(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163616
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】装飾具の取付構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20221019BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068644
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 広志
(72)【発明者】
【氏名】高野 哲樹
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】装飾具が表皮材の表面から突出しないように取り付けられても、その装飾具の周縁部付近の表皮材に皺が発生することを抑制できる装飾具の取付構造を得る。
【解決手段】表面が意匠面34とされた本体部32と、本体部32の裏面に突設された被固定部36と、を有する装飾具30と、被固定部36を挿通させる貫通孔16と、貫通孔16から本体部32の周縁部が配置される部位に向かって連続するスリット部17と、を有する表皮材12と、本体部32の厚み以上の深さとされた凹部24と、被固定部36を挿通させる貫通孔26と、を有し、凹部24に表皮材12の一部と共に本体部32を収容することで、表皮材12の一部を本体部32とで挟持する裏板20と、を備えた装飾具30の取付構造10とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が意匠面とされた本体部と、前記本体部の裏面に突設された被固定部と、を有する装飾具と、
前記被固定部を挿通させる貫通孔と、前記貫通孔から前記本体部の周縁部が配置される部位に向かって連続するスリット部と、を有する表皮材と、
前記本体部の厚み以上の深さとされた凹部と、前記被固定部を挿通させる貫通孔と、を有し、前記凹部に前記表皮材の一部と共に前記本体部を収容することで、前記表皮材の一部を前記本体部とで挟持する裏板と、
を備えた装飾具の取付構造。
【請求項2】
前記裏板の貫通孔に挿通された前記被固定部を固定可能な固定部材を備えた請求項1に記載の装飾具の取付構造。
【請求項3】
前記本体部が、その厚み方向から見て、円弧状のコーナー部を有する略矩形状に形成されるとともに、その厚み方向略中央部にパーティングラインを有する樹脂製とされ、
前記本体部の厚み方向と直交する方向から見て、少なくとも前記コーナー部における前記パーティングラインから裏面側が円弧状に形成されている請求項1又は請求項2に記載の装飾具の取付構造。
【請求項4】
前記コーナー部における前記本体部の裏面に、前記コーナー部における前記パーティングラインの曲率よりも小さい曲率とされた稜線部が形成されている請求項3に記載の装飾具の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾具の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状基材の被貼り付け面に形成された凹部内に、装飾布帛片の外縁部を入り込ませるとともに、その装飾布帛片の外縁部を接着によって貼り付け、装飾布帛片の中央裏面には非接着部を設けた装飾布帛片の貼り付け構造は、従来から知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装飾具を表皮材に取り付ける際、その装飾具が表皮材の表面から突出しないように取り付けられる場合がある。しかしながら、その場合に、表皮材が複数の層で構成されて比較的厚く形成されていると、装飾具の周縁部付近の表皮材に皺が発生し易くなり、装飾具周りの外観品質が損なわれるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、装飾具が表皮材の表面から突出しないように取り付けられても、その装飾具の周縁部付近の表皮材に皺が発生することを抑制できる装飾具の取付構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の装飾具の取付構造は、表面が意匠面とされた本体部と、前記本体部の裏面に突設された被固定部と、を有する装飾具と、前記被固定部を挿通させる貫通孔と、前記貫通孔から前記本体部の周縁部が配置される部位に向かって連続するスリット部と、を有する表皮材と、前記本体部の厚み以上の深さとされた凹部と、前記被固定部を挿通させる貫通孔と、を有し、前記凹部に前記表皮材の一部と共に前記本体部を収容することで、前記表皮材の一部を前記本体部とで挟持する裏板と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、装飾具の本体部と裏板とで表皮材の一部を挟持した状態、即ち装飾具の本体部が表皮材の一部と共に裏板の凹部に収容された状態で、装飾具が表皮材に取り付けられる。