(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163498
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】コンクリートの養生方法及び養生装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
E04G21/02 104
E04G21/02 ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068459
(22)【出願日】2021-04-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年度 土木学会東北支部技術研究発表会にて論文発表
(71)【出願人】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110778
【氏名又は名称】ニシム電子工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511011621
【氏名又は名称】株式会社A・R・P
(71)【出願人】
【識別番号】599145395
【氏名又は名称】高田機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大友 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 暁弘
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光弘
(72)【発明者】
【氏名】一反田 康啓
(72)【発明者】
【氏名】西久保 聡
(72)【発明者】
【氏名】多田 宜泰
(72)【発明者】
【氏名】笹子 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】壽系 亘平
(72)【発明者】
【氏名】塚本 和志
(72)【発明者】
【氏名】蓑島 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 弘志
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172EA02
2E172EA08
2E172EA13
(57)【要約】
【課題】コンクリート養生シートの含水率を適切に管理することにより、コンクリート養生シートを常に湿潤状態に保ち、絶えずコンクリート構造物へ給水することにより高品質なコンクリート構造物を得ることができる養生方法及び装置を提供する。
【解決手段】現場で打設されたコンクリートをコンクリート養生シートで湿潤養生する養生方法は、コンクリート養生シートに給水する一次給水工程と、一次給水工程後、コンクリート養生シートの含水率を直接測定する含水率測定工程と、含水率測定工程で測定されたコンクリート養生シートの含水率に基づいて、予め設定した量の水をコンクリート養生シートに給水する二次給水工程とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場で打設されたコンクリートをコンクリート養生シートで湿潤養生するコンクリートの養生方法において、
コンクリート養生シートに給水する一次給水工程と、
前記一次給水工程後、前記コンクリート養生シートの含水率を直接測定する含水率測定工程と、
前記含水率測定工程で測定された前記コンクリート養生シートの含水率に基づいて、予め設定した量の水を前記コンクリート養生シートに給水する二次給水工程とを含むことを特徴とするコンクリートの養生方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリートの養生方法において、
前記含水率測定工程で測定された前記コンクリート養生シートの含水率を、コンクリート構造物から離れた場所へ送信する送信工程を含むことを特徴とするコンクリートの養生方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンクリートの養生方法において、
前記二次給水工程は、前記コンクリート養生シートに自動で給水する自動給水装置により行うことを特徴とするコンクリートの養生方法。
【請求項4】
現場で打設されたコンクリートをコンクリート養生シートで湿潤養生するコンクリートの養生装置において、
前記コンクリート養生シートの含水率を直接測定する含水率測定センサと、
前記コンクリート養生シートに給水する給水装置とを備え、
前記給水装置は、前記含水率測定センサで測定された前記コンクリート養生シートの含水率に基づいて、予め設定した量の水を前記コンクリート養生シートに給水するように構成されていることを特徴とするコンクリートの養生装置。
【請求項5】
請求項4に記載のコンクリートの養生装置において、
前記給水装置には、遠隔操作手段が接続され、
前記給水装置は、前記遠隔操作手段による給水操作または給水停止操作を受け付けると、前記コンクリート養生シートの含水率にかかわらず、強制的に給水または給水停止を実行することを特徴とするコンクリートの養生装置。
【請求項6】
請求項5に記載のコンクリートの養生装置において、
前記含水率測定センサは、前記コンクリート養生シートとコンクリート構造物との間に設置されることを特徴とするコンクリートの養生装置。
【請求項7】
請求項6に記載のコンクリートの養生装置において、
前記含水率測定センサは、磁石によって前記コンクリート養生シートに固定されることを特徴とするコンクリートの養生装置。
【請求項8】
請求項6に記載のコンクリートの養生装置において、
前記含水率測定センサは、機械的な固定手段によって前記コンクリート養生シートに固定されることを特徴とするコンクリートの養生装置。
【請求項9】
請求項6に記載のコンクリートの養生装置において、
