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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163593
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】光制御部材
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
A01G7/00 601B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068610
(22)【出願日】2021-04-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】519247903
【氏名又は名称】山内 敏郎
(74)【代理人】
【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
(72)【発明者】
【氏名】山内 敏郎
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AB15
2B022DA05
2B022DA06
(57)【要約】
【課題】分離部を挟む一方の分離端部に設けた係合凸部を、他方の分離端部に設けた係合凹部へ重ねて押し込むことにより係合するようにした光制御板において、係合凸部を係合凹部へ押し込むとき、係合凹部側の抵抗が大きく、容易に押し込みできない。
【解決手段】円板状の平面部材30に、中心から径方向へ延びて外周へ達する分離部27を設け、この分離部27を挟む一方の分離端部28Aに係合凸部34を設け、他方の分離端部28Bに係合凹部35を設ける。係合凹部35は縦溝40、横溝41及びこれらが接続する係合用開口42を有する。係合用開口42は略二等辺三角形状をなし、係合凸部34を構成する係合頭部37を、少ない抵抗でスムーズに押し込ませることができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を反射面とする円形の本体部(20a)と、その中心から径方向に延びて外周に達し、ここで開放されている溝状の分離部(27)とを備え、この分離部(27)を挟んで対向する一対の分離端部のうち、一方の分離端部(28A)に係合凸部(34)を設け、他方の分離端部(28B)に係合凹部(35)を設け、一方の分離端部(28A)を他方の分離端部(28B)に重ねて係合凸部(34)を係合凹部(35)に合わせて押し込んで係合させることにより、略円錐形の立体形状となる光制御部材において、
前記係合凹部(35)は、径方向の縦溝(40)と、これに直交する横溝(41)とを備え、
前記横溝(41)は、前記縦溝(40)方向へ向かって拡開し、この拡開部により、前記横溝(41)と前記縦溝(40)の接続部に、略三角形状の係合用開口(42)を設けたことを特徴とする光制御部材。
【請求項2】
前記係合凹部(35)は、前記係合用開口(42)に臨み、前記横溝(41)の中心線(E1)を挟んで対抗する一対の開口縁部と、この開口縁部に縁取られて折り曲げ自在な開閉押さえ部(45)とを備え、
前記開口縁部は前記中心線方向に向かって凸に湾曲する弧状縁(44)であることを特徴とする請求項1の光制御部材。
【請求項3】
前記係合凸部(34)は、前記係合凹部(35)へ押し込まれる係合頭部(37)を備え、
この係合頭部(37)は前記分離端部(28A)から抜き溝(38)により一部を残して切り離され、前記一部は前記係合頭部(37)が折れ曲がるときの基部(36)として前記分離端部(28A)に連続するとともに、
前記抜き溝(38)の端部が前記基部(36)の端部をなし、
前記係合頭部(37)を前記係合凹部(35)へ係合するとき、前記基部(36)の端部が前記縦溝(40)の端部へ係合することを特徴とする請求項1の光制御部材。
【請求項4】
前記抜き溝(38)の端部は止め穴(39)に接続し、この係合頭部側の止め穴(39)は、前記基部(36)の径方向両端に一対で設けられているとともに、
前記縦溝(40)の径方向両端部はそれぞれ止め穴(46)に接続し、この縦溝側の両止め穴(46)と、前記係合頭部側の一対の止め穴(39)とがそれぞれ係合することを特徴とする請求項3の光制御部材。
【請求項5】
前記縦溝側の両止め穴(46)の各外側端部間の幅(D2)と、前記係合頭部側の両止め穴(39)の各内側端部間の幅(D2)とが同じであり、
前記係合凸部(34)を前記係合凹部(35)へ重ねたとき、前記止め穴(39)と同(46)が径方向で隣接し、
かつ前記係合頭部側の止め穴(39)が前記縦溝側の止め穴(46)の径方向へ直径分だけずれていることを特徴とする請求項4の光制御部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植物に反射光等を照射してその育成を促す光制御部材に関する。
【背景技術】
【0002】
果実に適正な反射光を照射するため、植物の最適場所へ着脱自在に取付けるようにした反射材がある(特許文献1)。
この反射材は、略円板状をなす部材の一部に中心から径方向に延びて外周に達する分離部を設け、この分離部を挟んで対向する一対の縁部のうち、一方の縁部近傍に係合凸部を設け、他方の縁部近傍に係合凹部を設けるとともに、一方の縁部を他方の縁部近傍に重ね、係合凸部を係合凹部に合わせて押し込むことにより、係合凸部を係合凹部へ係合することにより、略円錐状の立体形状にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-171228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記反射材の係合凹部は、径方向の縦溝とこの径方向中間部に直交する横溝からなる略T字形の溝を設けたものである。係合凸部を押し込むときは、縦溝と横溝に囲まれた部分で、横溝を挟んで対向する一対の部分(開閉部という)に対して、その上に係合凸部を重ねて下方へ押しつけることにより、開閉部を折り曲げながら押し開き、この押し広げられてできる開口へ係合凸部を押し込むことになる。
したがって、係合凸部を押し込むとき開閉部からの摩擦抵抗が大きくなり、係合に際して比較的大きな力を指先に集中させなければならず、係合が容易ではなかった。
特に、農園における大量の植物に対して取付作業をするような場合には、係合を容易かつ迅速とし、効率的な係合作業を可能にすることが求められる。
