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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163540
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】ヘアーブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 9/02 20060101AFI20221019BHJP
   A45D 24/00 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
A46B9/02
A45D24/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068541
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敬
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA11
3B202AB02
3B202BA02
3B202EA01
3B202EB09
3B202EC06
3B202ED05
3B202EE01
3B202EF02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】頭皮への密着度の向上を図ることができるヘアーブラシを提供する。
【解決手段】ヘアーブラシ1は、本体部10とブラシ部20とを備える。ブラシ部は複数のピン(第1ピン51)を有する。複数のピンは、本体部の表面(ブラシベース40の前面40A)から立設する。複数のピンの先端を繋げた仮想面は、本体部の表面に向けて凹んでいる。また、ブラシ部は非接触部及び接触部を有する。非接触部は、使用状態においてピンの先端が頭皮に当たらない部分である。接触部は、ブラシ部における非接触部を挟んだ両側に設けられ、使用状態においてピンの先端が頭皮に当たる部分である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部の表面から立設した複数のピンを有するブラシ部とを備えたヘアーブラシであって、
前記複数のピンの先端を繋げた仮想面は、前記本体部の表面に向けて凹んでおり、
前記ブラシ部は、使用状態において前記ピンの先端が頭皮に当たらない非接触部と、前記非接触部を挟んだ両側に設けられ、使用状態において前記ピンの先端が頭皮に当たる接触部とを有するヘアーブラシ。
【請求項2】
前記接触部は、前記非接触部の周囲に設けられている請求項1に記載のヘアーブラシ。
【請求項3】
前記ブラシ部は、複数の前記ピンが立設し、受ける硬さの触感が異なる複数の領域を有している請求項1及び請求項2に記載のヘアーブラシ。
【請求項4】
前記複数の領域は、内側領域と、前記内側領域よりも外側に位置し、触感が前記内側領域よりも硬い外側領域とを備えている請求項3に記載のヘアーブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘアーブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来のヘアーブラシを開示している。このヘアーブラシは、ヘッド部と、ヘッド部におけるブラシ面から立設する複数の棒状の突起とを有している。複数の突起は、第1突起及び第2突起を有している。第1突起は、ブラシ面における幅方向の中央部に配列される。第2突起は、第1突起が配列された領域を挟んで幅方向の両側に配列される。第2突起は、第1突起よりも長さが短く設けられている。このため、ブラッシング時において、第2突起と頭髪とが接触することによる抵抗を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-81854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヘアーブラシには、頭皮の洗浄やマッサージを目的として、突起の先端を頭皮に当てて使用したいという要望がある。この場合、より多くの突起を頭皮に接触させ、頭皮にブラシを密着させることができることが好ましい。しかしながら、特許文献1のように相対的に長い突起の両側に相対的に短い突起がある場合、長い突起が頭皮に当たって突っ張ってしまうため、他の突起が頭皮に接触するのが阻害されてしまう。
【0005】