前記含水率測定センサは、磁石及び機械的な固定手段によって前記コンクリート養生シートに固定されることを特徴とするコンクリートの養生装置。
【請求項10】
請求項4から9のいずれか1つに記載のコンクリートの養生装置において、
コンクリート構造物の位置情報・雰囲気温度・コンクリート表面温度・給水状況のいずれか1つ以上を検出する検出手段を備えていることを特徴とするコンクリートの養生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場で打設されたコンクリートの養生方法及び養生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート工事においては、コンクリートの強度、耐久性、水密性等の所要の品質を確保するため、コンクリートの打設後、一定期間を硬化に必要な温度及び湿度に保つ、いわゆる養生が必要である。
【0003】
特許文献1~5にも開示されているように、コンクリートの養生方法としては様々ある。例えば、スラブなどの場合に周囲の型枠をあらかじめ高くして、コンクリートの表面に水を張るたん水養生法、作業者による散水、スプリンクラーなどによる自動的な常時散水等を行う散水養生法、コンクリートの表面仕上げ終了後、できるだけ早い時期に膜養生剤を散布し、水分の蒸発を防ぐ被膜養生法、コンクリートに十分に散水し、その上から表面に密着するようシートを被せる保湿養生法、コンクリート露出面、開口部をシート類で覆う保温養生法、コンクリート表面に断熱マットを敷いたり、発泡ウレタンスチロールなどの断熱材を張り付けた型枠を用いる断熱養生法等が知られており、また、これらを複合した養生方法も知られている。
【0004】
また、特許文献4には、打設後のコンクリート構造物の外壁及び内壁に給水し、外壁に沿って降下してきた水の温度に基づいて外壁に給水する水の温度を調節し、内壁に沿って降下してきた水の温度に基づいて内壁に給水する水の温度を調節するコンクリート構造物の養生方法が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献5には打設後のコンクリート構造物をコンクリート養生シートで養生する際に、コンクリート養生シートとコンクリート表面との間の周辺の湿潤状態を測定し、当該湿潤状態を遠隔で管理するコンクリート構造物の養生方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-81210号公報
【特許文献2】特開2010-196396号公報
【特許文献3】特開2014-152560号公報
【特許文献4】特許第4918176号公報
【特許文献5】特開2018-59327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した各養生方法にはそれぞれ課題がある。例えば、散水養生法の場合、気象条件によって乾燥が激しいことがあり、散水の効果にムラが出やすく、また、被膜養生法の場合、コンクリートの表面仕上げ終了後、ごく初期の乾燥防止には有効であるが、気温が高い場合には効果が減退しやすく、また、保温養生法の場合、気温が著しく低い場合には、適温に保つことが困難になる。
【0008】
また、特許文献4では、打設後のコンクリート構造物の外壁及び内壁に給水して外壁及び内壁を降下してきた水の温度を測定するようにしているが、コンクリート構造物自体の定量的な乾湿状態を把握できず確実な養生を実施できない可能性がある。また、特許文献4では、外壁及び内壁を降下した水の温度を測定しているが、降下した水の温度と、外壁及び内壁の温度との間には差ができるので、コンクリート表面の温度を所定範囲となるように管理することは困難である。よって、乾燥収縮ひび割れや温度ひび割れの発生が懸念され、コンクリートの品質を確保できない可能性もある。
【0009】
さらに、特許文献5では、コンクリート養生シートとコンクリート表面との間の周辺の湿潤状態を測定するようにしているが、一般的な湿度計では相対湿度を計測するため、温度が変化することによって計測結果である湿度も変化してしまう。従って、コンクリートの養生を管理する閾値に用いる値とならない。また、水分計ではコンクリートとコンクリート養生シートの両方の水分を計測するため、コンクリート構造物の体積が大きいほどコンクリートの乾燥速度が速くなり、コンクリート養生シートの湿潤状態の確認が難しく、コンクリートの品質を確保できない可能性もある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンクリート構造物の養生において、コンクリート養生シートの含水率を適切に管理することにより、コンクリート養生シートを常に湿潤状態に保ち、絶えずコンクリート構造物へ給水することにより高品質なコンクリート構造物を得ることができる養生方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の第1の側面では、現場で打設されたコンクリートをコンクリート養生シートで湿潤養生する養生方法において、コンクリート養生シートに給水する一次給水工程と、前記一次給水工程後、前記コンクリート養生シートの含水率を直接測定する含水率測定工程と、前記含水率測定工程で測定された前記コンクリート養生シートの含水率に基づいて、予め設定した量の水を前記コンクリート養生シートに給水する二次給水工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、打設後のコンクリート構造物の表面に給水ホースを設置し給水した後、コンクリート養生シートの含水率を直接測定することでコンクリート養生シートの保水量を取得できる。そして、コンクリート養生シートの含水率に基づいてコンクリート構造物に適切な量の給水を行うことができる。このとき、コンクリート養生シートの含水率が得られていることから、含水率に応じた量の水を供給することができる。また、コンクリート養生シートの含水率に基づいてコンクリート構造物の表面に給水を行うタイミングを的確に把握することができるので、給水が不要な時には給水を行わないようにし、給水が必要なときには必要な量の給水が行えるようになる。