また、素材をある程度の強風に対抗できるような硬く強度のあるものにした場合は、摩擦抵抗に加えて材料の大きな曲げ抵抗も加わることになり、より一層係合に手間取ることになった。
さらに、手袋を嵌めて作業したい場合でも、手袋の指先部分の面積が大きくなるため、係合凸部に対して押しつける力が分散してより大きな力を必要としたり、押しつける場所を正確に決定できないため、押しつけが不十分になるなどの不都合があり、手袋を外して作業せざるを得ない場合があった。

【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に係る光制御部材の発明は、表面を反射面とする円形の本体部(20a)と、その中心から径方向に延びて外周に達し、ここで開放されている溝状の分離部(27)とを備え、この分離部(27)を挟んで対向する一対の分離端部のうち、一方の分離端部(28A)に係合凸部(34)を設け、他方の分離端部(28B)に係合凹部(35)を設け、一方の分離端部(28A)を他方の分離端部(28B)に重ねて係合凸部(34)を係合凹部(35)に合わせて押し込んで係合させることにより、略円錐形の立体形状となる光制御部材において、
前記係合凹部(35)は、径方向の縦溝(40)と、これに直交する横溝(41)とを備え、
前記横溝(41)は、前記縦溝(40)方向へ向かって拡開し、この拡開部により、前記横溝(41)と前記縦溝(40)の接続部に、略三角形状の係合用開口(42)を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は請求項1において、係合凹部(35)が、前記係合用開口(42)に臨み、前記横溝(41)の中心線(E1)を挟んで対抗する一対の開口縁部と、この開口縁部に縁取られて折り曲げ自在な開閉押さえ部45とを備え、
前記開口縁部は前記中心線方向ぶ向かって凸に湾曲する弧状縁(44)とすることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は請求項1において、前記係合凸部(34)が、前記係合凹部(35)へ押し込まれる係合頭部(37)を備え、
この係合頭部(37)は前記分離端部(28A)から抜き溝(38)により一部を残して切り離され、前記一部は前記係合頭部(37)が折れ曲がるときの基部(36)として前記分離端部(28A)に連続するとともに、
前記抜き溝(38)の端部が前記基部(36)の端部をなし、
前記係合頭部(37)を前記係合凹部(35)へ係合するとき、前記基部(36)の端部が前記縦溝(40)の端部へ係合することを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は請求項3において、前記抜き溝(38)の端部は止め穴(39)に接続し、この係合頭部側の止め穴(39)は、前記基部(36)の径方向両端に一対で設けられているとともに、
前記縦溝(40)の径方向両端部はそれぞれ止め穴(46)に接続し、この縦溝側の両止め穴(46)と、前記係合頭部側の一対の止め穴(39)とがそれぞれ係合することを特徴とする前記抜き溝(38)の端部は止め穴(39)に接続し、この係合頭部側の止め穴(39)は、前記基部(36)の径方向両端に一対で設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は請求項4において、前記縦溝側の両止め穴(46)の各外側端部間の幅(D2)と、前記係合頭部側の両止め穴(39)の各内側端部間の幅(D2)とが同じであり、
前記係合凸部(34)を前記係合凹部(35)へ重ねたとき、前記止め穴(39)と同(46)が径方向で隣接し、
かつ前記係合頭部側の止め穴(39)が前記縦溝側の止め穴(46)の径方向へ直径分だけずれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る光制御部材は、係合凹部(35)が、径方向の縦溝(40)とこれに直交する横溝(41)とを備えるとともに、この横溝(41)が縦溝(40)方向へ向かって拡開しているので、この拡開部により、横溝(41)と縦溝(40)の接続部に略三角形状の係合用開口(42)が形成される。
この係合用開口(42)は比較的大きな開口面積を有するので、係合凸部(34)を係合凹部(35)に係合させるために押しつけると、係合凸部(34)が係合用開口(42)内へ入り込んで係合凹部(35)を押し広げる。このとき、係合凸部(34)と係合凹部(35)の摩擦が少なくなるので、係合凸部(34)は比較的軽い力で係合する。
【0011】
このため、係合凸部(34)を押し込んで係合させる形式のものであっても容易かつ迅速に係合することができる。
特に、大量の取付作業をする場合でも、効率的な係合作業を可能にする。
また、素材を硬く強度のあるものにした場合でも、係合を容易にできる。
さらに、手袋を嵌めて作業したい場合、手袋の指先部分の面積が大きくなって係合凸部に対して押しつける力が分散したり、押しつける場所が多少不正確になっても、係合を比較的軽い力で係合できるから、手袋の指先部分による押圧で容易に係合できる。したがって、手袋を外さずに作業することができる。
【0012】
請求項2によれば、係合用開口(42)に臨む一対の開口縁部を、中心線方向に向かって凸に湾曲する弧状縁(44)とすると、係合凸部(34)を押しつけたとき、開閉押さえ部45をスムーズに折り曲げることができ、係合凸部(34)の押し込みをスムーズにすることができる。しかも、弧状縁(44)が凸に湾曲するので、係合用開口(42)の開口面積を比較的小さくすることができる。
【0013】
請求項3によれば、係合凸部(34)が、抜き溝(38)により分離端部(28A)から折り曲げ自在に分離する係合頭部(37)を備え、この係合頭部(37)を分離端部(28A)へ折り曲げ自在に連続する基部(36)の端部を抜き溝(38)の端部で形成するとともに、この基部(36)の端部を、係合頭部(37)が係合凹部(35)へ係合するとき、縦溝(40)の端部へ係合するようにした。
このため、抜き溝(38)の端部で形成される基部(36)の端部を、係合頭部(37)と係合凹部(35)との係合に利用でき、係合凹部(35)を係合頭部(37)の先端側のような折れ曲がる部分でなく、折れ曲がらない分離端部(28A)自体へ係合させるので、係合部を強固にできる。しかも、抜き溝(38)の端部により容易に形成できる。
【0014】
請求項4によれば、抜き溝(38)の端部を止め穴(39)とすることにより、止め穴(39)を基部(36)の係合部にすることができる。したがって、止め穴(39)を本来の抜き溝(38)の端部における破損阻止と同時に係合部として機能させることができる。
