(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163456
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】実生活ストレスを加えた後のUVカバレージ率を判定するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021068391
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】中村 綾子
(72)【発明者】
【氏名】シーラ・チウ
(72)【発明者】
【氏名】中野 友理
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043CA03
2G043EA01
2G043JA02
2G043KA02
2G043KA03
2G043LA01
2G043NA01
(57)【要約】
【課題】UV保護製剤のUVカバレージを判定する方法を提供すること。
【解決手段】測定プロセスによってUV保護製剤のUVカバレージを判定する方法は、UV保護製剤をターゲット上に塗布する前にターゲットに光を照射することによってターゲットの画像を取得するステップと、UV保護製剤をターゲット上に塗布した後でターゲットに光を照射することによってターゲットの画像を取得するステップと、UV保護製剤が塗布されたターゲットにストレスを加えた後にターゲットに光を照射することによってターゲットの画像を取得するステップと、各画像取得ステップで取得された画像内のターゲット上に少なくとも1つの関心領域を設定するステップと、画像取得ステップから取得された画像内の関心領域内の検出された光の強度を取得するステップと、画像取得ステップから取得された画像内の関心領域における検出された光の強度を比較することによってUV保護製剤のUVカバレージを判定するステップとを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定プロセスによってUV保護製剤のUVカバレージを判定する方法であって、
UV保護製剤をターゲット上に塗布する前に前記ターゲットに光を照射することによって前記ターゲットの画像を取得するステップと、
前記UV保護製剤を前記ターゲット上に塗布した後で前記ターゲットに光を照射することによって前記ターゲットの画像を取得するステップと、
前記UV保護製剤が塗布された前記ターゲットにストレスを加えた後に前記ターゲットに光を照射することによって前記ターゲットの画像を取得するステップと、
各画像取得ステップで取得された前記画像内の前記ターゲット上に少なくとも1つの関心領域を設定するステップと、
前記画像取得ステップから取得された前記画像内の前記関心領域内の検出された光の強度を取得するステップと、
前記画像取得ステップから取得された前記画像内の前記関心領域における前記検出された光の前記強度を比較することによって前記UV保護製剤のUVカバレージを判定するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記UV保護製剤が塗布された前記ターゲットに前記ストレスを加えた後に前記ターゲットに光を照射することによって前記ターゲットの前記画像を取得する前記ステップは1回または複数回実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記UV保護製剤の前記UVカバレージを判定する前記ステップは、以下の式に基づいて前記UV保護製剤の前記UVカバレージを判定し、
【数1】
上式で、T
0は、前記UV保護製剤を塗布する前に前記ターゲットの前記画像から取得された前記検出された光の強度を表し、T
immは、前記UV保護製剤を前記ターゲット上に塗布した後に前記ターゲットの前記画像から取得された前記検出された光の強度を表し、T
iは、前記UV保護製剤が塗布された前記ターゲットにi回目のストレスを加えた後に前記ターゲットの前記画像から取得された前記検出された光の強度を表し、iは、1以上の整数を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲットの前記画像を取得する前記ステップは、前記ターゲットに光を照射したことに応じて前記ターゲットから放出される蛍光の画像を取得するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ターゲットの前記画像を取得する前記ステップは、フィルタリングによって290nmから420nmの間以外の範囲の波長を有する蛍光を減衰させるかまたは遮断するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ターゲットは、人間の顔、または人間の皮膚に含まれる蛍光物質と同様の蛍光物質を含むダミーサンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの関心領域を設定する前記ステップは、人間の顔の上に複数の関心領域を設定するステップを含み、
