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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016361
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】食品生地の分割装置
(51)【国際特許分類】
   A21C 5/02 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A21C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112742
(22)【出願日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2020119393
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516245139
【氏名又は名称】株式会社工揮
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 信行
【テーマコード(参考)】
4B031
【Fターム(参考)】
4B031CA09
4B031CE02
4B031CM02
(57)【要約】
【課題】
大量に混練された食品生地を所定サイズの生地玉を連続的に生成可能であると共に、当該生地玉を生成する際に食品生地に与えるストレスを可及的に小さくすることが可能な食品生地の分割装置を提供する。
【解決手段】
混練された食品生地を収容するホッパーと、前記ホッパーの直下に設けられ、当該ホッパーから食品生地を受け入れる生地導入口を有する一方、所定量に分断された生地玉を排出する生地排出口を有するシリンダと、前記シリンダ内を進退し、後退時に前記生地導入口から当該シリンダ内に食品生地を受け入れる一方、進出時に当該シリンダ内の食品生地を前記生地排出口から生地玉として排出するピストンと、前記生地導入口を開閉し、閉塞時には前記シリンダ内に受け入れられた食品生地を前記ホッパー内の食品生地から分断するする入口シャッターと、前記生地排出口に設けられて当該生地排出口の開閉を行う出口シャッターと、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練された食品生地を収容するホッパーと、
前記ホッパーの直下に設けられ、当該ホッパーから食品生地を受け入れる生地導入口を有する一方、所定量に分断された生地玉を排出する生地排出口を有するシリンダと、
前記シリンダ内を進退し、後退時に前記生地導入口から当該シリンダ内に食品生地を受け入れる一方、前進時に当該シリンダ内の食品生地を前記生地排出口から生地玉として排出するピストンと、
前記シリンダの生地導入口を開閉し、閉塞時には前記シリンダ内に受け入れられた食品生地を前記ホッパー内の食品生地から分断するする入口シャッターと、
前記シリンダの生地排出口に設けられて当該生地排出口の開閉を行う出口シャッターと、
前記生地排出口の下方に設けられて、当該生地排出口から排出された生地玉を受け止めて次工程へ搬送するコンベアベルトと、
前記シリンダから排出する生地玉の目標質量及び/又は前記ホッパー内に投入した食品生地の加水量に応じて、当該シリンダ内における前記ピストンの進退動作を制御すると共に、前記ピストンの進退動作に応じて前記入口シャッター及び前記出口シャッターの開閉を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする食品生地の分割装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記シリンダ内に食品生地を受け入れるべく前記ピストンを後退させる際に、当該後退に先立って前記出口シャッターによって前記生地排出口を閉塞することを特徴とする請求項1記載の食品生地の分割装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ピストンを後退させて前記シリンダ内に食品生地を受け入れる際、前記入口シャッターを動作させて前記生地導入口を開放する一方、当該ピストンを前記生地玉の目標質量