本発明は上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、頭皮への密着度の向上を図ることができるヘアーブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヘアーブラシは、本体部と、前記本体部の表面から立設した複数のピンを有するブラシ部とを備えたヘアーブラシであって、前記複数のピンの先端を繋げた仮想面は、前記本体部の表面に向けて凹んでおり、前記ブラシ部は、使用状態において前記ピンの先端が頭皮に当たらない非接触部と、前記非接触部を挟んだ両側に設けられ、使用状態において前記ピンの先端が頭皮に当たる接触部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のヘアーブラシは、複数のピンの先端を繋げた仮想面が本体部の表面に向けて凹んだ形態である。また、ピンの先端が頭皮に当たらない非接触部を設け、その非接触部を挟んだ両側にピンの先端が頭皮に当たる接触部を設けている。このような構成により、本発明のヘアーブラシは、非接触部の両側の接触部におけるピンを頭皮に確実に当てることができる。また、非接触部の両側におけるピンは、頭皮がなす曲面に対して斜め方向(法線方向でない方向)に接触し易い。この場合、頭皮に接触したピンは、頭皮に更に押し付けられることによって外側に倒れやすい。その結果、接触部における多くのピンを頭皮に接触させることができる。また、ピンが倒れることによって、ピンの先端部分のみならず、ピンの先端側の側面部分も頭皮に接触させることができる。このように、本発明のヘアーブラシは、頭皮への密着度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係るヘアーブラシを示す正面図である。
図2】実施例1に係るヘアーブラシを示す背面図である。
図3】実施例1に係るヘアーブラシを示す側面図である。
図4】実施例1に係るヘアーブラシを示す平面図である。
図5】実施例1に係るヘアーブラシを示す底面図である。
図6】実施例1に係るヘアーブラシを示す分解斜視図である。
図7図1のVII-VII線断面図である。
図8図1のVIII-VIII線断面図である。
図9】実施例1に係る仮想面を説明する説明図である。
図10】実施例1に係るブラシ部を説明する説明図である。
図11】実施例1に係るヘアーブラシの使用例を説明する説明図(その1)である。
図12】実施例1に係るヘアーブラシの使用例を説明する説明図(その2)である。
図13】ピンと頭皮との接触状態を模式的に示す図(その1)である。
図14】ピンと頭皮との接触状態を模式的に示す図(その2)である。
図15】実施例2に係るブラシ部を説明する説明図である。
図16】頭皮の状態を示す写真であり、(A)洗浄前、(B)手洗い後、(C)ヘアーブラシを用いた洗浄後をそれぞれ示す。
図17】官能評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
本発明のヘアーブラシにおいて、ピンの先端が頭皮に接触する部分である接触部は、ピンの先端が頭皮に接触しない部分である非接触部の周囲に設けられ得る。この場合、方向性の制約なく、ブラッシングを行うことができる。例えば、非接触部が直線状に設けられるとともに、このような非接触部の両隣に接触部が配置されている場合を想定する。この場合、効果的にブラッシングを行うためには、ピンの先端が頭皮に接触しない部分である非接触部の延伸方向に沿った方向のブラッシングを避ける必要がある。これに対し、接触部が非接触部の周囲に設けられている場合には、いずれの方向にブラッシングを行う場合においても接触部におけるピンを頭皮に接触させてのブラッシングを行うことができる。このため、非接触部の両隣に接触部が配置されている場合と比較して、ブラッシング方向の自由度を高めることができる。
【0010】
本発明のヘアーブラシにおいて、ブラシ部は、複数のピンが立設し、受ける硬さの触感が異なる複数の領域を有し得る。この場合、異なる硬さの触感による異なる作用のブラッシングを行うことができる。例えば、相対的に硬い触感の領域と柔らかい触感の領域の2つ領域が設けられている場合を想定する。この場合、相対的に硬い触感の領域においてピンの先端を頭皮に強く接触させて頭皮に張り付いた頭髪の根元に入り込んで持ち上げたり、相対的に柔らかい触感の領域においてピンが絡まった頭髪をほぐしたり等、異なるブラッシング作用を付与することができる。
【0011】
本発明のヘアーブラシにおいて、複数の領域は、内側領域と、この内側領域よりも外側に位置し、触感が内側領域よりも硬い外側領域とを備え得る。この場合、外側領域においてピンが頭髪を持ち上げて起こし、内側領域においては、外側領域において起こされた頭髪の絡みをほぐし、更に外側領域において、起こされた頭髪の根元の頭皮にピンが強く接触して洗浄、マッサージ作用を付与する等、それぞれの異なるブラッシング作用を効果的に付与することができる。
【0012】
<実施例1>
次に、本発明を具体化した実施例1のヘアーブラシについて、図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、便宜上、ヘアーブラシにおける方向を以下のとおり定義する。すなわち、ヘアーブラシにおける複数のピンの突出方向に平行な方向を前後方向とし、ピンの突出端側を前側、基端側を後側と定義する。また、前後方向に直交するヘアーブラシの長手方向を上下方向、前後方向及び上下方向のそれぞれに直交するヘアーブラシの幅方向を左右方向と定義する。各図におけるX軸、Y軸、及びZ軸はそれぞれの方向を示しており、X軸正方向が前側、Y軸正方向が左側、Z軸正方向が上側である。なお、これらの方向は、ヘアーブラシの使用時における実際の方向を定めるものではない。
【0013】
