(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163565
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B27N 3/00 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
B27N3/00 C
B27N3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068574
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
【テーマコード(参考)】
2B260
【Fターム(参考)】
2B260AA20
2B260BA01
2B260BA05
2B260BA15
2B260BA18
2B260BA19
2B260CB01
2B260CD03
2B260CD04
2B260CD06
2B260DA07
2B260DA18
2B260DC20
2B260DD03
2B260EA05
2B260EC08
(57)【要約】
【課題】本発明は、シックハウス症候群の原因となる有害物質を含まず。実用的な機械強度と耐水性とを備えた木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係る木質基材20は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、熱可塑性樹脂組成物12と、を含み、木質基材20は、スキン層21、コア層22、スキン層21を順次備え、スキン層21の密度をρs、コア層22の密度をρcとする場合、ρs/ρcが1.0以上2.4以下の範囲内であり、ρsとρcそれぞれが0.5g/cm
3以上1.2g/cm
3以下の範囲内であることを要旨とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、を含む木質基材であって、
前記木質基材は、スキン層、コア層、スキン層を順次備え、
前記スキン層の密度をρs、前記コア層の密度をρcとする場合、ρs/ρcが1.0以上2.4以下の範囲内であり、ρsとρcそれぞれが0.5g/cm3以上1.2g/cm3以下の範囲内であることを特徴とする木質基材。
【請求項2】
前記各スキン層と前記コア層のそれぞれに対して、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから、下記式(1)を用いて算出される規格化C-H面積が0.07以上1.00以下の範囲内であり、
前記スキン層の規格化C-H面積をAS、前記コア層の規格化C-H面積をACとする場合、AS>ACであることを特徴とする請求項1に記載の木質基材。
規格化C-H面積=SC-H/(SO―H+SC-OH) ・・・式(1)
(ここで、式(1)において、SC-Hは波数2700cm-1以上3000cm-1以下の領域におけるCH2基、CH3基のいずれかに由来するピークの面積値、SO-Hは波数3000cm-1以上3500cm-1以下の領域におけるOH基に由来するピークの面積値、SC-OHは波数900cm-1以上1200cm-1以下の領域におけるC-OH基に由来するピークの面積値を示す。)
【請求項3】
前記スキン層、前記コア層、前記スキン層における各層の厚さの比(スキン層:コア層:スキン層)が、1:0.1:1~1:18:1の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の木質基材。
【請求項4】
前記スキン層の厚さが、2mm以上19mm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項5】
前記各スキン層と前記コア層のそれぞれは、前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~70/30の範囲内であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項6】
前記木質材料が、菌床を原料に含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物が、ポリオレフィン樹脂を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物が、酸変性ポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の木質基材に、意匠性基材が積層されてなることを特徴とする化粧材。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の木質基材を製造する木質基材の製造方法であって、
粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物とを混合して、木質基材の原料混合物を得る工程と、
前記原料混合物を加熱加圧して、木質基材を形成することを特徴とする木質基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木質基材、化粧材及び木質基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材は、木粉、木質チップ、木質繊維などの木質材料を接着剤と混合したものを加熱加圧成形して得られる基材である。この木質基材は、木質材料の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
木質基材の接着剤としては、従来、尿素樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、またはフェノール樹脂系接着剤が、ホルムアルデヒドを含む硬化剤とともに用いられていた。ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の原因となる有害物質であるため、木質基材からの放散が問題となり、放散量低減のための各種施策が検討されている。しかしながら、従来技術では、ホルムアルデヒドの放散を完全に抑制することは困難であった。
【0003】
これに対し、従来、ホルムアルデヒドを含まない接着剤として、粉体の糖類と粉体のポリカルボン酸とを主成分とする接着剤を用い、これを植物繊維と混合し加熱加圧成形することで繊維ボードを製造する方法が提案されていた(特許文献1の段落[0017]参照)。また、ホルムアルデヒドを含まない接着剤として、従来、ポリビニルアルコールと水とからなる接着剤を用いた木質基材を含む積層体の製造方法が提案されていた(特許文献2の段落[0017]、及び
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-55620号公報
【特許文献2】特許第5553279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の接着剤を用いた木質基材は、曲げ強度などの機械特性や耐水性が実用上十分なものではなかった。
