(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163463
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】コミュニケーションロボット
(51)【国際特許分類】
G10L 15/22 20060101AFI20221019BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20221019BHJP
G10L 15/10 20060101ALI20221019BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20221019BHJP
G10L 13/00 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
G10L15/22 300Z
B25J13/00 Z
G10L15/10 500Z
G10L15/00 200H
G10L13/00 100M
G10L13/00 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068401
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】大橋 朋佳
(72)【発明者】
【氏名】戸村 峻
(72)【発明者】
【氏名】宮本 登
(72)【発明者】
【氏名】榎本 奈津子
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707JS03
3C707WL05
3C707WL07
3C707WM07
(57)【要約】
【課題】高齢者に寄り添うロボットを使用しない場合に比べて、より効果的に詐欺被害を軽減する。
【解決手段】
ユーザと対話する対話手段と、ユーザによる第三者との通話情報を取得する通話情報取得手段と、取得した通話情報を用いて、通話が詐欺である危険性の度合いを判定する危険度判定手段と、ユーザの個々の特性に関する情報を取得する特性取得手段と、対話手段は、危険性の度合いが高いと判定された際に、個々の特性に関する情報に基づき、対話内容を決定して出力する出力手段とを備えるコミュニケーションロボットである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザと対話する対話手段と、
前記ユーザによる第三者との通話情報を取得する通話情報取得手段と、
取得した前記通話情報を用いて、通話が詐欺である危険性の度合いを判定する危険度判定手段と、
前記ユーザの個々の特性に関する情報を取得する特性取得手段と、
前記対話手段は、前記危険性の度合いが高いと判定された際に、前記個々の特性に関する情報に基づき、対話内容を決定して出力する出力手段と
を備えるコミュニケーションロボット。
【請求項2】
前記個々の特性に関する情報は、前記対話手段により前記ユーザとの間で過去に行われた対話に関する履歴情報から把握された、当該ユーザが有する特徴的な行動様式であること
を特徴とする請求項1に記載のコミュニケーションロボット。
【請求項3】
前記対話手段は、前記ユーザが有する個々の特徴的な行動様式に合わせ、記憶されている音声情報から音声の内容および音声の特徴の少なくとも何れか一つを変更し、または、新たな音声情報を用いて当該ユーザと対話すること、
を特徴とする請求項2に記載のコミュニケーションロボット。
【請求項4】
通話の際又は通話後の前記ユーザの感情に関する情報を取得する感情情報取得手段を更に備え、
前記対話手段は、前記個々の特性に関する情報と前記感情に関する情報とに基づき、対話内容を決定して出力すること
を特徴とする請求項1に記載のコミュニケーションロボット。
【請求項5】
前記感情に関する情報は、前記通話情報に含まれる前記ユーザの音声情報および当該ユーザの表情の少なくとも何れか一つに基づいて定められた、当該ユーザが動揺している度合いを示す情報であることを
特徴とする請求項4に記載のコミュニケーションロボット。
【請求項6】
前記動揺している度合いは、前記対話手段により前記ユーザとの間で過去に行われた対話に関する履歴情報と、前記感情情報取得手段により取得された前記感情に関する情報と、の比較により得られた情報であること
を特徴とする請求項5に記載のコミュニケーションロボット。
【請求項7】
前記個々の特性に関する情報は、前記ユーザとの対話が弾んだ事案に関する情報であり、
