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特開2022-16360抗菌・抗ウイルス剤組成物および抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016360
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】抗菌・抗ウイルス剤組成物および抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品
(51)【国際特許分類】
   A01N 33/24 20060101AFI20220114BHJP
   A01N 61/00 20060101ALI20220114BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20220114BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20220114BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220114BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20220114BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220114BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220114BHJP
   A61K 31/785 20060101ALI20220114BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20220114BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220114BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220114BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220114BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A01N33/24 101
A01N61/00 D
A01N25/02
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/00 101
A61P31/04
A61P31/12
A61K31/785
A61K31/14
A61P31/14
A61P31/16
A61K9/12
A61K31/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112739
(22)【出願日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2020119249
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000205432
【氏名又は名称】大阪化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】山神 安令
(72)【発明者】
【氏名】浅見 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】合志 修
(72)【発明者】
【氏名】神田 知秀
(72)【発明者】
【氏名】林 和大
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076BB31
4C076CC32
4C076CC35
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA03
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA03
4C206FA41
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA29
4C206MA33
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA90
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC75
4H011AA01
4H011AA03
4H011AA04
4H011BB04
4H011BB19
4H011BC03
4H011BC10
4H011DA13
4H011DC05
4H011DD07
4H011DH08
(57)【要約】
【課題】人体に対する安全性が高く、しかも、抗菌性だけでなく抗ウイルス性をも発揮する、抗菌・抗ウイルス剤組成物と、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品の提供をその目的とする。
【解決手段】ポリカチオン化合物と水とを含有し、上記ポリカチオン化合物の含有量が組成物全体の0.06~6質量%であることを特徴とする抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカチオン化合物と水とを含有し、上記ポリカチオン化合物の含有量が組成物全体の0.06~6質量%であることを特徴とする抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【請求項2】
