(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016345
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】格子ピース、格子ブーム及び作業機械
(51)【国際特許分類】
B66C 23/64 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B66C23/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021112023
(22)【出願日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】20 2020 104 000.6
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】597120075
【氏名又は名称】リープヘル-ヴェルク エーインゲン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Liebherr-Werk EhingenGmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタングル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーデマン ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】キルシュバウム マルカス
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205CA01
3F205CA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】静的及び経済的な観点の両方において、高さよりも大きな幅を有する格子ブームを最適化する。
【解決手段】複数のポスト14及び複数の斜材16によって互いに接続される4つのコーナーバー12を備える格子ブーム用の格子ピース10に関する。格子ピース10は、2つの長辺及び2つの短辺を有する矩形断面を備える。コーナーバー12の断面は、格子ピース10の短辺の方向よりも格子ピース10の長辺の方向に大きな範囲を有する中空断面として設計される。コーナーバー断面の少なくとも1つの側は、ジョイント、キンク、ベンド又はラウンド部の形態による安定化構造を有する。さらに、少なくとも1つの格子ピース10を備える格子ブーム、及びこのような格子ブームを備える作業機械に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポスト(14)及び複数の斜材(16)によって互いに接続される4つのコーナーバー(12)を備える格子ブーム用の格子ピース(10)であって、
前記格子ピース(10)は、2つの長辺(L)及び2つの短辺(K)を有する矩形断面を備え、
前記コーナーバー(12)の断面は、前記格子ピース(10)の前記短辺(K)の方向よりも前記格子ピース(10)の前記長辺(L)の方向に大きな範囲を有する中空断面であり、前記コーナーバー断面の少なくとも1つの側は、ジョイント、キンク、ベンド又はラウンド部の形態による安定化構造(20)を有する、ことを特徴とする格子ピース(10)。
【請求項2】
前記格子ピース(10)の前記短辺(K)を形成する隣接する前記コーナーバー(12)は、前記格子ピース(10)の前記長辺(L)を形成する隣接する前記コーナーバー(12)よりも多数の前記斜材(16)によって互いに接続されており、前記斜材(16)は、前記長辺及び/又は前記短辺において延びており、好ましくは、各前記コーナーバー(12)に解放可能に固定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の格子ピース(10)。
【請求項3】
前記コーナーバー(12)は、前記格子ピース(10)の前記短辺(K)の方向よりも前記格子ピース(10)の前記長辺(L)の方向において、大きな面積慣性モーメントを有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の格子ピース(10)。
【請求項4】
前記コーナーバー(12)は、矩形状とは異なる断面を有する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の格子ピース(10)。
【請求項5】