前記出力手段は前記ユーザとの対話が弾んだ事案に関する情報に基づき、対話内容を決定することを特徴とする請求項1に記載のコミュニケーションロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コミュニケーションロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1電話機と第2電話機との会話に関する会話情報を記憶部に記憶する記憶処理部と、音声通信が確立されてから所定時間が経過するたびに記憶部から会話情報を取得し、会話の中に含まれる特定の語句の数を計数する計数部と、計数された数に基づいて会話に対する危険度を判定する判定部と、危険度が第1所定値を超えた場合、特殊詐欺が発生していることを示すメールをユーザに関する携帯端末に送信し、危険度が第1所定値よりも大きい第2所定値を超えた場合、第1電話機と第2電話機との音声通信を切断する指示情報を音声通信に係る交換機に送信する送信部と、を備えるサーバ装置が記載されている。
特許文献2には、通話内容を取得する通話内容取得ステップと、通話相手が称する所属情報を通話内容から抽出する所属情報抽出ステップと、団体に関する団体情報が登録された団体データベースを参照して所属情報に誤った情報が含まれるか否かを判断する所属判断ステップと、所属情報に誤った情報が含まれない場合に、詐称者からの通話において使用される語句が登録されたNGキーワードデータベースを参照して、通話内容にNGキーワードが含まれるか否かを判断する通話内容判断ステップと、所属情報に誤った情報が含まれる場合、または、通話内容にNGキーワードが含まれる場合に、不審な通話であることを報知する報知ステップとを備える不審通話判別プログラムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-036231号公報
【特許文献2】特開2007―228384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来技術では、特殊詐欺に対処するために高齢者に対して警告を発する技術が提案されている。しかし、警告を発しても、特殊詐欺の電話を受けた高齢者は気が動転し、例えば詐欺師の話で頭がいっぱいになり、警告を受け入れることができない場合が生じる。
かかる場合に、例えば、家族や知人が説得にあたり、高齢者の思考を切り替えさせることが望ましい。しかしながら、一般に、詐欺犯は高齢者が他人に連絡を取らないように誘導することから、実際には家族や知人による説得が行われることはなく、詐欺被害を防ぐことができない。
ここで、近年、ユーザの手元に置かれてユーザとのコミュニケーションを図るコミュニケーションロボットが存在している。このコミュニケーションロボットは、例えばペットのごとく、ユーザに寄り添い、ユーザにとっては家族以上に近しい存在となる場合がある。ユーザの一人である高齢者に寄り添うロボットを用いることで、高齢者の詐欺被害をより効果的に防ぐことが期待できる。
本発明は、高齢者に寄り添うロボットを使用しない場合に比べて、より効果的に詐欺被害を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載された発明は、ユーザと対話する対話手段と、前記ユーザによる第三者との通話情報を取得する通話情報取得手段と、取得した前記通話情報を用いて、通話が詐欺である危険性の度合いを判定する危険度判定手段と、前記ユーザの個々の特性に関する情報を取得する特性取得手段と、前記対話手段は、前記危険性の度合いが高いと判定された際に、前記個々の特性に関する情報に基づき、対話内容を決定して出力する出力手段とを備えるコミュニケーションロボットである。
請求項2に記載された発明は、前記個々の特性に関する情報は、前記対話手段により前記ユーザとの間で過去に行われた対話に関する履歴情報から把握された、当該ユーザが有する特徴的な行動様式であることを特徴とする請求項1に記載のコミュニケーションロボットである。
請求項3に記載された発明は、前記対話手段は、前記ユーザが有する個々の特徴的な行動様式に合わせ、記憶されている音声情報から音声の内容および音声の特徴の少なくとも何れか一つを変更し、または、新たな音声情報を用いて当該ユーザと対話すること、を特徴とする請求項2に記載のコミュニケーションロボットである。
請求項4に記載された発明は、通話の際又は通話後の前記ユーザの感情に関する情報を取得する感情情報取得手段を更に備え、前記対話手段は、前記個々の特性に関する情報と前記感情に関する情報とに基づき、対話内容を決定して出力することを特徴とする請求項1に記載のコミュニケーションロボットである。
請求項5に記載された発明は、前記感情に関する情報は、前記通話情報に含まれる前記ユーザの音声情報および当該ユーザの表情の少なくとも何れか一つに基づいて定められた、当該ユーザが動揺している度合いを示す情報であることを特徴とする請求項4に記載のコミュニケーションロボットである。
請求項6に記載された発明は、前記動揺している度合いは、前記対話手段により前記ユーザとの間で過去に行われた対話に関する履歴情報と、前記感情情報取得手段により取得された前記感情に関する情報と、の比較により得られた情報であることを特徴とする請求項5に記載のコミュニケーションロボットである。
