(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016346
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】熱伝達部材及び冷暖房システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20220114BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
F24F5/00 K
F24F13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112128
(22)【出願日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2020118652
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】598171427
【氏名又は名称】角田 正
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 正
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AA01
3L080AC02
3L080AE05
(57)【要約】
【課題】比較的単純な構成で区画部材へ熱を伝達する熱伝達部材及び冷暖房システムを提供する。
【解決手段】冷暖房対象空間を区画する区画部材に主として気体の熱媒体を介して熱を伝達する熱伝達部材10は、区画部材から離れて配置された板状のベース板12と、区画部材の方に向けてベース板12から突き出た突出部材13とを備える。ベース板12と突出部材13とは一体成形されている。突出部材13は、ベース板12から離れた先端に、筒状部14の内部から外部へ熱媒体が通過する通過孔15と、通過孔15を通過した熱媒体を区画部材の裏面に沿って流れる噴流にする噴流溝16とが形成されている。冷暖房システムは、熱伝達部材10と、熱媒体の温度を調節する温度調節機器とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房又は暖房の対象となる冷暖房対象空間を区画する区画部材に主として気体の熱媒体を介して熱を伝達する熱伝達部材であって、
前記区画部材から離れて配置される板状のベース板と、
前記区画部材の方に向けて前記ベース板から突き出た突出部材と、を備え、
前記ベース板と前記突出部材とが一体成形されており、
前記突出部材は、筒状に形成された筒状部を有すると共に、前記ベース板から離れた先端に、前記筒状部の内部から外部へ前記熱媒体が通過する通過孔と、前記通過孔を通過した前記熱媒体を前記区画部材の裏面に沿って流れる噴流にする噴流溝と、が形成されている、
熱伝達部材。
【請求項2】
前記区画部材が載置される載置片を有する支持脚に取り付けられる支持部材であって、前記載置片を内部に収容するように覆いつつ前記載置片に載置される箱部と、前記箱部の前記載置片に載置された面に対向する開口面の外周から外側に突き出た鍔部と、を有する支持部材を備え、
前記ベース板の一部が前記鍔部に載置されている、
請求項1に記載の熱伝達部材。
【請求項3】
前記ベース板は、基本形状が矩形に形成されていると共に、前記矩形の一辺又は前記矩形の隣り合う2辺に、前記ベース板の厚さの分だけオフセットした重ね部が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の熱伝達部材。
【請求項4】
冷房又は暖房の対象となる冷暖房対象空間を区画する区画部材に対して接触により熱を伝達する熱伝達部材であって、
前記区画部材に接触して配置される板状のベース板と、
前記区画部材から離れる方向に向けて前記ベース板から突き出た突出部材と、を備え、
前記ベース板と前記突出部材とが一体成形されており、
前記突出部材が、気体の熱媒体が保有する熱を採取する採熱フィンとして構成され、
前記ベース板を前記区画部材に押し付けるように前記ベース板の面内を支持する支持板をさらに備える、
熱伝達部材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の熱伝達部材と、
前記熱媒体の温度を調節する温度調節機器と、を備える、
冷暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱伝達部材及び冷暖房システムに関し、特に比較的単純な構成で、冷暖房対象空間を区画する区画部材へ熱を伝達する熱伝達部材及び冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温度が調節された空気を冷暖房対象空間に供給する対流方式の冷暖房では、温度ムラの発生がたびたび生じ得る。このような、対流方式による冷暖房の不都合を解消するものとして、熱輻射によって冷暖房を行う技術がある。熱輻射によって冷暖房を行うシステムは、床面等を形成する区画部材を、冷房時は冷やし暖房時は暖めて、冷却又は加熱した区画部材からの輻射熱により冷暖房室の冷房や暖房を行う。具体的な構成として、区画部材に相当する表層パネルの裏面に、空気を案内する案内筒と、案内筒を通過した空気を表層パネルの裏面に沿って拡散させる拡散ノズルとを設け、空調機等の温調機器で温度調節した空気を案内筒に供給するものがある。このシステムでは、温度調節した空気が表層パネルの裏面に沿って拡散する際に、空気から表層パネルへの熱伝達が行われ、表層パネルが冷却又は加熱されて、この表層パネルから冷熱又は温熱が輻射されることで冷暖房が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムでは、案内筒や拡散ノズルといった部品点数が多く、拡散ノズルの吐出口まわりの形状が複雑で、装置構成が複雑になってしまっていた。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、比較的単純な構成で、冷暖房対象空間を区画する区画部材へ熱を伝達することができる熱伝達部材及びこの熱伝達部材を用いた冷暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る熱伝達部材は、例えば