前記安定化構造(20)は、実質的に前記コーナーバー(12)の全長に沿って延びており、好ましくは、前記コーナーバー(12)の長手軸を横断する前記中空断面の外側輪郭の方向の変化を形成する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の格子ピース(10)。
【請求項6】
前記コーナーバー断面は、合計で少なくとも5つのキンク、ベンド及び/又はラウンド部を、有する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の格子ピース(10)。
【請求項7】
前記コーナーバー(12)は、金属シートから1つのピースに製造される、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の格子ピース(10)。
【請求項8】
前記コーナーバー(12)は、互いに溶接された少なくとも2つの金属シートから製造される、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の格子ピース(10)。
【請求項9】
前記2つの金属シートは、同じ形状を有し、好ましくは、前記コーナーバー断面が点対称又は軸対称を有するように互いに溶接される、ことを特徴とする請求項8に記載の格子ピース(10)。
【請求項10】
前記2つの金属シートは、異なる形状を有し、好ましくは、前記コーナーバー断面が軸対称を有するように互いに溶接される、ことを特徴とする請求項8に記載の格子ピース(10)。
【請求項11】
少なくとも1つの補強要素(22)が、前記斜材(16)との接続点(18)の領域において、前記コーナーバー断面内に取り付けられている、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の格子ピース(10)。
【請求項12】
前記補強要素(22)は、前記コーナーバー(12)の長手方向に延びており、好ましくは、前記斜材(16)が前記コーナーバー(12)に接続される側において前記コーナーバー(12)の内部にのみ取り付けられている、ことを特徴とする請求項11に記載の格子ピース(10)。
【請求項13】
各前記コーナーバー(12)は、2つの端部にそれぞれマウントを有し、前記マウントには、接続要素(32)、特にフォーク要素が、異なる格子ピース(10)の相補的な、接続要素(32)、特にカウンターフォーク要素に対する接続のために、取り付けられ又は挿入され、及び溶接されており、前記フォーク要素(32)は、好ましくは、互いに溶接された複数の異なる形状の金属シート(34,36)の層設計を有する、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1つに記載の格子ピース(10)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1つに記載の少なくとも1つの格子ピース(10)を備える、格子ブーム。
【請求項15】
請求項14に記載の格子ブームを備える作業機械、特にクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる格子ブーム用の格子ピース、及び少なくとも1つのこのような格子ピースを備える格子ブーム、並びにこのような格子ブームを備える作業機械に、関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン又は移動式クレーンのような作業機械用の通常の格子ブームは、斜材及びポストのような複数の補強要素によって互いに接続された4つのコーナーバーを、備える。ここで、格子ブームは、高さよりも大きな幅を有する先行技術から、知られている。このような構造方式は、より小さな変形を生じ、それによって、より高い横方向剛性及びより大きな横方向慣性モーメントに起因して、より高いペイロードを生じる。
【0003】
水平板(すなわち、格子ブームにおける長い断面側)の座屈長さが、垂直板(すなわち、格子ブームにおける短い側)の座屈長さよりも長いことは、(特に、それらの幅が高さに対して大きくなるように選択された場合、)このような格子ブームの特徴である。ここで、座屈長さは、コーナーバーにおける斜材とポストとの間の2つの接続点の距離として、定義される。この理由の1つは、長辺に沿って延びる補強要素の座屈長さを、所望のように短くすることができないことである。なぜなら、特に、格子ピースがとりわけ広いと、角度-幾何学的な理由から、経済的に有効な方法で製造することができない最適でないウェブブレーシングが、生じるからである。
【0004】
さらに、広い格子ブームは、クレーンパーツが公道交通を介して輸送されなければならず、最大許容輸送幅が規制によって制限されるので、特定の分解性を必要とする。したがって、組立の労力及び格子ピースの組立時間を低く抑えるために、少数の補強要素も、同様に目的とされる。斜材を固定溶接すると、格子ピースの製造における溶接作業が、追加的に増加する。