に対応した位置を超えて動作準備位置に設定することを特徴とする請求項2記載の食品生地の分割装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ピストンを前記シリンダ内において前記動作準備位置から生地玉の目標質量に対応した位置に進出させる際、前記入口シャッターを動作させて前記生地導入口の一部を閉塞することを特徴とする請求項3記載の食品生地の分割装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ピストンを生地玉Pの目標質量に対応した位置に設定した後、当該位置でピストンを後退させ、再度前進させるもみ返し動作を行うことを特徴とする請求項4記載の食品生地の分割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば混練されたパン生地等の食品生地をホッパーから受け入れ、それを所定量に分割して供給する分割装置に係り、特に、小麦粉等の穀粉に対して加える水分の割合が極めて多量な高加水生地の分割にも対応可能な分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製パン工程においては、混練された大量のパン生地を所定量の生地玉に小分けした後、焼成工程前の中間発酵へと工程を進めており、パン生地から生地玉に小分けにする自動化機械として、例えば特許文献1示される分割装置が用いられている。
【0003】
前記分割装置は、混練後の大量のパン生地を投入するホッパーと、前記ホッパーの直下に設けられると共に当該ホッパーからパン生地が落とし込まれるシリンダと、前記シリンダの一端開口に面して設けられると共に複数の分割ポケットを有するスライドヘッドと、前記シリンダに落下したパン生地を前記スライドヘッドの分割ポケットに押し込んで前記生地玉を生成する主ラムと、前記スライドヘッドの各分割ポケットから前記生地玉を排出するピストンと、を有している。そして、前記分割ポケットに対するパン生地の押し込みと、かかる分割ポケットからの生地玉の排出を繰り返することにより、前記分割ポケットの容積に応じた大きさの生地玉を連続的に生産することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-149950
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パン生地を所定量の生地玉に分割する際には、炭酸ガスを含む生地がストレスを受けることのないよう、当該パン生地に対して過度の力を加えないことが重要である。この点に関し、前述した従来の分割装置では、前記ホッパーの直下のシリンダからスライドヘッドの分割ポケットにパン生地を押し込む工程において、前記分割ポケットにパン生地を押し込んだ後も前記シリンダ内にはパン生地が残留してしまう。このため、前記ホッパーからシリンダに落とし込まれたパン生地は当該シリンダにおいて前記主ラムによる押圧を複数回受けることになり、前記主ラムの押圧力の軽減を図ったとしても、パン生地の受けるストレスが懸念された。
【0006】
また、製パン工程においては、使用する小麦粉の種類や製造するパンの種類によって加水率(小麦粉等の穀粉に対して加える水分の割合)が異なっており、一般的なパンの加水率は小麦粉100%に対して60~65%と言われている。加水率が高くなると、パン生地を混練した際に生じるグルテンの膜が柔らかくなり、焼成したパンは弾力があり且つしっとりとした食感になり、風味が長持ちし易いといった特質がある。
【0007】
その一方、加水率の高いパン生地は、水分が多いためにベタつきが生じやすく、生地を所定量に小分けにする分割やその後の成形における作業性が悪くなるという課題がある。また、パン生地内に生成されるグルテンの膜が柔らかいために当該パン生地のまとまりが弱く、当該パン生地に対して過度に押圧力を作用させると、生地が容易に破断してしまう他、生地に含まれていた水分が流出し易く、焼成後の品質にバラつきが発生し易いといった課題もある。
【0008】
