IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-支持構造 図1
  • 特開-支持構造 図2
  • 特開-支持構造 図3
  • 特開-支持構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163464
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068402
(22)【出願日】2021-04-14
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】小貫 雄太
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174AA03
2E174BA03
2E174DA12
2E174DA32
2E174DA38
2E174DA58
2E174EA02
(57)【要約】
【課題】設置対象の周辺の作業性を確保しながら、設置対象の建入れ直し(歪み直し)を正確に行うことが可能となる、支持構造を提供すること。
【解決手段】支持構造20は、設置対象1を設置面Fに対して立設するための構造であって、設置対象1と設置面Fとを接続する第1支持部材30a及び第2支持部材30bであり、圧縮性及び引張性をそれぞれ有する第1支持部材30a及び第2支持部材30bを備え、第1支持部材30a及び第2支持部材30bのみによって、設置対象1の設置位置が第1水平方向と第1水平方向とは異なる第2水平方向とにずれることを抑制可能となるように、第1支持部材30a及び第2支持部材30bを配置した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置対象を設置面に対して立設するための支持構造であって、
前記設置対象と前記設置面とを接続する第1支持部材及び第2支持部材であり、圧縮性及び引張性をそれぞれ有する第1支持部材及び第2支持部材を備え、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材のみによって、前記設置対象の設置位置が第1水平方向と第1水平方向とは異なる第2水平方向とにずれることを抑制可能となるように、前記第1支持部材及び前記第2支持部材を配置した、
支持構造。
【請求項2】
前記第1支持部材又は前記第2支持部材の少なくともいずれか一方は、
支持部材本体と、
前記支持部材本体の張力を調整する張力調整手段と、を備える、
請求項1に記載の支持構造。
【請求項3】
前記第1支持部材又は前記第2支持部材の少なくともいずれか一方の前記張力調整手段を、コンクリート体に埋め殺しされない位置に配置した、
請求項2に記載の支持構造。
【請求項4】
前記設置対象を嵩上げするための嵩上手段を備え、
前記嵩上手段は、前記設置対象の垂直方向又は/及び水平方向の位置を調整する調整手段を備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、柱の建入れ直し(歪み直し)を正確に行う技術の一つとして、ワイヤと、チェーンブロック(又はレバーブロック)とからなる4つの引張材を用いて、柱の頂部と基礎部とをそれぞれ異なる水平方向から掛止して引張力で緊張させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、これら4つの引張材は、相互に異なる位置であって、平面方向から見て柱を中心として回転角度を45度回転させた位置にそれぞれ張設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-136915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記従来の技術においては、上述したように、4つの引張材が、相互に異なる位置であって、平面方向から見て柱を中心として回転角度を45度回転させた位置にそれぞれ張設されているので、これら引張材によって柱周辺の施工作業が阻害されることにより、柱周辺の作業性を確保することが難しくなるおそれがあることから、柱周辺の如き設置対象の周辺の作業性を確保する観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、設置対象の周辺の作業性を確保しながら、設置対象の建入れ直し(歪み直し)を正確に行うことが可能となる、支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の支持構造は、設置対象を設置面に対して立設するための支持構造であって、前記設置対象と前記設置面とを接続する第1支持部材及び第2支持部材であり、圧縮性及び引張性をそれぞれ有する第1支持部材及び第2支持部材を備え、前記第1支持部材及び前記第2支持部材のみによって、前記設置対象の設置位置が第1水平方向と第1水平方向とは異なる第2水平方向とにずれることを抑制可能となるように、前記第1支持部材及び前記第2支持部材を配置した。
