(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163535
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】走行管理システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068536
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】朝田 諒
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】伊原 亮輔
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA05
2B043BA09
2B043BB14
2B043DA17
2B043DC01
2B043EA16
2B043EA32
2B043EB05
2B043EB15
2B043EB16
2B043EC14
2B043ED03
2B043ED12
(57)【要約】
【課題】作業車の走行の効率が低下しにくい走行管理システムを提供する。
【解決手段】作業車1の走行を制御する走行制御部を備える走行管理システムであって、作業車1の機体10に対する相対位置が設定された仮想的な第1マーカー51を記憶する第1記憶部と、機体10に対する相対位置が設定された仮想的な第2マーカー52を記憶する第2記憶部と、圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部と圃場との境界の周辺に設定された第1領域を記憶する第3記憶部と、境界の周辺に設定された第2領域を記憶する第4記憶部と、を備え、走行制御部は、第1マーカー51が第1領域の外側へ出ることが抑制され、且つ、第2マーカー52が第2領域の外側へ出ることが抑制されるように、作業車1の走行を制御する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車の走行を制御する走行制御部を備える走行管理システムであって、
前記作業車の機体に対する相対位置が設定された仮想的な第1マーカーを記憶する第1記憶部と、
前記機体に対する相対位置が設定された仮想的な第2マーカーを記憶する第2記憶部と、
圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部と前記圃場との境界の周辺に設定された第1領域を記憶する第3記憶部と、
前記境界の周辺に設定された第2領域を記憶する第4記憶部と、を備え、
前記走行制御部は、前記第1マーカーが前記第1領域の外側へ出ることが抑制され、且つ、前記第2マーカーが前記第2領域の外側へ出ることが抑制されるように、前記作業車の走行を制御する走行管理システム。
【請求項2】
前記第1マーカーは、前記機体のうちの第1部分の平面視における外形に対応しており、
前記第2マーカーは、前記機体のうちの第2部分の平面視における外形に対応しており、
前記第1部分と前記第2部分とは互いに異なる高さに位置している請求項1に記載の走行管理システム。
【請求項3】
前記第1部分は機体フレームであり、
前記第2部分は、前記機体フレームに支持された作業装置である請求項2に記載の走行管理システム。
【請求項4】
前記作業装置は前記機体フレームに対して昇降可能に構成されており、
前記第2マーカーは、前記作業装置が所定高さ以上まで上昇した状態での、前記作業装置の平面視における外形に対応している請求項3に記載の走行管理システム。
【請求項5】
前記作業装置の形状に基づいて前記第2マーカーを設定するマーカー設定部を備える請求項3または4に記載の走行管理システム。
【請求項6】
前記圃場外縁部の位置及び高さを示す外縁部情報を取得する取得部と、
前記第1部分の高さ位置と、前記第2部分の高さ位置と、前記外縁部情報と、に基づいて、前記第1領域及び前記第2領域を設定する領域設定部と、を備える請求項2から5の何れか一項に記載の走行管理システム。
【請求項7】
前記第1記憶部は、複数の前記第1マーカーを記憶しており、
前記複数の第1マーカーは、第1内側マーカーと、前記第1内側マーカーよりも外側に位置する第1外側マーカーと、を含んでおり、
前記第2記憶部は、複数の前記第2マーカーを記憶しており、
前記複数の第2マーカーは、第2内側マーカーと、前記第2内側マーカーよりも外側に位置する第2外側マーカーと、を含んでおり、
前記走行制御部は、第1条件及び第2条件の少なくとも一方が満たされた場合、第1制御を実行するように構成されており、
前記第1条件は、前記第1外側マーカーが前記第1領域の外側へ出ることであり、
前記第2条件は、前記第2外側マーカーが前記第2領域の外側へ出ることであり、
前記走行制御部は、第3条件及び第4条件の少なくとも一方が満たされた場合、前記第1制御とは異なる内容の制御である第2制御を実行するように構成されており、
前記第3条件は、前記第1内側マーカーが前記第1領域の外側へ出ることであり、
前記第4条件は、前記第2内側マーカーが前記第2領域の外側へ出ることであり、
前記第2制御は、前記第1制御に優先して実行される請求項1から6の何れか一項に記載の走行管理システム。
【請求項8】
前記走行制御部は、前記第1条件及び前記第2条件のうちの一方のみが満たされている状態から、前記第1条件及び前記第2条件の両方が満たされている状態に変化したことに応じて前記作業車の走行の制御の内容を変化させることがないように構成されており、
前記走行制御部は、前記第3条件及び前記第4条件のうちの一方のみが満たされている状態から、前記第3条件及び前記第4条件の両方が満たされている状態に変化したことに応じて前記作業車の走行の制御の内容を変化させることがないように構成されている請求項7に記載の走行管理システム。
【請求項9】
前記複数の第1マーカーは、前記第1内側マーカーよりも外側に位置すると共に前記第1外側マーカーよりも内側に位置する第1中間マーカーを含んでおり、
前記複数の第2マーカーは、前記第2内側マーカーよりも外側に位置すると共に前記第2外側マーカーよりも内側に位置する第2中間マーカーを含んでおり、
前記走行制御部は、第5条件及び第6条件の少なくとも一方が満たされた場合、前記第1制御と前記第2制御との何れとも異なる内容の制御である第3制御を実行するように構成されており、
前記第5条件は、前記第1中間マーカーが前記第1領域の外側へ出ることであり、
前記第6条件は、前記第2中間マーカーが前記第2領域の外側へ出ることであり、
前記第2制御は、前記第1制御及び前記第3制御に優先して実行され、
前記第3制御は、前記第1制御に優先して実行され、
前記第1制御は、前記作業車の車速を減少させる制御であり、
前記第2制御は、前記作業車の走行を停止させる制御であり、
前記第3制御は、前記作業車の進行方向を変更させる制御である請求項7または8に記載の走行管理システム。
【請求項10】
前記第1マーカー及び前記第2マーカーは、何れも枠状であり、
前記作業車の車速に応じて前記第1マーカー及び前記第2マーカーの大きさを変更する変更部を備える請求項1から9の何れか一項に記載の走行管理システム。
【請求項11】
前記走行制御部は、前記作業車の前進中及び後進中の何れにおいても、前記第1マーカーが前記第1領域の外側へ出ることが抑制され、且つ、前記第2マーカーが前記第2領域の外側へ出ることが抑制されるように、前記作業車の走行を制御する請求項1から10の何れか一項に記載の走行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の走行を制御する走行制御部を備える走行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなシステムとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。このシステムでは、作業車(特許文献1では「自律走行作業車両」)が圃場において予め設定された設定経路に沿って走行するように、作業車の走行が走行制御部(特許文献1では「制御装置」)によって制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムにおいて、圃場の傾斜等の影響により、作業車が予め設定された設定経路から外れて、圃場における走行可能な領域の外側へ出てしまう事態が想定される。
【0005】
そこで、平面視で作業車を囲む枠状の仮想的なマーカーを設定すると共に、圃場における走行可能な領域を規定して、当該マーカーが当該領域の外側へ出ることが抑制されるように、作業車の走行を制御することが考えられる。この場合、例えば、当該マーカーが当該領域の外側へ出た場合に作業車の減速や方向転換等が実行されるような構成が考えられる。
【0006】
しかしながら、この構成では、作業車が上記領域の境界の近傍を走行する際、作業車が実際には通過できる箇所を通過するときに、上記マーカーが上記領域の外側へ出てしまうことが想定される。その結果、不必要な減速や方向転換等が実行されてしまい、走行の効率が低下してしまう事態が想定される。
【0007】
本発明の目的は、作業車の走行の効率が低下しにくい走行管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、作業車の走行を制御する走行制御部を備える走行管理システムであって、前記作業車の機体に対する相対位置が設定された仮想的な第1マーカーを記憶する第1記憶部と、前記機体に対する相対位置が設定された仮想的な第2マーカーを記憶する第2記憶部と、圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部と前記圃場との境界の周辺に設定された第1領域を記憶する第3記憶部と、前記境界の周辺に設定された第2領域を記憶する第4記憶部と、を備え、前記走行制御部は、前記第1マーカーが前記第1領域の外側へ出ることが抑制され、且つ、前記第2マーカーが前記第2領域の外側へ出ることが抑制されるように、前記作業車の走行を制御することにある。
【0009】
本発明であれば、第1マーカー及び第2マーカーの二つの仮想的なマーカーが設定される。そして、走行制御部は、第1マーカーが第1領域の外側へ出ることが抑制され、且つ、第2マーカーが第2領域の外側へ出ることが抑制されるように、作業車の走行を制御する。
【0010】
これにより、第1マーカーが第2領域の外側へ出ることは許容されると共に、第2マーカーが第1領域の外側へ出ることは許容されることとなる。従って、第1マーカー及び第2マーカーを、作業車の立体形状に合わせて適宜設定するとともに、これらのマーカーに対応させて、二つの領域を設定することにより、作業車の走行の効率が低下しにくくなる。
【0011】
例えば、一般に、圃場外縁部は、外側ほど高くなるように傾斜している。ここで、作業車における高さXより下側の部分の外形に対応するように第1マーカーを設定し、作業車における高さX以上の部分の外形に対応するように第2マーカーを設定し、圃場外縁部と圃場との境界に対応するように第1領域を設定し、圃場外縁部のうち高さXに位置する各地点を結んだ線に対応するように第2領域を設定すれば、作業車は、作業車における高さXより下側の部分が圃場外縁部と圃場との境界から外側へ出ることが抑制され、且つ、作業車における高さX以上の部分が圃場外縁部のうち高さXに位置する各地点を結んだ線から外側へ出ることが抑制されるように、制御される。
【0012】
このとき、作業車における高さX以上の部分が圃場外縁部と圃場との境界から外側へ出ることは許容される。従って、作業車における高さX以上の部分が圃場外縁部と圃場との境界から外側へ出ることが抑制されるように作業車の走行が制御される構成に比べて、作業車の走行が不必要に抑制される事態が生じにくい。そのため、作業車の走行の効率が低下しにくくなる。
【0013】
このように、本発明であれば、作業車の走行が不必要に抑制される事態が生じにくくなる。その結果、作業車の走行の効率が低下しにくい走行管理システムを実現できる。
【0014】
さらに、本発明において、前記第1マーカーは、前記機体のうちの第1部分の平面視における外形に対応しており、前記第2マーカーは、前記機体のうちの第2部分の平面視における外形に対応しており、前記第1部分と前記第2部分とは互いに異なる高さに位置していると好適である。
【0015】
この構成によれば、第1部分の平面視における外形と、第2部分の平面視における外形と、が異なる場合に、それぞれの外形の違いを利用して、作業車が圃場を広く使って走行することが可能な走行管理システムを実現できる。
【0016】
