IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターの特許一覧

特開2022-16348コンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置
<>
  • 特開-コンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置 図1
  • 特開-コンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置 図2
  • 特開-コンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置 図3
  • 特開-コンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置 図4
  • 特開-コンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置 図5
  • 特開-コンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016348
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112443
(22)【出願日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2020119547
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.第6回 日本予防理学療法学会学術大会(第54回日本理学療法学術大会) 大会抄録集(発行者:公益社団法人 日本理学療法士協会 、発行日:2019年10月10日)演題番号O-23-1、タイトル「タブレット型コンピュータを利用した認知機能検査による2年後のMCI発症の予測能について」 2.第6回 日本予防理学療法学会学術大会(第54回日本理学療法学術大会)(日時:令和1年10月20日、開催場所:広島国際会議場 第4会場(コスモス)、演題番号O-23-1、タイトル「タブレット型コンピュータを利用した認知機能検査による2年後のMCI発症の予測能について」 3.Geriatr Gerontol Int.2020 Mar;20(3):171-175. タイトル:「Development and validity of the Computer-Based Cognitive Assessment Tool for intervention in community-dwelling older individuals」発行日:2020年3月1日、発行者:Japan Geriatrics Society 4. Wiley onlinelibraryのwebページ(https-//onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/ggi.13836 https://doi.org/10.1111/ggi.13836(2020年1月8日における最初の発行時のアドレス) タイトル:「Development and validity of the Computer-Based Cognitive Assessment Tool for intervention in community-dwelling older individuals」発行日:2020年1月8日、発行者等:John Wiley & Sons Australia,Ltd on behalf of Japan Geriatrics Society 5.PMC(PubMed Central)のweb頁(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7065126/) タイトル:「Development and validity of the Co
(71)【出願人】
【識別番号】509111744
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】大渕 修一
(72)【発明者】
【氏名】河合 恒
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 淳太
(72)【発明者】
【氏名】三木 明子
(57)【要約】
【課題】簡便に、軽度認知障害(MCI)発生の可能性を判定することができる、コンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置を提案すること。
【解決手段】
画面及び音声出力手段を有するコンピュータに、下記のステップを実行させるコンピュータプログラム。
所定の問題を上記画面に表示させる表示ステップ、
上記音声出力手段により被験者に音声により指示して、回答させる回答ステップ、
被験者に回答させた回答結果を取得し、正不正を判定し、判定結果を記録媒体に格納する格納ステップ、
格納した結果を所定の式に代入して、代入結果を所定の閾値と比較して、将来の軽度認知機能低下発生の可能性を判定する判定ステップ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面及び音声出力手段を有するコンピュータに、下記のステップを実行させるコンピュータプログラム。
所定の問題を上記画面に表示させる表示ステップ、
上記音声出力手段により被験者に音声により指示して、回答させる回答ステップ、
被験者に回答させた回答結果を取得し、正不正を判定し、得点、年齢及び性別の情報を記録媒体に格納すると共に得点、年齢及び性別の情報を所定の式に代入して予測得点を得る、格納ステップ、
格納した、予測得点を所定の閾値と比較して、将来の軽度認知機能低下発生の可能性を判定する判定ステップ。
【請求項2】
上記音声出力手段は、ノイズキャンセリングヘッドホンである
ことを特徴とする請求項1記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
上記表示ステップにおいて、上記画面に表示させる上記問題が、数字の順唱、数字の逆唱、即時記憶、遠隔記憶、ストループ課題及び図形認識であり、
上記格納ステップにおける上記の所定の式は、下記の軽度認知機能低下発生の予測式であることを特徴とする請求項1又は2記載のコンピュータプログラム。
軽度認知機能低下の予測式
予測得点=数字の順唱得点×(-0.503)+数字の逆唱得点×(-0.540)+即時記憶得点×(-0.056)+遠隔記憶得点×(-0.314)+ストループ課題得点×(-0.155)+図形認識得点×(-0.307)+性別(男性:-0.233、女性:0)+年齢×(0.00036)+定数(-3.105)