このため、加水率が90%を超えるようなパン生地に対して、特許文献1に開示されるような従来の分割装置は使用が困難であり、このような高加水率のパン生地は自動化機械を用いることなく、手作業で分割作業が行われていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、大量に混練された食品生地を所定サイズの生地玉を連続的に生成することが可能であると共に、当該生地玉を生成する際に食品生地に与えるストレスを可及的に小さくすることが可能な食品生地の分割装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、小麦粉等の穀粉に対して多量の水分を加えて混練した高加水生地であっても、当該生地にストレスを与えることなく、所定サイズの生地玉を連続的に生成することが可能な食品生地の分割装置を提供することにある。
【0011】
すなわち、本発明の分割装置は、混練された食品生地を収容するホッパーと、前記ホッパーの直下に設けられ、当該ホッパーから食品生地を受け入れる生地導入口を有する一方、所定量に分断された生地玉を排出する生地排出口を有するシリンダと、前記シリンダ内を進退し、後退時に前記生地導入口から当該シリンダ内に食品生地を受け入れる一方、進出時に当該シリンダ内の食品生地を前記生地排出口から生地玉として排出するピストンと、前記シリンダの生地導入口を開閉し、閉塞時には前記シリンダ内に受け入れられた食品生地を前記ホッパー内の食品生地から分断するする入口シャッターと、前記シリンダの生地排出口に設けられて当該生地排出口の開閉を行う出口シャッターと、前記生地排出口の下方に設けられて、当該生地排出口から排出された生地玉を受け止めて次工程へ搬送するコンベアベルトと、前記シリンダから排出する生地玉の目標サイズ及び/又は前記ホッパー内に投入した食品生地の加水量に応じて、当該シリンダ内における前記ピストンの進退動作を制御すると共に、前記ピストンの進退動作に応じて前記入口シャッター及び前記出口シャッターの開閉を制御する制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明によれば、ホッパー内に収容された食品生地はシリンダ内におけるピストンの後退に伴って当該シリンダ内に吸引され、前記シリンダを満たした分量の食品生地のみが当該シリンダの生地排出口からコンベアベルトに押し出されて生地玉となるので、食品生地に対して押圧力が加えられるのは前記ピストンが生地玉を前記シリンダから押し出す際の一回のみであり、生地玉を生成する際に食品生地に与えるストレスを可及的に小さくすることが可能である。
【0013】
また、生地玉を生成する際には、前記制御部が前記シリンダ内における前記ピストンの進退動作を制御し、併せて前記入口シャッター及び前記出口シャッターの開閉を制御するが、この際に前記シリンダから排出する生地玉の目標サイズ及び/又は前記ホッパー内に投入した食品生地の加水量に応じて、これらピストン、入口シャッター及び出口シャッターの連動タイミングを適正化することで、食品生地に与えるストレスを可及的に小さくすることが可能である。
【0014】
このため、多量の水分を加えて小麦粉等の穀粉を混練した高加水生地であっても、当該生地にダメージを与えることなく、目標サイズの生地玉を連続的に生成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用したパン生地の分割装置の実施形態の一例を示す概略図である。
図2】図に示した分割装置のシリンダ、ピストン及び入口シャッターの位置関係を示す概略斜視図である。
図3】図に示した分割装置の制御系を示すブロック図である。
図4】シリンダから生地玉を排出した状態を示す図である。
図5】生地玉の排出後に出口シャッターを閉じた状態を示す図である。
図6】ホッパーからシリンダ内へパン生地を吸引した状態を示す図である。
図7】ピストンを目標位置へ前進させてシリンダ内をパン生地で満たした状態を示す図である。
図8】入口シャッターの進出によってシリンダ内のパン生地がホッパー内のパン生地から分断された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明を適用した食品生地の分割装置の実施形態を説明する。
【0017】
