(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163568
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】排滓システム、排滓システムのガイダンス生成方法、排滓システムの自動制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F27D 3/15 20060101AFI20221019BHJP
F27D 21/02 20060101ALI20221019BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20221019BHJP
B22D 43/00 20060101ALI20221019BHJP
C21C 7/00 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
F27D3/15 Z
F27D21/02
F27D19/00 Z
B22D43/00 D
C21C7/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068578
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】征矢 勝秀
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 務
(72)【発明者】
【氏名】赤木 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】北野 遼
【テーマコード(参考)】
4E014
4K013
4K055
4K056
【Fターム(参考)】
4E014NA09
4K013CF03
4K055AA04
4K055LA02
4K055LA23
4K055LA27
4K056AA05
4K056CA02
4K056FA10
4K056FA24
(57)【要約】
【課題】復S量および溶銑ロス量を抑制した排滓を実現する。
【解決手段】排滓システムは、溶融金属を収容する容器と、容器を傾動する第1アクチュエータと、容器の傾斜角を検出する第1検出部と、容器内の溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、オペレータの操作を受け付ける操作部と、操作部が受け付けた操作に応じて第1アクチュエータと第2アクチュエータとを制御する制御部と、容器内の溶融金属の表面を撮像する撮像部と、容器内の溶融金属の表面の画像に基づいて容器内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、オペレータの操作のガイダンスを生成するガイダンス生成部と、ガイダンスを出力するガイダンス出力部とを備え、ガイダンス生成部は、学習モデル部とAIモデル部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を収容する容器と、
前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、
前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、
前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、
前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、
オペレータの操作を受け付ける操作部と、
前記操作部が受け付けた操作に応じて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、
前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成するガイダンス生成部と、
前記ガイダンス生成部によって生成されたガイダンスを出力するガイダンス出力部とを備える排滓システムであって、
前記ガイダンス生成部は、
前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する学習モデル部と、
前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記学習モデル部によって算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成するAIモデル部とを備え、
前記学習モデル部は、
前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行い、
前記AIモデル部は、
前記操作部が受け付けた操作に応じて前記制御部が前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを修正する、
排滓システム。
【請求項2】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習において用いられる前記教師データを構成する排滓実績には、除滓後のスラグ残留量が含まれる、
請求項1に記載の排滓システム。
【請求項3】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習において用いられる前記教師データを構成する排滓実績には、復S量と溶銑ロス量とが含まれる、
請求項1に記載の排滓システム。
【請求項4】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習では、
前記復S量が復S量閾値より小さく、前記溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値より小さい排滓実績と、前記復S量が前記復S量閾値より小さく、前記溶銑ロス量が前記溶銑ロス量閾値より小さい排滓実績が得られたときの前記排滓システムの過去の操業データとの組が、前記教師データの正解データとして用いられ、
前記復S量が前記復S量閾値以上であるか、あるいは、前記溶銑ロス量が前記溶銑ロス量閾値以上である排滓実績と、前記復S量が前記復S量閾値以上であるか、あるいは、前記溶銑ロス量が前記溶銑ロス量閾値以上である排滓実績が得られたときの前記排滓システムの過去の操業データとの組が、前記教師データの不正解データとして用いられる、
請求項3に記載の排滓システム。
【請求項5】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習において用いられる前記教師データを構成する前記排滓システムの過去の操業データには、前記容器および前記スラグ除去部材の動きに関するデータが含まれる、
請求項1に記載の排滓システム。
【請求項6】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習において用いられる前記教師データを構成する前記排滓システムの過去の操業データには、前記排滓システムによって扱われる前記溶融金属および前記溶融金属の表面から除去されるスラグに関するデータが含まれる、
請求項1に記載の排滓システム。
【請求項7】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習において用いられる前記教師データを構成する前記排滓システムの過去の操業データには、前記スラグ除去部材の形状に関するデータが含まれる、
請求項1に記載の排滓システム。
【請求項8】
前記排滓システムによって扱われる前記溶融金属および前記溶融金属の表面から除去されるスラグに関するデータと、前記スラグ除去部材の形状に関するデータとが、前記学習モデル部の入力層に設定され、
前記容器および前記スラグ除去部材の動きの予測と、排滓実績の予測とが、前記学習モデル部の出力層に設定される、
請求項1に記載の排滓システム。
【請求項9】
前記第1アクチュエータには、
前記容器の傾斜角を調節する機能を有する傾動装置と、
前記容器と前記傾動装置とを支持して移動可能な容器台車とが含まれ、
前記第1検出部には、
前記容器の傾斜角を検出する容器傾斜角度計と、
前記容器台車の位置を検出する容器台車位置検出装置とが含まれる、
請求項1に記載の排滓システム。
【請求項10】
前記スラグ除去部材には、
掻き板と、
前記掻き板が先端に装着されたアームとが含まれ、
前記第2アクチュエータには、
前記アームを鉛直方向または旋回方向に移動させるシリンダと、
前記アームを水平方向に移動させる走行台車とが含まれ、
前記第2検出部には、
前記シリンダのストローク量を検出するリニアエンコーダと、
前記走行台車の車輪の回転数を検出するロータリーエンコーダと、
前記アームの画像を撮像するアーム撮像カメラと、
前記アーム撮像カメラによって撮像された前記アームの画像に基づいて、前記掻き板の座標を算出する掻き板座標計算部とが含まれる、
請求項1に記載の排滓システム。
【請求項11】
前記制御部には、
前記操作部が受け付けた操作に応じて前記第1アクチュエータを制御する傾動装置制御部と、
前記操作部が受け付けた操作に応じて前記第2アクチュエータを制御する排滓装置制御部とが含まれる、
請求項1に記載の排滓システム。
【請求項12】
溶融金属を収容する容器と、
前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、
前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、
前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、
前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、
オペレータの操作を受け付ける操作部と、
前記操作部が受け付けた操作に応じて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、
前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成するガイダンス生成部と、
前記ガイダンス生成部によって生成されたガイダンスを出力するガイダンス出力部とを備える排滓システムのガイダンス生成方法あって、
前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する算出ステップと、
前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記算出ステップにおいて算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成する生成ステップと、
前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行う学習ステップと、
前記操作部が受け付けた操作に応じて前記制御部が前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを修正する修正ステップとを備える、
排滓システムのガイダンス生成方法。
【請求項13】
前記算出ステップにおいて算出される前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールには、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づくことなく、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータが動作する時間帯と、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータが動作する時間帯とが含まれる、
請求項12に記載の排滓システムのガイダンス生成方法。
【請求項14】
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づかない前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作は、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づく前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作よりも先に実行される、
請求項13に記載の排滓システムのガイダンス生成方法。
【請求項15】
溶融金属を収容する容器と、
前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、
前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、
前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、
前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、
オペレータの操作を受け付ける操作部と、
前記操作部が受け付けた操作に応じて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、
前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成するガイダンス生成部と、
前記ガイダンス生成部によって生成されたガイダンスを出力するガイダンス出力部とを備える排滓システムに搭載されたコンピュータに、
前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する算出ステップと、
前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記算出ステップにおいて算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成する生成ステップと、