図2及び
図3に示すように、冷房又は暖房の対象となる冷暖房対象空間Cを区画する区画部材Fに主として気体の熱媒体Aを介して熱を伝達する熱伝達部材10であって、区画部材Fから離れて配置される板状のベース板12と、区画部材Fの方に向けてベース板12から突き出た突出部材13と、を備え、ベース板12と突出部材13とが一体成形されており、突出部材13は、筒状に形成された筒状部14を有すると共に、ベース板12から離れた先端14aに、筒状部14の内部から外部へ熱媒体Aが通過する通過孔15と、通過孔15を通過した熱媒体Aを区画部材Fの裏面に沿って流れる噴流にする噴流溝16と、が形成されている。
【0007】
このように構成すると、ベース板と突出部材とが一体成形されているので、比較的単純な構成で熱媒体が保有する熱を区画部材へ伝達することができ、冷暖房対象空間を輻射で冷房又は暖房することができる。また、熱媒体を噴出させる筒状部がベース板と一体成形されているので、ベース板と区画部材との間の空間の密閉性を高めることができ、ベース板を境として区画部材に近い側の空間と遠い側の空間との間の圧力差を作り出しやすくすることができて、筒状部から流出した熱媒体を好適に拡散させることができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る熱伝達部材は、例えば
図2及び
図4に示すように、上記本発明の第1の態様に係る熱伝達部材10において、区画部材F(例えば
図3(B)参照)が載置される載置片Qを有する支持脚Pに取り付けられる支持部材17であって、載置片Qを内部に収容するように覆いつつ載置片Qに載置される箱部18と、箱部18の載置片Qに載置された面に対向する開口面18hの外周から外側に突き出た鍔部19と、を有する支持部材17を備え、ベース板12の一部が鍔部19に載置されている。
【0009】
このように構成すると、建築の床構成部品である支持脚を利用して簡便に熱伝達部材を設置することができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る熱伝達部材は、例えば
図3(A)及び
図3(B)に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る熱伝達部材において、ベース板12は、基本形状が矩形に形成されていると共に、矩形の一辺又は矩形の隣り合う2辺に、ベース板12の厚さの分だけオフセットした重ね部12rが形成されている。
【0011】
このように構成すると、熱伝達部材を複数敷設する際に、簡便な構成で、ベース板の接続部の密閉性を保つことができる。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第4の態様に係る熱伝達部材は、例えば
図7に示すように、冷房又は暖房の対象となる冷暖房対象空間C(例えば
図3(B)参照)を区画する区画部材F(例えば
図3(B)参照)に対して接触により熱を伝達する熱伝達部材30であって、区画部材Fに接触して配置される板状のベース板32と、区画部材Fから離れる方向に向けてベース板32から突き出た突出部材33と、を備え、ベース板32と突出部材33とが一体成形されており、突出部材33が、気体の熱媒体Aが保有する熱を採取する採熱フィンとして構成され、ベース板32を区画部材Fに押し付けるようにベース板32の面内を支持する支持板37をさらに備える。
【0013】
このように構成すると、ベース板と突出部材とが一体成形されているので、比較的単純な構成で突出部材が採取した熱をベース板を介して区画部材に伝達することができ、支持板によってベース板が区画部材に押し付けられることによって熱媒体が保有する熱を効率よく区画部材に伝達して冷暖房対象空間を輻射で冷房又は暖房することができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る冷暖房システムは、例えば
図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る熱伝達部材10と、熱媒体Aの温度を調節する温度調節機器50と、を備える。
【0015】
このように構成すると、熱媒体が保有する熱を区画部材に伝達し、区画部材から熱輻射が行われることで、冷暖房対象空間の冷房又は暖房を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、比較的単純な構成で熱媒体が保有する熱を区画部材へ伝達することができ、冷暖房対象空間を輻射で冷房又は暖房することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る輻射冷暖房システムの概略構成を示す系統図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る噴流部材の斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る噴流部材を構成する中仕切部材を説明する図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は噴流突部の拡大斜視図である。
【
図4】(A)は本発明の実施の形態に係る噴流部材を構成する支持部材を、支持脚と共に示す斜視図、(B)は支持脚に装着した状態の支持部材の斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る噴流部材の変形例を説明する図であり、(A)は中仕切部材の斜視図、(B)は組み合わせた状態の斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る輻射冷暖房システムの変形例の概略構成を示す系統図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る採熱部材の分解斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る採熱部材の図であり、(A)は平面図、(B)は(A)におけるx-x矢視図、(C)は(A)におけるy-y矢視図である。