実施例1に係るヘアーブラシ1は、図1から図8に示すように、本体部10、及びブラシ部20を備えている。本実施例において、本体部10は、ハンドル30及びブラシベース40を有している。ブラシ部20は複数のピン50を有している。複数のピン50は、本発明に係る本体部の表面としてのブラシベース40の前面40Aから立設している。
【0014】
ハンドル30は、全体として上下方向に長い形状を有している。ハンドル30は、長手方向の一端側である上側のハンドル本体31と、他端側である下側の柄部32とを有している。ハンドル30は、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂によって、ハンドル本体31と柄部32とを一体成形して形成されている。ハンドル30の外面には金属メッキが施されている。図2図3等に示すように、ハンドル30の後面には、ハンドル本体31における右側部の後述する切欠き部31Bの後端縁から、柄部32の下端にかけて、外方に起伏する畝状の複数の筋が形成されている。また、このような畝状の筋は、柄部32の前面にも形成されている。これらの畝状の筋は、ハンドル30を把持した際の滑り止め機能のみならず、意匠性の向上にも寄与している。
【0015】
図1及び図2に示すように、ハンドル本体31は、ハンドル30の長手方向に沿って長い長円状の外形形状をなしている。図3に示すように、ハンドル本体31の外面は、前面側において平坦に形成されている。詳細には、ハンドル本体31の前面は、前後方向に直交する平坦面をなしている。ハンドル本体31の後面は、後方に凸となるなだらかな曲面状をなしている。図3に示すように、ハンドル本体31は、左右方向から見た側面視においては、下方に向かうにつれて前後方向の厚さが大きくなる楔状に形成されている。図4に示すように、ハンドル本体31は、上方から見た平面視においては、左右方向の中央部の厚みが最も大きく形成されている。
【0016】
図6及び図7に示すように、ハンドル本体31の前面には開口31Aが形成されている。開口31Aは、ハンドル本体31がなす長円形状に沿った長円状の内形形状をなしている。開口31Aにはブラシベース40が嵌め込まれる。開口31Aは、周縁部を除いたハンドル本体31の前面の大部分を占めて形成されている。
【0017】
図1から図3に示すように、ハンドル本体31の左右の側面には切欠き部31Bが形成されている。切欠き部31Bは、ハンドル本体31の側面を前縁から後方斜め下方に向けて断面円弧状の溝状に切り欠いた形態である。切欠き部31Bは、上下方向に並んで2つ設けられている。切欠き部31Bは、ハンドル本体31の左右中心に対して対称となる形態で、ハンドル本体31の左右の側面の両方に設けられている。
【0018】
柄部32はハンドル本体31の下端に連結されている。図3に示すように、柄部32は、ハンドル本体31の下端から前方に向かって緩やかに湾曲した形態である。柄部32の前端は、ハンドル本体31の前面よりも前方に位置している。柄部32の左右幅はハンドル本体31の左右幅よりも小さい。柄部32は、全体として外側に凸となる湾曲状の外周面を有している。図3に示すように、柄部32の後面は、ハンドル本体31の後面がなす湾曲面に連続する湾曲面を形成している。図5に示すように、柄部32の前面は、後面よりも大きな曲率の曲面で形成されている。
【0019】
図1及び図3に示すように、ハンドル30は第1くびれ部33及び第2くびれ部34を有している。第1くびれ部33及び第2くびれ部34は、ハンドル本体31と柄部32との連結部分に設けられている。第1くびれ部33は、ハンドル30における前面側に設けられている。第1くびれ部33は、ハンドル本体31の前面がなす平坦面と、柄部32の前面がなす湾曲状面と、の間において、左右方向に延びる断面円弧状の溝状をなしている。第2くびれ部34は、ハンドル30における左右の側面に設けられている。第2くびれ部34は、ハンドル本体31における左右の側面と柄部32の左右の側面とを滑らかに接続する凹状の湾曲面をなしている。
【0020】
図6から図8に示すように、ブラシベース40は板状をなしている。本実施例の場合、ブラシベース40はポリアセタール(POM)等の熱可塑性樹脂を射出成形してなる。ブラシベース40は、正面視において、ハンドル本体31における開口31Aがなす長円形状と同様の長円形状をなしている。ブラシベース40は、ハンドル本体31における開口31Aにぴったりと嵌め込まれる。ブラシベースは、例えば、ABS樹脂やポリプロピレン等の樹脂製であってもよいが、シャンプー剤やリンス剤、整髪剤等に対する耐性といった観点では、POM製であることが好ましい。
【0021】
ブラシベース40の前面40Aは、本発明に係る「本体部の表面」の例示である。ブラシベース40の前面40Aには、複数の植毛穴41が形成されている。本実施例の場合、複数の植毛穴41は、上下方向の並びを1列として左右方向に9列形成されている。植毛穴41は、後述する非接触部21に対応する部分を除いて、各列において上下方向等間隔に形成されている。植毛穴41の各列は、左右方向等間隔に配置されている。また、各列の植毛穴41は、隣り合う列の植毛穴41とは千鳥配置されている。複数の植毛穴41には、ブラシ部20を構成する複数のピン50が個々に植えられる。複数の植毛穴41は、断面円形状の有底孔である。各植毛穴41は同じ深さで形成されている。複数の植毛穴41は、互いの軸が平行になるように形成されている。複数の植毛穴41の軸は、いずれも前後方向に沿って延びている。