【0007】
請求項2に記載の支持構造は、請求項1に記載の支持構造において、前記第1支持部材又は前記第2支持部材の少なくともいずれか一方は、支持部材本体と、前記支持部材本体の張力を調整する張力調整手段と、を備える。
【0008】
請求項3に記載の支持構造は、請求項2に記載の支持構造において、前記第1支持部材又は前記第2支持部材の少なくともいずれか一方の前記張力調整手段を、コンクリート体に埋め殺しされない位置に配置した。
【0009】
請求項4に記載の支持構造は、請求項1から3のいずれか一項に記載の支持構造において、前記設置対象を嵩上げするための嵩上手段を備え、前記嵩上手段は、前記設置対象の垂直方向又は/及び水平方向の位置を調整する調整手段を備える。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の支持構造によれば、第1支持部材及び第2支持部材のみによって、設置対象の設置位置が第1水平方向と第1水平方向とは異なる第2水平方向とにずれることを抑制可能となるように、第1支持部材及び第2支持部材を配置したので、第1支持部材及び第2支持部材のみによって設置対象の設置位置が第1水平方向及び第2水平方向にずれることを抑制でき、従来技術(4つの引張材を用いて設置対象の建入れ直しを行う技術)に比べて、設置対象の周辺の作業性を確保しながら、設置対象の建入れ直しを正確に行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の支持構造によれば、第1支持部材又は第2支持部材の少なくともいずれか一方が、支持部材本体と、支持部材本体の張力を調整する張力調整手段と、を備えるので、当該支持部材本体の張力を調整でき、設置対象の建入れ直しを一層正確に行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の支持構造によれば、第1支持部材又は第2支持部材の少なくともいずれか一方の張力調整手段を、コンクリート体に埋め殺しされない位置に配置したので、コンクリート体の硬化直前まで第1支持部材又は第2支持部材の少なくともいずれか一方の支持部材本体の張力を調整でき、設置対象の建入れ直しの精度を高めることができる。
【0013】
請求項4に記載の支持構造によれば、嵩上手段が、設置対象の垂直方向又は/及び水平方向の位置を調整する調整手段を備えるので、嵩上手段を備える場合に設置対象の垂直方向又は/及び水平方向の位置を調整でき、設置対象の建入れ直しを一層正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る設置対象、第1周辺部材、第2周辺部材、及び支持構造を概念的に示す斜視図である。
図2】設置対象及び支持構造を示す正面図である。
図3】設置対象及び支持構造を示す左側面図である。
図4図2のA-A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る支持構造の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、設置対象を設置面に対して立設するための支持構造に関する。
【0017】
ここで、「設置対象」とは、構造物の躯体の一部であって、設置面に対して立設される対象を意味し、例えば、鋼製又はコンクリート製の柱材及び壁材等を含む概念であるが、実施の形態では、鋼製の柱材として説明する。
【0018】
また、「構造物」の具体的な構造や種類は任意であるが、例えば、オフィスビル、商業施設、公共施設、及びアパートやマンションの如き集合住宅等の建築構造物や、橋、堤防、ダム等の土木構造物を含む概念であるが、実施の形態では、複数階を有する施工中のオフィスビルとして説明する。
【0019】
また、「設置面」とは、設置対象が設置される面を意味し、例えば、基板層の上面又は床材の上面等を含む概念であるが、実施の形態では、基礎床材の上面として説明する。
【0020】
また、「立設」とは、設置対象を立った状態で設けることを意味し、例えば、設置対象が長尺な柱体である場合には、柱体の長手方向が上下方向に沿うように設けることが該当し、設置対象が壁体である場合には、壁体の主面(壁体の面のうち、面積が最も大きな面)が上下方向に沿うように設けることが該当する。
【0021】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0022】
(構成)
