IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ミライズテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置及びその製造方法 図1
  • 特開-半導体装置及びその製造方法 図2
  • 特開-半導体装置及びその製造方法 図3
  • 特開-半導体装置及びその製造方法 図4
  • 特開-半導体装置及びその製造方法 図5
  • 特開-半導体装置及びその製造方法 図6
  • 特開-半導体装置及びその製造方法 図7
  • 特開-半導体装置及びその製造方法 図8
  • 特開-半導体装置及びその製造方法 図9
  • 特開-半導体装置及びその製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163582
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20221019BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20221019BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20221019BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 658E
H01L29/78 655F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068596
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜田 弘文
(57)【要約】
【課題】 周辺領域の耐圧を確保しつつ、周辺領域のサイズを小さくすることができる技術を提供する。
【解決手段】 半導体装置(10、100)は、半導体基板(12)と、上部電極(70)と、下部電極(72)、を備えている。半導体基板が、半導体基板を上から見たときに、素子領域(60)と、素子領域の周囲に配置された周辺領域(62)を有している。周辺領域が、半導体基板の上面に露出するn型のドリフト領域(34)と、それぞれが、素子領域の周囲を一巡しており、半導体基板の上面に露出しており、ドリフト領域によって互いから分離されている複数の耐圧保持領域(42)、を有している。複数の耐圧保持領域が、複数の第1耐圧保持領域(42a)と、複数の第1耐圧保持領域よりもp型不純物濃度が低い複数の第2耐圧保持領域(42b)を有している。第1耐圧保持領域と第2耐圧保持領域が、交互に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(10、100)であって、
半導体基板(12)と、
前記半導体基板の上面に接する上部電極(70)と、
前記半導体基板の下面に接する下部電極(72)、
を備えており、
前記半導体基板が、前記半導体基板を上から見たときに、前記上部電極と前記半導体基板との接触面と重複する素子領域(60)と、前記素子領域の周囲に配置された周辺領域(62)を有し、
前記素子領域が、前記上部電極と前記下部電極の間に電流を流すことが可能な素子を有し、
前記周辺領域が、
前記半導体基板の上面に露出するn型のドリフト領域(34)と、
それぞれが、前記素子領域の周囲を一巡しており、前記半導体基板の前記上面に露出しており、前記ドリフト領域によって互いから分離されている複数の耐圧保持領域(42)、
を有し、
前記複数の耐圧保持領域が、複数の第1耐圧保持領域(42a)と、前記複数の第1耐圧保持領域よりもp型不純物濃度が低い複数の第2耐圧保持領域(42b)を有し、
前記第1耐圧保持領域と前記第2耐圧保持領域が、交互に配置されている、
半導体装置。
【請求項2】
前記第1耐圧保持領域の幅が、前記半導体基板の前記上面から下側に向かうにつれて広くなっており、
前記第2耐圧保持領域の幅が、前記半導体基板の前記上面から下側に向かうにつれて狭くなっている、請求項1の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板が、窒化ガリウムによって構成されている、請求項1又は2の半導体装置。
【請求項4】
半導体装置の製造方法であって、