このとき、裏板の凹部の深さが、本体部の厚み以上の深さとされているため、装飾具は、その意匠面が表皮材の表面から突出しない。また、表皮材には、被固定部を挿通させる貫通孔から装飾具の本体部の周縁部が配置される部位に向かって連続するスリット部が形成されている。したがって、表皮材が比較的厚く形成されていても、その表皮材に加わる圧力がスリット部の広がりによって緩和され、装飾具の周縁部付近の表皮材に皺が発生することが抑制される。
【0008】
また、請求項2に記載の装飾具の取付構造は、請求項1に記載の装飾具の取付構造であって、前記裏板の貫通孔に挿通された前記被固定部を固定可能な固定部材を備えている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、裏板の貫通孔に挿通された被固定部が固定部材によって固定される。したがって、装飾具が表皮材(裏板)から外れてしまうことがより確実に防止される。
【0010】
また、請求項3に記載の装飾具の取付構造は、請求項1又は請求項2に記載の装飾具の取付構造であって、前記本体部が、その厚み方向から見て、円弧状のコーナー部を有する略矩形状に形成されるとともに、その厚み方向略中央部にパーティングラインを有する樹脂製とされ、前記本体部の厚み方向と直交する方向から見て、少なくとも前記コーナー部における前記パーティングラインから裏面側が円弧状に形成されている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、装飾具の本体部が、その厚み方向から見て、円弧状のコーナー部を有する略矩形状に形成されており、その厚み方向と直交する方向から見て、少なくともコーナー部におけるパーティングラインから裏面側が円弧状に形成されている。したがって、少なくともコーナー部において、例えばパーティングラインから裏面側の周縁部と裏面とが略直角に交わる形状に形成されている場合に比べて、本体部のコーナー部によって、そのコーナー部付近に存在する表皮材を凹部内へ押し込む押圧力が低減される。これにより、装飾具の本体部が表皮材の一部と共に裏板の凹部に収容されたときに、装飾具の周縁部付近の表皮材に皺が発生することが効果的に抑制される。なお、装飾具の意匠面の外観で、視界に入るのは、せいぜいパーティングラインまでである。そのため、パーティングラインから裏面側の形状によって装飾具の意匠性が損なわれるおそれはない。
【0012】
また、請求項4に記載の装飾具の取付構造は、請求項3に記載の装飾具の取付構造であって、前記コーナー部における前記本体部の裏面に、前記コーナー部における前記パーティングラインの曲率よりも小さい曲率とされた稜線部が形成されている。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、装飾具の本体部のコーナー部における裏面に、コーナー部におけるパーティングラインの曲率よりも小さい曲率とされた稜線部が形成されている。したがって、コーナー部における裏面に、コーナー部におけるパーティングラインの曲率よりも大きい曲率とされた稜線部が形成されている場合に比べて、コーナー部における裏面側の曲率が緩やかになり、本体部のコーナー部によって、そのコーナー部付近に存在する表皮材を凹部内へ押し込む押圧力がより一層低減される。これにより、装飾具の本体部が表皮材の一部と共に裏板の凹部に収容されたときに、装飾具の周縁部付近の表皮材に皺が発生することがより効果的に抑制される。なお、装飾具の意匠面の外観で、視界に入るのは、せいぜいパーティングラインまでである。そのため、その稜線部によって装飾具の意匠性が損なわれるおそれはない。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、装飾具が表皮材の表面から突出しないように取り付けられても、その装飾具の周縁部付近の表皮材に皺が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る装飾具の取付構造を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る装飾具の取付構造を示す分解斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る装飾具の取付構造を示す正面図である。
