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▶ コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016353
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】非破壊検査のための超音波標的
(51)【国際特許分類】
   G01B 17/00 20060101AFI20220114BHJP
   G01N 29/07 20060101ALI20220114BHJP
   G01N 29/22 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G01B17/00 C
G01N29/07
G01N29/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021112550
(22)【出願日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】2007249
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】バクー フランソワ
【テーマコード(参考)】
2F068
2G047
【Fターム(参考)】
2F068AA01
2F068AA31
2F068FF12
2F068FF25
2F068LL02
2F068QQ26
2G047AA05
2G047AC01
2G047BA03
2G047BC02
2G047BC18
2G047CA01
2G047DA03
2G047GG30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】主リフレクタを備えた超音波標的を提供する。
【解決手段】主リフレクタ10は、主頂点S10から延び、主三直角三面体を形成する3つの主面11~13を備えており、主頂点に面し、主三直角三面体の底面を形成する主底面を定めており、超音波標的1は、主リフレクタに固定された少なくとも1つの補助リフレクタ20~40を備えており、それぞれの補助リフレクタは、補助頂点S20~S40から延び、補助三直角三面体を形成する3つの補助面21~23、31~33、41~43を備えており、補助頂点に面し、補助三直角三面体の底面を形成する補助底面を定める。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主リフレクタ(10)を備える超音波標的(1)であって、前記主リフレクタは、
主頂点(S10)から延び、主三直角三面体を形成する3つの主面(11、12、13)を備えており、
前記主頂点に面し、前記主三直角三面体の底面を形成する主底面(P10)を定めており、
前記標的は、前記主リフレクタ(10)に固定された少なくとも1つの補助リフレクタ(20、30、40)を備えており、そのまたはそれぞれの補助リフレクタは、
補助頂点(S20、S30、S40)から延び、補助三直角三面体を形成する3つの補助面(21、22、23、31、32、33、41、42、43)を備えており、
前記補助頂点に面し、前記補助三直角三面体の底面を形成する補助底面(P20、P30、P40)を定めており、
前記標的は、前記補助底面(P20、P30、P40)、または各補助底面が前記主底面(P10)に平行なものであり、
2つの隣接する主面(11、12)は、前記主頂点(S10)から延びるリッジ(10)によって分けられており、
少なくとも1つの補助リフレクタは、内部補助リフレクタであり、
前記内部補助リフレクタの補助頂点(S20)は、前記リッジ上に位置しており、
前記内部補助リフレクタは、
前記内部補助リフレクタの前記補助面(21、22)を形成する前記隣接する主面(11、12)と、
前記隣接する主面と向かい合う主面(13)に平行な、前記隣接する主面の間に延びる横断補助面(23)と、
によって画定される、
標的。
【請求項2】
少なくとも1つの補助頂点または各補助頂点(S20、S30、S40)は、前記主底面(P10)に対して、前記主頂点(S10)と前記主底面の間の距離とは異なる距離に配置され、前記距離は前記主底面に対して垂直に測定される、
請求項1に記載の標的。
【請求項3】
前記主リフレクタに固定された少なくとも2つの補助リフレクタを備える、
請求項1または2に記載の標的。
【請求項4】
各補助頂点(S20、S30、S40)は、前記主底面に垂直な方向において、前記主頂点(S10)に対して同一の距離に配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の標的。
【請求項5】
少なくとも2つの補助頂点(S20、S30、S40)は、前記主頂点(S10)から2つの異なる距離に配置され、前記距離は前記主底面に対して垂直な方向に測定される、
請求項2に記載の標的。
【請求項6】
各リフレクタは、前記リフレクタを形成する面および前記リフレクタの底面によって画定される体積を定めており、前記標的は、前記主リフレクタ(10)および1つの補助リフレクタ(20、30、40)から選択される少なくとも2つのリフレクタの各々によって定められる体積が異なるものである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の標的。
【請求項7】