n型のドリフト領域(34)と前記ドリフト領域上に配置された第1p型領域(80)を有する半導体基板の前記第1p型領域の上面をエッチングすることにより、前記第1p型領域の前記上面を上から見たときに同心状に伸びる複数の環状溝(84)を前記環状溝のそれぞれが前記第1p型領域を貫通して前記ドリフト領域まで達するように形成する工程と、
前記複数の環状溝の内面を覆うn型領域(86)をエピタキシャル成長によって形成する工程と、
前記複数の環状溝の内部に前記第1p型領域よりもp型不純物濃度が低い第2p型領域(88)をエピタキシャル成長によって形成する工程、
を備える、製造方法。
【請求項5】
前記複数の環状溝を形成する工程では、前記各環状溝の幅が、前記半導体基板の上面から下側に向かうにつれて狭くなるようにエッチングを実施する、請求項3の製造方法。
【請求項6】
前記半導体基板が、窒化ガリウムによって構成されている、請求項4又は5の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【0002】
特許文献1には、半導体基板と、上部電極と、下部電極を有する半導体装置が開示されている。この半導体基板は、素子領域と周辺領域を有している。素子領域は、半導体基板を上から見たときに、半導体基板の中央部に配置されており、上部電極と下部電極の間に電流を流す素子を有する。周辺領域は、素子領域の周囲に配置されている。周辺領域は、n型のドリフト領域と、p型の複数の耐圧保持領域を有している。各耐圧保持領域は、素子領域の周囲を一巡しており、半導体基板の上面に露出しており、ドリフト領域によって互いから分離されている。
【0003】
この半導体装置がオフすると、素子領域から周辺領域(すなわち、半導体基板の中央部から外周側)に向かってドリフト領域内に空乏層が広がる。周辺領域内に伸びる空乏層が最も内周側の耐圧保持領域に達すると、その耐圧保持領域からさらに外周側に空乏層が伸びる。このように、空乏層は、複数の耐圧保持領域を経由しながら外周側に伸びる。これにより、半導体装置の耐圧が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-92168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の各耐圧保持領域は、互いに等しいp型不純物濃度を有する。ここで、周辺領域の耐圧を確保するために、耐圧保持領域のp型不純物濃度を高くすると、周辺領域内のドリフト領域に広がる空乏層の幅が大きくなる。空乏層が半導体基板の外周端に達すると、外周端に電界が加わり、耐圧が低くなる。この場合、十分な耐圧を確保するためには、周辺領域の幅(素子領域の外周縁から半導体基板の外周端までの距離)を大きく確保する必要があり、半導体装置のサイズが大きくなってしまう。一方で、耐圧保持領域のp型不純物濃度を低くすると、周辺領域内のドリフト領域に広がる空乏層の幅が小さくなり、周辺領域の耐圧が低下する。本明細書では、周辺領域の耐圧を確保しつつ、周辺領域のサイズを小さくすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置(10、100)は、半導体基板(12)と、前記半導体基板の上面に接する上部電極(70)と、前記半導体基板の下面に接する下部電極(72)、を備えている。前記半導体基板が、前記半導体基板を上から見たときに、前記上部電極と前記半導体基板との接触面と重複する素子領域(60)と、前記素子領域の周囲に配置された周辺領域(62)を有している。前記素子領域が、前記上部電極と前記下部電極の間に電流を流すことが可能な素子を有している。前記周辺領域が、前記半導体基板の上面に露出するn型のドリフト領域(34)と、それぞれが、前記素子領域の周囲を一巡しており、前記半導体基板の前記上面に露出しており、前記ドリフト領域によって互いから分離されている複数の耐圧保持領域(42)、を有している。前記複数の耐圧保持領域が、複数の第1耐圧保持領域(42a)と、前記複数の第1耐圧保持領域よりもp型不純物濃度が低い複数の第2耐圧保持領域(42b)を有している。前記第1耐圧保持領域と前記第2耐圧保持領域が、交互に配置されている。
【0007】
上記の半導体装置では、周辺領域において、第1耐圧保持領域と、第1耐圧保持領域よりもp型不純物濃度が低い第2耐圧保持領域が、交互に配置されている。p型不純物濃度が比較的低い第2耐圧保持領域を配置することによって、周辺領域内のドリフト領域への空乏層の広がりが全体的に抑制される。その結果、従来と比較して周辺領域の幅を小さくすることができる。一方、第1耐圧保持領域のp型不純物濃度は比較的高いので、第1耐圧保持領域を配置することによって周辺領域の耐圧を確保することができる。このように、この半導体装置では、第1耐圧保持領域と第2耐圧保持領域を交互に配置することにより、ドリフト領域内における空乏層の広がりと、周辺領域の耐圧とのバランスを適切に制御することができる。このため、この半導体装置では、周辺領域の耐圧を確保しつつ、周辺領域のサイズを小さくすることができる。