前記UVカバレージを判定する前記ステップは、前記複数の関心領域における前記UVカバレージを同時に判定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ターゲットに照射するための前記光は、紫外光範囲の波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
UV保護製剤のUVカバレージを判定するためのデバイスであって、
ターゲットに光を照射するための光源と、
前記ターゲットに光を照射したことに応じて前記ターゲットの画像を取得するための検出器と、
前記検出器によって取得された前記ターゲットの前記画像に基づいて前記ターゲット上に塗布されたUV保護製剤のUVカバレージを判定するためのコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記画像内の前記ターゲット上に少なくとも1つの関心領域を設定するように構成され、
前記コントローラは、前記UV保護製剤を前記ターゲット上に塗布する前の前記ターゲットの画像、前記UV保護製剤を前記ターゲット上に塗布した後の前記ターゲットの画像、および前記UV保護製剤が塗布された前記ターゲットにストレスを加えた後の前記ターゲットの画像内の前記関心領域における検出された光の強度を比較することによって前記UV保護製剤の前記UVカバレージを判定するように構成されるデバイス。
【請求項10】
前記ターゲット上に塗布された前記UV保護製剤に前記ストレスを加えた後の前記ターゲットの前記画像が1回または複数回取得される、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記コントローラは、以下の式に基づいて前記UV保護製剤のUVカバレージを判定するように構成され、
【数2】
上式で、T
0は、前記UV保護製剤を前記ターゲット上に塗布する前に前記ターゲットの前記画像から取得された前記検出された光の強度を表し、T
immは、前記UV保護製剤を前記ターゲット上に塗布した後に前記ターゲットの前記画像から取得された前記検出された光の強度を表し、T
iは、前記UV保護製剤が塗布された前記ターゲットにi回目のストレスを加えた後に前記ターゲットの前記画像から取得された前記検出された光の強度を表し、iは、1以上の整数を表す、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記検出器は、前記ターゲットに光を照射したことに応じて前記ターゲットから放出される蛍光の画像を取得するように構成される、請求項9に記載のデバイス。
【請求項13】
前記検出器は、フィルタリングによって420nmから520nmの間以外の範囲の波長を有する蛍光を減衰させるかまたは遮断するように構成されたフィルタを備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項14】
前記ターゲットは、人間の顔、または人間の皮膚に含まれる蛍光物質と同様の蛍光物質を含むダミーサンプルである、請求項9に記載のデバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの関心領域は、人間の顔における複数の関心領域であり、
前記コントローラは、前記複数の関心領域における前記UVカバレージを同時に判定するように構成される、請求項9に記載のデバイス。
【請求項16】
前記光源は、紫外光範囲の波長を有する光を前記ターゲットに照射するように構成される、請求項9に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実生活ストレスを加えた後のUVカバレージ率を判定するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の皮膚などのターゲットを紫外光から保護すること(UV保護)は、皮膚の健康および美にとって重要である。UV保護効果を有する調合物を塗布した後、すなわち、日焼け止めがターゲット上に塗布された後、日焼け止めは最終的に、ターゲットを濡らすこと、ターゲットをタオルで拭くこと、または時間の経過などの日焼け止めに対するストレスによって除去される。したがって、日焼け止めの効果は最終的にストレスおよび時間の経過によって失われる。ターゲットを効果的に保護するためには、現在の保護効果を測定する必要がある。しかしながら、紫外光は人間の眼に見えないので、UV保護効果も見ることはできない。したがって、消費者は、UV保護効果が維持されている程度を視覚的に検査することはできない。
【0003】
ターゲットにUV光が照射されると、ターゲットに含まれるコラーゲン、NADPH、およびアミノ酸などの蛍光物質が、たとえば、可視範囲の蛍光を発する。照射ターゲットに到達するUV光の量、言い換えれば、照射ターゲット上に塗布された日焼け止めのUV保護効果は、蛍光の量を測定することによって判定することができる。