【
図4】本実施形態に係る装飾具の取付構造を示す背面図である。
【
図5】本実施形態に係る装飾具の取付構造を一部断面にて示す平面図である。
【
図6】本実施形態に係る装飾具の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図7】本実施形態に係る装飾具の一部を拡大して示す
図6の矢視X図である。
【
図8】本実施形態に係る装飾具の一部を拡大して示す
図6の矢視Y図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、本実施形態に係る装飾具30は、一例として、車両用シート(図示省略)の表皮材12に取り付けられる。したがって、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車両用シートの上方向、矢印FRを車両用シートの前方向、矢印RHを車両用シートの右方向とする。つまり、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両用シートの上下、前後、左右を示すものとする。
【0017】
図1~
図5に示されるように、本実施形態に係る取付構造10は、車両用シートの表皮材12と、その表皮材12を挟持することで、その表皮材12に取り付けられる樹脂製の装飾具30及び樹脂製の裏板20と、を備えている。裏板20は、表皮材12の裏面側に配置され、装飾具30は、表皮材12の表面に配置されるようになっている。そして、この装飾具30は、一例として、車両シートの右側面に設けられている。
【0018】
装飾具30は、前後方向が長手方向とされた略矩形平板状の本体部32を有している。本体部32の表面は、ロゴや絵柄などが表示される意匠面34とされており、本体部32の四隅である各コーナー部33は、装飾具30(本体部32)の厚み方向から見て、円弧状に形成されている(
図3参照)。
【0019】
また、装飾具30の本体部32の平面状とされた裏面32C(
図5、
図7、
図8参照)には、被固定部としての一対の略円柱状の突起部36が、本体部32の長手方向に離間して、かつ本体部32の厚み方向に沿って延在するように一体に突設されている(
図2、
図5参照)。
【0020】
そして、その本体部32の裏面32Cで、かつ長手方向中央部よりも後側には、前後方向が長手方向とされ、かつ上下方向が法線方向とされた略矩形平板状の位置決め突起38が、本体部32の厚み方向に沿って延在するように一体に突設されている(
図2、
図4、
図5参照)。
【0021】
位置決め突起38は、装飾具30が上下逆さまに配置されないように位置決めするためのものであって、本体部32の長手方向中央部に対して、長手方向一方側(前側又は後側)へずれて突設されるものである。したがって、図示のものとは逆に、本体部32の長手方向中央部に対して、前側へずれて突設されていてもよい。
【0022】
また、
図5に示されるように、装飾具30の本体部32の裏面32Cにおける上下方向略中央部には、長手方向に所定の間隔を空けて、複数(例えば5個)の略円錐形状の小突起37が突設されている。各小突起37は、装飾具30(本体部32)が表皮材12を挟んで裏板20に取り付けられたときに、それぞれ表皮材12の表面に食い込んで、その表皮材12を本体部32の厚み方向に沿って裏板20側へ押圧するようになっている。
【0023】
図2~
図5に示されるように、裏板20は、前後方向が長手方向とされ、かつ装飾具30の本体部32よりも一回り大きい略矩形バスタブ形状の本体部22を有している。すなわち、その本体部22の表面側には、装飾具30の本体部32の厚み以上の深さ、好ましくは本体部32の厚みと表皮材12の厚みとの合計以上の深さとされて、その本体部32及び表皮材12の一部を収容可能な凹部24が形成されている。
【0024】
したがって、装飾具30は、その本体部32が、表皮材12の一部と共に裏板20の凹部24内に収容された状態で、その意匠面34が、本体部22の周縁部23から突出しないように(最も突出した状態でも周縁部23と面一となるように)なっている。つまり、装飾具30の意匠面34は、表皮材12の表面から突出しないようになっている(