最初に、実施の形態に係る支持構造20の構成と、支持構造20によって支持される設置対象1の構成と、設置対象1の周辺に設けられる第1周辺部材11及び第2周辺部材12の構成とについて説明する。
【0023】
(構成-設置対象)
まず、設置対象1の構成について説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る設置対象1、第1周辺部材11、第2周辺部材12、及び支持構造20を概念的に示す斜視図である。以下の説明では、図1のX方向を設置対象1の左右方向(-X方向を設置対象1の左方向、+X方向を設置対象1の右方向)、図1のY方向を設置対象1の前後方向(+Y方向を設置対象1の前方向、-Y方向を設置対象1の後方向)、図1のZ方向を設置対象1の上下方向(+Z方向を設置対象1の上方向、-Z方向を設置対象1の下方向)と称する。
【0025】
設置対象1は、構造物(具体的には、オフィスビル)の基本構造体の一部である。この設置対象1は、例えば公知の鋼製の柱材(一例として、中空の四角柱状である柱材)等を用いて構成されており、構造物の最下階層に設けられている。具体的には、図1に示すように、設置対象1の長手方向が上下方向に略沿うように設けられていると共に、後述する嵩上部60及び下地部13(例えば、無筋コンクリート製の下地部(いわゆる捨てコンクリート))を介して設置面F(具体的には、基礎床材の上面)上に設けられている。
【0026】
(構成-第1周辺部材、第2周辺部材)
次に、第1周辺部材11及び第2周辺部材12(図1では、それぞれ想像線で示される)の構成について説明する。
【0027】
第1周辺部材11は、構造物の基本構造体の他の一部であって、設置対象1の周辺に設けられるコンクリート体である。この第1周辺部材11は、例えば公知のコンクリート製の梁材(一例として、鉄筋コンクリート製の基礎梁材)を用いて構成されており、図1に示すように、下地部13を介して設置面Fに複数載置されている。
【0028】
第2周辺部材12は、構造物の基本構造体の他の一部であって、設置対象1の周辺に設けられるコンクリート体である。この第2周辺部材12は、例えば公知のコンクリート製の床材(一例として、鉄筋コンクリート製の床材)を用いて構成されており、図1に示すように、第1周辺部材11の上面に載置されている。
【0029】
(構成-支持構造)
次に、支持構造20の構成について説明する。
【0030】
図2は、設置対象1及び支持構造20を示す正面図である。図3は、設置対象1及び支持構造20を示す側面図である。図4は、図2のA-A矢視断面図である。
【0031】
支持構造20は、設置対象1を設置面Fに対して立設するためのものである。この支持構造20は、図1に示すように、設置対象1の周辺に設けられており、第1支持部材30a、第2支持部材30b、及び嵩上部60を備えている。
【0032】
(構成-支持構造-第1支持部材、第2支持部材)
第1支持部材30a及び第2支持部材30bは、支持構造20の基本構造体であり、図1に示すように、設置対象1と設置面Fとを接続するように設けられている。また、これら第1支持部材30a及び第2支持部材30bは、圧縮性及び引張性を有するようにそれぞれ構成されており、具体的には、図2図3に示すように、支持部材本体40及び張力調整部50を備えている。
【0033】
(構成-支持構造-第1支持部材、第2支持部材-支持部材本体)
図2に戻り、支持部材本体40は、第1支持部材30a(又は第2支持部材30b)の基本構造体であり、図2図3に示すように、第1本体部41、第2本体部42、第1接続部43、及び第2接続部44を備えている。
【0034】
(構成-支持構造-第1支持部材、第2支持部材-支持部材本体-第1本体部)
図2に戻り、第1本体部41は、支持部材本体40の基本構造体の一部である。この第1本体部41は、例えば長尺状体にて構成されており、図2図3に示すように、設置面F側において下方から上方に向けて傾斜して設けられている。
【0035】
なお、設置面Fに対する第1本体部41の傾斜角度の設定方法については任意であるが、設置対象1を安定して支持可能であり、且つ設置対象1の周辺の作業性を確保しやすい角度に設定されることが好ましく、例えば、60度から80度程度に設定されている(なお、設置面Fに対する第2本体部42の傾斜角度についても同様とする)。
【0036】
また、第1本体部41の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、以下の通りに構成されている。
【0037】
すなわち、第1本体部41は、第1周辺部材11及び第2周辺部材12(すなわち、コンクリート体)に埋め殺し可能に構成されており、具体的には、長尺な型鋼(例えば、アングル材)等で構成されている(なお、第2本体部42の構成についても略同様とする)。ただし、これに限らず、例えば、上記構成に加えて、手動式切断機等で切断可能な直径(例えば、4mmから6mm程度の直径)を有するように構成されてもよい。