【請求項4】
上記格納ステップにおいて、上記所定の式により上記予測得点を得るに際して、回答時間も取得し、判定結果を回答時間で重み付けして補正することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
請求項1記載のコンピュータプログラムが格納されている認知症機能低下発生可能性判定装置であって、
画面及び音声出力手段を有し、
所定の問題を上記画面に表示させる表示手段、
上記音声出力手段により被験者に音声により指示して、回答させる回答手段、
被験者に回答させた回答結果を取得し、正不正を判定し、判定結果を記録媒体に格納する格納手段、及び
格納した結果を所定の式に代入して、代入結果を所定の閾値と比較して、将来の軽度認知機能低下発生の可能性を判定する判定手段ステップ、を具備する認知症機能低下発生可能性判定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便に、軽度認知障害(MCI)発生の可能性を判定することができる、プログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
認知症対策において、認知症の治療薬や予防薬が確立されていない現状では、認知症の前駆状態である軽度認知障害(MCI)を早期に発見し対処することが最も有効な手段といえる。認知機能の評価として最も用いられている評価法は紙媒体による心理検査が主流であるため、訓練された検査者が必要であることや検査の反復による学習効果などの問題があり、誰でもいつでも簡便に認知機能の評価を行うことは困難である。
そこで簡便に認知機能の評価を行うための手法、又は認知症の対策が、種々提案されている。
例えば、特許文献1においては、ユーザの長期記憶に関する脳機能の向上及び生活習慣の改善を促すことができる認知症対策システム、認知症対策方法及びプログラムを提供することが提案されている。具体手には、難易度に応じて分類された複数のトレーニング問題、及び生活習慣アドバイスが記憶された問題記憶部と、ユーザの識別子と、問題の難易度情報とを対応付けたユーザ情報を複数記憶するユーザ情報記憶部と、端末装置からトレーニング開始要求を受信した際に、ユーザのユーザ情報に対応付けられた問題の難易度情報に基づいて、トレーニング問題を出力問題として複数のトレーニング問題のうちから選択する選択部と、ユーザに対して出力された出力問題及び生活習慣アドバイスのうち少なくとも一つに関する過去確認問題を作成する作成部と、選択部により選択された出力問題、作成部により作成された過去確認問題及び問題記憶部に記憶された生活習慣アドバイスのうち少なくとも一つを出力するシステムが提案されている。
また特許文献2には、精度の高い認知機能の評価結果を短時間に得ることができる認知機能評価装置、認知機能評価方法、およびプログラムを提供することが提案されている。具体的手には、認知機能評価装置において、フォルマント解析部は、対象者の音声に含まれる特定の音素の瞬時音圧の時間変動を対象期間に亘って表している対象データを受け取る。そして、フォルマント解析部は、対象期間を複数のフレームに分割し、特定のフォルマントの周波数を、2つ以上の対象フレームのそれぞれについて求める。特徴解析部は、対象フレーム毎に求められた特定のフォルマントの周波数について特徴量を求める。評価部は、特徴量に基づいて対象者の認知機能を評価する装置が提案されている。
また、特許文献3には、ユーザ、医療関係者、教師、および親により、認知スキル発達のターゲティング、個人別測定、および管理を可能とするものが提案されている。具体的には、実行機能の基盤にある認知スキルをターゲットにして発達させるためのゲームベースの仮想学習カリキュラムとして、認知スキル(例えば、注意力集中、注意力持続、認知抑制、行動抑制、選択性注意力、転換性注意力、配分性注意力、干渉制御、新規性抑制、満足遅延耐性、インナーボイス、動機付け抑制、および自己制御性)を改善する効果的で速やかなビデオゲームベースのトレーニングカリキュラムが提案されている。
また、コンピュータを用いた認知機能評価法について、非特許文献1及び2で報告されており、非特許文献3ではコンピュータを利用した認知症発症の予測について報告されている。
また、非特許文献4に示すように、本発明者らは、タブレット端末を利用した認知機能検査の可能性についてすでに報告を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-219538号公報
【特許文献2】特開2018-050847号公報
【特許文献3】特表2018-533044号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Makizako H, Shimada H, Park H, Doi T, Yoshida D, Uemura K, et al. Evaluation of multidimensional neurocognitive function using a tablet personal computer: test-retest reliability and validity in community-dwelling older adults. Geriatr Gerontol Int. 2013;13(4):860-6.
【非特許文献2】Paul Maruff YYL, David Darby, Kathryn A Ellis, Robert H Pietrzak, Peter J Snyder, Ashley I Bush, Cassandra Szoeke, Adrian Schembri, David Ames, Colin L Masters. Clinical utility of the cogstate brief battery in identifying cognitive impairment in mild cognitive impairment and Alzheimer's disease. BMC Pharmacology and Toxicology. 2013;1.
【非特許文献3】Shimada H, Makizako H, Park H, Doi T, Lee S. Validity of the National Center for Geriatrics and Gerontology-Functional Assessment Tool and Mini-Mental State Examination for detecting the incidence of dementia in older Japanese adults. Geriatr Gerontol Int. 2017;17(12):2383-8.