【0004】
図10は、UV光の照射に応じてターゲットから放出される蛍光の強度を判定する従来の方法を示す。この方法では、UV光を含む光1016がターゲット1010に照射される。ターゲット1010は、光1016の照射に応じて蛍光1020を放出する。蛍光1020が光センサー1006上に入射すると、光センサー1006は、蛍光1020の強度に応じて信号を出力する。蛍光の強度の変化は以下の式によって算出される。
【0005】
【0006】
上式で、Timmは、UV保護製剤をターゲット上に塗布した直後に測定された蛍光の強度を表し、Tiは、所定数のストレスをUV保護製剤に加えた後に測定された蛍光の強度を表す。
【0007】
しかしながら、この従来の方法では、一度にターゲットの一部のみを測定できるにすぎない。たとえば、ターゲットが人間の顔であるとき、額および左右の頬などの顔の複数の部分において同時にUV保護効果を評価し、UV保護効果の分布を評価することは困難である。
【0008】
ある照射条件下でターゲットとしての人間の顔の標準的な画像を得ることができる撮像システムが開発されている。たとえば、Canfield Scientific, Inc.のVisiaシステムが市販されている。そのような撮像システムのUV撮像機能は、UV光を顕著に吸収する色素沈着点を推定して示すために使用されることが多い。さらに、UV撮像機能は、UV保護製剤の効果を示す例として使用されることが多い。しかしながら、発明者の知識の限りでは、そのような撮像システムは、皮膚の表面上におけるUV保護製剤の分布の時間的な変化を直接定量化するために使用されているわけではない。非特許文献1では、いくつかのタイプの水に対するUV保護製剤の耐性を推定するために青色蛍光顔料を使用することが報告された。
【0009】
L’Orealによって開発された他のシステム、たとえば、UVパッチは、UV照射に応じて生じる感光性パッチに基づいてUV保護レベルのリアルタイムデータおよび変化を取得することを目的としている。UVパッチは、携帯可能であるという利点を有するが、UVパッチの目的は、塗布されたUV保護製剤の分布を評価することではない。さらに、UVパッチでは、UV光を意図的に照射する必要があり、言い換えれば、UVパッチは日光にさらされない限り反応しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chutima Rungananchaiら、“Sunscreen Application to the Face Persists beyond 2 Hours in Indoor Workers; an Open-Label Trial”、Journal of Dermatological Treatment、第30巻、2019年、第5号、483頁-486頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、「UVカバレージ」と呼ばれる、十分な量のUV保護製剤の最初の一様な塗布に対するUV保護製剤の空間分布の変化およびその一様性を定量化することである。本発明の目的が皮膚の表面上に塗布されたUV保護製剤の紫外線防御指数SPFを推定することではないことに留意されたい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態による測定プロセスによってUV保護製剤のUVカバレージを判定する方法は、
UV保護製剤をターゲット上に塗布する前にターゲットに光を照射することによってターゲットの画像を取得するステップと、
UV保護製剤をターゲット上に塗布した後でターゲットに光を照射することによってターゲットの画像を取得するステップと、
UV保護製剤が塗布されたターゲットにストレスを加えた後にターゲットに光を照射することによってターゲットの画像を取得するステップと、
各画像取得ステップで取得された画像内のターゲット上に少なくとも1つの関心領域を設定するステップと、
画像取得ステップから取得された画像内の関心領域内の検出された光の強度を取得するステップと、
画像取得ステップから取得された画像内の関心領域における検出された光の強度を比較することによってUV保護製剤のUVカバレージを判定するステップとを含む。
【0013】
本発明の一実施形態では、UV保護製剤が塗布されたターゲットにストレスを加えた後にターゲットに光を照射することによってターゲットの画像を取得するステップは1回または複数回実行されてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態では、UV保護製剤のUVカバレージを判定するステップは、以下の式に基づいてUV保護製剤のUVカバレージを判定してもよい。
【0015】
【0016】