前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行う学習ステップと、
前記操作部が受け付けた操作に応じて前記制御部が前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを修正する修正ステップとを実行させるためのプログラム。
【請求項16】
溶融金属を収容する容器と、
前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、
前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、
前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、
前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、
前記制御部による前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成する制御スケジュール生成部とを備える排滓システムであって、
前記制御スケジュール生成部は、
前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する学習モデル部と、
前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記学習モデル部によって算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成するAIモデル部とを備え、
前記学習モデル部は、
前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行い、
前記AIモデル部は、
前記制御部が前記学習モデル部によって生成された制御スケジュールに基づいて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを修正する、
排滓システム。
【請求項17】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習において用いられる前記教師データを構成する排滓実績には、除滓後のスラグ残留量が含まれる、
請求項16に記載の排滓システム。
【請求項18】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習において用いられる前記教師データを構成する排滓実績には、復S量と溶銑ロス量とが含まれる、
請求項16に記載の排滓システム。
【請求項19】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習では、
前記復S量が復S量閾値より小さく、前記溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値より小さい排滓実績と、前記復S量が前記復S量閾値より小さく、前記溶銑ロス量が前記溶銑ロス量閾値より小さい排滓実績が得られたときの前記排滓システムの過去の操業データとの組が、前記教師データの正解データとして用いられ、
前記復S量が前記復S量閾値より小さいか、あるいは、前記溶銑ロス量が前記溶銑ロス量閾値より小さい排滓実績と、前記復S量が前記復S量閾値より小さいか、あるいは、前記溶銑ロス量が前記溶銑ロス量閾値より小さい排滓実績が得られたときの前記排滓システムの過去の操業データとの組が、前記教師データの不正解データとして用いられる、
請求項18に記載の排滓システム。
【請求項20】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習において用いられる前記教師データを構成する前記排滓システムの過去の操業データには、前記容器および前記スラグ除去部材の動きに関するデータが含まれる、
請求項16に記載の排滓システム。
【請求項21】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習において用いられる前記教師データを構成する前記排滓システムの過去の操業データには、前記排滓システムによって扱われる前記溶融金属および前記溶融金属の表面から除去されるスラグに関するデータが含まれる、
請求項16に記載の排滓システム。
【請求項22】
前記学習モデル部によって行われる前記教師あり学習において用いられる前記教師データを構成する前記排滓システムの過去の操業データには、前記スラグ除去部材の形状に関するデータが含まれる、
請求項16に記載の排滓システム。
【請求項23】
前記排滓システムによって扱われる前記溶融金属および前記溶融金属の表面から除去されるスラグに関するデータと、前記スラグ除去部材の形状に関するデータとが、前記学習モデル部の入力層に設定され、
前記容器および前記スラグ除去部材の動きの予測と、排滓実績の予測とが、前記学習モデル部の出力層に設定される、
請求項16に記載の排滓システム。
【請求項24】
排滓動作経過時間と、排滓後スラグ残留量と、溶銑ロスの発生の有無と、前記スラグ除去部材の浸漬位置と、前記容器の傾斜角と、前記スラグ除去部材の掻き出し速度とが、前記AIモデル部の入力層に設定される、
請求項16に記載の排滓システム。
【請求項25】
前記制御部が前記学習モデル部によって生成された制御スケジュールに基づいて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータには、前記AIモデル部によって取得される前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグ残留量が含まれ、
前記AIモデル部によって取得される前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグ残留量は、前記重量分布算出部によって算出されたものである、
請求項16に記載の排滓システム。
【請求項26】
前記第1アクチュエータには、
前記容器の傾斜角を調節する機能を有する傾動装置と、
前記容器と前記傾動装置とを支持して移動可能な容器台車とが含まれ、
前記第1検出部には、
前記容器の傾斜角を検出する容器傾斜角度計と、
前記容器台車の位置を検出する容器台車位置検出装置とが含まれる、
請求項16に記載の排滓システム。
【請求項27】
前記スラグ除去部材には、
掻き板と、
前記掻き板が先端に装着されたアームとが含まれ、
前記第2アクチュエータには、
前記アームを鉛直方向または旋回方向に動かすシリンダと、
前記アームを水平方向に動かす走行台車とが含まれ、
前記第2検出部には、
前記シリンダのストローク量を検出するリニアエンコーダと、
前記走行台車の車輪の回転数を検出するロータリーエンコーダと、
前記アームの画像を撮像するアーム撮像カメラと、
前記アーム撮像カメラによって撮像された前記アームの画像に基づいて、前記掻き板の座標を算出する掻き板座標計算部とが含まれる、
請求項16に記載の排滓システム。
【請求項28】
前記制御部には、
前記第1アクチュエータを制御する傾動装置制御部と、
前記第2アクチュエータを制御する排滓装置制御部とが含まれる、
請求項16に記載の排滓システム。
【請求項29】
溶融金属を収容する容器と、
前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、
前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、
前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、
前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、
前記制御部による前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成する制御スケジュール生成部とを備える排滓システムの自動制御方法であって、
前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する算出ステップと、
前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記算出ステップにおいて算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成する生成ステップと、
前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行う学習ステップと、
前記制御部が前記生成ステップにおいて生成された制御スケジュールに基づいて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを修正する修正ステップとを備える、
排滓システムの自動制御方法。
【請求項30】
前記算出ステップにおいて算出される前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールには、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づくことなく、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータが動作する時間帯と、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータが動作する時間帯とが含まれる、
請求項29に記載の排滓システムの自動制御方法。
【請求項31】
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づかない前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作は、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づく前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作よりも先に実行される、
請求項30に記載の排滓システムの自動制御方法。
【請求項32】
溶融金属を収容する容器と、
前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、
前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、
前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、
前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、
前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、
前記制御部による前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成する制御スケジュール生成部とを備える排滓システムに搭載されたコンピュータに、
前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する算出ステップと、
前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記算出ステップにおいて算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成する生成ステップと、
前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行う学習ステップと、
前記制御部が前記生成ステップにおいて生成された制御スケジュールに基づいて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを修正する修正ステップとを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排滓システム、排滓システムのガイダンス生成方法、排滓システムの自動制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駆動機構と駆動機構によって操作される複数の作業ツールとを備える溶解作業装置について記載されている。特許文献1に記載された技術では、溶解により金属から分離した不純物等であるスラグが溶解炉から排出される。溶解作業装置は、溶解炉内で材料を溶解してできた溶湯に対して作業を行う。溶解作業装置は、ティーチペンダントと入力装置とを備えており、これらを用いて、溶解により金属から分離した不純物等であるスラグの除去などの様々な作業を実行する。
詳細には、特許文献1に記載された技術では、ティーチペンダントにより作成されたプログラムが、制御装置に格納されている。作業者は、ティーチペンダントを介して駆動機構を動作させてティーチングを行い、制御装置が、その動作を学習して記録することにより、駆動機構の動作が制御装置内に蓄積される。制御装置は、ティーチングにより学習した動作を再現すること等によって、駆動機構を駆動制御する。
ところで、特許文献1に記載された技術では、復S量が考慮されることなく、排滓動作の学習が行われる。そのため、特許文献1に記載された技術によっては、復S量および溶銑ロス量を抑制した排滓を実現することができない。
【0003】
特許文献2には、溶解炉内の溶湯(溶融金属)に生ずるノロ(金属酸化物等の不純物、スラグ)を除去する産業用ロボットについて記載されている。特許文献2に記載された技術では、産業用ロボットが、レーダによって測定された溶湯の湯面の高さ情報に基づいて、ハンド装置の作業位置を修正する。また、産業用ロボットは、溶湯のサンプリングを行い、ノロの荒取りを行い、溶解炉から溶湯を取り出す。
ところで、特許文献2に記載された技術では、復S量が考慮されることなく、ノロが除去される。そのため、特許文献2に記載された技術によっても、復S量および溶銑ロス量を抑制した排滓を実現することができない。