【非特許文献4】第77回日本公衆衛生学会総会抄録集、平成30年10月9日発行、発表番号O-2301-5、演題「タブレット型コンピュータを利用した認知機能検査の開発とその妥当性の検討」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の各特許文献及び各非特許文献の提案にかかる装置及びシステムでは、未だ、軽度認知障害(MCI)を予測することについて何ら示唆されていなかった。MCI発生を簡便にかつ客観的に予測することが可能となれば、認知症への移行を防ぐ様々な手段を講じることができる。さらに当事者にとっては早い段階からリスクを認識し、認知機能低下との共存の準備する時間が得られる。また、非特許文献4における報告でも未だ十分な正確性をもって認知機能検査を行うことができないという問題があった。
したがって、本発明の目的は、簡便に、且つ正確に軽度認知障害(MCI)発生の可能性を判定することができる、コンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、問題を厳選し、かかる問題を用いて得られた結果を用いてROC解析することで上記目的を達成可能であることを知見し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.画面及び音声出力手段を有するコンピュータに、下記のステップを実行させるコンピュータプログラム。
所定の問題を上記画面に表示させる表示ステップ、
上記音声出力手段により被験者に音声により指示して、回答させる回答ステップ、
被験者に回答させた回答結果を取得し、正不正を判定し、得点、年齢及び性別の情報を記録媒体に格納すると共に得点、年齢及び性別の情報を所定の式に代入して予測得点を得る、格納ステップ、
格納した、予測得点を所定の閾値と比較して、将来の軽度認知機能低下発生の可能性を判定する判定ステップ。
2.上記音声出力手段は、ノイズキャンセリングヘッドホンである
ことを特徴とする1記載のコンピュータプログラム。
3.上記表示ステップにおいて、上記画面に表示させる上記問題が、数字の順唱、数字の逆唱、即時記憶、遠隔記憶、ストループ課題及び図形認識であり、
上記格納ステップにおける上記の所定の式は、下記の軽度認知機能低下発生の予測式であることを特徴とする1又は2記載のコンピュータプログラム。
軽度認知機能低下の予測式
予測得点=数字の順唱得点×(-0.503)+数字の逆唱得点×(-0.540)+即時記憶得点×(-0.056)+遠隔記憶得点×(-0.314)+ストループ課題得点×(-0.155)+図形認識得点×(-0.307)+性別(男性:-0.233、女性:0)+年齢×(0.00036)+定数(-3.105)
4.上記格納ステップにおいて、上記所定の式により上記予測得点を得るに際して、回答時間も取得し、判定結果を回答時間で重み付けして補正することを特徴とする1~3のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
5.1記載のコンピュータプログラムが格納されている認知症機能低下発生可能性判定装置であって、
画面及び音声出力手段を有し、
所定の問題を上記画面に表示させる表示手段、
上記音声出力手段により被験者に音声により指示して、回答させる回答手段、
被験者に回答させた回答結果を取得し、正不正を判定し、判定結果を記録媒体に格納する格納手段、及び
格納した結果を所定の式に代入して、代入結果を所定の閾値と比較して、将来の軽度認知機能低下発生の可能性を判定する判定手段ステップ、を具備する認知症機能低下発生可能性判定装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンピュータプログラムは、簡便に、軽度認知障害(MCI)発生の可能性を判定することができる認知症機能低下発生可能性判定装置を提案提供できるものであり、本発明の認知症機能低下発生可能性判定装置は、簡便に、軽度認知障害(MCI)発生の可能性を判定することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明において用いられるコンピュータの概要図である。
図2図2は、本発明の本発明のコンピュータプログラムのフローシートを示す模式図である。
図3図3(a)~(f)は、図2に示す実施形態のコンピュータプログラムを用いてコンピュータの画面に表示される問題の一例を示す説明図である。
図4図4は、他の問題を示す説明図である。
図5図5は、実施例1におけるROC曲線を示すチャートである。
図6図6は、実施例2におけるROC曲線を示すチャートである。
【符号の説明】
【0009】
1:コンピュータ、11:メモリ、13:CPU、15:記憶媒体、20:入力機器、30:画面、40:音声出力手段
