(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163478
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】描画装置および描画方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068429
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 翔太
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA22
2H197AA28
2H197AB11
2H197CA07
2H197CC05
2H197CC11
2H197DA03
2H197DA04
2H197DA09
2H197DB11
2H197HA03
(57)【要約】
【課題】焦点深度を超える高低差を有する露光面上においてパターンを高精度で描画することができる描画装置および描画方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの描画パターンは、少なくとも部分的に段差構造の傾斜面上に描画される少なくとも1つの段差パターンを含む。少なくとも1つの段差パターンは平面視において長手方向に延在している。変調器44は、配列方向GXに配列された複数の回折要素によって構成される回折格子を有している。回転機構21は、基板Wを水平面内で回転する。制御部60は、少なくとも1つの段差パターンの長手方向と、配列方向GXに直交する直交方向GYと、が平面視において略一致するように水平面における基板Wの向きが調整されるように回転機構21を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の露光面に少なくとも1つの描画パターンを描画する描画装置であって、
前記露光面には、段差上面と、前記段差上面よりも低い高さの段差下面と、前記段差上面と段差下面とを互いにつなぐ傾斜面とを有する少なくとも1つの段差構造が設けられており、前記少なくとも1つの描画パターンは、少なくとも部分的に前記段差構造の前記傾斜面上に描画される少なくとも1つの段差パターンを含み、前記少なくとも1つの段差パターンは平面視において長手方向に延在しており、前記描画装置は、
前記基板を水平面に保持する基板保持機構と、
光源と、
配列方向に配列された複数の回折要素によって構成される回折格子を有し、前記光源からの光を変調する変調器と、
前記露光面と前記変調器との間に配置される対物レンズを含む投影光学系と、
前記基板を前記水平面内で回転する回転機構と、
前記少なくとも1つの段差パターンの前記長手方向と、前記回折格子の前記配列方向に直交する直交方向と、が平面視において略一致するように前記水平面における前記基板の向きが調整されるように前記回転機構を制御する制御部と、
を備える、描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記光源と前記回折格子との間に照明光学系をさらに備え、前記照明光学系は前記回折格子へ前記光源からの光を前記配列方向において平行光として供する、描画装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記複数の回折要素は前記配列方向にのみ配列されている、描画装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の描画装置であって、
前記制御部は、前記少なくとも1つの段差パターンのうち、前記基板の第1の基板方位を基準として第1の許容角度範囲内に長手方向を有するものを表すデータを、第1のパターンデータとして抽出する抽出部を含む、描画装置。
【請求項5】
請求項4に記載の描画装置であって、
前記第1の許容角度範囲は±10度以内である、描画装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の描画装置であって、
前記抽出部は、前記少なくとも1つの段差パターンのうち、前記基板の前記第1の基板方位とは異なる第2の基板方位を基準として第2の許容角度範囲内に長手方向を有するものを表すデータを、第2のパターンデータとして抽出する、描画装置。
【請求項7】
請求項6に記載の描画装置であって、
前記第2の基板方位は前記第1の基板方位に直交している、描画装置。
【請求項8】
基板上の露光面に少なくとも1つの描画パターンを描画する描画方法であって、
前記露光面には、段差上面と、前記段差上面よりも低い高さの段差下面と、前記段差上面と段差下面とを互いにつなぐ傾斜面とを有する少なくとも1つの段差構造が設けられており、前記少なくとも1つの描画パターンは、少なくとも部分的に前記段差構造の前記傾斜面上に描画される少なくとも1つの段差パターンを含み、前記少なくとも1つの段差パターンは平面視において長手方向に延在しており、前記描画方法は、
(a)前記基板を水平面に保持する工程と、
(b)前記水平面における前記基板の向きを調整する工程と、
(c)配列方向に配列された複数の回折要素によって構成される回折格子を有する変調器によって変調された光を、対物レンズを介して前記露光面へ照射する工程と、
を備え、
前記工程(b)は、前記少なくとも1つの段差パターンの前記長手方向と、前記回折格子の前記配列方向に直交する方向と、が平面視において略一致するように行われる、描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置および描画方法に関し、特に、回折格子を有する変調器を含む描画装置と、それを用いた描画方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィにおける代表的な露光方法として、フォトマスクのパターンを光学系によって基板上に投影する方法が広く用いられている。一方で、これとは異なり、描画ヘッドを用いて感光面上にパターンを描画する方法、言い換えれば直接描画、も用いられており、この場合、フォトマスクを必要としないという利点を有している。直接描画の技術として、例えば、特開2015-170838号公報(特許文献1)によれば、配線などの膜パターンを凹部あるいは凸部等の傾斜面に形成するときの露光不良を低減することが意図された露光方法が開示されている。上記公報によれば、露光不良の低減が、偏光状態を制御することによって迷光を抑制することにより達成される、という旨が主張されている。また上記公報によれば、傾斜面に対して高解像度で微細なパターンを形成する場合、投影光学系の焦点深度(DOF:Depth of Focus)に限界があるために、1つの傾斜面を複数の露光領域に分けて微細なパターンを露光する必要がある、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デバイス構造の複雑化にともない、段差構造を有する面上での直接描画による露光が求められている。直接描画を行うための描画装置のDOFは、典型的には数μmから十数μm程度であり、段差構造の高低差がDOFを大きく超える場合は、デフォーカスに起因して描画パターンと設計パターンとの相違が大きくなりやすい。この問題に対応して、上記公報の技術によれば、1つの傾斜面を複数の露光領域に分けて微細なパターンが露光される。しかしこの方法においては、各領域に対応して光学系のフォーカスを複雑に調整する必要があり、その結果、描画装置の制御が複雑化してしまう。特に、高低差が100μmを超える場合、描画装置用の典型的なオートフォーカス機構では、高さ変化への追従が困難である。