【0022】
本実施例において、ブラシベース40の前面40Aは、後方に向けて凹んでいる。詳細には、前面40Aは、図6から図8に示すように、上下方向及び左右方向の中央部において最も凹んだ皿状の表面形状をなしている。
【0023】
また、図6から図8に示すように、ブラシベース40は、前後方向に貫通する貫通孔40Bを形成している。貫通孔40Bは、ブラシベース40の上下方向及び左右方向の中央部に形成されている。貫通孔40Bは、上下方向を長手方向とする断面長円形状をなしている。貫通孔40Bには後述するイオンプレート60が配置される。ブラシベース40は、貫通孔40Bの周囲においては、植毛穴41が形成されていない。
【0024】
図7に示すように、ブラシベース40は爪部42,43を有している。爪部42,43は、ブラシベース40の後面側の上下の各端部に設けられており、開口31Aの周縁に形成された係合部31C、31Dにそれぞれスナップフィット係合する。また、ブラシベース40は、図8に示すように、後面側の左右両端部において、両面テープTによって開口31Aの奥面に貼り付けられる。ブラシベース40は、これら爪部42,43の係合及び両面テープTの粘着によってハンドル本体31に固定される。
【0025】
イオンプレート60は、イオン発生に寄与する物質をセラミックス、樹脂等の基材に含有させた成形体である。イオンプレート60は、イオン発生に寄与する物質から、電圧を印加することなくイオンを発生可能である。図6に示すように、イオンプレート60は、正面視長方形状の板状に形成されている。イオンプレート60は、ブラシベース40の後面側に配置され、貫通孔40Bを介してブラシベース40の前面40A側に露出する。イオンプレート60は、後面側に配置される介在部材61を介して、ブラシベース40とハンドル本体31との間に挟持される。介在部材61は、前後両面に両面テープが貼り付けられた所定厚さの弾性部材からなる。介在部材61は、イオンプレート60を固定するとともに、弾性力によってイオンプレート60を前方側に付勢してブラシベース40に押し付けるように作用する。
【0026】
ブラシ部20は複数のピン50を有している。複数のピン50は、ブラシベース40の前面40Aから立設している。具体的には、本実施例の場合、各ピン50は、図7及び図8に示すように、ブラシベース40の前面40Aに形成された複数の植毛穴41に植えられている。各ピン50はナイロン等の樹脂製線状材料からなる。各ピン50は弾性的に屈曲可能である。各ピン50は自然状態において直線状をなしている。各ピン50の先端は、線状部分の直径よりも大きな直径の球状に加工されている。各ピン50の正面視における配列は植毛穴41の配列と同等である。
【0027】
ピン50は、所定長さに切断した線状の材料を折り曲げるとともに、この折り曲げ部分を植毛穴41に植え付けることによって立設されている。したがって、本実施例では、1つの植毛穴41につき、一対(2つ)のピン50が立設されている。一対のピン50は、前面40Aからの突出長さが相対的に長い第1ピン51と、相対的に短い第2ピン52と、の2種類が対をなしている。これら2種類の長さのピン51,52のうち、本発明に係るピンの例示は第1ピン51である。各第1ピン51の突出長さは同じ長さに設定されている。各第2ピン52の突出長さもそれぞれ同じである。第2ピン52の前面40Aからの突出長さは、第1ピン51の突出長さの0.8倍程度である。具体的には、本実施例における第1ピン51の前面40Aからの突出長さは21mmであり、第2ピン52の前面40Aからの突出長さは16mmである。なお、本発明においては、本発明に係る複数のピンとしての第1ピン51に対する第2ピン52のように、複数のピンよりも短い他のピンを設けることは必須ではない。他のピンを設ける場合、その長さは、1種類のみであってもよいし、3種類以上であってもよい。他のピンは、本発明に係るピンと同じ植毛穴から立設していてもよいし、異なる植毛穴から独立して立設していてもよい。
【0028】
図9に示すように、ブラシ部20において、複数の第1ピン51の先端を繋げた仮想面Vは、ブラシベース40の前面40Aに向かって凹んでいる。換言すると、仮想面Vは、第1ピン51の基端側に向かって凹状をなす形態である。本実施例の場合、仮想面Vは、ブラシベース40の前面40Aがなす曲面に近似した面となる。各第1ピン51が、ブラシベース40の前面40Aから同じ長さで立設しているからである。なお、図9に示すメッシュ状の面Mは、隣り合う第1ピン51の先端同士を直線で結んで表したものである。仮想面Vは、このようなメッシュ状の面Mとして近似的に表すことができる。仮想面Vは、ブラシ部20の中央部においてブラシベース40側(後側)に最も凹んでおり、ブラシ部20の周縁部に向かうにつれてブラシベース40側の反対側(前側)に徐々に隆起するような形態である。このような仮想面Vは、局所的な凹凸のない、全体として連続する凹曲面状をなす。他のピンとしての第2ピン52の先端は、この仮想面Vよりもブラシベース40側(後側)に位置している。