例えば、一般に、圃場外縁部は、外側ほど高くなるように傾斜している。ここで、平面視において、第2部分の外形が第1部分の外形よりも機体外側へ突出しており、且つ、第2部分が第1部分よりも高い位置に位置している場合、少なくとも第2部分は、圃場外縁部と圃場との境界の外側へ出ることができる。上記の構成であれば、少なくとも第2部分が圃場外縁部と圃場との境界の外側へ出ることができることを利用して、第2部分が圃場外縁部と圃場との境界の外側へ出ることが許容されるように作業車の走行を制御することができる。これにより、作業車が圃場を広く使って走行することが可能な走行管理システムを実現できる。
【0017】
さらに、本発明において、前記第1部分は機体フレームであり、前記第2部分は、前記機体フレームに支持された作業装置であると好適である。
【0018】
この構成によれば、第1部分の平面視における外形と、第2部分の平面視における外形と、が異なるものになる。そして、それぞれの外形の違いを利用して、作業車が圃場を広く使って走行することが可能な走行管理システムを実現できる。
【0019】
例えば、一般に、圃場外縁部は、外側ほど高くなるように傾斜している。ここで、平面視において、作業装置の外形が機体フレームの外形よりも機体外側へ突出しており、且つ、作業装置が機体フレームよりも高い位置に位置している場合、少なくとも作業装置は、圃場外縁部と圃場との境界の外側へ出ることができる。上記の構成であれば、少なくとも作業装置が圃場外縁部と圃場との境界の外側へ出ることができることを利用して、作業装置が圃場外縁部と圃場との境界の外側へ出ることが許容されるように作業車の走行を制御することができる。これにより、作業車が圃場を広く使って走行することが可能な走行管理システムを実現できる。
【0020】
さらに、本発明において、前記作業装置は前記機体フレームに対して昇降可能に構成されており、前記第2マーカーは、前記作業装置が所定高さ以上まで上昇した状態での、前記作業装置の平面視における外形に対応していると好適である。
【0021】
この構成によれば、作業装置が所定高さ以上まで上昇した状態では、作業装置が機体フレームよりも高い位置に位置しやすい。これにより、機体フレームと作業装置とのそれぞれの平面視における外形の違い、及び、高さの違いを利用して、作業車が圃場を広く使って走行することが可能な走行管理システムを実現できる。
【0022】
例えば、一般に、圃場外縁部は、外側ほど高くなるように傾斜している。ここで、平面視において、作業装置の外形が機体フレームの外形よりも機体外側へ突出しており、且つ、作業装置が機体フレームよりも高い位置に位置している場合、少なくとも作業装置は、圃場外縁部と圃場との境界の外側へ出ることができる。上記の構成であれば、少なくとも作業装置が圃場外縁部と圃場との境界の外側へ出ることができることを利用して、作業装置が圃場外縁部と圃場との境界の外側へ出ることが許容されるように作業車の走行を制御することができる。これにより、作業車が圃場を広く使って走行することが可能な走行管理システムを実現できる。
【0023】
さらに、本発明において、前記作業装置の形状に基づいて前記第2マーカーを設定するマーカー設定部を備えると好適である。
【0024】
作業車に取り付け可能な作業装置が複数種類存在する場合に、作業装置の種類によって作業装置の形状が異なる事態が想定される。作業装置の種類によって作業装置の形状が異なる場合、第2マーカーの適切な位置や形状等も、作業装置の種類に応じて異なることとなる。
【0025】
ここで、上記の構成であれば、作業装置の形状に基づいて第2マーカーが設定される。そのため、作業車に取り付け可能な作業装置が複数種類存在する場合であっても、第2マーカーの位置や形状等が適切なものになりやすい。
【0026】
さらに、本発明において、前記圃場外縁部の位置及び高さを示す外縁部情報を取得する取得部と、前記第1部分の高さ位置と、前記第2部分の高さ位置と、前記外縁部情報と、に基づいて、前記第1領域及び前記第2領域を設定する領域設定部と、を備えると好適である。
【0027】
この構成によれば、第1領域が圃場外縁部のうち第1部分の高さ位置に位置する部分に対応して設定されると共に、第2領域が圃場外縁部のうち第2部分の高さ位置に位置する部分に対応して設定される構成を実現できる。これにより、第1領域及び第2領域が適切に設定されやすい走行管理システムを実現できる。
【0028】
さらに、本発明において、前記第1記憶部は、複数の前記第1マーカーを記憶しており、前記複数の第1マーカーは、第1内側マーカーと、前記第1内側マーカーよりも外側に位置する第1外側マーカーと、を含んでおり、前記第2記憶部は、複数の前記第2マーカーを記憶しており、前記複数の第2マーカーは、第2内側マーカーと、前記第2内側マーカーよりも外側に位置する第2外側マーカーと、を含んでおり、前記走行制御部は、第1条件及び第2条件の少なくとも一方が満たされた場合、第1制御を実行するように構成されており、前記第1条件は、前記第1外側マーカーが前記第1領域の外側へ出ることであり、前記第2条件は、前記第2外側マーカーが前記第2領域の外側へ出ることであり、前記走行制御部は、第3条件及び第4条件の少なくとも一方が満たされた場合、前記第1制御とは異なる内容の制御である第2制御を実行するように構成されており、前記第3条件は、前記第1内側マーカーが前記第1領域の外側へ出ることであり、前記第4条件は、前記第2内側マーカーが前記第2領域の外側へ出ることであり、前記第2制御は、前記第1制御に優先して実行されると好適である。
【0029】
この構成によれば、作業車の機体が第1領域や第2領域の境界にある程度接近した場合に第1制御が実行されると共に、作業車の機体が第1領域や第2領域の境界にさらに接近した場合に第2制御が実行される構成を実現できる。これにより、作業車の機体の、第1領域や第2領域の境界に対する接近度合いに応じて、適切な走行制御が行われる走行管理システムを実現できる。
【0030】
さらに、本発明において、前記走行制御部は、前記第1条件及び前記第2条件のうちの一方のみが満たされている状態から、前記第1条件及び前記第2条件の両方が満たされている状態に変化したことに応じて前記作業車の走行の制御の内容を変化させることがないように構成されており、前記走行制御部は、前記第3条件及び前記第4条件のうちの一方のみが満たされている状態から、前記第3条件及び前記第4条件の両方が満たされている状態に変化したことに応じて前記作業車の走行の制御の内容を変化させることがないように構成されていると好適である。
【0031】
この構成によれば、第1制御及び第2制御が作業車の走行を抑制する内容の制御である場合に、作業車の走行の抑制が必要以上に行われる事態を回避しやすくなる。
【0032】
例えば、第1制御が作業車の車速を減少させる制御である場合、第1条件及び第2条件のうちの一方のみが満たされている状態では、作業車の車速が減少することとなる。この状態から、第1条件及び第2条件の両方が満たされている状態に変化した場合に、それに応じて、作業車の車速の減少度合いが強まるように構成されていると、作業車の車速が減少し過ぎてしまう事態が想定される。その結果、作業車の走行の抑制が必要以上に行われてしまう。
【0033】
ここで、上記の構成によれば、第1条件及び第2条件のうちの一方のみが満たされている状態から、第1条件及び第2条件の両方が満たされている状態に変化したことに応じて、作業車の車速の減少度合いが強まることはない。そのため、作業車の走行の抑制が必要以上に行われる事態を回避しやすい。
【0034】
このように、上記の構成によれば、作業車の走行の抑制が必要以上に行われる事態を回避しやすくなる。
【0035】
さらに、本発明において、前記複数の第1マーカーは、前記第1内側マーカーよりも外側に位置すると共に前記第1外側マーカーよりも内側に位置する第1中間マーカーを含んでおり、前記複数の第2マーカーは、前記第2内側マーカーよりも外側に位置すると共に前記第2外側マーカーよりも内側に位置する第2中間マーカーを含んでおり、前記走行制御部は、第5条件及び第6条件の少なくとも一方が満たされた場合、前記第1制御と前記第2制御との何れとも異なる内容の制御である第3制御を実行するように構成されており、前記第5条件は、前記第1中間マーカーが前記第1領域の外側へ出ることであり、前記第6条件は、前記第2中間マーカーが前記第2領域の外側へ出ることであり、前記第2制御は、前記第1制御及び前記第3制御に優先して実行され、前記第3制御は、前記第1制御に優先して実行され、前記第1制御は、前記作業車の車速を減少させる制御であり、前記第2制御は、前記作業車の走行を停止させる制御であり、前記第3制御は、前記作業車の進行方向を変更させる制御であると好適である。
【0036】
この構成によれば、作業車の機体が第1領域や第2領域の境界にある程度接近した場合に作業車の車速が減少し、さらに接近すると作業車の進行方向が変更され、さらに接近すると作業車の走行が停止する構成を実現できる。これにより、作業車の機体の、第1領域や第2領域の境界に対する接近度合いに応じて、適切な走行制御が行われる走行管理システムを実現できる。
【0037】
さらに、本発明において、前記第1マーカー及び前記第2マーカーは、何れも枠状であり、前記作業車の車速に応じて前記第1マーカー及び前記第2マーカーの大きさを変更する変更部を備えると好適である。
【0038】
この構成によれば、作業車の車速が高いほど第1マーカー及び第2マーカーが大きくなる構成を実現できる。これにより、適切な走行制御が可能な走行管理システムを実現できる。
【0039】
例えば、第1マーカーが第1領域の外側へ出たか、または、第2マーカーが第2領域の外側へ出た場合に、作業車の車速を減少させる制御が実行されるように構成されており、且つ、作業車の車速にかかわらず第1マーカー及び第2マーカーの大きさが一定であるように構成されている場合、第1マーカーが第1領域の外側へ出たか、または、第2マーカーが第2領域の外側へ出たときに作業車の車速が比較的高いと、作業車の機体が第1領域や第2領域の外側へ出ることを防ぐため、急制動を実行する必要が生じがちである。これにより、圃場の地面を荒らしてしまう等の不都合が生じる。
【0040】
ここで、上記の構成によれば、作業車の車速が高いほど第1マーカー及び第2マーカーが大きくなる構成を実現できる。この構成であれば、作業車の車速が比較的高い場合、第1マーカーが第1領域の外側へ出たか、または、第2マーカーが第2領域の外側へ出た時点で、作業車の機体と、第1領域や第2領域の境界と、の間の距離は比較的長い。そのため、緩やかな制動であっても、作業車の機体が第1領域や第2領域の外側へ出ることを防ぎやすくなる。これにより、圃場の地面を荒らしてしまう等の不都合が生じにくい、適切な走行制御が可能となる。
【0041】
さらに、本発明において、前記走行制御部は、前記作業車の前進中及び後進中の何れにおいても、前記第1マーカーが前記第1領域の外側へ出ることが抑制され、且つ、前記第2マーカーが前記第2領域の外側へ出ることが抑制されるように、前記作業車の走行を制御すると好適である。
【0042】
この構成によれば、作業車の前進中及び後進中の何れにおいても、作業車の走行が不必要に抑制される事態が生じにくくなる。その結果、作業車の前進中及び後進中の何れにおいても、作業車の走行の効率が低下しにくい走行管理システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図5】制御部に関する構成を示すブロック図である。
【
図7】第1領域、第2領域、第3領域の一例を示す図である。
【
図8】第1マーカー、第2マーカー、第3マーカーを示す図である。
【
図9】第1領域、第2領域、第3領域の位置等を示す図である。
【
図11】圃場を走行中のコンバインが圃場外縁部に接近していく場合の例を示す平面図である。
【
図12】圃場を走行中のコンバインが圃場外縁部に接近していく場合の例を示す平面図である。
【
図13】コンバインが刈取走行中に方向転換する際に第2経路生成部により目標走行経路が生成される場合の例を示す平面図である。
【
図14】コンバインが刈取走行中に方向転換する際に第2経路生成部により目標走行経路が生成される場合の例を示す平面図である。
【
図15】コンバインが刈取走行中に方向転換する際に第2経路生成部により目標走行経路が生成される場合の例を示す平面図である。
【
図16】コンバインが刈取走行中に方向転換する際に第2経路生成部により目標走行経路が生成される場合の例を示す平面図である。
【
図17】コンバインが排出地点へ移動する際に第2経路生成部により目標走行経路が生成される場合の例を示す平面図である。
【