【
図9】噴流突起から吐出された空気の流速の分布を示すコンター図である。
【
図10】暖房時の冷暖房室の温度分布を示すコンター図である。
【
図11】冷房時の冷暖房室の温度分布を示すコンター図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る輻射冷暖房システム1を説明する。
図1は、輻射冷暖房システム1の概略構成を示す系統図である。輻射冷暖房システム1は、本発明の実施の形態に係る噴流部材10を複数備えている。複数の噴流部材10は、本実施の形態では、冷房又は暖房(以下「冷暖房」という)の対象となる空間(典型的には冷暖房対象室)を区画する区画部材としての床パネルFの裏側に敷き詰められている。輻射冷暖房システム1は、さらに、気体の熱媒体としての空気Aの温度を調節する温度調節機器としての空調機50を備えている。輻射冷暖房システム1は、複数の噴流部材10を介して、噴流部材10の上に敷設される床パネルFに、空気Aが保有する冷熱又は温熱を伝達させ、床パネルFの輻射熱で冷暖房対象空間の冷暖房を行うシステムである。
【0020】
ここで
図2~
図4を参照して、噴流部材10の構成を説明する。
図2は噴流部材10の斜視図である。
図3(A)は噴流部材10を構成する中仕切部材11の平面図、
図3(B)は中仕切部材11の正面図、
図3(C)は中仕切部材11を構成する噴流突起13の拡大斜視図である。
図4(A)は噴流部材10を構成する支持部材17を、支持脚Pと共に示す斜視図、
図4(B)は支持脚Pに装着した状態の支持部材17の斜視図である。噴流部材10は、床パネルFに空気Aが保有する熱を効率よく伝達するためのものであり、熱伝達部材に相当する。噴流部材10は、主要な部材として、中仕切部材11と、支持部材17とを備えている。以下、主に
図2及び
図3を参照して中仕切部材11の構成を説明し、主に
図2及び
図4を参照して支持部材17の構成を説明する。
【0021】
中仕切部材11は、ベース板12と、噴流突起13とを有している。ベース板12は、平面視における基本形状が矩形の板状の部材である。ここでいう基本形状が矩形とは、矩形を形成する4つの辺に、部分的に切り欠きや出っ張り等があったとしても、全体として矩形と見ることができる形状である。本実施の形態では、矩形のベース板12の四隅に、支持部材17が隣接することになる切欠き12cが形成されている。また、ベース板12は、本実施の形態では、基本形状の矩形の隣り合う2つの辺に重ね部12rが形成されている。重ね部12rは、ベース板12の厚さの分だけ、ベース板12の厚さの方向(ベース板12の面が水平に広がる状態では上方又は下方)にオフセットした部分である。重ね部12rは、噴流部材10を複数配列する際に、隣り合う中仕切部材11が重なる重ね代となる。重ね部12rは、本実施の形態では、噴流突起13が突出する方向と同じ方向にオフセットしている。重ね部12rは、形成される矩形の辺の長さ全体に渡っており、その幅は、概ね5mm~20mmとするのが好ましく、10mm~15mmとするのがより好ましい。ベース板12は、矩形の4つの辺における各辺の縁の部分の適宜の位置に、隣接する中仕切部材11と結合するための締結部材を通す連結孔12hが形成されている。連結孔12hは、典型的には、重ね部12rが形成されている辺及び形成されていない辺の双方に形成されている。連結孔12hに通す締結部材として、リベット、ねじ等を用いることができる。
【0022】
噴流突起13は、ベース板12の面から一方の側に突き出るように設けられており、突出部材に相当する。噴流突起13は、噴流部材10から床パネルFへの伝熱を向上させるために設けられている。噴流突起13は、本実施の形態では、1つのベース板12に4個が設けられている。各噴流突起13は、ベース板12の面を仮想的に縦横で等分して4つの相似の領域に区分したときに、当該4つの領域に1つずつ、典型的には各領域の図心の部分に設けられている。噴流突起13は、筒状に形成された筒状部14を有している。筒状部14は、本実施の形態では、軸線に直交する断面が円形である中空の筒状に形成されているが、軸線に直交する断面形状が、楕円形であってもよく、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形、その他の多角形であってもよい。筒状部14は、筒状の一方の端面に底面開口14hが形成されており、底面開口14hの反対側の端面が先端部14aとなっている。噴流突起13は、底面開口14hの側でベース板12に接続されており、先端部14aの側に床パネルFが配置されるようになっている。底面開口14hは、全体が開口となっており、底面開口14hに対応するベース板12の部分も開口になっている。筒状部14は、底面開口14hの側から先端部14aの側に進むに連れて外径が徐々に小さくなるような、先細りのテーパー状に形成すると、中仕切部材11の複数を運搬する際に重ねることで嵩張らずに効率的な運搬が可能になる。
【0023】
筒状部14の端面に相当する先端部14aは、中心部分に形成された通過孔15を除いて塞がれた状態になっている。通過孔15は、筒状部14の内部と外部とを連絡する孔である。通過孔15は、噴流部材10が輻射冷暖房システム1(
図1参照)に組み込まれて運用されたときに、底面開口14hから筒状部14の内部に入ってきた空気Aを筒状部14の外に流出させる役割を果たす。先端部14aには、半径方向に延びる噴流溝16が形成されている。噴流溝16は、先端部14aを形成する端面から、筒状部14の軸線方向に窪んだ溝である。噴流溝16は、1つの噴流突起13につき、本実施の形態では4つ形成されているが、4つに限らず、3つや5つあるいはその他の複数個が形成されていてもよい。各噴流溝16は、一端が通過孔15に通じており、全体として通過孔15から放射状に延びている。各噴流溝16は、通過孔15の側とは反対側の端部が、筒状部14の外側面に表れている。噴流溝16は、先端部14aに床パネルFが接触するように配置されたときに、噴流突起13と床パネルFとの間に、通過孔15から流出した空気Aの流路を形成する。噴流溝16は、床パネルFと協働して形成される流路を流れる空気Aが噴流となるように、断面の形状及び大きさが決められている。典型的には、噴流溝16を流れる空気Aが概ね3m/s~5m/sの流速となるように、噴流溝16の断面の形状及び大きさを決定するとよい。