【0029】
図10に示すように、ブラシ部20は、非接触部21及び接触部22を有している。非接触部21は、使用状態において、ピン50の先端が頭皮に当たらない部分である。接触部22は、使用状態において、ピン50の先端が頭皮に当たる部分である。接触部22は、非接触部21を挟んだ両側に設けられている。使用状態とは、ブラシ部20前面を頭皮に接触させて使用する状態である。本実施例において、非接触部21は、ブラシ部20におけるピン50が立設していない部分に相当する。接触部22は、ブラシ部20におけるピン50が立設している部分に相当する。非接触部21は、ブラシ部20の中央部分に設けられている。本実施例の場合、接触部22は、非接触部21の周囲の全周に渡って設けられている。
【0030】
ブラシ部20は、受ける硬さの触感が異なる複数の領域を有している。これら複数の領域は、ブラシ部20における複数のピン50が立設した領域である。「受ける硬さの触感が異なる」とは、ブラシ部20を頭皮に当てた際、頭皮に接触した各ピンから受ける抵抗力の大きさの感覚的な違いである。図10に示すように、ブラシ部20は、複数の領域としての内側領域R1及び外側領域R2を有している。内側領域R1及び外側領域R2は、それぞれ接触部22を構成する領域の一部である。
【0031】
図10に示すように、内側領域R1は、ブラシ部20における左右方向中央部に配置されている。内側領域R1は、外側領域R2と比較して、受ける硬さの触感が柔らかい領域である。内側領域R1は、左右方向中央部の3列のピン50が立設する上下方向に長い領域である。内側領域R1は、非接触部21を挟んだ上下方向外側に配置されている。
【0032】
外側領域R2は、内側領域R1よりも外側(外縁寄り)に位置する。具体的には、外側領域R2は、ブラシ部20における内側領域R1の左右方向外側に隣接して配置されている。外側領域R2は、内側領域R1と比較して、受ける硬さの触感が硬い領域である。本実施例の場合、内側領域R1から受ける触感と外側領域R2から受ける触感の違いは、各領域R1,R2に立設させるピン50の太さと材質を異ならせたことによって生み出している。具体的には、内側領域R1内のピン50は、使用する線状の材料の太さを外側領域R2内のピン50よりも細くされている。また、内側領域R1内のピンは、帯電防止剤を含有したことによって外側領域R2内のピン50よりも柔らかくされている。
【0033】
上記構成のヘアーブラシ1の作用について、使用方法と併せて説明する。ここでは、ヘアーブラシ1を用いて洗髪する際の使用方法について説明する。
【0034】
最初に、頭皮及び頭髪を軽くブラッシングする。このブラッシングは頭髪を濡らす前に行う。このようなブラッシングを行う際には、図11に示すように、ハンドル30における柄部32を把持して行うとよい。柄部32はブラシ部20から下方に離れた位置に設けられている。このため、柄部32を把持してのブラッシングは、手のスナップを効かせた幅広い範囲のブラッシングを行うのに好適である。また、柄部32は外側に凸となる湾曲状に形成されていることから、手のひらで包み込んでしっかりと把持することができる。更に、柄部32を手のひらで包み込むと、親指及び人差し指がくびれ部33,34にかかるため、ヘアーブラシ1をよりしっかりと把持することができる。
【0035】
次に、頭皮及び頭髪を濡らし、シャンプー剤等の洗剤を泡立ててのせる。そして、洗剤が頭皮全体に行き渡るようにブラッシングする。このようなブラッシングを行う際には、図12に示すように、親指、人差し指、及び中指を左右の切欠き部31Bにあてがって、ハンドル本体31を把持して行うとよい。ハンドル本体31はブラシ部20の後方に位置する。このため、ハンドル本体31を把持してのブラッシングは、ブラシ部20を頭皮に密着させる力を作用させやすい。また、切欠き部31Bは、ハンドル本体31の側面を切り欠いて形成されているため、濡れて洗剤の付着した手であっても指が引っ掛かり易い。その結果、滑りを抑制でき、ハンドル本体31をしっかりと握ることができる。更に、親指、人差し指、及び中指を切欠き部31Bに引っ掛けてハンドル本体31を把持した場合、薬指及び小指の少なくともいずれかをくびれ部33,34にかけることができるため、ヘアーブラシ1をよりしっかりと把持することができる。また、切欠き部31B及びくびれ部33,34は、左右対称に設けられているため、右手左手の区別なく同様に把持することができる。
【0036】
ヘアーブラシ1において、ブラシ部20は、複数の第1ピン51の先端を繋げた仮想面Vが本体部の表面としてのブラシベース40の前面40A側に凹んでいる。このため、ブラシ部20における各第1ピン51の先端を頭皮に密着させ易い。
【0037】