請求項7に記載された発明は、前記個々の特性に関する情報は、前記ユーザとの対話が弾んだ事案に関する情報であり、前記出力手段は前記ユーザとの対話が弾んだ事案に関する情報に基づき、対話内容を決定することを特徴とする請求項1に記載のコミュニケーションロボットである。
【発明の効果】
【0006】
本願の発明によると、高齢者に寄り添うロボットを使用しない場合に比べて、より効果的に詐欺被害を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態が適用されるロボット警告システムのハードウェア構成を示す図である。
【
図2】コミュニケーションロボットのハードウェア構成を示す図である。
【
図4】コミュニケーションロボットの機能を説明するための図である。
【
図6-1】コミュニケーションロボットが警告を行う際の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6-2】詐欺の危険性を判定する処理を示すフローチャートである。
【
図6-3】ユーザの感情を認識する処理を示すフローチャートである。
【
図7】対話の内容と音声の態様とを決定する際に用いる表の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔ロボット警告システムの全体構成〕
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用されるロボット警告システム1のハードウェア構成を示す図である。本実施の形態に係るロボット警告システム1は、ユーザの一例である高齢者との間でコミュニケーションを図るコミュニケーションロボット10を備える。そして、特殊詐欺などの詐欺の疑いのある電話に高齢者が対応する場合に、このコミュニケーションロボット10が高齢者に対して警告を発するシステムである。ここで「特殊詐欺」とは、高齢者に電話をかけるなどして直接対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、高齢者から現金等をだまし取る犯罪である。特殊詐欺には様々な犯罪の手口が存在し、新たな手口が次々と生み出されている。
【0009】
本実施の形態に係るロボット警告システム1は、コミュニケーションロボット10と、高齢者宅にある電話機70と、コミュニケーションロボット10に対して情報を提供するサーバ30とを備える。コミュニケーションロボット10とサーバ30とは、ネットワーク50を介して接続されている。また、ロボット警告システム1は、コミュニケーションロボット10がネットワーク50に接続するための接続機器60を備える。接続機器60としては特に限定されないが、例えばWi-Fi接続機器が挙げられる。但し、高齢者宅にてWi-Fi接続の環境を整えることが難しい場合には、接続機器60として、例えばデータ通信用のSIMカード(Subscriber Identity Module Card)を用いた機器を採用してもよい。かかる場合には、所定の基地局を介してネットワーク50に接続されることとなる。また、接続機器60が電話機70とも接続され、コミュニケーションロボット10は、接続機器60を介して電話機70と接続されるように構成することもできる。
【0010】
さらに、ロボット警告システム1は、高齢者の子供が所有する携帯電話やスマートフォンなどのユーザの関係者の有する端末80と、特殊詐欺に関する情報が蓄積されるデータベース40とを備える。ユーザの関係者の有する端末80としては、高齢者の子供な孫などの親族が所有する他、例えば介護者などの端末である。ユーザの関係者の有する端末80とサーバ30とはネットワーク50を介して接続されている。
【0011】
〔コミュニケーションロボット10のハードウェア構成〕
図2は、コミュニケーションロボット10のハードウェア構成を示す図である。コミュニケーションロボット10は、全体を制御するCPU(Central Processing Unit)で構成される制御部11と、演算に際して作業エリアとして用いられるRAM(Random Access Memory)などのメモリ12と、プログラムや各種設定データなどの記憶に用いられる半導体メモリ等の記憶装置である記憶部13と、を備える。また、接続機器60を介してネットワーク50と接続し、サーバ30と情報の送受信を行う通信部14と、ユーザからコミュニケーションロボット10へ操作を受け付けるボタンやタッチパネルなどの操作部15と、ユーザに対して画像やテキスト情報等を表示する液晶ディスプレイなどからなる表示部16と、表示部16を制御する表示制御部17とを備える。さらに、ユーザに対して音声を出力するスピーカなどからなる音声出力部18と、ユーザの発する音声を録音するためのマイクなどからなる音声取得部19と、ユーザの様子や表情を撮像して静止画像または動画像の情報として取得するためのカメラなどからなる画像取得部20を備える。