上記ポリカチオン化合物が、下記の一般式(1)で示されるものである請求項1記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【化1】
【請求項3】
上記一般式(1)で示されるポリカチオン化合物が、ポリ-オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライドである請求項2記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【請求項4】
さらに炭素数1~6のアルコールを含有し、上記アルコールの含有量が、組成物全体の40質量%以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【請求項5】
上記アルコールが、エタノールである請求項4記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【請求項6】
上記ポリカチオン化合物の含有量が、組成物全体の0.18~6質量%である請求項4または5記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【請求項7】
アニオン界面活性剤を含有しない請求項1~6のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【請求項8】
さらに塩化ベンザルコニウムを含有する請求項1~7のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【請求項9】
エンベロープ型ウイルスに対して用いられる請求項1~8のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【請求項10】
上記エンベロープ型ウイルスが、インフルエンザウイルスおよびコロナウイルスの少なくとも一方である請求項9記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【請求項11】
噴霧剤として用いられる請求項1~10のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物が、繊維製品に付着または含浸されてなることを特徴とする抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性の高い抗菌・抗ウイルス剤組成物、これを繊維製品に付着または含浸させてなる抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス(人インフルエンザウイルスと同属)、コロナウイルス、ノロウイルス、エボラ出血熱ウイルス、エイズウイルス等のウイルスや、サルモネラ菌や病原大腸菌等の菌による、人、家畜の生命的、経済的損失は甚大である。近年、ノロウイルスは、冬季に集団食中毒を引き起こし、老人や免疫不全者の合併症による死亡例も報告されている。また、コロナウイルスや鳥インフルエンザウイルスによるパンデミックの危険性がWHOにより指摘されている。また、サルモネラ菌や病原大腸菌による食中毒は、近年、季節を問わず発生するようになっている。
【0003】
このような脅威に対して、ドアノブ、手すり、テーブル等に付着した菌およびウイルスを取り除き、感染の拡大を防止することが求められる場面が増大している。例えば、コロナウイルスに対しては、高濃度のアルコール、および次亜塩素酸ナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤を水で希釈した消毒液を用いて拭き取りを行うことが推奨されている。
また、菌に対しては、アルコール不含の抗菌剤組成物として、例えば、ε-ポリリジンおよび/またはその塩、pH緩衝能を有する電解質、およびアミノ酸が配合された抗菌剤組成物が開示されており(特許文献1)、この抗菌剤組成物を用いて拭き取りを行うことによって抗菌性を付与できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-67586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、抗菌・抗ウイルス剤組成物として、高濃度のアルコールを用いると肌荒れを起こすこともあり、その高い揮発性に起因して不快感を与える場合がある。また、アルコールが瞬時に揮発し、抗菌・抗ウイルス剤組成物としての効果を持続させることができないという問題もある。
また、次亜塩素酸ナトリウムは、その濃度によっては人体に悪影響を及ぼすおそれがあるため、日常的に用いるには取扱いが難しいという問題がある。一方、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤を用いると、安全性は高いが、一般に効力が低く、濃度を高く設定しなければ、短時間で効力を発揮させることができないという問題がある。
さらに、特許文献1の抗菌剤組成物は、人体に対する安全性は高く、抗菌に対する効果が期待できるものの、抗ウイルスに対する効果は不明であるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、人体に対する安全性が高く、しかも、抗菌性だけでなく抗ウイルス性にも優れた、抗菌・抗ウイルス剤組成物、抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の[1]~[12]を提供する。