また、ブラシ部20は、非接触部21と、非接触部21を挟んだ両側の接触部22とを有することにより、非接触部21の両側の接触部22における第1ピン51を頭皮に確実に当てることができる。図13に示すように、ブラシ部20を頭皮に対向させた場合、非接触部21の両側の接触部22におけるピン50は、頭皮がなす曲面に対して斜め方向に接触し易い。頭皮に接触した第1ピン51は、頭皮に更に押し付けられることによって外側に倒れる。これによって、更に外側の第1ピン51を頭皮に接触させることができる。その結果、接触部22における多くのピンを頭皮に接触させることができる。
【0038】
これに対し、例えば、図14に示すように、仮に第1ピン51と同様のピンPが全体的に設けられたブラシ部Bを想定する。すなわち、図14に示すブラシ部Bは、非接触部に相当する部分を有さない。この場合、頭皮に最初に接触するピンPは、頭皮に対して法線方向に接触し易い。法線方向に接触したピンPは、頭皮に対して突っ張ってしまうため、その外側に配置されている他のピンPは、頭皮に接触し難くなってしまう。
【0039】
このようなブラシ部Bと比較すると、本実施例に係るブラシ部20は、非接触部21を有したことによって、ブラシ部20全体としての頭皮への密着度に優れる。また、ブラシ部20は、第1ピン51の先端を繋げた仮想面Vがブラシベース40の前面40Aに向けて凹んだ形態であるため、頭皮への密着度に一層優れる。このため、各第1ピン51の先端をより多く頭皮に密着させた状態でブラッシングを行うことができ、頭皮の洗浄作用、マッサージ作用等を効果的に付与できる。更に、ブラシ部20は、第1ピン51よりも短い第2ピン52を有するため、更に多くのピン50の先端を頭皮に接触させることができ、頭皮への密着度に殊更優れている。
【0040】
ヘアーブラシ1を用いたブラッシングは、ブラシ部20における外側領域R2及び内側領域R1が順次通過する方向、すなわち左右方向に平行にブラッシングを行うとよい。本実施例の場合、外側領域R2は、外側領域R2よりも受ける硬さの触感が柔らかい内側領域R1の左右の外側に位置している。ブラシ部20が左右方向に平行に移動するようにブラッシングを行った場合には、最初に左右一方の外側領域R2が通過する。この外側領域R2におけるピン50は、頭皮を覆い隠す頭髪の隙間に入り込んで持ち上げる役割を果たす。次に通過する内側領域R1におけるピン50は、頭皮から持ち上げられた頭髪の絡みをほぐす。そして、最後に通過する外側領域R2では、各ピン50は、立ち上げられた頭髪の隙間から頭皮に好適に密着することができる。このように頭皮と各ピン50の先端との密着度を向上できることで、頭皮表面に付着した汚れを好適に掻き出したり、頭皮にマッサージ作用を好適に付与したりすることができる。
【0041】
また、各ピン50の先端は球状に加工されているので、洗髪の際には、頭皮に付着した汚れをからめとって掻き出すことができるとともに、マッサージの際には、先端が球状に加工されていない場合と比較してより大きな面積を頭皮に接触させてより広い範囲にマッサージ作用を付与することができる。また、各ピン50の先端が球状に加工されていることから、各ピン50の先端側の側面部分が接触した状態であっても汚れの掻き出し作用を維持できる。すなわち、ピンの先端が球状に加工されている場合には、球状をなす部分のいずれかの面においてブラッシング方向に対向する面が生じ、汚れを掻き出すことができる。
【0042】
また、ヘアーブラシ1は、イオンプレート60を備えている。このため、イオンプレート60から発生させたイオンの作用を頭皮や頭髪に付与することができる。例えば、皮脂汚れはマイナス電位を持つため、皮脂汚れが付着した頭皮はプラス電位が優位となり、イオンバランスが乱れた状態となっている。この場合、互いの電位によって引き付けられ、皮脂汚れと頭皮との結びつきが強められている。このような頭皮に向けてイオンプレート60からイオンを放出することによって、イオンバランスを整えて皮脂汚れと頭皮との結びつきを弱め、汚れを落としやすい環境をつくる効果が期待できる。
【0043】
ヘアーブラシ1の使用後は、スタンドSに立てて保管する(図1参照)。スタンドSに立てた状態で保管することで、ヘアーブラシ1は、洗髪後の水切りを好適に行うことができ、清潔に保つことができる。また、スタンドSによってヘアーブラシ1を立てて保管できるので、ブラシ部20における各ピン50の変形も抑制できる。
【0044】
以上説明したように、実施例1に係るヘアーブラシ1は、本体部10とブラシ部20とを備える。ブラシ部20は複数のピンとしての第1ピン51を有する。複数の第1ピン51は、本体部の表面としてのブラシベース40の前面40Aから立設する。複数の第1ピン51の先端を繋げた仮想面Vは、ブラシベース40の前面40Aに向けて凹んでいる。また、ブラシ部20は非接触部21及び接触部22を有する。非接触部21は、使用状態において第1ピン51の先端が頭皮に当たらない部分である。接触部22は、ブラシ部20における非接触部21を挟んだ両側に設けられ、使用状態において第1ピン51の先端が頭皮に当たる部分である。
【0045】