【0005】
さらに、多数の斜材は、格子ピースの重量を増加させる。これは、欠点であり、したがって、最大輸送重量に関する対応する規制及びクレーンパーツを輸送する車両の仕様により、輸送、及び最大ペイロードに関するクレーン使用の、双方において、回避されるべきである。
【0006】
したがって、可能な限り少ない斜め要素の数が、全体のために目標とされ、このことは、通常、幅よりも小さい高さを有する格子ブームで、異なる座屈長さをもたらす。
【0007】
さらに、格子ピースは、従来技術から知られている。そのコーナーバー断面は、主に円形であり、すなわち、点対称に設計されている。したがって、コーナーバーの慣性モーメント及び抵抗は、全ての方向において、同一である。ここで、異なる斜め距離、すなわち異なる座屈長さが、水平及び垂直の格子面における格子ピースで、選択される場合、これは、丸い断面を有するコーナーバーの摩耗度の悪化をもたらす。なぜなら、コーナーバーの既存の支持能力ポテンシャルは、より短い座屈長さ距離では、最適に使用されないからである。
【0008】
丸いコーナーバー断面の代わりに、矩形断面を使用することもできる。しかしながら、この点では、大きな平面状・板状の断面部分のため、(特に斜材との交点又は接続点における)局所座屈破壊の課題がある。この課題を是正する1つの可能性は、コーナーバーを局所的に補強するためにコーナーバー断面内に横方向に設置された補強板の使用である。しかしながら、この目的のために通常の場合、コーナーバーが多数の個々のパーツから組み立てられなければならないので、この解決手段は、技術製造面からの相当の努力に関連している。
【0009】
さらに、コーナーバーは、通常、格子ピースを他のブーム要素に接続できるように、鋳造又は鍛造されたフォークフィンガー接続要素を、備える。さらに、溶接されたフォークフィンガー接続要素も知られている。しかしながら、それらは、常に、コーナーバーへの接続を確立させるヘッドプレートを、有する。これには、ヘッドプレートの金属シートがその圧延方向に対して垂直に常に歪んでいるという、欠点がある。これにより、繊維方向(異方性)に対して横方向に負荷された木材繊維と同様に、層状破壊のリスクがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この背景に対して、本発明の基礎となる目的は、静的及び経済的な観点の両方において、高さよりも大きな幅を有する格子ブームを最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する格子ブーム用の格子ピースによって、達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項から及び以下の説明から、得られる。
【0012】
したがって、本発明に係る格子ピース(lattice piece)は、複数のポスト及び複数の斜材(diagonals)によって互いに接続される4つのコーナーバーを、備える。前記格子ピースは、2つの長辺及び2つの短辺を有する矩形断面(rectangular cross-section)を、備える。本発明によれば、前記コーナーバーの断面(section)は、前記格子ピースの前記短辺の方向よりも前記格子ピースの前記長辺の方向に大きな範囲を有する中空断面として、設計される。換言すれば、コーナーバー断面は、1に等しくないアスペクト比を有する。
【0013】
「長辺」又は「短辺」という呼称は、第1に、格子ピースの断面に関する。しかしながら、以下では、簡単のために、格子ピースのより広い辺(すなわち、より大きな表面測定値を有する辺)を「長辺」と呼び、より狭い辺(すなわち、より小さな表面測定値を有する辺)を「短辺」と呼ぶ。
【0014】
したがって、本発明に係る格子ピースのコーナーバー断面(以下では「断面」ともいう)は、通常使用される円形又は正方形のコーナーバー断面とは異なり、格子ピースの断面形状に適合される。これにより、コーナーバーの面積慣性モーメントを、格子ピースの設計ジオメトリ、及び最適静力学に関する要求に適合させ、それによって、使用されるブーム質量を最適に利用することが、可能である。
【0015】