そこで、本発明は、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制し、且つ実用的な機械強度と耐水性とを備えた木質基材、その木質基材を備えた化粧材及びその木質基材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る木質基材は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物と、を含む木質基材であって、前記木質基材は、スキン層、コア層、スキン層を順次備え、前記スキン層の密度をρs、前記コア層の密度をρcとする場合、ρs/ρcが1.0以上2.4以下の範囲内であり、ρsとρcそれぞれが0.5g/cm3以上1.2g/cm3以下の範囲内であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記各スキン層と前記コア層のそれぞれに対して、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから、下記式(1)を用いて算出される規格化C-H面積が0.07以上1.00以下の範囲内であり、前記スキン層の規格化C-H面積をAS、前記コア層の規格化C-H面積をACとする場合、AS>ACであることを特徴とする。
規格化C-H面積=SC-H/(SO―H+SC-OH) ・・・式(1)
(ここで、式(1)において、SC-Hは波数2700cm-1以上3000cm-1以下の領域におけるCH2基、CH3基のいずれかに由来するピークの面積値、SO-Hは波数3000cm-1以上3500cm-1以下の領域におけるOH基に由来するピークの面積値、SC-OHは波数900cm-1以上1200cm-1以下の領域におけるC-OH基に由来するピークの面積値を示す。)
【0008】
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記スキン層、前記コア層、前記スキン層における各層の厚さの比(スキン層:コア層:スキン層)が、1:0.1:1~1:18:1の範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記スキン層の厚さが、2mm以上19mm以下の範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記各スキン層と前記コア層のそれぞれは、前記木質材料と、前記熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)が、95/5~70/30の範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、菌床を原料に含むことを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィン樹脂を含むことを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記熱可塑性樹脂組成物が酸変性ポリオレフィンを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る化粧材は、上述した木質基材に、意匠性基材が積層されてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係る木質基材の製造方法は、上述の木質基材を製造する木質基材の製造方法であって、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料と、熱可塑性樹脂組成物とを混合して、木質基材の原料混合物を得る工程と、前記原料混合物を加熱加圧して、木質基材を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制し、且つ実用的な機械強度と耐水性とを備えた木質基材、その木質基材を備えた化粧材及びその木質基材の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る木質基材の製造方法を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る木質基材の構造を示す概略断面図である。
【
図3】一般的な木質材料の赤外吸光スペクトルである。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る木質基材の赤外吸光スペクトルである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る化粧材の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
[第1実施形態]
図1に、本発明の実施形態に係る木質基材の製造方法を説明するための模式図を示す。また、
図2には、本発明の第1実施形態に係る木質基材20が示されている。木質基材20は、木質材料11の種類などによりパーティクルボードや中密度繊維板などと称され、床や壁などの下地材、建具や家具など幅広い用途で使用されている。
木質基材20は、
図1に示すように、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物12とを含む原料混合物10を加熱加圧して形成される。なお、木質基材20には、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質は含まれていない。よって、木質基材20内部からのホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制することができる。
【0015】
以下、本実施形態に係る木質基材20の構成について詳しく説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る木質基材20は、木質基材20の表面及び裏面を構成するスキン層21と、スキン層21に挟まれるように、木質基材20の中心部に位置するコア層22とを備えている。つまり、本実施形態に係る木質基材20は、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12とを含んで形成されたスキン層21と、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12とを含んで形成されたコア層22とを備えている。なお、木質基材20において、スキン層21とコア層22とは互いに接していることが望ましい。
このように、本実施形態に係る木質基材20には、ホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質は含まれていない。よって、木質基材20内部からのホルムアルデヒド等のシックハウス症候群の原因となる有害物質の放散を抑制することができる。
以下、木質基材20を構成する各材料等について説明する。
【0016】
(木質基材20の密度)
木質基材20の密度は、スキン層21の密度をρs、コア層22の密度をρcとした場合、ρs/ρcが1.0以上2.4以下の範囲内であり、1.0以上2.0以下の範囲内が好ましく、1.0以上1.5以下の範囲内がさらに好ましい。ρs/ρcが2.4を超えた場合、スキン層21の重量が大きくなり基材変形が生じる可能性がある。ρs/ρcが1に満たない場合、スキン層21の強度が小さいため機械強度が不足する可能性がある。
また、スキン層21の密度ρsと、コア層22の密度ρcはそれぞれ0.5g/cm3以上1.2g/cm3以下の範囲内であり、0.6g/cm3以上1.1g/cm3以下の範囲内が好ましい。ρs及びρcがそれぞれ0.5g/cm3を満たさないと木質基材20としての十分な強度が足りなくなる可能性がある。
また、ρs及びρcがそれぞれ1.2g/cm3より大きいと木質基材20の重量が大き過ぎて、施工時の扱いが困難になる可能性がある。
【0017】
(木質材料11)
木質材料11は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有するものである。ここで、「粉体状」、「チップ状」には、サイズや形状の定義は一般に存在しない。本実施形態では、そのサイズ(平均粒径)が概ね数十ミクロン~数センチメートルの範囲にあるものをいう。本実施形態における木質材料11の平均粒径は、例えば、10μm以上3mm以下の範囲内であることが望ましい。