【0013】
本開示の第2の側面では、前記含水率測定工程で測定された前記コンクリート養生シートの含水率を、コンクリート構造物から離れた場所へ送信する送信工程を含むことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、コンクリート養生シートの含水率が、コンクリート構造物から離れた場所へ送信されるので、コンクリート養生の遠隔監視が行えるようになる。例えば、コンクリートの打設後に人の立ち入りが難しい場所、急斜面、高所、狭隘、放射線管理区域内等において本構成が特に有効である。
【0015】
本開示の第3の側面では、前記二次給水工程は、前記コンクリート養生シートに自動で給水する自動給水装置により行うことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、コンクリート養生シートに自動で給水されるので特に遠隔監視を行う場合に省力化が可能になる。
【0017】
本開示の第4の側面では、現場で打設されたコンクリートをコンクリート養生シートで湿潤養生する養生装置において、前記コンクリート養生シートの含水率を直接測定する含水率測定センサと、前記コンクリート養生シートに給水する給水装置とを備え、前記給水装置は、前記含水率測定センサで測定された前記コンクリート養生シートの含水率に基づいて、予め設定した量の水を前記コンクリート養生シートに給水するように構成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、コンクリートの打設後、コンクリート養生シートの含水率が含水率測定センサによって直接測定される。そして、コンクリート養生シートの含水率に基づいて設定された量の水をコンクリート構造物の表面に供給することができる。よって、給水が不要な時には給水を行わないようにし、給水が必要なときには必要な量の給水が行えるようになる。
【0019】
本開示の第5の側面では、前記給水装置には、遠隔操作手段が接続され、前記給水装置は、前記遠隔操作手段による給水操作または給水停止操作を受け付けると、前記コンクリート養生シートの含水率にかかわらず、強制的に給水開始または給水停止を実行することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、コンクリート養生シートから離れた所で、給水開始や給水停止を実行できる。
【0021】
本開示の第6の側面では、前記含水率測定センサは、前記コンクリート養生シートとコンクリート構造物との間に設置されることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、コンクリート養生シートによってコンクリート構造物の表面を覆うと、含水率測定センサがコンクリート構造物の表面やコンクリート養生シートに接触することになるので、含水率測定センサによる含水率の測定結果がより一層正確なものになる。
【0023】
本開示の第7の側面では、前記含水率測定センサは、磁石によって前記コンクリート養生シートに固定されることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、含水率測定センサを簡単にかつコンクリート養生シートに接触させた状態で固定することができる。
【0025】
本開示の第8の側面では、前記含水率測定センサは、機械的な固定手段によって前記コンクリート養生シートに固定されることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、含水率測定センサを機械的な固定手段、即ち、ネジ、ナット、ボルト等を用いて簡単にかつコンクリート養生シートに接触させた状態で固定することができる。
【0027】
本開示の第9の側面では、前記含水率測定センサは、磁石及び機械的な固定手段によって前記コンクリート養生シートに固定されることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、含水率測定センサをコンクリート養生シートに確実に固定することができる。
【0029】
本開示の第10の側面では、コンクリート構造物の位置情報・雰囲気温度・コンクリート表面温度・給水状況のいずれか1つ以上を検出する検出手段を備えていることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、コンクリート構造物の状態を遠隔で監視することができ、現地にいるのと同じ状態でコンクリートの養生を管理することが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、コンクリート養生シートの含水率に基づいて、コンクリート養生シートに必要に応じて給水することができるので、コンクリート養生シートの含水率とコンクリート構造物の表面温度を適切に管理することができ、高品質なコンクリート構造物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態に係るコンクリートの養生装置の概略構成図である。
【
図5】コンクリートの養生方法の一例を示す平面図である。
【
図7】水分センサによる体積含水率の測定結果を示すグラフである。
【