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、本発明のコンピュータプログラム(以下、単に「プログラム」という場合がある)について説明した後、本発明の認知症機能低下発生可能性判定装置(以下、「判定装置」と略す)について説明する。本実施形態のプログラムは、被験者に所定の試験を行い、その結果をもって将来の認知症機能低下発生可能性を判定するためのものである。
本発明のコンピュータプログラムは、図1に示す画面及び音声出力手段を有するコンピュータに、図2に示す下記のステップを実行させるものである。
所定の問題を上記画面に表示させる表示ステップS1、
上記音声出力手段により被験者に音声により指示して、回答させる回答ステップS2、
被験者に回答させた回答結果を取得し、正不正を判定し、得点、年齢及び性別の情報を記録媒体に格納すると共に得点、年齢及び性別の情報を所定の式に代入して予測得点を得る、格納ステップS3、
格納した、予測得点を所定の閾値と比較して、将来の軽度認知機能低下発生の可能性を判定する判定ステップS4。
以下、本実施形態について、まず上記コンピュータを説明した後、各ステップについて説明する。
【0011】
〔コンピュータ〕
本実施形態において用いられるコンピュータ1は、具体的には、図1に示すように、中央演算処理装置(CPU)13、一時記憶領域としてのメモリ11、及びハードディスクやソリッドステートデバイス等の不揮発性の記憶媒体15を含む、通常のパーソナルコンピュータを特に制限なく用いることができる。また、本実施形態におけるコンピュータは、特に図示しないが、通信デバイスを有し、ネットワークを介しての通信が可能であるのが好ましい。通信を行うことでネットワーク上に置かれたデータベースを有するサーバーに接続し、データベースから随時更新されたデータを入手するように設定することもできる。
また、コンピュータには、キーボード、マウス、カメラなどの画像入力装置、マイクなどの音声入力装置、ブルートゥース(登録商標)等の通信機器による通信入力装置等の入力機器20を備え、適宜必要なデータ及び情報を入力するように設定する。また、評価結果を表示する画面(ディスプレイ)30を備え、適宜結果を所望の形態で表示する。本実施形態において画面30は、いわゆるタッチセンサー内臓のタッチパネルからなり、画面に直接タッチすることで後述の回答や操作が可能になっている。また適宜プリンタ(図示せず)に連結して出力することで適宜必要な情報、例えば判定結果を出力することができる。
本実施形態においては、音声出力手段40、具体的にはスピーカー、ヘッドフォン等の外部出力手段を具備する。上記音声出力手段は、いわゆるノイズキャンセリングヘッドホンであるのが好ましい。すなわち、音声出力手段40は、コンピュータに内蔵されたものでも、またコンピュータのイヤフォンジャックを介して又はブルートゥース(登録商標)等の通信機器を介して連結された、ヘッドフォン等の外部出力手段でもよい。
本実施形態においては、このコンピュータに本実施形態のプログラムが格納されて、当該コンピュータを、後述する表示手段、回答手段、格納手段、及び判定手段として機能させ判定装置として機能させる。
また、本実施形態においては、いわゆるスマートフォンやタブレット端末のような携帯端末であり、且つ画面が入力手段を兼用するものを好ましく用いることができ、これらも本発明における「コンピュータ」に含まれる。
<他の部材(デバイス)>
本実施形態のコンピュータは、上述した各デバイス以外に必要に応じて種々デバイスを含むことができる。
【0012】
〔事前ステップS0〕
本実施形態のコンピュータプログラムにおいては、上記コンピュータ又は上記コンピュータとネットワークを介して連結されたサーバーに、所定の試験を行うための所定の問題をそれらの解答と共に格納することにより形成された問題(画面表示される問題データ及びこの問題データに対応して出力される問題音声)及び解答データを有するデータベースを構成する、事前ステップを有するのが好ましい。また、このデータベースには、性別、年齢、既往疾患、教育年数等の被験者情報、上記問題の正答率等の他、多数の被験者に本実施形態のプログラムに格納されている試験を行った際の得点、並びに過去の被験者の認知機能低下の発生の有無及び発生した時が試験を行ってから何年後(何年何ヶ月後)かのデータも格納されている。また、後述するように、データベースに格納されたデータに基づいて閾値を設定する。
【0013】
〔表示ステップS1〕
表示ステップS1は、所定の試験を行うために、所定の問題を上記画面に表示させるステップである。なお、表示ステップS1と回答ステップS2とは、出題する問題によっては完全に分離できず、表示ステップS1と回答ステップS2とを混然とさせて行う場合もある。そのため、本ステップの説明においては、適宜回答ステップS2についても説明する場合がある。