【0038】
また、第1本体部41の各種の大きさ(具体的には、長手方向の長さ、短手方向の長さ、厚さ)については、設置対象1の自重に対して安全率(例えば、1.25~1.5等)を積算した水平力(つまり、型枠支保工の施工時荷重同等値と仮定した水平力)が設置対象1の上端部に作用しても、第1本体部41が座屈しない長さにそれぞれ設定されている(なお、第2本体部42の構成、及び張力調整部50の構成についても略同様とする)。
【0039】
(構成-支持構造-第1支持部材、第2支持部材-支持部材本体-第2本体部)
図2に戻り、第2本体部42は、支持部材本体40の基本構造体の他の一部である。この第2本体部42は、例えば長尺状体にて構成されており、図2図3に示すように、設置対象1側において下方から上方に向けて傾斜して設けられている。
【0040】
(構成-支持構造-第1支持部材、第2支持部材-支持部材本体-第1接続部)
図2に戻り、第1接続部43は、設置面Fと第1本体部41とを接続するものである。この第1接続部43は、例えば公知の接続部材(一例として、一対の鋼製のアングル材を組み合わせてなる接続金具)等を用いて構成されており、図2図3に示すように、下地部13を介して設置面Fに載置され、設置面F及び第1本体部41の各々に対して固定具等によって接続されている。
【0041】
(構成-支持構造-第1支持部材、第2支持部材-支持部材本体-第2接続部)
図2に戻り、第2接続部44は、設置対象1と第2本体部42とを接続するものである。この第2接続部44は、例えば公知の接続部材(一例として、設置対象1にあらかじめ取り付けられた鋼製のエレクションピース)等を用いて構成されており、図2図3に示すように、設置対象1の上端部又はその近傍に設けられ、第2本体部42に対して固定具等によって接続されている。
【0042】
(構成-支持構造-第1支持部材、第2支持部材-張力調整部)
図2に戻り、張力調整部50は、支持部材本体40の張力を調整する張力調整手段である。この張力調整部50は、例えば伸縮機能を有する公知の張力調整器具(一例として、ターンバックル)等を用いて構成されており、図2図3に示すように、第1本体部41と第2本体部42との間に設けられ、第1本体部41及び第2本体部42の各々に対して嵌合構造又は固定具等によって接続されている。
【0043】
また、張力調整部50の設置方法については任意であるが、実施の形態では、第1支持部材30a又は第2支持部材30bの少なくともいずれか一方の張力調整部50を、第1周辺部材11及び第2周辺部材12に埋め殺しされない位置に配置している。具体的には、図1に示すように、第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の張力調整部50が第1周辺部材11及び第2周辺部材12に埋め殺しされないように、当該張力調整部50を第1周辺部材11及び第2周辺部材12よりも上方の位置に配置している。
【0044】
この場合において、第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の支持部材本体40の構成については、図1から図3に示すように、第1本体部41の長手方向の長さが第2本体部42の長手方向の長さよりも長くなるように設定されている。
【0045】
このような設置により、第1周辺部材11又は第2周辺部材12の硬化直前まで第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の支持部材本体40の張力を調整でき、設置対象1の建入れ直しの精度を高めることができる。
【0046】
また、このような張力調整部50により、第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の支持部材本体40の張力を調整でき、設置対象1の建入れ直しを正確に行うことができる。
【0047】
(構成-支持構造-第1支持部材、第2支持部材-その他の構成)
また、第1支持部材30a及び第2支持部材30bの具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、第1支持部材30a及び第2支持部材30bのみによって、設置対象1の設置位置が第1水平方向及び第2水平方向にずれることを抑制可能となるように、第1支持部材30a及び第2支持部材30bは配置されている。
【0048】
