IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 埼玉県の特許一覧

特開2022-163610水分活性測定装置及び水分活性測定方法
<>
  • 特開-水分活性測定装置及び水分活性測定方法 図1
  • 特開-水分活性測定装置及び水分活性測定方法 図2
  • 特開-水分活性測定装置及び水分活性測定方法 図3
  • 特開-水分活性測定装置及び水分活性測定方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163610
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】水分活性測定装置及び水分活性測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/56 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
G01N25/56 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068634
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】591267855
【氏名又は名称】埼玉県
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 真也
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AA04
2G040BA01
2G040BA25
2G040CA02
2G040CA05
2G040DA08
2G040DA12
2G040EA02
2G040EA14
2G040EC07
2G040FA01
2G040FA04
2G040FA10
2G040GA09
2G040ZA08
(57)【要約】
【課題】個々の測定環境の個体差による誤差の影響を受けることなく、同一の測定環境下での水分活性の測定を、同一サンプルを複数同時に、又は、同一でないサンプルを複数同時に行うことを可能とする水分活性測定装置を提供する。
【解決手段】測定対象サンプルを格納する複数の格納手段であって、各々に温湿度測定素子を有する、複数の格納手段と、複数の格納手段を支持する支持手段と、支持手段を収納する恒温手段と、温湿度測定素子により測定された湿度から水分活性値を算出する制御手段とを備え、支持手段は、複数の格納手段の各々を、恒温手段の内壁及び天地面から隔離された状態で支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象サンプルを格納する複数の格納手段であって、各々に温湿度測定素子を有する、複数の格納手段と、
前記複数の格納手段を支持する支持手段と、
前記支持手段を収納する恒温手段と、
前記温湿度測定素子により測定された湿度から水分活性値を算出する制御手段と
を備え、
前記支持手段は、前記複数の格納手段の各々を、前記恒温手段の内壁及び天地面から隔離された状態で支持することを特徴とする水分活性測定装置。
【請求項2】
前記格納手段は、前記温湿度測定素子を加熱するヒータをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の水分活性測定装置。
【請求項3】
前記支持手段は、前記複数の格納手段のうち、1の格納手段における前記ヒータによる加熱が、他の格納手段における測定に影響を及ぼさないように、前記複数の格納手段を相互に隔離された状態で支持することを特徴とする請求項2に記載の水分活性測定装置。
【請求項4】
前記格納手段は、前記支持手段に接合されると、
前記制御手段は、前記支持手段に接合された格納手段に対して、前記ヒータによる前記温湿度測定素子の加熱を開始するように制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の水分活性測定装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記温湿度測定素子により測定された湿度に応じて、前記ヒータによる前記温湿度測定素子の加熱を停止するように制御することを特徴とする請求項4に記載の水分活性測定装置。
【請求項6】
測定対象サンプルを格納する複数の格納手段であって、各々に温湿度測定素子を有する、複数の格納手段と、前記複数の格納手段を支持する支持手段と、前記支持手段を収納する恒温手段と、制御手段とを備えた水分活性測定装置における水分活性測定方法であって、
前記複数の格納手段の各々に、複数の同一サンプル、又は、複数の同一でないサンプルを格納する格納ステップと、
前記サンプルの格納された複数の格納手段を前記支持手段に接合する接合ステップと、
前記恒温手段に前記支持手段を収納する収納ステップと、
前記複数の格納手段の各々において、前記温湿度測定素子により湿度を測定する測定ステップと、
前記温湿度測定素子により測定された湿度から水分活性値を算出する算出ステップと
を含み、