図1は本発明を適用したパン生地の分割装置の一例を示す概略図である。この分割装置は混練されたパン生地を小分けにして搬出するものであり、ホッパー1から投入されたパン生地Rを所定サイズの生地玉に分割し、かかる生地玉をコンベアベルト2によって次工程、例えば、生地玉の丸めを行うラウンダーや、生地玉の最終成形及びガス抜きを担うモルダーに受け渡すように構成されている。この分割装置はパン生地に対して過度のストレスを与えることなく、当該パン生地を生地玉に分割することを目的として案出されたものであり、例えは、加水率が90%以上の高加水率のパン生地の分割作業を自動化することも可能である。尚、図1は本発明の概略構成を示すための便宜上のものであり、装置の骨格となるフレーム等は省力されているが、通常は作業性の観点から、前記コンベアベルト2は装置フレームによって作業者の腰の高さ程度に設置されている。
【0018】
前記分割装置は、生地投入口が開口するホッパー1と、このホッパー1の直下で水平方向に延びると共に生地導入口10を介して当該ホッパー1と連通しているシリンダ3と、このシリンダ3内を水平方向へ往復運動して、当該シリンダの生地排出口から生地玉を押し出すピストン4と、前記シリンダ3から生地玉が排出される際に鉛直方向へ往復運動して、前記シリンダ3の生地排出口30を開閉する出口シャッター5と、前記シリンダ3内におけるピストン4の進退に伴って前記生地導入口10を開閉する入口シャッター6と、を備えている。
【0019】
図2は前記シリンダ3、前記ピストン4及び前記入口シャッター6の位置関係を示す概略図である。前記シリンダ3、前記ピストン4及び前記入口シャッター6の間の隙間を小さくして気密性を高めるため、前記シリンダ3及びピストン4は耐摩耗性に優れた樹脂材料(例えばPEEK材やポリエチレンテレフタレート等)によって形成されている。前記シリンダ3はベースプレート31と、このベースプレート31の両端に位置する一対のサイドプレート32を備えており、前記ピストン4はこれらベースプレート31及び一対のサイドプレート32によって形成された通路内を往復運動する。前記ベースプレート31及び一対のサイドプレート32は図示外のステンレス製筐体に対して固定されている。
【0020】
前記ピストン4は、中央に位置する第一ピストン4aと、この第一ピストン4aの両側に配置された一対の第二ピストン4bとから構成されている。これら第一ピストン4a及び一対の第二ピストン4bは図示外の連結機構によって第一アクチュエータ40に接続されている。この実施形態において、前記第一アクチュエータ40はボールねじとサーボモータを組み合わせた電動アクチュエータであり、前記ピストン4の移動量を検出するためのエンコーダを内蔵している。このため、前記エンコーダの出力信号に基づいて前記サーボモータの回転量を制御することにより、前記シリンダ3内における前記第一ピストン4a及び一対の第二ピストン4bの移動量を任意に制御することが可能となっている。
【0021】
また、前記第一ピストン4a及び前記一対の第二ピスン4bと前記第一アクチュエータ40との接続は個別に解除可能であり、前記第一ピストン4a及び前記一対の第二ピストン4bの双方を前記第一アクチュエータ40で同時に駆動することもできるし、前記第一ピストン4a又は前記一対の第二ピストン4bのいずれか一方のみを前記第一アクチュエータ40で駆動することもできる。前記第一ピストン4a又は前記一対の第二ピストン4bのいずれか一方のみを駆動する場合、前記第一アクチュエータ40との接続が解除された他方は前記シリンダ3内に進出した状態、すなわち前記ホッパー1の直下に停まった状態で固定される。
【0022】
このように、前記第一ピストン4a及び前記一対の第二ピストン4bの駆動を選択的に行うことにより、生地玉の生成に使用される前記シリンダ3の容積を変化させ、前記ホッパー1からシリンダ3内に落下させるパン生地の分量を変化させることが可能となっている。この実施形態において、前記一対の第二ピストン4bのそれぞれの断面積は前記第一ピストン4aの断面積の半分に設定されている。従って、前記一対の第二ピストン4bを前記シリンダ3に対して固定し、前記第一ピストン4aのみを駆動した場合、これら第一ピストン4a及び一対の第二ピストン4bを同時に駆動した場合と比較して、ピストン4のストローク量が同じであれば、前記生地排出口30から押し出される生地玉の大きさは半分に減じられる。これとは逆に、前記第一ピストン4aを前記シリンダ3に対して固定し、前記一対の第二ピストン4bのみを駆動した場合、前記生地排出口30からは前記一対の第二ピストン4bに対応して二個の生地玉が押し出され、各生地玉の大きさは、前記第一ピストン4aのみを駆動した場合の半分に減じられる。