図18】コンバインが排出地点へ移動する際に第2経路生成部により目標走行経路が生成される場合の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図1及び
図2に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、
図2に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、
図1に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0045】
〔コンバインの全体構成〕
本実施形態における普通型のコンバイン1(本発明に係る「作業車」に相当)について説明する。
図1及び
図2に示すように、コンバイン1の機体10は、機体フレーム9、収穫部H(本発明に係る「作業装置」に相当)、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0046】
走行装置11は、コンバイン1の機体10における下部に備えられている。また、走行装置11は、エンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって自走可能である。
【0047】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、機体フレーム9に支持されている。運転部12には、コンバイン1の作業を監視するオペレータが搭乗可能である。尚、オペレータは、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していても良い。
【0048】
機体フレーム9(
図8参照)は、複数の金属製の長尺部材を格子状に連結することにより構成されている。
【0049】
図1及び
図2に示すように、穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0050】
収穫部Hは、機体10における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、刈取装置15及びリール17を含んでいる。
【0051】
刈取装置15は、圃場5(
図3参照)の植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。刈取装置15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0052】
この構成により、収穫部Hは、圃場5の作物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈取装置15によって圃場5の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0053】
収穫部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0054】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0055】
ここで、コンバイン1は、
図3及び
図4に示すように、圃場外縁部6の内側に位置する圃場5において、作物を収穫するように構成されている。尚、圃場外縁部6は、圃場5を囲む状態で設けられている。圃場外縁部6には、例えば、畦畔61や給排水ポンプ62(
図6参照)等が含まれている。
【0056】
コンバイン1は、
図3に示すように、第1作業走行を実行可能に構成されている。第1作業走行とは、圃場5の外周領域SAにおいて行われる作業走行である。尚、外周領域SAとは、
図4に示すように、圃場5内の外周部に位置する領域である。
【0057】
本実施形態において、第1作業走行での周回数は1回である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1作業走行での周回数は、2回以上のいかなる回数であっても良い。
【0058】
そして、コンバイン1は、第1作業走行を行った後、
図4に示すように、第2作業走行を行うことにより、圃場5における作業走行を実行可能である。第2作業走行とは、第1作業走行の後に外周領域SAよりも内側の作業対象領域CAにおいて行われる作業走行である。
【0059】
尚、本実施形態における「作業走行」は、具体的には、植立穀稈を刈り取りながら走行する刈取走行である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、上述の「作業走行」として、走行しながら、植立穀稈の刈り取り以外の作業が行われても良い。
【0060】
本実施形態においては、
図3に示す第1作業走行は手動走行により行われる。また、
図4に示す第2作業走行は自動走行により行われる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1作業走行は自動走行により行われても良い。また、第2作業走行は手動走行により行われても良い。
【0061】
〔制御部に関する構成〕
図5に示すように、コンバイン1は、制御部20を備えている。制御部20は、自車位置算出部21、作業領域算出部22、第1経路生成部23、自動走行制御部24を有している。自動走行制御部24は、コンバイン1の自動走行を制御する。また、自動走行制御部24は、経路選択部27及び走行制御部29を含んでいる。
【0062】
図1に示すように、衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GSからのGPS信号を受信する。そして、
図5に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを自車位置算出部21へ送る。
【0063】
尚、本発明はこれに限定されない。衛星測位モジュール80は、GPSを利用するものでなくても良い。例えば、衛星測位モジュール80は、GPS以外のGNSS(GLONASS、Galileo、みちびき、BeiDou等)を利用するものであっても良い。
【0064】
自車位置算出部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、作業領域算出部22及び自動走行制御部24へ送られる。
【0065】
作業領域算出部22は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、
図4に示すように、外周領域SA及び作業対象領域CAを算出する。
【0066】
より具体的には、作業領域算出部22は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、圃場5における第1作業走行でのコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、作業領域算出部22は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、コンバイン1が第1作業走行を行った領域を外周領域SAとして算出する。また、作業領域算出部22は、算出された外周領域SAにより囲まれた領域を、作業対象領域CAとして算出する。
【0067】
例えば、
図3においては、圃場5における第1作業走行でのコンバイン1の走行経路が矢印で示されている。この走行経路に沿った刈取走行が完了すると、圃場5は、
図4に示す状態となる。
【0068】
図4に示すように、作業領域算出部22は、コンバイン1が第1作業走行を行った領域を外周領域SAとして算出する。また、作業領域算出部22は、算出された外周領域SAにより囲まれた領域を、作業対象領域CAとして算出する。
【0069】
そして、
図5に示すように、作業領域算出部22による算出結果は、第1経路生成部23へ送られる。
【0070】
第1経路生成部23は、作業領域算出部22から受け取った算出結果に基づいて、
図4に示すように、作業対象領域CAにおける刈取走行のための走行経路である刈取走行経路LIを生成する。尚、
図4に示すように、本実施形態においては、刈取走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。また、複数のメッシュ線は直線でなくても良く、湾曲していても良い。
【0071】
図5に示すように、第1経路生成部23により生成された複数の刈取走行経路LIは、自動走行制御部24へ送られる。
【0072】
自動走行制御部24における経路選択部27は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、第1経路生成部23から受け取った複数の刈取走行経路LIと、に基づいて、コンバイン1が次に走行するべき刈取走行経路LIを選択する。経路選択部27により選択された刈取走行経路LIを示す情報は、走行制御部29へ送られる。
【0073】
走行制御部29は、走行装置11を制御可能に構成されている。そして、走行制御部29は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、経路選択部27により選択された刈取走行経路LIを示す情報と、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部29は、
図4に示すように、刈取走行経路LIに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0074】
この自動走行において、走行制御部29は、現在走行している刈取走行経路LIの次に、経路選択部27により選択された刈取走行経路LIに沿った刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0075】
図1及び
図5に示すように、コンバイン1は、刈取シリンダ15Aを備えている。刈取シリンダ15Aは、機体フレーム9に接続されている。搬送部16及び収穫部Hは、刈取シリンダ15Aに支持されている。即ち、搬送部16及び収穫部Hは、刈取シリンダ15Aを介して、機体フレーム9に支持されている。
【0076】
また、搬送部16の後端部は、脱穀装置13に接続されている。この構成により、搬送部16及び収穫部Hは、脱穀装置13を介して、機体フレーム9に支持されている。
【0077】
走行制御部29は、刈取シリンダ15Aを制御可能に構成されている。走行制御部29が刈取シリンダ15Aを伸び方向に制御すると、搬送部16及び収穫部Hは、一体的に、収穫部Hが上昇する方向に揺動する。これにより、収穫部Hは機体フレーム9に対して上昇する。
【0078】
また、走行制御部29が刈取シリンダ15Aを縮み方向に制御すると、搬送部16及び収穫部Hは、一体的に、収穫部Hが下降する方向に揺動する。これにより、収穫部Hは機体フレーム9に対して下降する。
【0079】
この構成により、走行制御部29は、収穫部Hの昇降を制御可能である。また、収穫部Hは機体フレーム9に対して昇降可能に構成されている。
【0080】
尚、制御部20、及び、制御部20に含まれる自車位置算出部21等の各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0081】
〔外縁部マップに関する構成〕
図1、
図2、
図5に示すように、コンバイン1は、検出装置31を備えている。検出装置31は、圃場外縁部6のうち、機体10の進行方向前方に位置する部分を検出対象として、コンバイン1の圃場走行中に、圃場外縁部6の状態を検出する。
【0082】
詳述すると、本実施形態における検出装置31は、ToF(Time of flight)測定方式の測定装置である二次元スキャンLiDARである。尚、本発明はこれに限定されず、検出装置31は、三次元スキャンLiDARであっても良い。また、検出装置31の測定方式は、ToF測定方式に限定されず、ステレオマッチング測定方式等であっても良い。
【0083】
図5に示すように、自車位置算出部21により算出されたコンバイン1の位置座標は、検出装置31へ送られる。そして、検出装置31は、ToF測定方式の測定結果と、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、に基づいて、前方領域FA(
図1参照)に存在する物体の位置及び高さを示す点群データを出力する。この構成により、検出装置31は、圃場走行中に、機体10の進行方向前方に位置する領域である前方領域FAに存在する物体の位置及び高さを検出する。これにより、検出装置31は、圃場外縁部6の立体形状を検出する。
【0084】
尚、本発明はこれに限定されず、検出装置31は、圃場外縁部6の位置及び高さを検知可能であれば、いかなる種類の装置であっても良い。