【0024】
中仕切部材11は、ベース板12と噴流突起13とが一体成形されている。中仕切部材11は、ベース板12と噴流突起13とを一体成形しやすいように、合成樹脂や金属で形成されているとよい。中仕切部材11を合成樹脂で形成する場合は、樹脂成型によってベース板12と噴流突起13とを一体成形することができる。中仕切部材11を金属で形成する場合は、金属プレスによってベース板12と噴流突起13とを一体成形することができる。ベース板12と噴流突起13とが一体成形されていることで、両部材の接続部に隙間が生じることを防ぐことができ、中仕切部材11の気密性を向上させることができる。
【0025】
支持部材17は、中仕切部材11を支持する部材である。支持部材17は、典型的には、支持脚Pに装着して用いられる。支持脚Pは、床パネルFを支持する目的で製造された部材である。支持脚P及び床パネルFは、典型的には建築工事であって本実施の形態に係る噴流部材10や輻射冷暖房システム1の構成要素ではないが、輻射冷暖房システム1の構成要素としてもよい。支持脚Pは、矩形板状の小片である載置片Qと、丸棒状の部材である脚部Rとを有している。載置片Qは矩形板状の面に床パネルFが載置されるように設計されており、典型的には当該面が水平になるように支持脚Pが基礎床Bに配置される。脚部Rは、載置片Qを基礎床Bから離れた高さに配置する機能を有しており、載置片Qの面に対して垂直に延びるように、載置片Qの図心に取り付けられている。
【0026】
このような支持脚Pに装着される支持部材17は、箱部18と、鍔部19とを有している。箱部18は、載置片Qを内部に収容した状態で載置片Qの上面に載置される箱状の部分である。箱部18は、本実施の形態では基本形状が直方体に形成されており、その6つの面のうちの1つの面が、全体が開口した開口面18hになっている。箱部18を構成する直方体の内部は、中空になっている。直方体における開口面18hに対向する面を、天面18aということとする。天面18aは、直方体の内部における大きさ及び形状が、支持脚Pの載置片Qの面と概ね同じに形成されている。ここでいう概ね同じとは、載置片Qを開口面18hから箱部18に対して出し入れすることを妨げないように、天面18aが載置片Qの面よりもわずかに大きいものを含むことを意図している。天面18aは、載置片Qの面よりも一回り大きくてもよい。天面18aには、図心部分に、載置片Qからわずかに突き出た脚部Rの先端部分を通すことができる挿通孔18rが形成されている。鍔部19は、中仕切部材11のベース板12が載置される部分である。鍔部19は、薄板状に形成されていて、開口面18hの外周から外側に突き出ている。鍔部19は、開口面18hと同一の仮想面上に延びており、天面18aに対して平行になっている。鍔部19(開口面18h)と天面18aとの垂直距離は、典型的には中仕切部材11の筒状部14の高さと同じになっている。鍔部19の幅は、ベース板12を支えることができる範囲で適宜決定することができる。前述したベース板12の四隅に形成された切欠き12cは、ベース板12を鍔部19に載置したときに、箱部18を避けるために形成されたものである。
【0027】
再び主に
図1を参照し、適宜
図2~
図4を参照して、輻射冷暖房システム1の構成を説明する。輻射冷暖房システム1は、上述の噴流部材10の複数が、典型的には建物の基礎床Bに敷き詰められている。基礎床Bは、建物の構造体を含む床であり、典型的にはコンクリートで形成されている。基礎床Bに噴流部材10を敷設するには、まず、適切な間隔に配置された支持脚Pに対して、支持部材17を装着する。支持脚Pに対する支持部材17の装着は、載置片Qを箱部18の内部に収容するように覆いつつ、箱部18の内側の天面18aを載置片Qに載置することで行う。支持脚Pへの支持部材17の装着は、床パネルFが設置される前に行う。次に、中仕切部材11のベース板12を、その四隅が4つの支持部材17で支えられるようにして、支持部材17の鍔部19に載置する。中仕切部材11は、縦横に連ねて、冷暖房室Cの床面全体が覆われるように設置する。既に鍔部19に載置された中仕切部材11に対して、連ねる中仕切部材11を設置する際は、既に載置されているベース板12の重ね部12rが無い辺に、連ねるベース板12の重ね部12rを上から被せるようにして載置する。連ねるベース板12の重ね部12rを載置済のベース板12に合わせることで、中仕切部材11の位置決めを簡便に行うことができると共に、連結部に隙間が生じることを抑制することができる。連なる2つのベース板12が一方の重ね部12rを介して重なったら、両者の連結孔12hに締結部材を通して当該2つのベース板12を連結する。この連結作業を、ベース板12の4つの辺のうち、冷暖房室Cの床面の形成に必要な辺に対して行う。このような中仕切部材11の設置も、床パネルFが設置される前に行う。なお、冷暖房室Cの床下に供給する空気Aの入口となる部分だけは、中仕切部材11を設置しないようにする(
図1に示す例では紙面の左下の部分を参照)。中仕切部材11が載置されない支持脚Pには、支持部材17を装着しなくてもよい。中仕切部材11の設置の完了をもって、噴流部材10の敷設が完了することとなる。このように、あらかじめ一体成形された中仕切部材11を支持部材17に載置することで簡便に噴流部材10を敷設することができ、施工の省力化を図ることができる。次に、複数設置した中仕切部材11全体に対して、外周を囲むように、仕切板55を取り付ける。仕切板55は、典型的には、断面L字状で、ベース板12の一辺に相当する長さを有する、細長い部材である。仕切板55は、断面L字状の一方の面をベース板12に接触させて連結孔12hを通す締結部材で固定し、他方の面がベース板12に対して垂直になるようにして、ベース板12に取り付けられる。仕切板55の、ベース板12に対して垂直に延びる面の最高位置は、支持部材17の天面18aの位置と同じ高さになっている。
【0028】
噴流部材10及び仕切板55の設置が完了したら、典型的には建築工事において、床パネルFの設置が行われる。床パネルFは、支持脚Pに装着された支持部材17の天面18aに載置されることとなる。なお、中仕切部材11が設置されない部分(