【0023】
前記入口シャッター6は前記ピストン4と前記一対のサイドプレート32に摺接しながら、これらの上を進退する。前記入口シャッター6は図示外の連結機構によって第二アクチュエータ60に接続されている。この実施形態において、前記第二アクチュエータ60は、前記第一アクチュエータ40と同様、ボールねじとサーボモータを組み合わせた電動アクチュエータであり、前記入口シャッター6の移動量を検出するためのエンコーダを内蔵している。このため、前記エンコーダの出力信号に基づいて前記サーボモータの回転量を制御することにより、前記シリンダ3に対する前記入口シャッター6の移動量を任意に制御することが可能となっている。
【0024】
また、前記入口シャッター6と前記ホッパー1の間には、前記生地導入口30を有するアッパープレート7が設けられている(図1参照)。このため、前記入口シャッター6は前記ピストン4と前記アッパープレート7の間に設けられた隙間を進退する。前記入口シャッター6と前記アッパープレート7との間の気密性を高めるため、前記アッパープレート7も前記入口シャッター6と同様に耐摩耗性に優れた樹脂材料(例えばPEEK材やポリエチレンテレフタレート等)によって形成されている。
【0025】
前記ホッパー1は前記生地導入口10と連通する角筒状に設けられて前記アッパープレート7上に設置されている。このホッパー1は前記生地導入口10に連通する下部に対して上部が拡開したテーパー状に形成されている。但し、角筒状に形成された前記ホッパー1の四つの側面のうち、前記生地排出口30の上方に位置する前部側面11は前記ピストンの移動方向に対して垂直に起立している。
【0026】
前記入口シャッター6は前記アッパープレート7に摺接しながら前記シリンダ3に対して進退し、最も後退した際には前記生地導入口10を完全に開放し、最も進出した際には前記生地導入口10を塞ぐように構成されている。そして、前記入口シャッター6の進出方向の先端には斜めに切り欠かれた刃61が設けられており、前記シンリンダ3内に進出して前記生地導入口10を塞ぐ際には、前記ホッパー1からシリンダ3内に連続するパン生地をこの刃61によって切断するようになっている。
【0027】
更に、前記出口シャッター5は前記シリンダ3の一端に開口する生地排出口30を塞ぐように設けられている。この出口シャッター5は図示外の連結機構によって第三アクチュエータ50に接続されており、鉛直方向に上下動して前記生地排出口30の開放又は閉塞を行う。前記出口シャッター5は前記ベースプレート31、前記一対のサイドプレート32、前記アッパープレート7と摺接しており、これら部材との間の気密性を高めるため、前記出口シャッター5も前記入口シャッター6と同様に耐摩耗性に優れた樹脂材料(例えばPEEK材やポリエチレンテレフタレート等)によって形成されている。また、前記第三アクチュエータ50には出口センサが設けられており、出口シャッター5が前記生地排出口30の閉塞位置に設定されたことが検出される。
【0028】
一方、前記コンベアベルト2は前記シリンダ3の下方に位置すると共に一対の搬送ローラ20,21に張り渡された無端ベルトであり、前記シリンダ3から生地玉が押し出される方向(図1中の矢線A方向)へ回動している。前記一対の搬送ローラ20,21のうち、その一方は搬送モータ22によって回転駆動されており、前記搬送モータ22の回転速度を変化させることにより、前記コンベアベルト2の回転速度を生地玉の生産速度(単位時間当たりの生産個数)に合わせて調整することが可能となっている。
【0029】
また、前記コンベアベルト2の移動方向に関して前記生地玉の落下位置よりも上流側には、当該コンベアベルト2に対して打ち粉を散布する粉ふり器8が設けられている。前記粉ふり器8は生地玉の生産速度などに応じて打ち粉の量を適宜調整可能であり、前記シリンダ3から排出された生地玉が前記コンベアベルト2にこびり付くのを防止している。