複数の補助リフレクタ(20、30、40)を備えており、各補助リフレクタは内部リフレクタである、
請求項1から6のいずれか1項に記載の標的。
【請求項8】
前記主リフレクタ(10)は、前記主面(11、12、13)および前記主底面(P10)の間に位置する内部空間を画定し、
少なくとも1つの補助リフレクタ(20、30、40)は、前記内部空間の外部に配置される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の標的。
【請求項9】
前記主リフレクタに固定された少なくとも2つの補助リフレクタを備えており、各補助リフレクタは前記内部空間の外部に配置される、
請求項8に記載の標的。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の標的(1)の動きの検出方法であって、検査段階において、
a)音響放射源(50)によって放射される入射音波(100)に前記標的をさらすステップであって、前記入射音波は入射軸(Δ)に沿って伝搬し、前記入射軸は前記標的の前記底面の垂直軸に対して30°より小さい角度で傾いている、ステップと、
b)ステップa)に続けて、前記標的によって反射された音波(101、102、103、194)を検出するステップであって、反射音波は、前記入射軸に平行な反射軸(Δ)に沿って伝搬する、ステップと、
c)ステップb)で検出された音波に基づいて前記標的のポジションを決定するステップであって、前記ポジションは前記標的の位置および/または向きを含む、ステップと、
を含み、
d)前記標的の参照位置および/または参照向きを含む参照ポジションを考慮するステップと、
e)ステップc)で得られた前記標的のポジションを、前記参照ポジションと比較するステップと、
を含む検出方法。
【請求項11】
f)ステップe)の比較結果に基づいて、前記参照ポジションに対する前記標的の動きを推定するステップ、
を含む、請求項10に記載の検出方法。
【請求項12】
前記参照ポジションは、前記検査段階の前にステップa)、b)、およびc)を実行することにより推定される、
請求項10または11のいずれかに記載の検出方法。
【請求項13】
前記参照ポジションは、図面または3次元モデルに基づいて定められる、
請求項10または11に記載の検出方法。
【請求項14】
前記標的は機器または構造要素(E)に固定され、前記方法は参照コンフィギュレーションに対する前記機器または前記構造要素の動きを推定するステップを含む、
請求項10から13のいずれか1項に記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、超音波による非破壊検査に関し、特に、過酷な環境に配置された機器の検査に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の産業用設備は、機器または構築物の完全性を検査するため、定期検査の対象となる。これらの検査は、規制要件を満たすため、および/または安全要求を満たすために実施される。構築物またはコンポーネントの完全性をチェックすること、またはそれらの位置の検査または寸法検査を実行することが問題となる。
【0003】
しかしながら、特定の環境は、従来の画像センサに基づく目視検査技術には適さない。問題となるのは、例えば、温度または照射レベルが非常に高い施設である。また、問題となるのは、不透明な液体に浸された環境、または不透明な遮蔽物、例えば金属遮蔽物によって覆われた環境であってもよい。原子力産業において、例えば、液体ナトリウムや液体鉛によって冷却される高速中性子炉や、核燃料サイクルに関連する外部からは見ることができない内部機器を含み得るタンクを有する施設においてさえも、このような状況に遭遇することがある。
【0004】
超音波検査技術により、この種類の設備におけるこの種類の困難を克服できる。これらにより、運転中、定期検査中、または保守や解体作業の前に設備を監視できる。そのとき、液体か固体かにかかわらず、種々の媒質を通る超音波の伝搬が利用されている。
【0005】
このような測定の原理はよく知られており、入射音波は、送信機によって、検査される機器または構築物の方向に送信される。後者によって入射波が反射される。次いで、反射波の一部が、検出器によって検出される。この種の測定を行うために、送信機と受信機の両方の役割を果たす超音波トランスデューサを使用するのが通例である。入射波は、一般にパルス波または短い波列の形をとる。反射波、すなわち検出器に戻って伝搬する波は、従来「エコー」と呼ばれている。計測器が成熟しており、関連する画像ソフトウェアが高性能であるため、音響測定の実施は有利である。一般に、反射音波の振幅、および飛行時間が利用される。飛行時間は、入射音波の送信と反射音波(エコー)の検出の間の時間間隔に対応する。
【0006】
しかしながら、送信または反射された音波は、通常、送受信トランスデューサと検査対象である機器との間で減衰する。これは、特に、トランスデューサと被検査機器の間に遮蔽物、例えば、金属厚みが置かれているときに事実となる。トランスデューサに向かって伝搬する反射波の強度を増加させるため、検査装置上に三角形コーナリフレクタと呼ばれる目標を配置できる。
【0007】