【0008】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、n型のドリフト領域(34)と前記ドリフト領域上に配置された第1p型領域(80)を有する半導体基板の前記第1p型領域の上面をエッチングすることにより、前記第1p型領域の前記上面を上から見たときに同心状に伸びる複数の環状溝(84)を前記環状溝のそれぞれが前記第1p型領域を貫通して前記ドリフト領域まで達するように形成する工程と、前記複数の環状溝の内面を覆うn型領域(86)をエピタキシャル成長によって形成する工程と、前記複数の環状溝の内部に前記第1p型領域よりもp型不純物濃度が低い第2p型領域(88)をエピタキシャル成長によって形成する工程、を備えている。
【0009】
この製造方法では、環状溝によって分離された複数の環状の第1p型領域のそれぞれを、p型不純物濃度が高い耐圧保持領域として機能させることができ、複数の環状溝内に形成された第2p型領域のそれぞれを、p型不純物濃度が低い耐圧保持領域として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の半導体装置の平面図。
図2図1のII-II線における断面図。
図3】半導体装置がオフしているときの図2の断面における電位分布を示す図。
図4】実施例1の半導体装置の製造工程を説明するための図。
図5】実施例1の半導体装置の製造工程を説明するための図。
図6】実施例1の半導体装置の製造工程を説明するための図。
図7】実施例1の半導体装置の製造工程を説明するための図。
図8】実施例1の半導体装置の製造工程を説明するための図。
図9】実施例2の半導体装置の図2に対応する断面図。
図10】実施例2の半導体装置の製造工程を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書が開示する技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0012】
本明細書が開示する一例の構成では、前記第1耐圧保持領域の幅が、前記半導体基板の前記上面から下側に向かうにつれて広くなっていてもよく、前記第2耐圧保持領域の幅が、前記半導体基板の前記上面から下側に向かうにつれて狭くなっていてもよい。
【0013】
本明細書が開示する一例の構成では、前記半導体基板が、窒化ガリウムによって構成されていてもよい。
【0014】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記複数の環状溝を形成する工程では、前記各環状溝の幅が、前記半導体基板の上面から下側に向かうにつれて狭くなるようにエッチングを実施してもよい。
【0015】
上記の構成では、形成された環状溝の幅が、半導体基板の上面に向かって広くなる。このため、続く工程において、環状溝内にn型領域や第2p型領域をエピタキシャル成長させる際に、環状溝の内面にn型領域を好適に被覆することができるとともに、環状溝の内部を第2p型領域で好適に充填することができる。このため、第2p型領域の内部等にボイドが形成されることを抑制することができる。
【0016】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記半導体基板が、窒化ガリウムによって構成されていてもよい。
【0017】
窒化ガリウムは、イオン注入によりp型の領域を形成することが難しい。このため、本明細書に開示する製造方法は、窒化ガリウムによって構成された半導体基板を用いて半導体装置を製造する際に特に有用である。
【0018】
(実施例1)