上式で、T0は、UV保護製剤を塗布する前にターゲットの画像から取得された検出された光の強度を表し、Timmは、UV保護製剤をターゲット上に塗布した後にターゲットの画像から取得された検出された光の強度を表し、Tiは、UV保護製剤が塗布されたターゲットにi回目のストレスを加えた後にターゲットの画像から取得された検出された光の強度を表し、iは、1以上の整数を表す。
【0017】
本発明の一実施形態では、ターゲットの画像を取得するステップは、ターゲットに光を照射したことに応じてターゲットから放出される蛍光の画像を取得するステップを含んでもよい。
【0018】
本発明の一実施形態では、ターゲットの画像を取得するステップは、フィルタリングによって290nmから420nmの間の範囲以外の波長を有する蛍光を減衰させるかまたは遮断するステップを含んでもよい。
【0019】
本発明の一実施形態では、ターゲットは、人間の顔、または人間の皮膚に含まれる蛍光物質と同様の蛍光物質を含むダミーサンプルであってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの関心領域を設定するステップは、人間の顔の上に複数の関心領域を設定するステップを含んでもよく、UVカバレージを判定するステップは、複数の関心領域におけるUVカバレージを同時に判定するステップを含んでもよい。
【0021】
本発明の一実施形態では、ターゲットに照射するための光は、紫外光範囲の波長を有してもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によるUV保護製剤のUVカバレージを判定するためのデバイスは、
ターゲットに光を照射するための光源と、
ターゲットに光を照射したことに応じてターゲットの画像を取得するための検出器と、
検出器によって取得されたターゲットの画像に基づいてターゲット上に塗布されたUV保護製剤のUVカバレージを判定するためのコントローラとを備え、
コントローラは、画像内のターゲット上に少なくとも1つの関心領域を設定するように構成され、
コントローラは、UV保護製剤をターゲット上に塗布する前のターゲットの画像、UV保護製剤をターゲット上に塗布した後のターゲットの画像、およびUV保護製剤が塗布されたターゲットにストレスを加えた後のターゲットの画像内の関心領域における検出された光の強度を比較することによってUV保護製剤のUVカバレージを判定するように構成される。
【0023】
本発明の一実施形態では、UV保護製剤が塗布されたターゲットにストレスを加えた後のターゲットの画像が、1回または複数回取得されてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態では、コントローラは、以下の式に基づいてUV保護製剤のUVカバレージを判定するように構成されてもよい。
【0025】
【0026】
上式で、T0は、UV保護製剤をターゲット上に塗布する前にターゲットの画像から取得された検出された光の強度を表し、Timmは、UV保護製剤をターゲット上に塗布した後にターゲットの画像から取得された検出された光の強度を表し、Tiは、UV保護製剤が塗布されたターゲットにi回目のストレスを加えた後にターゲットの画像から取得された検出された光の強度を表し、iは、1以上の整数を表す。
【0027】
本発明の一実施形態では、検出器は、ターゲットに光を照射したことに応じてターゲットから放出される蛍光の画像を取得するように構成されてもよい。
【0028】
本発明の一実施形態では、検出器は、フィルタリングによって420nmから520nmの間の範囲以外の波長を有する蛍光を減衰させるかまたは遮断するように構成されたフィルタを備えてもよい。
【0029】
本発明の一実施形態では、ターゲットは、人間の顔、または人間の皮膚に含まれる蛍光物質と同様の蛍光物質を含むダミーサンプルであってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの関心領域は、人間の顔における複数の関心領域であってもよく、コントローラは、複数の関心領域におけるUVカバレージを同時に判定するように構成されてもよい。
【0031】
本発明の一実施形態では、光源は、紫外光範囲の波長を有する光をターゲットに照射するように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、UV保護製剤のUVカバレージを判定するための方法およびデバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、UV保護製剤のUVカバレージを判定するためのデバイスの概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、UV保護製剤のUVカバレージを判定する方法のフローチャートを概略的に示す図である。
【
図3A】290nmから420nmの範囲を有するVisia UV光の照明スペクトルを示す図である。