問題となるのは反射屈折の基本原理であるため、三角形コーナリフレクタの動作原理は、特に光学の分野でよく知られている。このような標的1AAは、図1に示すように、3つの直交する平面で構成される。通常「キューブコーナ」と呼ばれる三角形コーナリフレクタは、入射軸Δに平行に伝搬する入射音波にさらされると、入射波の軸に平行な伝搬軸Δに沿って超音波を反射する特性を有する。これは、標的の種々の直交面からの音波が、3回連続して反射することによる。この特性は、入射角が標的の主底面の法線に対して約25°~30°に制限されたときに観察される。反射波の強度は、標的の面積、および標的に対する入射軸Δの中心度とともに増加する。したがって、標的は、平面の壁からの鏡面反射によって生じるエコーよりも強いエコーを生成するので、エコー源性であると認定される。
【0008】
音波を反射するための標的の使用は、例えば欧州特許出願公開第2192593号明細書に既に記載されている。後者では、標的は、この場合は原子炉のポンプである機器の上に置かれる。標的は、平面状であるか、または2つの直交する平面から形成される。それは、問題となるのが振動の振幅の検査であるか周波数の検査であるかにかかわらず、機器の振動を検査するための超音波リフレクタとして使用される。特開昭56-004006号公報には、音波を反射するための三角形コーナリフレクタを使用することが記載されている。
【0009】
欧州特許出願公開第2937711号公報には、同じ機器の上であるが複数の異なる位置に配置された三角形の様々な反射標的を使用することが記載されている。問題となるのは、振動を検査する目的で電磁波を反射させることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2192593号明細書
【特許文献2】特開昭56-004006号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第2937711号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したいずれの文献においても、機器に固定され、機器の動きを定量的に推定するために単独で音響リフレクタとして使用することが意図された三角形コーナリフレクタを使用することは記載されていない。以下に説明する発明は、この問題に対処するものである。これにより、超音波リフレクタとして作用する標的が固定された装置の動き、特に二次元または三次元の動きを定量的に推定できる。動きは、単一の標的で推定され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の主題は、主リフレクタを備えた超音波標的であって、前記主リフレクタは、
主頂点から延び、主三直角三面体を形成する3つの主面を備えており、
前記主頂点に面し、前記主三直角三面体の底面を形成する主底面を定めており、
前記標的は、前記主リフレクタに固定された少なくとも1つの補助リフレクタを備えており、そのまたはそれぞれの補助リフレクタは、
補助頂点から延び、補助三直角三面体を形成する3つの補助面を備えており、
前記補助頂点に面し、前記補助三直角三面体の底面を形成する補助底面を定める。
【0013】
前記標的は、前記補助底面または各補助底面が前記主底面に平行なものであることが好ましい。
【0014】
前記主リフレクタおよび各補助リフレクタは、入射軸に沿って伝搬する入射超音波を反射するように構成され、前記入射軸に平行な反射軸に沿って伝搬する反射波を生成する。前記入射軸は、好ましくは、前記主底面の垂直軸に対して25°または30°の角度まで広がる入射角範囲に配置される。
【0015】
前記リフレクタおよび各補助リフレクタは、モノリシックな標的を形成する。前記標的は、一体的な構造である。したがって、各補助リフレクタのポジションは、前記主リフレクタに対して固定される。
【0016】
一実施形態によれば、少なくとも1つの補助頂点または各補助頂点は、前記主底面に対して、前記主頂点と前記主底面の間の距離とは異なる距離に配置され、前記距離は前記主底面に対して垂直に測定される。
【0017】
一実施形態によれば、標的は、前記主リフレクタに固定された少なくとも2つの補助リフレクタまたは少なくとも3つの補助リフレクタを備える。各補助頂点は、前記主頂点に対して垂直な方向において、前記主底面に対して同じ距離に配置されてもよい。少なくとも2つの補助頂点は、前記主頂点からそれぞれ異なる距離に位置してもよいが、前記距離は前記主底面に対して垂直に測定される。
【0018】
各リフレクタは、前記リフレクタを形成する面および前記リフレクタの底面によって規定される体積を画定する。前記標的は、前記主リフレクタおよび補助リフレクタから選択される少なくとも2つのリフレクタによって画定される体積がそれぞれ異なるものであってもよい。
【0019】
一実施形態によれば、
2つの隣接する主面は、前記主頂点から延びるリッジによって分けられており、
内部補助リフレクタと呼ばれる1つの補助リフレクタの少なくとも1つの補助頂点は、前記リッジ上に位置しており、
前記内部補助リフレクタは、
前記補助リフレクタの前記補助面を形成する前記隣接する主面と、
前記隣接する補助面と向かい合う主面に平行な、前記隣接する主面の間に延びる横断補助面と、
によって画定される。
【0020】
前記標的は複数の補助リフレクタを備え、各補助リフレクタが内部リフレクタであってもよい。
【0021】
一実施形態によれば、
主リフレクタは、前記主面および前記主底面の間に位置する内部空間を画定しており、
少なくとも1つの補助リフレクタは、前記内部空間の外部に配置される。
