜34A上の、共通電極32及び複数の個別電極31と、複数の発熱抵抗体40、保護膜34A、共通電極32、及び複数の個別電極31を覆う保護膜34Bと、を備える。
【0072】
本実施形態に係るサーマルプリントヘッド100Aが第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド100と異なる点は、個別電極31及び共通電極32が、発熱抵抗体40上及び保護膜34A上に配置されている点である。本実施形態において、第1の実施形態と共通する点は第1の実施形態の説明を援用し、以下、異なる点について説明する。
【0073】
発熱抵抗体40上及び保護膜34A上に個別電極31及び共通電極32が配置していると、個別電極31及び共通電極32が発熱抵抗体40の主面(蓄熱層33が位置する側の面と反対側の面)側において発熱するため発生した熱を効率よく印刷媒体を伝えることができるため、サーマルプリントヘッド100Aの印字性能をより良好にすることができる
【0074】
ここで、本実施形態のサーマルプリントヘッド100Aの製造方法について説明する。
【0075】
図27図29に示すように、まず、基板15を用意し、基板15上に蓄熱層33を形成する。次に、蓄熱層33上にレジスト36を形成する。当該レジスト36が存在する領域には、後に発熱抵抗体40が形成される。
【0076】
次に、図30図32に示すように、レジスト36が設けられていない、蓄熱層33上に保護膜34Aを形成する。
【0077】
次に、図33図35に示すように、保護膜34Aを形成する際における焼成工程によりレジスト36が除去されて保護膜34Aに溝部38が形成される。レジスト36は、有機剥離工程を施して除去してもよい。
【0078】
このように、レジスト36を用いて保護膜34Aを形成することにより、フッ酸等の取り扱いに十分注意する必要があるエッチャントを用いなくても容易に保護膜34Aに溝部38を形成することができる。
【0079】
次に、図36図38に示すように、溝部38を埋め込むように発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)となる抵抗体ペーストを形成する。次に、上述の抵抗体ペーストを焼成することにより、発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)を形成する。
【0080】
次に、図24図26に示したように、保護膜34Bを形成する。保護膜34Bは、例えば、非晶質ガラスからなる。保護膜34Bはガラスペーストを厚膜印刷した後、焼成することにより形成される。
【0081】
以上の工程により、本実施形態のサーマルプリントヘッド100Aを製造することができる。
【0082】
本実施形態によれば、溝部38に埋め込まれるように発熱抵抗体40が形成されるため、保護膜34Bを薄くしても発熱抵抗体40の端部を完全に覆うことができ、サーマルプリントヘッド100Aの印字性能を良好にすることができる。また、1つの発熱抵抗体を基にウェットエッチング等により複数の発熱抵抗体を形成することなく、保護膜34Aの溝部38に発熱抵抗体40を形成するため、個々の発熱抵抗体のパターン形状の不良を低減することができる。
【0083】
(その他の実施形態)
上述のように、一実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。
【0084】
<サーマルプリンタ>
サーマルプリントヘッド(例えば、サーマルプリントヘッド100)は、さらに図39に示すように、基板15(基板15上の蓄熱層33等は図示せず)、接続基板5、放熱部材8、駆動IC7と、複数のワイヤ81と、樹脂部82と、コネクタ59と、を備える。基板15及び接続基板5は、放熱部材8上に副走査方向Yに隣接させて搭載されている。基板15には、主走査方向Xに配列される複数の発熱抵抗部41が形成されている。当該発熱抵抗部41は、接続基板5上に搭載された駆動IC7により選択的に発熱するように駆動される。当該発熱抵抗部41は、コネクタ59を介して外部から送信される印字信号にしたがって、プラテンローラ91により発熱抵抗部41に押圧される感熱紙等の印刷媒体92に印字を行う。
【0085】
接続基板5は、例えば、プリント配線基板を用いることができる。接続基板5は、基材層と図示しない配線層とが積層された構造を有する。基材層は、例えば、ガラスエポキシ樹脂などを用いることができる。配線層は、例えば、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、及び金等の金属などを用いることができる。
【0086】
放熱部材8は、基板15からの熱を放散させる機能を有する。放熱部材8には、基板15及び接続基板5が取り付けられている。放熱部材8は、例えば、アルミニウムなどの金属を用いることができる。
【0087】
ワイヤ81は、例えば、金などの導体を用いることができる。ワイヤ81は複数あり、その一部はボンディングにより、駆動IC7と各個別電極とが導通している。また、他のワイヤ81のうちの一部はボンディングにより、接続基板5における配線層を介して、駆動IC7とコネクタ59とが導通している。