さらに、縦溝(40)の径方向両端部に止め穴(46)を設けると、この止め穴(46)を基部(36)側の止め穴(39)とを係合させることができ、より強い係合と縦溝(40)及び抜き溝(38)の各端部の破損防止を実現できる。
【0015】
請求項5によれば、縦溝側の両止め穴(46)の各外側端部間の幅(D2)と、係合頭部側の両止め穴(39)の各内側端部間の幅(D2)とを同じくし、係合凸部(34)を係合凹部(35)へ重ねたとき、止め穴(39)と同(46)が径方向で隣接し、かつ係合頭部側の止め穴(39)が縦溝側の止め穴(46)の径方向へ直径分だけずれるように配置すると、止め穴(39)と同(46)の係合時に、係合頭部(37)の変形で止め穴(39)が止め穴(46)と重なるようにずれて係合する。
このため、係合した止め穴(39)と同(46)は相互に引っ張り合うため、より確実かつ強固な係合を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】光制御部材を果実植物に取付けた使用状態を示す図
図2】光制御部材の斜視図
図3】本体部の平面図
図4】係合部の展開拡大平面図
図5】係合部における係合時状態の拡大平面図
図6図5の6-6線断面方向で示す係合工程の説明図
図7図5の7-7線断面方向で示す係合工程の説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて一実施形態を説明する。
図1は、果実植物10に対して略円錐状をなす光制御部材20を取付けた状態を示す。
また、図中の丸囲み拡大部aに、植物へ取付けた状態にある光制御部材20の拡大断面を示す。なお、光制御部材20は直径方向の断面で示してある。
【0018】
この果実植物10は、リンゴや桃などの適宜の果実12を有する果樹や、トマトやパプリカ等の適宜の果実12を有する果菜類からなる。果菜類は、地面から高く離れた果実も照射できるようにするため、比較的高性になるものが好ましい。
【0019】
この果実植物10は茎(幹)14を、その周囲へ張り出す多数の枝16を備え、枝16に
は果実12が垂れ下がり状もしくは起立状等種々の形式で支持されている。また、この図では省略されているが、多数の葉も形成されている。
茎(幹)14や枝16には光制御部材20が直接取付けられている。茎(幹)14や枝1
6は本願発明における光制御部材の取付対象部である。
【0020】
光制御部材20は、ほぼ上方へ向かって拡開する傾斜面を有する略円錐状をなす部材であり、果実12へ向かって最適光量の反射光を照射する位置に設けられている。
なお、反射光は、光制御部材20の内面21により集光方向に形成される反射光R1と、外面22により拡散方向に形成される反射光R2を含む。
光制御部材20は、特定場所への集光や拡散、さらには遮光等することができ、特定場所に対する光量を制御するための部材である。
【0021】
光制御部材20の設置位置は、反射光R1が果実12を照射するのに最適な位置とする。
なお、光制御部材20は茎(幹)14及び枝16に対して着脱自在である。また茎(幹)14及び枝16の長さ方向に沿って移動することも自在であり、植物の成長に合わせて取付位置も適宜移動もしくは変更して調整できる。
【0022】
さらに、光制御部材20の茎(幹)14及び枝16に対する取付角度も自由に調整でき、茎(幹)14及び枝16に対して適当に傾けて取付けることにより、反射光の方向を最適となるように調整できる。
【0023】
図1の丸囲み部aに示すように、光制御部材20は本体部20aからなり、その円錐形をなす周壁が、円錐の中心を通る中心線CLに直交する水平面hに対してθなる傾きを有する傾斜面をなす。θは光制御部材20の傾斜角度である。
【0024】
図2は円錐の頂点を水平面上に置き、開口側を上方へ向けて配置した状態における光制御部材20の斜視図である。この図に示すように、光制御部材20は本体部20aが上方へ開放されたは凹部を有する略円錐状の容器状をした立体形状をなす。
この状態において 凹部に臨む面を内面21とする。また、内面21の反対側は外面22であり、図の下方へ凸状をな部分の表面である。
【0025】
内面21は、光制御部材20からの反射光よりなる自然光や人工光もしくは他の種々な方向の入射光Lを中心線CL(図1のa参照)方向へ集めるように反射する反射光R1とする集光面をなす。
【0026】
外面22は、逆に、中心線CLに沿う方向からの入射光を中心線CLから離れる方向へ反射して拡散させる反射光R2とする拡散面をなす。
外面22による拡散光は、植物の果実12や葉などへ局部的に光を集中させずに分散して照射することにより広範囲に照射して、果実12等の生育に光を有効利用する。
【0027】
光制御部材20の中心部には、中心穴23が貫通して形成され、ここに茎(幹)14や枝16を通すようになっている。中心穴23の直径は、取付対象として最小の細枝の直径よりもさらに小さい程度の小さなものである。
【0028】
図3(特に拡大部c)にも示すように、中心穴23の周囲には、放射方向へ複数の中心部スリット24が形成されている。中心部スリット24の一端は中心穴23に達して開放され、他端は止め穴25に達している。
【0029】
止め穴25は、中心部スリット24から周囲へ向かって破れが進まないようにするためのものであり、中心穴23を囲む共通の同心円(仮想)E2上に形成されている。
隣り合う中心部スリット24の間の部分は舌片状弁26をなす。この舌片状弁26は中心穴23に臨む先端部が自由端をなし、自由に変形できる。
【0030】
舌片状弁26を設けることにより、中心穴23より大きな直径の茎(幹)14や枝16を中心穴23に通しても、舌片状弁26が変形してこれを通すとともに、舌片状弁26が茎(幹)14や枝16の外周に密着して長さ方向への移動を阻止する。
このため、光制御部材20は中心穴23により、茎(幹)14及び枝16の外周へ直接固定される。
【0031】
また、舌片状弁26が変形自由なため、光制御部材20を茎(幹)14及び枝16へ直接取付けても、茎(幹)14及び枝16が傷付かないように保護される。
しかも、光制御部材20を長さ方向へ力を加えることにより、舌片状弁26を変形させて光制御部材20を移動させることができる。このため、光制御部材20を取り外すことなく、植物の成長に合わせて光制御部材20の取付位置を長さ方向へ移動及び変更調整可能になる。なお、中心部スリット24の数や長さは適宜に設定できる。
【0032】
なお、図2及び図3において、中心部スリット24、止め穴25及び舌片状弁26の符号指示は、煩雑さを避けるため、一部だけとし、他は省略している。符号Oは光制御部材20及び中心穴23の中心である。