[1] ポリカチオン化合物と水とを含有し、上記ポリカチオン化合物の含有量が組成物全体の0.06~6質量%である抗菌・抗ウイルス剤組成物。
[2]上記ポリカチオン化合物が、下記の一般式(1)で示されるものである[1]記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
【化1】
[3] 上記一般式(1)で示されるポリカチオン化合物が、ポリ-オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライドである[2]記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
[4] さらに炭素数1~6のアルコールを含有し、上記アルコールの含有量が、組成物全体の40質量%以下である[1]~[3]のいずれかに記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
[5] 上記アルコールが、エタノールである[4]記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
[6] 上記ポリカチオン化合物の含有量が、組成物全体の0.18~6質量%である、[4]または[5]記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
[7] アニオン界面活性剤を含有しない[1]~[6]のいずれかに記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
[8] さらに塩化ベンザルコニウムを含有する[1]~[7]のいずれかに記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
[9] エンベロープ型ウイルスに対して用いられる[1]~[8]のいずれかに記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
[10] 上記エンベロープ型ウイルスが、インフルエンザウイルスおよびコロナウイルスの少なくとも一方である[9]記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
[11] 噴霧剤として用いられる、[1]~[10]のいずれかに記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
[12] [1]~[11]のいずれかに記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物が、繊維製品に付着または含浸されてなる抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品。
【0008】
なお、本発明において、「繊維製品」とは、綿、麻、羊毛、絹その他の天然繊維、レーヨン、スフ等の化学繊維、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、アクリル等の合成繊維、これらを主体とする織布、不織布、糸、集合体等のいわゆる繊維製品のいずれも含む趣旨である。
【0009】
すなわち、本発明者らは、人体に対する安全性が高く、しかも、抗菌性だけでなく抗ウイルス性にも優れた、抗菌・抗ウイルス剤組成物を開発すべく鋭意検討を重ねた。その結果、上記ポリカチオン化合物を特定の割合で水に配合したものが、抗菌性だけでなく、抗ウイルス性を示し、しかも、人体に対する安全性が高いことを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物によれば、実質的に高濃度のアルコールや、次亜塩素酸ナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤を含有する必要がないため日常的に安全に取り扱うことができる。しかも、有効成分が瞬時に揮発することがなく、低濃度でありながら、高い抗菌、抗ウイルス効果を持続することができる。
【0011】
なかでも、上記ポリカチオン化合物が、上記の一般式(1)で示されるものであると、より高い抗菌、抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0012】
また、上記一般式(1)で示されるポリカチオン化合物が、ポリ-オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライドであると、さらに高い抗菌、抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0013】
そして、さらに炭素数1~6のアルコールを含有し、上記アルコールの含有量が組成物全体の40質量%以下であると、これらの併用によって、とりわけ優れた抗菌、抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0014】
さらに、上記アルコールが、エタノールであると、より高い抗菌、抗ウイルス効果を発揮するだけでなく、使用感にも優れる。
【0015】
また、上記ポリカチオン化合物の含有量が、組成物全体の0.18~6質量%であり、かつ、炭素数1~6のアルコールの含有量が組成物全体の40質量%以下であると、さらに高い抗菌、抗ウイルス効果を発揮し、使用感にも優れる。
【0016】