図1に示す例では紙面の左下の部分)に設置される床パネルFには、空気Aを導入するための給気口Sが形成される。また、冷暖房室Cの床面全体で見て、給気口Sの対角の位置の床パネルFには、空気Aを床下空間から冷暖房室Cに導く排気口Eが形成される。給気口S及び/又は排気口Eは、設備工事において行われる場合もある。このようにして構成された冷暖房室Cの床下には、
図3(B)に示すように、基礎床Bとベース板12との間の空間(以下「供給空間GS」という。)と、ベース板12と床パネルFとの間の空間(以下「拡散空間GD」という。)と、が形成される。給気口Sが形成された床パネルFの下の空間は、中仕切部材11が設置されていないため供給空間GS及び拡散空間GDが形成されず、また、仕切板55の存在によって拡散空間GDに直接連絡せずに供給空間GSに通ずる空間となる。供給空間GSは、給気口Sから導入された空気Aを、冷暖房室Cの床下全体に供給する空間となる。拡散空間GDは、噴流突起13の筒状部14に形成された噴流溝16から流出した空気Aが拡散する空間となる。拡散空間GDは、上下が床パネルFとベース板12とに挟まれ、外周が仕切板55に囲まれた空間になっている。拡散空間GDの高さは、支持部材17の天面18aと鍔部19との高さ(及び、仕切板55の、ベース板12に対して垂直に延びる面の高さ)に相当する。供給空間GSの高さは、拡散空間GDの高さと同じであることが好ましいが、拡散空間GDよりも高くしてもよく、状況によっては拡散空間GDよりも低くすることもあり得る。なお、本実施の形態では、噴流突起13の先端部14aが、床パネルFの裏面に接している。床パネルFの裏面とは、冷暖房室Cの側とは反対側の面のことである。噴流部材10は、ベース板12と噴流突起13とが一体に形成されているので噴流部材10で区画された供給空間GSと拡散空間GDとは、比較的高い密閉性を有することとなる。
【0029】
空調機50は、コイル51と、ファン52とを有している。コイル51は、空調機50に導入された空気Aを冷却又は加熱するものである。コイル51は、熱源機(不図示)で温度が調節された冷水又は温水を内部に流すチューブを有している。コイル51のチューブには、多数のフィンが設けられている。コイル51は、多数のフィンの間に空気Aを通過させて、冷水又は温水と空気Aとの間で熱交換させることにより、冷水又は温水の熱を空気Aに伝達させるように構成されている。ファン52は、コイル51で温度が調節された空気Aを給気口Sに向けて圧送するものである。なお、空調機50は、空気Aの温度を調節することができれば足り、空気Aの湿度を調節するための構成は有しなくてよい。しかしながら、空調機50から供給された空気Aに含まれる水分が結露するおそれがある場合は、結露を発生させないようにするため、空調機50が空気Aの湿度を調節するための構成を有することが好ましい。空調機50の吐出側と床パネルFの一角に形成された給気口Sとは、給気ダクト58で接続されている。空調機50の吸込側は、本実施の形態では開放されていて周囲の空気を吸い込むようになっているが、ダクト(不図示)を介して特定の場所の空気を取り入れるように構成されていてもよい。空調機50の発停あるいは風量や設定温度の調節は、係員によって手動で行われてもよく、制御装置(不図示)を介して行われてもよい。
【0030】
引き続き
図1乃至
図4を参照して、輻射冷暖房システム1の作用を説明する。噴流部材10の作用は、輻射冷暖房システム1の作用の一環として説明する。輻射冷暖房システム1を作動させる際、まず、空調機50を起動する。すると、空気Aが空調機50に導入される。空調機50に導入された空気Aは、コイル51を通過する際、冷房時は冷やされ、暖房時は温められる。コイル51を通過して温度が調節された空気Aは、ファン52によって、空調機50から吐出される。空調機50から吐出された空気Aは、給気ダクト58を流れる。給気ダクト58を流れる空気Aは、給気口Sを介して、給気口Sが形成された床パネルFの裏側の空間に流入する。床パネルFの裏側の空間に流入した空気Aは、当該空間に直接連絡している供給空間GSの全体に広がって行く。
【0031】
供給空間GSの全体に空気Aが広がることで、供給空間GSの方が拡散空間GDよりも圧力が高くなる。輻射冷暖房システム1は、ベース板12と噴流突起13とが一体成形されているため、供給空間GSと拡散空間GDとの間の密閉性が比較的高く、供給空間GSと拡散空間GDとの圧力差が形成されやすくなっている。供給空間GSが拡散空間GDよりも圧力が高くなると、供給空間GSの空気Aは、拡散空間GDに向けて、噴流突起13の筒状部14の内部を通過して、通過孔15を通り、供給空間GSから流出する。通過孔15を通った空気Aは、床パネルFの裏面に衝突して向きを変え、通過孔15から放射状に延びる複数の噴流溝16に分流し、噴流溝16内を流れて拡散空間GDに至る。このとき、噴流溝16を流れる空気Aは、噴流の状態になり、噴流溝16から流出してもしばらく床パネルFの裏面に沿って流れる。このように、噴流となった空気Aが、床パネルFの裏面に沿って流れることで、床パネルFの裏面に沿って存在する境膜が破壊され、空気Aが保有する冷熱又は温熱が効率よく床パネルFに伝達される。なお、床パネルFへの熱伝達は、主として噴流溝16から噴出される空気Aから行われるが、本実施の形態のように噴流突起13が床パネルFの裏面に接している場合は、当該接触による噴流突起13(噴流部材10)から床パネルFへの熱伝達も生じ得る。
【0032】