前記支持手段は、前記複数の格納手段の各々を、前記恒温手段の内壁及び天地面から隔離された状態で支持することを特徴とする水分活性測定方法。
【請求項7】
前記格納手段は、前記温湿度測定素子を加熱するヒータをさらに備え、
前記接合ステップにおいて、前記格納手段が前記支持手段に接合されると、前記ヒータにより前記温湿度測定素子を加熱するように制御する第1の制御ステップと、
前記温湿度測定素子により測定された湿度の単位時間あたりの変化量が所定の閾値以下になると、温湿度測定器の加熱を停止するように制御する第2の制御ステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の水分活性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等のサンプルの水分活性値を測定する水分活性測定装置と水分活性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の保存性に関する有用な指標として、水分活性値を利用することが広く知られている。この水分活性値を指標とするためには、水分活性値の測定精度を高めることが必要不可欠であり、また、水分活性値の測定精度を高めるために、測定対象サンプルの水分活性値を複数、測定し、その測定された値の平均値を求め、誤差を最小化することが行われている。
【0003】
ここで、水分活性値を測定する従来の装置として、例えば、非特許文献1に開示された装置があるが、この非特許文献1に開示された装置では、単一のサンプル容器しか設置することができず、一度の測定につき、単一のサンプルを対象とした水分活性値の測定しかできない。
【0004】
そのため、非特許文献1に開示された装置において、上述のように水分活性値の測定精度を高めるためには(測定値の誤差を最小化するためには)、サンプルの測定を複数回、繰り返し行わなければならない。但し、そのように複数回、測定すると、測定に多くの時間を要し、複数回の測定のうち、初回の測定時と最後の測定時とでは、測定器周辺の温度及び湿度等の測定環境が経時的に変化し、測定値に誤差が生じる問題(懸念)がある。
【0005】
そこで、このような問題に対応するために、複数のサンプルを同時に測定できる装置が開示されている(非特許文献2)。この非特許文献2に開示された装置では、4個のサンプル容器が各々、装置本体とケーブルで接続されており、4個のサンプルを同時に測定することができる。また、これらの4個のサンプル容器の各々には、恒温水槽構造(恒温手段)が備えられており、サンプル容器内部を所定の温度に設定することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】DKSHジャパン株式会社 スイス・ノバシーナ(novasina)社製「水分活性測定装置」インターネット〈URL:https://novasina-dkshj.jimdofree.com/〉
【非特許文献2】Rotronic社 HYGROLAB C1 高性能研究用機器 インターネット〈https://www.rotronic.com/ja-jp/humidity-measurement-feuchtemessung-temperaturmessung/water-activity-wasseraktivitaet/benchtop-instruments/hygrolab.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この非特許文献2に開示された装置では、4個のサンプル容器を備え、かつ、その各々に恒温手段を備えていることから、測定環境の変化に伴う経時的な測定値の誤差は生じないものの、4個のサンプル容器において測定環境(温度環境)を同一に設定しても、その恒温手段の個体差により、測定した水分活性値に誤差(ばらつき)が生じるという課題がある。
【0008】
本発明の課題は、個々の測定環境の個体差による誤差の影響を受けることなく、同一の測定環境下での水分活性値の測定を、同一サンプルを複数同時に、又は、同一でないサンプルを複数同時に行うことを可能とする水分活性測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水分活性測定装置は、測定対象サンプルを格納する複数の格納手段であって、各々に温湿度測定素子を有する、複数の格納手段と、前記複数の格納手段を支持する支持手段と、前記支持手段を収納する恒温手段と、前記温湿度測定素子により測定された湿度から水分活性値を算出する制御手段とを備え、前記支持手段は、前記複数の格納手段の各々を、前記恒温手段の内壁及び天地面から隔離された状態で支持することを特徴とする。
【0010】