図8】コンクリート養生シートの重量の変化と、本発明に係る含水率測定センサで測定した体積含水率の変化との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係るコンクリートの養生装置1を示すものである。コンクリートの養生装置1は、現場で打設されたコンクリートを養生する際に使用される装置であり、このコンクリートの養生装置1を使用することで本発明に係るコンクリートの養生方法を実施することができる。コンクリートの養生とは、コンクリートの打設後、一定期間を硬化に必要な温度及び湿度に保つことであり、コンクリートの強度、耐久性、水密性等の所要の品質を確保するために必要な工程となっている。前記一定期間は、特に限定されるものではなく、コンクリート構造物の大きさや形状等によっても異なるが、例えば5日~10日程度の間とすることができる。また、コンクリートの養生装置1によって養生可能なコンクリート構造物は、例えば、基礎構造物、床版、壁等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。
【0035】
(コンクリートの養生装置1の全体構成)
図1に示すように、コンクリートの養生装置1は、親機10と、複数の子機20と、雰囲気測定装置30と、給水装置(自動給水装置)40とを備えている。親機10と子機20との間、親機10と雰囲気測定装置30との間、親機10と給水装置40との間は、それぞれ、無線通信可能に構成されている。親機10は、子機20から離れたところに設置することができ、例えば施工管理事務所等に設置することができる。子機20は、コンクリート構造物の表面温度及びコンクリート養生シートの含水率を測定して親機10に送信するものであり、1つであってもよい。雰囲気測定装置30は、コンクリート構造物の近傍に設置され、コンクリート構造物の位置情報、コンクリート構造物近傍の気温(雰囲気温度)、コンクリートの表面温度を検出する検出手段を構成している。雰囲気測定装置30は、これらを測定して親機10に送信する。給水装置40は、親機10からの指示によりコンクリート構造物に給水するための装置である。後述するように、給水装置40によって自動的に適切な量の水をコンクリート構造物に供給することができるようになっている。
【0036】
(親機10の構成)
図2に示すように、親機10は、制御部11と、通信部12と、アンテナ13と、記憶部14とを備えている。親機10には、図示しないコンセントから電源が供給される。通信部12は、従来から周知の通信モジュールであればよく、例えば920MHz帯特定小電力無線機で構成することができる。アンテナ13は、通信部12に接続されており、通信部12が扱うことの可能な所定周波数帯の電波を送受信するためのものである。
【0037】
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータで構成することができる。記憶部14は、子機20から送信されたコンクリート養生シート50の含水率と、雰囲気測定装置30から送信されたコンクリート構造物の雰囲気温度データ、コンクリート表面温度データとをそれぞれ時系列で保存するための部分であり、各種記憶装置で構成することができる。制御部11による制御内容の詳細については後述する。
【0038】
図示しないが、親機10には、表示画面を設けることができる。この場合、子機20から送信されたコンクリート養生シート50の含水率、雰囲気測定装置30から送信されたコンクリート構造物の雰囲気温度、コンクリート表面温度等を数値で表示したり、データを処理した後、例えばグラフ形式等で表示することもでき、作業者がコンクリート構造物の雰囲気温度、表面温度及びコンクリー養生シート50の含水率の変化を把握することができる。
【0039】
(子機20の構成)
図3に示すように、子機20は、複数の測定部21と、制御部22と、通信部23と、アンテナ24と、記憶部25と、バッテリ26と、I/F変換部27とを備えている。バッテリ26は、子機20の各部に電力を供給するためのものであり、バッテリ26を備えていることで、子機20はコンセントとの接続が不要になり、設置場所の自由度が向上する。例えば、コンクリートの打設後に人の立ち入りが難しい場所、急斜面、高所、狭隘、放射線管理区域内等に子機20を設置することができる。尚、バッテリ26以外の電力供給手段によって子機20に電力が供給されてもよい。
【0040】
測定部21は、コンクリート打設後の当該コンクリートの表面に給水された状態のコンクリート構造物の表面温度を測定する表面温度測定センサ21aと、コンクリート打設後の当該コンクリートの表面に給水ホース等によって散水された水を含んだコンクリート養生シート50の含水率を測定する含水率測定センサ21bとを備えている。測定部21の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。表面温度測定センサ21aは、例えば熱電対等で構成することができ、所定の短い間隔(略リアルタイム)で測定結果を出力することができるようになっている。含水率測定センサ21bは、特に限定されるものではないが、例えば、誘電率と含水率の関係をあらかじめ調べておき、誘電率を水分量に変換することによって含水率を得ることができるものであり、この含水率測定センサ21bも所定の短い間隔(略リアルタイム)で測定結果を出力することができるようになっている。含水率測定センサ21bとしては、従来から周知の土壌水分センサ(例:株式会社A・R・P製 WD-3-WT-5Y)等の体積含水率を測定するセンサを使用することができる。
【0041】
表面温度測定センサ21aと含水率測定センサ21bとが一体化されて測定部21が構成されているので、コンクリート構造物の同一ポイントにおける表面温度とコンクリート養生シート50の含水率とを得ることができる。測定部21は子機20の制御部22に接続される信号線21cを備えている。表面温度測定センサ21aで測定されたコンクリート構造物の表面温度と、含水率測定センサ21bで測定されたコンクリート養生シート50の含水率とは、信号線21cを介して制御部22に送信される。表面温度測定センサ21a及び含水率測定センサ21bに電力の供給が必要な場合には、信号線21cまたは図示しない電力供給線を介して制御部22側から供給することができる。信号線21cの長さは、数m以上とすることができ、必要に応じて中間コネクタ21dにより延長することができる。尚、表面温度測定センサ21aと含水率測定センサ21bとは別体であってもよい。この場合、表面温度測定センサ21aと含水率測定センサ21bとのそれぞれから信号線が延びることになる。また、含水率測定センサ21bのみで測定部21が構成されていてもよい。