格子ピースの長辺と短辺とで異なる座屈長さ(buckling length)を使用すると、コーナーバーの面積慣性モーメントは、例えば、これらの異なる座屈長さに適合されることができ、特に、コーナーバーは、それに垂直な平面よりも大きな座屈長さを有する平面において、より大きな範囲を有し、したがって、より大きな面積慣性モーメントを有する。丸形又は正方形のコーナーバー断面は、両方向、すなわち、格子ピースの短辺及び長辺に沿って、同一の面積慣性モーメントを有し、したがって、存在する質量を理想的に利用する。これとは対照的に、本発明に係るコーナーバージオメトリによれば、格子ピースの異なる座屈長さを最適にブリッジし、したがって、本発明に係る格子ピースの経済的実行可能性を増大させることが可能である。
【0016】
したがって、コーナーバーの中空断面は、特に、閉じたチャンバを形成する。ここで、安定化構造を含む中空断面は、好ましくは、単一の連続したチャンバを形成する。
【0017】
チャンバ又は中空断面は、例えば、好ましくは、コーナーバーの長手軸に対して横方向に互いに分離された、領域又はサブチャンバに、実質的にコーナーバーの全長に沿って分割されない(しかし、コーナーバーの斜材に対する接続点の領域における補強構造などの要素が、中空断面内に存在し得ることを除外しない)。
【0018】
本発明によれば、前記中空断面を形成する前記コーナーバー断面の少なくとも1つの側(side)は、ジョイント(joint)、ウェルドジョイント(weld joint)、キンク(kink,Knick)、ベンド(bend)又はラウンド部(rounded portion)の形態による安定化構造を、有する。これにより、特に矩形のコーナーバー断面で使用される補強板のような、格子ピースの総重量を増大させる追加の補強要素を、省くことができる。
【0019】
座屈安定化のためのジョイント、キンク、ベンド又はラウンド部として設計された少なくとも1つの安定化構造は、理想的には、コーナーバーを形成する金属シート(又は金属シートのうちの1つ)に直接的に組み込まれ、及び/又は、2つの金属シート間の遷移によって形成され、それによって総重量を増加させない。さらに、追加の要素を取り付ける必要性と比較して、製造が単純化される。換言すると、少なくとも1つの安定化構造は、好ましくは、コーナーバーの中空断面を形成する壁(これには複数の壁を互いに接続する溶接継手も含まれる)のコンポーネントであり、壁は、例えば、1つ若しくは複数の金属シート又は金属シート断面から、組み立てられてもよい。
【0020】
したがって、少なくとも1つの安定化構造は、好ましくは、コーナーバーの中空断面を形成する金属シート断面自身の形状及び/又は配置によって、形成される。特に、少なくとも1つの安定化構造は、(金属シートに溶接されるなど)外部からコーナーバーに溶接されるように、単純に取り付けられた要素を表すものではない。
【0021】
コーナーバーの中空断面を形成する壁が複数の金属シートを含む場合、安定化構造は、本ケースにおいて、特に、格子バーを固定するための突出タブのように、コーナーバーの長手軸に対して横断して金属シートの1つの方向に延びる延長部として、理解されることはない。
【0022】
一実施形態では、前記格子ピースの前記短辺を形成する隣接する前記コーナーバーは、前記格子ピースの前記長辺を形成する隣接する前記コーナーバーよりも多数の前記斜材によって、互いに接続されている。換言すると、格子ピースの長辺に沿って延びる斜材の接続点は、格子ピースの短辺に沿って延びる斜材の接続点よりも、コーナーバーにおいてより大きな距離を有し、その結果、コーナーバーは、格子ピースの短辺に沿うよりも長辺に沿う方向において、より長い座屈長さを有する。
【0023】
ここで、前記長辺及び/又は前記短辺において延びる前記斜材は、各前記コーナーバーに解放可能に接続されてもよい。前記長辺において延びる前記斜材は、好ましくは、前記コーナーバーに解放可能に固定されている。このことは、対応する接続を解放することによって、本発明に係る格子ピースの解体を可能にし、複数のパーツに分離された格子ピースを輸送することができるようになり、それによって、輸送車両に課せられる法規制及び仕様を遵守することができようになる。
【0024】
さらなる実施形態では、前記コーナーバーは、前記格子ピースの前記短辺の方向よりも前記格子ピースの前記長辺の方向において、大きな面積慣性モーメントを有する。これにより、格子ピースの長辺/短辺における異なる数の斜材、又は異なる座屈長さを、理想的に補償することができる。
【0025】
さらなる実施態様では、前記コーナーバーは、矩形状とは異なる断面を有する。コーナーバーの矩形断面は、垂直力に加えて、コーナーバーにセットされた斜材及びポストの接合部又は接続点にも曲げモーメントが作用するので、スタティクスの側面から好ましくない。コーナーバーへの板状の接続を有する接続点の領域では、局所座屈の課題が生じる得る。これらの曲げモーメントは、コーナーバーの金属シートを片側のコーナーバーから引き出し、反対に配置された側のコーナーバーを押す。したがって、この領域で補強を行う追加の補強又は他の手段がなければ、矩形プレートの金属シートが、「自己支持」であり、支持されていないので、したがって、コーナーバーは、座屈し得る。