【0022】
本発明の第2の主題は、本発明の第1の主題にかかる標的の動きの推定方法であって、検査段階において、
a)音響放射源によって放射される入射音波に前記標的をさらすステップであって、前記入射音波は入射軸に沿って伝搬し、前記入射軸は前記標的の前記主底面の垂直軸に対して30°より小さい角度で傾いている、ステップと、
b)ステップaに続けて、前記標的によって反射された音波を検出するステップであって、反射音波は前記入射軸に平行な反射軸に沿って伝搬する、ステップと、
c)ステップbで検出された音波に基づいて前記標的のポジションを決定するステップであって、前記ポジションは前記標的の位置および/または向きを含む、ステップと、
d)前記標的の参照位置および/または参照向きを含む参照ポジションを考慮するステップと、
e)ステップcで得られた前記標的のポジションを、前記参照ポジションと比較するステップと、
を含む。
【0023】
本方法は、
f)ステップe)で得られた比較結果に基づいて、前記参照ポジションに対する前記標的の動きを推定するステップ、
を含んでもよい。
【0024】
前記参照ポジションは、前記検査段階に先立ってステップa)、b)、およびc)を実行することによって推定されてもよい。参照ポジションは、図面または3次元モデルに基づいて定められてもよい。
【0025】
前記標的は、機器または構成要素に固定されてもよく、前記方法は、参照コンフィギュレーションに対する機器または構造要素の動きを推定するステップを含む。参照コンフィギュレーションは、機器または構造要素のノミナルコンフィギュレーションに明確に対応してもよい。この方法は、機器または構造要素が参照コンフィギュレーションにあるかどうかを検査するために使用されることを目的としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明は、以下に列挙される図面を参照して説明の残りの部分で説明される例示的な実施形態の説明を読むことにより、よりよく理解される。
図1図1は、従来技術にかかる標的を示す。
図2A図2Aは、本発明の第1の実施形態を示す。
図2B図2Bは、本発明の第1の実施形態を示す。
図2C図2Cは、本発明の第1の実施形態を示す。
図2D図2Dは、本発明にかかる標的の動作を示す。
図2E図2Eは、本発明にかかる標的の動作を示す。
図3A図3Aは、本発明の第2の実施形態を示す。
図3B図3Bは、本発明の第3の実施形態を示す。
図4A図4Aは、第1の実施形態にかかる標的に対向するトランスデューサを配置することで生成されるCスキャンマップを示す。このコンフィギュレーションでは、トランスデューサによって送信された音波は、標的の主底面に垂直に伝搬する。
図4B図4Bは、第1の実施形態にかかる標的に対向するトランスデューサを配置することで生成されるCスキャンマップを示す。このコンフィギュレーションでは、トランスデューサによって送信された音波は、標的の主底面に垂直に伝搬する。
図4C図4Cは、標的の補助リフレクタによって反射されたエコーの検出を示すタイミング図である。
図4D図4Dは、標的の主リフレクタによって反射されたエコーの検出を示すタイミング図である。
図4E図4Eは、本事例では標的が固定されたプレートである機器によって反射されたエコーの検出を示すタイミング図である。
図5A図5Aは、第1の実施形態にかかる標的に対向するトランスデューサを配置することで生成されるCスキャンマップを示す。このコンフィギュレーションでは、トランスデューサによって送信される音波は、標的の主底面の法線に対して傾斜して伝搬する。
図5B図5Bは、第1の実施形態にかかる標的に対向するトランスデューサを配置することで生成されるCスキャンマップを示す。このコンフィギュレーションでは、トランスデューサによって送信される音波は、標的の主底面の法線に対して傾斜して伝搬する。
図5C図5Cは、主リフレクタの底面に垂直で主頂点を通る軸を中心とした標的の回転を示す。
図6図6は、機器を検査する目的で本発明を実施する方法の主要なステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図2Aから図2Eは、本発明による反射型超音波標的1の第1の例を示す。標的1は、3つの平面状直交面11、12、および13から形成された主リフレクタ10を備える。3つの平面状直交面は、交差しており、主頂点S10を形成する交点を定める。直交座標系X、Y、およびZが示されている。面11、12、および13は、それぞれ直交平面Pxz、Pyz、Pxyに位置している。
【0028】
示された例では、主リフレクタ10は、二等辺の三直角三面体である。各面は二等辺直角三角形であり、その直角は主頂点S10に位置している。各面は、主頂点S10の反対側の境界まで延びている。示された例では、反対側の境界は、11、12、および13と参照される。境界は、同一平面上にあり、主底面P10にあり、三直角三面体の底面を形成している。三面体の底面とは、三面体の高さH10に垂直な平面を意味しており、ここで高さは主頂点S10から測定される。主底面P10および高さH10は、図2Cに示されている。
【0029】
主リフレクタ10は、従来技術に関連して説明した標的1AAと同一の特性を有している。入射音波が、入射軸Δに沿って伝搬して主リフレクタの面に到達すると、主リフレクタ10は、入射波を反射し、リフレクタから入射軸に平行な反射軸Δに沿って反射する反射波を生成する。入射軸Δに平行な反射の効果は、主底面P10に垂直な方向に対して±25°または30°の入射角度範囲Ωにおいて生じる。