【0004】
特許文献3には、溶解炉内の溶解金属において発生するスラグを自動で除去する自動スラグ除去装置について記載されている。特許文献3に記載された技術では、撮影カメラが、溶解炉内の溶解金属の溶湯表面全体を所定角度から撮影し、アームは、溶解炉内のスラグを除去するために電子制御によって操作される。制御部は、撮影カメラで撮影した撮影画像データに基づいてスラグ除去が必要か否かを判断し、必要な場合のスラグ除去内容を決定し、決定された内容に基づいてアームを電子制御してスラグ除去処理を実行するための制御を行う。
詳細には、特許文献3に記載された技術では、撮影された画像に含まれる複数の領域のそれぞれに、スラグが発生しているか否かを判定し得るように、スラグが存在するか否かを表した正解データを用いることによって機械学習が行われる。
ところで、特許文献3に記載された技術では、復S量が考慮されることなく、機械学習およびスラグの除去が行われる。そのため、特許文献3に記載された技術によっても、復S量および溶銑ロス量を抑制した排滓を実現することができない。
【0005】
一般的な排滓作業では、排滓装置のオペレータが表示モニタあるいは直接肉眼で溶融金属の表面の様子を見ながら排滓装置を操作しており、排滓作業におけるスラグ除去率や溶銑歩留はオペレータの手腕に依存し易い。このため、習熟度の異なるオペレータの存在や操作環境の影響によって、スラグ除去率や溶銑歩留にバラツキが発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-105389号公報
【特許文献2】特開2018-179348号公報
【特許文献3】特開2020-085395号公報
【特許文献4】特開2020-112429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した点に鑑み、本発明は、復S量および溶銑ロス量を抑制した排滓を実現することができる排滓システム、排滓システムのガイダンス生成方法、排滓システムの自動制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、溶融金属を収容する容器と、前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、オペレータの操作を受け付ける操作部と、前記操作部が受け付けた操作に応じて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成するガイダンス生成部と、前記ガイダンス生成部によって生成されたガイダンスを出力するガイダンス出力部とを備える排滓システムであって、前記ガイダンス生成部は、前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する学習モデル部と、前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記学習モデル部によって算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成するAIモデル部とを備え、前記学習モデル部は、前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行い、前記AIモデル部は、前記操作部が受け付けた操作に応じて前記制御部が前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを修正する、排滓システムである。
【0009】
本発明の一態様は、溶融金属を収容する容器と、前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、オペレータの操作を受け付ける操作部と、前記操作部が受け付けた操作に応じて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成するガイダンス生成部と、前記ガイダンス生成部によって生成されたガイダンスを出力するガイダンス出力部とを備える排滓システムのガイダンス生成方法あって、前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する算出ステップと、前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記算出ステップにおいて算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成する生成ステップと、前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行う学習ステップと、前記操作部が受け付けた操作に応じて前記制御部が前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを修正する修正ステップとを備える、排滓システムのガイダンス生成方法である。
【0010】
本発明の一態様は、溶融金属を収容する容器と、前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、オペレータの操作を受け付ける操作部と、前記操作部が受け付けた操作に応じて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成するガイダンス生成部と、前記ガイダンス生成部によって生成されたガイダンスを出力するガイダンス出力部とを備える排滓システムに搭載されたコンピュータに、前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する算出ステップと、前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記算出ステップにおいて算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを生成する生成ステップと、前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行う学習ステップと、前記操作部が受け付けた操作に応じて前記制御部が前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記操作部に対する前記オペレータの操作のガイダンスを修正する修正ステップとを実行させるためのプログラムである。
【0011】
本発明の一態様は、溶融金属を収容する容器と、前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、前記制御部による前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成する制御スケジュール生成部とを備える排滓システムであって、前記制御スケジュール生成部は、前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する学習モデル部と、前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記学習モデル部によって算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成するAIモデル部とを備え、前記学習モデル部は、前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行い、前記AIモデル部は、前記制御部が前記学習モデル部によって生成された制御スケジュールに基づいて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを修正する、排滓システムである。
【0012】
本発明の一態様は、溶融金属を収容する容器と、前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、前記制御部による前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成する制御スケジュール生成部とを備える排滓システムの自動制御方法であって、前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する算出ステップと、前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記算出ステップにおいて算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成する生成ステップと、前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行う学習ステップと、前記制御部が前記生成ステップにおいて生成された制御スケジュールに基づいて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを修正する修正ステップとを備える、排滓システムの自動制御方法である。
【0013】
本発明の一態様は、溶融金属を収容する容器と、前記容器を少なくとも傾動する第1アクチュエータと、前記容器の少なくとも傾斜角を検出する第1検出部と、前記容器内の前記溶融金属の表面のスラグを除去するスラグ除去部材と、前記スラグ除去部材を動かす第2アクチュエータと、前記第2アクチュエータの変位量を検出する第2検出部と、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御する制御部と、前記容器内の前記溶融金属の表面を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された前記容器内の前記溶融金属の表面の画像に基づいて、前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する重量分布算出部と、前記制御部による前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成する制御スケジュール生成部とを備える排滓システムに搭載されたコンピュータに、前記スラグ除去部材によるスラグの除去が行われた後に前記容器内の前記溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、前記スラグ除去部材によるスラグの除去を行うための前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する算出ステップと、前記排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて前記算出ステップにおいて算出された前記排滓動作スケジュールを実現する前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを生成する生成ステップと、前記排滓システムの過去の操業データと、前記排滓システムの過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データとして教師あり学習を行う学習ステップと、前記制御部が前記生成ステップにおいて生成された制御スケジュールに基づいて前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを制御しているときに前記第1検出部と前記第2検出部と前記撮像部とによって得られるリアルタイムデータに基づいて、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータの制御スケジュールを修正する修正ステップとを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、復S量および溶銑ロス量を抑制した排滓を実現することができる排滓システム、排滓システムのガイダンス生成方法、排滓システムの自動制御方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の排滓システムの概要の一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態の排滓システムにおけるデータおよび制御信号の流れの一例を示す図である。
【
図3】第1実施形態の排滓システムにおけるデータおよび制御信号の流れを更に詳細に示す図である。
【
図4】学習モデル部によって行われる教師あり学習において用いられる教師データ(学習データ)を構成する排滓システムの排滓実績および排滓システムの過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)の一例を示す図である。
【
図5】学習モデル部によって行われる教師あり学習において教師データ(学習データ)として用いられる正解データおよび不正解データの一例等を示す図である。
【
図6】第1実施形態の排滓システムにおいて実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図6のステップS12における学習モデル部による処理などの一例を説明するための図である。
【
図8】溶銑の掻き出しが発生している時に撮像部によって撮像された画像の一例を示す図である。
【
図9】学習モデル部によって予測(算出)される排滓動作スケジュール(目的変数)に影響を与える可能性がある因子として第1実施形態の排滓システムにおいて考慮される因子の一例を示す図である。
【
図10】第1実施形態の排滓システムにおける排滓動作の一例を説明するための図である。
【
図11】第1実施形態の排滓システムにおける排滓動作の一例を説明するための図である。
【
図12】第2実施形態の排滓システムの概要の一例を示す図である。
【
図13】第2実施形態の排滓システムにおけるデータおよび制御信号の流れの一例を示す図である。
【
図14】第2実施形態の排滓システムにおけるデータおよび制御信号の流れを更に詳細に示す図である。
【