このため、ヘアーブラシ1は、非接触部21の両側の接触部22における第1ピン51を頭皮に確実に当てることができる。また、非接触部21の両側における第1ピン51は、頭皮がなす曲面に対して斜め方向(法線方向でない方向)に接触し易い。この場合、頭皮に接触した第1ピン51は、頭皮に更に押し付けられることによって外側に倒れやすい。その結果、接触部における多くのピンを頭皮に接触させることができる。したがって、ヘアーブラシ1は、頭皮への密着度の向上を図ることができる。また、外側に倒れた第1ピン51は、先端部分のみならず、先端部の側面側も頭皮に接触する。このため、より大きな面積を頭皮に接触させることができ、頭皮への密着度の更なる向上を図ることができる。
【0046】
また、ヘアーブラシ1において、接触部22は、非接触部21の周囲に設けられている。このため、方向性の制約なくブラッシングを行うことができ、ブラッシング方向の自由度を高めることができる。
【0047】
また、ヘアーブラシ1において、ブラシ部20は、複数の領域としての内側領域R1及び外側領域R2を有している。これら内側領域R1及び外側領域R2は、複数の第1ピン51が立設しており、受ける硬さの触感が異なっている。このため、異なる硬さの触感による異なる作用のブラッシングを行うことができる。
【0048】
また、ヘアーブラシ1において、内側領域R1及び外側領域R2は、外側領域R2が内側領域R1よりも外側に位置し、外側領域R2の触感が内側領域R1よりも硬い。このため、外側領域R2において第1ピン51が頭髪を持ち上げて起こし、内側領域R1においては、外側領域R2において起こされた頭髪の絡みをほぐし、更に外側領域R2において、起こされた頭髪の根元の頭皮に第1ピン51が強く接触して洗浄、マッサージ作用を付与する等、各領域R1,R2における異なるブラッシング作用を効果的に付与することができる。
【0049】
<実施例2>
次に、実施例2に係るヘアーブラシについて説明する。実施例2のヘアーブラシは、図15に示すように、ブラシ部220における外側領域R2が内側領域R1の周囲に設けられている点において、実施例1と相違する。他の構成は実施例1と同一であり、同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0050】
このようなブラシ部220を備えたヘアーブラシは、方向性の制約なく、受ける硬さの触感が異なる領域毎の作用を発揮させつつブラッシングを行うことができる。例えば、実施例1の構成の場合、上下方向にブラッシングを行うと、内側領域R1及び外側領域R2のいずれか一方しか接触しない部分が生じる。これに対し、ブラシ部220は、外側領域R2が内側領域R1の周囲全体に設けられているため、いずれの方向にブラッシングした場合でも内側領域R1と外側領域R2の両方を通過させることができる。このため、方向性の制約なく、各領域R1,R2における異なるブラッシング作用を付与することができる。
【0051】
本発明は上記記述及び図面によって説明した各実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1及び2では、接触部が非接触部の周囲に設けられている形態を例示したが、左右方向外側、上下方向外側等、接触部が非接触部のいずれか一方の方向の外側に設けられていてもよい。
(2)実施例1及び2では、非接触部にピンが立設されていない形態を例示したが、これは必須ではない。非接触部は、例えば、接触部におけるピンの長さよりも短いピンを有する等、先端が接触部における本体部の表面に最も近接したピンの先端よりも本体部の表面側に位置する形態のピンを有していてもよい。この場合、非接触部のピンは、ブラシ部を頭皮に接触させる際、接触部におけるピンが先端を頭皮に接触させたのち更に押し付けられて外側に倒されて先端部側面側が頭皮に接触するようになった場合において、頭皮に接触するものであってもよい。すなわち、非接触部にピンが設けられる場合、そのピンは、接触部におけるピンの先端部側面側が頭皮に接触するのを阻害しないものであることが好ましい。この場合、非接触部に設けられるピンは、例えば、接触部におけるピンが先端を頭皮に接触させたのち更に押し付けられて外側に倒されて先端部側面側が頭皮に接触するようになるまでは、頭皮に接触しない形態であることができる。非接触部に設けられるピンの先端位置は、例えば、接触部における本体部の表面に最も近接したピンを基準ピンとした場合に、この基準ピンの先端位置から基準ピンの長さの0.5倍以上離れた位置に配置されることができる。
(3)実施例1及び2では、複数のピンが立設し、受ける硬さの触感が異なる複数の領域を有するブラシ部を例示したが、これは必須ではない。ブラシ部は、例えば、受ける硬さの触感が同等の1つの領域のみを有する形態であってもよい。受ける硬さの触感が異なる複数の領域を有する場合、その数は3つ以上であってもよい。
(4)実施例1及び2では、本体部がハンドル及びブラシベースを有する形態を例示したが、これは必須ではない。本体部は、ハンドル及びブラシベースに相当する部分が予め一体的に形成されたものであってもよい。また、把持部を有することも必須でない。本体部が把持部を有する場合、把持部の形状は湾曲状に限定されない。把持部の形状は、把持した際に持ちやすい形状であれば特に問わない。
(5)実施例1及び2では、ピンが本体部における植毛穴に植毛された形態を例示したが、これは必須ではない。ピンは、本体部に植毛されたものに限らず、本体部と一体成形されたものであってもよい。