図1及び図2に示す実施例1の半導体装置10は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。半導体装置10は、半導体基板12と電極、絶縁層等を備えている。図1に示すように、半導体基板12は、素子領域60と、周辺領域62を有している。素子領域60は、素子として機能する(すなわち、主電流が流れる)領域であり、半導体基板12の中央部に配置されている。周辺領域62は、素子領域60の周囲に配置されている。周辺領域62は、素子領域60と半導体基板12の外周端12cとの間の領域である。なお、図1では、図の見易さのため、半導体基板12の上面12a上の電極、絶縁層の図示を省略している。また、素子領域60内の構造の図示を省略している。以下では、半導体基板12の上面12aと平行な一方向をx方向といい、上面12aに平行でx方向に直交する方向をy方向といい、半導体基板12の厚み方向をz方向という。半導体基板12は、GaN(窒化ガリウム)によって構成されている。ただし、半導体基板12の材料は特に限定されず、例えば、SiC(炭化シリコン)やSi(シリコン)といった他の半導体材料を採用してもよい。
【0019】
図2に示すように、半導体基板12の上面12aには、ゲート絶縁膜24と、周辺絶縁膜46が配置されている。ゲート絶縁膜24は、素子領域60内の半導体基板12の上面12aの一部を覆っている。周辺絶縁膜46は、周辺領域62内の半導体基板12の上面12aの略全域を覆うとともに、素子領域60の一部に跨って半導体基板12の上面12aを覆っている。
【0020】
半導体基板12の上面12aには、上部電極70が配置されている。上部電極70は、素子領域60内において、半導体基板12の上面12aの一部に接している。上部電極70は、ゲート絶縁膜24及び周辺絶縁膜46が設けられていない部分で半導体基板12の上面12aに接している。上部電極70は、ソース電極として機能する。ゲート絶縁膜24の上面には、ゲート電極26が配置されている。ゲート電極26は、ゲート絶縁膜24を介して半導体基板12の上面12aに対向している。ゲート電極26は、ゲート絶縁膜24を介して、ゲート絶縁膜24に接する範囲のボディ領域32(後述)に対向している。半導体基板12の下面12bには、下部電極72が配置されている。下部電極72は、半導体基板12の下面12bの略全域に形成されている。下部電極72は、ドレイン電極として機能する。
【0021】
図2に示すように、素子領域60では、半導体基板12の内部に、複数のソース領域30、複数のボディ領域32、JFET領域33、ドリフト領域34、ドレイン領域35が設けられている。
【0022】
各ソース領域30は、n型領域である。各ソース領域30は、半導体基板12の上面12aに露出する位置に配置されている。各ソース領域30は、上部電極70からゲート絶縁膜24に跨って接している。ソース領域30は、上部電極70にオーミック接触している。
【0023】
各ボディ領域32は、p型領域である。各ボディ領域32は、対応するソース領域30の周囲に配置されている。ボディ領域32は、半導体基板12の上面12aに露出している。ボディ領域32は、ゲート絶縁膜24、上部電極70、及び周辺絶縁膜46に接している。ボディ領域32は、上部電極70にオーミック接触している。
【0024】
JFET領域33は、n型領域である。JFET領域33は、2つのボディ領域32に挟まれた範囲に配置されている。JFET領域33は、ボディ領域32によってソース領域30から分離されている。JFET領域33は、半導体基板12の上面12aに露出している。JFET領域33は、ゲート絶縁膜24に接している。
【0025】
ドリフト領域34は、n型領域である。ドリフト領域34は、ボディ領域32及びJFET領域33の下側に配置されている。ドリフト領域34は、ボディ領域32及びJFET領域33に対して下側から接している。ドリフト領域34は、ボディ領域32によってソース領域30から分離されている。後述するように、ドリフト領域34は、周辺領域62内にも配置されている。ドリフト領域34は、素子領域60から周辺領域62に跨って配置されている。
【0026】
ドレイン領域35は、n型領域である。ドレイン領域35は、ドリフト領域34よりも高いn型不純物濃度を有している。ドレイン領域35は、ドリフト領域34の下側に配置されている。ドレイン領域35は、ドリフト領域34と同様、素子領域60から周辺領域62に跨って配置されている。ドレイン領域35は、半導体基板12の下面12bに露出している。ドレイン領域35は、下部電極72にオーミック接触している。
【0027】
図2に示すように、周辺領域62では、半導体基板12の内部に、ドリフト領域34、ドレイン領域35、及び複数の耐圧保持領域42が設けられている。
【0028】
周辺領域62内のドリフト領域34は、半導体基板12の上面12aに露出している。ドリフト領域34は、周辺絶縁膜46に接している。ドレイン領域35の構成は、素子領域60内のドレイン領域35の構成と同様である。