【0018】
木質材料11は、例えば、木粉、木質繊維、木材をチップ状に破砕したものが挙げられ、その原料としては、例えば、間伐材、オガ粉、廃木材などを用いることができる。
また、木質材料11は、木材以外でも、例えば、竹、麻、ヤシ繊維、クルミ殻など、木材と同様にセルロース成分を含むものであれば、その候補とすることができる。
【0019】
木質材料11の原料としては、例えば、キノコ栽培時に大量に発生する使用済み菌床が好適である。菌床は、キノコ栽培に用いる培地であり、木材チップやオガ粉にフスマや米ぬかなどの栄養分を混ぜたものである。菌床は、キノコ栽培後の国内で年間30万トン前後が廃棄されていると推定されバイオマスとして有望であるが、リサイクルが進んでいないのが現状である。
本実施形態において、菌床を木質材料11として使用する場合には、木質材料11全体の体積に占める菌床の割合は、1%以上100%以下の範囲内であればよく、好ましくは、50%以上100%以下の範囲内である。菌床の含有量が上記数値範囲内であれば、製造コストを通常の木質チップを用いた場合と比較して低減することができる。
【0020】
(木質材料11の製造方法)
例えば、廃木材から木質材料11を得ようとした場合、コンクリート片、金属片、紙類などの異物が多く含まれている。異物は、例えば、磁力選別、風力選別、比重選別など、公知の方法で除去することができる。また、粗大粒子は切削、破砕など公知の方法でサイズを調整し、概ね数十ミクロン~数センチメートルの範囲にあるものを使用する。
さらに、菌床から木質材料11を得ようとした場合、公知の方法で滅菌処理をしてから使用することが望ましい。
【0021】
(木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比)
木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)は、スキン層21及びコア層22のそれぞれにおいて、95/5~70/30の範囲内であることが望ましい。
木質材料11の含有量が、上記した数値(95/5)より大きくなると、木質基材20に十分な曲げ強度(機械強度)を付与することができない。一方、木質材料11の含有量が、上記した数値(70/30)より小さくなると、加熱加圧時に木質基材20の変形が生じやすくなり好ましくない。
木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)は、スキン層21及びコア層22のそれぞれにおいて、85/15~70/30の範囲がより望ましい。木質材料11の含有量を上記数値範囲内にすることで、より曲げ強度の大きな木質基材20を得ることができる。
【0022】
木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)は、スキン層21の方がコア層22より熱可塑性樹脂組成物10の割合を増やすことが望ましい。熱可塑性樹脂組成物10の割合を増やすことでスキン層21(特に、木質基材20の表層を構成するスキン層21)の耐水性が向上する。また、例えば、スキン層21における熱可塑性樹脂組成物10の含有量は、コア層22における熱可塑性樹脂組成物10の含有量の1倍超2倍以下の範囲であれば望ましく、1.3倍以上1.8倍以下の範囲であればより望ましい。
【0023】
(熱可塑性樹脂組成物12)
熱可塑性樹脂組成物12は、その平均粒径が数十ミクロン~1ミリメートルの粉体状の組成物である。熱可塑性樹脂組成物12の粒径は特に限定されないが、木質材料11と混合する上で同程度の粒径の方が混合し易く望ましい。熱可塑性樹脂組成物12の粒径が小さ過ぎると木質材料11をすり抜けて下部に堆積し、大き過ぎると木質材料11の上部に堆積し、不均一な木質基材20となるため望ましくない。そのため、熱可塑性樹脂組成物12の粒径(平均粒径)は、1~5ミリメートルの範囲内がより望ましい。なお、熱可塑性樹脂組成物12の粒径(平均粒径)は、取り扱いの容易さ等を考慮すると、30ミクロン(μm)以上300ミクロン(μm)以下の範囲内が望ましい。
熱可塑性樹脂組成物12は、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、エチレンビニルアセテート、シリコーンゴムなど各種用いることができるが、木質基材20の機械強度と耐水性の点でポリエチレンが好適である。
本実施形態において使用可能なポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン以外に、例えば、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂等、或いはこれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物12は、単独で用いてもよいが複数の種類を混合して用いてもよい。木質基材20の機械強度の点では、熱可塑性樹脂組成物12全体の質量100質量部に対し、50質量部以上100質量部以下の範囲内でポリオレフィン樹脂等を含むことが望ましい。より望ましくは80質量部以上100質量部以下の範囲内でポリオレフィン樹脂等を含むことが望ましい。
熱可塑性樹脂組成物12に添加するポリエチレンは、特に限定されるものでなく、高密度ポリエチレン(比重が0.92~0.96程度のポリエチレン)、低密度ポリエチレン(比重が0.91~0.92程度のポリエチレン)、超低密度ポリエチレン(比重が0.9に満たない程度のポリエチレン)、直鎖状低密度ポリエチレン(比重が0.94に満たない程度のポリエチレン)など既存の材料から、加熱加圧時の反応性や原料混合物10の流動性などを考慮し適宜選択して用いられる。上述した材料の中でも、曲げ強度の大きな木質基材20を得るためには、高密度ポリエチレンを使用することがより好ましい。
【0024】
本実施形態で用いられるポリエチレンは、バイオマス由来のポリエチレンであってもよい。バイオマス由来のポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含まないものであってもよい。
【0025】
熱可塑性樹脂組成物12は単体でもよいが、公知の熱可塑性樹脂組成物12を混合して用いることができる。熱可塑性樹脂組成物12に混合する材料としては、特に限定されないが、例えば、酸変性樹脂、有機過酸化物が挙げられる。
【0026】
(酸変性樹脂)
酸変性樹脂は、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との接着性を向上するために用いられる。
酸含有樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレンや無水マレイン酸ポリプロレンなど無水マレイン酸変性ポリオレフィン、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、または無水イタコン酸変性ポリエチレンなどを用いることができる。上述した材料の中でも、セルロースを含む木質材料11との馴染み易さ(接着性の観点)から、酸含有樹脂としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンが好ましく、無水マレイン酸変性ポリエチレンがさらに好ましい。
【0027】
(酸変性樹脂の添加量)
酸含有樹脂の添加量は、全熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して5質量部以上50質量部以下の範囲内が好ましく、10質量部以上40質量部以下の範囲内がさらに好ましい。