【0085】
図5に示すように、制御部20は、マップ生成部25(本発明に係る「取得部」に相当)を有している。検出装置31による検出結果は、マップ生成部25へ送られる。
【0086】
マップ生成部25は、検出装置31による検出結果に基づいて、外縁部マップ(本発明に係る「外縁部情報」に相当)を生成する。これにより、マップ生成部25は、外縁部マップを取得する。外縁部マップとは、圃場外縁部6の状態の分布を示すマップである。本実施形態における外縁部マップは、圃場外縁部6の立体形状の分布を示すものである。即ち、外縁部マップは、圃場外縁部6の位置及び高さを示すものである。
【0087】
図6には、マップ生成部25により生成される外縁部マップの一例が示されている。
図6に示す外縁部マップには、畦畔61の側面部61aの位置及び立体形状と、畦畔61の上面部61bの位置及び立体形状と、給排水ポンプ62の位置及び立体形状と、が含まれている。
【0088】
尚、
図6に示す外縁部マップは、圃場外縁部6の全周に対応している。即ち、この外縁部マップは、圃場外縁部6の全周に亘る状態の分布を示している。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0089】
例えば、圃場外縁部6の一部のみの状態が検出装置31によって検出済みであるときに、その部分のみの状態の分布を示すマップが、外縁部マップとして生成されても良い。また、この場合、コンバイン1が圃場5を走行し、検出装置31によって状態の検出された領域が拡大していくに伴って、外縁部マップが更新されていくように構成されていても良い。この場合、コンバイン1が圃場5における刈取走行を進めていくことに伴い、外縁部マップにより示される領域が拡大していくこととなる。
【0090】
ここで、コンバイン1による作業走行は、
図5に示す作業システムSY(本発明に係る「走行管理システム」に相当)によって管理される。作業システムSYは、制御部20、検出装置31、衛星測位モジュール80を含んでいる。即ち、作業システムSYは、圃場外縁部6の位置及び高さを示す外縁部マップを取得するマップ生成部25を備えている。
【0091】
尚、本発明はこれに限定されず、作業システムSYは、検出装置31を含んでいなくても良いし、衛星測位モジュール80を含んでいなくても良い。また、作業システムSYは、コンバイン1を含んでいても良い。
【0092】
図5に示すように、作業システムSYは、コンバイン1の走行を制御する走行制御部29を備えている。また、詳しくは後述するが、作業システムSYは、外縁部マップに基づいて、
図7に示すように、第1領域41、第2領域42、第3領域43を設定するように構成されている。
【0093】
また、詳しくは後述するが、作業システムSYは、
図8に示すように、仮想的な複数の第1マーカー51、仮想的な複数の第2マーカー52、仮想的な複数の第3マーカー53を記憶している。そして、走行制御部29は、第1領域41、第2領域42、第3領域43、複数の第1マーカー51、複数の第2マーカー52、複数の第3マーカー53に基づいて、コンバイン1の走行を制御するように構成されている。
【0094】
以下では、走行制御部29によるコンバイン1の走行の制御について詳述する。
【0095】
〔第1マーカー、第2マーカー、第3マーカーについて〕
図5に示すように、制御部20は、マーカー管理部70を有している。マーカー管理部70は、マーカー記憶部71(本発明に係る「第1記憶部」、「第2記憶部」に相当)を含んでいる。マーカー記憶部71は、
図8に示す複数の第1マーカー51、複数の第2マーカー52、複数の第3マーカー53を記憶している。
【0096】
各第1マーカー51、各第2マーカー52、各第3マーカー53は、何れも、機体10に対する相対位置が設定された仮想的なものである。
【0097】
このように、作業システムSYは、コンバイン1の機体10に対する相対位置が設定された仮想的な第1マーカー51を記憶するマーカー記憶部71を備えている。また、マーカー記憶部71は、複数の第1マーカー51を記憶している。また、作業システムSYは、機体10に対する相対位置が設定された仮想的な第2マーカー52を記憶するマーカー記憶部71を備えている。また、マーカー記憶部71は、複数の第2マーカー52を記憶している。
【0098】
図8に示すように、各第1マーカー51、各第2マーカー52、各第3マーカー53は、何れも枠状である。即ち、第1マーカー51及び第2マーカー52は、何れも枠状である。
【0099】
複数の第1マーカー51は、第1外側マーカー51a、第1中間マーカー51b、第1内側マーカー51cを含んでいる。尚、第1外側マーカー51a、第1中間マーカー51b、第1内側マーカー51cは何れも第1マーカー51である。
【0100】
第1外側マーカー51aは、第1内側マーカー51cよりも外側に位置している。第1中間マーカー51bは、第1内側マーカー51cよりも外側に位置すると共に第1外側マーカー51aよりも内側に位置している。
【0101】
即ち、複数の第1マーカー51は、第1内側マーカー51cと、第1内側マーカー51cよりも外側に位置する第1外側マーカー51aと、を含んでいる。また、複数の第1マーカー51は、第1内側マーカー51cよりも外側に位置すると共に第1外側マーカー51aよりも内側に位置する第1中間マーカー51bを含んでいる。また、作業システムSYは、コンバイン1の機体10に対する相対位置が設定された仮想的な第1内側マーカー51cを記憶するマーカー記憶部71を備えている。
【0102】
複数の第2マーカー52は、第2外側マーカー52a、第2中間マーカー52b、第2内側マーカー52cを含んでいる。尚、第2外側マーカー52a、第2中間マーカー52b、第2内側マーカー52cは何れも第2マーカー52である。
【0103】
第2外側マーカー52aは、第2内側マーカー52cよりも外側に位置している。第2中間マーカー52bは、第2内側マーカー52cよりも外側に位置すると共に第2外側マーカー52aよりも内側に位置している。
【0104】
即ち、複数の第2マーカー52は、第2内側マーカー52cと、第2内側マーカー52cよりも外側に位置する第2外側マーカー52aと、を含んでいる。また、複数の第2マーカー52は、第2内側マーカー52cよりも外側に位置すると共に第2外側マーカー52aよりも内側に位置する第2中間マーカー52bを含んでいる。また、作業システムSYは、機体10に対する相対位置が設定された仮想的な第2内側マーカー52cを記憶するマーカー記憶部71を備えている。
【0105】
複数の第3マーカー53は、第3外側マーカー53a、第3中間マーカー53b、第3内側マーカー53cを含んでいる。尚、第3外側マーカー53a、第3中間マーカー53b、第3内側マーカー53cは何れも第3マーカー53である。
【0106】
第3外側マーカー53aは、第3内側マーカー53cよりも外側に位置している。第3中間マーカー53bは、第3内側マーカー53cよりも外側に位置すると共に第3外側マーカー53aよりも内側に位置している。
【0107】
本実施形態においては、
図8に示すように、機体10を高さ方向に三分割した場合の各部分に対応して、第1マーカー51、第2マーカー52、第3マーカー53が設定されている。より具体的には、各第1マーカー51は、機体10のうちの第1部分10aの平面視における外形に対応している。また、各第2マーカー52は、機体10のうちの第2部分10bの平面視における外形に対応している。また、各第3マーカー53は、機体10のうちの第3部分10cの平面視における外形に対応している。
【0108】
即ち、第1内側マーカー51cは、機体10のうちの第1部分10aの平面視における外形に対応している。また、第2内側マーカー52cは、機体10のうちの第2部分10bの平面視における外形に対応している。
【0109】
図8に示すように、第3部分10cは、機体10を高さ方向に三分割した場合の一番下に位置している。第1部分10aは、機体10を高さ方向に三分割した場合の中央に位置している。第2部分10bは、機体10を高さ方向に三分割した場合の一番上に位置している。
【0110】
即ち、第1部分10aと第2部分10bとは互いに異なる高さに位置している。
【0111】
本実施形態において、第1部分10aは機体フレーム9である。また、第2部分10bは収穫部Hである。即ち、第2部分10bは、機体フレーム9に支持された収穫部Hである。また、第3部分10cは、走行装置11である。
【0112】
ここで、
図8に示すように、各第2マーカー52は、収穫部Hが基準高さHA(本発明に係る「所定高さ」に相当)以上まで上昇した状態での、収穫部Hの平面視における外形に対応している。即ち、第2内側マーカー52cは、収穫部Hが基準高さHA以上まで上昇した状態での、収穫部Hの平面視における外形に対応している。
【0113】
本実施形態において、基準高さHAは、機体フレーム9の上端の高さに一致している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、基準高さHAは、機体フレーム9の上端よりも低くても良いし、機体フレーム9の上端よりも高くても良い。
【0114】
また、収穫部Hの高さは、収穫部Hのうち、何れの部位の高さであっても良い。例えば、収穫部Hの下端の高さが収穫部Hの高さとして取り扱われても良いし、収穫部Hの前端部の高さが収穫部Hの高さとして取り扱われても良い。
【0115】
そして、本実施形態においては、
図8に示すように、各第1マーカー51は、平面視で機体フレーム9を囲む枠状である。また、各第2マーカー52は、平面視で収穫部H、脱穀装置13、穀粒タンク14を囲む枠状である。特に、各第2マーカー52は、平面視で収穫部Hを囲む枠状である。また、各第3マーカー53は、平面視で走行装置11を囲む枠状である。
【0116】
図5に示すように、制御部20は、機体情報記憶部33を有している。機体情報記憶部33は、機体10に関する種々の情報を記憶している。例えば、機体情報記憶部33は、収穫部Hの形状を示す情報を記憶している。収穫部Hの形状を示す情報は、例えば、収穫部Hの種類や型式を示す情報であっても良い。
【0117】
また、マーカー管理部70は、マーカー設定部72を有している。マーカー管理部70は、機体情報記憶部33から、機体情報記憶部33に記憶されている情報を取得する。取得した情報に基づいて、マーカー設定部72は、各第1マーカー51、各第2マーカー52、各第3マーカー53を設定する。
【0118】
より具体的には、マーカー設定部72は、機体フレーム9の形状を示す情報、及び、機体10における機体フレーム9の位置を示す情報に基づいて、各第1マーカー51を設定する。尚、機体フレーム9の形状を示す情報、及び、機体10における機体フレーム9の位置を示す情報は、機体情報記憶部33に記憶されている。
【0119】
また、マーカー設定部72は、収穫部Hの形状を示す情報、及び、機体10における収穫部Hの位置を示す情報に基づいて、各第2マーカー52を設定する。尚、収穫部Hの形状を示す情報、及び、機体10における収穫部Hの位置を示す情報は、機体情報記憶部33に記憶されている。
【0120】
また、マーカー設定部72は、走行装置11の形状を示す情報、及び、機体10における走行装置11の位置を示す情報に基づいて、各第3マーカー53を設定する。尚、走行装置11の形状を示す情報、及び、機体10における走行装置11の位置を示す情報は、機体情報記憶部33に記憶されている。
【0121】
このように、作業システムSYは、収穫部Hの形状に基づいて第2マーカー52を設定するマーカー設定部72を備えている。また、作業システムSYは、収穫部Hの形状に基づいて第2内側マーカー52cを設定するマーカー設定部72を備えている。
【0122】
マーカー設定部72により設定された各第1マーカー51、各第2マーカー52、各第3マーカー53は、マーカー記憶部71に記憶される。
【0123】
〔第1領域、第2領域、第3領域について〕
図5に示すように、制御部20は、領域管理部75を有している。領域管理部75は、領域記憶部76(本発明に係る「第3記憶部」、「第4記憶部」に相当)を有している。領域記憶部76は、
図7に示すような第1領域41、第2領域42、第3領域43を記憶している。
【0124】
図5に示すように、領域管理部75は、領域設定部77を有している。領域設定部77は、上述の外縁部マップに基づいて、第1領域41、第2領域42、第3領域43を設定するように構成されている。領域設定部77により設定された第1領域41、第2領域42、第3領域43は、領域記憶部76に記憶される。
【0125】
ここで、