主として空気Aからの熱伝達により冷やされ又は温められた床パネルFは、表面から冷熱又は温熱を輻射して、床パネルFの表面に面した冷暖房室Cの冷房又は暖房を行う。なお、冷房時は、冷房対象空間に存在する物体の熱が床パネルFに吸収されることで納涼感を得られるのであるが、本明細書では、便宜上、床パネルFから冷熱が輻射されると表現する。輻射冷暖房システム1では、床パネルFを冷却又は加熱する熱媒体が空気Aであるので、冷水又は温水を熱媒体とする場合に比べて、結露の発生を抑制することができ、漏水を回避することができる。仮に、熱媒体を冷水として輻射冷房を行う場合、床面等の輻射面の結露を防止するために冷水の温度を23℃以上(露点より高い温度)とすることが考えられるが、23℃一定の冷水を流した場合、負荷の変動があったときに迅速に追従することが困難となる。また、輻射冷暖房システム1では、床パネルFを冷却又は加熱し、冷却又は加熱した床パネルFからの熱輻射によって冷暖房を行うので、大空間においても床上3m程度までの作業領域を温度調節する成層空調を実現することができる。仮に、温度調節した空気を冷暖房室Cに供給する対流方式の空調を行う場合は、上部に高温の空気が対流しやすくなり、作業領域の暖房を効果的に行うことが困難であるが、輻射冷暖房システム1では、作業領域の冷暖房を効果的に行うことができる。
【0033】
拡散空間GDに流入した空気Aは、排気口Eに向かって流れる。排気口Eに到達した空気Aは、排気口Eを介して冷暖房室Cに流入し、冷暖房室C内の冷暖房に寄与する。冷暖房室Cに流入した空気Aは、ドアガラリ(不図示)等の隙間を介して冷暖房室Cから流出する。冷暖房室Cから空気Aが流出した分、空調機50で温度が調節された空気Aが給気口Sから床パネルFの裏側の空間に流入し、以降、上述の作用を繰り返す。
【0034】
以上で説明したように、本実施の形態に係る噴流部材10によれば、比較的単純な構成で床パネルFに熱を伝達することができ、冷暖房室Cを輻射で冷房又は暖房することができる。また、空気Aを噴流として流出させる噴流突起13がベース板12と一体成形されているので、供給空間GSと拡散空間GDとの間の密閉性を高めることができ、供給空間GSと拡散空間GDとの間の圧力差を作り出しやすくすることができて、噴流突起13から流出した空気Aを好適に拡散させることができる。
【0035】
次に
図5を参照して、本発明の実施の形態の変形例に係る噴流部材10Aを説明する。
図5(A)は噴流部材10Aを構成する中仕切部材11Aの斜視図、
図5(B)は2つの噴流部材10Aを組み合わせた状態の斜視図である。噴流部材10Aは、支持部材17については噴流部材10(
図2参照)が備えていたものと同じであるが、中仕切部材11Aが噴流部材10(
図2参照)の中仕切部材11(
図2参照)と異なっている。さらに、中仕切部材11Aは、噴流突起13については中仕切部材11(
図2参照)が有していたものと同じであるが、ベース板12Aが中仕切部材11(
図2参照)のベース板12(
図2参照)と異なっている。ベース板12Aは、平面視における基本形状が矩形の板状の部材であることはベース板12(
図2参照)と同じであるが、切欠き12cの位置、重ね部12rの数、端辺壁12eを有する点が、ベース板12(
図2参照)と異なっている。
【0036】
ベース板12Aは、切欠き12cが、矩形の四隅ではなく、対向する一対の辺のそれぞれの中点に、合計2個形成されている。各切欠き12cの周囲には、連結孔12hが形成されている。連結孔12hは、典型的には、1つの切欠き12cにつき、切欠き12cを囲む3つの辺のうちの1辺あたりに1つが、切欠き12cの近傍に形成されている。また、ベース板12Aは、重ね部12rが、隣り合う2つの辺ではなく、切欠き12cが形成された一対の辺のうちの一方の辺に形成されている。このように、ベース板12Aでは、重ね部12rが1つの辺に形成されている。ベース板12Aが有する端辺壁12eは、切欠き12cが形成された一対の辺とは別の、もう一組の対向する一対の辺に設けられている。端辺壁12eは、それぞれ、噴流突起13が突き出る方向へ、ベース板12Aの主要な面に対して直角に延びている。中仕切部材11Aの、上記以外の構成は、中仕切部材11(
図2参照)と同様である。
【0037】
上述のように構成された噴流部材10Aを複数配列する際は、以下の要領で行うとよい。
図5(B)に示すように、1つの中仕切部材11Aは、2箇所の切欠き12cの部分を、支持部材17の鍔部19に載置する。この支持部材17に載置した中仕切部材11Aの隣に、別の中仕切部材11Aを、隣り合う中仕切部材11Aの端辺壁12e同士を突き合わせるようにして、同じように鍔部19に載置する。このとき、重ね部12rが揃うように方向を合わせる。突き合わせる端辺壁12eの間には、支持片27を挿入する。支持片27は、板状の部材であり、長さはベース板12Aの端辺壁12eが形成された辺と同じ長さに形成され、高さ(幅)は基礎床B(
図3(B)参照)に接触する寸法に形成されている。なお、支持片27は、支持脚Pに装着された支持部材17を配列した後、中仕切部材11Aを設置する前に、配置してもよい。この場合は、先に配列した支持部材17及び支持片27に対して、中仕切部材11Aを合わせながら配置することになる。支持片27を端辺壁12eで挟んだ状態で、中仕切部材11Aを複数配列したら、支持片27を挟んだ端辺壁12eを、連結クリップ23で挟み込む。連結クリップ23は、隣り合う端辺壁12eを挟み込むクリップであり、長さはベース板12Aの端辺壁12eが形成された辺と同じ長さに形成され、高さ(幅)は支持部材17の天面18aと鍔部19との距離に等しい。連結クリップ23は、端辺壁12eに装着されて、後に床パネルFが設置されると、床パネルFの裏面に接することになる。噴流部材10Aは、支持片27が設けられることにより、端辺壁12eを介して隣接する噴流部材10Aに対して、供給空間GS(
図3(B)参照)が区画されることになる。また、噴流部材10Aは、連結クリップ23が設けられることにより、端辺壁12eを介して隣接する噴流部材10Aに対して、拡散空間GD(
図3(B)参照)が区画されることになる。なお、供給空間GS及び拡散空間GDは、重ね部12rを介して隣接する方向には、区画されておらず、連絡している。
【0038】
図6に、噴流部材10Aと空調機50とを備える輻射冷暖房システム1Aの概略構成を示す。
図6では、床パネルFの裏側の構成の把握を容易にするために、本来存在するはずの床パネルFを適宜省略している。なお、以下の説明において、複数配列された中仕切部材11Aの、重ね部12rを介して隣接する方向に連なる集合を「列」といい、端辺壁12eを介して隣接する方向に連なる集合を「行」ということとする。輻射冷暖房システム1Aは、支持片27及び連結クリップ23によって、中仕切部材11Aが配置された列ごとに、空気Aの流路が区画されている。輻射冷暖房システム1Aでは、給気口Sの下方の空間及びこの空間に連なる行全体(
