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特開2022-163488模擬運転装置、及び模擬運転装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163488
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】模擬運転装置、及び模擬運転装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/05 20060101AFI20221019BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20221019BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20221019BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20221019BHJP
【FI】
G09B9/05 A
G09B19/00 H
G06Q50/20
G06F3/0481
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068440
(22)【出願日】2021-04-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレスhttps://www.jsise.org/society/committee/2020/6th/TR-035-06-C-1-1.pdf 掲載日:令和3年3月14日 [刊行物等] 教育システム情報学会(JSiSE)2020年度第6回研究会 開催日:令和3年3月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000176730
【氏名又は名称】三菱プレシジョン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(71)【出願人】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】山崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】戸井 健夫
(72)【発明者】
【氏名】柏原 昭博
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 玲
(72)【発明者】
【氏名】松浦 健二
(72)【発明者】
【氏名】内藤 弘望
【テーマコード(参考)】
5E555
5L049
【Fターム(参考)】
5E555AA41
5E555BA90
5E555BB40
5E555BC01
5E555BE09
5E555CA01
5E555DA01
5E555DB53
5E555EA06
5E555FA00
5L049CC34
(57)【要約】
【課題】受講者が自身の運転の習熟度に合った難易度で講習を行うことができる模擬運転装置を提供する。
【解決手段】模擬運転装置は、制御装置、操作装置、及び表示装置を備え、模擬講習シナリオに基づいて、車両の運転を模擬する模擬運転装置であって、制御装置は、所定の難易度を有する模擬講習シナリオに基づいて模擬画像を生成して表示装置に出力する画像生成部と、表示装置に表示された模擬画像を用いた模擬講習中の受講者による操作装置の操作を表す操作信号を操作装置から取得する操作取得部と、操作信号に基づいて、受講者の運転の習熟度を決定する決定部と、受講者の習熟度に応じて、少なくとも模擬画像上に同時に表示される注意物体の数を変えて、模擬講習シナリオの難易度を変更する難易度変更部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置、操作装置、及び表示装置を備え、模擬講習シナリオに基づいて、車両の運転を模擬する模擬運転装置であって、
前記制御装置は、
所定の難易度を有する前記模擬講習シナリオに基づいて模擬画像を生成して前記表示装置に出力する画像生成部と、
前記表示装置に表示された前記模擬画像を用いた模擬講習中の受講者による前記操作装置の操作を表す操作信号を前記操作装置から取得する操作取得部と、
前記操作信号に基づいて、前記受講者の運転の習熟度を決定する決定部と、
前記受講者の前記習熟度に応じて、少なくとも前記模擬画像上に同時に表示される注意物体の数を変えて、前記模擬講習シナリオの難易度を変更する難易度変更部と、
を有する、模擬運転装置。