【
図3B】本発明のいくつかの実施形態によるUV保護製剤のUVカバレージを判定する方法においてUV光の照射に応じて人間の皮膚から放出された蛍光のRチャネル、Gチャネル、およびBチャネルにおける強度を示す図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態によるUV保護製剤のUVカバレージを判定する方法においてRチャネル、Gチャネル、およびBチャネルで取得された蛍光の画像を示す図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による、UV保護製剤のUVカバレージを判定する方法においてターゲット上に関心領域を設定する例を示す図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態による、UV保護製剤のUVカバレージを判定する方法によって取得されたUVカバレージを示す図である。
【
図7】比較のために従来の方法によって取得された蛍光の変化を示す図である。
【
図8】本発明のいくつかの実施形態による方法によって取得されたUVカバレージと従来の方法によって取得された蛍光の変化との間の相関関係を示す図である。
【
図9】本発明のいくつかの実施形態による、UV保護製剤のUVカバレージを判定する方法によってそれぞれに異なる種類のUV保護製剤について取得されたUVカバレージを示す図である。
【
図10】ターゲットにUV光を照射したことに応じてターゲットから放出される蛍光の強度を測定する従来の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明のいくつかの実施形態による紫外光カバレージ(UVカバレージ)を判定するためのデバイス1は、
図1に示すように、ターゲット10に光16を照射するための光源2と、ターゲット10に光16を照射したことに応じてターゲット10の画像を取得するための検出器6と、検出器6によって取得された画像に基づいてターゲット10に塗布された紫外光保護製剤(UV保護製剤)12のUVカバレージを判定するためのコントローラ8とを備えてもよい。
【0035】
光源2は、紫外光(UV光)を含む光16を放出してもよい。光源2は、公知の光源、たとえば、水銀灯またはLEDであってもよい。たとえば、光源2は、UV光、可視光、および赤外光を含む広範囲の波長を有する光を放出してもよい。この場合、光源2は、所望の波長範囲を有する光のみを透過するための光学フィルタ22を備えてもよい。そのようなフィルタ22は、たとえばUV光範囲の波長を有する光が通過するのを可能にしてもよい。たとえば、フィルタ22は、UV光、たとえば、UV-A波長もしくはUV-B波長を有する光、または特に365nmの波長を含むUV光が通過するのを可能にしてもよい。代替的に、光源2は、UV光のみを放出してもよい。たとえば、光源2は、単色UV光、たとえば、UV-A波長またはUV-B波長を有する光を放出してもよい。代替的に、詳細には、光源2は、365nmの波長を含むUV光を放出するUV LEDであってもよい。光源2がUV光のみを放出する場合、光源2はフィルタ22を備える必要はない。
【0036】
ターゲット10は、たとえば、人間の皮膚、特に人間の顔であってもよい。人間の皮膚は、光の照射、特にUV光の照射に応じて、たとえば、可視光範囲の蛍光20を放出することがある少なくとも1つの蛍光物質を含んでもよい。そのような蛍光物質は、たとえばコラーゲン、NADPH、またはアミノ酸であってもよい。代替的に、ターゲット10は、人間の皮膚に含まれる蛍光物質と同様の蛍光物質を含むダミーサンプルであってもよい。そのようなダミーサンプルは、たとえば、ブタの皮膚、培養された人間の皮膚、またはゲルでモデル化した人間の皮膚であってもよい。
【0037】
ターゲット10上に塗布されたUV保護製剤12はたとえば、日焼け止めであってもよい。UV保護製剤12は、UV光を吸収しならびに/または反射する材料を含んでもよい。ターゲット10に影響を与える光16の一部はUV保護製剤12によって遮断されるので、ターゲット10に影響を与える光16の強度は、ターゲット10上に塗布され、ターゲット10上に残るUV保護製剤12の量に依存する。ターゲット10から放出される蛍光20の強度も、ターゲット10に入射する光16の強度に依存するので、ターゲット10から放出され、検出器6に影響を与える蛍光20の強度も、UV保護製剤12の量に依存する。
【0038】