ここで、画面に表示させる問題としては、多領域認知機能検査が挙げられ、具体的な問題のカテゴリーとしては、1.数字の順唱、2.数字の逆唱、3.即時記憶、4.遠隔記憶、5.ストループ課題、6.図形認識が挙げられる。これらの試験は認知症スクリーニング検査(MMSE)と相関係数0.51の基準関連妥当性がある。これらは例示であり、更に他の問題が追加され、又は例示した問題が削除される場合もある。各々について画面の表示及び問題の趣旨と回答法とを説明する。
数字の順唱は、0~9までの数字をランダムに1つ選択し、画面中央に表示する。表示された数字は一定時間(1秒程度)経過の後、画面から消去される。これを繰り返し、初めは3桁(数字を3回表示することで3桁の数字を示す)の数字が画面上に表示される。後述の回答ステップS2において、0~9の数字がマス目に入れられた1行の表として画面下方に表示され、画面中段には空欄のマスが1行の表形式で3マス表示される(空欄のマスは出題された数字の桁数に合わせ増加する)。回答者は始めに表示された順番通りに数字を選択(タップ)することで回答する。選択した数字は中段のマスに表示される。正答するにつれ画面に表示される数字の桁数が3桁から5桁、5桁から7桁と増えていき、最終的には8桁まで表示される(図3(a)においては、5つの読み上げられた数字に対し中段のマス目には3つ目までの数字を回答している様子を表示)。
数字の逆唱は、図3(b)に示すように、画面の構成や問題となる数字の表示は、数字の順唱と同じである。すなわち、数字の逆唱において、表示ステップS1は数字の順唱と同じである。ただし、回答(回答ステップS2)に際しては、画面に表示された数字を、表示された順番と逆に選択(タップ)する。
即時記憶は、ランダムに単語を10個画面に表示する。単語は記憶用に一単語ずつ画面に表示する(図示せず)。表示時間は1単語当たり1秒程度であるのが好ましい(ここまでが表示ステップS1)。そして、回答ステップS2においては、図3(c)に示すように10個のダミーの単語と実際に画面に表示された単語10個、合計20個を画面上に表示する。本実施形態においては、記憶用に表示した10個の単語をタップさせて回答させる。この際、タップした単語は色が変化するように設定される(本実施形態においては白から緑に変わる)。即時記憶で表示した単語は検査の最終項目である遠隔記憶の際に再度答えさせるため、音声にて表示された単語を覚えておくように指示する。
ストループ課題は、表示ステップS1において、図3(d)に示すように、色を示す単語をその単語の意味する色とは異なる色(本実施形態においては中央に大きく「あか」と表示しつつ、色は青色で示す)で表示すると共に、下段の表に色を示す単語を表示する。そして、回答ステップS2においては、中央に表示した文字の色を、音声の指示に従って下段の表から被験者に選択・タップさせて回答させる。
図形認識は、表示ステップS1において、図3(e)に示すように、複数のキューブを配置して形成された図形を表示すると共に、下段の表に数字を表示する。そして、回答ステップS2においては、当該図形を構成するキューブの数を、下段の表に示す数字から被験者に選択してタップさせることにより回答させる。
遠隔記憶は、表示ステップS1において、図3(f)に示すように、表形式で単語を表示する。そして、回答ステップS2においては、即時記憶で表示した単語を、再度、表形式で表示した単語から選択させてタップさせることにより回答させる。
【0014】
〔回答ステップS2〕
本ステップは、上記音声出力手段により被験者に音声により指示して、また、必要に応じて回答欄を表示して、被験者に回答させるステップである。また、上述の表示ステップS1の欄で説明したように、表示ステップS1での画面表示と、回答ステップS2における画面表示とが異なる場合があり、その場合には回答ステップS2において上述のように画面表示を行う。すなわち、回答ステップS2においては、音声出力のみではなく、画面への表示も行う場合がある。
ここで、本実施形態においては、上記音声出力手段は、いわゆるノイズキャンセリングヘッドホンである。ここで、ノイズキャンセリングヘッドホンとは、周囲の雑音を低減してクリアな音を提供することが可能なヘッドフォンであり、通常は、ヘッドフォンに内蔵されたマイクにより周囲の雑音を収集し、当該雑音の周波数を検知し、検知した周波数の逆位相の音を発生させることにより雑音を消去する機能が搭載されたヘッドフォンである。なお、ここでヘッドフォンとしては、いわゆるカナル型のヘッドフォンなどいわゆるイヤフォン形式のものも含む。このようなノイズキャンセリングヘッドホンとしては、市販のものを特に制限なく用いることができる。
本ステップにおいては、上述の表示ステップS1において表示される問題のカテゴリーに応じて実行のタイミング及び内容が異なる。以下、問題のカテゴリーに対応して、本ステップを実行させるように設定された内容について説明する。なお、本ステップでは、コンピュータから音声出力によって表示された問題に応じた出題音声を出力する。この際、出題音声は上記データベースに格納された問題音声からランダムに選択されて出力され、出題が完成される。出題が完成されることにより、被験者は回答を行うことになる。核問題種別ごとに出題の完了を説明する。