【請求項2】
前記難易度変更部は、前記模擬画像上に同時に表示される前記注意物体の最大数を、前記模擬講習シナリオの前記難易度とする、
請求項1に記載の模擬運転装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記模擬画像上に表示される前記注意物体のそれぞれの危険度を示す値を予め記憶した記憶部を更に備え、
前記難易度変更部は、前記模擬画像上に同時に表示される前記注意物体の前記危険度の合計値の最大値を、前記模擬講習シナリオの前記難易度とする、
請求項1に記載の模擬運転装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記受講者が前記車両と前記注意物体との衝突を回避したとき、前記模擬画像上に同時に表示されている前記注意物体の数に基づいて前記受講者の前記習熟度を決定し、前記受講者が前記車両と前記注意物体との衝突を回避できなかったとき、前記受講者の前記習熟度を低減させ、
前記難易度変更部は、所定の難易度変更タイミングにおいて、前記習熟度が前記難易度以上である場合は前記難易度を増大させ、前記習熟度が前記難易度未満である場合は前記難易度を低減する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の模擬運転装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記受講者が前記車両と前記注意物体との衝突を回避したとき、前記模擬画像上に同時に表示されている前記注意物体の数と前記受講者の現在の前記習熟度を示す値のうちの大きい方を前記受講者の前記習熟度として決定する、
請求項4に記載の模擬運転装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記車両と前記注意物体との間の衝突余裕時間が閾値以上であった場合、前記受講者が前記車両と前記注意物体との衝突を回避したと判定し、前記衝突余裕時間が前記閾値未満であった場合、前記受講者が前記車両と前記注意物体との衝突を回避できなかったと判定する、
請求項4又は5に記載の模擬運転装置。
【請求項7】
前記操作装置は、ハンドル、減速操作手段、及び加速操作手段を含み、
前記決定部は、前記受講者が前記ハンドルを第1の許容操作量を超えて操作した場合、前記減速操作手段を第2の許容操作量を超えて操作した場合、又は前記加速操作手段を第3の許容操作量を超えて操作した場合に、前記受講者の前記習熟度を低減させる、
請求項1から6のいずれか一項に記載の模擬運転装置。
【請求項8】
制御装置、操作装置、及び表示装置を備え、模擬講習シナリオに基づいて、車両の運転を模擬する模擬運転装置の制御方法であって、
所定の難易度を有する前記模擬講習シナリオに基づいて模擬画像を生成して前記表示装置に出力し、
前記表示装置に表示された前記模擬画像を用いた模擬講習中の受講者による前記操作装置の操作を表す操作信号を前記操作装置から取得し、
前記操作信号に基づいて、前記受講者の運転の習熟度を決定し、
前記受講者の前記習熟度に応じて、少なくとも前記模擬画像上に同時に表示される注意物体の数を変えて、前記模擬講習シナリオの難易度を変更する、
模擬運転装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模擬運転装置、及び模擬運転装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二輪車、自動車、及び鉄道車両等の車両の運転講習用に、模擬運転装置が広く利用されている。例えば、特許文献1には、被験者がブレーキ操作に習熟したと判定した場合に、モード切り替え部が操作習熟モードから本試験モードへ切り替えるよう構成された車両運転シミュレータ装置が記載されている。また、特許文献2には、時間的に切迫した課題の講習用のドライビングシミュレータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-102171号公報
【特許文献2】特開2010-122477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