【0030】
図3はこの分割装置の制御系を示すブロック図である。この制御系では、前記第一アクチュエータ40のエンコーダ90の出力信号、前記第二アクチュエータ60のエンコーダ91の出力信号、前記第三アクチュエータ50の出口センサ92の出力信号、ユーザインターフェイス93からの入力情報が制御部9に入力される。前記制御部9はこれらの入力に基づき、前記ピストン4を駆動する第一アクチュエータ40、前記入口シャッター6を駆動する第二アクチュエータ60、前記出口シャッター5を駆動する第三アクチュエータ50及び前記コンベアベルト2の搬送モータ22の駆動制御信号を生成する。前記ユーザインターフェイス93は、この分割装置の起動スイッチ及び停止スイッチを有すると共に、当該分割装置で生産する生地玉Pの目標質量や単位時間当たりの生産個数等の入力部を備えている。また、前記ユーザインターフェイス93からは生地玉Pの生成に必要な各種情報、例えば前記ホッパー1に投入するパン生地Rの加水率に関する情報を入力できるようにしても良い。
【0031】
前記ピストン4及び前記入口シャッター6の移動原点はこれら部材が前記シリンダ3内を最も前進してストッパー(図示せず)に突き当たった位置である。前記第一アクチュエータ40及び前記第二アクチュエータ60のエンコーダ90,91は当該位置を原点として前記ピストン4及び前記入口シャッター6の移動量を検出し、前記制御部9に入力する。従って、この分割装置の起動時や生地玉Pの目標質量の変更時には、前記ピストン4及び前記入口シャッター6の原点を検出するための初期動作が行われる。
【0032】
前記制御部9はRAM及びROMを内蔵したマイクロコントローラによって実現されており、各エンコーダやセンサの出力信号やユーザインターフェイス93からの入力情報を取り込むと共に、予めROMに格納された制御プログラムを実行して、前記第一アクチュエータ40、前記第二アクチュエータ60、前記第三アクチュエータ50及び前記搬送モータ22の動作を制御する。また、前記制御部9には、ユーザによって入力される生地玉の目標質量や単位時間当たりの生産個数に対して最適化された前記ピストン4及び前記入口シャッター6の駆動タイミング及びストローク量に関する情報が格納されており、前記制御部9は当該情報を参照しながら各アクチュエータ等の動作を制御する。これにより、前記シリンダ3内における前記ピストン4の動作に同期させて前記入口シャッター6、前記出口シャッター5の動きを制御し、前記ホッパー1内に投入されたパン生地から生地玉を連続的に生産し、排出することができる。
【0033】
次に、図4図8を用いてこの分割装置における生地玉の生産工程を説明する。
【0034】
図4は前記シリンダ3の生地排出口30から前記コンベアベルト2に対して生地玉Pを押し出した直後の状態を示すものである。このとき、前記出口シャッター5は前記生地排出口30を開放しており、前記ピストン4は前記シリンダ3内を生地玉Pの押出位置まで前進している。前記入口シャッター6は前記シリンダ3と前記ホッパー1との連通を遮断した閉塞位置に設定されている。すなわち、前記生地導入口10は前記入口シャッター6によって閉じられた状態にあり、前記ホッパー1内のパン生地Rは前記ピストン4内に落下することなく、前記入口シャッター6で堰き止められている。これらピストン4の押出位置及び入口シャッター6の閉塞位置は前述した原点位置に対するエンコーダ90,91のカウント値で決定されている。
【0035】
前記シリンダ3から生地玉Pの排出が終了すると、図5に示すように、前記出口シャッター5は降下して前記シリンダ3の生地排出口30を閉鎖する。前述したように、前記出口シャッター5は前記シリンダ3を構成している前記ベースプレート31、前記一対のサイドプレート32及び前記アッパープレート33と摺接しており、これら部材と高い気密性を保っているので、前記出口シャッター5によって生地排出口30が閉塞されると、前記シリンダ3内は外部に対して略密閉された状態となる。
【0036】
