(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163600
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】樹脂基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20221019BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
H05K1/02 G
H05K3/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068619
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下野 信一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 進司
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA02
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB47
5E338EE33
(57)【要約】
【課題】接合部の切断作業時の振動による実装素子への振動を抑制する樹脂基板において、実装部品の耐振動特性に応じて薄板部の厚さを細かく調整可能な樹脂基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様は、振動の抑制が要求される一つ以上の対象素子Eを含む電子部品が実装される製品基板1と、作業用に使用された後に切断除去される捨て基板3とが接合部2を介して部分的に結合された樹脂基板100の製造方法であって、製品基板1、捨て基板2および接合部3が同じ厚さで形成された一次基板を準備する準備工程と、当該一次基板の少なくとも一方の面において接合部2の表面を削り取る加工を行い、接合部2の厚さを所定値まで薄くする薄板化工程とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動の抑制が要求される一つ以上の対象素子(E)を含む電子部品が実装される製品基板(1)と、作業用に使用された後に切断除去される捨て基板(3)とが接合部(2)を介して部分的に結合された樹脂基板(100)の製造方法であって、
前記製品基板、前記捨て基板および前記接合部が同じ厚さで形成された一次基板を準備する準備工程(S1)と、
前記一次基板の少なくとも一方の面において前記接合部の表面を削り取る加工を行い、前記接合部の厚さを所定値まで薄くする薄板化工程(S2)と、
を含む樹脂基板の製造方法。
【請求項2】
前記接合部は複数箇所に設けられており、
前記薄板化工程後の前記接合部の厚さは、箇所によって異なる請求項1に記載の樹脂基板の製造方法。
【請求項3】
振動の抑制が要求される一つ以上の対象素子(E)を含む電子部品が実装される製品基板(1)と、作業用に使用された後に切断除去される捨て基板(3)とが接合部(2)を介して部分的に結合された樹脂基板(200)の製造方法であって、
前記製品基板、前記捨て基板および前記接合部が同じ厚さで形成された一次基板を準備する準備工程(S1)と、
前記一次基板の少なくとも一方の面において、前記対象素子が実装される部分の周囲のうち少なくとも一部に位置する緩衝帯(Z)の表面を削り取る加工を行い、前記緩衝帯の厚さを所定値まで薄くする薄板化工程(SZ)と、
を含む樹脂基板の製造方法。
【請求項4】
前記緩衝帯は複数箇所に設けられており、
前記薄板化工程後の前記緩衝帯の厚さは、箇所によって異なる請求項3に記載の樹脂基板の製造方法。
【請求項5】
前記薄板化工程は、前記一次基板の一方の面においてのみ実施される請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品が実装される樹脂基板の製造において、製品基板と捨て基板との接合部に関する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には捨て基板との接合部を切断する際、接合部の周辺の基板に負荷がかかって実装品に悪影響を及ぼすことを防ぐ「配線基板」が開示されている。これは、多層構造の基板において、接合部の層の数を減らして接合部を薄くするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記技術は、積層構造の層数で厚さ調整を実現するため、層の厚さ単位での離散的な厚さ設定しかできない。そのため、実装部品の耐振動特性に応じて薄板部の厚さを細かく調整することができない。また、接合部から離れたエリアに実装された部品に対する振動抑制についてはまったく言及されていない。