そして、アニオン界面活性剤を含有しないものであると、より一層高い抗菌、抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0017】
また、さらに塩化ベンザルコニウムを含有すると、より顕著な抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0018】
そして、エンベロープ型ウイルスに対して用いられるものであると、より高い抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0019】
また、エンベロープ型ウイルスが、インフルエンザウイルスおよびコロナウイルスの少なくとも一方であると、より一層の高い抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0020】
噴霧剤として用いられるものであると、対象となる範囲が広大であってもその全体に充分な量を容易にいきわたらせることができ、より広い対象物に対して充分な抗菌、抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0021】
そして、本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物が、繊維製品に付着または含浸されてなる抗菌・抗ウイルス性を有する繊維製品によると、日常的に取り扱われても問題のない安全性と、充分な抗菌・抗ウイルス性とを備えている。しかも、高濃度のアルコールを必要とせず、即効性があるだけでなく、長期間にわたって優れた抗菌、抗ウイルス効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
<抗菌・抗ウイルス剤組成物>
本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物(以下、「組成物」ということがある。)は、ポリカチオン化合物と水とを有し、上記ポリカチオン化合物の含有量が特定の範囲に設定されるものである。以下にこれらについて詳細に説明する。
【0024】
[ポリカチオン化合物]
本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物にはポリカチオン化合物が用いられ、好ましくは、下記の一般式(1)で示されるポリカチオン化合物である。
【0025】
【化2】
【0026】
上記一般式(1)において、R2,R3,R5,R6で示される炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基の直鎖状のもの、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基の分岐鎖状のもののいずれを用いてもよい。なかでも、直鎖状のアルキル基が好ましい。また、取扱いの容易性や抗菌性、抗ウイルス性を高める点から、炭素数4以下のアルキル基が好ましく用いられる。なお、一般式(1)におけるnは正の整数であって特に限定されるものではないが、4~55の範囲とすることが好ましい。また、抗菌・抗ウイルス性、取扱い性等を考慮すると、ポリカチオン化合物の重量平均分子量が1000~10000となるものとすることが好ましい。
【0027】
本発明で用いるポリカチオン化合物としては、例えば、アルキル(C=1~5又はH)アミン・エピクロルヒドリン付加物の四級塩、ポリエチレンポリアミン・ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ポリ-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド等があげられるが、なかでも、抗菌・抗ウイルス性に優れる点から、上記一般式(1)で示されるポリカチオン化合物が好ましく用いられ、とりわけ、下記の式(2)で示される繰り返し単位を有する、ポリ-オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライド(以下、「PMIEC」ということがある。)が好ましい。
【0028】
【化3】
【0029】
本発明において、ポリカチオン化合物は、公知の方法にしたがって製造したものを用いることができるが、市販の製品を用いてもよい。また、上記ポリカチオン化合物は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0030】
本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物における上記ポリカチオン化合物は、このポリカチオン化合物を水等で希釈し、抗菌・抗ウイルス剤組成物に調製したときに、上記ポリカチオン化合物の含有量が上記組成物全体の0.06~6質量%であり、0.3~3質量%含有されることが好ましく、0.48~1.8質量%含有されることがより好ましい。
【0031】
[水]
本発明に用いられる水は、特に限定するものではないが、例えば、水道水、軟水、純水(イオン交換水、蒸留水、RO水(逆浸透膜を通した水)、精製水)等があげられ、好ましくは、軟水、イオン交換水、RO水、蒸留水が用いられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、通常、均一の水溶液からなり、各成分以外の残部が水となるものであるが、例えば、上記水の含有量は、上記組成物全体の50~99.94質量%であることが好ましく、60~98質量%であることがより好ましく、65~90質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
