IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-塗工装置 図1
  • 特開-塗工装置 図2
  • 特開-塗工装置 図3
  • 特開-塗工装置 図4
  • 特開-塗工装置 図5
  • 特開-塗工装置 図6
  • 特開-塗工装置 図7
  • 特開-塗工装置 図8
  • 特開-塗工装置 図9
  • 特開-塗工装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163618
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
B05C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068647
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 拓男
(72)【発明者】
【氏名】横川 龍世
【テーマコード(参考)】
4F041
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA12
4F041CA03
4F041CA13
(57)【要約】
【課題】塗工対象に吐出される流体量が塗工装置の幅方向においてバラつくのを抑制する。
【解決手段】互いに固定される第1ダイおよび第2ダイを備え、外部に開口するスリットが第1ダイと第2ダイとの間に形成され、第2ダイ内の流路を経由してスリットから外部に流体を吐出する塗工装置において、第1ダイと第2ダイとの間に配置され、スリットの一部を形成するスリット形成部を有する板状のシム部材を備え、スリット形成部の開口側とは反対側の縁部は、両端部から中央部に向かうに連れて突出するように形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに固定される第1ダイおよび第2ダイを備え、外部に開口するスリットが前記第1ダイと前記第2ダイとの間に形成され、前記第2ダイ内の流路を経由して前記スリットから前記外部に流体を吐出する塗工装置であって、
前記第1ダイと前記第2ダイとの間に配置され、前記スリットの一部を形成するスリット形成部を有する板状のシム部材を備え、
前記スリット形成部の開口側とは反対側の縁部は、両端部から中央部に向かうに連れて突出するように形成されている、
塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の塗工装置としては、2つのダイと、2つのダイの間に配置されるシムと、2つのダイおよびシムを固定する複数の締結ボルトと、2つのダイおよびシムにより形成される流路とを備える塗工装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この塗工装置では、締結ボルトの締結圧力を調整することにより、流路における吐出口の高さが吐出幅方向に見て均一になるようにシムを変形させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-73927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の塗工装置では、吐出口の高さが吐出幅方向に見て均一となるものの、吐出口から吐出される流体の吐出量は、吐出幅方向において均一にならずに、両端部よりも中央部で多くなりやすい。このため、塗工対象に吐出される流体量が塗工装置の幅方向において不均一になる(バラつく)可能性がある。
【0005】
本発明の塗工装置は、塗工対象に吐出される流体量が塗工装置の幅方向においてバラつくのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗工装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の塗工装置は、
互いに固定される第1ダイおよび第2ダイを備え、外部に開口するスリットが前記第1ダイと前記第2ダイとの間に形成され、前記第2ダイ内の流路を経由して前記スリットから前記外部に流体を吐出する塗工装置であって、
前記第1ダイと前記第2ダイとの間に配置され、前記スリットの一部を形成するスリット形成部を有する板状のシム部材を備え、
前記スリット形成部の開口側とは反対側の縁部は、両端部から中央部に向かうに連れて突出するように形成されている、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の塗工装置では、第1ダイと第2ダイとの間に配置され、スリットの一部を形成するスリット形成部を有する板状のシム部材を備え、スリット形成部の開口側とは反対側の縁部(第2ダイ内の流路側の縁部)は、両端部から中央部に向かうに連れて突出するように形成されている。これにより、流体の圧損がスリットの両端部から中央部に向かうに連れて大きくなる。この結果、シム部材の形状を調整することにより、塗工対象に吐出される流体量が塗工装置の幅方向においてバラつくのを抑制することができる。また、シム部材のスリット形成部の開口側とは反対側の縁部の形状の調整やシム部材の交換により流体の特性などに対応することができるため、塗工装置のトータルの設計コストや製作コストなどが大きくなるのを抑制することができる。
【0009】