【0012】
〔サーバ30のハードウェア構成〕
図3は、サーバ30のハードウェア構成を示す図である。
サーバ30は、コンピュータにより実現される。サーバ30は、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)で構成される制御部31と、演算に際して作業エリアとして用いられるRAM(Random Access Memory)などのメモリ32と、プログラムや各種設定データなどの記憶に用いられるHDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリ等の記憶装置である記憶部33と、を有している。また、ネットワーク50を介してデータの送受信を行う通信部34を有している。更に、サーバ30側のサーバを管理するサーバ管理者からの入力操作を受け付けるキーボード、ポインティングデバイス、タッチパネルなどの操作部35と、サーバ管理者に対して画像やテキスト情報などを表示する液晶ディスプレイなどからなる表示部36と、表示部36を制御する表示制御部37とを有している。
【0013】
〔コミュニケーションロボット10の機能構成〕
次に、
図4を参照してコミュニケーションロボット10の機能を説明する。
図4は、コミュニケーションロボット10の機能を説明するための図である。
コミュニケーションロボット10の制御部11は、通信部14と音声取得部19と画像取得部20とから入力される情報を処理し、処理した情報を通信部14と音声出力部18とから出力する。
また、制御部11で行われる処理は、処理内容に応じて記憶部13に記憶されている情報を取得し、処理内容に応じて情報を記憶部13に記憶させる。記憶部13に記憶されている情報としては、「通話情報」と、「電話帳情報」と、「危険語情報」と、「防犯情報」と、「対話履歴情報」と、「ユーザ特性情報」と、「対話シナリオ情報」とがある。
【0014】
ここで、「通話情報」とは、ユーザがコミュニケーションロボット10に対して行う会話や、ユーザが他の人と行う会話の際の情報等などである。
また、「電話帳情報」とは、電話機70に登録されている電話番号の情報やユーザが電話を掛ける頻度の情報等である。
また、「危険語情報」とは、特殊詐欺に用いられる「フレーズ」や「キーワード」に関する情報である。特殊詐欺に用いられる「フレーズ」や「キーワード」に関する情報は、例えば、「電話番号が変わった」や「悪用されたカードを調べる必要がある」等が一例として挙げられる。
また、「防犯情報」とは、コミュニケーションロボット10がユーザと日常会話を行う際に、ユーザに情報提供される防犯情報である。「防犯情報」は、例えば、日常会話中に「警察官に成りすましてキャッシュカードの番号を聞き出す詐欺が流行しているよ」とコミュニケーションロボット10がユーザに教える情報であり、流行している詐欺の手口や詐欺の対策方法等の情報である。
また、「対話履歴情報」とは、ユーザとコミュニケーションロボット10とが行った対話に関する情報である。例えば、ユーザとコミュニケーションロボット10との対話におけるユーザの音声情報等である。「対話履歴」の情報が、対話に関する履歴情報の一例である。
また「ユーザ特性情報」とは、コミュニケーションロボット10との対話中のユーザが発する特徴的な動作や言葉に関する情報である。例えば、「ユーザの性格」や「ユーザが好きな対象」がユーザ特性情報の一例として挙げられる。ユーザが楽しいと感じる会話内容である。
また、「対話シナリオ情報」とは、コミュニケーションロボット10がユーザと対話を行う際のシナリオに関する情報である。「対話シナリオ情報」は、例えば、ユーザの特性に応じて複数のシナリオが用意される。「対話シナリオ情報」には、ユーザが発した言葉や動作に応じてコミュニケーションロボット10が発する言葉や動作が設定されている。
【0015】
制御部11は、主に音声取得部19にて取得した通話情報を処理する通話情報処理部111と、通信部14から入力された情報を記憶部13に記憶させる通信情報入力部112を備える。また、ユーザが対応した電話が詐欺に係る電話である危険性を判定する危険度判定部113と、ユーザの感情を認識する感情認識部114と、ユーザの特性を認識するユーザ特性認識部115とを備える。さらに、ユーザに詐欺の危険性がある場合にユーザを説得するための情報を生成する説得情報生成部116と、通信部14を用いてサーバ30へ情報を出力する通信情報出力部117と備える。
【0016】
通話情報処理部111は、入力される情報のうち通話情報に対して処理を行う。通話情報に対して行う処理とは、例えば、通話中の音声に対する音声認識処理である。音声認識処理としては、例えば音声情報をテキストデータに変換する処理が挙げられる。
通話情報処理部111が通話情報取得手段の一例として機能する。
【0017】