なお、本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物においては、上記ポリカチオン化合物および任意で用いられる炭素数1~6のアルコール等の含有量を高くしておき、使用時に上記の範囲となるよう水で希釈して使用してもよい。
【0034】
[炭素数1~6のアルコール]
本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物には、炭素数1~6の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。とりわけ、抗菌・抗ウイルス性を高める点および肌への使用感が良好である点から、エタノールを用いることが好ましい。上記アルコールは、通常、上記組成物全体の5質量%以上、10質量%以上、特に15質量%以上のときに、前記ポリカチオン化合物との相関において優れた効果を発揮することができる。一方、アルコールの使用量が多くなると肌荒れの原因となるが、本発明においては、前記ポリカチオン化合物との相互作用により比較的低含有量でも優れた効果を発揮することができる。例えば、上記組成物全体の40質量%以下、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下で充分である。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記炭素数1~6のアルコールを含有する場合、上記ポリカチオン化合物(A)と上記炭素数1~6のアルコール(B)との配合比は、通常、質量比で(A):(B)=1:5~1:500の範囲にあることが好ましく、1:25~1:85の範囲にあることがより好ましい。すなわち、上記ポリカチオン化合物と上記アルコールとを併用すると、アルコール濃度が抗菌・抗ウイルス効果を発揮するとされる50質量%未満の低いものであっても、上記ポリカチオン化合物と上記アルコールとの相乗効果により、菌・ウイルスを構成する膜・タンパク質の変性を生じさせ、菌・ウイルスを効果的に死滅させることができる。
また、上記炭素数1~6のアルコールを含有する場合、上記ポリカチオン化合物の含有量は、0.18~3質量%であることが好ましく、0.30~1.5質量%であることがより好ましい。すなわち、上記ポリカチオン化合物と上記アルコールとを併用すると互いに相乗効果がみられ、上記ポリカチオン化合物および上記アルコールのいずれもが、より少ない含有量で抗菌・抗ウイルス性を充分に発揮することができる。例えば、アルコールのみで抗菌・抗ウイルス性を発揮させるには、上記のとおり、通常、50質量%以上のアルコール含有量が必要である。
【0036】
とりわけ、上記ポリカチオン化合物として、PMIECを用い、その含有量が組成物全体の0.6~1.8質量%であり、かつ、上記アルコールとしてエタノールを含有し、その含有量が10~30質量%である場合に高い抗菌・抗ウイルス性が高まる傾向がみられる。
なお、上記PMIECの含有量を多くすればするほど、抗菌・抗ウイルス効果が高くなるが、安全性の点から、その含有量は6質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは4.8質量%以下である。
また、上記組成物の拭き残り跡がつきにくい点からは、PMIECの含有量が少ない方が好ましい傾向がみられ、とりわけPMIEC0.3~0.6質量%とエタノール10~30質量%とを併用することが好ましい。
【0037】
本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物には、これら以外にも、必要に応じて、抗菌・抗ウイルス性の向上や効果の持続性等を図るため、例えば、消臭剤、防腐剤、香料、油性成分、増粘剤、保湿剤、色素、乳化剤、pH調整剤、セラミド類、ステロール類、抗酸化剤、一重項酸素消去剤、紫外線吸収剤、美白剤、抗炎症剤、界面活性剤、他の抗菌剤、他の抗ウイルス剤等の公知の任意成分を配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0038】
上記任意成分の具体例としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等があげられ、とりわけ上記ポリカチオン化合物の性能を損なわずに済むことから、陽イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。なかでも、上記ポリカチオン化合物と組み合わせることにより、互いの性能を高めることができる点から、塩化ベンザルコニウムを用いることが好ましい。任意成分として塩化ベンザルコニウムを用いる場合、好ましい含有量は組成物全体に対して0.005~0.5質量%であることが好ましく、0.01~0.2質量%であることがより好ましい。塩化ベンザルコニウムの含有量が多すぎると、皮膚に付着した場合の刺激性が増加する傾向がみられる。また、任意成分として塩化ベンザルコニウムを用いる場合、ポリカチオン化合物(A)と塩化ベンザルコニウムとの配合比は、通常、質量比でポリカチオン化合物(A):塩化ベンザルコニウム=600:1~2:1の範囲にあることが好ましく、300:1~5:1の範囲にあることがより好ましい。ポリカチオン化合物(A)と塩化ベンザルコニウムとの配合比が上記範囲内にあると、より相乗効果に優れるとともに、即効性および持続性にも優れる傾向がみられる。