【0026】
本発明に係る格子ピースのコーナーバー断面は、楕円形、不規則な、特に凸多角形、又は正多角形の形態を有してもよい。しかしながら、後者の場合には、正多角形の幅が、格子ピースの2つの辺のうちの一方に沿って、それに垂直に延びる辺に沿うものとは異なる幅を有する場合に限られる。また、コーナーバー断面は、例えば、一方の側が楕円形であり、他方の側が角のあるように、異なる形状の組み合せを表してもよい。コーナーバー断面は、好ましくは、キンク/エッジ(edge)及びラウンド部/曲げ/カーブ(curve)の組み合せを有する。ここで、キンクは、接続された2つの金属シートの溶接シームでもよい。
【0027】
さらなる実施形態では、前記安定化構造は、実質的に前記コーナーバーの全長に沿って延びている。
【0028】
前記安定化構造は、好ましくは、前記コーナーバーの長手軸を横断する前記中空コーナーバー断面の外側輪郭の方向の変化を形成しており、実際には、(ウェルド)ジョイント、キンク、ベンド又はラウンド部の形態において、上述したように、これらの用語は互いにぶれてもよい。
【0029】
さらなる実施形態では、前記コーナーバー断面は、合計で少なくとも5つのキンク、ベンド及び/又はラウンド部を、有する。
【0030】
さらなる実施形態では、前記コーナーバーは、金属シートから1つのピースに製造されており、すなわち、単一パーツの中空断面を形成する。それは、例えば、n辺パイプ(例えば、n=5)と同様の方法で製造されることができ、対応するキンク/ラウンド部が設けられてもよい。
【0031】
代替の実施形態では、前記コーナーバーは、互いに溶接された少なくとも2つの金属シートから、製造される。本発明に係るコーナーバーの断面は、理想的には、2つの金属シート断面から接合され、コーナーバーに沿って延びる2つの長手方向のシームによって溶接される。
【0032】
この点に関し、前記2つの金属シートは、同じ形状を有してもよく、好ましくは、前記コーナーバー断面が点対称又は軸対称を有するように互いに溶接される。
【0033】
代替的には、前記2つの金属シートは、それぞれ、異なる形状を有してもよい。これにより、コーナーバーの質量に関して最適化された断面ジオメトリは、それにもかかわらず、格子ピースの異なる辺に沿う異なる面積慣性モーメント/範囲に関して、上記の要求を満足する結果となり得る。前記金属シートは、好ましくは、前記コーナーバー断面が軸対称であるように互いに溶接される。
【0034】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの補強要素が、前記斜材の前記コーナーバーに対する接続点の領域において、前記コーナーバー断面内に取り付けられている。補強要素は、対角のコーナーバーのニューラルジックな接続点の領域において、コーナーバーの追加的な安定化又は補強に寄与し、コーナーバー金属シートの座屈に対して任意に設けられた安定化構造に加えて作用する。このことは、特に、薄い金属シートからコーナーバーの製造を可能にする。
【0035】
さらなる実施態様では、前記補強要素は、前記コーナーバーの長手方向に延びており、好ましくは、前記斜材が前記コーナーバーに接続される側において前記コーナーバーの内部にのみ取り付けられている。これにより、補強要素のサイズ及び重量を減少させることができ、それにもかかわらず、所望の安定化効果を達成することができる。個々のコーナーバーシェル又はコーナーバー金属シートを接合する前に、補強要素を単純に設置することができるので、(コーナーバーの長手方向に対して横断して設置された補強板とは異なり、)少なくとも1つの補強要素の長手方向のため、コーナーバーの特に単純な製造が生じる。
【0036】
補強要素は、座屈安定化において、キンク/ベンド等のように任意に設けられた安定化構造を支持する、リブ又は同様の補強要素としてもよい。このような補強要素は、好ましくは、コーナーバーに対する斜材の接続点毎に、設けられる。補強要素は、接続点の凹面側が斜材に臨むように、シェル形状又は半シェル形状として、形成されてもよい。
【0037】