前記出口シャッター5による前記生地排出口30の閉塞が完了すると、図6に示すように、前記ピストン4及び前記入口シャッター6が前記シリンダ3内を後退し、生地玉Pの目標質量に対応した位置(以下、「目標位置」という)を超えて動作準備位置にセットされる。前記ピストン4及び前記入口シャッター6の動作準備位置は、生地玉Pの目標質量や前記ホッパー1に投入されたきパン生地Rの種類に応じて前記制御部9で設定され、生地玉Pの目標質量が大きいほど、前記ピストン4及び前記入口シャッター6の後退量は大きくなる。このように、前記ピストン4及び前記入口シャッター6が動作準備位置に設定されると、当該シリンダ3の生地導入口10が開放され、前記ホッパー1内のパン生地Rは前記シリンダ3内へ自重で落下する。
【0037】
このとき、前記出口シャッター6が前記生地排出口30を塞いでおり、更に前記ピストン4と前記シリンダ3の間の隙間が小さく設定され、前記シリンダ3の内部は外部に対して気密性が高く保たれている。このため、前記入口シャッター6と連動して前記ピストン4がシリンダ3内を後退すると、当該シリンダ3内は一時的に若干の負圧となり、ホッパー1内のパン生地Rは前記ピストン4の後退に伴って前記シリンダ3内に吸引される。これにより、前記ホッパー1内のパン生地Rを素早く流動させ、前記生地導入口10から前記シリンダ3に充填することが可能となる。このようなパン生地Rの流動は当該パン生地の加水率に関係なく生じるが、加水率の高いパン生地Rは粘着性が高く且つ流動性が大きい状態にある。このため、高加水率のパン生地は前記ピストン4の後退によって前記シリンダ3へ顕著に吸引され、前記生地導入口10からシリンダ3へ円滑に充填される。
【0038】
前記ピストン4及び前記入口シャッター6を動作準備位置まで後退させて、前記シリンダ3内にパン生地Rを吸引したら、図7に示すように、前記ピストン4は動作準備位置から前記生地排出口30に向けて目標位置まで前進し、前記シリンダ3内の容積を生地玉Pの目標質量に対応した容積まで減じる。この際、前記入口シャッター6も前記ピストン4の進出に伴って前記シリンダ3内を前記生地排出口30に向けて前進するが、前記生地導入口10を完全に閉塞しない位置(以下、「生地戻し位置」という)で停止する。すなわち前記シリンダ3と前記ホッパー1の連通状態は保たれている。このとき、前記ピストンの目標位置、前記入口シャッターの生地戻し位置は、生地玉Pの目標質量やホッパー1内に投入されているパン生地Rの加水率に応じて前記制御部9で設定される。また、ユーザが生地玉の生産状態を観察しながら前記ユーザインターフェイス93を通じて適宜調整することも可能である。
【0039】
これにより、前記シリンダ3内に吸引されたパン生地Rがピストン4によって押圧され、シリンダ3内の隙間がパン生地Rで埋められると共に、前記シリンダ3の容積に対して余剰なパン生地Rが前記生地導入口10を介して前記ホッパー1に押し戻される。すなわち、この分割装置では、前記ピストン4を動作準備位置まで後退させて、前記シリンダ3内に目標質量よりも多量のパン生地Rを吸引した後、前記ピストン4を目標位置まで前進させることで、一旦は前記シリンダ3内に吸引したパン生地Rを前記ホッパー1に押し戻し、前記シリンダ3内のパン生地の量を調整している。このような前記シャッター6と前記ピストン4の動きにより、前記シリンダ3から排出する生地玉Pの大きさの安定性を確保することが可能となっている。
【0040】
また、前述の如くこの実施形態の分割装置においては、前記ホッパー1の前部側面11がピストン4の移動方向に対して垂直に起立していることから、前記ピストン4が前記シリンタ3内のパン生地をホッパー1に押し戻す動作を行うにあたり、前記ホッパーの前部側面11がピストン4の移動方向に対して傾斜している場合と比較して、パン生地のホッパー内への流動に対して抵抗が作用し易くなっている。このため、図7に示すように前記ピストン4を動作準備位置から目標位置まで前進させた際に、パン生地Rがシリンダ3内の隅々まで充填されやすく、前述したホッパー1の形状によっても前記シリンダ3から排出する生地玉Pの大きさの安定性を確保することが可能となっている。
【0041】
この後、図8に示すように、前記入口シャッター6が前記生地戻し位置から閉塞位置に前進すると、前記生地導入口10は前記入口シャッター6によって完全に閉塞され、前記ホッパー1からシリンダ3内に連続するパン生地Rは前記入口シャッター6によって切断される。これにより、前記シリンダ3の容積に応じた大きさの生地玉Pがホッパー1内のパン生地Rから分割される。