【0005】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、DOFを超える高低差を有する露光面上において、光学系のフォーカスを複雑に調整する必要なく、パターンを高精度で描画することができる、描画装置および描画方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様は、基板上の露光面に少なくとも1つの描画パターンを描画する描画装置であって、前記露光面には、段差上面と、前記段差上面よりも低い高さの段差下面と、前記段差上面と段差下面とを互いにつなぐ傾斜面とを有する少なくとも1つの段差構造が設けられており、前記少なくとも1つの描画パターンは、少なくとも部分的に前記段差構造の前記傾斜面上に描画される少なくとも1つの段差パターンを含み、前記少なくとも1つの段差パターンは平面視において長手方向に延在しており、前記描画装置は、前記基板を水平面に保持する基板保持機構と、光源と、配列方向に配列された複数の回折要素によって構成される回折格子を有し、前記光源からの光を変調する変調器と、前記露光面と前記変調器との間に配置される対物レンズを含む投影光学系と、前記基板を前記水平面内で回転する回転機構と、前記少なくとも1つの段差パターンの前記長手方向と前記回折格子の前記配列方向に直交する直交方向とが平面視において略一致するように前記水平面における前記基板の向きが調整されるように前記回転機構を制御する制御部と、を備える。
【0007】
第2態様は、第1態様の描画装置であって、前記光源と前記回折格子との間に照明光学系をさらに備え、前記照明光学系は前記回折格子へ前記光源からの光を前記配列方向において平行光として供する。
【0008】
第3態様は、第1または第2態様の描画装置であって、前記複数の回折要素は前記配列方向にのみ配列されている。
【0009】
第4態様は、第1から第3のいずれかの態様の描画装置であって、前記制御部は、前記少なくとも1つの段差パターンのうち、前記基板の第1の基板方位を基準として第1の許容角度範囲内に長手方向を有するものを表すデータを、第1のパターンデータとして抽出する抽出部を含む。
【0010】
第5態様は、第4態様の描画装置であって、前記第1の許容角度範囲は±10度である。
【0011】
第6態様は、第4または第5態様の描画装置であって、前記抽出部は、前記少なくとも1つの段差パターンのうち、前記基板の前記第1の基板方位とは異なる第2の基板方位を基準として第2の許容角度範囲内に長手方向を有するものを表すデータを、第2のパターンデータとして抽出する。
【0012】
第7態様は、第6態様の描画装置であって、前記第2の基板方位は前記第1の基板方位に直交している。
【0013】
第8態様は、基板上の露光面に少なくとも1つの描画パターンを描画する描画方法であって、前記露光面には、段差上面と、前記段差上面よりも低い高さの段差下面と、前記段差上面と段差下面とを互いにつなぐ傾斜面とを有する少なくとも1つの段差構造が設けられており、前記少なくとも1つの描画パターンは、少なくとも部分的に前記段差構造の前記傾斜面上に描画される少なくとも1つの段差パターンを含み、前記少なくとも1つの段差パターンは平面視において長手方向に延在しており、前記描画方法は、(a)前記基板を水平面に保持する工程と、(b)前記水平面における前記基板の向きを調整する工程と、(c)配列方向に配列された複数の回折要素によって構成される回折格子を有する変調器によって変調された光を、対物レンズを介して前記露光面へ照射する工程と、を備え、前記工程(b)は、前記少なくとも1つの段差パターンの前記長手方向と、前記回折格子の前記配列方向に直交する方向と、が平面視において略一致するように行われる。
【発明の効果】
【0014】
上記各態様によれば、少なくとも1つの段差パターンの長手方向と、回折格子の配列方向に直交する直交方向と、が平面視において略一致するように基板の向きが調整される。これにより、DOFを超える高低差を有する露光面上において、光学系のフォーカスを複雑に調整する必要なく、パターンを高精度で描画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る描画装置の構成を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1の描画装置の構成を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図1の描画装置が有する変調器の構成および動作原理を説明する部分断面図である。
【
図4】
図1の描画装置が有する変調器の構成および動作原理を説明する部分断面図である。
【
図5】
図1の描画装置が有する光学ユニットにおける光路を模式的に説明する図である。
【
図6】
図1の描画装置が有する光学ユニットにおける光路を模式的に説明する図である。
【
図7】
図1の制御部のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図8】一実施形態に係る描画方法における第1モードでの露光走査を概略的に示す平面図である。
【
図9】一実施形態に係る描画方法における第2モードでの露光走査を概略的に示す平面図である。
【
図10】基板の露光面を例示する部分平面図である。
【
図12】段差パターンの描画を必要とする装置の一例を示す部分平面図である。
【
図13】
図12の線XIII-XIIIに沿う部分断面図である。
【
図15】
図1の制御部の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図16】
図1の制御部の機能を説明するための部分平面図である。
【
図17】