検出器6は、光16の照射に応じてターゲット10から放出された蛍光20の強度を検出し、強度に応じて信号を生成してもよい。代替的に、検出器6は、蛍光20の強度に対応する明るさの分布を有する2次元画像を生成するために検出された蛍光20の強度の2次元分布を検出してもよい。そのような検出器6は、アレイ状に配列された感光性要素を有する公知の光検出器であってもよい。検出器6は、たとえばCMOSカメラまたはCCDカメラであってもよい。ターゲット10上で反射する光16の強度は一般に、蛍光20の強度よりもずっと大きい。したがって、検出器6に入射する反射光16は、大きい雑音を生じさせることがあり、蛍光20の強度の正確な測定が困難になる場合がある。さらに、検出器6に入射する光16が大きい強度を有する場合、検出器6が損害を受けることがある。したがって、検出器6は、ターゲット10上に反射した光16を遮断するためのシールド26を備えてもよい。さらに、検出器6は、UVカバレージを判定するための所望の範囲内の波長のみを有する蛍光20を検出してもよい。たとえば、検出器6は、比較的小さい感度を有してもよく、またはより好ましくは、所望の波長範囲以外の波長を有する光に対する感度を有さなくてもよい。代替的に、検出器6は、好ましい波長範囲以外の波長を有する蛍光20を少なくとも減衰させ、好ましくは遮断するフィルタ24を備えてもよい。フィルタ24は、フィルタリングによって290nmから420nmの間以外の波長の蛍光を減衰させまたは遮断するように構成されてもよい。フィルタ24はまた、ターゲット10上に反射した光16を遮断する機能を含んでもよい。
【0039】
コントローラ8は、光源2からの光16の放出、ターゲット10から放出される蛍光20の検出器6による検出、画像の生成を制御するように構成されてもよい。コントローラ8はまた、検出器6によって取得された画像からUV保護製剤のUVカバレージを判定するように構成されてもよい。UV保護製剤のUVカバレージの判定について以下で詳細に説明する。
【0040】
図2は、デバイス1を使用してUV保護製剤のUVカバレージを判定する方法100を概略的に示すフローチャートである。
【0041】
方法100は、ステップ102~116を含む測定プロセスを含む。ステップ102において、UV保護製剤12が塗布される前のターゲット10に光16が照射され、ターゲット10の第1の画像を取得するためにターゲット10から放出される蛍光20が検出される。
【0042】
ステップ104において、所定量のUV保護製剤12がターゲット10上に塗布される。
【0043】
ステップ106において、ターゲット10に光16が照射され、ターゲット10の第2の画像を取得するためにターゲット10から放出される蛍光20が検出される。
【0044】
ステップ108において、UV保護製剤12が塗布されたターゲット10に所定のストレスが加えられる。たとえば、ストレスとして、ターゲット10上に水が噴霧されてもよく、次いでターゲット10が乾燥した布によって拭かれ得る。ターゲット10が人間の顔である場合、被験者は、ランニングまたはバイクを漕ぐことなどの運動を行い、次いで汗を拭いてもよい。ストレスはまた、単なる時間の経過であってもよい。ストレスはまた、仕事または家事などの日常の活動であってもよい。
【0045】
ステップ110において、ターゲット10に光16が照射され、ストレスを加えた後にターゲット10の画像を取得するためにターゲット10から放出される蛍光20が検出される。
【0046】
ステップ108およびステップ110は、必要に応じて1回または複数回、たとえば、i回(iは1以上の整数)実行されてもよく、画像が複数回取得されてもよい。ステップ108が複数回実行される場合、ステップ110は、ステップ108ごとに実行されてもよい。ステップ110は、ステップ108を数回実行した後に省略されてもよい。言い換えれば、ステップ110は、ステップ108を所定回数繰り返した後に1回実行されてもよい。ステップ108を所定回繰り返した後にステップ110を1回実行するセットが所定回数実行されてもよい。ステップ108をi回実行した後にステップ110で取得される画像は、i回目のストレス後の画像と呼ばれる。ステップ110が各ステップ108後に実行される場合、取得される画像の数はi個である。ステップ110を省略する場合、i個よりも少ない画像が取得される。
【0047】
ステップ102、106、および110において取得される画像内のターゲット10の位置は、好ましくはすべての画像にわたって少なくとも同様であり、より好ましくは同一である。さらに、画像は好ましくは少なくとも同様の方向から取得され、より好ましくは同じ方向から取得される。したがって、画像内のターゲット10の位置によって、ステップ106の後のステップにおいて画像を取得する際の画像の方向をステップ102において取得された第1の画像と一致させるために、検出器6の位置および方向を調整するステップが、画像を取得する前に実行されてもよい。そのような調整は、オペレータの入力によって実行されてもよく、または第1の画像との比較に基づいてコントローラ6によって自動的に実行されてもよい。オペレータによる調整は、コントローラ6を用いて実行されてもよくまたはコントローラ6なしで実行されてもよい。
【0048】