本発明は、測定対象サンプルを格納する複数の格納手段であって、各々に温湿度測定素子を有する、複数の格納手段と、前記複数の格納手段を支持する支持手段と、前記支持手段を収納する恒温手段と、制御手段とを備えた水分活性測定装置における水分活性測定方法であって、前記複数の格納手段の各々に、複数の同一サンプル、又は、複数の同一でないサンプルを格納する格納ステップと、前記サンプルの格納された複数の格納手段を前記支持手段に接合する接合ステップと、前記恒温手段に前記支持手段を収納する収納ステップと、前記複数の格納手段の各々において、前記温湿度測定素子により湿度を測定する測定ステップと、前記温湿度測定素子により測定された湿度から水分活性値を算出する算出ステップとを含み、前記支持手段は、前記複数の格納手段の各々を、前記恒温手段の内壁及び天地面から隔離された状態で支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水分活性測定装置によれば、個々の測定環境の個体差による誤差の影響を受けることなく、同一の測定環境下での水分活性値の測定を、同一サンプルを複数同時に、又は、同一でないサンプルを複数同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】水分活性測定装置を示す概略図である。
図2】サンプル格納容器及びコネクタの概略図である。
図3】パネル板の概略図である。
図4】パネル板を収納している恒温手段の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を限定するものではなく、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれ、また、以下の実施形態の一部を適宜組み合わせることもできる。
【0014】
図1は、水分活性測定装置を示す概略図である。図1に示されるように、水分活性測定装置は、主にサンプル格納容器1、パネル板2、恒温手段3、計算機4、表示装置5及び通信ケーブル6を備える。
【0015】
水分活性測定装置において、水分活性値は、サンプル格納容器1において、平衡状態で測定された温度及び湿度に基づいて算出される。また、サンプル格納容器1内の温度及び湿度は、サンプル格納容器1が支持されたパネル板2を恒温手段3内に収納した状態で測定される。
【0016】
計算機4は、制御手段であり、主に温湿度測定器14の制御、ヒータ15の制御、温度及び湿度の測定値より水分活性値の平均値等を算出する算出制御、並びに表示装置5への表示制御を実行する。表示装置5は、計算機4で算出された水分活性値の平均値等を表示するほか、必要に応じて、測定経過時間、及び測定時間と水分活性値との関係を示すグラフ等を表示する。なお、計算機4及び表示装置5は、恒温手段3内の温度等に影響を与えないように、恒温手段3の外部に備えられていることが好ましい。
【0017】
通信ケーブル6は、LAN(Local Area Network)ケーブル等の有線のケーブルであり、計算機4は、通信ケーブル6(パネル板2、コネクタ受体21及びコネクタ13)を介して、サンプル格納容器1と通信する。本実施形態では、サンプル格納容器1と通信ケーブル6の通信に際して、通信ケーブル6を用いて通信する例に関して説明したが(即ち、有線で通信する例に関して説明したが)、ここでの通信は必ずしも有線で行う必要はなく、後述のとおり、無線LAN等の無線で行うこともできる。
【0018】
図2は、サンプル格納容器1を示す図である。図2に示されるように、サンプル格納容器1は、格納手段であり、容器上部11、容器下部12、コネクタ13、温湿度測定器14及びヒータ15を備える。
【0019】
本実施形態のサンプル格納容器1に関して、容器上部11と容器下部12を分離できる構造としており、また、容器上部11と容器下部12を螺合させることにより、容器内を容易に密閉することができる。また、この螺合(密閉)は、容器上部11に固着されたコネクタ13がサンプル格納容器1全体を支持した場合でも、容器上部11から容器下部12が重力により落脱しない程度になされる。
【0020】
なお、本実施形態では、容器上部11と容器下部12の形状として円柱状の容器を用いて説明したが、容器上部11と容器下部12の形状は、必ずしもこれに限定されず、例えば、立方体の箱状等の容器を用いてもよい。また、サンプル格納容器1を密封する構造として螺合構造を用いて説明したが、サンプル格納容器1を密封する構造は、必ずしもこれに限定されず、例えば、フック掛け、パッキン、磁石等で密閉する構造を用いてもよい。
【0021】
その他、本実施形態では、上述のように、取扱いの容易性から、容器上部11と容器下部12を分離できる構造として説明したが、容器上部11と容器下部12は、必ずしも分離できる構造にする必要はなく、例えば、蝶番等で接続され、分離できない構造(一体型)としてもよい。
【0022】
また、容器上部11と容器下部12の素材としては、金属、樹脂、ガラス等やこれらの組合せによるものを用いてもよいが、サンプル格納容器1は恒温手段3内において、恒温下に置かれるため、熱伝導度の高い金属等の素材を用いることが好ましい。
【0023】
コネクタ13は、パネル板2に対して接合分離することが可能な部品であり、サンプル格納容器1をパネル板2に接合した際に、サンプル格納容器1全体を支持することができる程度に、サンプル格納容器1に固着される。
【0024】