通信情報入力部112は、通信部14から取得した情報に対して処理を行い、各機能部に入力する。通信部14から取得する情報は、サーバ30から取得する情報や、電話機70から取得する情報がある。
サーバ30から取得する情報としては、例えば、「危険語情報」と「対話シナリオ情報」と「防犯情報」とが一例として挙げられる。
電話機70から取得する情報としては、通話先の電話番号や通話を行った時間に関する情報、電話機70に備え付けられているマイクが録音したユーザの音声情報、電話機70が取得した通話相手の音声情報等が一例として挙げられる。
【0018】
危険度判定部113は、ユーザが対応した電話が詐欺に係る電話である危険性の高さを判定する。危険度判定部113は、例えば、記憶部13に記憶されている「通話情報」と、「電話帳情報」と、「危険語情報」とを用いて、危険度の高さを判定する。例えば、ユーザが頻繁に通話する家族や友人の電話番号と通話先の電話番号とが一致する場合は、危険度が低いと判定される。また、例えば、ユーザが第三者と行った通話において危険語であるフレーズの「電話番号が変わった」と同一または類似の音声情報がある場合は、危険度が高いと判定される。
【0019】
感情認識部114は、通話情報に含まれるユーザの音声情報や画像取得部20から取得するユーザの表情の撮像情報などを用いて、ユーザの感情を認識する。ユーザの動揺している度合いがユーザの感情の一例である。感情認識部114は、例えば、通話中のユーザの音声の特徴を抽出し、後述するユーザ特性認識部115が抽出したユーザの特性に含まれるユーザの音声の特徴と比較することで感情認識を行う。例えば、「ユーザが動揺しているときによく使う言葉」が「どうしてだ」である場合に、通話中に「どうしてだ」という言葉があると、感情認識部114は、ユーザが動揺していると認識する。さらに、「ユーザが動揺しているときによく使う言葉」が通話中に出てくる回数や、ユーザが普段話すときの声の大きさと通話中の声の大きさとの差異の大きさ等によって動揺している度合いを決定することができる。他には、普段のユーザが安心しているときに行う行動が出てない場合は「不安に感じている」と認識する例が挙げられる。
ユーザの音声の特徴としては、例えば、ユーザの話す速度や、声の大きさ等が挙げられる。また、画像取得部20が撮像したユーザの表情の撮像情報を用いてユーザの感情を認識してもよい。
感情認識部114が感情情報取得手段の一例である。
【0020】
ユーザ特性認識部115は、記憶部13に記憶されている「対話履歴情報」からユーザの特性を認識し、認識した特性をユーザ特性として記憶部13に記憶させる。また、ユーザ特性認識部115は、例えば、「対話履歴情報」のテキスト情報からユーザが平常時によく用いる言葉を抽出し、平常時にユーザがよく用いる言葉をユーザ特性として記憶部13に記憶する。コミュニケーションロボット10との対話中にユーザが発する動作や言葉等が、ユーザが有する特徴的な行動様式の一例である。ユーザ特性の情報が、個々の特性に関する情報の一例である。
また、ユーザ特性認識部115は、ユーザとの対話において会話が弾んだ会話の内容を記憶部13に記憶する。ユーザとの対話において会話が弾んだ会話の内容を抽出し、ユーザの好きな対象として記憶部13に記憶する。
ユーザ特性認識部115が特性取得手段の一例として機能する。
【0021】
説得情報生成部116は、第三者との通話が詐欺である危険性がある場合に、ユーザに出力する音声の内容と態様とを決定し、ユーザを説得するための説得情報を生成する。音声の内容と態様とは、ユーザの特性に基づいて決定され、ユーザの特性に応じた説得情報が生成される。例えば、ユーザの特性が「感情の変動が激しい」性格である場合に、「感情の変動が激しい」性格の人用に作成された対話シナリオを用いて説得するための情報を生成する。ユーザに寄り添うロボットが日常会話からユーザの特性を抽出し、ユーザの特性に応じた説得情報を生成することで、ユーザが受け入れやすい説得情報が生成される。
また、説得情報生成部116は、説得情報をユーザの感情に基づいて生成してもよい。例えば、ユーザが焦っている場合には再生される音声の再生速度を遅くし、ユーザを落ち着かせるような音声の態様で説得情報を生成する。
説得情報生成部116が対話手段と出力手段の一例として機能する。
【0022】
通信情報出力部117は、通信部14を用いてサーバ30に情報を出力する。詐欺の可能性の高い電話がかかってきたことをユーザの関係者に伝えるために、サーバ30に対して、ユーザの関係者の有する端末80に通知を要求する。
また、通信情報出力部117は、定期的に、サーバ30に対して、サーバ30に接続することを要求する情報を出力する。コミュニケーションロボット10は、サーバ30に定期的に接続し、サーバ30から情報を取得する。定期的な接続としては、例えば、一日一回等の予め定めた間隔で行われるものが挙げられる。ネットワーク50を介してサーバ30から情報を取得し、記憶部13に記憶された情報を更新することで、新しい詐欺の手口に関する情報を得ることができる。なお、サーバ30に対して定期的に接続するのではなく、サーバ30と常時接続されている構成としてもよく、また、サーバ30において情報の更新があった場合にサーバ30側の判断でコミュニケーションロボット10へ情報を送信する構成を採用することもできる。