【0033】
図3は、立体形状の光制御部材20になる前の状態である円板状をなす平面部材30の平面視形状を示す。平面部材30は原料部材31(後述)からカットされる。
平面部材30の径方向には、中心穴23から平面部材30の外周部まで連続して形成されるスリット状の分離部27が設けられ、分離部27に臨む一対の端縁33A、33Bを周方向へ分離している。
【0034】
この分離部27を設けることにより、平面部材30の外周外方から茎(幹)14及び枝16を分離部27へ入れ、さらに分離部27を通して径方向内方へ移動させ、中心穴23へ密に入れることができるようになっている。したがって、平面部材30を、茎(幹)14や枝16の側方へ取付けることができる。分離部27の大きさは自由である。但し、できるだけ狭い方が組立時の光制御面積を大きくできる。
【0035】
なお、平面部材30のうち分離部27の近傍部は分離端部28A、28Bをなす。分離端部28A、28Bは分離部27を挟んで対向し、一方側が端縁33Aを有する分離端部28Aをなし、他方側が端縁33Bを有する分離端部28Bをなす。分離端部28Aには係合凸部34が形成され、分離端部28Bには係合凹部35が形成されている。係合凸部34及び係合凹部35は本願発明における係合部を構成する。
【0036】
係合凸部34及び係合凹部35は、中心穴23の同心円E1上に形成される。係合凸部3
特に、架橋高発泡ポリエチレンが、高強度、軽量及び強反射率のバランスがよく、本願の光制御板に好適である。この市販品としては商品名ソフトロンSシリーズ(積水化学工業株式会社)がある。
【0037】
係合凸部34は一方の端縁33A近くに一つ形成される。
係合凹部35は他方の端縁33B近くから、同心円E1上に周方向へ所定間隔もしくは不等間隔で複数形成される。但し、係合凹部35の数は一つだけでもよい。
【0038】
次に、光制御部材20の成形方法を説明する。
図3は、平面部材30を成形する状態を示す。平面部材30は略円板状をなし、原反ロール等で供給されるシート状の原料部材31からカットされる。
原料部材31は、反射しやすい素材、例えば白色の平板状をなすシート状部材であり、復元弾性に富む、腰がありかつ軽い軟質フォーム材料からなり、例えばポリエチレンフォームや発泡スチロールからなる。
【0039】
ただし、適度な強度や反射率を備えて軽量である点より、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム等適宜フォーム材料の使用が好ましい。また、雨に濡れても重くならないようにするため、独立気泡性のものが好ましい。
フォーム材料の場合は、発泡倍率により曲げ等の強度が変化する。そこで、厚さと発泡倍率を調節して、係合の容易性、全体強度、重量が最適となるように材料を選定する。
【0040】
このような原料部材31の材料として、特に、架橋高発泡ポリエチレンが、高強度、軽量及び強反射率のバランスがよく、本願の光制御板に好適である。この市販品としては商品名ソフトロンSシリーズ(積水化学工業株式会社)がある。
【0041】
なお、腰があるとは、所定大きさの外力(風など)に対して形状保持が可能な剛性を備え、かつ所定大きさを越えた外力により変形しても、この大きな外力が除かれると変形前の状態へ復元する弾力を有する状態を意味する。また、後述する係合部において係合時に曲げても、折れ線を形成して復元できない状態に折れ曲がるようなことがなく、曲げの力を除くと曲げる前の状態に復元できるような性質も含む。
【0042】
この原料部材31に対して、平面部材30の外径より若干大きな所定形状に形成されたパンチ型(図示省略)によりプレスカットすれば、略円板状の平面部材30が形成される。32はこのときの抜き溝である。平面部材30は本体部20aからなる部材であり、平板状をなす点で立体形状の光制御部材20と異なるだけである。
【0043】
なお、このプレスカット時において、中心穴23、中心部スリット24、止め穴25及び分離部27並びに係合凸部34及び係合凹部35が同時に形成される。
係合凸部34は分離部27を挟んで位置する平面部材30の一部である一方の分離端部28A及び他方の分離端部28Bに形成される。
【0044】
このようにすると、平板状の部材をワンパンチでカットするだけで平面部材30の成形作業が済むので、製造が容易かつ短時間で済むことになり、製造コストも安価になる。
平面部材30のカット後、分離部27を挟む一方の分離端部28Aを他方の分離端部28Bに重ね、さらに係合凸部34を係合凹部35を重ね合わせて押し込んで係合することにより、平面部材30は略円錐形の立体形状をなす光制御部材20になる。
このため、平板状の平面部材30をを用いて、略円錐形の立体形状をなす光制御部材20を容易に形成できるとともに、係合により簡単に組み立てることができる。
【0045】
次に、係合凸部34及び係合凹部35の構造について詳細に説明する。
図4図3の丸囲み部bにおける係合凸部34及び係合凹部35を拡大して示す。
但し、この図では説明を容易にするため同心円E1を直線で示してあり、係合凸部34及び係合凹部35を一直線上に並べて配置してある。
係合凸部34は、分離端部28Aと連続する基部36と、この基部36に連続するとともに周囲を分離端部28Aから切り離された係合頭部37を有する。
【0046】
係合頭部37は径方向に長い大略長方形をなし、その周囲は、径方向に延びる一対の長辺と、径方向両端にて周方向へ延びる一対の短辺37cで構成される。但し、一対の長辺のうち端縁33A側は曲線状の37bであり、端縁33Aと反対側は基部36とその径方向両端側に形成される一対の突出部37aからなる折れ線状の直線で構成されている。
【0047】
長辺37b、一対の短辺37c及び一対の突出部37aは連続する抜き溝38に囲まれている。すなわち係合頭部37は基部36を除く周囲を抜き溝38により分離端部28Aから切り放され、係合頭部37は基部36を中心にして、長辺37b側を紙面の下方へ押し込んで折り曲げることが可能になっている。
【0048】
抜き溝38の端部は、基部36側へ回り込み、径方向に間隔を持って配置される一対の止め穴39に接続している。両止め穴39は基部36の径方向両端に設けられ、両止め穴39間が基部36をなしている。
止め穴39の直径は抜き溝38の幅より大きく、この例では、止め穴39の直径に対する抜き溝38の幅は、1/5~1/3程度である。
【0049】