酸含有樹脂の添加量が5質量部に満たないと、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との接着性が不足するため、木質基材20に十分な強度を付与することができない。また、酸含有樹脂の添加量が50質量部を超えると木質基材20の強度が低下する場合が多いため好ましくない。
なお、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との接着性が不足した状態では、木質材料11を構成する木質チップ等の表面全体を熱可塑性樹脂組成物12で覆うことができていないため、木質材料11内に侵入した水分によって木質基材20全体が吸水膨張し、木質基材20全体の耐水性が低下する。
【0028】
(有機過酸化物)
熱可塑性樹脂組成物12は、有機過酸化物をさらに含んでいてもよい。
有機過酸化物は、原料混合物10の加熱加圧工程において、熱可塑性樹脂組成物12に含まれる熱可塑性樹脂同士をラジカル架橋するために用いてもよい。また、酸含有樹脂にラジカル架橋性を有する材料を用いれば、熱可塑性樹脂組成物12に有機過酸化物を添加することで、酸含有樹脂と熱可塑性樹脂とに架橋を生じさせることができる。熱可塑性樹脂同士、または酸含有樹脂と熱可塑性樹脂との間にラジカル架橋が形成されると、その架橋構造により、木質基材20全体の機械強度が向上する。
【0029】
有機過酸化物は、特に限定されるものではなく、例えば、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルなどの既存材料から、反応性や安定性を考慮し適宜選択して用いられる。また、有機過酸化物は、ラジカル架橋剤の一種で有り、例えば、ヒドロペルオキシド類、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシジカルボナート類、ペルオキシエステル類、ペルオキシカルボナート類、ジアルキルペルオキシド類、ケトンペルオキシド類などがある。
【0030】
(有機過酸化物の添加量)
有機過酸化物の添加量は、全熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下の範囲内が好ましい。
有機過酸化物の添加量が0.01質量部に満たないと、原料混合物10の加熱加圧時の反応性が不足するため、木質基材20の強度向上に寄与しない。また、有機過酸化物の添加量が5質量部を超えると反応時の分解生成物が多くなり、木質基材20の変形の原因になる場合があるため好ましくない。
さらに、熱可塑性樹脂組成物12に有機過酸化物を添加することで、熱可塑性樹脂組成物12に含まれる熱可塑性樹脂と、酸含有樹脂と、木質材料11との間にラジカル架橋による3次元ネットワーク(結合)を形成することが可能となる。これにより、木質基材20全体の機械強度が向上する。
【0031】
(添加剤)
熱可塑性樹脂組成物12には、ワックスのような添加剤を混合してもよい。添加剤としてワックスを添加することで木質基材20の耐水性がさらに向上する。また、ワックスのような添加剤は、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12、あるいは複数の種類の熱可塑性樹脂組成物12を均一に混合させる潤滑剤としての役割もある。
【0032】
(熱可塑性樹脂組成物12の製造方法)
熱可塑性樹脂組成物12は、各種公知の方法で作製することが可能である。
例えば、混合時に加熱し、粒子状の熱可塑性樹脂組成物12同士を溶着させてもよい。但し、粒子が150μmより大きくなると粒子数が減少し、表面積が小さくなるため木質材料11との均一に混合することが困難になるので望ましくない。
また、熱可塑性樹脂組成物12は、公知の方法で作製された樹脂ペレットを、機械粉砕や凍結粉砕など公知の方法で粉体化することも可能である。樹脂ペレットと粉体とが混在する熱可塑性樹脂組成物を混合する場合、樹脂ペレットと粉体とを混合してから粉砕してもよいし、粉砕してから混合してもよい。例えば、ポリエチレンの粉体と酸変性ポリオレフィンの粉体とを混合すれば、熱可塑性樹脂組成物12を粉砕する際に凍結粉砕のような処理は不要であり、容易に熱可塑性樹脂組成物12の粉体を得ることができる。
【0033】
熱可塑性樹脂組成物12は、例えば一軸混錬機やバッチ式混錬機を用いて、複数の種類の熱可塑性樹脂ペレットを加熱混錬後、機械粉砕や凍結粉砕などの方法で粉体化することができる。例えば、ポリエチレンのペレットと酸変性ポリオレフィンのペレットとを一軸混錬押出機で加熱混錬後にペレット化し、混錬されたペレットを凍結粉砕することで熱可塑性樹脂組成物12の粉体を得ることができる。つまり、押出法によって、複数の種類の熱可塑性樹脂組成物12を混錬して熱可塑性樹脂組成物12の粉体を得てもよい。また、複数の種類の粉体状の熱可塑性樹脂組成物12を混合することで、熱可塑性樹脂組成物12をより均一に混合することができるので、曲げ強度の面内均一性に優れた木質基材20を得ることができる。
【0034】
(木質基材20)
木質基材20は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物12と、を含む原料混合物10を加熱加圧して形成される。こうして形成された木質基材20は、
図2に示すように、スキン層21とコア層22とを少なくとも一層ずつ有する複層構成である。ここで、スキン層21は耐水性を備えた層である。このスキン層21を設けることで、コア層22における吸水が低減され、木質基材20全体が膨張し変形するのを防止することができる。
なお、木質基材20の表裏から水分の吸収が同時に起こると考えられる場合、膨潤による木質基材20の反りが問題になるので、
図2に示すような、木質基材20の表裏に同じ性質を有するスキン層21を持つ3層構成とするのが望ましい。
木質基材20の厚みは、5mm以上40mm以下の範囲内が望ましい。木質基材20の厚さが5mmより薄い場合は、木質基材20の曲げ強度が弱く(低く)、実用的でない。また、木質基材20の厚さが40mmより厚い場合は、木質基材20の重量が重くて施工作業時に扱いづらくなる。
なお、木質基材20の一方の面(例えば表面)におけるスキン層21の厚さは、木質基材20の他方の面(例えば裏面)におけるスキン層21の厚さに比べて厚くてもよいし、薄くてもよい。また、木質基材20の一方の面(例えば表面)におけるスキン層21の厚さと、木質基材20の他方の面(例えば裏面)におけるスキン層21の厚さとは、同じであってもよい。
【0035】
木質基材20を構成するスキン層21及びコア層22の厚さはそれぞれ2mm以上であることが望ましい。スキン層21及びコア層22の各厚さが2mmより薄いと薄すぎて均一なスキン層21及びコア層22を作製することが困難となる。
図2に示すように、木質基材20の表裏にスキン層21を有する3層構成とする場合、スキン層21とコア層22の厚さの比率(スキン層21:コア層22)は、1:0.1~1:18の範囲内であることが望ましい。つまり、
図2に示すように、木質基材20が、スキン層21、コア層22、スキン層21を順次備えた構成である場合には、各層の厚さの比(スキン層21:コア層22:スキン層21)は、1:0.1:1~1:18:1の範囲内であることが望ましい。
また、スキン層21とコア層22とを足し合わせた木質基材20全体の厚さは40mm以下が望ましいので、スキン層21は19mm以下であることが望ましい。
【0036】