図1の制御部の機能を説明するための部分平面図である。
【
図18】一実施形態における描画方法を概略的に示すフロー図である。
【
図19】一実施形態における描画方法の一工程を概略的に示す平面図である。
【
図20】一実施形態における描画方法の一工程を概略的に示す平面図である。
【
図21】一実施形態における描画方法の一工程を概略的に示す平面図である。
【
図22】第1比較例における露光走査の様子を模式的に示す部分断面図である。
【
図23】
図22の露光走査によって得られるレジストパターンを示す部分平面図である。
【
図24】第2比較例における露光走査を説明する図である。
【
図25】一実施形態における露光走査を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。また、いくつかの図には、図面間での方向の関係性をわかりやすくするために、XYZ直交座標系におけるX軸、Y軸およびZ軸が示されている。
【0017】
<描画装置>
図1および
図2のそれぞれは、描画装置100の構成を概略的に示す側面図および平面図である。描画装置100は、フォトレジストのような感光層が形成された基板Wの露光面PE上へ、所定のデータに応じて変調された描画光を照射することにより、感光層を露光する。この露光によって、例えば回路パターンのような、少なくとも1つの描画パターンが描画される。所定のデータは、キャド(Computer-Aided Design:CAD)データのような、パターンを表すデータである。描画装置100を用いることによって、感光層に直接にパターンを描画すること、言い換えれば直接描画、が可能となる。直接描画は、露光用マスクを必要としないという利点がある。
【0018】
基板Wは、例えば、シリコンウエハ、樹脂基板、または、ガラス・石英基板である。基板Wは、例えば、半導体基板、プリント基板、カラーフィルタ用基板、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、磁気ディスク用基板、光ディスク用基板、または、太陽電池用パネルである。カラーフィルタ用基板は、例えば、液晶表示装置等に用いられる。フラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、例えば、液晶表示装置、またはプラズマ表示装置に用いられる。
図2には、基板Wとして、円形の半導体基板が例示されている。なお、基板Wの形状は特に限定されない。基板Wは、例えば、矩形状に形成されていてもよい。
【0019】
描画装置100は、本体フレーム2を有していてよい。本体フレーム2は、描画装置100の筐体を構成する。本体フレーム2の内部には、処理領域3と、受渡し領域4とが形成される。処理領域3と、受渡し領域4とは、互いに区分されている。描画装置100は、基台5と、支持フレーム6と、カセット載置部7と、ステージ10(基板保持機構)と、駆動機構20と、ステージ位置計測部30と、光学ユニット40と、搬送装置50と、制御部60とをさらに有していてよい。基台5、支持フレーム6、ステージ10、駆動機構20、ステージ位置計測部30、および光学ユニット40は、処理領域3に設置される。搬送装置50は、受渡し領域4に設置される。カセット載置部7は、本体フレーム2の外部に設置される。以下では、描画装置100に含まれる各部の構成について説明する。
【0020】
基台5は、ステージ10を支持する。支持フレーム6は、基台5に設置される。支持フレーム6は、光学ユニット40を支持する。
【0021】
ステージ10は、基板Wを保持する。ステージ10は、平板状の形状を有している。ステージ10の上面には、基板Wを載置可能な載置面11が形成される。ステージ10の載置面11には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されている。ステージ10の吸引孔に負圧(吸引圧)が形成されることによって、ステージ10の載置面11に載置された基板Wがステージ10に固定される。その結果、ステージ10は、基板Wを保持する。
【0022】
駆動機構20は、制御部60によって制御されることで、ステージ10とヘッド部402とを水平方向において相対的に移動させる。具体的には、駆動機構20はステージ10を、主走査方向Y、副走査方向X、および回転方向θに沿って移動させる。主走査方向Yは、
図1および
図2に示すY軸の+側方向である。副走査方向Xは、
図1および
図2に示すX軸の+側方向である。回転方向θは、
図2に示すZ軸周りの回転方向である。本実施形態では、Z軸の+側方向は、鉛直方向の上方を示す。ステージ10の載置面11は、X軸およびY軸の各々に対して平行であり、よってステージ10は、基板Wを水平方向に沿った姿勢に載置可能である。言い換えれば、ステージ10は基板Wを水平面に保持可能である。
【0023】
駆動機構20は、回転機構21と、支持プレート22と、副走査機構23と、ベースプレート24と、主走査機構25とを有している。回転機構21は、基板Wを水平面内で回転させるために、ステージ10を回転させるモータを有する。支持プレート22は、回転機構21を介してステージ10を支持する。副走査機構23は、支持プレート22を副走査方向Xに沿って移動させる。ベースプレート24は、副走査機構23を介して支持プレート22を支持する。主走査機構25は、ベースプレート24を主走査方向Yに沿って移動させる。
【0024】
回転機構21は、回転軸Aを中心にしてステージ10を回転させる。回転軸Aは、ステージ10の中心を通るとともに、Z軸に対して平行な軸である。回転機構21は、例えば、回転軸部211と、回転駆動部212とを含む。回転軸部211は、載置面11の裏側に固定され、Z軸に沿って延びる。回転駆動部212は、例えば、モータを含む。回転駆動部212は、回転軸部211の下端に設けられ、回転軸部211を回転させる。回転駆動部212が回転軸部211を回転させることにより、ステージ10が回転軸Aを中心として回転する。
【0025】
副走査機構23は、リニアモータ231を有している。リニアモータ231は、移動子と、固定子とで構成される。移動子は、支持プレート22の下面に取り付けられる。固定子は、ベースプレート24の上面に敷設される。ベースプレート24には、副走査方向Xに延びる一対のガイド部材232が敷設される。各ガイド部材232と支持プレート22との間には、ボールベアリングが設置されている。ボールベアリングは、ガイド部材232に沿って摺動する。支持プレート22は、ボールベアリングを介して一対のガイド部材232に支持される。リニアモータ231が動作すると、支持プレート22はガイド部材232に案内されつつ、副走査方向Xに沿って移動する。
