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  • 特開-紙製シートトレー 図1
  • 特開-紙製シートトレー 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163460
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】紙製シートトレー
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/12 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
B65D77/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068396
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三木 祐二
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067BA02A
3E067BA10A
3E067BB01A
3E067BC02A
3E067CA02
3E067CA03
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB27
3E067FA01
(57)【要約】
【課題】透気性を有した紙製シートトレーにおいて、フランジ部にのみヒートシール材を塗布してヒートシール材の使用量を削減することが可能であって、かつトレーの成形に起因するフランジ部のシワの発生がない、紙製シートトレーの提供を課題とする。
【解決手段】 紙を基材として成形された、紙製シートトレーであって、内容物を収納可能に全体が凹に成形されたトレー部分と、その周縁を取り囲むフランジ部分からなり、紙基材は、ISO透気度が1.3μm/Pa・s以上であり、かつ紙の流れ方向の伸び率が5%~25%、紙の幅方向の伸び率が5%~25%であり、フランジ部には、蓋材をシールして紙製シートトレーを密閉可能とする、ヒートシール材がフランジの形状に合わせてパターン塗布されていることを特徴とする、紙製シートトレーである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を基材として成形された、紙製シートトレーであって、
内容物を収納可能に全体が凹に成形されたトレー部分と、その周縁を取り囲むフランジ部分からなり、
紙基材は、ISO透気度が1.3μm/Pa・s以上であり、かつ紙の流れ方向の伸び率が6%~25%、紙の幅方向の伸び率が6%~25%であり、
フランジ部には、蓋材をシールして紙製シートトレーを密閉可能とする、ヒートシール材がフランジの形状に合わせてパターン塗布されていることを特徴とする、紙製シートトレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製シートトレーに係るものである。特に紙製シートトレーのフランジ部分にヒートシール可能な層を設けて、蓋材で覆ってシールして密閉可能とした、紙製シートトレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装容器としては、古くからガラスや陶器製、あるいは金属製のものが使われてきた。1960年代以降になって、紙製の包装容器が商品化され、様々な用途に展開されてスーパーやコンビニエンスストアの商品棚をにぎわしている。
【0003】
紙容器が広範に用いられるようになった背景には、紙容器にはたとえば下記のような特徴、利便性があることがあげられる。
・軽量であり、折りたたみも可能で輸送コストが少ない。
・表面に各種印刷が可能であり、意匠性向上、内容液に関する情報表示が容易である。
・耐衝撃性を有し、持ち運びにも便利である。
・植物もしくは木材由来の素材であり、廃棄に際して減容性、焼却性に優れ、環境適合型である。
【0004】
一方で、紙容器として、要求品質も内容液や用途に対応して多岐にわたっており、たとえば、用途に合わせて下記のような機能が求められている。
・内容物が液体の場合には、液漏れがしない。
・微生物からの保護、密閉性に優れる。
・保存性の向上を目的とした、遮光性、ガスバリア性を有する。
・内容物の外力からの保護を目的とした、剛性や強靭性を有する。
などである。
【0005】
また紙容器は、スーパーマーケットや、コンビニエンスストアなどの小売りの場面で、例えば食品の包装材料として紙製シートトレーなどとしても使用されている。その形態はさまざまであるが、紙を基材としていることから、上記のように価格面などのメリットのほか、環境適合型の包装材料として、広く使われている。
【0006】
また、内容物によってさまざまな形態が可能であり、紙製シートトレーを例にとればブランクスとしてトレー形状に成形し、蓋材をフランジにシールして紙製シートトレー全体を覆って密閉することも行われている。特許文献1には耐水耐油耐熱性紙容器の製造方法としてカップ形状やドンブリ形状などの容器の例が挙げられている。