木質基材20を構成するスキン層21及びコア層22は、後述する、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるスキン層21の規格化C-H面積をAS、コア層22の規格化C-H面積をACとする場合、AS>ACになるように調整することが望ましい。各規格化C-H面積の大きさは、定性的には、スキン層21及びコア層22にそれぞれ添加された熱可塑性樹脂組成物12の成分量(含有量比)に比例する。そのため、コア層22における熱可塑性樹脂組成物12の成分量(含有量比)を、スキン層21における熱可塑性樹脂組成物12の成分量(含有量比)と同じにしても本願の課題は解決し得る。しかしながら、その場合には、コア層22における熱可塑性樹脂組成物12の成分量(含有量比)が必要以上に多くなる(大きくなる)ため、製造コストが高騰する可能性がある。そこで、熱可塑性樹脂組成物12の成分量(含有量比)を、AS>ACになるように調整することで、機械強度と耐水性の両方の機能を維持しつつ、製造コストを下げることができる。
【0037】
ここで、フーリエ型赤外分光測定に関して説明する。まず、赤外分光測定とは、2.5μm~25μmの波長の光である赤外光が、物質の分子の振動や回転運動に基づいて、当該物質に吸収される量に変化が生じるという原理を利用して、当該物質に吸収された赤外光を測定することにより、物質の化学構造や状態に関する情報を得る測定方法である。具体的な測定方法は、物質に対して光源から赤外光を照射し、分割された透過光と反射光とを合成することで干渉波を発生させて、当該干渉波の信号強度から各波数成分の光の強度を算出することにより赤外スペクトルを測定する。特に、本実施形態においては、当該干渉波の算出をフーリエ変換法を用いて行い、赤外スペクトルを測定する方式であるフーリエ型赤外分光測定により測定を行った。上記方法によって得られた波数を横軸、測定された吸光度(または透過率)を縦軸にプロットしたグラフを赤外吸光スペクトル(または赤外透過スペクトル)といい、物質ごとに固有のパターンが認められる。この時、縦軸の吸光度は、物質の濃度や厚み、結晶性物質の場合には結晶質部または非晶質部の量に比例して所定の波数におけるピーク強度の値が変化するため、当該ピークの高さや面積から定量分析を行うことも可能である。
【0038】
図3に、例として、一般的な木質材料11単体の赤外吸光スペクトルを示す。木質材料11はセルロースに由来するOH基のピークが波数3000cm
-1以上3500cm
-1以下の領域に、C-OH基のピークが波数900cm
-1以上1200cm
-1以下の領域にそれぞれ強く存在する。ピークの面積値はそれぞれS
O-H、S
C-OHと標記し、破線で示すベースラインをバックグラウンドとして補正している。つまり、
図3に示す実線と破線で囲まれた各範囲を、OH基及びC-OH基の各ピークの面積値とする。
なお、本実施形態では、各ピークの面積値は、同一サンプル内の10箇所の異なる測定位置で測定して得た値を平均化した値を用いた。
【0039】
図4に、本実施形態の木質基材20の赤外吸光スペクトルの一例を示す。木質材料11に由来するピークに加え、熱可塑性樹脂組成物12に由来するCH
2基、CH
3基のピークが波数2700cm
-1以上3000cm
-1以下の領域に強く存在する。そのピークの面積値はS
C-Hと標記し、破線で示すベースラインをバックグラウンドとして補正している。つまり、
図4に示す実線と破線で囲まれた各範囲を、OH基、C-OH基、及びCH
2基とCH
3基の各ピークの面積値とする。
【0040】
各ピークの面積値から、下記式(1)を用いて算出された、スキン層21の規格化C-H面積AS及びコア層22の規格化C-H面積Acが0.07以上1.00以下の範囲内になるように調整することが望ましい。具体的には、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12との含有量比を調整して、規格化C-H面積AS及び規格化C-H面積Acの値をそれぞれ調整する。
規格化C-H面積=SC-H/(SO―H+SC-OH) ・・・式(1)
規格化C-H面積積AS及び規格化C-H面積Acがそれぞれ0.07未満の場合、木質材料11の割合が高すぎて実用上必要な曲げ強度や耐水性を付与することが困難となる。一方、規格化C-H面積AS及び規格化C-H面積Acがそれぞれ1.00を超える場合、熱可塑性樹脂組成物12の割合が高すぎて、加熱加圧時に木質基材20の変形が生じやすくなり、好ましくない。また、木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12が均一に混合されていないと、局所的に規格化C-H面積AS及び規格化C-H面積Acがそれぞれ1.00より大きくなることがある。木質材料11と熱可塑性樹脂組成物12とが均一に混合されていないと、木質基材20の曲げ強度や耐水性にバラツキが生じ、好ましくない。
【0041】
スキン層21の規格化C-H面積AS及びコア層22の規格化C-H面積Acは、それぞれ0.08以上0.35以下の範囲内であることが、より望ましい。各規格化C-H面積が上記数値範囲内であれば、曲げ強度がより強く、より耐水性が向上し、木質基材20の変形が生じにくい良好な木質基材20を得ることが可能となる。
また、規格化C-H面積ASと規格化C-H面積Acとの面積比(AS/Ac)は、1超4以下の範囲内が望ましく、1.5以上3以下の範囲内がより望ましい。この規格化C-H面積比(AS/Ac)が上記数値範囲内であれば、木質基材20全体に優れた耐水性を付与しつつ、コア層22に添加する熱可塑性樹脂組成物12の添加量を必要最低限にすることができるため、製造コストを下げることができる。
【0042】
(木質基材20の製造条件)
木質基材20を製造する際に用いられる加熱加圧の方法は、各種公知の方法を用いることができるが、木質基材20の製造には、
図1に示すような枠型を用いたプレス成型が好適である。加熱温度は通常は120℃以上250℃以下の範囲内であり、熱可塑性樹脂組成物12の融点以上であることが必要であるが、加熱温度が250℃を超えると木質材料11の熱劣化が顕著に生じる場合がある。加圧圧力は、通常は10kgf/cm
2以上400kgf/cm
2以下の範囲内であり、所望する木質基材20の密度により適宜設定した値を用いる。
【0043】
図1に、本発明の実施形態に係る木質基材の製造方法を説明するための模式図を示す。所定の大きさ(例えば10cm×10cmの正方形)にくり抜かれた収容部を備えた木質基材作製用ジグ1の底面に金属板2を敷き、その上に離型性金属板3を重ねる。
次に、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物12とを含む原料混合物10を木質基材作製用ジグ1の収容部内に入れ、その原料混合物10上に離型性金属板3を乗せる。
次に、厚さ調整用金属板7を木質基材作製用ジグ1の上に乗せ、離型性金属板3を介して金属の錘8で原料混合物6の上部から原料混合物6を押さえる。
最後に、所定の条件に設定したプレス機天板9を原料混合物6の上部から金属の錘8を介して加熱加圧し、本実施形態に係るスキン層21を形成する。同様の方法で、別のスキン層21も形成する。
こうして、一対のスキン層21を形成した後、木質基材作製用ジグ1の底面に金属板2、離型性金属板3、スキン層21をこの順で重ねる。
次に、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物12とを含む原料混合物10を木質基材作製用ジグ1の収容部内に入れ、その原料混合物10上にスキン層21、離型性金属板3をこの順で乗せる。ここで、スキン層21で挟まれた原料混合物10が木質基材20におけるコア層22となる。
次に、厚さ調整用金属板7を木質基材作製用ジグ1の上に乗せ、スキン層21及び離型性金属板3を介して金属の錘8で原料混合物10の上部から原料混合物10を押さえる。
最後に、所定の条件に設定したプレス機天板9を原料混合物10の上部から金属の錘8を介して加熱加圧し、本実施形態に係る木質基材20を形成する。
【0044】