図5参照)。
【0025】
また、裏板20の本体部22(凹部24)には、一対の略円形状の貫通孔26が、装飾具30の各突起部36に対応するように(各突起部36が挿通可能なように)、本体部22の長手方向に離間して形成されている。そして、本体部22の裏面には、固定部材としての金属製のプッシュナット40が、各貫通孔26に挿通された各突起部36に嵌められるようになっている。
【0026】
図2、
図4に示されるように、各プッシュナット40は、中心部に略円形状の開口部46が形成された円環板状の本体部42を有しており、その本体部42には、開口部46から径方向に沿って連続する複数(例えば6本)のスリット部48が周方向に等間隔に形成されている。
【0027】
換言すれば、各プッシュナット40の本体部42には、周方向に等間隔で複数(例えば6個)の略等脚台形状の爪部44が形成されており、各爪部44の先端で略円形状の開口部46が形成されている(
図4参照)。そして、その開口部46の内径は、突起部36の外径よりも小さくされている。
【0028】
したがって、プッシュナット40は、貫通孔26に挿通された突起部36に嵌められると(突起部36を開口部46に挿入させると)、各爪部44が突起部36の挿入方向下流側へ拡開するように弾性変形し、突起部36の外周面を、各爪部44の復元力で保持するようになっている。これにより、突起部36が挿入方向とは逆方向に引っ張られても、各爪部44の先端(エッジ部分)が相対的に突起部36の外周面に引っ掛かって、突起部36が開口部46から抜けない構成になっている(
図5参照)。
【0029】
また、
図2、
図4、
図5に示されるように、裏板20の本体部22(凹部24)で、かつ長手方向中央部よりも後側には、前後方向が長手方向とされた略矩形状の貫通孔28が形成されている。つまり、この貫通孔28は、位置決め突起38と対応して形成されており、その位置決め突起38が挿入可能な大きさに形成されている。この貫通孔28に位置決め突起38が挿入されることにより、装飾具30が上下逆さまに配置されないように位置決めされる構成になっている。
【0030】
図1、
図2に示されるように、装飾具30が取り付けられる表皮材12は、1層ではなく、複数層で構成されている。具体的に一例を挙げると、表皮材12は、数mm厚のスポンジ体であるスラブウレタン12Aをベースに、そのスラブウレタン12Aの表面側に接着される表皮12Bと、そのスラブウレタン12Aの裏面側に接着される薄い布状の裏基布12Cと、を有する3層構造とされている。
【0031】
また、
図2に示されるように、表皮材12の表面には、装飾具30を取り付けるためのエリア14(仮想線Kで示す)が規定されており、そのエリア14内には、一対の突起部36を挿通させる一対の略円形状の貫通孔16が形成されている。そして、表皮材12には、各貫通孔16から、それぞれ装飾具30の本体部32の周縁部(詳細には各コーナー部33)が配置される部位に向かって連続する一対のスリット部17が形成されている。
【0032】
具体的に説明すると、エリア14内において、長手方向前側の貫通孔16Fから、前上側のコーナー部33Fuが配置される部分の近傍まで、前上スリット部17Fuが連続して形成されており、その前上スリット部17Fuの上端部(貫通孔16Fから最も離れた部位)には、貫通孔16Fよりも小径とされた小孔部17Fsが連続して形成されている。
【0033】
そして、エリア14内において、長手方向前側の貫通孔16Fから、前下側のコーナー部33Fdが配置される部分の近傍まで、前下スリット部17Fdが連続して形成されており、その前下スリット部17Fdの下端部(貫通孔16Fから最も離れた部位)には、貫通孔16Fよりも小径とされた小孔部17Fsが連続して形成されている。
【0034】
同様に、エリア14内において、長手方向後側の貫通孔16Rから、後上側のコーナー部33Ruが配置される部分の近傍まで、後上スリット部17Ruが連続して形成されており、その後上スリット部17Ruの上端部(貫通孔16Rから最も離れた部位)には、貫通孔16Rよりも小径とされた小孔部17Rsが連続して形成されている。
【0035】
そして、エリア14内において、長手方向後側の貫通孔16Rから、後下側のコーナー部33Rdが配置される部分の近傍まで、後下スリット部17Rdが連続して形成されており、その後下スリット部17Rdの下端部(貫通孔16Rから最も離れた部位)には、貫通孔16Rよりも小径とされた小孔部17Rsが連続して形成されている。