【0030】
主リフレクタの面は剛性であり、粗さは使用される超音波の波長に比べて小さい。これらは、好ましくは、周囲媒体との界面における超音波の反射に関して良好な特性を有する材料から形成されることが好ましい。それは、例えば、水や液体金属に浸すことを目的としたステンレス鋼製の面である。主底面P10に沿った境界11、12、および13で画定された部分は、主底面を通る音波の伝搬を促進するために、好ましくは開放されている。そうでなければ、厚みが薄い剛性素材を備えていてもよい。
【0031】
反射標的1は、少なくとも1つの補助リフレクタを備えている。本実施例では、反射標的1は、3つの補助リフレクタ20、30、および40を備えており、これは好ましいコンフィギュレーションである。
【0032】
各補助リフレクタ20、30、40は、主リフレクタ10に確実に固定されている。標的は、音響検査モダリティを用いて機器を検査するために、機器に対して配置されることが意図されている。機器に対して配置する前に、標的は、一体構造のモノリシック部品である。以下に説明するように、補助リフレクタ20、30、および40は、主リフレクタ10によって画定される内部空間に配置されてもよく、マウントで主リフレクタに結合されてもよい。したがって、標的1が動くと、その移動は、主リフレクタ10および各補助リフレクタに影響を及ぼす。
【0033】
主リフレクタ10と同様に、各補助リフレクタは、二等辺の三直角三面体である。各補助リフレクタ20、30、および40は、互いに直角な3つの平面状の補助面によって形成され、その交点は頂点を形成し補助頂点と呼ばれる。各補助面は、二等辺直角三角形の形状であり、三角形は補助頂点において直角である。各補助面は、補助頂点から境界に延びている。各補助リフレクタの補助面の境界は、補助底面を定めている。これらは、同一平面上にあってもよい。補助底面は、補助三面体の底面を形成する。底面は補助三面体の高さに直交する平面であり、その高さは補助頂点から測定される。図2Cは、主リフレクタ10の頂点S10、および補助リフレクタ20の頂点S20から延びる高さH10、H20をそれぞれ示している。図2Cは、主底面P10および補助リフレクタの補助底面P20もまた示している。
【0034】
図2Aは、
第1の補助頂点S20の周りで、第1の補助面21、第2の補助面22、および第3の補助面23の間に広がる第1の補助リフレクタ20と、
第2の補助頂点S30の周りで、第1の補助面31、第2の補助面32、および第3の補助面33の間に広がる第2の補助リフレクタ30と、
第3の補助頂点S40の周りで、第1の補助面41、第2の補助面42、および第3の補助面43の間に広がる第3の補助リフレクタ40と、
を示している。
【0035】
この第1の例では、各補助リフレクタは、主頂点S10と主底面P10との間の、主リフレクタ10によって画定される空間に位置している。そのような補助リフレクタは、「内部リフレクタ」と称される。そのとき反射標的1は、特にコンパクトである。より正確には、各補助リフレクタ20、30、および40は、
それぞれ主リフレクタにおいて隣接する2つの主面の部分に対応する第1の補助面および第2の補助面であって、上記部分は、上記隣接する主面の境界から延びる、第1の補助面および第2の補助面と、
主リフレクタの主面と平行に延びる第3の補助面であって、上記主面は、上記隣接する主面と向かいあう、第3の補助面と、
によって規定される。
【0036】
したがって、
第1の補助リフレクタ20の補助面21および22は、主リフレクタの主面11および12の2つの部分であり、上記部分は、主リフレクタの2つの境界11および12と隣接する。第1の補助リフレクタ20の他の補助面23は、他の主面13と平行に延びている。
第2の補助リフレクタ30の補助面31および33は、主リフレクタの主面11および13の2つの部分であり、上記部分は、主リフレクタの2つの境界11および13と隣接する。第2の補助リフレクタ30の他の補助面32は、他の主面12と平行に延びている。
第3の補助リフレクタ40の補助面42および43は、主リフレクタの主面12および13の2つの部分であり、上記部分は、主リフレクタの2つの境界12および13と隣接する。第3の補助リフレクタ40の他の補助面41は、他の主面11と平行に延びている。
【0037】
第1の実施形態によると、主リフレクタ10の2つの隣接する主面の間の交線は、上記主リフレクタのリッジ10を形成する。各補助リフレクタ20、30、40において、
補助頂点S20、S30、およびS40は、主リフレクタのリッジに位置しており、
補助リフレクタは、
・2つの隣接する主面(例えば、補助リフレクタ20について主面11、12)であって、その一部が補助面(例えば、補助リフレクタ20について補助面21、22)を形成する、2つの隣接する主面と、
・横断補助面と称される他の補助面23であって、上記隣接する主面と向かい合う主面(例えば、リフレクタ20について主面13)と平行に上記隣接する主面の間において延びる、他の補助面と、
によって画定される。
【0038】
図2Bは、第1の実施形態にかかる標的の別の3次元ビューを示している。第1の実施形態では、主リフレクタおよび各補助リフレクタの底面は、一致している。より一般的には、主リフレクタ10、および各補助リフレクタ20、30、40のそれぞれの底面は平行である。