ここで、「第1水平方向」とは、水平方向の一方向を意味し、実施の形態では、左右方向として説明する。ただし、これに限らず、例えば、前後方向、左斜め方向、又は右斜め方向等であってもよい。また、「第2水平方向」とは、第1水平方向とは異なる方向であって、水平方向の他の一方向を意味し、実施の形態では、前後方向として説明する。ただし、これに限らず、例えば、左右方向、左斜め方向、又は右斜め方向等であってもよい。
【0049】
具体的には、上記設置対象1の設置位置のズレを効果的に抑制するために、図1から図3に示すように、平面方向から見て、第1支持部材30aに対する第2支持部材30bの角度が略直角(又は鈍角)となるように、第1支持部材30a及び第2支持部材30bは配置されている。
【0050】
より具体的には、第1支持部材30aについては、第1支持部材30aの第1接続部43が、設置面Fにおける設置対象1よりも左方の位置に配置されていると共に、第1支持部材30aの第2接続部44が、設置対象1の左側面部に配置されている。そして、この第1接続部43と第1支持部材30aの第1本体部41とが接続され、且つこの第2接続部44と第1支持部材30aの第2本体部42とが接続されると共に、これら第1本体部41及び第2本体部42が第1支持部材30aの張力調整部50を介して接続されている。
【0051】
また、第2支持部材30bについては、第2支持部材30bの第1接続部43が、設置面Fにおける設置対象1よりも前方の位置に配置されていると共に、第2支持部材30bの第2接続部44が、設置対象1の前側面部に配置されている。そして、この第1接続部43と第2支持部材30bの第1本体部41とが接続され、且つこの第2接続部44と第2支持部材30bの第2本体部42とが接続されると共に、これら第1本体部41及び第2本体部42が第2支持部材30bの張力調整部50を介して接続されている。
【0052】
このような構成により、第1支持部材30a及び第2支持部材30bのみによって設置対象1の設置位置が第1水平方向及び第2水平方向にずれることを抑制でき、従来技術(4つの引張材を用いて設置対象1の建入れ直しを行う技術)に比べて、設置対象1の周辺の作業性を確保しながら、設置対象1の建入れ直しを正確に行うことができる。
【0053】
(構成-支持構造-嵩上部)
図1に戻り、嵩上部60は、設置対象1を嵩上げするための嵩上手段である。この嵩上部60は、図1に示すように、設置対象1と設置面Fとの間に設けられており、図2図3に示すように、嵩上部本体70、第1調整部80、第2調整部90、及び位置合わせ部(図示省略)を備えている。
【0054】
(構成-支持構造-嵩上部-嵩上部本体)
図2に戻り、嵩上部本体70は、嵩上部60の基本構造体である。この嵩上部本体70は、例えば公知の鋼製のフレーム材を溶接等で複数組み合せて構成されている。具体的には、図2図3に示すように、矩形環状の下側フレーム材71と、第1フレーム材よりも上方に位置する矩形環状の上側フレーム材72と、下側フレーム材71と上側フレーム材72とを接続する複数の接続フレーム材73と、接続フレーム材73を補強する複数の補強フレーム材74とを備えている。また、この嵩上部本体70は、図示しないレベル調整材(例えば、フィラー)及び下地部13を介して設置面Fに載置されており、設置面Fに対して固定具等によって固定されている。
【0055】
(構成-支持構造-嵩上部-第1調整部)
図2に戻り、第1調整部80は、設置対象1の垂直方向又は/及び水平方向の位置を調整する調整手段である。この第1調整部80は、図2図3に示すように、上側フレーム材72の近傍に複数設けられており(図2では、4つ設けられており)、第1調整体81、第2調整体82、及び調整側支持部83を備えている。
【0056】
(構成-支持構造-嵩上部-第1調整部-第1調整体、第2調整体)
第1調整体81及び第2調整体82は、例えば公知のナット部材を用いてそれぞれ構成されており、図2図3に示すように、これら第1調整体81及び第2調整体82によって設置対象1が挟持されるようにそれぞれ設けられている。具体的には、第1調整体81は、下端プレート2よりも上方に設けられていると共に、第2調整体82は、下端プレート2と上側フレーム材72との間に設けられている。
【0057】
(構成-支持構造-嵩上部-第1調整部-調整側支持部)
図2に戻り、調整側支持部83は、第1調整体81及び第2調整体82を支持するものである。この調整側支持部83は、例えば、第1調整体81及び第2調整体82における上下方向の設置位置を調整可能な支持部材(一例として、全ネジボルト)を用いて構成され、図2図3に示すように、第1調整体81と、第2調整体82と、下端プレート2に形成された図示しない挿通孔を挿通するように設けられており、上側フレーム材72及び接続フレーム材73に対して溶接等によって接続されている。
【0058】