木質基材20を製造する際に、
図1のような離型性金属板3を用いてもよい。離型性金属板3の素材としては、離型性を備えたフィルムでもよいが木質基材20の平滑性が求められる場合、硬い素材の金属がより望ましい。離型性金属板3の素材としては、熱可塑性樹脂組成物12、金属板2及び金属の錘8と付着しない素材であればよく、例えば、フッ素コーティングされた素材が好適に用いられる。また、微細な金属粒子を離型性金属板3の表面に溶射して凹凸を施してもよい。離型性金属板3の表面に凹凸を形成することで離型性が向上する。また、離型性金属板3に凹凸構造とフッ素コーティングとを併用することで、さらに離型性を向上させることが可能となる。
【0045】
本実施形態では、離型性金属板3の代わりに、非粘着処理を施した金属板2または金属の錘8を用いてもよい。つまり、金属板2の表面または金属の錘8の表面は、熱可塑性樹脂組成物12と付着しない非粘着処理がされていてもよく、フッ素コーティングや溶射による凹凸構造が形成されていればより好適である。
【0046】
(変形例)
本実施形態では、木質基材20の製造方法に関して、最初に、加熱加圧してスキン層21を2枚作成し、その後、2枚のスキン層21でコア層22となる原料混合物10を挟んだ状態で再度加熱加圧して木質基材20を製造する方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、最初に、スキン層21となる原料混合物10と、コア層22となる原料混合物10と、スキン層21となる原料混合物10とをこの順に積層し、その後、2種3層の原料混合物10を同時に加熱加圧して木質基材20を製造してもよい。
このように、本実施形態に係る木質基材20の製造方法では、第1の加熱加圧工程でスキン層21を形成し、第2の加熱加圧工程でコア層22を形成してもよいし、第1の加熱加圧工程でスキン層21及びコア層22を形成してもよい。
【0047】
[第2実施形態]
図5を用いて第2実施形態について説明する。
第2実施形態の特徴は、先に
図2を用いて説明した第1実施形態に係る木質基材20に、意匠性を有する意匠層13を積層した化粧材14とした点である。
本実施形態によれば、木質基材20に意匠層13を積層することで、意匠性を付与することができる。
すなわち、木質基材20は、基材単独でも化粧材として実用に供することができるが、木質基材20にさらに優れた意匠性を付与するため、
図5に示すように絵柄などの意匠が付与された紙やフィルムなどの意匠層13を木質基材20に積層して化粧材14としてもよい。
【0048】
<作用その他>
(1)本実施形態の木質基材20は、粉体状及びチップ状の少なくとも一方の形状を有する木質材料11と、熱可塑性樹脂組成物12と、を含み、木質基材20は、スキン層21、コア層22、スキン層21を順次備え、スキン層21の密度をρs、コア層22の密度をρcとする場合、ρs/ρcが1.0以上2.4以下の範囲内であり、ρsとρcそれぞれが0.5g/cm3以上1.2g/cm3以下の範囲内である。
このような構成であれば、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの代わりに熱可塑性樹脂組成物12を接着剤として用いているため、有害物質の放散のない木質基材20を提供することができる。
また、ρs及びρcが上記数値範囲内であれば、曲げ強度がより強く、より耐水性が向上し、木質基材20の変形が生じにくい良好な木質基材20を得ることが可能となる。
【0049】
(2)本実施形態の木質基材20は、各スキン層21とコア層22のそれぞれに対して、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから、下記式(1)を用いて算出される規格化C-H面積が0.07以上1.00以下の範囲内であり、スキン層21の規格化C-H面積をAS、コア層22の規格化C-H面積をACとする場合、AS>ACであってもよい。
規格化C-H面積=SC-H/(SO―H+SC-OH) ・・・式(1)
ここで、式(1)において、SC-Hは波数2700cm-1以上3000cm-1以下の領域におけるCH2基、CH3基のいずれかに由来するピークの面積値、SO-Hは波数3000cm-1以上3500cm-1以下の領域におけるOH基に由来するピークの面積値、SC-OHは波数900cm-1以上1200cm-1以下の領域におけるC-OH基に由来するピークの面積値を示す。
このような構成であれば、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの代わりに熱可塑性樹脂組成物12を接着剤として用いているため、有害物質の放散のない木質基材20を提供することができる。
また、規格化C-H面積AS、ACが上記数値範囲内であれば、曲げ強度がより強く、より耐水性が向上し、木質基材20の変形が生じにくい良好な木質基材20を得ることが可能となる。
【0050】
(3)本実施形態の木質基材20は、スキン層21、コア層22、スキン層21における各層の厚さの比(スキン層:コア層:スキン層)が、1:0.1:1~1:18:1の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、多層構成であるため、曲げ強度と耐水性の良好な木質基材20を提供することができる。
【0051】
(4)本実施形態の木質基材20は、スキン層21の厚さが2mm以上19mm以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、スキン層21として十分に機能し、且つ、木質基材20全体の厚さが厚くなり過ぎず、施工時の作業性も問題のない木質基材20を提供することができる。
【0052】
(5)本実施形態の木質基材20は、各スキン層21とコア層22のそれぞれは、木質材料11と、熱可塑性樹脂組成物12との質量比(木質材料11/熱可塑性樹脂組成物12)が95/5~70/30の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、より曲げ強度が強い木質基材20を確実に提供することができる。
【0053】
(6)本実施形態の木質基材20は、木質材料11が菌床を原料として含んでいてもよい。
このような構成であれば、環境負荷の低減において有益な木質基材20を提供することができる。
【0054】
(7)本実施形態の木質基材20は、熱可塑性樹脂組成物12がポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。
このような構成であれば、曲げ強度と耐水性が共に良好な木質基材20を提供することができる。また、バイオマス由来のポリエチレンを含んでいる場合、環境負荷の低減において有益な木質基材20を提供することができる。
【0055】
(8)本実施形態の木質基材20は、前記熱可塑性樹脂組成物12が酸変性ポリオレフィンを含んでいてもよい。
このような構成であれば、より曲げ強度の良好な木質基材20を提供することができる。
【0056】
(9)本実施形態の化粧材14は、本実施形態の木質基材20に意匠性を有する意匠性基材(意匠層13)を積層したものである。
このような構成であれば、従来の化粧材に比べて、曲げ強度や耐水性が良好な化粧材14を提供することができる。
【0057】
[実施例]
以下に、本発明の第1実施形態に係る木質基材の実施例1~23及び比較例1~5について説明する。なお、本発明は、下記の実施例1~23に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