【0039】
平面音波100が、入射軸Δに沿って標的1に向かって伝搬すると、標的を構成する各リフレクタが、反射軸Δに沿って伝搬する反射波を生成するように、入射音波の一部を反射する。図2Dは、
主リフレクタによって反射される主反射波101と、
3つの補助リフレクタの各々によってそれぞれ反射される補助反射波102、103、104と、
を示している。
【0040】
種々のリフレクタの間の空間的なオフセットのために、補助反射波102、103、104は、主反射波101に対して時間的にシフトされており、時間的な位相シフトがもたらされる。図2Dに示された例では、主反射波101は、補助反射波に対して遅れている。
【0041】
図2Eでは、上述の通り標的1は、トランスデューサ50に面して配置されている。トランスデューサ50は、例えば圧電変換器であり、音波の送信器および受信器として作動し、入射音波の入射角が標的の全ての部分で同一と考えられ得るように、標的から十分遠くに置かれている。トランスデューサ50は、標的に向かって伝搬する入射音波100を、入射軸Δに平行に送信するように構成される。標的を構成する種々のリフレクタからの反射の影響の下、トランスデューサの方向に、入射軸と平行に伝搬する4つの反射波101、102、103、および104が形成される。種々のリフレクタの間の空間的なオフセットにより、補助反射波102、103、および104は主反射波101に対して時間的にシフトされる。
【0042】
入射角に応じて、補助反射波は互いにシフトされ得る。入射角は、標的1に対するトランスデューサ50の位置に依存する。第1の実施形態によると、平面入射音波を仮定すると、補助反射波は、入射角Δが主底面P10と直交しているときに同期している、すなわち時間的に互いにシフトしていない。これは、第1の実施形態では、底面P10に垂直に測定された距離を考慮すると、各補助頂点S20、S30、およびS40が主頂点S10から等距離にあるという事実による。
【0043】
上述したように、各反射波101、102、103、および104は、入射軸に平行な反射軸Δに沿って伝搬する。入射軸Δに平行な反射の効果は、各リフレクタの底面に垂直な方向に対する入射角の範囲Ωが±25°または30°であるときに生じる。三直角三面体の幾何形状により、「平行反射」が生じる角度範囲Ωが最大化される。さらに、各リフレクタの底面が互いに平行な事実により、標的を形成する全てのリフレクタについて、主リフレクタであれ補助リフレクタであれ、角度範囲Ωを同一にできる。
【0044】
垂直入射、すなわち入射軸Δが各リフレクタの底面に垂直なとき、各反射音波の強度は最大となるが、このとき好ましいコンフィギュレーションに一致している。各リフレクタの底面が平行なとき、各リフレクタの角度応答は類似する。角度応答とは、入射波の強度に対する反射波の相対強度を、入射角度の関数としたものを意味している。
【0045】
図3Aは第2の実施形態を示しており、各補助リフレクタ20、30、40の頂点が主リフレクタ10の境界と結合している。本実施形態によると、各補助リフレクタは、主リフレクタによって画定される内部空間の外部に位置している。図3Aに示される実施形態では、第1の実施形態のように、各補助リフレクタの底面が主リフレクタの底面と平行である。図3Aには、標的1が固定された機器E、本事例ではプレートが示されている。
【0046】
主底面に垂直な軸に沿って計測された距離を考慮すると、各補助リフレクタの頂点が、第1の実施形態と同様に主リフレクタの頂点から等距離にあることにも留意されたい。そのような等距離は、本質的ではない。図3Bに示される第3の実施形態では、補助リフレクタ30および40の頂点は、それぞれ例えばロッドであるホルダ35、45によって主リフレクタ10の境界に結合される。各ホルダは、標的の1つのマウントを形成する。各ホルダの長さは異なっている。本実施形態では、各補助頂点S20、S30、S40と主頂点S10との間のそれぞれの距離は、異なっている。
【0047】
本実施形態によると、第2の実施形態と同様に、
各補助リフレクタは、主リフレクタによって画定される内部空間の外部に位置しており、
各補助リフレクタの底面は、主リフクレクタの底面に平行である。
【0048】
いずれの実施形態においても、標的1は、音波モダリティを用いた定期検査が必要な機器に固定されることを目的としており、音波モダリティにおいて機器が入射音波100にさらされる。従来技術に関連して説明したように、外観検査が難しい、不透明な媒体に浸された機器を問題としてもよい。ターゲットとなる応用の1つは、例えば、高速中性子炉において液体鉛または液体ナトリウムに浸された機器の検査である。
【0049】
その幾何的なコンフィギュレーションのため、標的を形成する各リフレクタは、特にエコー源性であり、平面によって反射される音波よりも強度の高い反射波を生成する。種々のリフレクタを含む標的の利用により、標的への照射に続いて、強くかつ時間的にシフトされた反射波を得ることができるが、時間的にシフトとは、主リフレクタで反射された音波が補助リフレクタで反射された音波または各音波に対して時間的にシフトするという意味である。各反射波は、慣習的に「エコー」という用語で呼ばれる。標的1により、主エコー、また、少なくとも1つ好ましくは1を超える補助エコーが生成される。各補助エコーおよび主エコーの間の時間シフトにより、主エコーは容易に各補助エコーから区別され得る。