【0042】
通信部23は、親機10の通信部12と同様な通信モジュールで構成されており、親機10と子機20との間でデータの送受信が可能になっている。アンテナ24は、通信部23に接続されており、通信部23が扱うことの可能な所定周波数帯の電波を送受信するためのものである。
【0043】
記憶部25は、コンクリート構造物の表面温度データ及びコンクリート養生シート50の含水率をそれぞれ一時的に保存するための部分であり、各種記憶装置で構成することができる。コンクリート構造物の表面温度データ及びコンクリート養生シート50の含水率は、表面温度測定センサ21a及び含水率測定センサ21bで測定された後、記憶部25に一旦記憶される。記憶部25には、コンクリート構造物の表面温度データ及びコンクリート養生シート50の含水率を、例えば数分に1回や、10分に1回ごと、一時的に記憶しておくことができる。コンクリート構造物の表面温度データ及びコンクリート養生シート50の含水率の記憶頻度は、特に限定されるものではなく、略リアルタイムで記憶するようにしてもよい。これにより、コンクリート構造物の表面温度及びコンクリート養生シート50の含水率のトレンドを把握することができる。
【0044】
I/F変換部27は、制御部22と測定部21との間に設けられ、測定部21の信号線21cを制御部22に接続可能にするための部分である。I/F変換部27には複数の防水コネクタ27aが設けられており、各防水コネクタ27aに測定部21の信号線21cが接続されるようになっている。
【0045】
制御部22は、記憶部25に記憶されている表面温度データ及び含水率データを通信部23によって親機10に送信させるように構成されている。親機10への送信間隔は、例えば数分に1回や、10分に1回とすることができるが、これは一例であり、略リアルタイムで送信するようにしてもよい。送信されたデータは、順次、記憶部25から消去されるようになっているが、保持しておいてもよい。尚、1つの測定部21に1つの制御部22が接続されていてもよい。
【0046】
(雰囲気測定装置30の構成)
図1に示す雰囲気測定装置30は、基本的な構成は子機20と同じにすることができ、コンクリート構造物の近傍に設置される。また、雰囲気測定装置30は、コンクリート構造物の位置情報を検出するためのGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)30a、コンクリート構造物の雰囲気温度を測定する雰囲気温度センサ(外気温度センサ)31と、コンクリート構造物の表面温度を測定する温度センサ32とを備えている。雰囲気温度センサ31は熱電対で構成することができ、この雰囲気温度センサ31で測定する温度は外気温度とすることができる。温度センサ32も熱電対で構成することができる。
【0047】
GPS30aで測定されたコンクリート構造物の位置情報と、雰囲気温度センサ31で測定された雰囲気温度データと、温度センサ32で測定されたコンクリート構造物の表面温度データとは、親機10に送信される。親機10への送信間隔は、子機20によるコンクリート構造物の表面温度データ及びコンクリート養生シート50の含水率の送信間隔よりも長くすることができ、例えば1時間に1回とすることができる。位置情報と、雰囲気温度データと、表面温度データとは、同時に送信してもよいし、互いに異なるタイミングで送信してもよい。位置情報は、例えば養生開始時に1回だけ送信してもよい。
【0048】
尚、図示しないが、雰囲気温度センサ31及び温度センサ32は、子機20に設けることもできる。また、雰囲気温度センサ31及び温度センサ32の一方を省略してもよい。また、雰囲気測定装置30を省略してもよい。
【0049】
(給水装置40の構成)
図4に示すように、給水装置40は、水が所定水圧で送給されている給水配管41と、散水配管42と、弁装置43と、制御部44と、通信部45と、アンテナ46とを備えている。給水配管41の内部には、例えば図示しないポンプ等によって常時加圧された状態の水が存在している。散水配管42は、コンクリート構造物に水を供給するための配管であり、複数設けて散水面積を増やすこともできる。コンクリートの養生装置1がコンクリート養生シート50を備えている場合には、コンクリート構造物の表面とコンクリート養生シート50との間に、散水配管42の下流側を配置することができる。
【0050】
弁装置43は、給水配管41と散水配管42との間に配設されており、給水配管41から散水配管42に流れる水の量を調整するための装置である。弁装置43は、従来から周知の電動弁装置で構成することができ、閉状態にされると、給水配管41から散水配管42に水が流れなくなり、開状態にされると、給水配管41から散水配管42に水が流れる。また、弁装置43の開度は全閉状態と全開状態との間で任意に調整することができるようになっており、これにより、給水配管41から散水配管42に流れる水の流量が変更される。
【0051】
通信部45は、親機10の通信部12と同様な通信モジュールで構成されており、親機10と給水装置40との間でデータの送受信が可能になっている。アンテナ46は、通信部45に接続されており、通信部45が扱うことの可能な所定周波数帯の電波を送受信するためのものである。
【0052】