さらなる実施形態では、各前記コーナーバーは、2つの端部にそれぞれマウントを有し、前記マウントには、接続要素、特にフォーク要素が、異なる格子ピースの相補的な、接続要素、特にカウンターフォーク要素に対する接続のために、取り付けられ/挿入され、及び溶接されている。これにより、接続要素は、最小限の溶接歪みで、設置されることができる。さらに、ヘッドプレートを省略することができ、したがって、上述した層状破壊のリスクを回避することができる。接続要素とコーナーバーとを接続する長手方向のシームにかかる荷重は、せん断によって発生する。接続要素は、プレハブの形態で、コーナーバーのマウントに、取り付け/挿入されてもよく、続いて、任意に、機械的作業が、行われてもよい。最適化されたコーナーバー断面との組み合せにおいて、本発明に係る格子ピースのパフォーマンスは、このような改良されたフォーク/フォークデザインによって、増大されることができる。前記接続要素は、好ましくは、前記マウントに取り付けられる。
【0038】
前記フォーク要素は、好ましくは、互いに溶接され且つ異なる形状の複数の金属シートの層構造を、有する。予めサンドイッチ設計で溶接されたコンポーネントは、具備されたマウントに、取り付け/挿入されることができる。さらに、好ましくは同様に解放可能であり、特に側部(lateral)である、コーナーバーに対する補強要素接続のための接続点が、接続要素に設けられてもよい。フォーク要素の一方の側は、この目的のために適切に設計され得る。他方の側のみが、重量上の理由のために適用される面取り部を、有する。
【0039】
格子ピースの斜材は、コーナーバーの対応する側面における2つの安定化構造の距離よりも小さい直径を、有してもよい。このことは、格子ピースの単純な製造を可能にする。
【0040】
あるいは、斜材は、コーナーバーの対応する側面における2つの安定化構造の距離よりも大きな直径を、有してもよい。これにより、静的により有利な設計が得られる。
【0041】
また、格子ピースの実施形態は、1つ又は複数の斜材が、より小さな直径を有し、1つ又は複数の斜材が、斜材が接続されるコーナーバーの対応する側面における安定化構造の距離よりも大きな直径を有することも、考えられる。
【0042】
本発明はさらに、本発明に係る少なくとも1つの格子ピースを備える格子ブーム、及びこのような格子ブームを備える作業機械、好ましくはクレーン、特に好ましくはクローラクレーン又は移動式クレーンに、関する。これにより、本発明に係る格子ピースと同じ利点及び特性が明らかに得られ、その結果、この時点で繰り返しの説明は省略される。
【0043】
本発明のさらなる特徴、詳細及び利点は、図面を参照して以下で説明される実施形態から、得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、本発明に係る格子ピースの好ましい実施形態を斜視図で示す。
【
図3】
図3は、好ましい実施形態による本発明に係る格子ピースのコーナーバーを斜視断面図で示す。
【
図5a】
図5abは、本発明に係る格子ブームのコーナーバーの断面の複数の実施形態を、それぞれの場合における概略正面図で示す。
【
図5b】
図5abは、本発明に係る格子ブームのコーナーバーの断面の複数の実施形態を、それぞれの場合における概略正面図で示す。
【
図6】
図6は、一実施形態に係るコーナーバーにおける2つの斜材の接続点での補強要素を拡大図で示す。
【
図7a】
図7aは、一実施形態に係るフォーク要素を有するコーナーバーを側面図及び平面図で示す。
【
図7b】
図7bは、さらなる実施形態に係るフォーク要素を有するコーナーバーを側面図及び平面図で示す。
【
図8a】
図8aは、
図7aのコーナーバーのフォーク要素及びカウンターフォーク要素を単一の斜視図で示す。
【
図8b】
図8bは、
図7bのコーナーバーのフォーク要素及びカウンターフォーク要素を単一の斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明に係る格子ピース10の一実施形態を、
図1に斜視図で示す。格子ピース10は、4つの平行なコーナーバー12を、備える。コーナーバー12は、接続要素32を、有する。接続要素32は、端部にフォーク要素として形成されている。接続要素32では、移動式クレーン又はクローラクレーンの、ブーム、特に格子ブームを形成するために、格子ピース10が、他の格子ピース10又はブームパーツに接続可能である。2つのそれぞれ隣接するコーナーバー12は、複数のポスト14及び複数の斜材16によって、互いに接続されている。
【0046】
格子ピース10は、高さよりも大きな幅を有する矩形断面を、備える。この点において、コーナーバー12は、格子ピース10の短辺Kに沿ったものよりも少数の斜材16によって、格子ピース10の長辺Lに沿って互いに接続されている。
図1では、コーナーバー12における斜材16との接続点18のそれぞれの距離から得られる、対応する座屈長さKK及びKLが、描かれている。認識できるように、コーナーバー12は、長辺及び短辺L,Kの斜材16に対して異なる座屈長さKL,KKを有し、座屈長さKLは、座屈長さKKよりも長い。