図6の紙面における最も下の行)には、中仕切部材11Aが配置されていない(この空間の行を「給気行Ls」ということとする)。そして、給気行Lsに隣接する中仕切部材11Aの辺には、仕切板55が設けられており、給気行Lsと拡散空間GDとが直接連絡しないようにしている。他方、給気口Sから最も遠い行全体(
図6の紙面における最も上の行で、「収集行Lc」ということとする)では、連結クリップ23に代えて、高さが抑えられた連結クリップ23Aが用いられている。連結クリップ23Aは、高さが低くなっている点を除き、連結クリップ23と同様に構成されている。中仕切部材11Aに装着された連結クリップ23Aは、床パネルFが設置された際に、床パネルFに接触しない。このため、収集行Lcにおける拡散空間GDでは、隣接する列同士で空気Aが流通することができるように構成されている。輻射冷暖房システム1Aの上記以外の構成は、輻射冷暖房システム1(
図1参照)と同様である。
【0039】
上述のように構成された輻射冷暖房システム1Aでは、空調機50が起動すると、温度調節された空気Aが、給気ダクト58を介して、給気口Sの下方の床パネルFの裏側の空間に流入する。その後、空気Aは、給気口Sから最も遠い列に向けて、給気行Lsを流れる。空気Aは、給気行Lsを流れながら、新たな列に出会う度に、その列の供給空間GSに分流する。このとき、仕切板55があるため、給気行Lsから拡散空間GDに空気Aが直接流入することはない。各列に流入した空気Aは、それぞれ、収集行Lcに向けて供給空間GSを流れる。各列の供給空間GSを流れる空気Aは、各中仕切部材11Aの下方を通過する度に、噴流突起13の筒状部14の内部に流入し、通過孔15を介して拡散空間GDに放出される。このとき、空気Aが、噴流として噴流突起13から流出し、床パネルFを冷却又は加熱して、冷やされ又は温められた床パネルFからの輻射熱により冷暖房室Cの冷暖房を行うことは、輻射冷暖房システム1(
図1)と同様である。噴流突起13から拡散空間GDに放出された空気Aは、収集行Lcに向けて、各列の拡散空間GDを流れる。各列の拡散空間GDを流れる空気Aは、収集行Lcに至ると、隣接する列との境界に存在する連結クリップ23Aの高さが低く、隣の列に移動することができるため、排気口Eに向けて収集行Lcを流れる。排気口Eに到達した空気Aは、排気口Eを介して冷暖房室Cに流入し、以降、輻射冷暖房システム1(
図1)と同様に移動する。輻射冷暖房システム1Aにおいても、比較的単純な構成の噴流部材10Aによって床パネルFに熱を伝達することができる。また、密閉性が高められた供給空間GSと拡散空間GDとの間の圧力差によって、噴流突起13から流出した空気Aを好適に拡散させることができる。
【0040】
次に
図7及び
図8を参照して、本発明の実施の形態に係る採熱部材30を説明する。
図7は、採熱部材30の分解斜視図である。
図8(A)は採熱部材30の平面図、
図8(B)は
図8(A)におけるx-x矢視図、
図8(C)は
図8(A)におけるy-y矢視図である。採熱部材30は、空気Aが保有する熱を床パネルFに伝達する部材であり、熱伝達部材の一形態である。採熱部材30は、ベース板32と、採熱フィン33と、支持板37とを備えている。なお、
図7ではベース板32と支持板37とを分離して示しており、
図8(C)では、便宜上、支持板37を省略している。採熱部材30は、ベース板32が床パネルFに接触する態様で用いられる点で、ベース板12(
図3参照)と床パネルFとの間に空間が形成される噴流部材10(
図2、
図3参照)と異なっている。
【0041】
ベース板32は、平面視における基本形状が矩形の板状の部材である。ベース板32は、矩形の四隅に切欠き32cが形成されている。切欠き32cは、支持脚Pの脚部Rの、載置片Qから上方にやや突き出た部分が嵌まる部分である。また、ベース板32は、矩形を形作る2組の対向する一対の辺のうちの1組の対向する一対の辺について、各辺の中点同士を結ぶように直線状に延びる突起部32pが形成されている。突起部32pは、断面形状が、床パネルFから離れる方向に凸の鋭角に形成されている。別の見方をすれば、突起部32pは、x-x矢視(
図8(B)参照)においてV字状に形成されている。突起部32pは、ベース板32を折り曲げ加工して形成されており、ベース板32の一部分である。
【0042】
採熱フィン33は、ベース板32から基礎床Bの方に突き出た部材であり、突出部材の一形態である。採熱フィン33は、空気Aが保有する熱を効率よく採取するために設けられている。採熱フィン33は、典型的には、ベース板32を構成する板状部材の内部を、細長い矩形に罫書いたうちの一対の長辺を含む3辺を切断しつつ残りの短辺で折り曲げることによって形成されている。このように、採熱フィン33がベース板32から切り出して形成されていることにより、ベース板32と採熱フィン33とは一体成形されている。採熱フィン33は、ベース板32に接続している辺が、突起部32pが延びる方向と同じ方向に延びるように形成されている。採熱フィン33は、1つのベース板32に、適宜間隔をあけて複数が設けられている。
【0043】
支持板37は、ベース板32を、支持しながら床パネルFに押し付ける部材である。支持板37は、突起部32pと同じ長さの辺を有する矩形の板状部材を、以下のように加工して形成されている。まず、矩形の板状部材の、突起部32pと同じ長さの一対の辺に、所定の間隔で複数の切り込みを入れる。切り込みを入れた両辺について、隣接する切り込みの間の小片を互い違いに曲げる。小片を曲げる角度は、一方の辺については板の面に直角にして、こちら側を基礎床Bの上に立てるようにする。他方の辺については、互い違いに開いた小片の間の角度を、突起部32pのV字の角度よりも小さい角度にする(この角度に形成された小片群を「鋭角小片群」という)。鋭角小片群に突起部32pを受け入れると、鋭角小片群よりも大きい角度の突起部32pに広げられた鋭角小片群が閉じようとする力で(もとの角度に戻ろうとする力で)、ベース板32は、持ち上げられ、床パネルFに押し付けられて密着することとなる。
【0044】
上述のように構成された採熱部材30は、輻射冷暖房システム1(