【0029】
各耐圧保持領域42は、p型領域である。各耐圧保持領域42は、図1に示すように、素子領域60の周囲を一巡しており、同心状に配置されている。各耐圧保持領域42は、半導体基板12の上面12aに露出している。各耐圧保持領域42は、周辺絶縁膜46に接している。各耐圧保持領域42は、ドリフト領域34によって互いから分離されている。耐圧保持領域42は、複数の第1耐圧保持領域42aと、複数の第2耐圧保持領域42bを有している。第2耐圧保持領域42bは、第1耐圧保持領域42aよりも低いp型不純物濃度を有している。第1耐圧保持領域42aと第2耐圧保持領域42bは、交互に配置されている。各第1耐圧保持領域42aは、2つの第2耐圧保持領域42bに挟まれた範囲に配置されており、各第2耐圧保持領域42bは、2つの第1耐圧保持領域42aに挟まれた範囲に配置されている。なお、耐圧保持領域42の数は特に限定されず、確保すべき耐圧に応じて適宜設定することができる。
【0030】
次に、半導体装置10の動作について説明する。半導体装置10の使用時には、半導体装置10と負荷(例えば、モータ)と電源が直列に接続される。半導体装置10と負荷の直列回路に対して、電源電圧が印加される。下部電極72側が上部電極70よりも高電位となる向きで、電源電圧が印加される。ゲート電極26にオン電位(ゲート閾値よりも高い電位)を印加すると、ゲート絶縁膜24に接する範囲のボディ領域32(ソース領域30とJFET領域33の間に位置するボディ領域32)にチャネルが形成される。すると、上部電極70から、ソース領域30、チャネル、JFET領域33、ドリフト領域34、及びドレイン領域35を介して下部電極72へ電子が流れることにより、半導体装置10がオンする。ゲート電極26の電位をオフ電位(ゲート閾値よりも低い電位)まで低下させると、チャネルが消失し、電子の流れが停止して、半導体装置10がオフする。このように、半導体装置10は、ゲート電極26の電位に基づいて、上部電極70と下部電極72の間に流れる電流を制御することができる。
【0031】
半導体装置10がオフすると、ボディ領域32とドリフト領域34及びJFET領域33との界面のpn接合に逆電圧が印加されるので、このpn接合からドリフト領域34内及びJFET領域33内に空乏層が広がる。素子領域60内では、半導体基板12の上面12aから下面12b側に向かって空乏層が広がる。素子領域60内のドリフト領域34は、ボディ領域32から広がる空乏層によって空乏化される。空乏化されたドリフト領域34によって、ボディ領域32とドレイン領域35の間の電圧が保持される。
【0032】
周辺領域62内では、半導体基板12の中央側から外周側(すなわち、図2の左側から右側)に向かって空乏層が広がる。周辺領域62内に伸びる空乏層が最も内周側の耐圧保持領域42に達すると、その耐圧保持領域42からさらに外周側に空乏層が伸びる。このように、各耐圧保持領域42は、空乏層の外周側への伸展を促進する。周辺領域62では、空乏層が、複数の耐圧保持領域42を経由しながら外周側に伸び、半導体基板12の外周端12c近傍まで伸展する。半導体装置10がオフすると、半導体基板12の外周端12cは、下部電極72と略同電位となる。このため、ボディ領域32と外周端12cの間に電位差が生じる。周辺領域62内の空乏化されたドリフト領域34によって、ボディ領域32と外周端12cの間の電位差が保持される。
【0033】
上述したように、複数の耐圧保持領域42は、p型不純物濃度が比較的高い第1耐圧保持領域42aと、p型不純物濃度が比較的低い第2耐圧保持領域42bとによって構成されている。p型不純物濃度が低い第2耐圧保持領域42bを配置することによって、周辺領域62内のドリフト領域34への空乏層の広がりが全体的に抑制される。したがって、本実施例では、第2耐圧保持領域42bを配置することによって、周辺領域62の幅を従来よりも小さくすることができる。一方で、第1耐圧保持領域42aのp型不純物濃度が高いので、第1耐圧保持領域42aを配置することによって、周辺領域62の耐圧を確保することができる。
【0034】
なお、空乏層が各耐圧保持領域42に到達すると、各耐圧保持領域42の内部にも空乏層が広がる。p型不純物濃度が高い第1耐圧保持領域42aは、ほとんど空乏化されない。このため、各第1耐圧保持領域42aの内部では、電位差がほとんど生じない。一方、p型不純物濃度が低い第2耐圧保持領域42bの内部には、広い範囲に空乏層が広がる。