【0047】
格子ピース10の長辺Lに延びる斜材16は、コーナーバー12に解放可能に接続される一方、短辺Kの斜材16は、コーナーバー12に固定的に溶接される。
図2は、格子ピース10の短辺Kの1つを形成する単一側部を示しており、コーナーバー12及びフォーク要素32に取り付けられた斜材16のための固定要素19又はピンポイント、及び格子ピース10の前面を形成する側部が、認識されることができる。
【0048】
格子ピース10は、幅が大きいため、高い横方向の剛性及び高いねじり剛性を、有し、クレーン運転において、小さな変形及び高いペイロードが、得られる。垂直面における格子ピース10の分割可能性は、格子ピース10の輸送を容易にする。ここで、斜材16及びコーナーバー12は、格子ピース10のジオメトリに最適に適合される。長辺Lにおける斜材16の数がより少ないことは、より少ない設置工数、より小さい総重量、及びより小さな公差を、もたらす。
【0049】
ここで、本発明によれば、それに関連する長辺Lにおけるより長い座屈長さKLは、コーナーバー12の最適化された断面によって、補償される。
図3及び
図4は、最適化された断面を有するコーナーバー12の実施形態を、斜視図及び概略正面図で示す。本発明に係るコーナーバー断面は、高さよりも大きい幅、すなわち1に等しくないアスペクト比を有する点で、通常使用される円形又は正方形の断面形状とは異なる。この点で、コーナーバー12は、格子ピース10の長辺Lの方向により大きな範囲を有し、それによって生じるより大きな面積慣性モーメントによって、この平面におけるより大きな座屈長さKLを補償する。このプロセスでは、格子ピース10の質量が最適に利用される。
【0050】
コーナーバー12は、長手方向のシーム20’(溶接継手)によって互いに溶接され且つ中空断面を形成する、2つの異なる形状の金属シート断面から、組み立てられる。金属シートは、それぞれ軸対称に形成されており、得られるコーナーバー断面も軸対称を有するように、接合される(
図4参照、垂直対称軸は中心で断面を分割する)。コーナーバー12の金属シート断面は、それぞれ、座屈安定化に寄与し且つコーナーバー12の全長に沿って延びる、ラウンド部又はベンド20(「キンク」としても理解され得る)を、有する。溶接された横方向補強板のような追加コンポーネントの使用は、これらの安定化構造20のため、省かれることができる。安定化構造20は、製造が容易であり、且つ、金属シート断面自身の成形において実装される(すなわち、安定化構造は、中空断面を形成する金属シート断面自身の形状及び/又は配置によって形成される)。溶接シーム20’もまた、安定化構造として理解され得る。コーナーバー断面は、全体的に、凸状の不規則多角形の形状を、実質的に有する。さらに、
図4では、中空断面内に配置された補強要素22が認識され得ており、以下でさらに説明される。
【0051】
しかしながら、
図3及び
図4に示す実施形態は、所望の座屈安定化及び座屈長さ適合を実施するための、コーナーバー断面の多くの構成可能性の1つに過ぎない。さらなる例は、それぞれの場合において正面図で、
図5a及び5bに示されている。この点において、
図5aは、1つのピースで製造された断面に対して軸対称性を有する例を、示す(これらの形状は、2つ以上の金属シート断面で自然に構成されてもよい)。
図5bに示される断面は、実質的に卵形又は楕円形であり、この断面は、クローズアップで見られる、複数のベンド/ラウンド部/キンクを、有する。左端の例を除いて、
図5bの断面は、2つの異なる形状の金属シートで構成されており、同様に軸対称性を有する。
図5bの左端に示される断面は、対照的に、2つの同じ形状の金属シートから組み立てられおり、全体的に点対称性を有しており、とりわけ、製造を単純化する。
【0052】
特に薄い金属シート断面の使用において、コーナーバー12を座屈に対してさらにもっと安定化させるために、追加の補強要素22が、コーナーバー12の中空断面内に設置されてもよい。この例は、
図6に示されており、コーナーバー12における2つの斜材16との接続点18の詳細が、示されている。この点に関し、コーナーバー12における内部に配置され、コーナーバー12の長手方向に沿って延び、且つ、接続点18に臨む側において中空断面の内側に固定又は溶接されている補強要素22は、外部から見えないので破線で示される。この実施形態に係る接続要素22は、コーナーバー12の長手軸と平行にその中央軸に沿って、曲げられている。
図4は、補強要素22を正面図で示す。
【0053】