本実施形態において、コネクタ13は、接続用のケーブルの取回しを廃して測定時の作業性を向上させるため、サンプル格納容器1全体を支持すること以外に(例えば、USB(Universal Serial Bus)等の規格に準じて)プリント基板等を介して接続される温湿度測定器14及びヒータ15に対する給電及び各種命令の伝達のために用いられる。
【0025】
なお、本実施形態では、サンプル格納容器1に対する給電及び各種命令の伝達を、コネクタ13を用いて行う例について説明したが、ここでの通信は必ずしもコネクタ13で行う必要はなく、無線LAN等の無線で行うこともできる(サンプル格納容器1は内蔵したバッテリによる給電が可能であるからワイヤレスにすることができる)。また、本実施形態では、図2に示されるように、サンプル格納容器1におけるコネクタ13の位置は、容器上部11に固着する構造としているが、容器下部12に固着する構造としてもよい。
【0026】
温湿度測定器(温湿度測定素子)14は、容器上部11と容器下部12により密閉されたサンプル格納容器1内の温度及び湿度を測定する。温湿度測定器には、静電容量式、電気抵抗式、鏡面冷却式等の温湿度測定器があるが、本実施形態では、温湿度測定器14として、静電容量式の湿度測定器を用いている。
【0027】
本実施形態において、温湿度測定器14の位置は、サンプルからの温度及び湿度に係る影響を低減するため、かつ、コネクタ13との接続の便宜のため、コネクタ13に隣接させているが、必ずしもコネクタ13に隣接させる必要はなく、例えば、容器下部12に設置する構造としてもよい。
【0028】
上述のように、本実施形態では、温湿度測定器として、静電容量式の温湿度測定器を用いており、そのため、乾湿膜の水分吸収現象によるオフセット変化が生じてしまうことになる。ここで、感湿膜は、程よく水分を含んでいる状態であることが好ましく、高湿下に長時間、置かれて大量の水分を含んだ状態や、低湿下に長時間置かれて乾燥した状態では、湿度の測定結果に誤差が生じることになる。また、補足として、水分活性測定において、温湿度測定器が乾燥する機会は少なく、逆に高湿下に長時間置かれる機会は多々、生じる。
【0029】
そこで、本実施形態では、局所的に温湿度測定器14を加熱するヒータ15を具備させ、これにより、温湿度測定器14を容易にベーキング(加熱)できるようにしている。このベーキングによって、オフセット変化から温湿度測定器14を回復させ(オフセット変化から温湿度測定器14を調整し)、水分活性値の測定誤差を最小化することができる。
【0030】
具体的には、本実施形態において、計算機4は、サンプル格納容器1がコネクタ受体21に接合されたことを感知すると、オフセット変化から回復させるために、ヒータ15の加熱を開始するように制御する。加えて、計算機4は、ヒータ15による加熱を開始した後、温湿度測定機14により測定された湿度に応じて、ヒータ15の加熱を停止する制御を行う。より具体的には、温湿度測定機14により測定された湿度の単位時間あたりの変化量が所定の閾値以下となったことを感知すると(例えば、10秒間の測定値が±0.02aw(±2% RH)の範囲内になったことを感知すると)、ヒータ15の加熱を停止する制御を行う。
【0031】
このように制御することにより、温湿度測定器14において、温度及び湿度を測定する上で常に最適な状態が維持されることとなり、誤差を最小化した状態で水分活性値を測定することができる。なお、本実施形態において、計算機4は、測定を終了すると、ヒータ15による温湿度測定機14の加熱を開始するように制御し、温湿度測定器14をオフセット変化から回復させる。このように制御することで、次のサンプルを測定するまでの準備時間を短縮することができる。なお、温湿度測定器として、電気抵抗式の温湿度測定器を用いた場合でも、乾湿膜の水分吸収現象の問題が少なからず生じ、また、湿度測定器に結露が生じることもあることから、ベーキング作業による効果を見込むことができる。
【0032】
図3は、パネル板2を示す図である。図3に示されるように、パネル板2には、コネクタ受体21が複数、設置され、また、恒温手段3内で自立させることが可能なように、その下部に脚部22を備えている。その他、パネル板2は、周囲の温度の影響をうけにくい素材で製造されたものを用いることが好ましく、ここでは、樹脂で製造されたものを用いている。
【0033】
コネクタ受体21は、コネクタ受体21に接合されたサンプル格納容器1を支持する上で十分な強度になるように、パネル板2に設置される。また、パネル板2に設置される複数のコネクタ受体21は、測定時において、複数のコネクタ受体21のうちの1の受体21に接合されたサンプル格納容器1が、他のコネクタ受体21に接合されたサンプル格納容器1からの影響を受けず、迅速な測定ができるように、随意に相互に隔離した位置に設置される。
【0034】
図3では、サンプル格納容器1をパネル板2上において、随意に隔離して配置することができるように、複数のコネクタ受体21を規則的に配列した例を示している。このように、コネクタ受体21(即ち、パネル板2)は、サンプル格納容器1のコネクタ13と接合されることにより、サンプル格納容器1と計算機4との間の媒材となり、サンプル格納容器1への給電やサンプル格納容器1との通信を可能にする。