ステップ112において、画像取得ステップから取得された画像内のターゲット10上に少なくとも1つの関心領域が設定される。関心領域は好ましくは、すべての画像にわたって共通の位置であってもよい。ターゲット10がたとえば、人間の顔である場合、関心領域は、たとえば額、右頬、および左頬上に設定されてもよい。画像内のターゲットの位置が同様または同一になるように画像が調整された場合、関心領域は、関心領域が1つの画像について設定された場合にのみすべての画像について位置を微調整する必要なしに共通の位置に設定されてもよい。たとえば、コントローラ6が関心領域を設定してもよい。関心領域の数、位置、およびサイズは、測定の目的に関して適切に設定され得る。複数の関心領域を設定すると、ターゲット10に塗布されたUV保護製剤12の分布が取得され得る。
【0049】
ステップ114において、画像に設定された関心領域内の検出された光の強度が取得される。検出された光の強度は、関心領域内の明るさ、言い換えれば、グレースケール値に対応してもよい。したがって、グレースケール値は、検出された光の強度を表すインジケータとして使用されてもよい。グレースケール値は、たとえば、関心領域内の画素のグレースケール値を平均することによって取得されてもよい。
【0050】
ステップ116において、UV保護製剤12のUVカバレージは、検出された光の強度、たとえば、画像取得ステップにおける画像の関心領域内のグレースケール値を比較することによって判定されてもよい。UVカバレージを判定するために様々な方法が提供されてもよい。好ましくは、UVカバレージは、以下の式によって定義される。
【0051】
【0052】
上式で、T0は、UV保護製剤12をターゲット10上に塗布する前にターゲット10の第1の画像から取得された検出された光の強度であり、Timmは、UV保護製剤12をターゲット10上に塗布した後にターゲット10の第2の画像から取得された検出された光の強度であり、Tiは、UV保護製剤12が塗布されたターゲット10にi回目のストレスを加えた後に取得されたi回目のストレス後の画像から取得された検出された光の強度である。画像内の関心領域内のグレースケール値は、上述のように検出された光の強度として使用されてもよい。
【0053】
検出器6は、好ましくは蛍光20間の青色範囲の光を検出してもよい。たとえば、検出器6が、Rチャネル、Gチャネル、およびBチャネルを有する従来のCMOSカメラまたはCCDカメラである場合、画像は好ましくは、Bチャネルのデータのみを使用することによって取得されてもよい。
図3Aは、ピークが365.9nmであり範囲が290nmから420nmであるVisia UV光の照明スペクトルを示す。
図3Bは、UV光の照射に応じて人間の皮膚から放出されたRチャネル、Gチャネル、およびBチャネルにおける蛍光の強度を示す。Bチャネルにおける強度が最高であることが示されている。
図4は、UV光の照射に応じて人間の皮膚から放出されたRチャネル、Gチャネル、およびBチャネルにおける蛍光の画像を示す。Bチャネルの画像が最大の明るさおよび最高のコントラストを有することが示されている。したがって、Bチャネルにおけるデータが使用されるとき、UVカバレージは高分解能および高精度で判定されてもよい。さらに、検出器6は、Bチャネル波長以外の波長を有する光を減衰させるかまたは遮断するためのフィルタ24を備えてもよい。フィルタ24は、290nmから420nmの間の範囲以外の波長を有する光を減衰させるかまたは遮断してもよい。
【0054】
デバイス1および方法100を
図10に示す従来の方法と比較するために、UVカバレージおよび蛍光の強度の変化を以下の手順によって判定した。
【0055】
第1に、前準備を実行した。被験者はクレンジングオイルおよびフォーミングクレンザーを用いて洗顔した。その後、潤いを与えるために顔全体に1.0mLの化粧水および0.6mLの乳液を塗布した。次いで、22℃および湿度45%で15分間順化させた。
【0056】
次いで、UV保護製剤を塗布する前に測定を実行した。詳細には、デバイス1を使用することによって被験者の顔にUV光を照射し、顔から放出される蛍光に基づいて第1の画像を取得した。さらに、額の左側および右側ならびに左頬および右頬にUV光を照射し、放出される蛍光の強度を従来の方法によって測定した。
【0057】
測定後、150mgの2種類のUV保護製剤(858419 5)および(884474 1)をそれぞれ顔の左側および右側に塗布した。次いで、22℃および湿度45%で15分間順化させた。
【0058】
次いで、UV保護製剤を塗布した後に測定を実行した。具体的には、デバイス1を使用することによって第2の画像を取得した。蛍光の強度も従来の方法によって測定した。
【0059】
次に、被験者は、22℃および湿度45%の環境において30分以内に軽い食事をとった。食事後、オペレータが、第1のストレスとして、2.5gのウォーターミストを20cmの距離から顔全体に3秒間噴霧した。次いで、水分を除去するために顔全体にペーパータオルを当てた。
【0060】