また、調整側支持部83の上下方向の長さについては任意であるが、例えば、第1調整体81、第2調整体82、及び下端プレート2を挿通した状態において、調整側支持部83の余剰部分によって設置対象1の上下方向の許容設置誤差を吸収することができる長さに設定されることが望ましく、一例として、上記余剰部分の長さが100mm程度確保できる長さに設定されてもよい。
【0059】
このような第1調整部80により、嵩上部60を備える場合に設置対象1の垂直方向の位置を調整でき、設置対象1の建入れ直しを一層正確に行うことができる。
【0060】
(構成-支持構造-嵩上部-第2調整部)
図2に戻り、第2調整部90は、設置対象1の垂直方向又は/及び水平方向の位置を調整する調整手段である。この第2調整部90は、図2に示すように、上側フレーム材72の近傍に複数設けられており(図2では、4つ設けられており)、調整体91及び調整孔(図示省略)を備えている。
【0061】
(構成-支持構造-嵩上部-第2調整部-調整体)
調整体91は、例えば公知のナット付きボルト部材を用いて構成されており、図2に示すように、調整体91のボルト部が上側フレーム材72に形成された挿通孔(図示省略)及び調整孔に挿通されるように設けられている。
【0062】
(構成-支持構造-嵩上部-第2調整部-調整孔)
調整孔は、上下方向に長い長孔(例えば、上下方向の長さが50mm程度である貫通孔)にて形成されており、接続フレーム材73の上側部分に設けられている。
【0063】
このような第2調整部90により、嵩上部60を備える場合に設置対象1の垂直方向の位置を調整でき、設置対象1の建入れ直しを一層正確に行うことができる。
【0064】
(構成-支持構造-嵩上部-位置合わせ部)
位置合わせ部は、嵩上部60の位置合わせを行うための位置合わせ手段である。この位置合わせ部は、例えば公知のマーキング材(一例として、罫書用マーキング材)を用いて構成されており、下側フレーム材71と、下地部13の嵩上部60に対応する部分とに少なくとも1つ以上設けられている。
【0065】
このような位置合わせ部により、嵩上部60の位置合わせを容易に行うことができ、嵩上部60の設置性を高めることができる。
【0066】
また、このような嵩上部60により、嵩上部60を設けない場合に比べて設置対象1の設置コストを低減しながら、設置状況に応じた設置対象1の設置を行うことができる。
【0067】
以上のような支持構造20により、設置対象1の周辺の作業性及び設置対象1の設置性を高めることができ、支持構造20の使用性を高めることが可能となる。
【0068】
(立設方法)
続いて、上述した支持構造20を用いた設置対象1の立設方法について説明する。
【0069】
この立設方法は、設置対象1を設置面Fに対して立設するための方法であり、第1打設工程、設置工程、第2打設工程、及び第3打設工程を含んでいる。
【0070】
(立設方法-第1打設工程)
まず、第1打設工程について説明する。第1打設工程は、下地部13のコンクリートを打設する工程である。
【0071】
具体的には、まず、型枠を設置面Fに載置する。次に、上記型枠内にコンクリートを流し込んで打設する。そして、打設したコンクリートを所定期間養生して硬化した後に、上記型枠を撤去する。
【0072】
(立設方法-設置工程)
次に、設置工程について説明する。設置工程は、第1打設工程の後に、設置対象1及び支持構造20を設置する工程である。
【0073】
具体的には、まず、嵩上部60(具体的には、工場又は現場であらかじめ組み立てられた嵩上部60(ただし、上側フレーム材72と接続フレーム材73との接続は除く)を、設置面Fに対して固定具で固定する。次に、公知の吊り装置(例えば、クレーン装置)を用いて、設置対象1(具体的には、第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の第2接続部44が工場又は現場であらかじめ接続されている設置対象1)を嵩上部60の上部に設置する。この場合には、第1調整部80及び第2調整部90によって設置対象1の上下方向の設置位置を調整した後に、第2調整部90の調整体91を上側フレーム材72及び接続フレーム材73に対して溶接で接続することにより、設置対象1の所望位置に正確に設置することができる。次いで、第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の第1接続部43を、固定具によって設置面Fに接続する。次に、第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の第1本体部41及び第2本体部42を張力調整部50を介して接続し、当該接続したものを対応する第1接続部43及び第2接続部44と接続する。続いて、第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の張力調整部50によって支持部材本体40の張力を調整する。