【0042】
最後に、前記出口シャッター5を前記生地排出口30から引き上げて前記シリンダ3を開放すると共に、前記ピストン4を目標位置から押出位置まで進めると、生地玉Pが前記シリンダ3内から前記コンベアベルト2の上に排出される。生地玉Pの排出が完了すると、前記ピストン4、前記入口シャッター6及び前記出口シャッター5は、既に説明した図4の位置に設定されている。以降は図4図8を用いて説明した動作を繰り返すことにより、前記シリンダ3から所定の大きさの生地玉Pを繰り返し排出することができる。
【0043】
更に、この分割装置で連続的に生産される生地玉の質量の安定化という観点からすれば、図7の状態、すなわち前記ピストン4を動作準備位置から目標位置まで前進させた状態から、当該ピストン4を動作準備位置に向けて僅かに後退させ、再度、目標位置へ前進させる往復動作(以下、「もみ返し動作」という)を行うのが好ましい。このもみ返し動作における前記ピストン4の往復動作のストローク量は、生地玉Pの目標質量やホッパー1内に投入されているパン生地Rの加水率に応じて適宜調整することができ、前記ユーザインターフェイス95を通じてユーザが任意に設定する。
【0044】
実際に本実施形態の分割装置を用いてホッパー1内のパン生地Rを生地玉Pに分割するに際し、前述のもみ返し動作を有無に応じ、生産された生地玉Pの質量のバラつき具合に相違が生じるか否かを確認したところ、もみ返し動作を行った方が生地玉Pの質量のバラつきを抑えることができ、目標質量の生地玉を安定的に連続生産することが可能であった。尚、前記もみ返し動作の要否はユーザが任意に設定することが可能であるが、当該もみ返し動作は前記シリンダ3に導入されたパン生地Rに対して余分なストレスを与える懸念があり、そのような観点からすれば、高加水率のパン生地に対しては前記もみ返し動作を実施する必要はない。
【0045】
以上説明してきたように、本発明を適用した分割装置によれば、前記ホッパー内に投入されたパン生地が前記生地排出口から生地玉として排出されるまでの工程で、パン生地に対して押圧力が加えられるのは、前記ピストン4がパン生地を前記シリンダ3から押し出す際の一回のみである。このため、パン生地を所定質量の生地玉に分割する際に食品生地に与えるストレスを可及的に小さくすることができ、生地玉に分割した後の製パン工程に対して良好な影響を与えることが可能となる。
【0046】
また、生地玉を生成する際には、前記制御部9が生産する生地玉の目標質量や単位時間当たりの生産個数に応じ、前記シリンダ3内における前記ピストン4の進退動作を制御し、併せて前記入口シャッター6及び前記出口シャッター5の開閉を制御するので、これらピストン、入口シャッター及び出口シャッターの連動タイミングを適正化することができ、生産された生地玉に与えるストレスを最小限に抑えることが可能となる。
【0047】
特に、このような分割装置はパン生地に与えるストレスを可及的に小さくできることから、多量の水分を保持した高加水生地に対して有効である。すなわち、この分割装置を使用すれば、生地玉の生産工程において、生地内に生成されたグルテン膜が破断し難く、生地玉の生産時における水分流出を抑えることが出来るので、作業性の悪い高加水率のパン生地であってもその分割作業を自動化することが可能となる。従って、前記ホッパー内に投入したパン生地の加水量に応じて、前記シリンダ3内における前記ピストン4の進退動作を制御し、併せて前記入口シャッター6及び前記出口シャッター5の開閉を制御すれば、食感に優れた高加水率のパンを効率よく生産することが可能である。
【0048】
尚、図を用いて説明した本発明の実施形態では、本発明をパン生地の分割装置に適用した例を説明したが、前記実施形態を適宜設計変更することにより、他の食品生地の分割装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…ホッパー、2…コンベアベルト、3…シリンダ、4…ピストン、5…出口シャッター、6…入口シャッター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8