図7に示す第1領域41、第2領域42、第3領域43は、
図6に示す外縁部マップに基づいて設定されたものである。
図6、
図7、
図9に示すように、第1領域41の外形線、第2領域42の外形線、第3領域43の外形線は、何れも、圃場外縁部6と圃場5との境界の周辺に設定される。
【0126】
即ち、作業システムSYは、圃場5を囲む状態で設けられた圃場外縁部6と圃場5との境界の周辺に設定された第1領域41を記憶する領域記憶部76を備えている。また、作業システムSYは、当該境界の周辺に設定された第2領域42を記憶する領域記憶部76を備えている。
【0127】
ここで、
図5に示すように、領域管理部75は、機体情報記憶部33から、機体情報記憶部33に記憶されている情報を取得する。また、領域管理部75は、マップ生成部25から、外縁部マップを取得する。領域管理部75が機体情報記憶部33から取得した情報、及び、外縁部マップに基づいて、領域設定部77は、第1領域41、第2領域42、第3領域43を設定する。
【0128】
より具体的には、領域設定部77は、機体フレーム9の高さ位置を示す情報、及び、外縁部マップに基づいて、第1領域41を設定する。尚、機体フレーム9の高さ位置を示す情報は、機体情報記憶部33に記憶されている。
【0129】
本実施形態において、領域設定部77は、
図9に示すように、圃場外縁部6のうち、機体フレーム9の下端の高さと同じ高さに位置する各地点を結んだ線を、第1領域41の外形線として設定する。
【0130】
また、領域設定部77は、基準高さHA以上まで上昇した状態の収穫部Hの高さ位置を示す情報、及び、外縁部マップに基づいて、第2領域42を設定する。尚、基準高さHA以上まで上昇した状態の収穫部Hの高さ位置を示す情報は、機体情報記憶部33に記憶されている。
【0131】
本実施形態において、領域設定部77は、
図9に示すように、圃場外縁部6のうち、基準高さHA以上まで上昇した状態の収穫部Hの下端の高さと同じ高さに位置する各地点を結んだ線を、第2領域42の外形線として設定する。
【0132】
このように、作業システムSYは、第1部分10aの高さ位置と、第2部分10bの高さ位置と、外縁部マップと、に基づいて、第1領域41及び第2領域42を設定する領域設定部77を備えている。
【0133】
また、領域設定部77は、外縁部マップに基づいて、第3領域43を設定する。
【0134】
本実施形態において、領域設定部77は、
図9に示すように、第3領域43の外形線が、圃場外縁部6と圃場5との境界に一致するように、第3領域43の外形線を設定する。
【0135】
以上で説明した構成により、平面視において、各第1マーカー51が第1領域41の外側へ出ていない場合、機体フレーム9は圃場外縁部6に干渉しない。特に、
図9に示すように、コンバイン1が圃場外縁部6に接近しても、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出ていない場合、機体フレーム9は圃場外縁部6に干渉しない。
【0136】
また、平面視において、各第2マーカー52が第2領域42の外側へ出ていない場合、収穫部Hは圃場外縁部6に干渉しない。特に、
図9に示すように、コンバイン1が圃場外縁部6に接近しても、第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出ていない場合、収穫部Hは圃場外縁部6に干渉しない。
【0137】
また、平面視において、各第3マーカー53が第3領域43の外側へ出ていない場合、走行装置11は圃場外縁部6に干渉しない。特に、
図9に示すように、コンバイン1が圃場外縁部6に接近しても、第3内側マーカー53cが第3領域43の外側へ出ていない場合、走行装置11は圃場外縁部6に干渉しない。
【0138】
即ち、各第1マーカー51が第1領域41の外側へ出ておらず、且つ、各第2マーカー52が第2領域42の外側へ出ておらず、且つ、各第3マーカー53が第3領域43の外側へ出ていない場合、機体10は圃場外縁部6に干渉しない。
【0139】
特に、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出ておらず、且つ、第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出ておらず、且つ、第3内側マーカー53cが第3領域43の外側へ出ていない場合、機体10は圃場外縁部6に干渉しない。
【0140】
尚、
図6には、ポンプ位置Qが示されている。ポンプ位置Qは、給排水ポンプ62の設けられている位置である。圃場外縁部6のうち、給排水ポンプ62が存在する部分の高さは、比較的高くなる。
【0141】
そのため、
図7に示すように、第1領域41及び第2領域42の外形線は、ポンプ位置Qにおいて、圃場5の内側へ凹んでいる。
【0142】
〔走行制御について〕
図5に示すように、マーカー記憶部71に記憶されている複数の第1マーカー51、複数の第2マーカー52、複数の第3マーカー53は、マーカー管理部70から自動走行制御部24へ送られる。
【0143】
また、領域記憶部76に記憶されている第1領域41、第2領域42、第3領域43は、領域管理部75から自動走行制御部24へ送られる。
【0144】
そして、自動走行制御部24における走行制御部29は、複数の第1マーカー51、複数の第2マーカー52、複数の第3マーカー53、第1領域41、第2領域42、第3領域43に基づいて、各第1マーカー51が第1領域41の外側へ出ることが抑制され、且つ、各第2マーカー52が第2領域42の外側へ出ることが抑制され、且つ、各第3マーカー53が第3領域43の外側へ出ることが抑制されるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0145】
即ち、走行制御部29は、第1マーカー51が第1領域41の外側へ出ることが抑制され、且つ、第2マーカー52が第2領域42の外側へ出ることが抑制されるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0146】
以下では、走行制御部29によるコンバイン1の走行の制御について説明する。
【0147】
コンバイン1が自動走行を行っているとき、及び、コンバイン1が手動走行を行っているときの何れにおいても、走行制御部29は、
図10に示す制御ルーチンに従って、コンバイン1の走行を制御する。
【0148】
尚、本発明はこれに限定されず、走行制御部29は、コンバイン1が自動走行を行っているときにのみ、
図10に示す制御ルーチンに従って、コンバイン1の走行を制御するよう構成されていても良い。また、走行制御部29は、コンバイン1が手動走行を行っているときにのみ、
図10に示す制御ルーチンに従って、コンバイン1の走行を制御するよう構成されていても良い。
【0149】
この制御ルーチンは、走行制御部29に格納されている。走行制御部29は、この制御ルーチンを、一定時間毎に繰り返し実行する。
【0150】
制御ルーチンが開始されると、まず、ステップS01の処理が実行される。ステップS01では、第1判定条件(本発明に係る「第3条件」に相当)、第2判定条件(本発明に係る「第4条件」に相当)、第3判定条件のうちの少なくとも一つが満たされたか否かが、走行制御部29によって判定される。
【0151】
第1判定条件は、第1内側マーカー51cの少なくとも一部が第1領域41の外側へ出ることである。尚、第1内側マーカー51cが実際に第1領域41の外側へ出た場合だけではなく、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出そうになった時点で、第1判定条件が満たされたものと判定されても良い。本実施形態においては、第1内側マーカー51cが第1領域41の外形線に接触した時点で、第1判定条件が満たされたものと判定される。
【0152】
このように、第1判定条件は、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出ることである。
【0153】
ここで、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出たか否かの判定について詳述する。
【0154】
図5に示すように、自動走行制御部24は、マーカー位置算出部35を有している。マーカー位置算出部35は、自動走行制御部24が自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、自動走行制御部24がマーカー管理部70から受け取った第1内側マーカー51cを示す情報と、に基づいて、第1内側マーカー51cの現在位置を算出する。
【0155】
このとき、マーカー位置算出部35は、コンバイン1の位置座標と、機体10に対する第1内側マーカー51cの相対位置と、に基づいて、第1内側マーカー51cの現在位置を算出する。尚、このとき算出される第1内側マーカー51cの現在位置は、圃場5における位置座標であっても良いし、第1領域41に対する相対位置であっても良い。
【0156】
マーカー位置算出部35による算出結果は、走行制御部29へ送られる。そして、走行制御部29は、マーカー位置算出部35から受け取った第1内側マーカー51cの現在位置を示す情報と、自動走行制御部24が領域管理部75から受け取った第1領域41を示す情報と、に基づいて、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出たか否かを判定する。
【0157】
尚、ここでは第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出たか否かの判定について説明したが、走行制御部29は、第1内側マーカー51c以外の各第1マーカー51が第1領域41の外側へ出たか否かの判定についても、上記と同様に行うことができる。また、走行制御部29は、各第2マーカー52が第2領域42の外側へ出たか否かの判定、及び、各第3マーカー53が第3領域43の外側へ出たか否かの判定についても、上記と同様に行うことができる。
【0158】
第2判定条件は、第2内側マーカー52cの少なくとも一部が第2領域42の外側へ出ることである。尚、第2内側マーカー52cが実際に第2領域42の外側へ出た場合だけではなく、第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出そうになった時点で、第2判定条件が満たされたものと判定されても良い。本実施形態においては、第2内側マーカー52cが第2領域42の外形線に接触した時点で、第2判定条件が満たされたものと判定される。
【0159】
このように、第2判定条件は、第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出ることである。
【0160】
第3判定条件は、第3内側マーカー53cの少なくとも一部が第3領域43の外側へ出ることである。尚、第3内側マーカー53cが実際に第3領域43の外側へ出た場合だけではなく、第3内側マーカー53cが第3領域43の外側へ出そうになった時点で、第3判定条件が満たされたものと判定されても良い。本実施形態においては、第3内側マーカー53cが第3領域43の外形線に接触した時点で、第3判定条件が満たされたものと判定される。
【0161】
第1判定条件、第2判定条件、第3判定条件のうちの少なくとも一つが満たされている場合、ステップS01でYesと判定され、処理はステップS02へ移行する。また、第1判定条件、第2判定条件、第3判定条件の何れも満たされていない場合、ステップS01でNoと判定され、処理はステップS03へ移行する。
【0162】
ステップS02では、走行制御部29により停止制御(本発明に係る「第2制御」に相当)が実行される。停止制御とは、コンバイン1の走行を停止させる制御である。その後、処理は一旦終了する。
【0163】
ステップS03では、第4判定条件(本発明に係る「第5条件」に相当)、第5判定条件(本発明に係る「第6条件」に相当)、第6判定条件のうちの少なくとも一つが満たされたか否かが、走行制御部29によって判定される。
【0164】
第4判定条件は、第1中間マーカー51bの少なくとも一部が第1領域41の外側へ出ることである。尚、第1中間マーカー51bが実際に第1領域41の外側へ出た場合だけではなく、第1中間マーカー51bが第1領域41の外側へ出そうになった時点で、第4判定条件が満たされたものと判定されても良い。本実施形態においては、第1中間マーカー51bの少なくとも一部が実際に第1領域41の外側へ出た場合、第4判定条件が満たされたものと判定される。
【0165】