【0039】
ただし、本発明においては、公知の任意成分の中でも、実質成分として、アニオン界面活性剤を含有しないことが好ましい。上記アニオン界面活性剤を含有すると、ポリカチオン化合物との凝集、それに伴う効力低下という問題が生じるおそれがあり、好ましくない。
なお、上記アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸、アルキルアミド硫酸、アルキルアリールスルホン酸、オキシエチレン化アルキルエーテルカルボン酸、オキシエチレン化アルキルエーテル硫酸、オキシエチレン化アルキルアリールエーテル硫酸、スルホコハク酸、α-オレフィンスルホン酸等のナトリウム塩、カルシウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩および(n-またはiso-)プロピルアミン塩、或はリン酸エステル塩類等があげられる。
なお、上記「実質的に含有しない」とは、全く含有しないだけでなく、短時間(5分間以内)でその効果を期待できない程度の少量が配合されている場合を含むものであり、通常、その含有量は、組成物全体に対して0.1質量%未満であることを意味する。
【0040】
本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物の製造方法は、特に限定するものではなく、例えば、組成物の大部分を構成している水を最初に仕込み、その後各成分を上記水に添加し、均一になるまで撹拌することによって得ることができる。
【0041】
上記の構成によると、高濃度のアルコールを含有する必要がないため、人体に悪影響を与えるおそれを少なくすることができ、しかも、揮発性が低いため、対象物に充分な時間接触させることが可能であり、抗菌・抗ウイルス性を持続的に発揮させることができる。 また、次亜塩素酸ナトリウムや、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤を含有する必要がないため、取扱いが容易であり、日常的に用いることができる。 さらに、抗菌性および抗ウイルス性のいずれも有し、水性の均一水溶液として使用されるため、被処理物に対する噴霧用または浸漬用として使用でき、利便性に優れる。
【0042】
本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、対象物に接触させることでその効果を発揮するものであり、例えば、噴霧剤として用いると、一度に広範囲に上記組成物を接触させることができるため好適である。
【0043】
また、本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物を、樹脂シート、樹脂フィルム等の各種樹脂材料からなる家庭用品や産業用資材、医療用品、衛生用品、調理用品に使用することにより、これらに抗菌・抗ウイルス効果を付与することができる。上記使用方法としては、例えば、上記各用品、資材等に対して上記組成物を噴霧したり、含浸させたりすることがあげられる。また、上記組成物を含浸させた布等で上記各用品、資材等の表面を拭くようにしてもよい。
上記家庭用品や産業用資材の例としては、例えば、介護シート、シャワーカーテン、車シート、シートカバー、天井材等の内装材、テント、防虫・防鳥ネット、間仕切りシ-ト、空調フィルタ、掃除機フィルタ、マスク、テーブルクロス、机下敷き、前掛け、壁紙、包装紙等があげられる。上記医療用品の例としては、例えば、医療ベッド、車椅子、滅菌袋等があげられる。上記衛生用品としては、例えば、便器、洗浄ブラシ、ダストボックス、使い捨て手袋、使い捨てマスク、ティッシュペーパー、ウエットティッシュ等があげられる。上記調理用品としては、例えば、配膳台、トレー等があげられる。
【0044】
<抗菌・抗ウイルス性繊維製品>
さらに、本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物を、繊維製品に付着または含浸させることにより、抗菌・抗ウイルス効果を有する繊維製品を得ることができる。上記使用方法としては、例えば、上記繊維製品に対して上記組成物を噴霧する等して、その表面に付着させることがあげられる。また、上記繊維製品に対して上記組成物を含浸させてもよい。
【0045】
上記繊維製品は、繊維そのもの、もしくはこれを用いたものであって、前述のとおり、その加工前に準備される繊維製品が、そのまま最終製品の形になっているものであってもよいし、繊維製品に変形を加えたり、他の部材を組み合わせて形状や構成を変えたりして、最終製品にするものであってもよい。
【0046】
このような製品としては、各種産業用資材や家庭用品等があげられ、その繊維製品に用いられる繊維の種類は、前述のとおり、綿、麻、羊毛、絹その他の天然繊維、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の合成繊維、セルロース系樹脂、アセテート樹脂等の半合成繊維、それらの複合物、混合物があげられる。また、それら以外にも、合成繊維に合成繊維以外の成分(金属や無機物質等)を混合したものや、合成繊維と綿、アセテート、レーヨン、羊毛、絹等天然繊維の混紡品等をあげることができる。
【0047】
なお、本発明において、対象とする繊維製品の形態としては、糸、紐、ロープ、生地(織地、編地、不織布)等があげられる。具体的な例としては、使い捨てマスク、ウエットティッシュ等があげられる。
【0048】
<抗菌・抗ウイルス剤組成物の性能とその評価>