【0035】
図3は、半導体装置10がオフしているときの半導体装置10内の電位分布を示している。図3中の破線は、等電位線である。上述したように、半導体装置10がオフすると、空乏化された素子領域60内のドリフト領域34によってボディ領域32とドレイン領域35の間の電圧が保持される。このため、素子領域60内では、横方向に等電位線が伸びる。また、空乏化された周辺領域62内のドリフト領域34によってボディ領域32と外周端の間の電位差が保持される。このため、周辺領域62内では、縦方向に等電位線が伸びる。周辺領域62内の等電位線は、湾曲して素子領域60内の等電位線と繋がっている。
【0036】
上述したように、p型不純物濃度が高い第1耐圧保持領域42aはほとんど空乏化せず、第1耐圧保持領域42aでは電位差が生じないので、等電位線が第1耐圧保持領域42a内にほとんど進入しない。一方、第2耐圧保持領域42bは空乏化するので、等電位線が第2耐圧保持領域42b内を通過するように分布する。このように、p型不純物濃度が低い第2耐圧保持領域42bを配置しても、第2耐圧保持領域42b内に電位差が生じるため、周辺領域62の耐圧を確保することができる。
【0037】
以上に説明したように、半導体装置10では、従来と比較して、周辺領域62の耐圧を確保しつつ、周辺領域62の幅を小さくすることができる。
【0038】
次に、半導体装置10の製造方法について説明する。まず、図4に示すように、n型のドレイン領域35と、ドレイン領域35上に配置されたn型のドリフト領域34と、ドリフト領域34上に配置された第1p型領域80を有する半導体基板12xを準備する。例えば、ドレイン領域35の表面にエピタキシャル成長によってドリフト領域34を形成し、ドリフト領域34の表面にエピタキシャル成長によって第1p型領域80を形成することで半導体基板12xを製造することができる。
【0039】
次に、図5に示すように、半導体基板12xの上面に複数の開口63aを有するマスクを形成する。各開口63aは、素子領域60内におけるJFET領域33、及び、周辺領域62内における第2耐圧保持領域42bに対応する位置にそれぞれ形成される。そして、マスク63を介して、半導体基板12xの上面をエッチングする。これにより、素子領域60内に、第1p型領域80を貫通してドリフト領域34まで達する凹部82を形成するとともに、周辺領域62内に第1p型領域80を貫通してドリフト領域34まで達する複数の環状溝84を形成する。各環状溝84は、半導体基板12xを上から見たときに、同心状に伸びる環状に形成される。また、各環状溝84は、第2耐圧保持領域42bの幅よりも広い幅を有するように形成される。
【0040】
次に、図6に示すように、凹部82内と環状溝84内に、ドリフト領域34と略等しいn型不純物濃度を有するn型領域86をエピタキシャル成長によって形成する。素子領域60内では、凹部82を埋め込むようにn型領域86を成長させる。一方、周辺領域62内では、各環状溝84の内面を覆うようにn型領域86を成長させる。すなわち、各環状溝84の内部全体が埋め込まれないようにn型領域86を形成する。なお、凹部82の幅は、各環状溝84の幅よりも狭い。このため、n型領域86をエピタキシャル成長させることにより、各環状溝84よりも早く凹部82内全体にn型領域86が充填される。
【0041】
次に、図7に示すように、各環状溝84の内部に、第1p型領域80よりもp型不純物濃度が低い第2p型領域88を、エピタキシャル成長によって形成する。ここでは、各環状溝84を埋め込むように第2p型領域88を形成する。なお、図7に示す工程は、図6に示すn型領域86の成長途中でドーパントガスを切り換えることによって、図6に示す工程に連続して実施される。
【0042】
次に、図8に示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を利用して、第1p型領域80が露出するまで、第2p型領域88及びn型領域86を除去する。これにより、素子領域60内に位置するボディ領域32及びJFET領域33、周辺領域62内に位置する第1耐圧保持領域42a及び第2耐圧保持領域42bが形成される。
【0043】
その後、ソース領域30をイオン注入等によって形成し、ゲート絶縁膜24、周辺絶縁膜46、ゲート電極26、上部電極70、及び下部電極72を従来公知の方法によって形成することで、図1及び図2に示す半導体装置10が完成する。