数字の順唱においては、問題の指示文言(本実施形態においては「次に画面に表示される数字を表示された順番に下の欄から選択してタッチしてください」)を音声出力して出題を完了する。
数字の逆唱においては、問題の指示文言(本実施形態においては「次に画面に表示される数字を表示された順番と逆に下の欄から選択してタッチしてください」)を音声出力して出題を完了する。
即時記憶においては、記憶のために順次表示される単語を全て出力したあとで、問題の指示文言(本実施形態においては「次に表示される表の中から先程画面に表示された単語をすべてタッチしてください」)を音声出力して出題を完了する。
ストループ課題においては、問題の指示文言(本実施形態においては「次に表示される文字の色を下の欄から選択してタッチしてください」)を音声出力して出題を完了する。
図形認識においては、問題の指示文言(本実施形態においては「次に図形に使用されているキューブの数を下の欄から選択してタッチしてください」)を音声出力して出題を完了する。
遠隔記憶においては、問題の指示文言(本実施形態においては「先程画面に表示され亜単語を改めて下の欄から選択してタッチしてください」)を音声出力して出題を完了する。
また、本実施形態においては、問題の表示及び回答の格納(後述する格納ステップ)を行うと共に被験者の年齢と性別を取得するステップを行う。このステップは本回答ステップにおいて、問題への回答に先立ち、被験者情報の入力画面を表示して、被験者の年齢及び性別を入力してもらうことにより実施することができる。
なお、出題した問題は格納ステップにおいて正不正の確認を行う必要があるので、出題した問題は、記憶媒体において出題問題として、どのカテゴリーの問題としてどの問題を出題したか再確認できるように格納される。
そして、被験者は、上述のように出題が完了された時点で、表示された画面と出力された問題音声に対応して、上述の各問題に対応して画面に表示された数字又は単語をタップすることで回答を行う。回答を確認した場合又は各問題種別に応じて所定の回答時間を設定してあるので、その場合には当該回答時間の経過をもって回答していなくても回答完了として、格納ステップS3に移行する。
【0015】
〔格納ステップS3〕
本ステップは、被験者に回答させた回答結果を取得し、正不正を判定し、得点を算出し、得点および年齢、性別を記録媒体に格納すると共に得点、年齢及び性別の情報を所定の式に代入して予測得点を得るステップである。
まず、回答結果の取得を行う。この取得の実行については問題ごとに行う。すなわち、問題を同一カテゴリーにおいて複数問出題する場合には、問題ごとに回答結果の取得を行う。
具体的には、数字の順唱においては、数字を読み上げ、被験者が回答をタップし、最終の問題まで回答を完了(又は設定された回答時間が経過)すると、回答した数字を取得する。また、回答時間(問題音声の出力からタッチするまでの時間)を取得する。この際、取得は一旦コンピュータのメモリに保存してからコンピュータの記録媒体に格納しても、また、タップするごとにコンピュータの記録媒体に格納しても良い。数字の逆唱は、数字の順唱と同じである。即時記憶においては、被験者がすべての単語(10個の単語を読み上げた場合には、10個全て)をタップし、回答を完了(又は設定された回答時間が経過)すると、回答した単語を取得する。また、回答時間(問題音声の出力からタッチ完了するまでの時間)を取得する。この際、取得はコンピュータの記録媒体に格納される。ストループ課題においては、被験者が単語をタップし、回答を完了(又は設定された回答時間が経過)すると、回答した単語を取得する。また、回答時間(問題音声の出力からタッチ完了するまでの時間)を取得する。この際、取得はコンピュータの記録媒体に格納される。図形認識は、被験者が数字をタップし、回答を完了(又は設定された回答時間が経過)すると、回答した単語を取得する。また、回答時間(問題音声の出力からタッチ完了するまでの時間)を取得する。この際、取得はコンピュータの記録媒体に格納される。遠隔記憶は、被験者がすべての単語(10個の単語を読み上げた場合には、10個全て)をタップし、回答を完了(又は設定された回答時間が経過)すると、回答した単語を取得する。
次に、取得した回答と、記憶媒体に一時保存されている出題した問題の解答とを対比して、被験者の回答が正答か否かを判定する。
そして、判定した結果から得られる被験者の得点を計算して、各問題の正答か不正答か、及び得点を記憶媒体に格納する。
そして得られた得点を事前に作成してある軽度認知機能低下発生の下記予測式に代入する。また、このとき回答ステップS2において取得している、被験者の年齢と性別も、下記予測式に代入する。具体的には、得られた得点および年齢、性別の情報を代入し、軽度認知機能低下の予測得点を算出する。そして得られた予測得点を記録媒体に格納する。
軽度認知機能低下の予測式