【0007】
一般に、紙製シートトレー形状の容器を成形しようとする場合には、オス金型とメス金型を対にして用いて、深絞り成形を行う。この際、基材の周縁部の抑えは弱く、基材の引き込みを用いて成形が行われる。その結果、紙基材の引き込みによるフランジ部のしわが発生する恐れがある。
【0008】
また蓋材とのシールに際しては、フランジ部に位置精度を保つことに困難が生じる恐れもあって、蓋材をシールするためのヒートシール材を、広い面積で設けておく必要があり、加えてヒートシール不良が発生する恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平6-2373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、透気性を有した紙製シートトレーにおいて、フランジ部にのみヒートシール材を塗布してヒートシール材の使用量を削減することが可能であって、かつトレーの成形に起因するフランジ部のシワの発生がない、紙製シートトレーの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
紙を基材として成形された、紙製シートトレーであって、
内容物を収納可能に全体が凹に成形されたトレー部分と、その周縁を取り囲むフランジ部分からなり、
紙基材は、ISO透気度が1.3μm/Pa・s以上であり、かつ紙の流れ方向の伸び率が6%~25%、紙の幅方向の伸び率が6%~25%であり、
フランジ部には、蓋材をシールして紙製シートトレーを密閉可能とする、ヒートシール材がフランジの形状に合わせてパターン塗布されていることを特徴とする、紙製シートトレーである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透気性を有した紙製シートトレーにおいて、フランジ部にのみヒートシール材を塗布してヒートシール材の使用量を削減することが可能であって、かつトレーの成形に起因するフランジ部のシワの発生がない、紙製シートトレーの提供が可能である。
【0013】
特に紙基材は、ISO透気度が1.3μm/Pa・s以上であり、かつ紙の流れ方向の伸び率が6%~25%、紙の幅方向の伸び率が6%~25%であることによって、トレーの成形工程において、伸び率がこの範囲であることによって、紙基材は破断することなく、また透気性を有する成形容器とすることが可能である。
【0014】
また、フランジ部にのみヒートシール材を塗布することによって、蓋材によるトレーの被覆、密閉を損なうことなく、紙製シートトレーとしての透気性を有する成形容器とすることが可能である。
【0015】
加えて、フランジ部にのみヒートシール材を塗布することによって、ヒートシール材の使用量を大幅に削減することが可能あり、一般にヒートシール材はプラスチック材料であることから、環境適合型の紙製シートトレーとすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る紙製シートトレーの一実施態様を説明するための、斜視模式図である。
図2図2は、本発明に係る紙製シートトレーの成形中の状態を説明するための、断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図1および図2を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例によってのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0018】
図1は、本発明に係る紙製シートトレーの成形中の状態を説明するための、断面模式図である。
【0019】
本発明は、紙を基材として成形された紙製シートトレー(10)である。すなわち、内容物を収納可能に全体が凹に成形されたトレー部分(2)と、その周縁を取り囲むフランジ部分(1)からなり、フランジ部分(1)にヒートシール材の層が設けられて、このヒートシール材と、例えば蓋材(3)をヒートシールすることによって、被覆、密閉することが可能な紙製シートトレー(10)である。
【0020】
図2は、本発明に係る紙製シートトレーの成形中の状態を説明するための、断面模式図である。
【0021】
本発明において使用される紙基材は、ISO透気度が1.3μm/Pa・s以上であり、かつ紙の流れ方向の伸び率が6%~25%、紙の幅方向の伸び率が6%~25%であることを特徴とする。
【0022】
なお、ISO透気度は、JIS P 8117(2009)の「紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)ガーレー法」に準じて測定した数値である。
【0023】
また、紙基材の伸び率は、JIS P 8132の「紙及び板紙の伸び試験法」に準じて測定した数値である。ここでいう紙の流れ方向は、抄紙機で紙を抄紙する際に紙が進んでいく方向を指し、紙の幅方向は、それとは直角の方向を指す。