【0036】
なお、小孔部17Fs及び小孔部17Rsは、それぞれ表皮材12が、それ以上破断しないようにするためのものである。また、エリア14内には、位置決め突起38を挿通させる貫通孔18が形成されている。この貫通孔18は、位置決め突起38と対応して前後方向が長手方向とされた略矩形状に形成されており、その位置決め突起38が挿入可能な大きさに形成されている。
【0037】
また、
図6~
図8に示されるように、装飾具30の本体部32の厚み方向略中央部には、その厚み方向と直交する方向へ突出するパーティングラインPLが形成されている。パーティングラインPLは、成形用金型(図示省略)のコアとキャビティとの境界部分によって形成されるものである。
【0038】
そして、
図7に示されるように、本体部32の周縁部(少なくとも各コーナー部33)は、本体部32の厚み方向と直交する方向から見て、パーティングラインPLから裏面32C側が円弧状に形成されており、パーティングラインPLから表面(意匠面34)側が直線状に形成されている。換言すれば、パーティングラインPLから裏面32C側が円弧状周縁部32Bとされ、パーティングラインPLから表面(意匠面34)側が直線状(テーパー状)周縁部32Aとされている。
【0039】
また、
図8に示されるように、各コーナー部33における本体部32の裏面32C、詳細には各コーナー部33における円弧状周縁部32Bと平面である裏面32Cとの境界部分には、各コーナー部33におけるパーティングラインPLの曲率よりも小さい曲率とされた稜線部35が形成されている。換言すれば、各コーナー部33における円弧状周縁部32Bと裏面32Cとの境界部分には、各コーナー部33におけるパーティングラインPLの曲率半径よりも大きい曲率半径とされた稜線部35が形成されている。
【0040】
以上のような構成とされた本実施形態に係る装飾具30の取付構造10において、次にその作用について説明する。
【0041】
図1~
図5に示されるように、装飾具30の本体部32と裏板20とで表皮材12の一部を挟持した状態、即ち装飾具30の本体部32が表皮材12の一部と共に裏板20の凹部24に収容された状態とされることで、装飾具30が表皮材12に取り付けられている。そして、裏板20の凹部24の深さが、本体部32の厚み以上の深さ、好ましくは本体部32の厚みと表皮材12の厚みとの合計以上の深さとされている。したがって、装飾具30は、その意匠面34が表皮材12の表面から突出することがない。
【0042】
また、表皮材12には、突起部36を挿通させる貫通孔16から装飾具30の本体部32の周縁部(詳細には各コーナー部33)が配置される部位に向かって連続するスリット部17が形成されている。そのため、表皮材12が比較的厚く(例えば上記のような3層構造に)形成されていても、その表皮材12に加わる圧力をスリット部17が広がることによって緩和することができる。よって、装飾具30の周縁部(詳細には各コーナー部33)付近の表皮材12に皺が発生することを抑制することができる。
【0043】
また、各スリット部17の端部(貫通孔16から最も離れた部位)には、小孔部17Fs及び小孔部17Rsが形成されているため、突起部36を貫通孔16に挿通したときに、スリット部17が広がるように表皮材12が歪んでも、その表皮材12がスリット部17から連続して、スリット部17の長さ以上に破断されることを防止することができる。
【0044】
また、裏板20の貫通孔26に挿通された突起部36には、プッシュナット40が嵌められる。つまり、その突起部36は、プッシュナット40によって固定される。したがって、例えば突起部36の外径を貫通孔26の内径よりも大きくなるように形成し、その突起部36が貫通孔26に圧入されて裏板20に固定される構成に比べて、装飾具30が表皮材12(裏板20)から外れてしまうことをより確実に防止することができる。
【0045】
また、
図7に示されるように、装飾具30の本体部32の厚み方向と直交する方向から見て、本体部32の周縁部(少なくとも各コーナー部33)に形成されているパーティングラインPLから表面(意匠面34)側が直線状周縁部32Aとされ、そのパーティングラインPLから裏面32C側が円弧状周縁部32Bとされている。
【0046】