このような角度又はハーフシェル形状の補強要素22は、好ましくは、接合部18を安定化するために、接続点18毎に存在する。しかしながら、ここで、様々な他の設計も考えられる。このような補強要素22は、2つの金属シート断面で構成されるコーナーバー12の場合、これらの長手方向要素22が、コーナーバー金属シートの接合又は溶接の前に既に設置されることができるので、特に容易に行われることができる。
【0054】
本発明に係る格子ピース10のパフォーマンスは、最適化されたフォーク/フォーク設計によって、拡張される。この目的のために、コーナーバー12は、2つの格子ピース10の間に、又は、1つの格子ピース10と、関節接続ピースやブームヘッド等のような他のブームパーツと、の間に解放可能なピン接続を確立するための、穴をそれぞれ有するフォーク要素として設計された接続要素32を、2つの端部に有する。
【0055】
第1の実施形態によれば、両側に取り付けられた2つのフォーク要素32を有するコーナーバー12が、側面図(上側の図示)及び平面図(下側の図示)で
図7aに示されている。
図8aは、個々のフォーク要素32を斜視図で示す。この実施形態では、フォーク要素32は、コーナーバー12の端部又はマウントにセットされる。フォーク要素32は、一方の側に面取り部38を有し、反対に配置された側に固定要素19を固着できるように、適切に設計されている(
図2参照)。
【0056】
図7b及び
図8bは、フォーク要素32がコーナーバー12の端部における対応するマウント又は切欠きに挿入され且つそこに溶接される、第2の実施形態を示す。この構造方式は、最小限の溶接変形を有する溶接、及び、破損しやすいコーナーバー12の端部におけるヘッドプレートの省略を、可能にする。フォーク要素32とコーナーバー12との間における溶接シーム30は、
図7bに太い黒線として示されており、作動中にせん断によって負荷がかかる。
【0057】
フォーク及びカウンターフォーク要素32は、互いに接合することを可能にし、且つ、複数の溶接された層板(lamellae)34,36を含む層設計又はサンドイッチ構造を有するように、2つの実施形態において異なる設計を有する。層板34,36は、異なる形状又は輪郭を有する。層板設計の代わりに、例えば、薄い金属接続シートが、フォーク要素32のフィンガー間のスペーサとして、使用されてもよい。これらのプレハブフォーク要素32は、全体として機械的な後加工に供され得る。コーナーバー12に対するポスト接続のための解放可能な接続点は、フォーク/フォークパケットに追加的に設けられてもよい。
【0058】
安定化構造20,20’が設けられた本発明に係るコーナーバー12の(「エッジ付き」)形状は、上述されたものに加えて、いくつかのさらなる利点又は特性を提供する。
【0059】
1)技術製造面から有利な斜材接続の実施形態:斜材16の直径は、コーナーバー断面12の対応する側面において、2つの安定化構造20,20’の間で選択された距離よりも、小さくなる。
【0060】
2)斜材接続の静的に有利な実施形態:斜材16の直径は、コーナーバー断面12の対応する側面において、2つの安定化構造20,20’の間で選択された距離よりも、大きくなる。
【0061】
3)コーナーバー断面12内における溶接継手20’の有利な配置:全ての溶接継手20’がコーナーバー断面12の一方の側に位置するように溶接継手20’を配置し、(
図5bにおける左から3番目の断面を参照)、その結果、コーナーバー断面12は、溶接中に回転される必要がない。このことは、コーナーバー12が、例えば、2つのハーフシェル金属シートから組み立てられてもよいことを、意味しており、ハーフシェルの一方は、第2のハーフシェルよりも幾分大きな幅を、有する。両方の溶接シームは、任意に数度だけ回転させて(実際には「下向きの位置」でも)、片側から製造されてもよい。
【0062】
4)可能な限り小さな内側半径(例えば、金属シートの厚みの4倍)を有する、コーナーバー12のベンド/エッジ20の有利な実施形態。さらに小さな半径は、技術製造面から困難を伴ってのみ製造され得る。この半径はまた、隣接するベンド/エッジ20からの最小距離を規定することに、留意されたい。したがって、コーナーバー12に技術的に製造され得るベンド/エッジ20の数もまた、制限される。
【符号の説明】
【0063】
10 格子ピース
12 コーナーバー
14 ポスト
16 斜材
18 接続点
19 固定要素
20 安定化構造(キンク/ベンド/ラウンド部)
20’ 溶接シーム
22 補強要素
30 溶接シーム
32 接続要素(フォーク要素)
34 金属シート/層板
36 金属シート/層板
38 面取り部
KK 座屈長さ、短辺
KL 座屈長さ、長辺
K 格子ピースの短辺
L 格子ピースの長辺
【外国語明細書】