係合頭部37の径方向幅D1は、基部36の径方向両端間の幅D2よりも長い。係合頭部37の基部36側における径方向両端部は、止め穴39から径方向へ幅D3で突出する突出部37aになっている。
【0050】
係合凸部34は、径方向において係合頭部37の径方向幅D1の中間部を挟んで対称に設けられている。径方向幅D1及び幅D2の径方向中間部は一致し、ここが同心円E1上に位置する。
係合頭部37の短辺37c側の幅はD4であり、径方向幅D1及び幅D2よりも短い。
【0051】
係合凹部35は、径方向へ延びる抜き溝である縦溝40と、その中間部に直交する直線すなわち中間部における同心円E1の接線方向に沿って端縁33Bから遠ざかる方向へ延びる横溝41を備える。縦溝40の径方向中間部及び横溝41の縦溝40側部分はそれぞれ拡開して係合用開口42に連続する。
【0052】
なお、この横溝41は同心円E1に一致している。しかしこの図の同心円E1は便宜的に直線で表したものであり、実際は図3に示す円である。したがって、横溝41が沿う直線の実際は、図3において縦溝40との交点における同心円E1の接線である。
【0053】
縦溝40は、溝空間に臨む一対の縁部を有する。一方の縁部は、径方向に連続する直線状の縦縁43をなす。縦縁43は係合用開口42の径方向に延びる開口縁部でもある。
他方の縁部40aは径方向中間部の接続点Pで、係合用開口42に臨む開口縁部である弧状縁44の端部に接続する。
したがって、縦縁43に対向する一対の他方の縁部40a間には、径方向中間部が存しないが、対向する接続点P間の部分を中間延長部40bとして仮想線で示す。
【0054】
中間延長部40bと縦縁43に挟まれた部分を縦溝40の延長部とする。
この延長部からなる仮想的部分を含む一本の溝を仮想的縦溝とする。
また、単に縦溝の径方向両端という場合は、この仮想的縦溝の長さ方向両端をいうものとする。
接続点Pの位置は任意であるが、仮想的縦溝の径方向両端部近傍が好ましい。
【0055】
横溝41も縦縁43側となる変化点Qで係合用開口42に連続する。
係合用開口42は、縦縁43を底辺とする略二等辺三角形状をなし、一対の斜辺は曲線状の弧状縁44をなす。
この一対の弧状縁44は横溝41の中間部における変化点Qから縦縁43へ向かって径方向両側へ湾曲して拡開するように延びる。
【0056】
変化点Qが係合用開口42の略二等辺三角形における頂点になる。変化点Qと縦縁43との距離を係合用開口42の高さとする。この例における略二等辺三角形は、高さが底辺(縦縁43)より短く、頂角は鈍角をなしている。
【0057】
弧状縁44は、横溝41における一対の縁部を変化点Qから、縦溝40の接続点Pと結ぶ延長部であり、横溝41の中心線(本例では同心円E1で示す)を挟んで対称的に湾曲している。対向する弧状縁44間の部分は横溝41の拡大部をなすことになる。
なお、横溝41の直線部を変化点Qから縦溝40へ延長して、この部分を仮想線で示す横溝延長部41aとする。この横溝延長部41aと横溝41の直線部とで一本の仮想的横溝が形成される。仮想的横溝は中心線に沿って延び、仮想的縦溝の径方向中間部と交差する。
【0058】
一対の弧状縁44は係合用開口42に臨み、係合用開口42の中央方向に凸の曲線をなし、縦溝40に向かって拡開している。
但し、この湾曲程度は自由に設定でき、大きく湾曲すれば、係合用開口42の開口面積が大きくなるが、係合が弱くなり、かつ全体の強度も低下する。
なお、係合用開口42のの開口面積は、係合頭部37の係合容易さと、全体の強度との兼ね合いで自由に設定される。但し、最小面積は、止め穴46(後述)の開口面積よりも大きい。
【0059】
係合用開口42は、縦縁43と一対の弧状縁44で囲まれている。係合凹部35における弧状縁44で縁取られた部分は開閉押さえ部45をなす。
開閉押さえ部45は、係合頭部37を係合用開口42へ押し込むとき、下方へ折れ曲がって開口を大きく開き、係合頭部37が下方へ出たときは、元の水平状態に復元して係合頭部37の上へ出てこれを押さえる部材である。
【0060】
開閉押さえ部45と縦縁43の間は、縦溝40により縦縁43の端部まで切り込まれている。縦溝40の径方向両端は、止め穴46に接続している。縦溝40の径方向端部に接続する止め穴46の外周上の位置を内側端部という。止め穴46の中心を挟んで反対側の外周上の位置を外側端部という。
両止め穴46の各外側端部間の幅(以下、外側端部間幅という)はD2である。
【0061】
止め穴39も、基部36の径方向端部に接続する外周上の位置を内側端部という。止め穴39の中心を挟んで反対側の外周上の位置を外側端部という。
両止め穴39の各内側端部間の幅(以下、内側端部間幅という)はD2である。
【0062】
なお、止め穴39と止め穴46は同径の穴である。したがって、係合凸部34を係合凹部35上に重ね、基部36を縦溝40に合わせると、両止め穴39の内側端部間幅と、両止め穴46の外側端部間幅とがそれぞれD2と一致するので、止め穴39と同46は、径方向において隣接するとともに、止め穴39又は同46の直径分だけ径方向外側又は内方へずれて位置する(図5参照)。
【0063】
また、横溝41(及び仮想的横溝41a)を挟む一対の開閉押さえ部45は、変化点Qから横溝41の先端まで横溝41により切り込まれている。
横溝41の縦溝40から離れる方向(以下、周方向という)へ延出する端部(先端部)は止め穴47に接続している。止め穴47は同46と同径である。止め穴47及び同46の
直径は、縦溝40及び横溝41の各溝幅よりも大きい。
止め穴47の先端と縦縁43間における開口長さD5は、係合頭部37の横幅D4より長く、横幅D4に対して、略1.1~1.5倍程度が好ましい。
【0064】
なお、係合凸部34を係合凹部35に重ねたとき(図5)、止め穴47が係合頭部37の先端よりも先方側へ延出した位置になるよう、開口長さD5は横幅D4に対して少なくとも止め穴47の直径よりも長くなっている。
【0065】
一対の止め穴46と同47は、これらを結んだ線F1・F2と縦縁43が略二等辺三角形状をなすように配置される。すなわち、一対の止め穴46を結ぶ線(縦縁43)が底辺、止め穴47が頂点であり、止め穴47と各止め穴46を結んだ線F1・F2が斜辺をなす。頂点である止め穴47と底辺の中点を結ぶ中線が、各止め穴からなる三角形の高さをなし、この高さが底辺よりも長く、頂角は鋭角をなしている。これにより、係合凸部34の係合凹部35に対する係合を容易とし、かつ抜け出しにくくして強く係合する。
【0066】