【0023】
〔サーバ30の機能構成〕
次に、
図5を参照して、サーバ30の機能を説明する。
図5は、サーバ30の機能を説明するための図である。
制御部31は、通信部34と操作部35から入力される情報を処理し、処理した情報を通信部34から出力する。
また、制御部31は、処理内容に応じて記憶部33に記憶されている情報を取得し、また、処理内容に応じて生成した情報を記憶部33に記憶させる。記憶部33に記憶されている情報としては、「危険語情報」と、「対話シナリオ情報」と、「ユーザ関連情報」と「防犯情報」とがある。
ここで、「ユーザ関連情報」とは、例えば、ユーザの年齢や性別の情報等のユーザに関する情報である。このユーザ関連情報には、ユーザの関係者の連絡先が含まれてもよい。ユーザの関係者の連絡先は、例えば、ユーザに詐欺の危険性が高い電話がかかってきた場合に連絡をする、緊急連絡先であり、例えば息子や孫、施設関係者等である。
【0024】
制御部31は、通信部34から受け付けた情報を記憶部33に記憶させる通信情報入力部311と、通信部34から情報を出力する通信情報出力部315とを備える。また、取得した詐欺に関する情報の処理を行う詐欺情報処理部312と、例えば、特殊詐欺においてよく用いられるフレーズや単語に対して危険度の高さを設定する等の詐欺に関する各種の処理を行う詐欺危険度処理部313と、例えば連絡先の更新や変更など、ユーザに関連する情報に関する各種処理を行うユーザ関連情報処理部314とを備える。
【0025】
通信情報入力部311は、通信部34から入力される情報を各機能部に振り分け、記憶部33に記憶させる。通信部34から入力される情報としては、データベース40から入手される特殊詐欺に関する情報がある。データベース40は、例えば、警察等の行政機関が作成した特殊詐欺に関するデータを集積したデータベースや、ロボット警告システム1のサービス提供者が作成したデータベース等である。
また、通信部34から入力される情報としては、コミュニケーションロボット10から送信される情報取得のリクエストや、ユーザの関係者の有する端末80へ通知のリクエスト等がある。
【0026】
詐欺情報処理部312は、通信部34を介してデータベース40から取得した詐欺に関する情報を分析し、詐欺によく用いられるフレーズやキーワードを抽出し危険語情報として記憶部33に記憶させる。また、詐欺の手口や詐欺対策に関する新たな情報がある場合には、防犯情報の更新情報として記憶部33に記憶させる。
【0027】
詐欺危険度処理部313は、詐欺情報処理部312が抽出したフレーズやキーワードに対して危険度の対応付けを行う。危険度は、例えば、あるフレーズが通話中に見つかると特殊詐欺に関する通話である可能性が高い場合に、そのフレーズに対する危険度が高い値となるように設定される。この危険度の高さは、例えばAIによる機械学習に基づいて設定されても良いし、サーバ管理者によって危険度の高さが設定されてもよい。
【0028】
通信情報出力部315は、コミュニケーションロボット10やユーザの関係者の有する端末80に対し、通信部34を介して情報を出力する。コミュニケーションロボット10に対して出力する情報としては、「危険語情報」、「防犯情報」、「対話シナリオ情報」等がある。通信情報出力部315は、ユーザ関連情報を用いてユーザに適した情報を選択して送信してもよい。例えば、ユーザが高齢である場合には、すべての「対話シナリオ」の中から高齢者用に作成された「対話シナリオ」を選択して、コミュニケーションロボット10へ送信するとしてもよい。
また、ユーザの関係者の有する端末80に対して出力する情報としては、ユーザに詐欺の可能性の高い電話が来たことを通知する情報である。
【0029】
制御部31は、サーバ管理者から操作部35介して情報が入力されると、サーバ管理者の操作に応じて、記憶部33に記憶されている情報を編集する。例えば、サーバ管理者が新しい詐欺の手口を知った場合に、新しい詐欺の手口で使われるフレーズを危険語に追加する。これにより、新しい詐欺に対する迅速な備えができる。
【0030】
〔コミュニケーションロボット10が行う処理〕
次に、
図4、
図6-1、
図6-2、
図6-3および
図7を用いてコミュニケーションロボット10が行う処理について説明する。
図6-1は、コミュニケーションロボット10が警告を行う際の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、危険度判定部113は、ユーザと第三者との通話が特殊詐欺に係るものである危険性を判定するための危険性判定処理を行う。(ステップ1001)。危険性判定処理については、