次いで、第1のストレス後の測定を実行した。具体的には、デバイス1を使用することによって第1のストレス後の画像を取得した。蛍光の強度も従来の方法によって測定した。
【0061】
第2のストレスとして、被験者は30~32℃および湿度30%の環境において40分間過ごし、20~30℃および湿度30%の環境においてフィットネスバイクで10分間運動を行った。運動の間、被験者に心拍数を130回/分に維持するよう要求した。次に、汗を除去するために顔全体にペーパータオルを当てた。22℃および湿度45%で30分間順化させた。
【0062】
次いで、第2のストレス後の測定を実行した。具体的には、デバイス1を使用することによって第2のストレス後の画像を取得した。蛍光の強度も従来の方法によって測定した。
【0063】
オペレータは、第3のストレスとして、被験者の顔の各表面を脱脂綿で2回拭いた。
【0064】
次に、第3のストレス後の測定を実行した。具体的には、デバイス1を使用することによって第3のストレス後の画像を取得した。蛍光の強度も従来の方法によって測定した。
【0065】
その後、
図5に示すようにデバイス1を使用することによって額の左側および右側ならびに左頬および右頬に関心領域を設定した。関心領域は、蛍光の強度を従来の方法によって測定した領域が関心領域に含まれるように設定した。画像内の関心領域におけるグレースケール値を平均することによって関心領域のグレースケール値を判定した。
【0066】
次いで、画像の関心領域におけるグレースケール値に基づいて以下の式を使用してi回目のストレスを加えた後のUVカバレージを判定した。
【0067】
【0068】
上式で、T0は、UV保護製剤を被験者の顔に塗布する前に被験者の顔の第1の画像から取得されたグレースケール値であり、Timmは、UV保護製剤を被験者の顔に塗布した後に被験者の顔の第2の画像から取得されたグレースケール値であり、Tiは、UV保護製剤が塗布された被験者の顔にi回目のストレスを加えた後に画像から取得されたグレースケール値である。上述のように、グレースケール値は、被験者の顔から放出され検出された蛍光の強度に相当する。
【0069】
同様に、i回目のストレス後に従来の方法によって取得された蛍光の変化を以下の式によって判定した。
【0070】
【0071】
上式で、Timmは、UV保護製剤を被験者の顔に塗布した後に従来の方法に基づいて測定された被験者の顔からの蛍光の強度であり、Tiは、UV保護製剤が塗布された被験者の顔にi回目のストレスを加えた後に従来の方法に基づいて測定された蛍光の強度である。
【0072】
図6は、本発明の方法によって取得されたUVカバレージを示す。額および頬に塗布された2種類のUV保護製剤(858419 5)および(884474 1)に関してストレスを加えるたびにUVカバレージが低下することがわかる。
【0073】
図7は、比較のために
図10に示す従来の方法によって取得された蛍光の強度の変化を示す。額および頬に塗布された2種類のUV保護製剤(858419 5)および(884474 1)に関してストレスを加えるたびに蛍光の強度が高くなることがわかる。
【0074】
図8は、本発明の方法によって取得されたUVカバレージと従来の方法によって取得された蛍光の強度の変化との間の相関関係を示す。UVカバレージは、蛍光の強度の変化との良好な相関を示し、したがって、UV保護製剤のUV保護効果は、蛍光の強度の変化ではなくUVカバレージを測定することによって評価できることがわかる。従来の方法とは異なり、本発明の方法はターゲットの画像内の複数の部分におけるUVカバレージを同時に取得できるので、ターゲットにおける複数の部分でのUV保護製剤のUV保護効果を同時に評価することができ、UV保護製剤の分布を評価することもできる。
【0075】
さらに、
図9は、2種類のUV保護製剤(858419 5)および(884474 1)について本発明の方法によって取得されたUVカバレージを示す。
図9は、(884474 1)がストレスに対して(858419 5)よりも高い耐性を有することを示す。本発明の方法は、ターゲット上のそれぞれに異なる部分に塗布された複数の種類のUV保護製剤のUVカバレージを評価できるので、それぞれに異なる種類のUV保護製剤を容易にかつ正確に比較することができる。
【0076】
本発明の特定の実施形態について説明したが、当業者には、本発明の技術的な趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更、修正、および改良が可能であることが容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0077】
1 UVカバレージを判定するためのデバイス
2 光源
6 検出器
8 コントローラ
10 ターゲット
12 UV保護製剤
16 光
20 蛍光
22 光源のフィルタ
24 検出器のフィルタ
26 シールド
1006 光センサー
1010 ターゲット
1016 光
1020 蛍光
【外国語明細書】