図1参照)及び輻射冷暖房システム1A(
図6参照)における中仕切部材11、11Aのように、複数配列され、さらに空調機50(
図1、
図6参照)を備えることで、輻射冷暖房システムを構築することができる。採熱部材30を複数配列する際は、中仕切部材11(
図1参照)のように、矩形のベース板32の四隅を支持脚Pに載置する。このとき、隣接する採熱部材30の間で突起部32pが連なるように配置する。採熱部材30は、支持板37を備えているので、複数配列すると、輻射冷暖房システム1A(
図6参照)と同様に、支持板37によって空気Aの流路が複数の列に区画されることになる。
【0045】
採熱部材30を備える輻射冷暖房システムでは、輻射冷暖房システム1A(
図6参照)と同様に、空調機50で温度が調節された空気Aが給気口Sから床パネルFの裏側の空間に流入すると、給気口Sから最も遠い列に向けて、給気行Lsを流れる。空気Aは、給気行Lsを流れながら、新たな列に出会う度に、その列のベース板32の下方の空間に分流する。各列に流入した空気Aは、それぞれ、収集行Lc(
図6参照)に向けて、ベース板32の下方の空間を流れる。ベース板32の下方の空間を流れる空気Aは、ベース板32に接すると共に採熱フィン33にも接触する。このとき、採熱部材30は、空気Aが保有する冷熱又は温熱を、ベース板32が採取すると共に、各採熱フィン33も採取する。採熱フィン33が複数設けられていることにより、採熱部材30と空気Aとの接触面積を増やすことができ、効率よく空気Aの冷熱又は温熱を採取することができる。採熱フィン33はベース板32と一体に成形されているので、採熱フィン33で採取された熱はベース板32に伝導する。そして、ベース板32の熱が床パネルFに伝達される。このとき、ベース板32は支持板37によって床パネルFに押し付けられているので、ベース板32から床パネルFへの熱伝達が効率よく行われる。ベース板32からの熱伝達により冷やされ又は温められた床パネルFは、表面から冷熱又は温熱を輻射して、冷暖房室Cの冷房又は暖房を行う。床パネルFの裏側で各列の末端の収集行Lcに到達した空気Aは、排気口E(
図6参照)を介して冷暖房室Cに流入し、以降、輻射冷暖房システム1(
図1)と同様に移動する。
【0046】
以上の説明では、ベース板12、12Aに重ね部12rが形成されているとしたが、重ね部12rが形成されていなくてもよい。しかしながら、重ね部12rが形成されていると、複数の中仕切部材11、11Aを配列する際に、隣り合う中仕切部材11、11Aの位置関係の調節が簡便になると共に、両者の繋ぎ目部分の密封性を向上することができるため、好ましい。
【0047】
以上の説明では、温調機器が空調機50であるとしたが、ファンコイルユニットやパッケージエアコンやルームエアコン等の、気体の温度を変化させることができる機器であってもよい。
【実施例0048】
以下、
図1に示す輻射冷暖房システム1の実施例を示す。輻射冷暖房システム1は、前述のように、
図2に示す噴流部材10を備えているシステムである。本実施例では、それぞれの噴流突起13に流入する空気Aの流量が概ね0.026m
3/minとなるように、温度が調節された空気Aが空調機50から供給されるようにした。なお、本実施例では、1つの噴流部材10につき、矩形のベース板12に一体に設けられている4つの噴流突起13のうち、対角にある2つの噴流突起13は、噴流溝16がベース板12の外周辺に平行に延びる向きで配置されている。残りの2つの噴流突起13は、噴流溝16がベース板12の外周辺に対して概ね30°~45°傾いて延びる向きで配置されている。また、冷暖房室Cの床面は6m×4mである。
【0049】
図9に、各噴流突起13から吐出された空気Aの様子を示す。
図9は、噴流突起13から吐出された空気Aの流速の分布をコンター図として示している。各噴流突起13において、通過孔15から噴流溝16に流入した空気Aは、流速を上げ、噴流溝16の末端から吐出する際は約5m/sとなっている。噴流溝16から流出した空気Aは、噴流溝16の延長線上を減衰しながら進み、ほとんどが、平面視におけるベース板12の外周の位置(床パネルFの裏面におけるベース板12の外周に相当する位置)に到達している。ベース板12の外周に相当する位置に到達した空気Aの流速の分布は、概ね1.0~1.5m/sとなっている。
図9に示すように、各噴流突起13から吐出された空気Aは、平面視におけるベース板12の広い範囲に好適に拡散している。
【0050】
図10に、暖房時の冷暖房室Cの温度測定結果を示す。測定時、外気温度は3.6℃であった。冷暖房室Cの設定温度は24℃とした。
図10に示すように、床面に近接した層では25℃~25.5℃で、設定温度より若干高くなっているが、冷暖房室C全体は概ね23.5℃~24.5℃であり、ほぼ設定温度となっている。上記の結果は、床面の温度については、ISO7730で推奨されている、通常の室内の床表面温度19℃~26℃の範囲内にある。室内上下温度差については、ISO7730で推奨されている、くるぶし(床上0.1m)と頭(床上1.1m)との温度差3℃以内を満たしている。
【0051】
図11に、冷房時の冷暖房室Cの温度測定結果を示す。測定時、外気温度は31.4℃であった。冷暖房室Cの設定温度は25℃とした。
図11に示すように、床面に近接した層では23.5℃~24.5℃で、設定温度より若干低くなっているが、冷暖房室C全体(特に居住域である床面から2m程度)は概ね24.5℃~25.5℃であり、ほぼ設定温度となっている。上記の結果は、床面の温度については、ISO7730で推奨されている、通常の室内の床表面温度19℃~26℃の範囲内にある。室内上下温度差については、ISO7730で推奨されている、くるぶし(床上0.1m)と頭(床上1.1m)との温度差3℃以内を満たしている。
【0052】
以上で示したように、輻射冷暖房システム1の実施例では、冷暖房室Cの温度ムラがなく、ISO7730の推奨環境にある、快適な空間を提供することができた。また、暖房時に設定温度24℃で床面温度25℃前後が得られ、冷房時に設定温度25℃で床面温度24℃前後が得られ、熱媒体として温水や冷水を用いる方式に比べて床面の温度制御が容易であった。