【0026】
主走査機構25は、リニアモータ251を有している。リニアモータ251は、移動子と、固定子とにより構成される。移動子は、ベースプレート24の下面に取り付けられる。固定子は、描画装置100の基台5上に敷設される。基台5には、主走査方向Yに延びる一対のガイド部材252が敷設されている。各ガイド部材252とベースプレート24との間には、例えば、エアベアリングが設置されている。エアベアリングには、ユーティリティ設備からエアが供給される。ベースプレート24は、エアベアリングによってガイド部材252上に浮上する。その結果、ベースプレート24は、ガイド部材252に対して非接触の状態で支持される。リニアモータ251が動作すると、ベースプレート24はガイド部材252に案内されつつ、主走査方向Yに沿って移動する。このとき、ベースプレート24とガイド部材252との間に摩擦が生じることが回避される。
【0027】
ステージ位置計測部30は、ステージ10の位置を計測する。ステージ位置計測部30は、例えば、干渉式のレーザ測長器により構成される。ステージ位置計測部30は、例えば、ステージ10外からステージ10に向けてレーザ光を出射するとともに、ステージ10で反射したレーザ光を受光する。そして、ステージ位置計測部30は、ステージ10に向けて出射したレーザ光と、ステージ10で反射したレーザ光との干渉からステージ10の位置を計測する。ステージ10の位置は、主走査方向Yの位置と、回転方向θの位置とを示す。
【0028】
搬送装置50は、処理領域3への基板Wの搬入、および処理領域3からの基板Wの搬出を行う。搬送装置50は、複数のハンド51と、ハンド駆動機構52とを有している。ハンド51は、基板Wを搬送する。ハンド駆動機構52は、ハンド51を駆動させる。カセット載置部7には、未処理の基板Wが収容される。搬送装置50は、カセット載置部7から基板Wを取り出して処理領域3に搬入するとともに、処理領域3から処理済みの基板Wを搬出してカセットCに収容する。
【0029】
光学ユニット40は、ステージ10上に保持された基板Wに描画光を照射することで、基板Wにパターンを描画する。パターンは、例えば、ホール(Hole)、トレンチ(Trench)、およびゲート(Gate)など一般的なパターンである。光学ユニット40は、光源部401と、ヘッド部402(描画ヘッド)と、を有しており、これらの各々は制御部60によって制御される。光源部401は、支持フレーム6に設置される。ヘッド部402は、支持フレーム6に取り付けられた付設ボックスの内部に収容される。
【0030】
光源部401は、レーザ駆動部41と、レーザ発振器42(光源)と、照明光学系43とを有している。レーザ発振器42は、レーザ駆動部41からの駆動を受けて、出力ミラー(図示省略)からレーザ光であるスポットビームを出射する。レーザ光の波長は、典型的にはi線である。スポットビームは、照明光学系43に入射する。照明光学系43は、スポットビームから線状の光を生成する。線状の光は、強度分布が略均一であり、光束断面が帯状のラインビームである。ラインビームは、ヘッド部402に入射する。以下では、ヘッド部402に入射したラインビームを、入射光と記載することがある。なお、入射光がヘッド部402に入射する前の段階で入射光に絞りをかけることで、入射光の光量を調整する構成としてもよい。
【0031】
入射光は、ヘッド部402において、パターンデータに応じた空間変調を施される。入射光を空間変調させることは、入射光の空間分布を変化させることを示す。一般に、入射光の空間分布は、例えば、光の振幅、光の位相、および/または、偏光を示す。入射光の空間分布は、例えば、CADを用いて生成されたパターンの設計データをラスタライズすることにより生成される。パターンデータは、基板Wに対する描画光の照射位置を示す情報が画素単位で記録された情報である。描画装置100は、描画動作時には、パターンデータを示す情報を予め取得しており、それを制御部60において記憶している。
【0032】
ヘッド部402は、変調器44(具体的には空間光変調器)と、投影光学系45と、ミラー46とを有している。ヘッド部402に入射した入射光は、ミラー46を介して、予め定められた角度で変調器44に入射する。変調器44は、光源部401からの光を変調することによって変調光を発生する。具体的には、変調器44は、入射光を空間変調させることによって、描画光と不要光とに分別する。変調光のうち、描画光はパターンの描画に寄与する光であり、不要光はパターンの描画に寄与しない光である。投影光学系45は、変調器44から入射した変調光のうち、不要光を遮断し、描画光を基板Wに導く。このとき投影光学系45は、ステージ10上での高さ方向におけるフォーカス位置に描画光をフォーカスさせる。フォーカス位置は、ステージ位置計測部30による計測結果を参照して決定されてよい。描画光を基板Wへ入射させつつ、駆動機構20によってステージ10が移動させられることによって、基板Wにパターンが描画される。
【0033】
<変調器の詳細>
図3および
図4は、変調器44の構成および動作原理を説明する部分断面図である。なお、
図3は線III-III(
図4)に沿う部分断面図であり、
図4は線IV-IV(
図3)に沿う部分断面図である。
【0034】
変調器44は、複数の回折要素MUによって構成される回折格子440を有している。複数の回折要素MUは、X方向に沿った配列方向GXに配列されている。複数の回折要素MUは、配列方向GXにおいてのみ配列されており、他の方向においては配列されていない。言い換えれば、複数の回折要素MUは、2次元的ではなく1次元的に配列されている。よって変調器44は1次元的な変調器である。1次元的な変調器としては、半導体装置製造技術を用いて製造されるメムス(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)デバイスであるグレーティングライトバルブ(Grating Light Valve:GLV)(「GLV」はシリコン・ライト・マシーンズ社の登録商標)がよく知られており、本実施形態における変調器44として用いることができる。なお、2次元的な変調器としては、DMD(Digital Mirror Device:デジタルミラーデバイス)がよく知られている。
【0035】
GLVは、回折格子440によって構成される複数の画素(変調単位)を有している。各画素は、少なくとも1つの回折要素MUによって構成されており、典型的には、互いに隣り合う複数の回折要素MUによって構成されている。よって複数の画素は配列方向GXに配列されている。
図3においては、3つの回折要素MUによって構成された画素が例示されており、図中、画素PX