【0024】
これによって紙製シートトレー(10)は、透気性を有した紙製シートトレー(10)とすることができる。また、紙の流れ方向の伸び率が6%~25%、紙の幅方向の伸び率が6%~25%であることによって、トレーの成形工程において、紙基材は破断することなく、また紙製シートトレー(10)の成形に起因するフランジ部(1)のシワの発生がない、紙製シートトレー(10)とすることが可能である。
【0025】
フランジ部(1)には、蓋材をシールして紙製シートトレーを密閉可能とするヒートシール材が、フランジ部(1)の形状にパターン塗布されていることによって、プラスチック材料からなるヒートシール材の使用量を大幅に少なくすることが可能である。すなわち、本発明による紙製シートトレー(10)は、環境適合型の紙製シートトレー(10)として位置づけられるものである。
【0026】
図2に示すように、本発明による紙製シートトレー(10)はその成形工程において、基材となる紙基材の伸びによって、成形が行われる。この伸びは図2中、紙製シートトレー(10)の下部に示される2本の矢印であらわされる。
【0027】
すなわちフランジ部分(1)は上下から挟み込まれて固定され、さらに図2にはオス金型(20)しか示されていないが、上方からのオス金型(20)、下方からのメス金型を対にして成形が行われる。
【0028】
このとき、フランジ部分(1)からの紙基材の引き込みはなく、紙基材の伸びによって成形が行われる。その結果、紙製シートトレー(10)の成形に起因するフランジ部(1)のシワの発生がない紙製シートトレー(10)の実現が可能となり、またフランジ部分(1)は、紙基材の引き込みによる影響を受けることがないために、ヒートシール材の塗工はフランジ部(1)の形状に合わせて形成すればよく、パターン塗工が精度よく可能となる。
【0029】
ヒートシール材の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を使用することができる。
【0030】
また、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0031】
ヒートシール材のフランジ部(1)に合わせたパターン塗工は、特段の制約を設けるものではなく、例えば既知の印刷手法の中から選択して用いることができる。
【0032】
なお、紙製シートトレー(10)の成型方法には、他に真空成型を用いる方法もあるが、透気度を有する基材への適用は不適当である。
【0033】
このようにして、本発明によれば透気性を有した紙製シートトレー(10)において、フランジ部(1)にのみヒートシール材を塗布してヒートシール材の使用量を削減することが可能であって、かつト紙製シートレー(10)の成形に起因するフランジ部(1)のシワの発生がない、紙製シートトレー(10)の提供が可能である。
【実施例0034】
以下本発明を、実施例および比較例によって、更に具体的な説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例によってのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0035】
紙製シートトレーのブランクスを作成し、深絞り成形機でフランジ部分を固定してトレーに成型し、シワの発生を観察、評価した。
判定基準は、フランジ部分のシワの発生が見られないものを合格判定、シワの発生が見られたものを不合格判定とした。
【0036】
<実施例1>
紙基材には、下記のものを用いた。
流れ方向伸び率(%)/幅方向伸び率(%)=15/9
これは本発明による紙基材の規定の範囲内である。
成形を行った結果、フランジ部にはシワの発生は見られなかった。
【0037】
<比較例1>
紙基材には、下記のものを用いた。
流れ方向伸び率(%)/幅方向伸び率(%)=5/5
これは本発明による紙基材の規定の範囲を逸脱するものである。
成形を行った結果、フランジ部にシワの発生が見られた。
【0038】
評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示す結果から明らかなように、本発明による規定の範囲内の紙基材を用いて成形
を行った実施例1においては、トレー成形によるフランジ部のシワの発生が見られなかったのに対し、本発明による規定の範囲を逸脱する紙基材を用いて成形を行った比較例1においては、トレー成形によるフランジ部のシワの発生が見られた。したがって、本発明によるところの実施例1は合格判定である。
【0041】
このように、本発明によれば、透気性を有した紙製シートトレーにおいて、フランジ部にのみヒートシール材を塗布してヒートシール材の使用量を削減することが可能であって、かつトレーの成形に起因するフランジ部のシワの発生がない、紙製シートトレーの提供が可能であることを検証することができた。
【符号の説明】
【0042】
1・・・フランジ部
2・・・トレー部
3・・・蓋材
10・・・紙製シートトレー
20・・・オス金型
図1
図2