なお、止め穴46と同47を斜めに結ぶ線F1・F2は、開閉押さえ部45の折れ曲がり時における曲げ基線になる。したがって厳密には、分離端部28Bのうち線F1・F2より内側(弧状縁44側)が開閉押さえ部45となる。線F1・F2より外側は係合時に曲がらない部分となる。
【0067】
変化点Qは、縦縁43からの長さが、係合頭部37の横幅D4よりも若干短くなる程度の位置にある。
また、横溝41から弧状縁44に移る変化点Qの位置は、係合凹部35の開口長さD5の1/2となる位置よりも若干縦縁43側となる位置でもある。開口長さD5は縦縁43と止め穴47の先端との距離である。
【0068】
なお、変化点Qから止め穴47の先端までの距離は横溝41の長さであり、横溝41の長さは係合頭部37の横幅D4よりも若干長くなっている。
但し、変化点Qの横溝41方向における位置は任意に定めることができ、好ましくは、係合凹部35の横幅D5の1/2~1/3程度の位置にする。変化点Qの位置により、係合用開口42の開口長さ(変化点Qと縦縁43間の距離)を変化させることができる。
【0069】
変化点Qは弧状縁44を長さや湾曲程度とともに係合用開口42の大きさに関係する。
係合用開口42の開口を大きくすると、開閉押さえ部45の開閉が容易になり、係合頭部37の係合時における押し込みを容易にする。
【0070】
しかし、開閉押さえ部45の開閉が容易になり過ぎると、縦溝40との係合時における係合頭部37に対する押さえが弱くなり、係合凹部35からの抜け出しが容易になるので、開閉の容易さと押さえの強さとのバランスの調整が重要である。本例では、係合用開口42の高さよりも横溝41の長さを若干長くすることにより、良好なバランスを取っている。
【0071】
図5は係合凸部34を係合凹部35の上へ重ねて係合凹部35へ係合した状態における係合部の平面視を示す。図6のCは6-6線に沿う断面図、図7のCは7-7線に沿う断面図である。
【0072】
これらに示すように、係合頭部37は係合凹部35へ押し込まれ、係合用開口42等を通って開閉押さえ部45の下へ出て、分離端部28Bの下に重なり、上から開閉押さえ部45及びその近傍になる分離端部28Bで押さえられる。これにより、係合頭部37が係合凹部35から不用意に抜け出すことを防止されている。
【0073】
なお、図5において、抜き溝38の縁部に囲まれた部分内には係合凹部35及びその周囲の分離端部28Bが見えている。また、図5ではこの分離端部28Bの一部を切り欠いてあり、その下に係合頭部37が存在することが示されている。
【0074】
突出部37aは止め穴39と同46を介して、縦溝40の端部から係合凹部35の開閉押さえ部45より外側部分の下へまで突出する(図5)。
止め穴39は、図5に示すように、係合頭部37を係合凹部35へ押し込むときの変形により、止め穴46へ部分的に重なるように移動し、止め穴39と同46が強く係合する。
この止め穴39と第46の係合は、係合前の当初状態において、両止め穴39の内側端部間幅と両止め穴46の外側端部間幅をそれぞれD2と一致する(図4参照)させることにより可能になっている。
【0075】
次に、係合凸部34と係合凹部35の係合について説明する。
図6は、図5の6-6線に沿う断面にて、係合凸部34と係合凹部35の係合状態を図6のCに示す。図6のA及びBはこの断面図方向において、係合するまでの過程を説明する図である。
図7は、図5の7-7線に沿う断面にて、係合凸部34と係合凹部35の係合状態を図7のCに示す。図7のA及びBはこの断面図方向において、係合するまでの過程を説明する図である。
【0076】
まず、図6のA及び図7のAにおいて、係合凸部34側の端縁33Aを係合凹部35側の端縁33Bより係合凹部35側となる分離端部28Bの上に重ね、さらに、係合凸部34を係合凹部35の上に重ねる。このとき、係合頭部37は係合用開口42の上になる。
【0077】
続いて、図6のB及び図7のBに示すように、係合凸部34の係合頭部37を指F(もしくは手袋の指部G)で下方に押す。すると、係合頭部37は先端(端縁33A側の端部)側を下に向けて基部36から折れ曲がり、係合用開口42の中へ押し込まれる。
このとき、比較的大きな係合用開口42が形成されているので、係合頭部37は凸に変形して係合用開口42内へ比較的容易に下方へ押し込まれる。
【0078】
また、開閉押さえ部45は、係合頭部37を下方へ押し出すために押し広げられ、弧状縁44が下方へ向かうように折り曲げられる。
この押し広げる過程で、係合頭部37は開閉押さえ部45と摺接し、本来であれば大きな摩擦抵抗を生じる。しかし、予め係合用開口42を形成してあるので、摩擦抵抗を少なくすることができ、比較的軽い力で容易に押し込むことができる(図7のB)。
【0079】
係合頭部37を十分に押し込むと、係合頭部37は開閉押さえ部45の下へ出る。また、一対の止め穴39は、当初の状態で止め穴46の径方向外側又は内側に隣接しているが(図4参照)、係合頭部37の係合用開口42に対する押し込みによる変形に伴って、互いに接近するように移動し、止め穴46と係合する(図5及び図6のC参照)。
これにより、係合凸部34と係合凹部35とが確実に係合する。しかも止め穴39と同46は径方向へ引っ張り合っているので、係合が強くなる。
【0080】
また、これまで係合頭部37により上から押圧されて折り曲げられていた開閉押さえ部45は、係合頭部37による押圧がなくなるため復元して水平状態に戻り、係合頭部37の上へ重なってこれを押さえ込み、基部36部分を縦縁43へ強く押しつける(図7のC)。
しかも突出部37aは開閉押さえ部45より外側の分離端部28B下方へ突出している。その結果、下方へ曲がった係合頭部37はその状態で固定され、係合頭部37が係合凹部35から抜け出しにくくなるので、係合凸部34と係合凹部35の係合を強固にする。
【0081】
なお、止め穴39や同46は、係合頭部37と係合凹部35との係合にとって極めて重要であるが、基部36や縦溝40の端部として必ずしも止め穴39や同46を必要としない。
この場合は双方に係合可能な凹凸を設ければよい。但し、止め穴39や同46を設ければ、
基部36や縦溝40の端部の亀裂等の損傷を防ぐと同時に確実な係合を実現できる。
【0082】
次に、本実施形態の作用を説明する。
まず、原料部材31からカットされた平面部材30の分離部27を植物の取付対象部となる茎(幹)14や枝16の側部へ当て、分離部27内へ押し込み、舌片状弁26を変形させて中心穴23内へ入れる。
【0083】
この状態から、係合凸部34側の端縁33を係合凹部35側の端縁33の上へ重ね、さらに係合凸部34を係合凹部35の上へ重ね、係合凸部34を指F(又は手袋の指部G)で押すと、係合凸部34と係合凹部35が係合する。