図15】第2実施形態の排滓システムにおいて実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図16】
図15のステップS29において行われる誤差の算出、パラメータ、式などの更新の処理などの一例を説明するための図である。
【
図17】
図15のステップS29において行われる誤差の算出、パラメータ、式などの更新の処理などの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の排滓システム、排滓システムのガイダンス生成方法、排滓システムの自動制御方法およびプログラムの実施形態について説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の排滓システム1の概要の一例を示す図である。
図2は第1実施形態の排滓システム1におけるデータおよび制御信号の流れの一例を示す図である。
図3は第1実施形態の排滓システム1におけるデータおよび制御信号の流れを更に詳細に示す図である。
図1~
図3に示す例では、排滓システム1が、容器1Aと、第1アクチュエータ1Bと、第1検出部1Cと、スラグ除去部材1Dと、第2アクチュエータ1Eと、第2検出部1Fと、操作部1Gと、制御部1Hと、撮像部1Iと、重量分布算出部1Jと、ガイダンス生成部1Kと、ガイダンス出力部1Lと、操業データベース1Mとを備えている。
容器1Aは、例えば特許文献4に記載された容器と同様に構成されており、溶融金属を収容する。
第1アクチュエータ1Bは、容器1Aの位置、姿勢などを変更する。第1アクチュエータ1Bには、傾動装置1B1と、容器台車1B2とが含まれる。傾動装置1B1は、傾動シリンダ1B11を備えており、傾動シリンダ1B11が作動することによって容器1Aの傾斜角を調節する機能を有する。容器台車1B2は、容器1Aと傾動装置1B1とを支持する。容器1Aの位置は、容器台車1B2が移動することによって変更可能である。
第1検出部1Cには、容器傾斜角度計1C1と、容器台車位置検出装置1C2とが含まれる。容器傾斜角度計1C1は、容器1Aの傾斜角を検出する。容器台車位置検出装置1C2は、容器台車1B2の位置を検出する。容器A1の位置は、容器台車位置検出装置1C2によって検出された容器台車1B2の位置を用いることにより、算出可能である。
【0018】
スラグ除去部材1Dは、容器1A内の溶融金属の表面のスラグを除去する。スラグ除去部材1Dには、掻き板1D1と、アーム1D2とが含まれる。掻き板1D1は、例えば特許文献4に記載された掻き板と同様に構成されている。アーム1D2は、例えば特許文献4に記載されたアームと同様に構成されている。掻き板1D1は、アーム1D2の先端に装着されている。
図1~
図3に示す例では、スラグ除去部材1Dが掻き板1D1とアーム1D2とを備えているが、他の例では、スラグ除去部材1Dが、特許文献1に記載されたスラグ除去ツールと同様に構成されていてもよい。更に他の例では、スラグ除去部材1Dが、特許文献2に記載されたノロ取り用ツールと同様に構成されていてもよい。
【0019】
図1~
図3に示す例では、第2アクチュエータ1Eが、スラグ除去部材1Dを動かす。第2アクチュエータ1Eには、シリンダ1E1と、走行台車1E2とが含まれる。シリンダ1E1には、昇降シリンダ1E11と、旋回シリンダ1E12とが含まれる。昇降シリンダ1E11は、アーム1D2を鉛直方向に動かす。旋回シリンダ1E12は、アーム1D2を旋回方向に動かす。走行台車1E2は、掻き板1D1が装着されたアーム1D2とシリンダ1E1とを支持する。走行台車1E2は、走行台車1E2の車輪を駆動するモータ1E21を備えており、モータ1E21が作動することによってアーム1D2等を水平方向に動かすことができる。
排滓装置は、スラグ除去部材1Dと第2アクチュエータ1Eとによって構成される。
第2検出部1Fは、第2アクチュエータ1Eの変位量を検出する。第2検出部1Fには、リニアエンコーダ1F1と、ロータリーエンコーダ1F2と、アーム撮像カメラ1F3と、掻き板座標計算部1F4とが含まれる。リニアエンコーダ1F1は、シリンダ1E1のストローク量を検出する。つまり、リニアエンコーダ1F1は、昇降シリンダ1E11のストローク量と、旋回シリンダ1E12のストローク量とを検出する。ロータリーエンコーダ1F2は、走行台車1E2の車輪の回転数を検出する。走行台車1E2の位置は、ロータリーエンコーダ1F2によって検出された走行台車1E2の車輪の回転数を用いることにより、算出可能である。アーム撮像カメラ1F3は、アーム1D2の画像を撮像する。掻き板座標計算部1F4は、アーム撮像カメラ1F3によって撮像されたアーム1D2の画像に基づいて、掻き板1D1の座標(位置)を算出する。
【0020】
操作部1Gは、オペレータの操作を受け付ける。
制御部1Hは、操作部1Gが受け付けた操作に応じて第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御する。制御部1Hには、傾動装置制御部1H1と、排滓装置制御部1H2とが含まれる。傾動装置制御部1H1は、操作部1Gが受け付けた操作に応じて第1アクチュエータ1Bを制御する。排滓装置制御部1H2は、操作部1Gが受け付けた操作に応じて第2アクチュエータ1Eを制御する。
撮像部1Iは、容器1A内の溶融金属の表面を撮像する。
重量分布算出部1Jは、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づいて、容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する。詳細には、重量分布算出部1Jは、例えば特許文献4の
図2に記載された技術を用いることによって、容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する。
【0021】
図1~
図3に示す例では、ガイダンス生成部1Kが、操作部1Gに対するオペレータの操作のガイダンスを生成する。ガイダンス生成部1Kは、学習モデル部1K1と、AIモデル部1K2と、掻き板状態量取得部1K3と、容器状態量取得部1K4と、湯面状態量取得部1K5と、排滓動作スケジュール取得部1K6と、排滓実績データベース1K7とを備えている。
図2に示す例では、ガイダンス生成部1Kに、アーム撮像カメラ1F3と、リニアエンコーダ1F1と、ロータリーエンコーダ1F2と、撮像部1Iと、容器傾斜角度計1C1とが接続されるのみならず、設定スイッチおよびプロセスコンピュータも接続されている。
図1~
図3に示す例では、学習モデル部1K1が、スラグ除去部材1Dによるスラグの除去が行われた後に容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、スラグ除去部材1Dによるスラグの除去を行うための第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する。
詳細には、学習モデル部1K1は、排滓システム1の過去の操業データと、排滓システム1の過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データ(学習データ)として教師あり学習を行う。
【0022】
図4は学習モデル部1K1によって行われる教師あり学習において用いられる教師データ(学習データ)を構成する排滓システム1の排滓実績および排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)の一例を示す図である。
図4に示す例では、学習モデル部1K1によって行われる教師あり学習において用いられる教師データ(学習データ)を構成する排滓システム1の排滓実績に、除滓後のスラグ残留量[t]と、復S量[×10
-3%]と、溶銑ロス量[t/ch]とが含まれる。
復S量[×10
-3%]は、下記の式によって算出される。
復S量[×10
-3%]=KR(Kanbara Reactor)後S-吹止最終S
溶銑ロス量[t/ch]は、下記の式によって算出される。
溶銑ロス量[t/ch]=装入量-(出鋼量-出鋼合金量)/転炉歩留
【0023】
図5は学習モデル部1K1によって行われる教師あり学習において教師データ(学習データ)として用いられる正解データおよび不正解データの一例等を示す図である。
図5の縦軸は復S量[×10
-3%]を示しており、
図5の横軸は溶銑ロス量[t/ch]を示している。
図5に示す例では、復S量が復S量閾値T1より小さく、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2より小さい排滓システム1の排滓実績と、復S量が復S量閾値T1より小さく、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2より小さい排滓システム1の排滓実績が得られたときの排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績(
図4参照))との組が、教師データ(学習データ)の正解データとして用いられる。
また、
図5に示す例では、復S量が復S量閾値T1以上であるか、あるいは、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2以上である排滓システム1の排滓実績と、復S量が復S量閾値T1以上であるか、あるいは、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2以上である排滓システム1の排滓実績が得られたときの排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)との組が、教師データ(学習データ)の不正解データとして用いられる。すなわち、
図5に示す例では、復S量が復S量閾値T1より小さく、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2以上である排滓システム1の排滓実績と、復S量が復S量閾値T1より小さく、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2以上である排滓システム1の排滓実績が得られたときの排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)との組が、教師データ(学習データ)の不正解データとして用いられる。また、復S量が復S量閾値T1以上であり、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2より小さい排滓システム1の排滓実績と、復S量が復S量閾値T1以上であり、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2より小さい排滓システム1の排滓実績が得られたときの排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)との組が、教師データ(学習データ)の不正解データとして用いられる。更に、復S量が復S量閾値T1以上であり、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2以上である排滓システム1の排滓実績と、復S量が復S量閾値T1以上であり、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2以上である排滓システム1の排滓実績が得られたときの排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)との組が、教師データ(学習データ)の不正解データとして用いられる。
【0024】
図4に示す例では、学習モデル部1K1によって行われる教師あり学習において用いられる教師データ(学習データ)を構成する排滓システム1の過去の操業データに、排滓システム1によって扱われる溶融金属および溶融金属の表面から除去されるスラグに関するデータ(
図4に「操業実績」で示す。)が含まれる。詳細には、排滓システム1によって扱われる溶融金属および溶融金属の表面から除去されるスラグに関するデータ(操業実績)には、「吹錬方法[-]」、「排滓レベル[-]」、「KR処理前排滓実績有無[-]」、「スラグ性状[-]」、「排滓前推定スラグ量[t]」、「排滓処理前溶銑温度[℃]」、「KR処理前排滓時間[min]」、「KR処理後C、Si、Mn、P、S[%]」、「KR処理剤投入量[t]」、「溶銑量[t]」が含まれる。
【0025】
吹錬方法[-]は、例えば「MURC(Multi refining Converter)(
図9参照)」、「LD-ORP(LD converter-Optimized Refining Process)(
図9参照)」等に分類される。
排滓レベル[-]は、例えば「S」、「A」、「B」、「C」(
図9参照)等に分類される。
「KR処理前排滓実績有無[-]」は、前排滓が行われるか否かを示す。
「スラグ性状[-]」は、例えば「硬い」、「柔い」、「粘い」(
図9参照)等に分類される。
排滓前推定スラグ量[t]は、例えば「0.5~1.0t」、「1.0~1.5t」、「1.5~2.0t」、「2.0~2.5t」、「2.5~3.0t」(
図9参照)等に分類される。
「排滓処理前溶銑温度[℃]」は、公知の手法を用いて取得される。
KR処理前排滓時間[min]は、KR処理前排滓が行われる場合におけるKR処理前排滓の開始から終了までの時間である。
KR処理後C、Si、Mn、P、S[%]は、KR処理後におけるC、Si、Mn、P、Sの含有量である。
KR処理剤投入量[t]は、使用されるKR処理剤の量である。
【0026】
また、
図4に示す例では、学習モデル部1K1によって行われる教師あり学習において用いられる教師データを構成する排滓システム1の過去の操業データに、スラグ除去部材1Dの形状に関するデータ等(
図4に「設備実績」で示す。)が含まれる。詳細には、スラグ除去部材1Dの形状に関するデータ等(設備実績)には、「掻き板1D1(ドラッガー)の形状[評点]」および「KRインペラの形状[使用回数]」が含まれる。