(6)実施例1及び2では、仮想面Vを凹状に形成するにあたり、本体部の表面としてのブラシベース40の前面40Aを凹状に形成するとともに、複数のピンとしての第1ピン51をブラシベース40の前面40Aから同じ長さで立設する形態を例示したが、これは必須ではない。仮想面Vを凹状に設ける形態としては、各ピンの長さを異ならせることによるものでもよい。この場合、本体部の表面を凹状に形成することなく、凹状の仮想面を実現できる。すなわち、本発明に係る「本体部の表面」は、平坦な面であってもよいし、ピンの突出方向に凸状に形成されていてもよい。
(7)実施例1及び2では、受ける硬さの触感を異ならせる形態として、ピンの太さ及び材質を領域毎に異ならせる形態を例示したが、これは必須ではない。受ける硬さの触感を異ならせる形態としては、ピンの太さ、材質に加えて、例えば、単位面積当たりのピンの数やピンの長さ等を領域毎に異ならせる形態であってもよいし、これらを2以上組み合わせた形態としてもよい。また、例えば、上記各実施例において例示した第2ピンのように、本発明に係る複数のピンよりも本体部の表面からの突出長さが短い他のピンを設けることによっても、受ける硬さの触感を異ならせることができる。この場合、例えば、本発明に係るピンの突出長さと他のピンにおける突出長さとの差を変化させることによって、受ける硬さの触感を容易に調整することができる。
(8)本発明に係る複数のピンよりも本体部の表面からの突出長さが短い他のピンを設ける場合、その突出長さは、例えば、本発明に係る複数のピンの突出長さの0.7倍から0.9倍程度の範囲であることができる。この範囲であれば第1ピンを頭皮に接触させて倒した際に第2ピンを頭皮に容易に接触させることができ、頭皮への密着度の向上を容易に実現できる。
(9)実施例1及び2では、本発明に係る本体部の表面を構成するブラシベースに貫通孔を形成し、その後方にイオンプレートを配置する形態を例示したが、イオンプレート配置形態としては、これは必須ではない。イオンプレートを配置する場合には、例えば、本体部の表面を陥没させた凹部を形成し、この凹部内に配置する形態としてもよい。また、例えば、イオンプレートを本体部の表面に直接的に配置してもよい。更に、イオンプレートに代えて又は併せて、イオン発生に寄与する物質を本体部やピンを構成する材料に直接含有させてもよい。
(10)本発明に係るヘアーブラシは、例えば、イオンプレートに代えて、他の機能を発揮する部材を備えていてもよい。他の機能部材としては、例えば、ツボ押し機能を有する突起状の機能部材や、ロゴ等の意匠性の向上機能を有する機能部材等が挙げられる。更に、機能部材を備える場合には、これらイオン発生機能、ツボ押し機能、及び意匠性向上機能等の異なる機能を2以上有する機能部材であってもよい。
【0052】
本発明に係るヘアーブラシの効果を実証するための実験をおこなった。実験では頭皮の洗浄実験を行った。実験は、本発明に係るヘアーブラシとして、上記実施例1と同等の構成のヘアーブラシを用いて行った。また、比較例として、手洗いによる頭皮洗浄と比較した。各実験では、頭皮の試験部位に皮脂と不純物とを混合した疑似汚れを予め付着させ、それぞれの方法で1分間洗浄を行い、マイクロスコープを用いて頭皮の状態を観察した。結果を図16に示す。
【0053】
図16に示すように、洗浄前の状態を示す(A)には、頭皮に疑似汚れが付着した状態が見てとれる。比較例である手洗い後の状態を示す(B)では、疑似汚れのある程度の消失が見てとれるが、丸印や矢印で示す部分等において洗い残しが生じてしまっている。特に、(B)においては、頭皮における頭髪の基端部(毛穴近傍)に洗い残しの疑似汚れが多い。この点について、手洗いでは、頭髪基端部における頭皮に指先が接触できていないことを示していると考える。
【0054】
これに対し、本発明に係るヘアーブラシを用いた洗浄後の状態を示す(C)では、頭皮における頭髪の基端部を含め、疑似汚れの付着が見られなかった。これは、ピンが頭皮に好適に接触し、頭皮に付着した疑似汚れを掻き出しているためと考える。すなわち、本発明に係るヘアーブラシは、各ピンの先端が頭皮に良好に密着できていると考える。
【0055】
本発明に係るヘアーブラシの使用感に関する官能評価を行った。官能評価は、上記実施例1と同様の構成のヘアーブラシを用いて洗髪した後、(1)頭皮の爽快感、(2)髪のまとまり感、(3)髪のサラサラ感のそれぞれについて3段階で評価した。評価は、ヘアーブラシを1週間使用した48人の被験者が行った。結果を図17に示す。これによれば、本発明に係るヘアーブラシは、(1)から(3)のいずれの項目についても80%以上の被検者が効果を実感できた。特に、(1)頭皮の爽快感、及び(2)髪のまとまりについては、90%以上の被検者が効果を実感できている。
【符号の説明】
【0056】
1…ヘアーブラシ
10…本体部
20,220…ブラシ部
21…非接触部
22…接触部
51…第1ピン(ピン)
R1…内側領域
R2…外側領域
V…仮想面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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