本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、抗菌・抗ウイルス性を有しているが、抗ウイルス性については、とりわけエンベロープ型ウイルスに対して優れた抗ウイルス性を示す。また、抗菌・抗ウイルス性が長く持続するため、上記組成物が接触した対象物を長期にわたって清浄に使用することができる。
【0049】
本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、抗菌効果を奏する菌の種類を詳しく述べると、例えば、グラム陰性菌、グラム陽性菌および真菌があげられる。上記グラム陰性菌としては、例えば、大腸菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、肺炎桿菌、および緑膿菌等があげられるが、これらに限定されない。また、上記グラム陽性菌としては、例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、レジオネラ菌、芽胞を形成するセレウス菌、および枯草菌等があげられるが、これらに限定されない。さらに、上記真菌としては、例えば、クロコウジカビ類、アオカビ類、クロカワカビ類、赤色酵母(ロドトルラ)類等があげられるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、抗ウイルス効果を奏するウイルスの種類を詳しく述べると、エンベロープを有するウイルスである、ポックスウイルス、オルソミクソウイルス(代表例として、人インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス)、コロナウイルス、パラミクソウイルス、アレナウイルス、ラブドウイルス、レトロウイルス、ブニヤウイルス、ヘルペスウイルス、トガウイルス、パポーバウイルス、ポルボウイルス、フィロウイルス等があげられ、とりわけ、人インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルスおよびコロナウイルスに対して高い効果が認められ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対しても極めて効果的である。また、エンベロープを有しないウイルスである、アデノウイルス、ポリオウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス等もあげられる。
【0051】
つぎに、本発明において、抗ウイルス性および抗菌性を評価するための試験方法について説明する。
【0052】
<抗ウイルス性評価のための試験方法>
[繊維塗布]
本発明の組成物0.5mLを、長さ16cm×幅15cm×厚み0.05cmの不織布の全面に均一にスプレー塗布(噴霧)した。その後、上記不織布を風乾したものを試験に供した。
そして、実施例1、比較例1~3については、インフルエンザウイルス(エンベロープ型、人インフルエンザウイルスを含む)を対象ウイルスとし、下記に示すプラーク測定法(一般社団法人繊維評価技術協議会、抗ウイルス加工準備委員会の提案による)によって抗ウイルス活性値を算出した。なお、JIS L 1922附属書Gによると、抗ウイルス性は、上記抗ウイルス活性値が2.0以上3.0未満であれば「効果あり」と評価され、3.0以上あれば「充分な効果」と評価されている。
一方、実施例5、6については、新型コロナウイルス(エンベロープ型)を対象ウイルスとし、後記に示す抗ウイルス測定法に基づいて抗ウイルス活性値を算出した。なお、上記抗ウイルス活性値が5であるとは、ウイルスの感染価(細胞感染性を持つウイルス粒子の数)が1/100000に減少した(ウイルスの不活化が実現した)ことを意味している。
【0053】
・プラーク測定法
JIS L 1922附属書Gに準じて測定を行う。対象ウイルスは、インフルエンザウイルス(エンベロープ型、人インフルエンザウイルスを含む)とし、犬腎臓由来細胞を用いる。そして、対象素材とウイルス液を25℃、2時間接触後、ウイルス液と犬腎臓由来細胞で後培養し、培養細胞でウイルスの増減(感染価)を算出し、ブランク(未処理素材)との対数値差を算定して抗ウイルス活性値を求める。
【0054】
・抗ウイルス測定法
対象ウイルスは、新型コロナウイルス(エンベロープ型)とする。なお、上記新型コロナウイルスは、SARS-CoV-2(JPN/TY/WK521)を用いる。そして、対象素材と上記ウイルス液を室温下で10分間接触させた後、上記ウイルス液をVeroE6/TMPRSS2細胞で後培養し、培養細胞でウイルスの増減(感染価)を算出し、ブランク(未処理素材)との対数値差を算定して抗ウイルス活性値を求める。
【0055】
[組成物(液体)]
MCM培地中に、約108PFU/mL以上となるように作製したウイルス液を、滅菌済み精製水で10倍希釈したものを試験ウイルス液とした。
上記試験ウイルス液0.5mLを、本発明の組成物0.5mLを入れたチューブに入れて試験液を作製し、この試験液を10秒間撹拌した後、室温(約25℃)で放置した。
放置5分後および30分後に、上記試験液を10秒間撹拌した後、それぞれ0.1mL採取して、9.9mLのSCDLP培地(不活化液)に入れて撹拌し、10倍ずつ階段希釈を行った。
別途用意した6穴プレートに培養したMDCK細胞に、上記各段階の希釈液を0.1mLずつ接種し、34℃で1時間吸着させた。その後、上記各段階の希釈液を洗い流し、寒天培地を重層して3日間培養した。