【0088】
樹脂部82は、例えば、黒色の樹脂を用いることができる。樹脂部82としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などを使用することができる。樹脂部82は、駆動IC7及び複数のワイヤ81等を覆っており、駆動IC7及び複数のワイヤ81を保護している。コネクタ59は、接続基板5に固定されている。コネクタ59には、サーマルプリントヘッドの外部からサーマルプリントヘッドへ電力を供給し、及び、駆動IC7を制御するための配線が接続される。
【0089】
サーマルプリンタは、上述のサーマルプリントヘッドを備えることができる。サーマルプリンタは、副走査方向Yに沿って搬送される印刷媒体に印刷を施す。通常、印刷媒体は、コネクタ59側から発熱抵抗部41側に向かって搬送される。印刷媒体としては、例えば、バーコードシートやレシートを作成するための感熱紙等が挙げられる。
【0090】
サーマルプリンタは、例えば、サーマルプリントヘッド100と、プラテンローラ91と、主電源回路と、計測用回路と、制御部と、を備える。プラテンローラ91は、サーマルプリントヘッド100に正対している。
【0091】
主電源回路は、サーマルプリントヘッド100における複数の発熱抵抗部41に電力を供給する。計測用回路は、複数の発熱抵抗部41の各々の抵抗値を計測する。計測用回路は、例えば、印刷媒体への印字を行わない時に、複数の発熱抵抗部41の各々の抵抗値を計測する。これにより、発熱抵抗部41の寿命や故障した発熱抵抗部41の有無が確認されうる。制御部は、主電源回路及び計測用回路の駆動状態を制御する。制御部は、複数の発熱抵抗部41の各々の通電状態を制御する。計測用回路は省略される場合がある。
【0092】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッド100外の装置と通信するために用いられる。コネクタ59を介して、サーマルプリントヘッド100は、主電源回路及び計測用回路に電気的に接続している。コネクタ59を介して、サーマルプリントヘッド100は、制御部に電気的に接続している。
【0093】
駆動IC7は、コネクタ59を介して、制御部から信号を受ける。駆動IC7は制御部から受けた当該信号に基づき、複数の発熱抵抗部41の各々の通電状態を制御する。具体的には、駆動IC7は、複数の個別電極を選択的に通電させることにより、複数の発熱抵抗部41のいずれかを任意に発熱させる。
【0094】
また、サーマルプリントヘッドは、上述の構成に限られず、例えば、接続基板5を設けずに駆動IC7を直接基板15に搭載させる構成であってもよいし、フリップチップ実装によりワイヤ81を設けない構成であってもよいし、放熱部材8を設けない構成であってもよい。
【0095】
次に、サーマルプリンタの使用方法について説明する。
【0096】
印刷媒体への印刷時には、コネクタ59に、主電源回路から、電位V1として電位v11が付与される。この場合、複数の発熱抵抗部41が選択的に通電し、発熱する。当該熱を印刷媒体に伝えることにより、印刷媒体への印刷がなされる。上述のとおり、コネクタ59に、主電源回路から、電位V1として電位v11が付与されている場合、複数の発熱抵抗部41の各々への通電経路が確保されている。
【0097】
印刷媒体への印字を行わない時には、各発熱抵抗部41の抵抗値を計測する。当該計測時には、主電源回路からコネクタ59に電位は付与されない。各発熱抵抗部41の抵抗値の計測時には、コネクタ59に、計測用回路から、電位V1として電位v12が付与される。この場合、複数の発熱抵抗部41が順番に(例えば、主走査方向Xの端に位置する発熱抵抗部41から順番に)通電する。発熱抵抗部41に流れる電流の値および電位v12に基づき、計測用回路は、各発熱抵抗部41の抵抗値を計測する。上述のとおり、コネクタ59に、主電源回路から、電位V1として電位v11が付与されている場合、複数の発熱抵抗部41の各々への通電経路が実質的に遮断される。これにより、計測用回路によって、より正確に各発熱抵抗部41の抵抗値を計測でき、発熱抵抗部41の寿命や故障した発熱抵抗部41の有無が確認されうる。
【0098】
上記によれば、良好な印字性能を確保したサーマルプリンタを得ることができる。
【符号の説明】
【0099】
5 接続基板
7 駆動IC
8 放熱部材
15 基板
30 配線層
31 個別電極
32 共通電極
33 蓄熱層
34A、34B 保護膜
36 レジスト
38 溝部
40 発熱抵抗体
40A 曲面
41 発熱抵抗部
59 コネクタ
81 ワイヤ
82 樹脂部
91 プラテンローラ
92 印刷媒体
100、100A サーマルプリントヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図17
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図39