【0044】
この製造方法では、複数の環状溝84によって分離された複数の環状の第1p型領域80のそれぞれを、第1耐圧保持領域42aとして機能させることができるとともに、複数の環状溝84内に形成された第2p型領域88のそれぞれを、第2耐圧保持領域42bとして機能させることができる。また、最内周に位置する環状溝84よりも内周側の第1p型領域80を、ボディ領域32として機能させることができる。このように、この製造方法では、ボディ領域32と第1耐圧保持領域42aを同じ第1p型領域80から形成することができ、製造工数を低減することができる。
【0045】
また、この製造方法では、図6に示すように、環状溝84の内面をn型領域86で覆った後、ドーパントガスを切り換えることによって、連続して第2p型領域88を環状溝84内に形成する。このため、例えば、n型領域86で環状溝84内を充填した後、第2p型領域88を形成するための別の環状溝を再度形成するといった工程を省略することができる。従って、製造工数を低減することができ、効率良く半導体装置10を製造することができる。
【0046】
なお、GaN系半導体(ガリウムと窒素の化合物を主材料とする半導体)は、イオン注入によってp型の領域を形成することが難しい。この製造方法では、p型のボディ領域32及び耐圧保持領域42(すなわち、第1p型領域80及び第2p型領域88)をエピタキシャル成長によって形成する。このように、上述した製造方法は、GaN系半導体に対して特に有用な技術であり、半導体装置10を好適に製造することができる。
【0047】
(実施例2)
次に、実施例2の半導体装置100について説明する。実施例2の半導体装置100は、周辺領域62の耐圧保持領域142の構成が実施例1のそれと異なっている。その他の構成については、実施例1と同様である。
【0048】
図9に示すように、半導体装置100の周辺領域62では、第1耐圧保持領域142aの幅が、半導体基板12の上面12aから下側に向かうにつれて広くなっている。半導体基板12の上面12aから下側に向かって、第1耐圧保持領域142aの両側面が、半導体基板12の上面12aに対して広がるように傾斜している。また、第2耐圧保持領域142bの幅が、半導体基板12の上面12aから下側に向かうにつれて狭くなっている。半導体基板12の上面12aから下側に向かって、第2耐圧保持領域142bの両側面が、半導体基板12の上面12aに対して狭まるように傾斜している。
【0049】
実施例2の半導体装置100は、実施例1の図5に示す工程を変更することによって製造することができる。半導体装置100の製造方法では、図10に示すように、複数の環状溝184を形成する際に、各環状溝184の幅が、半導体基板12xの上面から下側に向かうにつれて狭くなるようにエッチングを実施する。その後、実施例1の図6以降の工程(n型領域86及び第2p型領域88の形成等)を実施することにより、半導体装置100を製造することができる。
【0050】
実施例2の製造方法では、各環状溝184の幅が半導体基板12xの上面から下側に向かうにつれて狭くなるように各環状溝184が形成される。このため、続くn型領域86の形成や第2p型領域88の形成において、各環状溝184内を好適に被覆及び充填することができ、n型領域86や第2p型領域88内にボイドが発生することを抑制することができる。
【0051】
上述した各実施例では、素子領域60内にMOSFETが形成されていたが、素子領域60内に形成される素子の構造は特に限定されない。例えば、素子領域60内にIGBTが形成されていてもよい。また、上述した各実施例では、プレーナ型のゲート電極を有する半導体装置について説明したが、例えば、トレンチ型のゲート電極を有する半導体装置において、本明細書に開示する技術を適用してもよい。
【0052】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0053】
10:半導体装置
12:半導体基板
24:ゲート絶縁膜
26:ゲート電極
30:ソース領域
32:ボディ領域
33:JFET領域
34:ドリフト領域
35:ドレイン領域
42a:第1耐圧保持領域
42b:第2耐圧保持領域
46:周辺絶縁膜
60:素子領域
62:周辺領域
70:上部電極
72:下部電極
80:第1p型領域
82:凹部
84:環状溝
86:n型領域
88:第2p型領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10