このように、第4判定条件は、第1中間マーカー51bが第1領域41の外側へ出ることである。
【0166】
第5判定条件は、第2中間マーカー52bの少なくとも一部が第2領域42の外側へ出ることである。尚、第2中間マーカー52bが実際に第2領域42の外側へ出た場合だけではなく、第2中間マーカー52bが第2領域42の外側へ出そうになった時点で、第5判定条件が満たされたものと判定されても良い。本実施形態においては、第2中間マーカー52bの少なくとも一部が実際に第2領域42の外側へ出た場合、第5判定条件が満たされたものと判定される。
【0167】
このように、第5判定条件は、第2中間マーカー52bが第2領域42の外側へ出ることである。
【0168】
第6判定条件は、第3中間マーカー53bの少なくとも一部が第3領域43の外側へ出ることである。尚、第3中間マーカー53bが実際に第3領域43の外側へ出た場合だけではなく、第3中間マーカー53bが第3領域43の外側へ出そうになった時点で、第6判定条件が満たされたものと判定されても良い。本実施形態においては、第3中間マーカー53bの少なくとも一部が実際に第3領域43の外側へ出た場合、第6判定条件が満たされたものと判定される。
【0169】
第4判定条件、第5判定条件、第6判定条件のうちの少なくとも一つが満たされている場合、ステップS03でYesと判定され、処理はステップS04へ移行する。また、第4判定条件、第5判定条件、第6判定条件の何れも満たされていない場合、ステップS03でNoと判定され、処理はステップS05へ移行する。
【0170】
ステップS04では、走行制御部29により方向変更制御(本発明に係る「第3制御」に相当)が実行される。方向変更制御とは、コンバイン1の進行方向を変更させる制御である。その後、処理は一旦終了する。
【0171】
方向変更制御の内容は、特に限定されないが、例えば、コンバイン1が圃場外縁部6から遠ざかるように、コンバイン1の進行方向を変更させる制御であっても良いし、コンバイン1の前後進を切り替える制御であっても良い。
【0172】
ステップS05では、第7判定条件(本発明に係る「第1条件」に相当)、第8判定条件(本発明に係る「第2条件」に相当)、第9判定条件のうちの少なくとも一つが満たされたか否かが、走行制御部29によって判定される。
【0173】
第7判定条件は、第1外側マーカー51aの少なくとも一部が第1領域41の外側へ出ることである。尚、第1外側マーカー51aが実際に第1領域41の外側へ出た場合だけではなく、第1外側マーカー51aが第1領域41の外側へ出そうになった時点で、第7判定条件が満たされたものと判定されても良い。本実施形態においては、第1外側マーカー51aの少なくとも一部が実際に第1領域41の外側へ出た場合、第7判定条件が満たされたものと判定される。
【0174】
このように、第7判定条件は、第1外側マーカー51aが第1領域41の外側へ出ることである。
【0175】
第8判定条件は、第2外側マーカー52aの少なくとも一部が第2領域42の外側へ出ることである。尚、第2外側マーカー52aが実際に第2領域42の外側へ出た場合だけではなく、第2外側マーカー52aが第2領域42の外側へ出そうになった時点で、第8判定条件が満たされたものと判定されても良い。本実施形態においては、第2外側マーカー52aの少なくとも一部が実際に第2領域42の外側へ出た場合、第8判定条件が満たされたものと判定される。
【0176】
このように、第8判定条件は、第2外側マーカー52aが第2領域42の外側へ出ることである。
【0177】
第9判定条件は、第3外側マーカー53aの少なくとも一部が第3領域43の外側へ出ることである。尚、第3外側マーカー53aが実際に第3領域43の外側へ出た場合だけではなく、第3外側マーカー53aが第3領域43の外側へ出そうになった時点で、第9判定条件が満たされたものと判定されても良い。本実施形態においては、第3外側マーカー53aの少なくとも一部が実際に第3領域43の外側へ出た場合、第9判定条件が満たされたものと判定される。
【0178】
第7判定条件、第8判定条件、第9判定条件のうちの少なくとも一つが満たされている場合、ステップS05でYesと判定され、処理はステップS06へ移行する。また、第7判定条件、第8判定条件、第9判定条件の何れも満たされていない場合、ステップS05でNoと判定され、処理は一旦終了する。
【0179】
ステップS06では、走行制御部29により減速制御(本発明に係る「第1制御」に相当)が実行される。減速制御とは、コンバイン1の車速を減少させる制御である。その後、処理は一旦終了する。
【0180】
以上で説明した構成により、走行制御部29は、第7判定条件及び第8判定条件の少なくとも一方が満たされた場合、減速制御を実行するように構成されている。また、走行制御部29は、第1判定条件及び第2判定条件の少なくとも一方が満たされた場合、減速制御とは異なる内容の制御である停止制御を実行するように構成されている。また、走行制御部29は、第4判定条件及び第5判定条件の少なくとも一方が満たされた場合、減速制御と停止制御との何れとも異なる内容の制御である方向変更制御を実行するように構成されている。
【0181】
そして、減速制御は、コンバイン1の車速を減少させる制御である。また、停止制御は、コンバイン1の走行を停止させる制御である。また、方向変更制御は、コンバイン1の進行方向を変更させる制御である。
【0182】
そして、減速制御、停止制御、方向変更制御により、各第1マーカー51が第1領域41の外側へ出ることが抑制され、且つ、各第2マーカー52が第2領域42の外側へ出ることが抑制され、且つ、各第3マーカー53が第3領域43の外側へ出ることが抑制されることとなる。
【0183】
ただし、
図10に示すように、ステップS03での判定は、ステップS01でNoと判定された場合にのみ行われる。また、ステップS05での判定は、ステップS01及びステップS03でNoと判定された場合にのみ行われる。
【0184】
従って、方向変更制御及び減速制御は、停止制御が実行されない場合にのみ実行され得る。また、減速制御は、停止制御と方向変更制御とが何れも実行されない場合にのみ実行され得る。
【0185】
即ち、停止制御は、減速制御及び方向変更制御に優先して実行される。特に、停止制御は、減速制御に優先して実行される。また、方向変更制御は、減速制御に優先して実行される。
【0186】
ここで、
図10に示した制御ルーチンによって減速制御及び停止制御が実行される場合について、例を挙げて説明する。
【0187】
図11には、圃場5を走行中のコンバイン1が圃場外縁部6に接近していく場合の例が、平面図にて示されている。尚、
図11では、コンバイン1の図示を省略している。また、この例では、説明をわかりやすくするため、第3領域43及び各第3マーカー53については省略している。また、第1中間マーカー51b及び第2中間マーカー52bについても省略している。
【0188】
図11に示す例では、コンバイン1は、まず、第1位置P1に位置している。このとき、第1外側マーカー51aは第1領域41の外側へ出ていないが、第2外側マーカー52aが第2領域42の外側へ出ている。即ち、上述の第7判定条件は満たされていないが、第8判定条件が満たされている。また、このとき、第1内側マーカー51cは第1領域41の外側へ出ておらず、且つ、第2内側マーカー52cは第2領域42の外側へ出ていない。
【0189】
そのため、
図10に示した制御ルーチンのステップS05でYesと判定され、走行制御部29により減速制御が実行される。
【0190】
次に、コンバイン1は、第2位置P2に到達する。このとき、第2外側マーカー52aが第2領域42の外側へ出ている。即ち、上述の第8判定条件が満たされている。また、このとき、第1外側マーカー51aが第1領域41の外側へ出ている。即ち、上述の第7判定条件が満たされている。また、このとき、第1内側マーカー51cは第1領域41の外側へ出ておらず、且つ、第2内側マーカー52cは第2領域42の外側へ出ていない。
【0191】
このとき、走行制御部29による制御の内容は変化しない。即ち、既に実行中である減速制御が、継続して行われることとなる。
【0192】
このように、走行制御部29は、第7判定条件及び第8判定条件のうちの一方のみが満たされている状態から、第7判定条件及び第8判定条件の両方が満たされている状態に変化したことに応じてコンバイン1の走行の制御の内容を変化させることがないように構成されている。
【0193】
また、同様に、走行制御部29は、第1判定条件及び第2判定条件のうちの一方のみが満たされている状態から、第1判定条件及び第2判定条件の両方が満たされている状態に変化したことに応じてコンバイン1の走行の制御の内容を変化させることがないように構成されている。
【0194】
また、
図11では省略されているものの、このことは、第1中間マーカー51b及び第2中間マーカー52bにも同様に当てはまる。即ち、走行制御部29は、第4判定条件及び第5判定条件のうちの一方のみが満たされている状態から、第4判定条件及び第5判定条件の両方が満たされている状態に変化したことに応じてコンバイン1の走行の制御の内容を変化させることがないように構成されている。
【0195】
また、このことは、第7判定条件、第8判定条件、第9判定条件の三つの条件についても同様である。即ち、走行制御部29は、第7判定条件、第8判定条件、第9判定条件のうち一つのみが満たされている状態から、二つのみが満たされている状態または三つ全てが満たされている状態に変化したことに応じてコンバイン1の走行の制御の内容を変化させることがないように構成されている。また、走行制御部29は、第7判定条件、第8判定条件、第9判定条件のうち二つのみが満たされている状態から、三つ全てが満たされている状態に変化したことに応じてコンバイン1の走行の制御の内容を変化させることがないように構成されている。
【0196】
このことは、第1判定条件、第2判定条件、第3判定条件の三つの条件についても同様である。また、第4判定条件、第5判定条件、第6判定条件の三つの条件についても同様である。
【0197】
次に、コンバイン1は、第3位置P3に到達する。このとき、第2内側マーカー52cは第2領域42の内側に位置しているが、第1内側マーカー51cは第1領域41の外形線に接触している。
【0198】
そのため、
図10に示した制御ルーチンのステップS01でYesと判定され、走行制御部29により停止制御が実行される。これにより、コンバイン1は第3位置P3で停止することとなる。
【0199】
尚、以上で説明した走行制御部29による制御は、コンバイン1の前進中だけではなく、後進中にも行われる。即ち、走行制御部29は、コンバイン1の前進中及び後進中の何れにおいても、各第1マーカー51が第1領域41の外側へ出ることが抑制され、且つ、各第2マーカー52が第2領域42の外側へ出ることが抑制され、且つ、各第3マーカー53が第3領域43の外側へ出ることが抑制されるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0200】
このように、走行制御部29は、コンバイン1の前進中及び後進中の何れにおいても、第1マーカー51が第1領域41の外側へ出ることが抑制され、且つ、第2マーカー52が第2領域42の外側へ出ることが抑制されるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0201】
〔変更部について〕
図5に示すように、コンバイン1は、車速検知部19を備えている。尚、車速検知部19は、作業システムSYに含まれていても良い。
【0202】
車速検知部19は、走行装置11の駆動速度を検知するセンサである。車速検知部19は、走行装置11の駆動速度を検知することにより、コンバイン1の車速を検知する。
【0203】
また、マーカー管理部70は、変更部73を有している。変更部73は、車速検知部19による検知結果を取得する。そして、変更部73は、コンバイン1の車速に応じて、第1外側マーカー51a、第1中間マーカー51b、第2外側マーカー52a、第2中間マーカー52b、第3外側マーカー53a、第3中間マーカー53bの大きさを変更する。
【0204】
より具体的には、変更部73は、コンバイン1の車速が低いほど、第1外側マーカー51a、第1中間マーカー51b、第2外側マーカー52a、第2中間マーカー52b、第3外側マーカー53a、第3中間マーカー53bを小さくする。
【0205】
即ち、作業システムSYは、コンバイン1の車速に応じて第1マーカー51及び第2マーカー52の大きさを変更する変更部73を備えている。
【0206】