予測得点=数字の順唱得点×(-0.503)+数字の逆唱得点×(-0.540)+即時記憶得点×(-0.056)+遠隔記憶得点×(-0.314)+ストループ課題得点×(-0.155)+図形認識得点×(-0.307)+性別(男性:-0.233、女性:0)+年齢×(0.00036)+定数(-3.105)
注:性別においては、男性の場合には-0.233を代入し、女性の場合には0を代入する。
なお、表示ステップS1、回答ステップS2及び格納ステップS3は、いずれも問題ごとに行われる。本実施形態においては、表示ステップS1及び回答ステップS2は、問題種別ごとにループすることになり、格納ステップS3は回答ステップS2で得られた回答データに基づいてその結果を格納するように設定されている。
【0016】
〔判定ステップS4〕
本ステップは、格納した予測得点を所定の閾値と比較して、将来の軽度認知機能低下発生の可能性を判定するステップである。ここで、「将来の」とは、被験者に上述の回答を行わせて(試験を行って)から2年以内を意味する。
上記の所定の閾値は、上述のデータベースのデータを元に2年以内に認知症機能低下が発生するROC曲線を求め、常法(例えばYouden’s index)に従って得られたROC曲線に基づく閾値を算出する(具体的な数値については実施例参照)。これをデータベースにおける予測得点の閾値とする。なお、以下の実施例における予測得点の閾値は0.0772である。
判定に際しては、まず被験者の予測得点を算出する。すなわち、すべての問題が終了した時点で、すべての正不正及び年齢、性別(年齢、性別に関しては、格納ステップのいずれの段階でも格納可能であり、場合によっては表示ステップ及び事前ステップにおいて格納することもできる)が格納されるので、この格納された結果(すべての正不正と年齢、性別)を所定の予測式に代入し予測得点を算出する。
判定は、ここで得られた被験者の予測得点と上述の閾値としての予測得点とを比較して、被験者の予測得点が閾値未満の場合には「近い将来(2年以内)に認知機能の低下が生じる可能性が高い」と判定する。
本ステップでの判定結果は、記憶媒体に被験者の氏名、年齢、性別等の個人情報と関連付けられて格納されると共に、コンピュータの画面に表示される。
【0017】
〔格納ステップS3及び判定ステップS4の補正〕
また、本ステップにおいては、被験者に回答させた回答結果を取得し、正不正を判定し、判定結果を得ると共に回答時間も取得し、判定結果を回答時間で重み付けして補正し、得られた得点を記録媒体に格納することもできる。
すなわち、このとき回答ステップS2において被験者の回答時間をも取得しているので、格納ステップS3において回答時間が早いか否か、すなわち回答時間の平均値と比較して、平均値よりも早い場合、平均値と同じ、平均値よりも遅い場合で、得点に重み付けを行う。その場合には、得点に回答時間の重み付けとして所定の係数を乗じて得点を補正する。そして得られた補正後の得点を記録媒体に格納して、かかる補正後の得点を用いて、上述の予測得点を計算することも可能である。ここで、所定の係数としては、例えば、重み付け係数を、平均値よりも早いと3、平均値と同じ(±1の範囲内)なら2、平均値よりも遅いと1、等とする事ができる。
【0018】
(他のステップ)
本実施形態のコンピュータ・プログラムにおいては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他のステップを実施することができる。また、本実施形態においては、上述の問題に加えて以下の追加問題も追加で実行させるように設定することもできる。
追加問題:Trail making test(TMT)
図4に示すように、画面上にひらがなで「あ・い・う・え・お・か・き・く」と数字で「1・2・3・4・5・6・7」を画面全体にランダムに表示する。被験者はひらがなと数字を交互に順番通りに選択する。画面では選択した文字と数字が線で繋がるように表示する。例えば、図4に例示すると、「あ→1→い→2→う→3→え→4→お」まで選択した場合に、図4に示すように各ひらがな及び数字が線で連結される。
〔装置〕
次に、本実施形態のコンピュータプログラムが格納されている認知症機能低下発生可能性判定装置について説明する。
本実施形態の認知症機能低下発生可能性判定装置は、図1に示すコンピュータにより構成される。
すなわち、上述のコンピュータプログタムが格納されたコンピュータ1により構成されており、画面30及び音声出力手段40を有する。そして、CPU13、メモリ11、記憶媒体15及び画面30により、記憶媒体15に格納されている所定の問題を画面30に表示させる表示手段が構成されており、CPU13、メモリ11、記憶媒体15、画面30及び音声出力手段40により、被験者に音声により指示して、回答させる回答手段が構成されており、CPU13、メモリ11、記憶媒体15及び画面30により、被験者に回答させた回答結果を取得し、正不正を判定し、判定結果を記録媒体15に格納する格納手段が構成されており、CPU13、メモリ11、記憶媒体15及び画面30により、格納した結果を記憶媒体に格納された上述の式に代入して、代入結果を所定の閾値である上述の判定基準と比較して、将来(2年以内)の軽度認知機能低下発生の可能性を判定する判定手段が構成されている。