【0027】
また、
図4に示す例では、学習モデル部1K1によって行われる教師あり学習において用いられる教師データを構成する排滓システム1の過去の操業データに、容器1Aおよびスラグ除去部材1Dの動きに関するデータ等(
図4に「運転実績」で示す。)が含まれる。詳細には、容器1Aおよびスラグ除去部材1Dの動きに関するデータ等(運転実績)には、「KR処理後排滓時間[min]」、「排滓ステージNの処理パターン[-]」、「排滓ステージNの処理時間[min]」、「鍋(容器1A)の傾動角範囲[°]」、「掻き出し速度[回/min]」、「操作者[名前]」、「掻き出し中断時間割合[%]」および「不規則動作回数頻度[%]」が含まれる。
【0028】
「排滓ステージNの処理パターン[-]」の一例は、例えば「掻き出し1~20回目:鍋(容器1A)中央の排滓」、「掻き出し21~60回目:鍋(容器1A)周囲の排滓」、「掻き出し61~80回目:鍋(容器1A)の左右のスラグを掻き集めてまとめて排滓」、「掻き出し81~100回目:スラグ位置追従」である。
「鍋(容器1A)の傾動角範囲[°]」は、排滓動作の開始から終了までの時間における容器1Aの傾動角の範囲である。
「掻き出し速度[回/min]」は、1分間に掻き板1D1による掻き出しが行われる回数である。
「操作者[名前]」は、操作部1Gに対する操作を行うオペレータの名前である。
「掻き出し中断時間割合[%]」は、排滓動作の開始から終了までの時間に占める、掻き板1D1による掻き出しが行われていない時間の割合である。
【0029】
図1~
図3に示す例では、AIモデル部1K2が、排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて学習モデル部1K1によって算出された排滓動作スケジュールを実現する操作部1Gに対するオペレータの操作のガイダンスを生成する。
また、AIモデル部1K2は、操作部1Gが受け付けた操作に応じて制御部1Hが第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御しているときに第1検出部1Cと第2検出部1Fと撮像部1Iとによって得られるリアルタイムデータに基づいて、操作部1Gに対するオペレータの操作のガイダンスを修正する機能を有する。
【0030】
掻き板状態量取得部1K3は、掻き板座標計算部1F4によって算出された掻き板1D1の座標(位置)と、リニアエンコーダ1F1によって検出された昇降シリンダ1E11のストローク量および旋回シリンダ1E12のストローク量と、ロータリーエンコーダ1F2によって検出された走行台車1E2の車輪の回転数と、排滓装置制御部1H2による制御の対象の第2アクチュエータ1Eの状態とを、掻き板状態量として取得する。掻き板状態量取得部1K3によって掻き板状態量として取得されたデータは、AIモデル部1K2に送られる。
容器状態量取得部1K4は、容器傾斜角度計1C1によって検出された容器1Aの傾斜角と、傾動装置制御部1H1による制御の対象の第1アクチュエータ1Bの状態とを、容器状態量として取得する。容器状態量取得部1K4によって容器状態量として取得されたデータは、AIモデル部1K2に送られる。
湯面状態量取得部1K5は、重量分布算出部1Jによって算出された容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を湯面状態量として取得する。湯面状態量取得部1K5によって湯面状態量として取得されたデータは、AIモデル部1K2に送られる。
排滓動作スケジュール取得部1K6は、学習モデル部1K1によって算出された排滓動作スケジュールを取得する。排滓動作スケジュール取得部1K6によって取得された排滓動作スケジュールは、AIモデル部1K2に送られる。
排滓実績データベース1K7には、例えば
図4に示すような排滓システム1の排滓実績がデータとして格納されている。排滓実績データベース1K7に格納されている排滓システム1の排滓実績は、学習モデル部1K1に送られ、学習モデル部1K1において行われる教師あり学習に用いられる。
【0031】
ガイダンス出力部1Lは、ガイダンス生成部1Kによって生成されたガイダンスを出力する(
図2に示す例では、表示モニタに表示する)。
操業データベース1Mには、例えば
図4に示すような排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)が格納されている。操業データベース1Mに格納されている排滓システム1の過去の操業データは、学習モデル部1K1に送られ、学習モデル部1K1において行われる教師あり学習に用いられる。
【0032】
図6は第1実施形態の排滓システム1において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図6に示す例では、ステップS11Aにおいて、操業データベース1Mが、排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)(制約条件)を学習モデル部1K1に出力する。
また、ステップS11Aでは、排滓実績データベース1K7が、排滓システム1の排滓実績(制約条件)を学習モデル部1K1に出力する。
次いで、ステップS11Bでは、学習モデル部1K1が、排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)と、排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)が得られたときの排滓実績との組を教師データ(学習データ)として教師あり学習(学習モデルによる予測)を行う。
【0033】
次いで、ステップS12では、スラグ除去部材1Dによるスラグの除去が行われた後に容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値が、例えばオペレータ(排滓システム1の利用者)によって設定される。
他の例では、ステップS12において、学習モデル部1K1が、排滓後スラグ残留量の目標値を設定してもよい。
【0034】
図6に示す例では、ステップS12において、学習モデル部1K1が、設定された排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、スラグ除去部材1Dによるスラグの除去を行うための第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する。
【0035】
図7は
図6のステップS12における学習モデル部1K1による処理などの一例を説明するための図である。
図7に示す例では、
図4に示す「操業実績」と「設備実績」とが、学習モデル部1K1の入力層に設定される。また、
図4に示す「運転実績」の一部が、「運転実績予測」として学習モデル部1K1の出力層に設定されると共に、
図4に示す「設備実績」が、「設備実績予測」として学習モデル部1K1の出力層に設定される。
図7に示す除滓動作スケジュールの例において、「経過時間」は排滓システム1の除滓動作の開始時刻からの経過時間を示しており、「鍋傾動角」は容器1Aの傾斜角を示している。「掻出し回数」は各ステージにおける掻き板1D1の掻き出し回数を示している。「動作パターン」の各例は、上述した「排滓ステージNの処理パターン[-]」の各例に対応している。
図7に示す除滓動作スケジュールの例では、経過時間が0~2[min]の期間中(「ステージ1」の期間中)、第1アクチュエータ1Bの傾動装置1B1によって、容器1Aの傾斜角が30[°]に設定され、「掻出し回数」が20回に設定される。また、掻き板1D1の「動作パターン」が「鍋(容器1A)中央の排滓」になるように、スラグ除去部材1Dが、第2アクチュエータ1Eによって動かされる。
次いで、経過時間が2~6[min]の期間中(「ステージ2」の期間中)、第1アクチュエータ1Bの傾動装置1B1によって、容器1Aの傾斜角が30[°]に設定され、「掻出し回数」が40回に設定される。また、掻き板1D1の「動作パターン」が「鍋(容器1A)周囲の排滓」になるように、スラグ除去部材1Dが、第2アクチュエータ1Eによって動かされる。
次いで、経過時間が6~8[min]の期間中(「ステージ3」の期間中)、第1アクチュエータ1Bの傾動装置1B1によって、容器1Aの傾斜角が31[°]に設定され、「掻出し回数」が20回に設定される。また、掻き板1D1の「動作パターン」が「鍋(容器1A)の左右のスラグを掻き集めて排滓」になるように、スラグ除去部材1Dが、第2アクチュエータ1Eによって動かされる。
次いで、経過時間が8~10[min]の期間中、第1アクチュエータ1Bの傾動装置1B1によって、容器1Aの傾斜角が32[°]に設定され、「掻出し回数」が20回に設定される。また、掻き板1D1の「動作パターン」が「スラグ位置追従」になるように、スラグ除去部材1Dが、第2アクチュエータ1Eによって動かされる。
【0036】
つまり、
図7に示す例では、
図6のステップS12において算出される第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの動作のスケジュールに、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づくことなく、第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eが動作する時間帯(経過時間が0~6minの時間帯)と、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づいて、第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eが動作する時間帯(経過時間が6~10minの時間帯)とが含まれる。
【0037】
また、
図7に示す例では、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づかない第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの動作(経過時間が0~6minの時間帯の動作)は、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づく第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの動作(経過時間が6~10minの時間帯の動作)よりも先に実行される。
【0038】
図6に示す例では、次いで、ステップS13において、学習モデル部1K1が、ステップS12において算出された排滓動作スケジュールを出力し、排滓システム1の排滓動作が開始する。
【0039】
次いで、ステップS14では、ガイダンス生成部1Kが、ステップS13において出力された排滓動作スケジュールに基づいて、操作部1Gに対するオペレータの操作のガイダンスを生成する。つまり、ガイダンス生成部1Kは、ステップS12において設定された排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて算出された排滓動作スケジュールを実現する操作部1Gに対するオペレータの操作のガイダンスを生成する。
また、ステップS14では、ガイダンス出力部1Lが、ガイダンス生成部1Kによって生成されたガイダンスを出力する。
更に、ステップS14では、オペレータが、ガイダンス出力部1Lによって出力(例えば表示モニタに表示)されたガイダンスに従って、操作部1Gに対する入力操作を行う。
つまり、ステップS14では、操作部1Gが、ガイダンス出力部1Lによって出力されたガイダンスに従うオペレータの入力操作を受け付ける。
図7に示す例では、
図6のステップS14が最初に実行される時に、ガイダンス生成部1Kは、「経過時間」が0~2[min]の期間中の排滓動作スケジュールを実現する操作部1Gに対するオペレータの操作のガイダンスを生成する。操作部1Gは、容器1Aの傾斜角を30[°]に設定し、「掻出し回数」20回を実行するオペレータの操作、および、掻き板1D1の「動作パターン」として「鍋(容器1A)中央の排滓」を実行するオペレータの操作を受け付ける。
また、ガイダンス生成部1Kは、「経過時間」が2~6[min]の期間中の排滓動作スケジュールを実現する操作部1Gに対するオペレータの操作のガイダンスを生成する。操作部1Gは、容器1Aの傾斜角を30[°]に設定し、「掻出し回数」40回を実行するオペレータの操作、および、掻き板1D1の「動作パターン」として「鍋(容器1A)周囲の排滓」を実行するオペレータの操作を受け付ける。
【0040】
図6に示す例では、次いで、ステップS15において、AIモデル部1K2が、排滓の特徴量を掻き板状態量取得部1K3、容器状態量取得部1K4等から取得する。
また、ステップS15では、AIモデル部1K2が、湯面状態量(重量分布算出部1Jによって算出された容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布)を湯面状態量取得部1K5から取得する。つまり、AIモデル部1K2は、重量分布算出部1Jによって算出された容器1A内の溶融金属の表面のスラグ残留量を取得する。
次いで、ステップS16では、AIモデル部1K2は、ステップS15において取得された容器1A内の溶融金属の表面のスラグ残留量が、ステップS12において設定された排滓後スラグ残留量の目標値より少なくなったか否かを判定する。
更に、ステップS16では、AIモデル部1K2は、排滓システム1の排滓動作開始後の経過時間が制限時間を超過したか否かを判定する。
また、ステップS16では、AIモデル部1K2は、撮像部1Iによって撮像された画像に基づいて、溶銑の掻き出しが発生しているか否かを判定する。
【0041】
図8は溶銑の掻き出しが発生している時に撮像部1Iによって撮像された画像の一例を示す図である。