【0035】
脚部22は、パネル板2を自立させるための補助手段である。脚部22により、サンプル格納容器1の接合を容易にすることや恒温手段3内でパネル板2を自立させることができる。なお、脚部22を、必ずしもパネル板2に具備させる必要はなく、パネル板2自体を屈曲させること等により自立させるようにしてもよい。
【0036】
図4は、恒温手段3を示す図である。図4に示されるように、恒温手段3は、恒温容器部31、扉部32、センサ付温度調節部33及び電源ケーブル34を備え、また、恒温手段3としては、例えば、市販の恒温槽又はインキュベータを用いることができる。
【0037】
恒温容器部31は、同一の測定環境(同一の温度環境)において、1又は複数のサンプル格納容器1が支持されたパネル板2を収納する。なお、パネル板2は、接合されたサンプル格納容器1が恒温手段3の内壁及び天地面から隔離された状態となる位置に収納される。
【0038】
扉部32は、恒温容器部31内の温度を一定に保持できるように、恒温容器部31の開口を密閉する。本実施形態では、図4に示されるように、扉部32の位置を、恒温手段3の側面としているが、それ以外の位置、例えば、天面等としてもよい。
【0039】
センサ付温度調整部33は、温度センサ、並びに加熱器及び冷却器を備える。センサ付温度調整部33は、温度センサが設定温度よりも高い温度として感知すると、冷却器で冷却することにより、恒温手段3内の温度を設定温度に維持するように動作し、また、温度センサが設定温度よりも低い温度として感知すると、加熱器で加熱することにより、恒温手段3内の温度を設定温度に維持するように動作する。電源ケーブル34は、センサ付温度調節部33に給電するためのケーブルである。
【0040】
続いて、水分活性値を測定する方法(より詳細には、複数のサンプルの水分活性値を同時に測定する方法)について説明する。先ず、複数のサンプルをそれぞれ複数のサンプル格納容器1に格納し、そのサンプルが格納された複数のサンプル格納容器1を、各々、パネル板2のコネクタ受体21に接合し、サンプル格納容器1が、パネル板2に支持された状態にする。なお、この接合の際には、測定値の誤差を最小化するために、各々のサンプル格納容器1を、恒温手段3の内壁と他のサンプル格納容器1から隔離されるように接合する。
【0041】
次に、パネル板2を恒温容器部31内に収納し、扉部32で密閉する。なお、予め恒温手段3内にパネル板2を収納した上で、サンプル格納容器1を接合することもできる。恒温手段3のセンサ付温度調整部33により恒温手段3内の測定環境が同一化されるとともに、サンプル格納容器1内においては、ヒータ15の加熱により、オフセット変化からの回復がなされる。
【0042】
その後、温湿度測定器14が水分活性値の測定を継続し、計算機4は、測定した湿度に応じて(より具体的には、温湿度測定機14により測定された湿度の単位時間あたりの変化量(差分)が所定の閾値以下となったことを感知すると)、ヒータ15の加熱を停止するように制御し、さらに、測定結果の平衡状態(例えば、1分間の測定値が±0.002aw(±0.2% RH)の範囲内にあること)を感知すると、その平衡状態で測定された結果から水分活性値を算出するように制御する。
【0043】
計算機4は、水分活性値を算出すると、その算出した水分活性値を表示装置5に表示するように制御し、測定が完了した温湿度測定器14に対して再びベーキング(加熱)を開始するように制御する。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態に係る水分活性測定装置によれば、サンプル格納容器の各々に恒温手段が設けられていないことから、各々のサンプル格納容器の個体差による影響を受けることがなく、また、恒温を目的とした高電圧給電を行う必要が無くなる(即ち、サンプル格納容器の各々に、高電圧給電を目的とした電源ラインを設ける必要が無くなる)。さらに、同一の測定環境下での水分活性値の測定を、同一サンプルを複数同時に、又は、同一でないサンプルを複数同時に行うことができる。
【0045】
なお、上述の説明では、パネル板上に設置される、複数のコネクタ受体の位置が固定される仕様として説明したが、サンプル格納容器を任意の位置で支持することができるように、パネル板上においてコネクタ受体の位置を移動できるようにしてもよい。
【0046】
具体的には、パネル板上にコネクタ受体をネジ止め可能なネジ穴が複数、設けられ、そのネジ穴から任意のネジ穴を選択し、コネクタ受体をネジ止めすることで、任意の位置に、サンプル格納容器を固定するようにしてもよい。また、サンプル格納容器の各々に無線通信機能及び電池を実装することを前提に、磁石等を用いてパネル板上にサンプル格納容器を固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1:サンプル格納容器
2:パネル板
3:恒温手段
4:計算機
5:表示装置
6:通信ケーブル
図1
図2
図3
図4