図6-2を用いて詳述する。
危険性判定処理にて危険性があると判定された場合は(ステップ1002でYES)、通信情報出力部117は、ユーザの子や孫などのユーザに関する人に対してユーザに危険が迫っていることを通知するための要求を、サーバ30に出力する(ステップ1003)。なお、サーバ30の通信情報入力部311(
図5参照)がステップ1003の要求を受け付けると、通信情報出力部315(
図5参照)は、高齢者であるユーザの息子や娘が有する端末に、特殊詐欺の危険性がある電話がユーザの元にかかってきたことを通知する。
【0031】
その後、感情認識部114は、ユーザの感情を認識するための感情認識処理を行う(ステップ1004)。感情認識処理については
図6-3を用いて詳述する。説得情報生成部116は、ユーザの特性と感情認識部114が認識したユーザの感情とに基づいて対話内容と音声の態様とを決定する(ステップ1005)。説得情報生成部116は、音声出力部18に対してステップ1005で決定した対話内容と音声の態様に基づいた再生情報を送る。音声出力部18は、決定された対話内容について、設定された音声の態様でユーザと対話する(ステップ1006)
【0032】
次に、
図6-2を用いて、ステップ1001の危険性判定処理の説明を行う。
図6-2は、詐欺の危険性を判定する処理を示すフローチャートである。
図4に示す危険度判定部113は、まず、通話中に危険語を発見した場合に、危険度を累積するための変数として危険度Xに対して0を設定する(ステップ2001)。次に、音声認識されたテキストに危険語があるか否かが判定される(ステップ2002)。より詳しくは、危険度判定部113は、通話情報処理部111が音声認識して抽出されたテキストについて、記憶部13に記憶されている危険語情報と比較し、危険語の有無を判定する。ここで、通話情報処理部111がテキストに変換する情報としては、通話中のユーザの音声だけでなく、通話相手の音声情報を含むことができる。音声認識されたテキストに危険語があると判定されると(ステップ2002でYES)、テキスト中に発見された危険語に応じた危険度を危険度Xに加える(ステップ2003)。危険語に応じた危険度は、記憶部13に記憶されている危険語情報を用いる。ステップ2002で音声認識されたテキストに危険語があると判定されなかった場合は、ステップ2003の処理を行わずにステップ2004へ移行する。
【0033】
ステップ2004では、通話が終了したか否かが判断される。通話が終了していない場合には(ステップ2004でNO)、再度ステップ2002へ戻り、音声認識されたテキストに危険語があるか否かの判定処理が行われる。ステップ2004にて、通話が終了したと判定すると(ステップ2004でYES)、危険度Xの高さに応じて危険性を判定し、危険度判定処理が終了する。
【0034】
図7は、記憶部13(
図4参照)に記憶される危険語情報の一例として、危険語とその危険度との関係の一例を示した表である。
図7では、特殊詐欺の頻出フレーズが、表の左の列に記載され、右の列に危険度の値が記載されており、これらが対応付けられて記憶部13に記憶される。例えば、特殊詐欺の頻出の単語が「還付金」である場合に、その危険度の値が「2」となる。また、例えば、「還付金が返ってくる」というフレーズに対して、危険度の値が「3」となる。
【0035】
この
図7に例示されるような危険語と危険度との関係は、例えばサーバ30にて設定される。通話中に現れるフレーズまたはキーワードについて、特殊詐欺の可能性の高さに応じて危険度の値が設定されている。この危険度の設定は、人工知能による機械学習により危険値の高さを設定してもよいし、サーバの管理者等が危険値の高さを設定してもよい。
【0036】
前述した
図6-2のステップ2003では、この
図7に例示された情報等を用いて、危険語に応じた危険度を危険度Xに加えている。ステップ2005に示すような危険度Xの高さに応じて危険性を判定する場合の他、危険度Xの高さに応じて発信する情報を変えても良い。例えば、危険度Xの高さが低い場合には、トーンを下げてユーザを説得し、危険度Xの高さが高い場合にはトーンを上げてユーザを説得する、等である。また、危険度Xの高さが高い場合には、警察への連絡など、通知先や通知内容などを異ならせることも有効である。
【0037】
次に、
図6-3を用いて、
図6-1に示すステップ1004の感情認識処理について説明する。
図6-3は、ユーザの感情を認識する処理を示すフローチャートである。
まず、感情認識部114は、記憶部13に記憶されているユーザ特性の情報からユーザの特徴点を取得する(ステップ3001)。次に、ユーザ特性認識部115は、通話情報に含まれる通話中のユーザに関する情報から特徴点を抽出する(ステップ3002)。そして、感情認識部114は、ユーザ特性の特徴点と通話情報の特徴点を比較する(ステップ3003)。その後、感情認識部114は、比較に基づいてユーザの感情を認識し(ステップ3004)、感情認識処理が終了する。