したがって、少なくとも各コーナー部33において、例えばパーティングラインPLから裏面32C側の周縁部と裏面32Cとが略直角に交わる形状(コーナー部33が略1/4円柱状)に形成されている場合に比べて、装飾具30(本体部32の各コーナー部33)によって、各コーナー部33付近に存在する表皮材12を凹部24内へ押し込む押圧力が低減される。
【0047】
これにより、表皮材12が比較的厚く(例えば3層構造に)形成されていても、装飾具30の本体部32が表皮材12の一部と共に裏板20の凹部24に収容されたときに、装飾具30の周縁部(詳細には各コーナー部33)付近の表皮材12に皺が発生することを効果的に抑制することができる。
【0048】
また、
図8に示されるように、装飾具30の本体部32の各コーナー部33における裏面32C、詳細には各コーナー部33における円弧状周縁部32Bと裏面32Cとの境界部分には、各コーナー部33におけるパーティングラインPLの曲率よりも小さい曲率とされた稜線部35が形成されている(各コーナー部33における円弧状周縁部32Bと裏面32Cとの境界部分には、各コーナー部33におけるパーティングラインPLの曲率半径よりも大きい曲率半径とされた稜線部35が形成されている)。
【0049】
したがって、各コーナー部33における円弧状周縁部32Bと裏面32Cとの境界部分に、パーティングラインPLの曲率よりも大きい曲率とされた稜線部(図示省略)が形成されている場合に比べて、各コーナー部33における円弧状周縁部32Bの曲率が緩やかになり(緩やかな球面状になり)、装飾具30(本体部32の各コーナー部33)によって、各コーナー部33付近に存在する表皮材12を凹部24内へ押し込む押圧力がより一層低減される。
【0050】
これにより、表皮材12が比較的厚く(例えば3層構造に)形成されていても、装飾具30の本体部32が表皮材12の一部と共に裏板20の凹部24に収容されたときに、装飾具30の周縁部(詳細には各コーナー部33)付近の表皮材12に皺が発生することをより効果的に抑制することができる。
【0051】
なお、装飾具30の意匠面34の外観で、視界に入るのは、せいぜいパーティングラインPLまでである。そのため、パーティングラインPLから裏面32C側が円弧状周縁部32Bとされていても、その円弧状周縁部32Bによって装飾具30の意匠性が損なわれるおそれはない。同様に、その円弧状周縁部32Bと裏面32Cとの境界部分に、稜線部35が形成されていても、その稜線部35によって装飾具30の意匠性が損なわれるおそれもない。
【0052】
また、装飾具30(本体部32)が表皮材12を挟んで裏板20に取り付けられたときに、装飾具30(本体部32)の裏面32Cに設けられている複数の小突起37が、その表皮材12の表面に食い込むため、装飾具30(本体部32)と裏板20とで表皮材12をより効果的に挟持することができる。したがって、装飾具30(本体部32)の裏面32Cに複数の小突起37が設けられていない構成に比べて、表皮材12に対して装飾具30が位置ずれすることを抑制又は防止することができる。
【0053】
以上、本実施形態に係る装飾具30の取付構造10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る装飾具30の取付構造10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、位置決め突起38の形状は、図示の形状に限定されるものではなく、例えば略円柱状等に形成されていてもよい。また、小突起37の数量及び位置も、図示のものに限定されるものではない。
【0054】
また、図示は省略するが、突起部36の先端に、裏板20の貫通孔26の内径よりも大径な拡径部を形成するとともに、突起部36の軸心部をくり抜いて、突起部36の拡径部が径方向内側へ弾性変形可能となるように構成してもよい。このような構成にすると、突起部36は、拡径部が径方向内側へ弾性変形した状態で貫通孔26に挿通され、その後、復元することにより、その貫通孔26から外れないようにロックされる。したがって、この場合には、プッシュナット40を省略することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 取付構造
12 表皮材
16 貫通孔
17 スリット部
20 裏板
24 凹部
26 貫通孔
30 装飾具
32 本体部
33 コーナー部
34 意匠面
35 稜線部
36 突起部(被固定部)
40 プッシュナット(固定部材)
PL パーティングライン