【0050】
さらに、各エコーの振幅は、リフレクタの寸法に依存する。上述した具体例では、主リフレクタ10の寸法は、各補助リフレクタよりも大きい。したがって、主リフレクタは、補助リフレクタよりも強いエコーを生成でき、これにより、補助エコーに対する主エコーの識別も容易になる。したがって、各リフレクタが、上記リフレクタの各面と底面の間に含まれる体積を画定する場合、2つの異なるリフレクタでそれぞれ画定される体積が異なることが好ましい。例えば、主リフレクタの体積が、各補助リフレクタの体積よりも大きくてもよく、小さくてもよい。
【0051】
どの実施の形態であっても、主リフレクタのリッジの長さは、2cmと数10cm、例えば30または40cm、の間に含まれていてもよい。各補助リフレクタのリッジの長さは、好ましくは主リフレクタのリッジ10の長さの0.25倍と、4倍の間に含まれている。
【0052】
各リフレクタで生成されたエコーの検出および識別により、超音波を用いた非破壊検査の分野で知られた方法を用いて、空間における各リフレクタのポジションの情報を得ることができる。したがって、空間における標的のポジションを推定できる。標的のポジションとは、例えば超音波トランスデューサに対する距離である位置、および/または入射軸に対する標的の向きを意味している。
【0053】
上述した実施形態では、各補助リフレクタの各面は主リフレクタの1つの面に平行である。しかしながら、これは必須ではない。これらの実施形態では、補助リフレクタの面は、主リフレクタの面に平行でなくてもよい。
【0054】
図4Aは、第1の実施形態にかかる標的を用いて実験的に得られたCスキャンマップを示している。この例では、入射音波を送信し反射音波を検出する上述した音波トランスデューサが使用された。トランスデューサは、標的の主底面から25cmの距離に配置されている。入射音波は、中心周波数2.25MHzで送信され、入射軸は標的の底面に垂直である。音響トランスデューサは、幅1/2インチであり、標的は水中に置かれ、音波の伝搬速度は1490m.s-1である。
【0055】
Cスキャンという用語は、当業者に公知である。それは音響エコーの最大振幅のマップに相当し、音響エコーは音響トランスデューサによって走査される検出面に沿って検出される。検出面は、好ましくは入射軸に垂直であってもよい。したがって、グレースケールレベルは、エコーの振幅を表している。図4Aの場合、したがって、Cスキャンマップは、標的の主底面に平行な検出面上で得られている。入射軸Δは、検出面に垂直である。主リフレクタ10から発する強いエコー101(文字aで参照される)、および補助リフレクタ20、30、および40に対応する、振幅が小さい3つのエコー102、103、および104(文字bで参照される)が観察される。主リフレクタの外部では、プレートEから発するエコーが観察され、文字cでも参照される。
【0056】
図4Bは、空間的な振幅分布ではなく、検出されたエコーの飛行時間、すなわち入射音波の送信とエコーの検出の間の時間が示されたCスキャンマップを示している。したがって、グレースケールレベルは、飛行時間、したがって各リフレクタと超音波センサの間の距離を示している。補助エコー102、103、および104の飛行時間が主エコー101の飛行時間より小さいことを確かめられる。これは、補助リフレクタが、主リフレクタよりも検出面に近いことによる。このコンフィギュレーションでは、検出面は標的の各リフレクタの底面に平行であり、全ての補助リフレクタが底面を共有しているため、各補助エコーの飛行時間は等しく、計測の不確かさの範囲内である。
【0057】
図4Aによって検出面に平行な2次元空間情報が得られるが、図4Bによって検出面に垂直な深さ情報(測距測定)にアクセスできる。
【0058】
図4Aおよび4Bの組合せにより、空間における標的のポジションが推定される。ポジションとは、標的の位置および/または向きを意味している。それは、標的の参照ポジションと比較されることが有利である。検査段階において、標的のポジションを参照ポジションと比較することにより、標的のあらゆる動きを検出できる。参照ポジションは、検査段階の前の(または先行する)参照段階において行われる参照超音波測定を用いて確立されてもよい。それは、例えば3次元モデルや図面に基づいて、理論的に得られてもよく、および/または他の測定モダリティを介して得られてもよい。
【0059】
図4C、4D、および4Eは、それぞれ補助リフレクタ、主リフレクタ、および標的が固定されたプレートEによって反射された検出エコーのタイミング図を示している。図4Cから4Eでは、x軸が時間に対応しており(単位マイクロ秒μs)、一方y軸は振幅(任意の単位)に対応している。図4Cおよび図4Eによって、
反射された音波の検出の順番、ここで補助リフレクタのエコー(図4C)は、主リフレクタのエコー(図4D)の前に検出され、後者はプレートのエコー(図4E)の前に検出される、
種々のエコーの間の強度の違い、ここで補助リフレクタのエコーの強度が主リフレクタまたはプレートのエコーよりも小さいことが確かめられてもよい、
を観察できる。
【0060】
図5Aおよび図5Bは、それぞれ振幅と飛行時間のCスキャンマップであり、トランスデューサの送信/検出面を各リフレクタの底面に対して傾けることによって得られている。このことは、トランスデューサの送信/検出面に対して標的を僅かに回転させることに対応している。これらの図では、補助リフレクタのエコーのみが示されている。