制御部44は、親機10から送信された指示データ(後述する)に基づいて弁装置43を制御する。指示データは、給水停止指示、給水開始指示の少なくとも2つの指示データを含んでおり、給水開始指示データには、水の流量を設定する流量設定データを含むことができる。制御部44が指示データを受信すると、給水停止指示データの場合、弁装置43を全閉状態にし、給水開始指示データの場合、弁装置43を開状態にする。弁装置43の開度は、流量設定データに対応するように変更されて単位時間当たりの給水量の調整が可能になる。また、制御部44によってコンクリート養生シート50への給水状況を検出することができるので、制御部44は給水状況を検出する検出手段となる。制御部44により検出したコンクリート養生シート50への給水状況は親機10へ送信することができるようになっており、親機10では、コンクリート養生シート50への給水状況を記憶しておくことができる。コンクリート養生シート50への給水状況としては、給水を開始した日時、給水を停止した日時、給水量等である。
【0053】
尚、弁装置43の代わりに、図示しない給水ポンプを設けてもよい。この場合、親機10から送信された給水指示データに対応するように、制御部44が給水ポンプを制御する。すなわち、給水停止指示データの場合は給水ポンプを停止させ、また、給水開始指示データの場合は給水ポンプを作動させ、給水ポンプによる給水量は、流量設定データに対応するように変更することができる。
【0054】
(親機10の制御部11の構成)
親機10の制御部11は、子機20から送信されたコンクリート養生シート50の含水率に基づいて給水量を設定するとともに、給水装置40を制御する。すなわち、コンクリート構造物の養生に適した湿潤環境は、コンクリート養生シート50の含水率によって得ることができる。コンクリート構造物の養生期間中に、コンクリート養生シート50の含水率を所定以上に保っておけば、コンクリート構造物の品質を高めることができる。このような湿潤環境は従来から知られているとともに、例えば実験等から求めることもでき、親機10の制御部11は、コンクリート養生シート50の含水率がコンクリート構造物の養生に適した含水率となるように、給水装置40による給水を行うように構成されている。例えば、子機20から送信されたコンクリート養生シート50の含水率が、コンクリート構造物の養生に適した含水率の範囲内(含水率50%以上)である場合には、親機10の制御部11は、給水停止指示データを給水装置40に送信する。一方、子機20から送信されたコンクリート養生シート50の含水率が、コンクリート構造物の養生に適した含水率の範囲から乾燥側に外れた場合には、親機10の制御部11は、給水開始指示データを給水装置40に送信する。子機20から送信されたコンクリート養生シート50の含水率が低くなればなるほど、給水装置40による給水量が多くなるように、給水量が予め設定されている。具体的な給水量は、コンクリート構造物の大きさ、養生管理する面積、外気温等によって変えることができ、例えば実験等によって求めておくことができる。
【0055】
尚、コンクリート養生シート50の含水率は所定よりも多くても問題とはならないが、乾燥側には外れないように制御部11が管理する。制御部11の管理アルゴリズムは、上述したように実験等から求めることもできるが、例えば雰囲気温度、コンクリート構造物の表面温度、期間等を考慮してシミュレーションした結果を用いて設計することもできる。
【0056】
このように、給水装置40は、親機10の制御部11によって制御されて給水制御が設定され、コンクリート養生シート50に自動で給水することができるので、自動給水装置である。
【0057】
親機10によって給水装置40を遠隔操作することも可能である。この場合、親機10は遠隔操作手段となり、その親機10には各種操作スイッチ等を設けておく。操作スイッチとしては、例えば給水操作スイッチ及び給水停止操作スイッチ等があり、管理者等が手動で操作可能なスイッチ類である。管理者等が給水操作スイッチを操作すると、親機10は給水操作を受け付け、また、管理者等が給水停止操作スイッチを操作すると、親機10は給水停止操作を受け付ける。親機10と給水装置40とは通信可能に接続されているので、給水装置40は、親機10による給水操作を受け付けると、コンクリート養生シート50の含水率がどの程度にあるかにかかわらず、給水していなければ強制的に給水を実行する。また、給水装置40は、親機10による給水停止操作を受け付けると、コンクリート養生シート50の含水率がどの程度にあるかにかかわらず、給水していれば強制的に給水停止を実行する。尚、この遠隔操作手段は、本発明に必須なものではなく、省略してもよい。
【0058】
(コンクリート養生シート)
コンクリートの養生装置1は、
図5及び
図6に示すコンクリート養生シート50を備えていてもよい。コンクリート養生シート50は、コンクリート構造物の表面を覆うとともに、該コンクリート構造物の表面の水の蒸発を抑制する部材、即ちコンクリート構造物の表面を湿潤状態に保ち、養生することができる部材であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、前記特許文献1~3に開示されている部材を使用することができる。
【0059】
コンクリート養生シート50は、図示しないが、例えば、水不透過性の基材シートと該基材シートにおけるコンクリート構造物側の面に設けられた湿潤材とを備えた部材、高分子水吸収体からなる保水層と水不透過性の遮熱層とが一体化された部材、保湿シートと水不透過性の保温シートとが一体化された部材等を挙げることができる。コンクリート養生シート50は、単層構造であってもよい。
【0060】
コンクリート養生シート50を備えている場合には、含水率測定センサ21bを、コンクリート養生シート50におけるコンクリート構造物を覆う側の面に固定することができる。これにより、コンクリート養生シート50によってコンクリート構造物を覆うと、含水率測定センサ21bがコンクリート構造物の表面とコンクリート養生シート50との間に配置されるとともに、コンクリート養生シート50の吸水面に接触した状態で保持される。
【0061】