【0074】
(立設方法-第2打設工程)
次に、設置工程の後に、第2打設工程について説明する。第2打設工程は、第1周辺部材11のコンクリートを打設する工程である。
【0075】
具体的には、まず、第1周辺部材11の鉄筋及び型枠を、下地部13の上面に載置する。次に、上記型枠内にコンクリートを流し込んで打設する。そして、上記打設したコンクリートを所定期間養生して硬化した後に、上記型枠を撤去する。また、必要に応じて、例えば、上記打設したコンクリートが硬化する前に、第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の張力調整部50によって支持部材本体40の張力を調整してもよい(なお、第3打設工程についても同様とする)。
【0076】
(立設方法-第3打設工程)
続いて、第2打設工程の後に、第3打設工程について説明する。第3打設工程は、第2周辺部材12のコンクリートを打設する工程である。
【0077】
具体的には、まず、第2周辺部材12の鉄筋及び型枠を、第1周辺部材11の上面に載置する。次に、上記型枠内にコンクリートを流し込んで打設する。そして、上記打設したコンクリートを所定期間養生して硬化した後に、上記型枠を撤去する。これにて立設方法を終了する。
【0078】
以上のような立設方法により、第1支持部材30a及び第2支持部材30bのみによって設置対象1の設置位置が第1水平方向及び第2水平方向にずれることを抑制でき、設置対象1の周辺の作業性(例えば、第2打設工程時又は第3打設工程時における設置対象1の周辺の作業性)を確保しながら、設置対象1の建入れ直しを正確に行うことができる。
【0079】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、第1支持部材30a及び第2支持部材30bのみによって、設置対象1の設置位置が第1水平方向と第1水平方向とは異なる第2水平方向とにずれることを抑制可能となるように、第1支持部材30a及び第2支持部材30bを配置したので、第1支持部材30a及び第2支持部材30bのみによって設置対象1の設置位置が第1水平方向及び第2水平方向にずれることを抑制でき、従来技術(4つの引張材を用いて設置対象1の建入れ直しを行う技術)に比べて、設置対象1の周辺の作業性を確保しながら、設置対象1の建入れ直しを正確に行うことができる。
【0080】
また、第1支持部材30a及び第2支持部材30bが、支持部材本体40と、支持部材本体40の張力を調整する張力調整部50と、を備えるので、当該支持部材本体40の張力を調整でき、設置対象1の建入れ直しを一層正確に行うことができる。
【0081】
また、第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の張力調整部50を、コンクリート体に埋め殺しされない位置に配置したので、コンクリート体の硬化直前まで第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の支持部材本体40の張力を調整でき、設置対象1の建入れ直しの精度を高めることができる。
【0082】
また、嵩上部60が、設置対象1の垂直方向の位置を調整する第1調整部80及び第2調整部90を備えるので、嵩上部60を備える場合に設置対象1の垂直方向の位置を調整でき、設置対象1の建入れ直しを一層正確に行うことができる。
【0083】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0084】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0085】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0086】
(設置対象について)
上記実施の形態では、設置対象1は、中空の四角柱状である柱材であると説明したが、これに限らず、例えば、Y字又はV字状の柱材であってもよい。
【0087】
(支持構造について)
上記実施の形態では、支持構造20が、嵩上部60を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、嵩上部60を省略して、設置対象1を下地部13を介して設置面Fに設けてもよい。
【0088】
(第1支持部材、第2支持部材について)
上記実施の形態では、第1支持部材30a及び第2支持部材30bが、張力調整部50を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、第1支持部材30a又は第2支持部材30bの少なくともいずれか一方は、張力調整部50を省略してもよい。