これにより、光制御部材20は略円錐形の立体形状となり、かつ茎(幹)14又は枝16は、中心穴23内へ舌片状弁26の弾性変形により弾力的に支持されることにより、直接固定される。
【0084】
このように、円形の円板部21と、その中心に形成される中心穴23と、この中心穴から径方向外方に達する分離部27とを備え、植物の取付対象部を分離部27から中心穴23へ密に入れることにより、植物の取付対象部へ直接着脱自在に取付けた。
このため、光制御部材20を植物の反射光を必要とする場所へ、簡単かつ迅速に設置できる。その結果、最適な場所で十分な光量の反射光を照射可能になる。しかも、軽量にできるので植物への直接取付が可能になり、かつ安価に製造できる。
【0085】
また、中心穴23の周囲には径方向へ放射状に延びる複数の中心部スリット24を設けたので、中心穴23の周囲部分が変形自由な舌片状弁26となる。このため、植物の取付対象部を中心穴23へ密に入れても、舌片状弁26の変形により植物の取付対象部を支持するので、植物の取付対象部に対する光制御部材20の直接取付を可能にするとともに、植物の取付対象部を傷つけないように保護できる。
【0086】
さらに、分離部27を挟んで対向する一対の端縁33A、33Bを重ね、分離端部28Aと28Bを重ねて結合することにより、略円錐形の立体形状をなす光制御部材20としたので、植物に対する固定と同時に光制御部材20を略円錐形の立体形状にすることができる、植物の特定場所に対して、集光や散光もしくは遮光等して、光の強度を自由に調整できるので、植物の効率的な生育を助長できる。
【0087】
また、重ね合わされた分離端部28Aと28Bは、それぞれに設けられた係合凸部34を係合凹部35に重ねて押し込むことにより係合して結合されるので、分離部27を容易に連結して閉じることができる。
【0088】
そのうえ、係合凹部35に縦溝40と横溝41が接続する略二等辺三角形状の係合用開口42を設けたので、指F等で係合凸部34(係合頭部37)を係合凹部35へ押し込むとき、係合凹部35側の摩擦抵抗を少なくして、軽い力で押し込むことが可能になる。
さらに、手袋の指部Gで押す場合であっても、押す範囲が広がって力が分散したり、押す場所を正確に決定できないことがあるにもかかわらず、比較的軽い力で係合するようになっているから、指Fで押すときと同様の軽い力で押し込んで係合させることが可能になる。
【0089】
このため、指Fや手袋の指部Gで係合凸部34(係合頭部37)を係合凹部35へ押し込んで係合させる形式のものであっても容易かつ迅速に係合することができ、植物に対する取付時の作業性が向上する。
また、素材を硬く強度のあるものにした場合でも、係合を容易にできるので、より高強度の材料を用いることが容易になる。
【0090】
特に、植物に対して手袋をつけたままで作業する場合でも、手袋の指部Gで容易に係合させることができるようになるので、手袋を外さずに係合作業ができ、大量の光制御部材20を植物へ取付ける際の作業が効率化する。
【0091】
また、係合用開口42に臨む一対の開口縁部を、中心線方向に向かって凸に湾曲する弧状縁44とすると、係合頭部37を押しつけたとき、開閉押さえ部45をスムーズに折り曲げることができ、係合頭部37の押し込みをスムーズにすることができる。
しかも、弧状縁44が凸に湾曲するので、係合頭部37との非係合時である当初における係合用開口42の開口面積を比較的小さくすることができ、係合頭部37の抜け出しをより確実に防ぐとともに、全体の強度低下を防ぐことができる。
【0092】
さらに、係合凸部34が、抜き溝38により分離端部28Aから折り曲げ自在に分離する係合頭部37を備え、この係合頭部37を分離端部28Aへ折り曲げ自在に連続する基部36の端部を抜き溝38の端部で形成するとともに、この基部36の端部を、係合頭部37が係合凹部35へ係合するとき、縦溝40の端部へ係合するようにした。
【0093】
このため、抜き溝38の端部で形成される基部36の端部を、係合頭部37と係合凹部35との係合に利用でき、係合凹部35を係合頭部37の先端側のような折れ曲がる部分でなく、折れ曲がらない分離端部28A自体(係合頭部37を除く部分)へ係合させるので、係合部を強固にできる。
しかも、抜き溝38の端部により容易に形成できる。
【0094】
また、抜き溝38の端部を止め穴39とすることにより、この止め穴39を基部36の係合部にすることができる。したがって、止め穴39を本来の抜き溝38の端部における破損阻止として機能させると同時に、係合部として機能させることができる。
【0095】
さらに、縦溝40の径方向両端部に止め穴46を設けると、この止め穴46を基部36側の止め穴39と係合させることができ、より強い係合と縦溝40及び抜き溝38の各端部の破損防止を実現できる。
【0096】
また、縦溝側の両止め穴46の各外側端部間の幅D2と、係合頭部側の両止め穴39の各内側端部間の幅D2とを同じくし、係合凸部34を係合凹部35へ重ねたとき、止め穴39と同46が径方向で隣接し、かつ係合頭部側の止め穴39が縦溝側の止め穴46の径方向へ直径分だけずれるように配置されているので、止め穴39と同46の係合時に、係合頭部37の変形で止め穴39が止め穴46と少なくとも一部が重なるようにずれて係合する。
このため、係合した止め穴39と同46は相互に引っ張り合うため、より確実かつ強固な係合を実現できる。
【0097】
なお、本実施形態では、複数の係合凹部35を設けてある。したがって、係合凹部35を選択して係合凸部34を係合すると、円錐形状が変化し、円板部21の傾斜角度θ(図1)が変化する。すなわち、係合凸部34を端縁33Bから遠い係合凹部35と係合すると傾斜角度がきつくなる。したがって、円板部21の傾斜角度θを調整可能となり、使用目的に応じて反射光等の光量を調整する自由度を大きくできる。
【0098】
その後、必要により茎(幹)14や枝16の取付対象部に対する光制御部材20の取付角度を調整する等すれば、光制御部材20の内面21による集光及び外面22による拡散光により、果実12の熟成や植物全体の育成が促進される。
また、植物の成長に応じて、外面22の位置を茎(幹)14や枝16の長さ方向に沿って調整して、反射光等の最適化を図ることができる。
【0099】
なお、本願は上記実施形態に限らず、種々変形可能である。
例えば、本願に係る光制御部材20は、特定の場所へ反射光を集中させる反射板としての使用だけでなく、逆に、強い外光を拡散して広範囲を照射する拡散板として、また外光をほとんど遮蔽する遮光板としても使用できる。