これらの図では、
エコー102、103、および104の最大振幅Amaxは、それぞれ0.273、0.269、および0.308であり、
エコー102、103、および104の飛行時間tは、それぞれ313.1μs、312.9μs、および312.3μsである、
ことを確かめられる。
【0061】
水中の波の速度から、飛行時間のシフト1μsは、距離0.7mmに相当すると推定される。
【0062】
エコー102の起点である補助リフレクタ20は送信/検出面から遠く(長い飛行時間)、一方でエコー104の起点である補助リフレクタ40は近いと結論され得る。
【0063】
図5Cは、各補助リフレクタが黒い円板で示された参照ポジションと、検査段階で取り入れられる、各補助リフレクタが輪で示された測定ポジションとの間における標的の回転を説明している。この図では、トランスデューサの送信/検出面は、主リフレクタの底面と平行であると仮定される。ポジションの比較によって、各リフレクタの底面に垂直であり主リフレクタの頂点を通過する回転軸周りの、参照ポジションと測定ポジションの間における標的の回転が示されている。
【0064】
図6は、上述したような標的の実施の主なステップを示している。標的は、そのポジションを検査することが望ましい機器Eに固定されている。問題となるのは、例えば、液体ナトリウムまたは液体鉛によって冷却された原子炉の機器であってもよい。
【0065】
ステップAでは、標的1に面してトランスデューサ50を配置し、入射音波を標的に向けて送信する。標的に向けてとは、主リフレクタ10の底面P10の法線に対して0°(入射軸が底面P10に垂直)から±25°または30°までに広がる角度範囲を意味している。入射角が小さいほど、エコーの強度が高い。好ましくは、音波は、標的に到達するまでには平面波であることが好ましい。一般的に超音波である音波では、音響周波数は20kHzと10MHzの間に含まれる。
【0066】
ステップBでは、標的の主リフレクタおよび各補助リフレクタによってそれぞれ生成されたエコーを検出する。この例では、検出は、ステップAで送信器として作動しステップBで受信器として作動する同一のトランスデューサ50によって実行される。
【0067】
ステップCでは、ステップBで検出されたエコーに基づいて、標的1のポジション(位置および/または向き)を推定する。一般的に、ステップCは、送信/受信トランスデューサ50の測定結果を用いて、プロセシングユニットによって実行される。飛行時間による測距の原理によると、音波の伝搬速度を考慮すると、飛行時間(入射波の送信と反射波の検出の間の時間間隔)を測定することにより、トランスデューサ50と各リフレクタの間の距離を推定できる。プロセシングユニットは、音響信号を処理するアルゴリズムを実行するようにプログラムされる。
【0068】
ステップDでは、参照ポジションとステップBで測定されたエコーから推定されたポジションとの間における標的の動きを推定するために、標的のポジションを参照ポジションと比較する。参照ポジションは、ステップA、B、およびCを、参照段階と呼ばれる前段階で実行することにより確立されていてもよい。代わりに、参照ポジションは、図面または3次元モデルに基づいて確立されてもよい。
【0069】
1つの可能性によれば、ステップDでは、トランスデューサ50と各リフレクタ(主リフレクタおよび補助リフレクタ)との間の距離は、各リフレクタについてそれぞれ確立された参照距離と比較される。測定された距離が参照距離と一致しない場合、プロセシングユニットは、異常信号を生成する。そして、標的のポジションが更新される。
【0070】
本発明は、標的のエコー源性の特徴を利用しており、空間におけるポジションの実験的な決定を容易にする。ステップDでの比較結果に基づいて、標的が固定された機器が、参照コンフィギュレーションに対して移動したか否かを結論できる。特に、標的が一対構造であり、機器に固定されていることから、標的の動きは、それが配置された機器の動きを反映する。
【0071】
どの実施形態であっても、標的は、少なくとも主リフレクタ、および少なくとも1つの補助リフレクタを備えている。標的が少なくとも3つの補助リフレクタを備えていることが好ましい。
【0072】
補助リフレクタの数は、標的が移動できるとみなされる自由度の数、および/またはバルク拘束条件によって変更されてもよい。
【0073】
本発明は、不透明な媒体に浸された機器または構造物、または照射されることができない機器または構造物、そして特に、液体、特に不透明な液体、に沈められた機器または構造物を検査するために使用できる。問題となる機器は、不透明な遮蔽物に覆われていてもよい。不透明な遮蔽物は、例えば、金属やプラスチックから成る。
【0074】
より一般的には、本発明は、従来のイメージング手段と両立しない環境に対して適用できる。例えば、問題となる環境は、温度や照射レベルが非常に高く、遠隔操作が不可欠な環境であってもよい。本発明は、構造物の完全性を検査するために原子力産業で使用されてもよい。また、不透明な流体または複雑な機器が使用される他の産業部門、例えば食品加工産業、化学または石油ガス産業、または航空産業にも関連し得る。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図6
【外国語明細書】