模擬運転装置を利用して運転の講習を行う場合に、模擬講習シナリオの難易度が受講者の運転の習熟度に合っていないと、模擬講習の受講者が自身の運転の課題点を正確に把握する余裕がなくなり、講習の効果が低下してしまう。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の車両運転シミュレータ装置は、被験者が本試験を受ける習熟度に達したか否かを判定するための操作習熟モードを有するが、受講者の運転の習熟度に合わせて操作習熟モードの難易度を動的に変更することはできない。また、特許文献2に記載のドライビングシミュレータは、時間的に切迫した課題について、仮想空間内の時間の進行速度を変更して課題の難易度を変えるが、時間的に切迫した課題以外について難易度を変更することはできない。
【0006】
本発明は、受講者が自身の運転の習熟度に合った難易度で講習を行うことができる模擬運転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る実施形態の模擬運転装置は、制御装置、操作装置、及び表示装置を備え、模擬講習シナリオに基づいて、車両の運転を模擬する模擬運転装置であって、制御装置は、所定の難易度を有する模擬講習シナリオに基づいて模擬画像を生成して表示装置に出力する画像生成部と、表示装置に表示された模擬画像を用いた模擬講習中の受講者による操作装置の操作を表す操作信号を操作装置から取得する操作取得部と、操作信号に基づいて、受講者の運転の習熟度を決定する決定部と、受講者の習熟度に応じて、少なくとも模擬画像上に同時に表示される注意物体の数を変えて、模擬講習シナリオの難易度を変更する難易度変更部と、を有する。
【0008】
本発明に係る実施形態の模擬運転装置の制御方法は、所定の難易度を有する模擬講習シナリオに基づいて模擬画像を生成して表示装置に出力し、表示装置に表示された模擬画像を用いた模擬講習中の受講者による操作装置の操作を表す操作信号を操作装置から取得し、操作信号に基づいて、受講者の運転の習熟度を決定し、受講者の習熟度に応じて、少なくとも模擬画像上に同時に表示される注意物体の数を変えて、模擬講習シナリオの難易度を変更する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受講者が自身の運転の習熟度に合った難易度で講習を行うことができる模擬運転装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】模擬運転装置の構成の一例を示す図である。
図2】制御装置及び操作装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】模擬運転装置の記憶部及び制御部の機能ブロック図である。
図4】模擬運転装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図5】模擬運転装置の制御方法における難易度変更処理の一例を示すフローチャートである。
図6】模擬講習シナリオの難易度が変更された模擬画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の模擬運転装置は、模擬講習の受講者が車両を模擬的に運転する操作に基づいて、受講者の運転の習熟度をリアルタイムに決定し、決定された受講者の習熟度に応じて、模擬講習シナリオの難易度を動的に変更する。これにより、模擬講習シナリオの難易度が、受講者の習熟度に応じて、少なくとも模擬画像上に同時に表示される注意物体の数により動的に変更されるため、受講者が自身の運転の習熟度に合った難易度で講習を行うことができる。
【0012】
以下、好適な実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、各図において同一、又は相当する機能を有するものは、同一符号を付し、その説明を省略又は簡潔にすることもある。
【0013】
図1は、模擬運転装置1の構成の一例を示す図である。模擬運転装置1は、制御装置2、ハンドル31、減速操作手段32、加速操作手段33、変速操作手段34、及び表示装置4を備える。模擬運転装置1は、更にスピーカ等を備えてもよい。なお、図1には、自動車の講習用の模擬運転装置1の構成の一例を示したが、模擬運転装置1は、二輪車及び鉄道車両等の講習用であってもよい。
【0014】
制御装置2は、有線又は無線により、ハンドル31、減速操作手段32、加速操作手段33、変速操作手段34、及び表示装置4と通信可能に接続され、模擬運転装置1の全体を制御する。また、制御装置2は、模擬講習シナリオに基づいて、受講者の車両が他車両6a、6b、歩行者7a、7b、自転車等の注意物体と共に移動する仮想空間をシミュレートするための演算装置としても機能する。模擬講習シナリオは、例えば、受講者の車両の周辺に同時に出現する注意物体の最大数を、模擬講習シナリオの難易度情報として有し、受講者の車両から注意物体までの距離等を注意物体の危険度情報として有する。