【0089】
また、上記実施の形態では、第1支持部材30a及び第2支持部材30bの各々の張力調整部50が、第1周辺部材11及び第2周辺部材12に埋め殺しされない位置に配置されていると説明したが、これに限らない。例えば、第1支持部材30a又は第2支持部材30bの少なくともいずれか一方の張力調整部50は、第1周辺部材11及び第2周辺部材12に埋め殺しされる位置に配置されてもよい。
【0090】
(嵩上部について)
上記実施の形態では、嵩上部60が、第1調整部80、第2調整部90、及び位置合わせ部を備えていると説明したが、これに限らず、例えば、第1調整部80、第2調整部90、又は位置合わせ部の少なくともいずれか1つを省略してもよい。
【0091】
また、上記実施の形態では、第1調整部80が、設置対象1の垂直方向の位置を調整するものであると説明したが、これに限らない。例えば、設置対象1の垂直方向及び水平方向の位置を調整するものであってもよい。一例として、第1調整部80が、第1調整体81、第2調整体82、及び調整側支持部83に加えて、下端プレート2に形成される調整孔(具体的には、調整側支持部83を挿通するための調整孔)であって、左右方向又は前後方向に長い長孔状である調整孔を備えてもよい。
【0092】
(付記)
付記1の支持構造は、設置対象を設置面に対して立設するための支持構造であって、前記設置対象と前記設置面とを接続する第1支持部材及び第2支持部材であり、圧縮性及び引張性をそれぞれ有する第1支持部材及び第2支持部材を備え、前記第1支持部材及び前記第2支持部材のみによって、前記設置対象の設置位置が第1水平方向と第1水平方向とは異なる第2水平方向とにずれることを抑制可能となるように、前記第1支持部材及び前記第2支持部材を配置した。
【0093】
付記2の支持構造は、付記1に記載の支持構造において、前記第1支持部材又は前記第2支持部材の少なくともいずれか一方は、支持部材本体と、前記支持部材本体の張力を調整する張力調整手段と、を備える。
【0094】
付記3の支持構造は、付記2に記載の支持構造において、前記第1支持部材又は前記第2支持部材の少なくともいずれか一方の前記張力調整手段を、コンクリート体に埋め殺しされない位置に配置した。
【0095】
付記4の支持構造は、付記1から3のいずれか一項に記載の支持構造において、前記設置対象を嵩上げするための嵩上手段を備え、前記嵩上手段は、前記設置対象の垂直方向又は/及び水平方向の位置を調整する調整手段を備える。
【0096】
(付記の効果)
付記1に記載の支持構造によれば、第1支持部材及び第2支持部材のみによって、設置対象の設置位置が第1水平方向と第1水平方向とは異なる第2水平方向とにずれることを抑制可能となるように、第1支持部材及び第2支持部材を配置したので、第1支持部材及び第2支持部材のみによって設置対象の設置位置が第1水平方向及び第2水平方向にずれることを抑制でき、従来技術(4つの引張材を用いて設置対象の建入れ直しを行う技術)に比べて、設置対象の周辺の作業性を確保しながら、設置対象の建入れ直しを正確に行うことができる。
【0097】
付記2に記載の支持構造によれば、第1支持部材又は第2支持部材の少なくともいずれか一方が、支持部材本体と、支持部材本体の張力を調整する張力調整手段と、を備えるので、当該支持部材本体の張力を調整でき、設置対象の建入れ直しを一層正確に行うことができる。
【0098】
付記3に記載の支持構造によれば、第1支持部材又は第2支持部材の少なくともいずれか一方の張力調整手段を、コンクリート体に埋め殺しされない位置に配置したので、コンクリート体の硬化直前まで第1支持部材又は第2支持部材の少なくともいずれか一方の支持部材本体の張力を調整でき、設置対象の建入れ直しの精度を高めることができる。
【0099】
付記4に記載の支持構造によれば、嵩上手段が、設置対象の垂直方向又は/及び水平方向の位置を調整する調整手段を備えるので、嵩上手段を備える場合に設置対象の垂直方向又は/及び水平方向の位置を調整でき、設置対象の建入れ直しを一層正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0100】
1 設置対象
2 下端プレート
11 第1周辺部材
12 第2周辺部材
13 下地部
20 支持構造
30a 第1支持部材
30b 第2支持部材
40 支持部材本体
41 第1本体部
42 第2本体部
43 第1接続部
44 第2接続部
50 張力調整部
60 嵩上部
70 嵩上部本体
71 下側フレーム材
72 上側フレーム材
73 接続フレーム材
74 補強フレーム材
80 第1調整部
81 第1調整体
82 第2調整体
83 調整側支持部
90 第2調整部
91 調整体
F 設置面
図1
図2
図3
図4