含水率測定センサ21bをコンクリート養生シート50に固定する手段としては、どのような手段であってもよいが、例えば磁石による固定手段、機械的な固定手段等を挙げることができる。磁石による固定手段の場合、含水率測定センサ21bに第1永久磁石を固定しておき、コンクリート養生シート50における含水率測定センサ21b側と反対側に第2永久磁石を配置する。そして、第1永久磁石と第2永久磁石とを、コンクリート養生シート50を挟むように配置すると、磁力によって含水率測定センサ21bをコンクリート養生シート50の所望の位置に固定することができる。磁力を利用しているので、含水率測定センサ21bの位置調整が容易であるとともに、コンクリート養生シート50に損傷を与えることもない。また、含水率測定センサ21bに永久磁石を固定しておき、コンクリート養生シート50における含水率測定センサ21b側と反対側に鉄等の磁性体からなる部材を配置してもよいし、反対に、含水率測定センサ21bに磁性体からなる部材を固定しておき、コンクリート養生シート50における含水率測定センサ21b側と反対側に永久磁石を配置してもよい。
【0062】
機械的な固定手段の場合、例えばネジ、ボルト、ナット等の締結部材を用いることができる。含水率測定センサ21bを所望の位置に配置した後、含水率測定センサ21bとコンクリート養生シート50とをネジ及びナットで締結することや、ボルト及びナットで締結することができる。これにより、含水率測定センサ21bの脱落を防止することができる。この場合、ネジやボルトが挿通する挿通孔を含水率測定センサ21bの一部に設けることができる。
【0063】
含水率測定センサ21bは、磁石による固定手段と、機械的な固定手段との両方によってコンクリート養生シート50に固定されてもよいし、一方のみの固定手段で固定されてもよい。また、必要に応じて接着剤等を用いて含水率測定センサ21bがコンクリート養生シート50に固定されてもよい。
【0064】
(コンクリートの養生方法)
次に、上記のように構成されたコンクリートの養生装置1を使用してコンクリートの養生を行う方法について説明する。
図5及び
図6に示すように、コンクリート製底版101(コンクリート構造物)を構成するための型枠100を組み、その型枠100の内側にコンクリートを打設する。コンクリート製底版101は試験用の構造物であるが、実際の施工現場におけるコンクリート構造物と略同じであると考えることができる。コンクリート製底版101の各寸法は、例えば幅1200mm、長さ20200mm、厚さ250mmとすることができるが、これは一例である。親機10は子機20から離れた所に設置することができるが、これに限らず、親機10と子機20とを接近して設置してもよい。
【0065】
コンクリートの打設後、コンクリート製底版101の表面に給水する一次給水工程を行う。これは散水による方法であってもよいが、この実施形態では、コンクリート養生シート50による湿潤方法としている。すなわち、コンクリート養生シート50を水中に24時間浸漬させて当該コンクリート養生シート50が有する吸水材(湿潤材)に十分に水を含ませておく。また、測定部21は、上記磁石による固定手段及び/または機械的な固定手段でコンクリート養生シート50に固定しておく。この状態のコンクリート養生シート50を、湿潤材がコンクリート製底版101の表面側となるように、コンクリート製底版101の表面を覆うように敷設する。コンクリート養生シート50は、例えば、幅1000mm、長さ20000mm、厚さ1.3mmとすることができるが、これに限られるものではない。コンクリート養生シート50の湿潤材がコンクリート製底版101の表面に接触することで、コンクリート製底版101の表面に湿潤材によって給水される。また、時間の経過によってコンクリート製底版101の表面の水が減少していくと、コンクリート養生シート50の湿潤材の水によってコンクリート製底版101の表面に水が補われる。コンクリート養生シート50が水不透過層を有しているので、コンクリート製底版101の表面の水が蒸発しにくくなる。
【0066】
測定部21は、コンクリート製底版101の表面とコンクリート養生シート50との間に設置する。複数の測定部21を設ける場合には、互いに間隔をあけて設置する。コンクリート養生シート50が無い場合には、コンクリート製底版101の表面に接触するように測定部21を設置すればよい。
【0067】
一次給水工程後、測定部21によりコンクリート養生シート50の含水率を測定する含水率測定工程を行う。このとき、コンクリート製底版101の表面温度を測定する表面温度測定工程を行ってもよい。表面温度測定工程では、コンクリート製底版101の表面温度を測定部21の表面温度測定センサ21aによって測定する。含水率測定工程では、コンクリート養生シート50の含水率を含水率測定センサ21bによって測定する。これは、例えば親機10から子機20に測定指示を与えることにより自動的に行うことができ、また、子機20の電源が入っているときには常時測定し、その測定結果を親機10に出力するように構成することもできる。
【0068】
子機20はコンクリート製底版101の表面温度データと、コンクリート養生シート50の含水率データとを親機10に送信する。これが送信工程である。従って、本方法では、表面温度測定工程で測定されたコンクリート製底版101の表面温度と、含水率測定工程で測定されたコンクリート養生シート50の含水率とを、コンクリート製底版101から離れた場所へ送信する送信工程を含んでいるが、この送信工程は省略してもよい。
【0069】