尚、変更部73は、第1内側マーカー51c、第2内側マーカー52c、第3内側マーカー53cの大きさを変更しないように構成されている。即ち、本実施形態において、第1内側マーカー51c、第2内側マーカー52c、第3内側マーカー53cの大きさは、コンバイン1の車速にかかわらず一定である。
【0207】
ただし、本発明はこれに限定されず、変更部73は、コンバイン1の車速に応じて第1内側マーカー51c、第2内側マーカー52c、第3内側マーカー53cの大きさを変更するように構成されていても良い。
【0208】
ここで、第2外側マーカー52a及び第2中間マーカー52bの大きさが変更される場合について、例を挙げて説明する。
【0209】
図12には、圃場5を走行中のコンバイン1が圃場外縁部6に接近していく場合の例が、平面図にて示されている。尚、この例では、説明をわかりやすくするため、第1領域41、第3領域43、各第1マーカー51、各第3マーカー53については省略している。
【0210】
図12に示す例では、コンバイン1は、まず、第4位置P4に位置している。このとき、第2外側マーカー52aは第2領域42の内側に位置している。そのため、このとき、停止制御、方向変更制御、減速制御の何れも実行されない。
【0211】
また、このとき、機体10の前端と第2外側マーカー52aの前端との間の距離は、第1距離D1である。また、機体10の前端と第2中間マーカー52bの前端との間の距離は、第2距離D2である。
【0212】
次に、コンバイン1は、第5位置P5に到達する。このとき、第2外側マーカー52aが第2領域42の外側へ出ている。また、このとき、第2中間マーカー52b及び第2内側マーカー52cは、何れも、第2領域42の内側に位置している。そのため、このとき、走行制御部29により減速制御が実行される。
【0213】
この減速制御により、コンバイン1の車速は減少することとなる。これに応じて、変更部73は、第2外側マーカー52a及び第2中間マーカー52bの大きさを小さくする。これにより、機体10の前端と第2外側マーカー52aの前端との間の距離は、第3距離D3になる。また、機体10の前端と第2中間マーカー52bの前端との間の距離は、第4距離D4になる。
【0214】
尚、第3距離D3は、第1距離D1よりも短い。また、第4距離D4は、第2距離D2よりも短い。
【0215】
次に、コンバイン1は、第6位置P6に到達する。ここで、コンバイン1が第5位置P5から第6位置P6まで移動する間、走行制御部29による減速制御が実行され続ける。そのため、コンバイン1が第6位置P6に到達した時点での車速は、コンバイン1が第5位置P5に位置していたときの車速に比べて低い。
【0216】
そのため、このとき、第2外側マーカー52a及び第2中間マーカー52bの大きさは、さらに小さくなっている。具体的には、機体10の前端と第2外側マーカー52aの前端との間の距離は、第5距離D5になっている。また、機体10の前端と第2中間マーカー52bの前端との間の距離は、第6距離D6になっている。
【0217】
尚、第5距離D5は、第3距離D3よりも短い。また、第6距離D6は、第4距離D4よりも短い。
【0218】
また、このとき、第2中間マーカー52bが第2領域42の外側へ出ている。また、このとき、第2内側マーカー52cは、第2領域42の内側に位置している。そのため、このとき、走行制御部29により方向変更制御が実行される。
【0219】
ただし、この例では、圃場5の傾斜等の影響により、コンバイン1の進行方向は実際には変化しないものの、車速が次第に低下していくものとする。従って、コンバイン1は、第6位置P6を通過し、そのまま直進を続けながら減速していく。
【0220】
次に、コンバイン1は、第7位置P7に到達する。コンバイン1が第7位置P7に到達した時点での車速は、コンバイン1が第6位置P6に位置していたときの車速に比べて低い。
【0221】
そのため、このとき、第2外側マーカー52a及び第2中間マーカー52bの大きさは、さらに小さくなっている。具体的には、機体10の前端と第2外側マーカー52aの前端との間の距離は、第7距離D7になっている。また、機体10の前端と第2中間マーカー52bの前端との間の距離は、第8距離D8になっている。
【0222】
尚、第7距離D7は、第5距離D5よりも短い。また、第8距離D8は、第6距離D6よりも短い。
【0223】
また、このとき、第2内側マーカー52cが、第2領域42の外形線に接触している。そのため、走行制御部29により停止制御が実行される。これにより、コンバイン1は第7位置P7で停止することとなる。
【0224】
〔経路生成について〕
図5に示すように、自動走行制御部24は、第2経路生成部28を有している。第2経路生成部28は、第1内側マーカー51c、第2内側マーカー52c、第3内側マーカー53c、第1領域41、第2領域42、第3領域43に基づいて、第2作業走行のための目標走行経路TL(
図13及び
図15参照)を生成するように構成されている。尚、目標走行経路TLは、上述の刈取走行経路LIとは異なる経路である。
【0225】
上述の通り、本実施形態において、第2作業走行は自動走行により行われる。即ち、第2経路生成部28は、コンバイン1の自動走行のための目標走行経路TLを生成する。
【0226】
このように、作業システムSYは、コンバイン1の自動走行のための目標走行経路TLを生成する第2経路生成部28を備えている。
【0227】
第2経路生成部28は、コンバイン1が目標走行経路TLに沿って自動走行した場合に、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出ることがなく、且つ、第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出ることがなく、且つ、第3内側マーカー53cが第3領域43の外側へ出ることがないように、目標走行経路TLを生成する。
【0228】
即ち、第2経路生成部28は、コンバイン1が目標走行経路TLに沿って自動走行した場合に、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出ることがなく、且つ、第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出ることがないように、目標走行経路TLを生成する。
【0229】
以下では、第2経路生成部28による目標走行経路TLの生成について詳述する。
【0230】
本実施形態において、第2経路生成部28は、コンバイン1が刈取走行中に方向転換する場合、及び、コンバイン1が排出作業を行う予定の地点へ移動する場合に、目標走行経路TLを生成する。尚、排出作業とは、穀粒タンク14に貯留された穀粒を穀粒排出装置18によって排出する作業である。
【0231】
第2経路生成部28は、まず、コンバイン1が最短距離で移動可能な目標走行経路TLを生成する。そして、第2経路生成部28は、コンバイン1がその目標走行経路TLに沿って実際に走行する前に、その目標走行経路TLが適切であるか否かを判定する。
【0232】
このとき、第2経路生成部28は、コンバイン1がその目標走行経路TLに沿って自動走行した場合に、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出ることがなく、且つ、第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出ることがなく、且つ、第3内側マーカー53cが第3領域43の外側へ出ることがないか否かを判定する。
【0233】
コンバイン1がその目標走行経路TLに沿って自動走行した場合に、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出ることがなく、且つ、第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出ることがなく、且つ、第3内側マーカー53cが第3領域43の外側へ出ることがないと判定された場合、第2経路生成部28は、その目標走行経路TLが適切であると判定する。そして、その目標走行経路TLを、
図5に示すように、走行制御部29へ送る。
【0234】
一方、コンバイン1がその目標走行経路TLに沿って自動走行した場合に第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出ると判定された場合、第2経路生成部28は、その目標走行経路TLが適切でないと判定する。また、コンバイン1がその目標走行経路TLに沿って自動走行した場合に第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出ると判定された場合、及び、コンバイン1がその目標走行経路TLに沿って自動走行した場合に第3内側マーカー53cが第3領域43の外側へ出ると判定された場合にも、第2経路生成部28は、その目標走行経路TLが適切でないと判定する。
【0235】
生成された目標走行経路TLが適切でないと判定された場合、第2経路生成部28は、新たな目標走行経路TLを生成する。そして、生成された目標走行経路TLが適切であると判定されるまで、新たな目標走行経路TLの生成と、その目標走行経路TLが適切であるか否かの判定と、を繰り返す。そして、適切であると判定された目標走行経路TLが、走行制御部29へ送られる。
【0236】
走行制御部29は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、第2経路生成部28から受け取った目標走行経路TLと、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部29は、目標走行経路TLに沿った自動走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0237】
図13及び
図14では、コンバイン1が刈取走行中に方向転換する際に、第2経路生成部28により目標走行経路TLが生成される例が示されている。この例では、コンバイン1は、刈取走行経路LIである第1刈取経路LI1に沿って自動走行を行っている。そして、次に走行する刈取走行経路LIとして、経路選択部27によって第2刈取経路LI2が選択されている。
【0238】
第1刈取経路LI1と第2刈取経路LI2とは直交している。そのため、コンバイン1は、90°の方向転換を行う必要がある。
【0239】
この例において、第2経路生成部28は、まず、目標走行経路TLである第1目標経路TL1を生成する。
図13に示すように、第1目標経路TL1は、第1経路t1、第2経路t2、第3経路t3から構成されている。
【0240】
第1経路t1は、機体左側へ旋回しながら前進するための経路である。第2経路t2は、機体右側へ旋回しながら後進するための経路である。第3経路t3は、前進するための経路である。
【0241】
コンバイン1が第1目標経路TL1に沿って自動走行する場合、コンバイン1は、第1経路t1、第2経路t2、第3経路t3の順に走行することとなる。
【0242】
ここで、この例では、
図14に示すように、コンバイン1が第1経路t1に沿って自動走行した場合、第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出るものとする。そのため、第2経路生成部28は、第1目標経路TL1が適切でないと判定する。そして、第2経路生成部28は、
図15に示すように、新たな目標走行経路TLである第2目標経路TL2を生成する。
【0243】
そして、この例では、
図16に示すように、コンバイン1が第2目標経路TL2に沿って自動走行した場合、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出ることがなく、且つ、第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出ることがなく、且つ、第3内側マーカー53cが第3領域43の外側へ出ることがないものとする。そのため、第2経路生成部28は、第2目標経路TL2が適切であると判定する。
【0244】
そして、第2経路生成部28は、第2目標経路TL2を走行制御部29へ送る。走行制御部29は、第2目標経路TL2に沿った自動走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0245】
尚、
図13及び
図15に示すように、第2目標経路TL2に沿った自動走行における前進及び後進の回数は、第1目標経路TL1に沿った自動走行における前進及び後進の回数よりも多い。また、第2目標経路TL2に沿った自動走行での走行距離は、第1目標経路TL1に沿った自動走行での走行距離よりも長い。