【0019】
〔使用例〕
本実施形態のコンピュータプログラムが格納されている認知症機能低下発生可能性判定装置は以下のように使用する。
すなわち、特に図示しないアイコン(本実施形態のコンピュータプログラムの開始ボタンに相当する、このようなアイコンを設定することも本実施形態のコンピュータプログラムの機能として設定することもできる)をコンピュータの画面に表示する。
被験者が、このアイコンをタップすることでコンピュータプログラムが実行され、問題の開始画面(図示せず)が表示される。この開始画面には被験者の上記個人情報を入力する入力窓とスタートボタンとが表示される。入力窓に個人情報を入力し、スタートボタンを押すことで、表示ステップS1が開始される。そして、図2に示すように、問題ごとに回答ステップS2へ移行し、回答を完了することで格納ステップS3へと移行する。この各ステップS1~S3の実行をすべての問題が完了するまで実行する。そして、すべての問題が完了した状態で、次の判定ステップS4へと移行する。判定ステップS4へは、すべての問題が完了した時点で自動的に移行するように設定することができ、また、問題終了時に判定ボタンが表示されるように設定して、判定ボタンがタップされたときに判定を行うように設定しても良い。
このように判定ステップS4を行い、判定結果が画面に表示される(図示せず)。
【0020】
〔作用効果〕
本実施形態のコンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置は、上述のように構成され、上述のように使用する事ができる。
被験者は、画面に表示された問題を見て、音声出力を聞くことにより回答を行うことができ、高齢者であっても補助者の助けがなくても、スムーズな回答作業を行うことができる。そして、いくつかの問題にタッチパネルを画面として有するコンピュータを用いて回答するだけで簡便に将来(2年以内)の認知症機能低下発生可能性を判定することができる。
また、ノイズキャンセリングヘッドフォンを用いた場合には、特に被験者の誤動作が軽減され、正確な回答データ(正不正及び回答時間)を得ることができ、より正確に認知症機能低下発生可能性を判定することができる。
これらのことから、本実施形態のコンピュータプログラム及び認知症機能低下発生可能性判定装置は、地域健診や高齢者向けのイベント等で訓練されたスタッフを必要とせずに、認知機能検査が可能になるという利点を有する。
また、医療機関などに出向くことなく、自宅のPCやスマートフォンで認知機能の評価が可能となる。
したがって、医療現場、地域での保健福祉サービスなど簡易に認知機能の推定が必要になる場面への利用が期待される。
【0021】
なお、本発明は上述の実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、上述のデータベースは逐次更新されるように設定することができる。その場合、閾値はデータベースに格納されるデータの増加に伴い更新され、より正確な判断を行い得る閾値をもって判定を行うことが可能となる。
【実施例0022】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
〔実施例1〕(本発明のプログラムを用いた判定の確からしさの確認例)
都内在住の高齢者773名(平均年齢72.6歳(65-97歳))、男性332名、女性441名を対象に、図1及び2に示す認知症機能低下発生可能性判定装置の基準関連妥当性を検討した。その結果、認知機能検査として広く使用されているMMSEと中等度の相関(相関係数0.51)を示した。また、認知症疑い(MMSE<24)の判別能をROC曲線で検討した。その結果、図5に示す曲線が得られ、曲線下面積(AUC):0.85、感度:0.81、特異度:0.77となった。これにより、本発明のプログラム及び装置を用いることにより、MMSEと同等の認知症機能低下の判別能をもって認知症機能低下の判定を行うことがわかった。
〔実施例2〕(閾値の設定例)
都内在住の高齢者455名(年齢中央値72歳(65-89歳)、男性173名、女性282名)を対象に、図1及び2に示す認知症機能低下発生可能性判定装置を用いて試験を行い、試験から2年後のMCI発生の有無の実測データを元に、試験2年以内のMCI発生の予測能をROC曲線にて検討した。その結果、図6に示す曲線が得られ、曲線下面積(AUC):0.80、感度:0.81、特異度:0.76となった。得られた結果から、Youden’s index により閾値を求めた。これを、予測得点の閾値とした。



図1
図2
図3
図4
図5
図6