親機10は、子機20から送信された表面温度データ及びコンクリート養生シート50の含水率データに基づいて指示データを生成し、生成した指示データを給水装置40に送信する。給水装置40は、親機10から送信された指示データに基づき、必要に応じた給水を自動で行う。つまり、表面温度測定工程で測定されコンクリート製底版101の表面温度と、含水率測定工程で測定されたコンクリート養生シート50の含水率とに基づいて、コンクリート製底版101の表面に給水する給水量を設定する二次給水工程を行う。二次給水工程は、複数回行われる場合もある。また、二次給水工程が行われる時間は任意に設定することができる。所定の養生期間が終了するまで、二次給水工程が繰り返されるので、コンクリート構造物の表面を適切に養生できる。尚、養生期間の途中で本方法を終了し、別の方法で養生を行ってもよい。
【0070】
(測定例)
図7は、従来例(特許文献5に相当)の水分センサによってコンクリート構造物の養生部分の雰囲気を測定した場合を示すグラフである。
図7に示すグラフの縦軸が体積含水率(%)であり、横軸が養生を開始してからの経過時間(hr)である。センサ1とセンサ2とは、異なる測定箇所を測定している。このグラフに示すように、外気温が変化することによって相対湿度が変化するので、コンクリート養生シート50の含水率を反映した測定結果が得られない。従って、コンクリートの養生を管理する閾値に用いる値とならない。また、水分計ではコンクリートとコンクリート養生シート50の両方の水分を計測するため、コンクリート構造物の体積が大きいほどコンクリートの乾燥速度が速くなり、コンクリート養生シート50の湿潤状態の確認が難しく、コンクリートの品質を確保できない可能性もある。
【0071】
これに対し、
図8の右側のグラフは、本発明の実施例に係る測定方法でコンクリート養生シート50の含水率を測定した結果を示している。
図8の右側のグラフの縦軸は、コンクリート養生シート50の含水率を含水率測定センサ21bで測定した測定値であり、横軸は、養生を開始してからの経過時間(hr)である。一方、
図8の左側のグラフの縦軸は、コンクリート養生シート50の重量(kg/0.65m
2)であり、横軸は養生を開始してからの経過時間(hr)である。また、コンクリート温度の測定結果も示している。
【0072】
コンクリート養生シート50の重量は、コンクリート養生シート50が吸収している水の量によって変化する。従って、
図8の左側のグラフは、コンクリート養生シート50の含水量の時間変化を示しており、時間の経過とともにコンクリート養生シート50の重量が軽くなる、即ちコンクリート養生シート50の含水量(含水率)が低下していることが分かる。
【0073】
図8の右側のグラフに示している含水率測定センサ21bで測定した測定値の変化は、左側のグラフで示すコンクリート養生シート50の含水量の時間変化と同様な傾向である。つまり、本実施形態の含水率測定センサ21bを用いることにより、コンクリート温度の変化に殆ど影響を受けることなく、コンクリート養生シート50の含水率を測定できていることが分かる。よって、本実施形態によれば、適切な養生管理を行うことができる。
【0074】
(実施形態の作用効果)
この実施形態によれば、打設後のコンクリート構造物の表面に給水した後、コンクリート構造物の表面温度を測定することでコンクリート構造物の表面温度が取得され、また、コンクリート養生シート50の含水率を測定することでコンクリート養生シート50の含水率が取得される。そして、コンクリート構造物の表面温度とコンクリート養生シート50の含水率とに基づいてコンクリート構造物の表面に給水することができる。このとき、コンクリート構造物の表面温度だけでなく、コンクリート養生シート50の含水率も得られていることから、表面温度及びコンクリート養生シート50の含水率に応じた量の水を供給することができる。また、コンクリート構造物の表面温度とコンクリート養生シート50の含水率とに基づいてコンクリート構造物の表面に給水を行うタイミングを的確に把握することができるので、給水が不要な時には給水を行わないようにし、給水が必要なときには必要な量の給水が行えるようになる。したがって、コンクリート養生シート50の含水率と表面温度を適切に管理することができ、高品質なコンクリート構造物を得ることができる。
【0075】
また、コンクリート構造物の表面温度と、コンクリート養生シート50の含水率とをコンクリート構造物から離れた場所へ送信することで遠隔監視を行うことができる。
【0076】
また、コンクリート構造物の表面に自動で給水することができるので、省力化できる。
【0077】
また、コンクリート養生シート50を備えている場合には、コンクリート構造物の湿潤状態を保持しながらも、表面温度と含水率とに基づいた養生管理が可能になり、より一層省力化できる。
【0078】
さらに、コンクリート構造物の位置情報・雰囲気温度・コンクリート表面温度・給水状況のいずれか1つ以上を検出することができ、その検出結果を保存しておくことができるので、コンクリート構造物の養生が適切に行われたか否かを後から判断できる。
【0079】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0080】
上記実施形態では、給水装置40として自動給水装置を用いているが、これに限らず、図示しないが作業者が手動で操作する給水装置を用いてもよい。この場合、作業者は、コンクリート構造物の表面温度と、養生シートの含水率とを親機10の表示画面に表示させておき、必要時にはコンクリート構造物の表面に給水を行う。
【0081】
また、親機10と子機20との接続、親機10と雰囲気測定装置30との接続、親機10と給水装置40との接続は、それぞれ、有線接続であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明は、例えば現場で打設されたコンクリートを養生する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 コンクリートの養生装置
10 親機
20 子機
21 測定部
21a 表面温度測定センサ
21b 含水率測定センサ
31 雰囲気温度センサ(外気温度センサ)
40 給水装置
50 コンクリート養生シート