【0038】
次に、コミュニケーションロボット10の説得情報生成部116(
図4参照)が、説得情報を生成する一例を説明する。
一般に、詐欺被害を受ける老人等は、特殊詐欺の犯人の言葉を一度信じてしまうと、周りの人間が直接的にそれを「詐欺だ」と否定しても、頑なに詐欺の犯人の言葉を真実と思い込んでしまう傾向がある。このように思い込みにとらわれている場合には、思い込みにとらわれている人に、楽しいと感じた出来事や記憶を想い出させ、思い込んでいる事柄から意識を離すことが有効となる。そこで、特殊詐欺の電話を受けたユーザに対して、ユーザ本人が楽しいと感じた出来事や記憶を喚起させるための説得情報を生成する。
【0039】
ユーザ特性認識部115(
図4参照)は、ユーザとコミュニケーションロボット10との日々の会話などを通じて、ユーザが楽しいと感じた出来事などを認識し、記憶部13にユーザ特性情報として記憶させる。例えば、ユーザとの対話が弾んだ事案があった場合に、その事案を「ユーザが好きな対象」として記憶しておく。例えば、ユーザの好きな人物、ユーザが好感を有する芸能人、ユーザの趣味、ユーザが頻繁に見ているスポーツ、ユーザが参加しているイベント、ユーザの好きな食べ物や店舗の情報などである。例えば、ユーザの好きな人物としては、孫に関する内容等である。
【0040】
説得情報生成部116は、説得情報を生成する際に、記憶部13に記憶されたユーザ特性情報を読み出して、説得情報の生成に役立てる。例えば、説得の状況に応じて、「ユーザが好きな対象」の中から、何れかの対象を選択する。そして、選択した対象を用いて、説得情報を生成する。生成する説得情報の例としては、例えば「お孫さん」の「あいちゃん」が大好きなユーザに対しては、「先週、あいちゃんが来て楽しかったね。あいちゃん、どうしているかな? あいちゃんの声を聞くついでに、あいちゃんのお母さんに相談してみたらどうかな?」などである。ここでは、ユーザ本人の楽しいと感じた記憶を想い出させ、思い込んでいる事柄から意識を離すとともに、解決する対策にまで踏み込んだ説得情報が生成されている。また、普段からコミュニケーションロボット10と野球の話をしているユーザに対しては、「昨日の野球の試合、凄かったね。どのシーンが良かったかな?」等の、ユーザ本人の楽しいと感じた記憶に直接、刺激するような説得情報が生成される。これらにより、詐欺の危険度の高いユーザに対して、心地よい気分を喚起させ、詐欺の犯人の言葉から意識を離すきっかけを与える。
【0041】
上記のようにして、思い込みにとらわれている人に思い込んでいる事柄から意識を離すことを行った後に、説得情報生成部116は、具体的な説得情報の生成を行う。ここでは、ユーザの特性としての「ユーザの性格」を用いて、説得情報を生成する一例を説明する。
例えば、ユーザの性格が「冷静」であるユーザに対しては、「冷静」な性格の人用に作られた対話シナリオを用いて説得情報が生成される。「冷静」な性格の人用の対話シナリオ用いて生成された説得情報の一例としては、「統計データでは、会話中に、風邪、声、お金、がでてくると、92%の確率でオレオレ詐欺です。」等がある。性格が「冷静」であるユーザに対しては、根拠を提示する説得情報を生成する。
また、性格が「頑固」であるユーザに対して生成される説得情報の一例としては、「それは、オレオレ詐欺かもしれないです。」や「家族に連絡したほうがいいかも。」等がある。性格が「頑固」であるユーザに対しては、「それは、オレオレ詐欺だ。」や「家族に連絡しろ。」というような断定な表現ではなく、あいまいな表現の説得情報を生成する。
また、性格が「協調的」であるユーザに対して生成される説得情報の一例としては、「こういう場合、普通の人は家族に電話して確認していますよ。」や「このケースでは、多くの人が警察に通報していますね。」等がある。性格が「協調的」であるユーザに対しては、一般的な他人がどのような対応をしているかという情報を提示して、説得情報を生成する。
これらの説得例は一例であるが、コミュニケーションロボット10によるユーザとの日々の対話を通じて、好ましい説得情報が生成されればよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、前述の実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0043】
1…ロボット警告システム、10…コミュニケーションロボット、30…サーバ、40…データベース、50…ネットワーク、60…接続機器、70…電話機、80…ユーザの関係者の有する端末、111…通話情報処理部、112…通信情報入力部、113…危険度判定部、114…感情認識部、115…ユーザ特性認識部、116…説得情報生成部、117…通信情報出力部