図8に示す例では、掻き出されるべきではない溶銑が掻き出されている状態(液垂れ状態)が、撮像部1Iによって撮像されている。
図8に示す画像(つまり、撮像部1Iによって撮像される画像)は、排滓の特徴評価に用いられる。撮像部1Iは、溶銑ロス監視部として機能する。
図6のステップS16の説明に戻り、スラグ残留量が排滓後スラグ残留量の目標値より少なくなった場合には、排滓システム1の排滓動作を終了し、ステップS18に進む。排滓システム1の排滓動作開始後の経過時間が制限時間を超過した場合にも、排滓システム1の排滓動作を終了し、ステップS18に進む。溶銑の掻き出しが発生した場合にも、排滓システム1の排滓動作を終了し、ステップS18に進む。
一方、スラグ残留量が排滓後スラグ残留量の目標値より少なくなっておらず、かつ、排滓システム1の排滓動作開始後の経過時間が制限時間を超過しておらず、かつ、溶銑の掻き出しが発生していない場合には、ステップS17に進む。
【0042】
ステップS17では、学習モデル部1K1は、操作部1Gが受け付けたオペレータの操作に応じて制御部1Hが第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御しているとき(例えば、ステップS14が最初に実行される時)に第1検出部1Cと第2検出部1Fと撮像部1Iとによって得られるリアルタイムデータに基づいて、操作部1Gに対するオペレータの操作のガイダンス(例えば、ステップS14が最初に実行される時にガイダンス生成部1Kによって生成されたガイダンス)を修正する。
詳細には、ステップS17において、学習モデル部1K1は、ステップS14が最初に実行される時に第1検出部1Cと第2検出部1Fと撮像部1Iとによって得られたリアルタイムデータ(実測値)と、ステップS14が最初に実行される時にガイダンス生成部1Kによって生成されたガイダンス(指示値)との誤差を算出する。
更に、ステップS17において、学習モデル部1K1は、ステップS14が2回目に実行される時にガイダンス生成部1Kがガイダンスを生成するために用いられるパラメータ、式などの修正を行う。
次いで、ステップS14に戻る。
2回目に実行されるステップS14では、ガイダンス生成部1Kが、ステップS17において修正されたパラメータ、式などに基づいて、操作部1Gに対するオペレータの操作のガイダンスを生成する。
図7に示す例では、
図6のステップS14が2回目に実行される時に、ガイダンス生成部1Kは、「経過時間」が6~8[min]の期間中の排滓動作スケジュールを実現する操作部1Gに対するオペレータの操作のガイダンスを生成する。操作部1Gは、容器1Aの傾斜角を31[°]に設定し、「掻出し回数」20回を実行するオペレータの操作、および、ガイダンス生成部1Kによって生成されたガイダンスに従って、鍋(容器1A)の左右のスラグを掻き集めて排滓するように掻き板1D1を動かすオペレータの操作を受け付ける。
また、
図7に示す例では、
図6のステップS16が2回目に実行される時にNOと判定され、
図6のステップS14が3回目に実行される時に、ガイダンス生成部1Kは、「経過時間」が8~10[min]の期間中の排滓動作スケジュールを実現する操作部1Gに対するオペレータの操作のガイダンスを生成する。操作部1Gは、容器1Aの傾斜角を32[°]に設定し、「掻出し回数」20回を実行するオペレータの操作、および、ガイダンス生成部1Kによって生成されたガイダンスに従って、スラグ位置に追従するように掻き板1D1を動かすオペレータの操作を受け付ける。
【0043】
ステップS18では、排滓実績データベース1K7が、ステップS16において排滓後スラグ残留量の目標値と比較された排滓後スラグ残留量を取得して格納する。
また、ステップS18では、操業データベース1Mが、排滓システム1の排滓動作の開始から終了までの操業実績、設備実績、運転実績を取得して格納する。
更に、ステップS18において、AIモデル部1K2は、オペレータの操作が、ガイダンス生成部1Kによって生成されたガイダンスどおりであったかを示すマッチング点数を算出し、ガイダンス出力部1Lは、AIモデル部1K2によって算出されたマッチング点数を出力する(例えば、表示モニタに表示する)。
【0044】
次いで、ステップS19では、学習モデル部1K1は、操作部1Gが受け付けたオペレータの操作に応じて制御部1Hが第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御しているとき(つまり、ステップS14が実行される時)に第1検出部1Cと第2検出部1Fと撮像部1Iとによって得られたリアルタイムデータに基づいて、リアルタイムデータ(実測値)とガイダンス生成部1Kによって生成されたガイダンス(指示値)との誤差を算出し、排滓システム1の排滓動作が次に行われる時にガイダンス生成部1Kがガイダンスを生成するために用いられるパラメータ、式などの更新を行う。
【0045】
図9は学習モデル部1K1によって予測(算出)される排滓動作スケジュール(目的変数)に影響を与える可能性がある因子として第1実施形態の排滓システム1において考慮される因子の一例を示す図である。
図9に示す例では、吹錬方法がMURCであるか、あるいは、LD-ORPであるかが考慮される。また、鋼種(除滓レベル)が「S」、「A」、「B」および「C」のいずれに分類されるかが考慮される。更に、前排滓が行われるか否かが考慮される。また、スラグ性状が硬いか、柔らかいか、あるいは、粘いかが考慮される。
また、
図9に示す例では、排滓前推定スラグ量が、0.5~1.0t、1.0~1.5t、1.5~2.0t、2.0~2.5tおよび2.5~3.0tのいずれに分類されるかが考慮される。
【0046】
図10および
図11は第1実施形態の排滓システム1における排滓動作の一例を説明するための図である。詳細には、
図10(A)は傾動装置1B1の動作のタイムチャートであり、
図10(B)は走行台車1E2の前進動作のタイムチャートであり、
図10(C)は走行台車1E2の後退動作のタイムチャートであり、
図10(D)は昇降シリンダ1E11がアーム1D2を上昇させる動作のタイムチャートであり、
図10(E)は昇降シリンダ1E11がアーム1D2を下降させる動作のタイムチャートであり、
図10(F)は旋回シリンダ1E12がアーム1D2を右旋回させる動作のタイムチャートであり、
図10(G)は旋回シリンダ1E12がアーム1D2を左旋回させる動作のタイムチャートであり、
図10(H)は容器傾斜角度計1C1によって検出される容器1Aの傾斜角のタイムチャートであり、
図10(I)は掻き板座標計算部1F4によって算出される掻き板1D1のx座標のタイムチャートであり、
図10(J)は掻き板座標計算部1F4によって算出される掻き板1D1のy座標のタイムチャートであり、
図10(K)は掻き板座標計算部1F4によって算出される掻き板1D1のz座標のタイムチャートである。
図11(A)は時刻t1における容器1A、掻き板1D1およびアーム1D2を鉛直方向の上側(z軸のプラス側)から見た図である。
図11(B)は時刻t1における容器1A、掻き板1D1およびアーム1D2を水平方向の右側(x軸のプラス側)から見た図である。
図11(C)は時刻t3における容器1A、掻き板1D1およびアーム1D2を鉛直方向の上側(z軸のプラス側)から見た図である。
図11(D)は時刻t3における容器1A、掻き板1D1およびアーム1D2を水平方向の右側(x軸のプラス側)から見た図である。
【0047】
図10および
図11に示す例では、時刻t1に、走行台車1E2の前進動作(y軸のプラス側への移動)が開始し、アーム1D2の左旋回が開始する。その結果、時刻t1に、掻き板1D1のx座標の値が減少し始め、掻き板1D1のy座標の値が増加し始める。
次いで、時刻t2に、アーム1D2の左旋回が終了する。その結果、時刻t2に、掻き板1D1のx座標の値の減少が終了する。
次いで、時刻t3に、走行台車1E2の前進動作(y軸のプラス側への移動)が終了する。その結果、時刻t3に、掻き板1D1のy座標の値の増加が終了する。
時刻t1から時刻t3までにおける掻き板1D1の軌跡は、
図11(A)および
図11(B)に破線で示すようになる。
また、時刻t3に、アーム1D2の下降が開始する。その結果、時刻t3に、掻き板1D1のz座標の値が減少し始める。
【0048】
次いで、時刻t4に、アーム1D2の下降が終了する。その結果、時刻t4に、掻き板1D1のz座標の値の減少が終了する。
また、時刻t4に、走行台車1E2の後退動作(y軸のマイナス側への移動)が開始し、アーム1D2の右旋回が開始する。その結果、時刻t4に、掻き板1D1のx座標の値が増加し始め、掻き板1D1のy座標の値が減少し始める。
次いで、時刻t5に、アーム1D2の右旋回が終了する。その結果、時刻t5に、掻き板1D1のx座標の値の増加が終了する。
次いで、時刻t6に、走行台車1E2の後退動作(y軸のマイナス側への移動)が終了する。その結果、時刻t6に、掻き板1D1のy座標の値の減少が終了する。
時刻t3から時刻t6までにおける掻き板1D1の軌跡は、
図11(C)および
図11(D)に破線で示すようになる。
【0049】
図10(A)に示すように、時刻t1~時刻t6の期間中、傾動装置1B1は、容器1Aの傾斜角を変更しない。そのため、
図10(H)に示すように、容器傾斜角度計1C1によって検出される容器1Aの傾斜角は一定値に維持される。
【0050】
操作者(オペレータ)の認知・判断によって排滓装置が操作される場合には、排滓効率(限られた時間の中でどれだけ多くのスラグを除去するか)や溶銑のロス量(溶銑の掻き出し量)の実績が操作者の習熟度や操作環境等に左右され、溶銑歩留や成分のバラツキが生じてしまうおそれがある。
そこで、第1実施形態の排滓システム1では、学習モデル部1K1が、排滓対象の溶融金属の過去の操業データと、過去の排滓実績のデータとを用いた解析(学習)を行うことにより、最適な排滓動作スケジュールを算出する。更に、AIモデル部1K2は、排滓動作が行われているときに得られるリアルタイムデータ(計装・画像データ)を用いて解析を行い、掻き板1D1の最適動作を予測する。学習モデル部1K1の算出結果およびAIモデル部1K2の予測結果は、オペレータの操作のガイダンスとして、ガイダンス出力部1Lによって出力(表示モニタに表示)される。
例えば、
図7に示す例では、排滓所要総時間が10分に決められる。10分のうちの排滓序盤の0~2分に、鍋(容器1A)中央の排滓が行われる。2~6分には、鍋(容器1A)周囲の排滓が行われる。6~8分には、鍋(容器1A)の左右のスラグを掻き集めてまとめて排滓が行われる。8~10分には、スラグ位置追従制御が行われる。
【0051】
<第2実施形態>
以下、本発明の排滓システム、排滓システムのガイダンス生成方法、排滓システムの自動制御方法およびプログラムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の排滓システム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の排滓システム1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の排滓システム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の排滓システム1と同様の効果を奏することができる。
【0052】
図12は第2実施形態の排滓システム1の概要の一例を示す図である。
図13は第2実施形態の排滓システム1におけるデータおよび制御信号の流れの一例を示す図である。
図14は第2実施形態の排滓システム1におけるデータおよび制御信号の流れを更に詳細に示す図である。
図12~
図14に示す例では、排滓システム1が、容器1Aと、第1アクチュエータ1Bと、第1検出部1Cと、スラグ除去部材1Dと、第2アクチュエータ1Eと、第2検出部1Fと、制御部1Hと、撮像部1Iと、重量分布算出部1Jと、制御スケジュール生成部1Nと、表示部1Pと、操業データベース1Mとを備えている。
つまり、
図1~
図3に示す例では、排滓システム1が、操作部1Gと、ガイダンス生成部1Kと、ガイダンス出力部1Lとを備えているが、
図12~
図14に示す例では、排滓システム1が、操作部1Gと、ガイダンス生成部1Kと、ガイダンス出力部1Lとを備えていない。
図12~
図14に示す例では、
図1~
図3に示す例と同様に、容器1Aが溶融金属を収容する。第1アクチュエータ1Bは、容器1Aの位置、姿勢などを変更する(つまり、容器1Aの傾動などを実行する)。第1アクチュエータ1Bには、容器1Aの傾斜角を調節する機能を有する傾動装置1B1と、容器1Aと傾動装置1B1とを支持して移動可能な容器台車1B2とが含まれる。第1検出部1Cは、容器1Aの傾斜角の検出などを実行する。第1検出部1Cには、容器1Aの傾斜角を検出する容器傾斜角度計1C1と、容器台車1B2の位置を検出する容器台車位置検出装置1C2とが含まれる。
【0053】
図12~
図14に示す例では、
図1~
図3に示す例と同様に、スラグ除去部材1Dが、容器1A内の溶融金属の表面のスラグを除去する。
図12~
図14に示す例では、スラグ除去部材1Dが、掻き板1D1と、掻き板1D1が先端に装着されたアーム1D2とを備えているが、他の例では、スラグ除去部材1Dが、特許文献1に記載されたスラグ除去ツールと同様に構成されていてもよい。更に他の例では、スラグ除去部材1Dが、特許文献2に記載されたノロ取り用ツールと同様に構成されていてもよい。
【0054】
図12~
図14に示す例では、
図1~
図3に示す例と同様に、第2アクチュエータ1Eがスラグ除去部材1Dを動かす。第2アクチュエータ1Eには、アーム1D2を鉛直方向または旋回方向に動かすシリンダ1E1と、アーム1D2を水平方向に動かす走行台車1E2とが含まれる。排滓装置は、スラグ除去部材1Dと第2アクチュエータ1Eとによって構成される。