実施例1の熱可塑性樹脂組成物は、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)ペレット単体である。この樹脂ペレットを機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
木質材料には、キノコ収穫後の菌床(平均粒径2mm)を洗浄、乾燥した材料を用いた。木質材料と熱可塑性樹脂組成物とを、質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)「85/15」で乾式混合することで、木質基材の原料混合物を得た。
この原料混合物をアルミ製の型枠に導入し、熱プレス装置で加熱加圧することで、厚さ4mmのスキン層を1枚得た(プレス条件:40kgf/cm2、200℃10分間、基材密度:0.8g/cm3)。これと同じ方法で4mmのスキン層をもう1枚得た後、2枚のスキン層の間に、コア層となる原料混合物を入れコア層の密度が0.8g/cm3となるよう調整し加熱加圧した。こうして、実施例1の、スキン層4mm、コア層4mm、スキン層4mmが順次積層された3層構成の木質基材を得た。
【0059】
(実施例2)
実施例2では、スキン層の密度を1.2g/cm3、コア層の密度を0.5g/cm3に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0060】
(実施例3)
実施例3では、スキン層の密度を0.5g/cm3、コア層の密度を0.5g/cm3に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0061】
(実施例4)
実施例4では、スキン層の密度を1.2g/cm3、コア層の密度を1.2g/cm3に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0062】
(実施例5)
実施例5では、スキン層の密度を0.9g/cm3、コア層の密度を0.75g/cm3に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0063】
(実施例6)
実施例6では、スキン層の厚みを2mm、コア層の厚みを5mmに変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0064】
(実施例7)
実施例7では、スキン層の厚みを2mm、コア層の厚みを36mmに変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0065】
(実施例8)
実施例8では、スキン層の厚みを19mm、コア層の厚みを2mmに変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0066】
(実施例9)
実施例9の熱可塑性樹脂組成物は、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)ペレット単体である。それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0067】
(実施例10)
実施例10の熱可塑性樹脂組成物は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)ペレット単体である。それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0068】
(実施例11)
実施例11の熱可塑性樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂(PP)ペレット単体である。それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0069】
(実施例12)
実施例12では、スキン層について木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「96/4」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0070】
(実施例13)
実施例13では、スキン層について木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「90/10」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0071】
(実施例14)
実施例14では、スキン層について木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「80/20」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0072】
(実施例15)
実施例15では、スキン層について木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「70/30」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0073】
(実施例16)
実施例16では、スキン層について木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「65/35」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0074】
(実施例17)
実施例17では、スキン層とコア層のそれぞれについて木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「70/30」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0075】
(実施例18)
実施例18では、スキン層とコア層のそれぞれについて木質材料と熱可塑性樹脂組成物との質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)を、実施例1の「85/15」から「65/35」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0076】
(実施例19)
実施例19の熱可塑性樹脂組成物の成分及び質量は、次の通りである。
(1)高密度ポリエチレン樹脂 97質量部
(2)酸変性ポリオレフィン 3質量部
上記(1)~(2)をバッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例19の木質基材を得た。
【0077】
(実施例20)
実施例20の熱可塑性樹脂組成物の成分及び質量は、次の通りである。
(1)高密度ポリエチレン樹脂 80質量部
(2)酸変性ポリオレフィン 20質量部
上記(1)~(2)をバッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例20の木質基材を得た。
【0078】
(実施例21)
実施例21の熱可塑性樹脂組成物の成分及び質量は、次の通りである。
(1)高密度ポリエチレン樹脂 60質量部
(2)酸変性ポリオレフィン 40質量部
上記(1)~(2)をバッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物を得た。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例21の木質基材を得た。
【0079】
(実施例22)
実施例22では、スキン層の厚みを2mm、コア層の厚みを40mmに変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0080】
(実施例23)
実施例23では、スキン層の厚みを20mm、コア層の厚みを2mmに変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0081】