培養後、形成されたプラーク数を計数し、試験体と試験ウイルスを接触させた液の感染価を算出した。比較対照は、滅菌済精製水とした。
なお、事前にSCDLP培地で100倍希釈することで、本発明の組成物の抗ウイルス性を不活化できることについて確認している。
・使用ウイルス:実施例1、比較例1~3については、インフルエンザウイルス(Influenza A virus(H3N2) ATCC VR-1679)を用い、実施例5、6については、SARS-CoV-2(JPN/TY/WK521)を用いた。
・MDCK細胞(宿主細胞):実施例1、比較例1~3については、ATCC CCL-34を用い、実施例5、6については、VeroE6/TMPRSS2細胞を用いた。
【0056】
<抗菌性評価のための試験方法>
[組成物(液体)]
SCD液体培地に下記の菌を植菌し、最終濃度が1×105CFU/mLとなるように希釈した菌液を試験菌液とした。
別途用意した48マイクロプレートの各ウエルにSCD液体培地890μLと、上記試験菌液100μLと、本発明の組成物の濃度が10~10000ppmとなるように滅菌生理食塩水で階段希釈した希釈溶液10μLを入れ、37℃で24時間静置培養した。培養後、各ウエルの菌の生育を液の濁りとして目視で確認し、最小発育阻止濃度(MIC)を求めた。
・使用菌:黄色ブドウ球菌(Staphylococus aureus)
【実施例0057】
つぎに、本発明の実施例を、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1~6、比較例1~3]
まず、表1に示す配合で本発明の抗菌・抗ウイルス剤組成物を作製した。なお、ポリカチオン化合物、消臭剤、防腐剤は下記のものを使用した。
【0059】
・ポリカチオン化合物:ポリ-オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライド
・消臭剤:パンシルBA-200E-1(リリース科学工業社製)
・防腐剤:ベンゾイソチアゾリノン(BIT)
【0060】
そして、実施例1~6および比較例1~3の組成物について、抗ウイルス性は、前述のとおりにウイルス感染価を求め、下記の基準にしたがって評価した。また、抗菌性は、前述のとおりにMICを求め、下記の基準にしたがって評価した。なお、実施例2~4については、抗ウイルス性の評価を行っておらず、実施例5、6については、抗ウイルス性に関し、実施例1~4よりも厳しい基準に基づいて評価している。
これらの結果を後記の表1に併せて示す。
【0061】
[抗ウイルス性の評価(繊維塗布)]
<実施例1、比較例1~3>
前記で算出した抗ウイルス活性値を、下記の指標に基づいて評価した。
+++(充分な効果あり):抗ウイルス活性値が3.0以上。
++ (効果合格):抗ウイルス活性値が2.0以上3.0未満。
+ (若干の効果あり):抗ウイルス活性値が1.0以上2.0未満。
- (効果なし):抗ウイルス活性値が1.0未満。
<実施例5、6>
前記で算出した抗ウイルス活性値を、下記の指標に基づいて評価した。
◎ (充分な効果あり):抗ウイルス活性値が5.0以上。
〇 (効果合格):抗ウイルス活性値が3.0以上5.0未満。
△ (若干の効果あり):抗ウイルス活性値が2.0以上3.0未満。
× (効果なし):抗ウイルス活性値が2.0未満。
【0062】
[抗ウイルス性の評価(組成物(液体))]
<実施例1、比較例1~3>
前記で算出したウイルス感染価の常用対数を求め、下記の指標に基づいて評価した。
+++(充分な効果あり):ウイルス感染価の常用対数減少値が3以上。
++ (効果合格):ウイルス感染価の常用対数減少値が2以上3未満。
+ (若干の効果あり):ウイルス感染価の常用対数減少値が1以上2未満。
- (効果なし):ウイルス感染価の常用対数減少値が1未満。
<実施例5、6>
前記で算出したウイルス感染価の常用対数を求め、下記の指標に基づいて評価した。
◎ (充分な効果あり):ウイルス感染価の常用対数減少値が5以上。
〇 (効果合格):ウイルス感染価の常用対数減少値が3以上5未満。
△ (若干の効果あり):ウイルス感染価の常用対数減少値が2以上3未満。
× (効果なし):ウイルス感染価の常用対数減少値が2未満。
【0063】
[抗菌性の評価]
<実施例1~6>
前記で求めたMICを、下記の指標に基づいて評価した。
+++(充分な抗菌効果あり):MICが100ppm未満。
++ (抗菌効果合格):MICが100ppm以上2000ppm未満。
+ (若干の抗菌効果):MICが2000ppm以上10000ppm未満。
- (抗菌効果なし):MICが10000ppm以上。
【0064】
【表1】
【0065】
上記の結果から、特定量のポリカチオン化合物を含有している実施例1~6では、いずれも抗菌性を発揮できることがわかった。なかでも、本発明でポリカチオン化合物とエタノールとを含有している実施例1は、より高い抗菌性と抗ウイルス性とを発揮できることがわかった。また、抗ウイルス性に関し、実施例5、6は、実施例1よりも厳しい基準をクリアしており、実施例1よりも著しく効果が向上していることがわかった。
これらに対し、ポリカチオン化合物を含有しない比較例1~3では、抗ウイルス性に関して充分な効果を得ることができず、組成物(液体)では有効とされている50質量%以上でも、繊維塗布では効果がないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、安全性の高い、抗菌・抗ウイルス剤組成物として利用することができる。