また、係合用開口42の大きさも、平面部材30の材料強度や摩擦係数等に応じて自由に設定できる。
【0100】
係合用開口42の形状は、略三角形状だけでなく、半円弧状や半楕円弧状など任意にできる。
弧状縁44の湾曲程度も自由に設定でき、場合によっては湾曲せずに縦溝40と横溝41の各中間部を斜めに結ぶ直線でもよい。
係合頭部37の形状も、図示の略長方形状だけでなく、矢形もしくは傘形、半円弧状もしくは半楕円弧状など任意にできる。
基部36の端部における係合部は、止め穴39によらず、角形等の凹部であてもよい。止め穴46側も同様である。
【符号の説明】
【0101】
10:果実植物、12:果実、14:茎(幹)、16:枝、20:光制御部材、21:内面、22:外面、23:中心穴、24:中心部スリット、25:止め穴、27:分離部、28A・28B:分離端部、30:平面部材、31:原料部材、34:係合凸部、35:係合凹部、37:係合頭部、38:抜き溝、39:止め穴、40:縦溝、41:横溝、42:係合用開口、43:縦縁、44:弧状縁、45:開閉押さえ部、46・47:止め穴、F:指、G:手袋の指部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を反射面とする円形の本体部(20a)と、その中心から径方向に延びて外周に達し、ここで開放されている溝状の分離部(27)とを備え、この分離部(27)を挟んで対向する一対の分離端部のうち、一方の分離端部(28A)に係合凸部(34)を設け、他方の分離端部(28B)に係合凹部(35)を設け、一方の分離端部(28A)を他方の分離端部(28B)に重ねて係合凸部(34)を係合凹部(35)に合わせて押し込んで係合させることにより、略円錐形の立体形状となる光制御部材において、
前記係合凹部(35)は、径方向の縦溝(40)と、これに直交する横溝(41)とを備え、
前記横溝(41)は、前記縦溝(40)方向へ向かって拡開し、この拡開部により、前記横溝(41)と前記縦溝(40)の接続部に、略三角形状の係合用開口(42)を設けたことを特徴とする光制御部材。
【請求項2】
前記係合凹部(35)は、前記係合用開口(42)に臨み、前記横溝(41)の中心線(E1)を挟んで対抗する一対の開口縁部と、この開口縁部に縁取られて折り曲げ自在な開閉押さえ部(45)とを備え、
前記開口縁部は前記中心線方向に向かって凸に湾曲する弧状縁(44)であることを特徴とする請求項1の光制御部材。
【請求項3】
前記係合凸部(34)は、前記係合凹部(35)へ押し込まれる係合頭部(37)を備え、
この係合頭部(37)は前記分離端部(28A)から抜き溝(38)により一部を残して切り離され、前記一部は前記係合頭部(37)が折れ曲がるときの基部(36)として前記分離端部(28A)に連続するとともに、
前記抜き溝(38)の端部が前記基部(36)の端部をなし、
前記係合頭部(37)を前記係合凹部(35)へ係合するとき、前記基部(36)の端部が前記縦溝(40)の端部へ係合することを特徴とする請求項1の光制御部材。
【請求項4】
前記抜き溝(38)の端部は止め穴(39)に接続し、この係合頭部側の止め穴(39)は、前記基部(36)の径方向両端に一対で設けられているとともに、
前記縦溝(40)の径方向両端部はそれぞれ止め穴(46)に接続し、この縦溝側の両止め穴(46)と、前記係合頭部側の一対の止め穴(39)とがそれぞれ係合することを特徴とする請求項3の光制御部材。
【請求項5】
前記縦溝側の両止め穴(46)の各外側端部間の幅(D2)と、前記係合頭部側の両止め穴(39)の各内側端部間の幅(D2)とが同じであり、
前記係合凸部(34)を前記係合凹部(35)へ重ねたとき、前記係合頭部側の両止め穴(39)と前記縦溝側の両止め穴(46)が径方向で隣接し、
かつ前記係合頭部側の止め穴(39)が前記縦溝側の止め穴(46)の径方向へ直径分だけずれていることを特徴とする請求項4の光制御部材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項4の発明は請求項3において、前記抜き溝(38)の端部は止め穴(39)に接続し、この係合頭部側の止め穴(39)は、前記基部(36)の径方向両端に一対で設けられているとともに、
前記縦溝(40)の径方向両端部はそれぞれ止め穴(46)に接続し、この縦溝側の両止め穴(46)と、前記係合頭部側の一対の止め穴(39)とがそれぞれ係合することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項5の発明は請求項4において、前記縦溝側の両止め穴(46)の各外側端部間の幅(D2)と、前記係合頭部側の両止め穴(39)の各内側端部間の幅(D2)とが同じであり、
前記係合凸部(34)を前記係合凹部(35)へ重ねたとき、前記係合頭部側の両止め穴(39)と前記縦溝側の両止め穴(46)が径方向で隣接し、
かつ前記係合頭部側の止め穴(39)が前記縦溝側の止め穴(46)の径方向へ直径分だけずれていることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項4によれば、抜き溝(38)の端部を係合頭部側の止め穴(39)とすることにより、係合頭部側の止め穴(39)を基部(36)の係合部にすることができる。したがって、係合頭部側の止め穴(39)を本来の抜き溝(38)の端部における破損阻止と同時に係合部として機能させることができる。
さらに、縦溝(40)の径方向両端部に縦溝側の止め穴(46)を設けると、この縦溝側の止め穴(46)を基部(36)側にある係合頭部側の止め穴(39)とを係合させることができ、より強い係合と縦溝(40)及び抜き溝(38)の各端部の破損防止を実現できる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項5によれば、縦溝側の両止め穴(46)の各外側端部間の幅(D2)と、係合頭部側の両止め穴(39)の各内側端部間の幅(D2)とを同じくし、係合凸部(34)を係合凹部(35)へ重ねたとき、係合頭部側の両止め穴(39)と縦溝側の両止め穴(46)が径方向で隣接し、かつ係合頭部側の止め穴(39)が縦溝側の止め穴(46)の径方向へ直径分だけずれるように配置すると、係合頭部側の両止め穴(39)と縦溝側の両止め穴(46)の係合時に、係合頭部(37)の変形で係合頭部側の止め穴(39)が縦溝側の止め穴(46)と重なるようにずれて係合する。
このため、係合した係合頭部側の止め穴(39)と同縦溝側の止め穴(46)は相互に引っ張り合うため、より確実かつ強固な係合を実現できる。