(比較例1)
比較例1では、スキン層の密度を0.4g/cm3、コア層の密度を0.4g/cm3に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0082】
(比較例2)
比較例2では、スキン層の密度を1.3g/cm3、コア層の密度を1.3g/cm3に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0083】
(比較例3)
比較例3では、スキン層の密度を1.3g/cm3、コア層の密度を0.5g/cm3に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0084】
(比較例4)
比較例4では、スキン層の密度を0.5g/cm3、コア層の密度を1.2g/cm3に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で木質基材を得た。
【0085】
(比較例5)
比較例5では、所謂、パーティクルボードと同様の方法で木質基材を得た。
具体的には、ドラム式ブレンダーを用いて木質材料と接着剤を混合し、その混合物を、加圧や吸圧など外部からの力を加えることなく、自然の状態で落下させ散布する。接着剤にはユリア樹脂接着剤を使用し、木質材料と接着剤とを、質量比(木質材料/接着剤)「85/15」で混合した。次に、混合物を圧密成形することによって木質基材を得た。
【0086】
(木質基材の評価)
以上の実施例1~23、比較例1~5について、機械強度、耐水性、基材変形の評価を行った。なお、フーリエ型赤外分光測定については、下記の方法より測定した。
【0087】
(フーリエ型赤外分光測定)
フーリエ型赤外分光測定は、パーキンエルマー製フーリエ型赤外分光測定装置(Spectrum Spotlight400)を用い、4000cm-1から400cm-1の吸光スペクトルを得た。得られた吸光スペクトルから下記式(1)を用いて、スキン層及びコア層のそれぞれについて規格化C-C面積を算出する。
規格化C-H面積=SC-H/(SO―H+SC-OH) ・・・式(1)
ここで、式(1)において、SC-Hは波数2700cm-1以上3000cm-1以下の領域におけるCH2基、CH3基のいずれかに由来するピークの面積値、SO-Hは波数3000cm-1以上3500cm-1以下の領域におけるOH基に由来するピークの面積値、SC-OHは波数900cm-1以上1200cm-1以下の領域におけるC-OH基に由来するピークの面積値を示す。
【0088】
(機械強度)
機械強度は、JISA5908に準拠する方法で曲げ強度を測定した。測定値(単位:N/mm2)に対する機械強度の評価基準は当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
機械強度の評価基準は、次の通り、「◎」、「〇」、「△」、「×」の4段階で評価し、「◎」、「〇」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
◎:15以上(合格)
〇:13以上15未満(合格)
△:8以上13未満(合格)
×:8未満(不合格)
【0089】
(耐水性)
耐水性は、JISA5908に準拠する方法で吸水厚さ膨潤率を測定した。測定値(単位:%)に対する耐水性の評価基準は当該JISの規格値を踏まえ、以下とした。
耐水性の評価基準は、次の通り、「◎」、「〇」、「△」、「×」の4段階で評価し、「◎」、「〇」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
◎:5未満(合格)
〇:5以上8未満(合格)
△:8以上12未満(合格)
×:12以上(不合格)
【0090】
(基材変形)
基材変形とは、基材表面が部分的に膨れた状態であり、主にプレス中に基材内部で発生するガスの滞留により発生する。基材変形は基材端部の状態により如実に反映されるため、基材端部の外観を目視評価した。
基材変形の評価基準は、次の通り、「〇」、「△」、「×」の3段階で評価し、「〇」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
〇:空隙なし(合格)
△:痕跡程度の空隙あり(合格)
×:空隙あり(不合格)
【0091】
(評価結果)
木質基材の評価結果は、次の表1の通りである。
なお、表中の実施例1~23及び比較例1~4における「原料配合比」は(木質材料/熱可塑性樹脂組成物)質量比を示し、表中の比較例5における「原料配合比」は(木質材料/接着剤)質量比を示す。
【0092】
【0093】
(機械強度の評価結果)
機械強度が不合格なものは、比較例1、4の2件であり、スキン層の密度が低かったためと考えられる。また、実施例1~23、比較例2、3を比較すると、評価結果に「△」を含むのは、実施例3、8~13、21、23の9件である。実施例3は、コア層、スキン層の密度が低かったためと考えられる。実施例8、23は、コア層がスキン層より極端に薄く、機械強度が低下したと考えられる。実施例9~11ではベース樹脂にそれぞれLDPE、LLDPE、PPを用いているため、HDPEと比べて機械強度が低下したと考えられる。実施例12~13ではスキン層における木質材料の割合が多く、機械強度が低下したと考えられる。実施例21では酸変性ポリオレフィンを40部配合しているもので、ベース樹脂の含有量が相対的に少なくなったため機械強度が低下したと考えられる。
【0094】
(耐水性の評価結果)
耐水性が不合格なものは、比較例5だけであった。接着剤を用いる従来の方法では本発明の実施例1~23に比べて耐水性に劣る。実施例1~23、比較例1~4を比較すると、「△」を含むのは、実施例1~13、22~23、比較例1~4の19件である。
実施例1~13、22~23や比較例1~4は酸変性ポリオレフィンを含有しない材料処方であり、また、熱可塑性樹脂組成物も15部以下のため、耐水性が不十分であったと考えられる。実施例19~21は実施例1と比較すると、酸変性ポリオレフィンを含有しているため耐水性が向上していると考えられる。実施例14~16はスキン層のみ熱可塑性樹脂組成物の割合を20部、30部、35部と増やした実施例であるが、表裏面からの水分の吸収を抑えられるため耐水性は向上した。しかし、コア層の耐水性は悪いため、コア層も熱可塑性樹脂組成物の割合を30部、35部と増やした実施例17、18よりは耐水性は劣る。
【0095】
(基材変形の評価結果)
基材変形では、不合格となったものは比較例2、3だけであった。実施例1~23、比較例1、4、5が合格となった。その中で、評価結果に「△」を含むのは、実施例2、4、18である。
実施例2、4はスキン層のみ、もしくはスキン層とコア層の両層を密度1.2g/cm3としているためと考えられる。実施例18は、スキン層とコア層の両層の熱可塑性樹脂組成物を35部含有することで、熱可塑性樹脂組成物の含有量が相対的に多くなったため基材変形が起こりやすくなったと考えられる。
【0096】
(総合的な評価結果)
総合的な評価結果としては、実施例1~23は、全ての評価項目で「合格」であり、表1から明らかなように、本発明の木質基材は優れた機械強度と耐水性を有し、基材変形も問題ないことが示された。実施例22、23は木質基材の厚さが40mmを超えているため、木質基材が重く作業性が悪化するが、実用上差支えない範囲であった。
【符号の説明】
【0097】
1…木質基材作製用ジグ、2……金属板(底面)、3…離型性金属板、7…厚さ調整用金属板、8…金属の錘、9…プレス機天板、10…原料混合物、11…木質材料、12…熱可塑性樹脂組成物、13…意匠層、14…化粧材、20…木質基材、21…スキン層、22…コア層