ONはオン状態の画素であり、画素PX
OFFはオフ状態の画素であり、これらを総称して画素PXとも称する。ここで、オン状態は、描画光に寄与する光としての0次回折光L
0を出射する状態、言い換えれば単純な正反射の状態、である。一方、オフ状態は、描画光に寄与する光を出射しない状態、言い換えれば不要光としての±1次回折光L
±1を出射する状態、である。
【0036】
GLVは、回折格子440と、共通電極444と、基板部446と、ドライバ回路ユニット450とを有している。回折格子440は、配列方向GXにおいて交互に配列された固定リボン441と可動リボン442とを有している。固定リボン441および可動リボン442の各々は微小ミラーとしての機能を有している。互いに隣り合う1つの固定リボン441および1つの可動リボン442が1つの回折要素MUを構成している。固定リボン441および可動リボン442の各々は、エアギャップを介して共通電極444と向き合っている部分を有している。可動リボン442の深さ方向GZにおける位置は、ドライバ回路ユニット450からの電圧信号に応じて発生する静電気力に起因しての撓みによって制御することができる。電圧信号は、画素単位で独立して制御可能である。一方、固定リボン441にはこのような電圧信号は印加されず、よってその深さ位置は固定されている。配列方向GXに直交する方向として直交方向GYを定義すると、電圧信号の印加がない状態では、固定リボン441および可動リボン442の各々は、エアギャップ上において、直交方向GYに沿って延在している。配列方向GXと、直交方向GYと、深さ方向GZとは、互いに直交していてよい。
【0037】
画素PX
ONにおいては、
図4の二点鎖線に示されているように、可動リボン442は撓んでおらず、その結果、画素PX
ONの表面は、可動リボン442および固定リボン441によって構成された平面となる。具体的には、画素PX
ONの表面は、配列方向GXと直交方向GYとが張る平面となる。この平面に入射光が入射すると、入射光は正反射される。言い換えれば0次回析光L
0が出射される。この0次回析光L
0は、描画光として基板Wに到達する。一方、画素PX
OFFにおいては、
図4に示されているように可動リボン442が撓んでおり、画素PX
OFFの表面には、
図3に示すように溝が形成される。当該表面に入射光L
INCが入射すると、非0次回折光、具体的には±1次回折光L
±1、が出射される。これら±1次回析光L
±1は、基板Wに到達する前に不要光として遮断される。
【0038】
GLVの具体的な構成を例示すると、配列方向GXにおいて幅4mmにわたって8000個の微小ミラー(リボン)が配列され、4個のミラー(2個の回折要素MU)によって1つの画素PXが構成される。これにより、配列方向GXにおいて2000個の画素PXが設けられ、幅方向GXにおける最小分解能は、4mm/2000=2μmである。
【0039】
<光学ユニットにおける光路>
図5および
図6のそれぞれは、光学ユニット40(
図1)における光源42(
図1参照)からの光路を模式的に説明する図である。
図5における縦方向は、当該光路にとって、変調器44の位置での配列方向GX(すなわちX方向)に対応している。
図6における縦方向は、
図5における縦方向とは直交する方向に対応している。また
図5および
図6の各々における横方向は、左から右に向かって光路の進行方向に対応しており、実際の空間においては一直線状ではなく、
図1に示されているように、ミラー46および変調器44において折れ曲がっている。そこで、方向の理解を容易とするため、
図5および
図6の下部に、照明光学系43と変調器44と投影光学系45との間での方向の対応関係が示されている。
【0040】
照明光学系43は、光源42(
図5および
図6において図示せず)と、変調器44の回折格子440との間に配置されている。照明光学系43は、光路の進行方向順に、パウエルレンズ431(またはシリンダーレンズ)と、コリメータレンズ432と、フォーカシングレンズ433とを有している。
図5を参照して、パウエルレンズ431は、光源からの光を拡散することによって、回折格子440において配列方向GXに対応することになる方向、すなわち照明光学系43におけるX方向、に沿って直線形状に伸長する。コリメータレンズ432は、パウエルレンズ431からの拡散光を、回折格子440において配列方向GXに対応することになる方向、すなわち照明光学系43におけるX方向、において、平行光(コリメート光)に調整する。フォーカシングレンズ433は、コリメータレンズ432からの平行光を、回折格子440において直交方向GY(
図6)に対応することになる方向においては変調器44におおよそフォーカスさせつつ、回折格子440において配列方向GX(
図5)に対応することになる方向においては平行光のまま透過させる。よって照明光学系43は光源からの光を回折格子440へ配列方向GXにおいて平行光として供する。一方で照明光学系43は光源からの光を回折格子440へ直交方向GYにおいて非平行光(具体的には収束光)として供する。
【0041】
投影光学系45は、変調器44の回折格子440と、露光面PEとの間に配置されている。投影光学系45は、変調器44と露光面PEとの間において、光路の進行方向順に、フーリエ変換レンズ451と、フーリエフィルタ452と、逆フーリエ変換レンズ453(対物レンズ)とを有している。対物レンズによって得られる倍率は比f
2/f
1によって決定され、ここで、f
1はフーリエ変換レンズ451の焦点距離であり、f
2は逆フーリエ変換レンズ453の焦点距離である。フーリエフィルタ452は、フーリエ変換レンズ451を経由してきた回折格子440の0次回折光L
0を透過させつつ、フーリエ変換レンズ451を経由してきた±1次回折光L
±1を遮断するフィルタであり、具体的には、0次回折光L
0を透過させるアパーチャを有する遮断板である。逆フーリエ変換レンズ453から出射された光が露光面PEに照射されることによって描画が行われる。
図5および
図6において露光面PEを超えて右方向へ描かれている2点鎖線は、光路の仮想的な延長線である。これら光路からわかるように、対物レンズとしての逆フーリエ変換レンズ453から出射した光の平行度は、Y方向(
図6)において低く、一方でX方向(
図5)においては、Y方向(
図6)に比して相対的に高く、好ましくは実質的に平行光である。
【0042】
<制御部のハードウェア構成>