【0246】
また、
図15に示すように、第2目標経路TL2には、コンバイン1が後進するための部分が含まれている。このように、第2経路生成部28は、コンバイン1が後進するための部分を含む目標走行経路TLを生成可能である。
【0247】
また、
図17及び
図18では、コンバイン1が排出作業を行う予定の地点である排出地点DPへ移動する場合に、第2経路生成部28により目標走行経路TLが生成される例が示されている。
【0248】
この例では、圃場外縁部6のうち、排出地点DPの近傍に、運搬車CVが駐車している。運搬車CVは、コンバイン1が穀粒排出装置18から排出した穀粒を収集し、運搬することができる。
【0249】
また、この例では、コンバイン1は、作業対象領域CAの中央部分を通り抜けるように刈取走行(中割走行)を行った後、未刈領域を通ることなく、排出地点DPへ移動するものとする。
【0250】
この例において、第2経路生成部28は、まず、目標走行経路TLである第3目標経路TL3を生成する。
図17に示すように、第3目標経路TL3には、90°の左旋回が行われる旋回箇所が三つ含まれている。そして、コンバイン1が最初の旋回箇所を通過するとき、コンバイン1は、圃場外縁部6における側面部61aの近傍を通過することとなる。
【0251】
そして、この例では、
図18に示すように、コンバイン1が第3目標経路TL3に沿って自動走行した場合、第1内側マーカー51cが第1領域41の外側へ出ることがなく、且つ、第2内側マーカー52cが第2領域42の外側へ出ることがなく、且つ、第3内側マーカー53cが第3領域43の外側へ出ることがないものとする。そのため、第2経路生成部28は、第3目標経路TL3が適切であると判定する。
【0252】
そして、第2経路生成部28は、第3目標経路TL3を走行制御部29へ送る。走行制御部29は、第3目標経路TL3に沿った自動走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0253】
以上で説明した構成であれば、第1マーカー51及び第2マーカー52の二つの仮想的なマーカーが設定される。そして、走行制御部29は、第1マーカー51が第1領域41の外側へ出ることが抑制され、且つ、第2マーカー52が第2領域42の外側へ出ることが抑制されるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0254】
これにより、第1マーカー51が第2領域42の外側へ出ることは許容されると共に、第2マーカー52が第1領域41の外側へ出ることは許容されることとなる。従って、第1マーカー51及び第2マーカー52を、コンバイン1の立体形状に合わせて適宜設定するとともに、これらのマーカーに対応させて、二つの領域を設定することにより、コンバイン1の走行の効率が低下しにくくなる。
【0255】
例えば、以上で説明した構成であれば、コンバイン1の機体10のうち、第2マーカー52に対応する部分が第1領域41の外側へ出ることは許容される。従って、コンバイン1の機体10のうち、第2マーカー52に対応する部分が第1領域41の外側へ出ることが抑制されるようにコンバイン1の走行が制御される構成に比べて、コンバイン1の走行が不必要に抑制される事態が生じにくい。そのため、コンバイン1の走行の効率が低下しにくくなる。
【0256】
このように、以上で説明した構成であれば、コンバイン1の走行が不必要に抑制される事態が生じにくくなる。その結果、コンバイン1の走行の効率が低下しにくい作業システムSYを実現できる。
【0257】
〔その他の実施形態〕
(1)走行装置11は、ホイール式であっても良いし、セミクローラ式であっても良い。
【0258】
(2)上記実施形態においては、第1経路生成部23により生成される刈取走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1経路生成部23により生成される刈取走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線でなくても良い。例えば、第1経路生成部23により生成される刈取走行経路LIは、渦巻き状の走行経路であっても良い。また、刈取走行経路LIは、別の刈取走行経路LIと直交していなくても良い。また、第1経路生成部23により生成される刈取走行経路LIは、互いに平行な複数の平行線であっても良い。
【0259】
(3)自車位置算出部21、作業領域算出部22、第1経路生成部23、自動走行制御部24、マップ生成部25、経路選択部27、第2経路生成部28、走行制御部29、機体情報記憶部33、マーカー位置算出部35、マーカー管理部70、マーカー記憶部71、マーカー設定部72、変更部73、領域管理部75、領域記憶部76、領域設定部77のうち、一部または全てがコンバイン1の外部に備えられていても良いのであって、例えば、コンバイン1の外部に設けられた管理施設や管理サーバに備えられていても良い。
【0260】
(4)コンバイン1は、自動走行ができないように構成されていても良い。
【0261】
(5)上記実施形態においては、作業領域算出部22が、コンバイン1が第1作業走行を行った領域を外周領域SAとして算出する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。外周領域SAは、コンバイン1が第1作業走行を行う前に決定されていても良い。
【0262】
(6)各第1マーカー51は、枠状でなくても良い。例えば、各第1マーカー51は、一つまたは複数の点であっても良いし、2点を結ぶ直線や曲線であっても良いし、複数の直線や曲線が組み合わされたものであっても良い。
【0263】
(7)各第2マーカー52は、枠状でなくても良い。例えば、各第2マーカー52は、一つまたは複数の点であっても良いし、2点を結ぶ直線や曲線であっても良いし、複数の直線や曲線が組み合わされたものであっても良い。
【0264】
(8)各第3マーカー53は、枠状でなくても良い。例えば、各第3マーカー53は、一つまたは複数の点であっても良いし、2点を結ぶ直線や曲線であっても良いし、複数の直線や曲線が組み合わされたものであっても良い。
【0265】
(9)上記実施形態においては、第1マーカー51、第2マーカー52、第3マーカー53の3種類のマーカーが存在する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、マーカーは2種類のみであっても良いし、4種類以上であっても良い。
【0266】
(10)第2部分10bに、脱穀装置13が含まれていても良いし、穀粒タンク14が含まれていても良い。
【0267】
(11)第1部分10aは、機体10のうち、機体フレーム9以外のいかなる部分であっても良い。
【0268】
(12)第2部分10bは、機体10のうち、収穫部H以外のいかなる部分であっても良い。例えば、第2部分10bは、脱穀装置13であっても良い。この場合、脱穀装置13は、本発明に係る「作業装置」に相当する。また、第2部分10bは、穀粒タンク14であっても良い。この場合、穀粒タンク14は、本発明に係る「作業装置」に相当する。
【0269】
(13)上記実施形態においては、マーカー設定部72は、機体情報記憶部33に記憶されている情報に基づいて、各第1マーカー51、各第2マーカー52、各第3マーカー53を設定する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、マーカー設定部72は、人為操作により入力された情報に基づいて、各第1マーカー51、各第2マーカー52、各第3マーカー53を設定するように構成されていても良い。
【0270】
(14)上記実施形態においては、第3領域43の外形線は、圃場外縁部6と圃場5との境界に一致するように設定される。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第3領域43の外形線は、圃場外縁部6と圃場5との境界から、圃場5の内側へ所定距離だけ離れた位置に設定されても良い。また、この所定距離を、作業システムSYのユーザーが任意に設定可能であっても良い。また、第3領域43の外形線の位置を、圃場外縁部6と圃場5との境界に一致する位置に設定するか、圃場外縁部6と圃場5との境界から圃場5の内側へ所定距離だけ離れた位置に設定するか、をユーザーが選択可能であっても良い。
【0271】
これと同様に、第1領域41の外形線は、上記実施形態における位置から圃場5の内側へ所定距離だけ離れた位置に設定されても良い。また、この所定距離を、作業システムSYのユーザーが任意に設定可能であっても良い。また、第1領域41の外形線の位置を、上記実施形態における位置に設定するか、上記実施形態における位置から圃場5の内側へ所定距離だけ離れた位置に設定するか、をユーザーが選択可能であっても良い。
【0272】
これと同様に、第2領域42の外形線は、上記実施形態における位置から圃場5の内側へ所定距離だけ離れた位置に設定されても良い。また、この所定距離を、作業システムSYのユーザーが任意に設定可能であっても良い。また、第2領域42の外形線の位置を、上記実施形態における位置に設定するか、上記実施形態における位置から圃場5の内側へ所定距離だけ離れた位置に設定するか、をユーザーが選択可能であっても良い。
【0273】
(15)上記実施形態においては、第1外側マーカー51a、第1中間マーカー51b、第1内側マーカー51cの三つの第1マーカー51が存在する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1マーカー51の個数は一つまたは二つであっても良いし、四つ以上であっても良い。
【0274】
これと同様に、第2マーカー52の個数は一つまたは二つであっても良いし、四つ以上であっても良い。また、第3マーカー53の個数は一つまたは二つであっても良いし、四つ以上であっても良い。
【0275】
(16)上記実施形態において、複数の第1マーカー51、複数の第2マーカー52、複数の第3マーカー53は何れもマーカー記憶部71に記憶されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、複数の第1マーカー51を記憶する部材や機能部と、複数の第2マーカー52を記憶する部材や機能部と、複数の第3マーカー53を記憶する部材や機能部と、が互いに異なっていても良い。この場合、複数の第1マーカー51を記憶する部材や機能部は、本発明に係る「第1記憶部」に相当する。また、複数の第2マーカー52を記憶する部材や機能部は、本発明に係る「第2記憶部」に相当する。
【0276】
(17)上記実施形態において、第1領域41、第2領域42、第3領域43は何れも領域記憶部76に記憶されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1領域41を記憶する部材や機能部と、第2領域42を記憶する部材や機能部と、第3領域43を記憶する部材や機能部と、が互いに異なっていても良い。この場合、第1領域41を記憶する部材や機能部は、本発明に係る「第3記憶部」に相当する。また、第2領域42を記憶する部材や機能部は、本発明に係る「第4記憶部」に相当する。
【0277】
(18)マップ生成部25に代えて、コンバイン1の外部で生成された外縁部マップを取得するマップ取得部が備えられていても良い。この場合、マップ取得部は、本発明に係る「取得部」に相当する。
【0278】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0279】
本発明は、普通型のコンバインだけではなく、自脱型のコンバイン、トラクタ、田植機、トウモロコシ収穫機、ジャガイモ収穫機、ニンジン収穫機、建設作業機等の種々の作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0280】
1 コンバイン(作業車)
5 圃場
6 圃場外縁部
9 機体フレーム
10 機体
10a 第1部分
10b 第2部分
25 マップ生成部(取得部)
29 走行制御部
41 第1領域
42 第2領域
51 第1マーカー
51a 第1外側マーカー
51b 第1中間マーカー
51c 第1内側マーカー
52 第2マーカー
52a 第2外側マーカー
52b 第2中間マーカー
52c 第2内側マーカー
71 マーカー記憶部(第1記憶部、第2記憶部)
72 マーカー設定部
73 変更部
76 領域記憶部(第3記憶部、第4記憶部)
77 領域設定部
H 収穫部(作業装置)
HA 基準高さ(所定高さ)
SY 作業システム(走行管理システム)