【0015】
ハンドル31、減速操作手段32、加速操作手段33、及び変速操作手段34は、模擬講習の受講者が車両を模擬的に運転するために操作され、受講者によって操作されたことを示す操作信号を制御装置2に出力する。模擬運転装置1が自動車の講習用である場合、ハンドル31、減速操作手段32、加速操作手段33、及び変速操作手段34は、それぞれステアリングホイール、ブレーキペダル、アクセルペダル、及びシフトレバーである。模擬運転装置1が鉄道車両の講習用である場合には、ハンドル31及び変速操作手段34は省略される。
【0016】
表示装置4は、受講者の前方に配置され、模擬講習の受講者が仮想空間上の車両から見ることになる仮想空間上の景観を模擬画像41として表示する。この模擬画像41は、制御装置2により生成されて表示装置4に出力される。例えば、図1に示す模擬画像41には、受講者が車両の前方に見る仮想空間上の道路上の景観が表示され、模擬画像41の右上には、受講者が仮想空間上のバックミラー42を介して車両の後方に見る景観が表示されている。模擬講習の受講者は、模擬画像41上に表示された他車両6a、6b、歩行者7a、7b等の注意物体に車両が衝突しないように、ハンドル31、減速操作手段32、加速操作手段33、及び変速操作手段34を操作しながら、車両を模擬的に運転する。
【0017】
図2は、制御装置2及び操作装置3のハードウェア構成の一例を示す図である。制御装置2は、内部バス20を介して相互に通信可能に接続された記憶部21、制御部22、外部通信I/F23、及び映像出力I/F24を有する。また、操作装置3は、ハンドル31、減速操作手段32、加速操作手段33、及び変速操作手段34を有する。
【0018】
記憶部21は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと、HDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリ(登録商標)等の不揮発性メモリを有する。また、記憶部21は、制御部22により実行されるコンピュータプログラムと、コンピュータプログラムにより処理されるデータ等を記憶する。
【0019】
制御部22は、一以上のプロセッサ及び周辺回路を有し、記憶部21に記憶されたコンピュータプログラムを実行して模擬運転装置1の各部を制御する。制御部22は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路により構成されてもよい。
【0020】
外部通信I/F23は、制御部22を、通信線30を介して操作装置3と接続するための通信I/F回路を有し、制御部22が操作装置3と通信することを可能とする。外部通信I/F23は、操作装置3から出力される信号を受信して制御部22に送信し、制御部22から出力される信号を受信して操作装置3に送信する。
【0021】
映像出力I/F24は、制御部22を、通信線40を介して表示装置4と接続するための通信I/F回路を有し、制御部22が表示装置4と通信することを可能とする。映像出力I/F24は、表示装置4から出力される信号を受信して制御部22に送信し、制御部22から出力される信号を受信して表示装置4に送信する。
【0022】
図3は、模擬運転装置1の記憶部21及び制御部22の機能ブロック図である。記憶部21は、画像生成プログラム211、操作取得プログラム212、決定プログラム213、及び難易度変更プログラム214を、ソフトウェアモジュール又はファームウェア等として記憶する。制御部22は、記憶部21に記憶された各コンピュータプログラムを読み出して実行することにより、画像生成部221、操作取得部222、決定部223、及び難易度変更部224として機能する。
【0023】
また、記憶部21は、後述する、模擬画像41上に表示される注意物体のそれぞれの危険度を示す値215等を、不揮発性メモリに記憶してもよい。
【0024】
図4は、模擬運転装置1の制御方法の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、模擬講習の受講者が、模擬画像41上に表示される注意物体に車両が衝突しないように、操作装置3を操作して車両を模擬的に運転している間、及びその後に、制御装置2において制御部22により実行される。
【0025】
ステップS1において、画像生成部221は、模擬講習シナリオに基づいて、表示装置4に表示させる模擬画像41を生成して表示装置4に出力する。また、操作取得部222は、模擬講習の受講者が操作装置3を操作したことを示す操作信号を操作装置3から取得する。