図7は、制御部60のハードウェア構成を例示するブロック図である。制御部60は、電気回路を有する一般的な1つまたは複数のコンピュータによって構成されていてよい。複数のコンピュータが用いられる場合、これらは相互に通信可能に接続される。制御部60は、一つの電装ラック(図示省略)内に配置されていてよい。具体的には、制御部60は、中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)161、リードオンリーメモリ(Read Only Memory:ROM)162、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)163、記憶装置164、入力部166、表示部167および通信部168と、これらを相互に接続するバスライン165とを有している。ROM162は基本プログラムを格納している。RAM163は、CPU161が所定の処理を行う際の作業領域として用いられる。記憶装置164は、フラッシュメモリまたはハードディスク装置などの不揮発性記憶装置によって構成されている。入力部166は、各種スイッチ、タッチパネル、または記録媒体読取装置などによって構成されており、オペレータから処理レシピなどの入力設定指示を受ける。表示部167は、たとえば、液晶表示装置およびランプなどによって構成されており、CPU161の制御の下、各種の情報を表示する。通信部168は、ローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)などを介してのデータ通信機能を有している。記憶装置164には、描画装置100におけるそれぞれの構成の制御についての複数のモードがあらかじめ設定されている。CPU161が処理プログラム164Pを実行することによって、上記の複数のモードのうちの1つのモードが選択され、当該モードでそれぞれの構成が制御される。なお、処理プログラム164Pは、記録媒体に記憶されていてもよい。この記録媒体を用いれば、制御部60に処理プログラム164Pをインストールすることができる。また、制御部60が実行する機能の一部または全部は、必ずしもソフトウェアによって実現される必要はなく、専用の論理回路などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0043】
<露光走査>
図8は、本実施形態に係る描画方法における第1モードでの露光走査を概略的に示す平面図である。この露光走査において、基板Wへの露光走査が行われる。基板Wの主面は、互いに直交する基板方位WXおよび基板方位WYを有している。基板Wがステージ10(
図1および
図2)に保持された状態においては、基板方位WXおよび基板方位WYの各々は、XY面内の方位である。基板Wは、その基板方位を容易に判別することができるようにノッチまたはオリエンテーションフラットを有していてよく、図示されている例においては、基板方位WYにおけるマイナス側にノッチNTが設けられている。第1モードにおいては、X方向に基板Wの基板方位WXが沿うように基板Wの向きが調整された後に、以下の露光走査が行われる。なお、図中、2つのヘッド部402が用いられる場合が示されているが、ヘッド部402の個数は任意である。
【0044】
露光走査において、駆動機構20が、ステージ10を、主走査方向(Y方向)に沿って往路方向(ここでは、+Y方向である場合について例示する)に移動させることによって、基板Wを各ヘッド部402に対して主走査軸に沿って相対的に移動させる(往路主走査)。これを基板Wからみると、各ヘッド部402は、矢印AR11に示すように、基板Wを主走査軸に沿って-Y方向に横断することになる。また、往路主走査の開始とともに、各ヘッド部402から描画光の照射が行われる。すなわち、パターンデータ(詳細には、パターンデータのうち、当該往路主走査で描画対象となるストライプ領域に描画するべきデータを記述した部分)が読み出され、該パターンデータに応じて変調器44が制御される。そして、各ヘッド部402から、該パターンデータに応じて空間変調が施された描画光が、基板Wに向けて照射される。
【0045】
各ヘッド部402が、基板Wに向けて連続的または断続的に描画光を出射しながら、主走査軸に沿って基板Wを一回横断すると、1本のストライプ領域(主走査軸に沿って延在し、副走査軸に沿う幅が描画光の幅に相当する領域)に、パターン群が描画されることになる。ここでは、2個のヘッド部402が同時に基板Wを横断するので、一回の往路主走査により2つのストライプ領域のそれぞれにパターン群が描画されることになる。
【0046】
描画光の照射を伴う往路主走査が終了すると、駆動機構20は、ステージ10を副走査方向(X方向)に沿って所定方向(例えば、-X方向)に、描画光の幅に相当する距離だけ移動させる。これによって、基板Wが各ヘッド部402に対して副走査方向に沿って相対的に移動する(副走査)。これを基板Wからみると、矢印AR12で示すように、各ヘッド部402が副走査方向に沿って+X方向に、ストライプ領域の幅分だけ移動することになる。
【0047】
副走査が終了すると、描画光の照射を伴う復路主走査が実行される。すなわち、駆動機構20は、ステージ10を主走査方向(Y方向)に沿って復路方向(ここでは、-Y方向)に移動させる。これによって、基板Wが各ヘッド部402に対して主走査方向に沿って相対的に移動する(復路主走査)。これを基板Wからみると、矢印AR13で示すように、各ヘッド部402が、基板W上を、主走査方向に沿って+Y方向に移動して横断することになる。その一方で、復路主走査が開始されると、各ヘッド部402から描画光の照射が開始される。この復路主走査によって、先の往路主走査で描画されたストライプ領域の隣のストライプ領域に、パターン群が描画される。
【0048】
描画光の照射を伴う復路主走査が終了すると、副走査が行われた上で、再び、描画光の照射を伴う往路主走査が行われる。当該往路主走査によって、先の復路主走査で描画されたストライプ領域の隣のストライプ領域に、パターン群が描画される。以後も同様に、副走査を挟みつつ、描画光の照射を伴う主走査が繰り返して行われ、描画対象領域の全域にパターンが描画されると、1つのパターンデータについての描画処理が終了する。
【0049】
図9は、本実施形態に係る描画方法における第2モードでの露光走査を概略的に示す平面図である。第2モードにおいては、X方向に基板Wの基板方位WYが沿うように基板Wの向きが調整された後に、
図8の場合と同様の露光走査が行われる。
【0050】
図10は、基板Wの露光面PEを例示する部分平面図であり、
図11は、線XI-XI(
図10)に沿う部分断面図である。露光面PEには、段差上面S1と、段差上面S1よりも低い高さの段差下面S3と、段差上面S1と段差下面S3とを互いにつなぐ傾斜面S2とを有する少なくとも1つの段差構造が設けられている。この段差構造の高低差は、描画装置100のDOFを超えていてよく、100μm以上であってよい。本実施形態において描画されることになる少なくとも1つの描画パターンは、少なくとも1つの段差パターンを含む。段差パターンは、少なくとも部分的に段差の傾斜面S2上に描画される描画パターンであり、平面視(