第2検出部1Fは、第2アクチュエータ1Eの変位量を検出する。第2検出部1Fには、シリンダ1E1のストローク量を検出するリニアエンコーダ1F1と、走行台車1E2の車輪の回転数を検出するロータリーエンコーダ1F2と、アーム1D2の画像を撮像するアーム撮像カメラ1F3と、アーム撮像カメラ1F3によって撮像されたアーム1D2の画像に基づいて、掻き板1D1の座標を算出する掻き板座標計算部1F4とが含まれる。
【0055】
図1~
図3に示す例では、操作部1Gがオペレータの操作を受け付け、制御部1Hは、操作部1Gが受け付けた操作に応じて第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御する。
一方、
図12~
図14に示す例では、制御部1Hが、オペレータの操作の必要なく、第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを自律的に制御する。制御部1Hには、第1アクチュエータ1Bを制御する傾動装置制御部1H1と、第2アクチュエータ1Eを制御する排滓装置制御部1H2とが含まれる。
【0056】
図12~
図14に示す例では、
図1~
図3に示す例と同様に、撮像部1Iが容器1A内の溶融金属の表面を撮像する。重量分布算出部1Jは、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づいて、容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を算出する。
【0057】
図12~
図14に示す例では、制御スケジュール生成部1Nが、制御部1Hによる第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの制御スケジュールを生成する。制御スケジュール生成部1Nは、学習モデル部1N1と、AIモデル部1N2と、掻き板状態量取得部1N3と、容器状態量取得部1N4と、湯面状態量取得部1N5と、排滓動作スケジュール取得部1N6と、排滓実績データベース1N7とを備えている。
図13に示す例では、制御スケジュール生成部1Nに、アーム撮像カメラ1F3と、リニアエンコーダ1F1と、ロータリーエンコーダ1F2と、撮像部1Iと、容器傾斜角度計1C1とが接続されるのみならず、設定スイッチおよびプロセスコンピュータも接続されている。
図12~
図14に示す例では、学習モデル部1N1が、スラグ除去部材1Dによるスラグの除去が行われた後に容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、スラグ除去部材1Dによるスラグの除去を行うための第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの動作のスケジュールである排滓動作スケジュールを算出する。
詳細には、学習モデル部1N1は、排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績(
図4参照))と、排滓システム1の過去の操業データが得られたときの排滓実績との組を教師データ(学習データ)として教師あり学習を行う。
【0058】
図12~
図14に示す例では、学習モデル部1N1によって行われる教師あり学習において用いられる教師データ(学習データ)を構成する排滓システム1の排滓実績および排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)として、例えば
図4に示す排滓システム1の排滓実績および排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)を利用可能である。
この例では、学習モデル部1N1によって行われる教師あり学習において用いられる教師データを構成する排滓実績に、除滓後のスラグ残留量[t]が含まれる。
また、この例では、学習モデル部1N1によって行われる教師あり学習において用いられる教師データ(学習データ)を構成する排滓実績に、復S量[×10
-3%]と溶銑ロス量[t/ch]とが含まれる。
【0059】
また、
図12~
図14に示す例では、学習モデル部1N1によって行われる教師あり学習において教師データ(学習データ)として、例えば
図5に示すような正解データおよび不正解データを利用可能である。
この例では、復S量が復S量閾値T1より小さく、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2より小さい排滓システム1の排滓実績と、復S量が復S量閾値T1より小さく、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2より小さい排滓システム1の排滓実績が得られたときの排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)との組が、学習モデル部1N1によって行われる教師あり学習において、教師データ(学習データ)の正解データとして用いられる。
また、この例では、復S量が復S量閾値T1以上であるか、あるいは、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2以上である排滓システム1の排滓実績と、復S量が復S量閾値T1以上であるか、あるいは、溶銑ロス量が溶銑ロス量閾値T2以上である排滓システム1の排滓実績が得られたときの排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)との組が、学習モデル部1N1によって行われる教師あり学習において、教師データ(学習データ)の不正解データとして用いられる。
【0060】
図11~
図13に示す例では、学習モデル部1N1によって行われる教師あり学習において用いられる教師データ(学習データ)を構成する排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)に、例えば
図4に「操業実績」で示すような、排滓システム1によって扱われる溶融金属および溶融金属の表面から除去されるスラグに関するデータが含まれる。
【0061】
また、
図11~
図13に示す例では、学習モデル部1N1によって行われる教師あり学習において用いられる教師データ(学習データ)を構成する排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)に、例えば
図4に「設備実績」で示すような、スラグ除去部材1Dの形状に関するデータ等が含まれる。
【0062】
また、
図12~
図14に示す例では、学習モデル部1N1によって行われる教師あり学習において用いられる教師データ(学習データ)を構成する排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)に、例えば
図4に「運転実績」で示すような、容器1Aおよびスラグ除去部材1Dの動きに関するデータ等が含まれる。
【0063】
図12~
図14に示す例では、AIモデル部1N2が、排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて学習モデル部1N1によって算出された排滓動作スケジュールを実現する第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの制御スケジュールを生成する。
また、AIモデル部1N2は、制御部1Hが学習モデル部1N1によって生成された制御スケジュールに基づいて第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御しているときに第1検出部1Cと第2検出部1Fと撮像部1Iとによって得られるリアルタイムデータに基づいて、第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの制御スケジュールを修正(更新)する機能を有する。
制御部1Hが学習モデル部1N1によって生成された制御スケジュールに基づいて第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御しているときに第1検出部1Cと第2検出部1Fと撮像部1Iとによって得られるリアルタイムデータには、AIモデル部1N2によって取得された容器1A内の溶融金属の表面のスラグ残留量(重量分布算出部1Jによって算出された容器1A内の溶融金属の表面のスラグ残留量)が含まれる。
詳細には、制御部1Hが学習モデル部1N1によって生成された制御スケジュールに基づいて第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御しているときに第1検出部1Cと第2検出部1Fと撮像部1Iとによって得られるリアルタイムデータには、AIモデル部1N2が掻き板状態量取得部1N3、容器状態量取得部1N4等から取得する排滓の特徴量、AIモデル部1N2が湯面状態量取得部1N5から取得する湯面状態量(重量分布算出部1Jによって算出された容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布)などが含まれる。
【0064】
掻き板状態量取得部1N3は、掻き板座標計算部1F4によって算出された掻き板1D1の座標(位置)と、リニアエンコーダ1F1によって検出された昇降シリンダ1E11のストローク量および旋回シリンダ1E12のストローク量と、ロータリーエンコーダ1F2によって検出された走行台車1E2の車輪の回転数と、排滓装置制御部1H2による制御の対象の第2アクチュエータ1Eの状態とを、掻き板状態量として取得する。掻き板状態量取得部1N3によって掻き板状態量として取得されたデータは、AIモデル部1N2に送られる。
容器状態量取得部1N4は、容器傾斜角度計1C1によって検出された容器1Aの傾斜角と、傾動装置制御部1H1による制御の対象の第1アクチュエータ1Bの状態とを、容器状態量として取得する。容器状態量取得部1N4によって容器状態量として取得されたデータは、AIモデル部1N2に送られる。
湯面状態量取得部1N5は、重量分布算出部1Jによって算出された容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布を湯面状態量として取得する。湯面状態量取得部1N5によって湯面状態量として取得されたデータは、AIモデル部1N2に送られる。
排滓動作スケジュール取得部1N6は、学習モデル部1N1によって算出された排滓動作スケジュールを取得する。排滓動作スケジュール取得部1N6によって取得された排滓動作スケジュールは、AIモデル部1N2に送られる。
排滓実績データベース1N7には、例えば
図4に示すような排滓システム1の排滓実績がデータとして格納されている。排滓実績データベース1N7に格納されている排滓システム1の排滓実績は、学習モデル部1N1に送られ、学習モデル部1N1において行われる教師あり学習に用いられる。
【0065】
表示部1Pは、制御スケジュール生成部1Nによって生成された制御スケジュールのうちの例えば現在の状況を表示する。
操業データベース1Mには、例えば
図4に示すような排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)が格納されている。操業データベース1Mに格納されている排滓システム1の過去の操業データは、学習モデル部1N1に送られ、学習モデル部1N1において行われる教師あり学習に用いられる。
【0066】
図15は第2実施形態の排滓システム1において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図15に示す例では、ステップS21Aにおいて、操業データベース1Mが、排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)(制約条件)を学習モデル部1N1に出力する。
また、ステップS21Aでは、排滓実績データベース1N7が、排滓システム1の排滓実績(制約条件)を学習モデル部1N1に出力する。
次いで、ステップS21Bでは、学習モデル部1N1が、排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)と、排滓システム1の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)が得られたときの排滓実績との組を教師データ(学習データ)として教師あり学習(学習モデルによる予測)を行う。
【0067】
次いで、ステップS22では、スラグ除去部材1Dによるスラグの除去が行われた後に容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの量である排滓後スラグ残留量の目標値が、例えばオペレータ(排滓システム1の利用者)によって設定される。
他の例では、ステップS22において、学習モデル部1N1が、排滓後スラグ残留量の目標値を設定してもよい。
【0068】
図15に示す例では、ステップS22において、学習モデル部1N1が、設定された排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて、スラグ除去部材1Dによるスラグの除去を行うための第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの動作のスケジュールである排滓動作スケジュール(例えば
図7に示すような除滓動作スケジュール)を算出する。
また、ステップS22では、制御スケジュール生成部1Nが、排滓後スラグ残留量の目標値に基づいて算出された排滓動作スケジュールを実現する制御部1Hによる第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの制御スケジュールを生成する。
【0069】
図7に示す例では、