【0006】
本発明はこの点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、接合部の切断作業時の振動による実装素子への振動を抑制する樹脂基板において、実装部品の耐振動特性に応じて薄板部の厚さを細かく調整可能な樹脂基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第一の態様)
本発明の第一の態様は、振動の抑制が要求される一つ以上の対象素子(E)を含む電子部品が実装される製品基板(1)と、作業用に使用された後に切断除去される捨て基板(3)とが接合部(2)を介して部分的に結合された樹脂基板(100)の製造方法である。
【0008】
この製造方法は、準備工程(S1)と、薄板化工程(S2)とを含む。準備工程は、製品基板、捨て基板および接合部が同じ厚さで形成された一次基板を準備する工程である。薄板化工程は、一次基板の少なくとも一方の面において接合部の表面を削り取る加工を行い、接合部の厚さを所定値まで薄くする工程である。
【0009】
第一の態様により、「接合部」を追加工(薄板化工程)によって薄くすることができるため、接合部を切断する際に発生する振動の『製品基板(全体)』への伝達を抑制することが可能である。また実装部品の耐振動特性に応じて「接合部」の厚さを細かく調整可能である。
【0010】
(第二の態様)
本発明の第二の態様は、振動の抑制が要求される一つ以上の対象素子(E)を含む電子部品が実装される製品基板(1)と、作業用に使用された後に切断除去される捨て基板(3)とが接合部(2)を介して部分的に結合された樹脂基板(200)の製造方法である。
【0011】
この製造方法は、準備工程(S1)と、薄板化工程(SZ)とを含む。準備工程は、製品基板、捨て基板および接合部が同じ厚さで形成された一次基板を準備する工程である。薄板化工程は、一次基板の少なくとも一方の面において、対象素子が実装される部分の周囲のうち少なくとも一部に位置する緩衝帯(Z)の表面を削り取る加工を行い、緩衝帯の厚さを所定値まで薄くする工程である。
【0012】
第二の態様により、「緩衝帯」を追加工(薄板化工程)によって薄くすることができるため、接合部を切断する際に発生する振動の、接合部から離れたエリアに実装された特定の『対象素子』への伝達を抑制することが可能である。また実装部品の耐振動特性に応じて「緩衝帯」の厚さを細かく調整可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】
図2のIII方向において下面を薄板化した場合の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態は、電子部品が実装される製品基板1を2枚作製するための樹脂基板100の製造方法である。本実施形態では、樹脂基板100は2枚の製品基板1と捨て基板3とが複数の接合部2により部分的に結合されている。各製品基板1は振動の抑制が要求される対象素子Eを含む。対象素子Eには振動に弱いヨーレートセンサや加速度センサなどが想定される。捨て基板3は切断時に基板を固定するために使用され、除去される。
【0016】
第1実施形態の製造方法は、準備工程S1と、薄板化工程S2とを含む。
図6に本実施形態の製造方法のフロー図を示す。準備工程S1では、製品基板1、接合部2、捨て基板3が同じ厚さで形成された一次基板を準備する。
図1に本実施形態の一次基板を示す。一次基板は薄板化工程S2を行う前の樹脂基板100であり、
図1のように多数の空隙を有する。
【0017】
薄板化工程S2では、一次基板の少なくとも一方の面において接合部2の表面を削り取る加工を行い、接合部2の厚さを所定値まで薄くする。なお、薄くし過ぎると基板が反るおそれがあるため、最適な厚さを設定し、基板反りによる残留応力を増加させずに切断時のストレスを低減する。
【0018】
図2に薄板化工程S2を行った後の樹脂基板100の平面図を、
図3に薄板化工程S2を行った後の接合部2の側面図を示す。本実施形態では接合部2に上面薄板化加工を行い、接合部2の当初厚さTを切削後厚さtとする。切断予定箇所である接合部2が掘り込まれて溝を形成し(
図3)、製品基板1と捨て基板3を明確に区画している(
図2)。
【0019】
図5に、上層を薄板化加工した接合部2の周辺の断面図と工具による切断方向を示す。切断方向は