図10の視野)において長手方向に延在する。段差パターンは、段差上面S1と段差下面S3との間で傾斜面S2を横断する描画パターンであってよい。言い換えれば、段差パターンは、段差上面S1から段差下面S3まで傾斜面S2を経由して延びている描画パターンであってよい。
【0051】
<応用例>
図12は、上述した段差パターンの描画を製造において必要とする装置の一例としての半導体モジュールMD1を示す部分平面図である。
図13は、線XIII-XIII(
図12)に沿う部分断面図である。半導体モジュールMD1は、基板Wの上面上に、段差パターンの描画を用いてのフォトリソグラフィ工程によって形成された上面配線MTを有している。上面配線MTは、段差上面S1と段差下面S3との間で傾斜面S2を横断している。上面配線MTを用いることによって、段差上面S1上の半導体チップCP1と、段差下面S3上の半導体チップCP3とを、互いに電気的に接続することができる。
【0052】
図14は、半導体モジュールMD1(
図13)の変形例としての半導体モジュールMD2を示す部分断面図である。半導体モジュールMD2においては、半導体チップCP3が、基板Wの段差下面S3の反対側に配置されている。半導体チップCP3と上面配線MTとの間は、基板Wを貫通する貫通配線MVと、基板Wの裏面に設けられた裏面配線MDとを介して接続されている。
【0053】
<制御部の機能>
図15は、制御部60(
図1)の構成を概略的に示す機能ブロック図である。制御部60は、記憶部61と、抽出部62と、回転調整部63とを有している。
【0054】
記憶部61は、基板Wへ描画されることになる描画パターンを表すデータを記憶する。例えば、記憶部61は、
図16(あるいは
図17)の上段に示されているように、平面視において基板方位WXに沿った長手方向を有する描画パターンPTXと、平面視において基板方位WYに沿った長手方向を有する描画パターンPTYとを記憶している。少なくとも1つの描画パターンは、前述した段差パターンである。少なくとも1つの描画パターンPTXが段差パターンであり、かつ、少なくとも1つの描画パターンPTYが段差パターンであってよく、以下、そのような場合について説明する。また、これら段差パターンを、描画パターンPTXおよび描画パターンPTYと共通の符号を用いて、段差パターンPTXおよび段差パターンPTYとも称する。
【0055】
抽出部62は、
図16に示されているように、段差パターンのうち、基板方位WY(第1の基板方位)を基準として第1の許容角度範囲内に長手方向を有するものを表すデータを、第1のパターンデータとして抽出する。その結果、段差パターンPTYが抽出される。なお、図示されている例においては第1の許容角度範囲はゼロであってよいが、多様な長手方向を有する段差パターンが混在している場合、第1の許容角度範囲は適宜設定されていてよく、その範囲は、例えば±10度以内である。
【0056】
また抽出部62は、
図17に示されているように、段差パターンのうち、基板方位WX(第1の基板方位に直交する第2の基板方位)を基準として第2の許容角度範囲内に長手方向を有するものを表すデータを、第2のパターンデータとして抽出する。その結果、段差パターンPTXが抽出される。なお、図示されている例においては第2の許容角度範囲はゼロであってよいが、多様な長手方向を有する段差パターンが混在している場合、第2の許容角度範囲は適宜設定されていてよく、その範囲は、例えば±10度以内である。第2の許容角度範囲は第1の許容角度範囲と同じであってよい。
【0057】
なお抽出部62は、変形例として、段差パターンのうち、基板方位WXと基板方位WYとの間の基板方位である第3の基板方位を基準として第3の許容角度範囲内に長手方向を有するものを表すデータを、第3のパターンデータとして抽出してもよい。第3の基板方位は、例えば、基板方位WYから時計周りに45度回転した基板方位であってよい。この場合、基板Wの向きを、第1モード(
図8)の場合と第2モード(
図9)の場合との中間とする第3モードでの露光走査も行われることになる。
【0058】
回転調整部63(
図15)は、回転機構21(
図1および
図2)を制御することによって、水平面における基板Wの向きを調整する。この調整は、抽出部62によって抽出された段差パターンの長手方向と、Y方向とが平面視(XY面における視野)において略一致するように行われる。具体的には、
図16の場合、段差パターンPTYの長手方向に対応する基板方位WYと、Y方向とが略一致するように行われる。また
図17の場合、段差パターンPTXの長手方向に対応する基板方位WXと、Y方向とが略一致するように行われる。なお略一致の程度は、上述した許容角度範囲に対応している。ここで、変調器44の回折格子440の直交方向GY(
図1)の、水平面(すなわちXY面)への射影は、Y方向に一致する。よって上記調整は、言い換えれば、抽出部62によって抽出された段差パターンの長手方向と、回折格子440の直交方向GYとが平面視において略一致するように行われる調整である。
【0059】
<描画方法>
次に、本実施形態における描画方法を例示する。
図18は、描画方法を概略的に示すフロー図である。
【0060】
ステップST10(
図11)にて、基板Wがステージ10(
図1および
図2)によって水平面(XY面)に保持される。また、描画されることになる描画パターンを表すデータが、制御部60の記憶部61(
図15)に記憶される。
【0061】
ステップST20(
図11)にて、
図16を参照して上述したように、段差パターンPTYに対応するパターンデータが抽出される。ステップST30(
図11)にて、
図16の下段に示されているように、段差パターンPTYの長手方向に対応する基板方位WYに応じて、水平面における基板Wの向きが調整される。この調整は、前述したように、平面視において、段差パターンPTYの長手方向に対応する基板方位WYと、Y方向とが略一致するように行われる。これにより、
図8に示された第1モードでの露光走査が開始可能な状態となる。
【0062】
ステップST40(
図11)にて、第1モード(
図8)での露光走査によって、変調器44によって変調された光が基板Wへ照射される。これにより、
図19に示されているように、段差パターンPTYが描画される。なお
図19と、後述する
図20および
図21との各々において、上段は下段における矩形部分の拡大図である。
【0063】