【0026】
ステップS2において、決定部223は、表示装置4に表示された模擬画像41を用いた模擬講習中の受講者が車両を運転するため操作装置3を操作したときの操作信号と、模擬講習シナリオの現在の難易度とに基づいて、受講者の運転の習熟度をリアルタイムに決定する。
【0027】
例えば、決定部223は、模擬講習において受講者が衝突を回避することができている模擬画像41上に同時に表示される注意物体の数として受講者の習熟度を決定してもよい。この場合、決定部223は、例えば、受講者が注意物体との衝突を回避したとき、そのときに模擬画像41上に同時に表示されている注意物体の数と受講者の現在の習熟度を示す値のうちの大きい方を受講者の習熟度とすることができる。例えば図1では、模擬画像41上に同時に表示されている注意物体の数は、他車両6a、6b、歩行者7a、7bの4つであるため、受講者がこれらの注意物体のいずれかとの衝突を回避したとき、受講者の習熟度は少なくとも4とされる。一方、受講者が注意物体との衝突を回避できなかったとき、決定部223は、受講者の習熟度を低減させてもよい。例えば図1では、模擬画像41上に表示されている注意物体のいずれかに受講者の車両が接触すると、受講者の習熟度は、例えば1低減される。受講者の習熟度を示す値は、模擬講習シナリオが開始するときに、例えば1に初期化されてもよい。
【0028】
ここで、決定部223は、受講者の車両と注意物体との間の衝突余裕時間に基づいて、受講者が注意物体との衝突を回避したか否かを判定してもよい。この場合、決定部223は、受講者の車両と注意物体と間の衝突余裕時間が常に所定の閾値以上であった場合、受講者が注意物体との衝突を回避したと判定する。一方、衝突余裕時間が一度でも閾値未満であった場合、決定部223は、受講者が注意物体との衝突を回避できなかったと判定する。衝突余裕時間は、受講者の車両が速度ベクトルv1で移動しており、注意物体が速度ベクトルv2で移動しており、両者間の距離がdである場合、例えば、下式(1)で計算される。閾値は、適宜設定することができ、例えば2秒とされる。
衝突余裕時間 = d/|v2-v1| (1)
【0029】
また、決定部223は、受講者が注意物体との衝突を回避するために急ハンドル、急ブレーキ、急アクセル等の所定の操作をした場合は、受講者の習熟度を低減させてもよい。例えば、決定部223は、受講者がハンドル31を第1の許容操作量を超えて操作した場合、減速操作手段32を第2の許容操作量を超えて操作した場合、又は加速操作手段33を第3の許容操作量を超えて操作した場合に、受講者の習熟度を低減させる。ここで、第1~第3の許容操作量は、適宜決定される。
【0030】
ステップS3において、難易度変更部224は、模擬講習シナリオの難易度を動的に変更する所定の難易度変更タイミングとなったか否かを判定する。難易度変更タイミングは、適宜設定することができる。例えば、難易度変更部224は、受講者の車両が交差点に近づいたタイミングを、難易度変更タイミングとしてもよい。或いは、難易度変更部224は、受講者の車両が一定距離を進むごとに、又は一定時間が経過するごとに、難易度変更タイミングとしてもよく、例えば、一定距離は10m、一定時間は2秒とすることができる。画像生成部221、操作取得部222、決定部223、及び難易度変更部224は、難易度変更タイミングとなるまで、ステップS1~S2を繰り返す(ステップS3でNo)。
【0031】
難易度変更タイミングになると(ステップS3でYes)、難易度変更部224は、ステップS4において、受講者の習熟度と模擬講習シナリオの現在の難易度とに応じて、少なくとも模擬画像41上に同時に表示される注意物体の数を変えて、模擬講習シナリオの難易度を動的に変更する。
【0032】
例えば、難易度変更部224は、模擬画像41上に同時に表示される注意物体の最大数を、模擬講習シナリオの難易度としてもよい。例えば図1では、模擬画像41上に、最大で、他車両6a、6b、歩行者7a、7bの4つの注意物体が同時に表示されるため、模擬講習シナリオの難易度は4である。模擬画像41上に同時に表示される注意物体の数が多い程、受講者の注意が分散されて、模擬講習シナリオの難易度が向上する。
【0033】