図15のステップS22において算出される第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの動作のスケジュールに、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づくことなく、第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eが動作する時間帯(経過時間が0~6minの時間帯)と、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づいて、第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eが動作する時間帯(経過時間が6~10minの時間帯)とが含まれる。
【0070】
また、
図7に示す例では、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づかない第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの動作(経過時間が0~6minの時間帯の動作)は、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づく第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの動作(経過時間が6~10minの時間帯の動作)よりも先に実行される。
【0071】
図15に示す例では、次いで、ステップS23において、学習モデル部1N1が、ステップS22において算出された排滓動作スケジュールを出力し、排滓システム1の排滓動作が開始する。
【0072】
次いで、ステップS24では、制御部1Hが、ステップS22において生成された制御スケジュールに基づいて第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eを制御する。
図7に示す例では、
図14のステップS24が最初に実行される時に、制御部1Hは、「経過時間」が0~2[min]の期間中の排滓動作スケジュールを実現する第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの制御を実行する。具体的には、制御部1Hは、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づくことなく、容器1Aの傾斜角を30[°]に設定する第1アクチュエータ1Bの制御、および、「掻出し回数」を20回に設定し、掻き板1D1の「動作パターン」として「鍋(容器1A)中央の排滓」を実行する第2アクチュエータ1Eの制御を実行する。
また、制御部1Hは、「経過時間」が2~6[min]の期間中の排滓動作スケジュールを実現する第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの制御を実行する。制御部1Hは、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づくことなく、容器1Aの傾斜角を30[°]に設定する第1アクチュエータ1Bの制御、および、「掻出し回数」を40回に設定し、掻き板1D1の「動作パターン」として「鍋(容器1A)周囲の排滓」を実行する第2アクチュエータ1Eの制御を実行する。
また、ステップS24では、表示部1Pが、制御部1Hによる現在の第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの制御の状況を例えば表示モニタに表示する。
【0073】
図15に示す例では、次いで、ステップS25において、AIモデル部1N2が、排滓の特徴量を掻き板状態量取得部1N3、容器状態量取得部1N4等から取得する。
また、ステップS25では、AIモデル部1N2が、湯面状態量(重量分布算出部1Jによって算出された容器1A内の溶融金属の表面に残留する残留スラグの重量分布)を湯面状態量取得部1N5から取得する。つまり、AIモデル部1N2は、重量分布算出部1Jによって算出された容器1A内の溶融金属の表面のスラグ残留量を取得する。
【0074】
次いで、ステップS26では、AIモデル部1N2は、ステップS25において取得された容器1A内の溶融金属の表面のスラグ残留量が、ステップS22において設定された排滓後スラグ残留量の目標値より少なくなったか否かを判定する。
更に、ステップS26では、AIモデル部1N2は、排滓システム1の排滓動作開始後の経過時間が制限時間を超過したか否かを判定する。
また、ステップS26では、AIモデル部1N2は、撮像部1Iによって撮像された画像に基づいて、溶銑の掻き出しが発生しているか否かを判定する。
スラグ残留量が排滓後スラグ残留量の目標値より少なくなった場合には、排滓システム1の排滓動作を終了し、ステップS28に進む。排滓システム1の排滓動作開始後の経過時間が制限時間を超過した場合にも、排滓システム1の排滓動作を終了し、ステップS28に進む。溶銑の掻き出しが発生した場合にも、排滓システム1の排滓動作を終了し、ステップS28に進む。
一方、スラグ残留量が排滓後スラグ残留量の目標値より少なくなっておらず、かつ、排滓システム1の排滓動作開始後の経過時間が制限時間を超過しておらず、かつ、溶銑の掻き出しが発生していない場合には、ステップS27に進む。
【0075】
ステップS27では、学習モデル部1N1は、ステップS22において生成された制御スケジュールに基づいて制御部1Hが第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御しているとき(例えば、ステップS24が最初に実行される時)に第1検出部1Cと第2検出部1Fと撮像部1Iとによって得られるリアルタイムデータに基づいて、第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの制御スケジュールを修正(更新)する。
制御部1HがステップS22において生成された制御スケジュールに基づいて第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御しているときに第1検出部1Cと第2検出部1Fと撮像部1Iとによって得られるリアルタイムデータには、ステップS25において取得された容器1A内の溶融金属の表面のスラグ残留量(重量分布算出部1Jによって算出された容器1A内の溶融金属の表面のスラグ残留量)が含まれる。
詳細には、ステップS27において、学習モデル部1N1は、ステップS24が最初に実行される時に第1検出部1Cと第2検出部1Fと撮像部1Iとによって得られたリアルタイムデータ(実測値)と、ステップS22において生成された制御スケジュール(指示値)との誤差を算出する。
更に、ステップS27において、学習モデル部1N1は、ステップS24が2回目に実行される時に制御部1Hが第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御するために用いられるパラメータ、式などの更新を行う。
次いで、ステップS24に戻る。
2回目に実行されるステップS24では、制御部1Hが、ステップS27において更新されたパラメータ、式などに基づいて、第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eを制御する。
図7に示す例では、
図15のステップS24が2回目に実行される時に、制御部1Hは、「経過時間」が6~8[min]の期間中の排滓動作スケジュールを実現する第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの制御を実行する。具体的には、制御部1Hは、容器1Aの傾斜角を31[°]に設定する第1アクチュエータ1Bの制御、および、「掻出し回数」を20回に設定し、掻き板1D1の「動作パターン」として「鍋(容器1A)の左右のスラグを掻き集めて排滓」を実行する第2アクチュエータ1Eの制御を実行する。
また、
図7に示す例では、
図15のステップS26が2回目に実行される時にNOと判定され、
図15のステップS24が3回目に実行される時に、制御部1Hは、「経過時間」が8~10[min]の期間中の排滓動作スケジュールを実現する第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの制御を実行する。具体的には、制御部1Hは、容器1Aの傾斜角を32[°]に設定する第1アクチュエータ1Bの制御、および、「掻出し回数」を20回に設定し、撮像部1Iによって撮像された容器1A内の溶融金属の表面の画像に基づいてスラグ位置に追従するように掻き板1D1を動かす第2アクチュエータ1Eの制御を実行する。
【0076】
ステップS28では、排滓実績データベース1N7が、ステップS26において排滓後スラグ残留量の目標値と比較された排滓後スラグ残留量を取得して格納する。
また、ステップS28では、操業データベース1Mが、排滓システム1の排滓動作の開始から終了までの操業実績、設備実績、運転実績を取得して格納する。
【0077】
次いで、ステップS29では、学習モデル部1N1は、ステップS22において生成された制御スケジュールに基づいて制御部1Hが第1アクチュエータ1Bと第2アクチュエータ1Eとを制御しているとき(つまり、ステップS24が実行される時)に第1検出部1Cと第2検出部1Fと撮像部1Iとによって得られたリアルタイムデータに基づいて、リアルタイムデータ(実測値)と制御スケジュール生成部1Nによって生成された制御スケジュール(指示値)との誤差を算出し、排滓システム1の排滓動作が次に行われる時に制御スケジュール生成部1Nが制御スケジュールを生成するために用いられるパラメータ、式などの更新を行う。
【0078】
図16および
図17は
図15のステップS29において行われる誤差の算出、パラメータ、式などの更新の処理などの一例を説明するための図である。
図16に示す例では、「掻数」が「15回目」の処理の実行中(「経過時間」が5.8[min]の時)に、
図16の右上の画像に示すような溶銑ロスが発生し、撮像部1Iによって液垂れが検知される。
そのため、
図15のステップS26においてNOと判定され、
図15のステップS27が実行される。
ステップS27では、「掻数」が「16回目」以降のスケジュールが、
図16の左上に示すスケジュールから、
図16の左下に示すスケジュールに改定される。
また、
図16の右下のグラフに示すように、溶銑ロスの発生が検知された「経過時間」5.8[min]の時点で、排滓システム1の排滓動作が終了する(つまり、「実績」で示す曲線が途切れる)。
図16の右下のグラフに示すように、
図16に示す例では、「経過時間」5.8[min]の時点で、スラグ残留量は目標値とほぼ等しく、経過時間は制限時間を超過していない。つまり、
図16に示す例では、上述したように、「経過時間」5.8[min]の時点で、溶銑ロスが発生したために、
図15のステップS26においてNOと判定される。
【0079】
図17に示す例では、「経過時間[min]」、「スラグ残留量[t]」、「溶銑ロス発生有無」、「掻き板1D1の浸漬位置[mm]」、「鍋(容器1A)の傾動角」および「掻き出し速度[回/min]」が、AIモデル部1K2の入力層に設定され、AIモデル部1N2による制御スケジュールの予測(制御スケジュールの変更)が行われる。
【0080】
上述したように、操作者(オペレータ)の認知・判断によって排滓装置が操作される場合には、排滓効率(限られた時間の中でどれだけ多くのスラグを除去するか)や溶銑のロス量(溶銑の掻き出し量)の実績が操作者の習熟度や操作環境等に左右され、溶銑歩留や成分のバラツキが生じてしまうおそれがある。
そこで、第2実施形態の排滓システム1では、学習モデル部1N1が、排滓対象の溶融金属の過去の操業データ(操業実績、設備実績および運転実績)と、過去の排滓実績のデータとを用いた解析(学習)を行うことにより、第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eの最適な制御スケジュールを生成する。更に、AIモデル部1N2は、排滓動作が行われているときに得られるリアルタイムデータ(計装・画像データ)を用いて解析を行い、掻き板1D1の最適動作を予測する。学習モデル部1N1の演算結果およびAIモデル部1N2の予測結果は、生成される制御スケジュールに反映され、制御部1Hは、生成された制御スケジュールに基づいて、第1アクチュエータ1Bおよび第2アクチュエータ1Eを自動制御する。
【0081】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0082】
なお、上述した実施形態における排滓システム1が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0083】
1…排滓システム、1A…容器、1B…第1アクチュエータ、1B1…傾動装置、1B11…傾動シリンダ、1B2…容器台車、1C…第1検出部、1C1…容器傾斜角度計、1C2…容器台車位置検出装置、1D…スラグ除去部材、1D1…掻き板、1D2…アーム、1E…第2アクチュエータ、1E1…シリンダ、1E11…昇降シリンダ、1E12…旋回シリンダ、1E2…走行台車、1E21…モータ、1F…第2検出部、1F1…リニアエンコーダ、1F2…ロータリーエンコーダ、1F3…アーム撮像カメラ、1F4…掻き板座標計算部、1G…操作部、1H…制御部、1H1…傾動装置制御部、1H2…排滓装置制御部、1I…撮像部、1J…重量分布算出部、1K…ガイダンス生成部、1K1…学習モデル部、1K2…AIモデル部、1K3…掻き板状態量取得部、1K4…容器状態量取得部、1K5…湯面状態量取得部、1K6…排滓動作スケジュール取得部、1K7…排滓実績データベース、1L…ガイダンス出力部、1M…操業データベース、1N…制御スケジュール生成部、1N1…学習モデル部、1N2…AIモデル部、1N3…掻き板状態量取得部、1N4…容器状態量取得部、1N5…湯面状態量取得部、1N6…排滓動作スケジュール取得部、1N7…排滓実績データベース、1P…表示部