ステップST50(
図11)にて、
図17を参照して上述したように、段差パターンPTXに対応するパターンデータが抽出される。ステップST60(
図11)にて、
図17の下段に示されているように、段差パターンPTXの長手方向に対応する基板方位WXに応じて、水平面における基板Wの向きが調整される。この調整は、前述したように、平面視において、段差パターンPTXの長手方向に対応する基板方位WXと、Y方向とが略一致するように行われる。具体的には、
図20における矢印に示されているように、基板Wが90度回転される。これにより、
図9に示された第2モードでの露光走査が開始可能な状態となる。
【0064】
ステップST70(
図11)にて、第2モード(
図9)での露光走査によって、変調器44によって変調された光が基板Wへ照射される。これにより、
図21に示されているように、段差パターンPTXが描画される。
【0065】
以上により、段差パターンPTXおよび段差パターンPTYの両方の描画が行われる。段差パターンPTXおよび段差パターンPTY以外の描画パターンは、上記の第1モードによる露光走査および第2モードによる露光走査のいずれかにおいて同時に描画されてよい。
【0066】
上記の各露光走査において、変調光のフォーカス位置(
図6に示された光路における右端でのフォーカス位置)は、ある基準高さに固定されていてよい。その場合、
図1を参照して、ヘッド部402とステージ10との間の高さ方向における距離は一定に維持される。基準高さは、
図11を参照して、段差上面S1の高さ位置、または段差下面S3の高さ位置であってよいが、好ましくはこれらの間の高さ位置であり、より好ましくはこれらの中間の高さ位置である。フォーカス位置は、露光走査が段差上面S1と段差下面S3との間で傾斜面S2を横断する期間においても、上記の基準高さに固定されていてよい。言い換えれば、露光走査が段差上面S1と段差下面S3との間で傾斜面S2を横断する期間においても、本実施形態は、フォーカス位置の微調整を、必ずしも必要とはしない。
【0067】
<比較例>
図22は、第1比較例として、DMDのような2次元的な変調器を用いての露光走査SCの様子を模式的に示す部分断面図である。幅D1の描画が意図されている場合において、フォーカス位置として段差上面S1の高さ位置が採用されると、段差上面S1上においては所望の露光が可能であるものの、段差下面S3上においては、デフォーカスに起因して、幅D1よりも大きな幅D3での露光が行われてしまう。その結果、描画の精度が低下してしまう。具体的には、感光層がネガ型レジスト層の場合、
図23の部分平面図に示されているように、レジストパターンNLの幅が、段差下面S3上において、2点鎖線で示されている所望の幅に比して、意図せず大きくなってしまう。仮に露光走査SC中に高精度のオートフォーカスを実行することが可能であれば、この問題は解消する。しかしながら、そのようなオートフォーカスには複雑な制御が必要となり、また、高低差が大きい場合(特に100μm以上の場合)は、そもそもそのような制御が、実用上、困難である。
【0068】
図24は、第2比較例として、露光走査SC中の変調器44の画素PXのオン/オフの繰り返しによってレジストパターンNLのラインアンドスペース(L/S)を形成する方法を説明する図である。露光走査SCにおいて、隣接する複数の画素PXに対して一括してオン/オフが繰り返されることによって、レジストパターンNLのL/Sを形成することができる。この場合、L/Sの幅方向に対応する直交方向GYにおいて、露光光量INTはガウシアン形状を有する。さらに、このガウシアン形状は、前述した
図22および
図23の比較例の場合に類した理由で、
図24において矢印で示されているように、露光面PE(
図6)でのデフォーカスへの依存性が大きい。よって、レジストパターンNLの幅は、デフォーカスに起因して大きく変動してしまう。
【0069】
<効果>
図25は、本実施形態の露光走査SCによってレジストパターンNLのラインアンドスペース(L/S)を形成する方法を説明する図である。この露光走査SCは、変調器44において少なくとも1つの画素PX
ONと少なくとも1つの画素PX
OFFとを繰り返し配列させた状態を維持しながら行われる。この場合、L/Sの幅方向に対応する配列方向GXにおいて、露光光量INTは、
図25における中段に示されているように、トップハット形状を有する。このトップハット形状は、露光面PE(
図5)でのデフォーカスへの依存性が小さい。よって、レジストパターンNLの幅は、デフォーカスに起因した変動を受けにくい。よって、
図25に示されているように、ラインパターンの長手方向が配列方向GXに直交するように基板Wの向きが調整されることによって、DOFを超える高低差を有する露光面PE上においても、パターンを高精度で描画することができる。その際、光学系のフォーカスを複雑に調整する必要はない。さらに、基板Wの向きを変えて露光走査SCを複数回実行することによって、異なる長手方向を有するラインパターンを高精度で描画することができる。
【0070】
図26は、
図25で説明された描画方法の実施例を示す顕微鏡写真である。段差上面S1と段差下面S3との高低差は185μmであった。段差上面S1上から傾斜面S2上を経て段差下面S3上まで、ネガ型レジスト層のラインパターンが、幅20μmの一定幅で、高い精度で描画された。
【0071】
なお、
図25および
図26においては描画パターンがL/S形状を有する場合について説明したが、描画パターンの形状はこれに限定されるものではない。また、ネガ型レジストが用いられる場合について例示したが、これに代わってポジ型レジストが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 :ステージ
21 :回転機構
40 :光学ユニット
42 :レーザ発振器(光源)
43 :照明光学系
44 :変調器
45 :投影光学系
46 :ミラー
60 :制御部
61 :記憶部
62 :抽出部
63 :回転調整部
100 :描画装置
401 :光源部
402 :ヘッド部
431 :パウエルレンズ
432 :コリメータレンズ
433 :フォーカシングレンズ
440 :回折格子
441 :固定リボン
442 :可動リボン
450 :ドライバ回路ユニット
451 :フーリエ変換レンズ
452 :フーリエフィルタ
453 :逆フーリエ変換レンズ
GX :配列方向
GY :直交方向
NL :レジストパターン
PE :露光面
PTX :描画パターン、段差パターン
PTY :描画パターン、段差パターン
PX :画素
S1 :段差上面
S2 :傾斜面
S3 :段差下面
SC :露光走査
W :基板