或いは、難易度変更部224は、模擬画像41上に同時に表示される注意物体の危険度の合計値の最大値を、模擬講習シナリオの難易度としてもよい。例えば図1で、受講者の車両から見えやすい他車両6a、6b、歩行者7bの3つの注意物体の危険度をそれぞれ1とし、路上停車中の他車両6aの死角に隠れて見えにくい歩行者7bの危険度を2とすると、模擬講習シナリオの難易度は1×3+2=5となる。これにより、死角に隠れて見えにくい注意物体の危険度を、模擬講習シナリオの難易度に反映させることができる。注意物体の危険度は、他にも、注意物体の移動の速さ、小ささ、受講者の車両からの近さ、動きの予測困難性等に応じて高く設定されてもよい。注意物体のそれぞれの危険度を示す値215は、模擬運転装置1の記憶部21に予め記憶される。
【0034】
図5は、模擬運転装置1の制御方法における難易度変更処理の一例を示すフローチャートである。この難易度変更処理は図4に示したフローチャートのステップS4において実行される。
【0035】
ステップS41において、難易度変更部224は、決定部223により決定された受講者の習熟度の値が、模擬講習シナリオの難易度の値以上であるか否かを判定する。受講者の習熟度が、模擬講習シナリオの難易度以上である場合(ステップS41でYes)、難易度変更部224は、ステップS42において、模擬講習シナリオの難易度を、例えば1増大させる。一方、受講者の習熟度が、模擬講習シナリオの難易度未満である場合(ステップS41でNo)、難易度変更部224は、ステップS43において、模擬講習シナリオの難易度を、例えば1低減させる。これにより、受講者の習熟度に応じて、模擬講習シナリオの難易度が動的に変更される。
【0036】
図6は、模擬講習シナリオの難易度が変更された模擬画像41b、41cの一例を示す図である。
【0037】
図6(a)は、難易度変更部224により難易度が変更されて1増大した結果、同時に表示される注意物体の最大数が5となった模擬画像41bを示している。模擬画像41bの右上のバックミラー42には、自転車8が追加して表示されている。これにより、習熟度の高い受講者は、受講者の車両の後方の死角から現れる自転車8等の注意物体との衝突を回避する講習を行うこともできる。
【0038】
図6(b)は、難易度変更部224により難易度が変更されて1低減した結果、同時に表示される注意物体の最大数が3となった模擬画像41cを示している。模擬画像41cでは、図1に示した模擬画像41に表示されていた対向車線を移動する他車両6bが表示されなくなっている。これにより、習熟度の低い受講者は、他車両6a、歩行者7b、7bの3つの注意物体に集中して講習を行うことができる。
【0039】
このように、受講者の習熟度に応じて、少なくとも模擬画像上に同時に表示される注意物体の数を変えて、模擬講習シナリオの難易度が動的に変更されることで、受講者は、自身の運転の課題点を把握することができるため、講習の効果が向上する。
【0040】
画像生成部221、操作取得部222、決定部223、及び難易度変更部224は、模擬講習シナリオが終了するまでステップS1~S4を繰り返す(ステップS5でNo)
【0041】
模擬講習シナリオが終了すると(ステップS5でYes)、画像生成部221は、ステップS6において、受講者の運転の最終的な習熟度を、表示装置4に出力して表示させてもよい。
【0042】
以上のように、実施形態の模擬運転装置は、制御装置、操作装置、及び表示装置を備え、模擬講習シナリオに基づいて、車両の運転を模擬する模擬運転装置であって、制御装置は、所定の難易度を有する模擬講習シナリオに基づいて模擬画像を生成して表示装置に出力する画像生成部と、表示装置に表示された模擬画像を用いた模擬講習中の受講者による操作装置の操作を表す操作信号を操作装置から取得する操作取得部と、操作信号に基づいて、受講者の運転の習熟度を決定する決定部と、受講者の習熟度に応じて、少なくとも模擬画像上に同時に表示される注意物体の数を変えて、模擬講習シナリオの難易度を変更する難易度変更部と、を有する。これにより、受講者が自身の運転の習熟度に合った難易度で講習を行うことができる模擬運転装置が提供される。
【0043】
上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 模擬運転装置
2 制御装置
3 操作装置
4 表示装置
6a 他車両
6b 他車両
7a 歩行者
7b 歩行者
8 自転車
31 ハンドル
32 減速操作手段
33 加速操作手段
34 変速操作手段
41 模擬画像
42 バックミラー
211 画像生成プログラム
212 操作取得プログラム
213 決定プログラム
214 難易度変更プログラム
221 画像生成部
222 操作取得部
223 決定部
224 難易度変更部
図1
図2
図3
図4
図5
図6