図2のV-V線方向である。この接合部2をドリル等で切断加工すると、1枚の樹脂基板100から2枚の製品基板1を得ることができる。特許文献1では1枚の一次基板から複数の製品基板を切り出すことに言及していないが、本実施形態では1枚の一次基板から2枚の製品基板を切り出すため、捨て基板に対する製品歩留まりが向上する。
【0020】
[第1実施形態の効果]
上記の構成により、接合部を追加工(薄板化工程)によって薄くすることにより、接合部を切断する際に発生する振動の製品基板(全体)への伝達を効果的に抑制することができる。
【0021】
なお、特許文献1では、積層構造により、一次基板の寸法は最初からある値に固定されており、実装部品の耐振動特性に応じた柔軟な設計変更が困難であるが、本実施形態では状況に応じて臨機応変に設計変更(薄板化加工)可能なため、工数増大を回避できる。
【0022】
[バリエーション]
バリエーションとしては、接合部2について、
図3のような上面からの薄板化に代えて
図4のような下面からの薄板化とすることができる。いずれにせよ厚さを薄くする箇所を一方の面のみとすることで(以下、片面薄板化)、両面薄板化に比べて精度要求が緩和され、加工工数が低減される。また回路配置や各実装部品の耐振動特性に鑑み、接合部の厚さを箇所によって異なる厚さとしてもよい。
【0023】
(第2実施形態)
第2実施形態も、電子部品が実装される製品基板1を2枚作製するための樹脂基板200の製造方法であるが、樹脂基板200の構成と、薄板化工程SZの内容が第1実施形態とは異なっている。
図8に本実施形態の製造方法のフロー図を示す。
【0024】
図7に本実施形態の樹脂基板200を示す。
図1の樹脂基板100と比較すると、2点相違点がある。1点目は、対象素子Eが実装される部分の周囲のうち少なくとも一部に緩衝帯Zが設置されることである。本実施形態では、緩衝帯Zが4箇所に設置されている。
【0025】
2点目は、
図1の樹脂基板100においては接合部2が薄板化工程S2の対象であったが、本実施形態においては(接合部2が薄板化工程S2の対象であるか否かにかかわらず)、緩衝帯Zが薄板化工程SZの対象となることである。よって、接合部2が切断されることに変わりはないが、第1実施形態のように切削加工されてもよいし、切削加工を受けることなく、1次基板の厚さのまま切断作業に供されてもよい。
【0026】
本実施形態の薄板化工程SZでは、一次基板の少なくとも一方の面において、対象素子Eが実装される部分の周囲のうち少なくとも一部に位置する緩衝帯Zの表面を削り取る加工が行われ、緩衝帯Zの厚さが所定値まで薄くされる。しかし、緩衝帯Zは薄くなった後も切断されることはなく、薄くなったことで接合部2を切断する際に発生する振動の対象素子Eへの伝達を抑制し、素子機能への悪影響を回避するバッファーとして機能する。
【0027】
[第2実施形態の効果]
上記の構成により、緩衝帯を追加工(薄板化工程)によって薄くすることができるため、接合部を切断する際に発生する振動の、接合部から離れたエリアに実装された特定の対象素子への伝達を抑制することが可能である。これにより、振動抑制要求の高い特定の対象素子を重点的に振動から保護することが可能となる。
【0028】
[バリエーション]
バリエーションとして、緩衝帯Zについて、上面からの薄板化(
図3)に代えて下面からの薄板化(
図4)とすることができる。これらの片面薄板化により、両面薄板化の場合よりも精度要求が緩和され、加工工数が低減される。また、回路配置や各実装部品の耐振動特性に応じて緩衝帯の厚さを細かく調整してもよい。
【0029】
(その他の実施形態)
上記の実施形態では1枚の1次基板から2枚の製品基板を切り出す構成となっているが、1枚の1次基板から切り出される製品基板の数に制限はなく、1枚の1次基板から1枚の製品基板を切り出す構成としてもよく、また3枚以上を切り出す構成としてもよい。
【0030】
上記の実施形態では、接合部または緩衝帯を片面のみ切削加工して片面薄板化構造とすることで精度要求の緩和効果および加工工数の低減効果を達成している。しかし、両面とも切削加工することにも、片面薄板化に比べ、実装時およびリフロー時の基板反りに強くできるメリットがあり、結果的に切断時ストレスのさらなる低減につながる。よってこれらの点を考慮し、必要に応じて両面薄板化構造を採用することができる。
【0031】
以上、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、さまざまな形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0032】
100、200 樹脂基板
1 製品基板
2 接合部
3 捨て基板
E 対象素子
S1 準備工程
S2 薄板化工程(第1実施形態)
SZ 薄板化工程(第2実施形態)
Z 緩衝帯