本発明の塗工装置において、前記第1ダイと前記シム部材との間に配置され、前記スリットの一部を形成する一対の第2スリット形成部を有する第2シム部材を更に備え、前記スリットは、前記第1ダイの前記シム部材との対向面の一部と、前記シム部材の前記スリット形成部の前記第1ダイとの対向面と、前記一対の第2スリット形成部の互いの対向面とにより形成されるものとしてもよい。こうすれば、第2シム部材の一対の第2スリット形成部の互いの対向面間の距離を調整することにより、スリットの幅方向の長さを調整することができる。また、第2シム部材の板厚を調整することにより、スリットの高さ方向の長さを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例としての塗工装置20の断面図である。
図2】塗工装置20から上ダイ30を除いた状態の上面図である。
図3】塗工装置20から上ダイ30および上側シム部材50を除いた状態の上面図である。
図4】比較例の塗工装置20Bの断面図である。
図5】塗工装置20Bから上ダイ30を除いた状態の上面図である。
図6】比較例の塗工装置20Cの断面図である。
図7】塗工装置20Cから上ダイ30を除いた状態の上面図である。
図8】比較例の塗工装置20Dの断面図である。
図9】塗工装置20Dから上ダイ30を除いた状態の上面図である。
図10】実施例の塗工装置20と比較例の塗工装置20B,20C,20Dとを比較した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例0012】
図1は、本発明の一実施例としての塗工装置20の断面図であり、図2は、塗工装置20から上ダイ30を除いた状態の上面図であり、図3は、塗工装置20から上ダイ30および上側シム部材50を除いた状態の上面図である。以下の説明において、図1の上側および図2図3の手前側を「上側」とし、図1の下側および図2図3の奥側を「下側」とし、図1図3の左側を「前側」とし、図1図3の右側を「後側」とし、図1の手前側および図2図3の下側を「左側」とし、図1の奥側および図2図3の上側を「右側」とする。また、塗工装置20の上下方向を「高さ方向」、左右方向を「幅方向」とする。図2図3は、断面図ではないが、見易さのために、上側シム部材50や下側シム部材60にハッチングを付した。
【0013】
塗工装置20は、図1図3に示すように、上ダイ(第1ダイ)30と、下ダイ(第2ダイ)40と、上側シム部材(第2シム部材)50と、下側シム部材(シム部材)60とを備える。この塗工装置20は、下側から下ダイ40、下側シム部材60、上側シム部材50、上ダイ30の順に重ねられた状態でそれらが図示しない複数のボルトなどにより締結されて構成される。
【0014】
上ダイ30は、図1に示すように、例えばステンレス鋼(SUS)により形成され、平坦かつ矩形状の下面31を有する。下ダイ40は、図1図3に示すように、例えばステンレス鋼により形成され、平坦かつ上ダイ30に整合する(上ダイ30の下面31と前後方向および左右方向の長さが同一の)矩形状の上面41と、上面41の中央部から下側に窪む凹部42と、凹部42と塗工装置20の外部とを連通する連通孔45とを有する。凹部42は、底面43と、壁面44a~44fとを有する。底面43は、上面41に略平行で且つ後側から前側に向かうにつれて幅広となる平坦面として形成されている。具体的には、底面43の後側および前側でそれぞれ左右方向に延びる辺を「上底」および「下底」としたときに、底面43は、上底が下底よりも短い等脚台形状の平坦面として形成されている。壁面44aは、底面43の下底(底面43の前端)から開口面側に向かうに連れて前側に傾斜して延びるように形成されている。壁面44b~44dは、底面43の2つの斜辺および下底からそれぞれ上側に延びるように形成されている。壁面44e,44fは、壁面44aの左右端からそれぞれ上側に延びるように形成されている。連通孔45は、前後方向に延びると共に凹部42の壁面44dの下部と下ダイ40の後面40aとで開口するように形成されている。
【0015】
上側シム部材50は、図1図2に示すように、例えばステンレス鋼により上ダイ30の下面31および下ダイ40の上面41と前後方向および左右方向の長さが同一の板状部材であり、中央部から前側に向かって切り欠かれた略コの字状に形成されている。この上側シム部材50は、左右方向に延びる左右延在部51と、左右延在部51の両端部からそれぞれ前側に延びる一対の前後延在部52a,52bとを有する。左右延在部51における一対の前後延在部52a,52b間の前側縁部は、下ダイ40の凹部42の壁面44b~44dに略整合する形状に形成されている。
【0016】
下側シム部材60は、図1図3に示すように、例えばステンレス鋼により上ダイ30の下面31および下ダイ40の上面41と前後方向および横方向の長さが同一の板状部材であり、中央部が下ダイ40の凹部42にある程度整合する形状に刳り抜かれた矩形環状に形成されている。この下側シム部材60は、左右方向に延びる左右延在部62と、左右延在部62の両端部から前側に延びる一対の前後延在部63a,63bと、一対の前後延在部63a,63bの前端部を左右方向に連絡する連絡部(スリット形成部)64とを有する。左右延在部62および一対の前後延在部63a,63bは、上側シム部材50の左右延在部51および一対の前後延在部52a,52bと略整合する形状に形成されている。連絡部64は、上ダイ30の下面31の一部と上側シム部材50の一対の前後延在部52a,52bの互いの対向面とにより、下ダイ40の凹部42内の流体を吐出するためのスリット(吐出口)Sを形成する。具体的には、スリットSは、上ダイ30の下面31の一部を上面、上側シム部材50の一対の前後延在部52a,52bの互いの対向面を2つの側面、下側シム部材60の連絡部64を下面として形成される。このスリットSは、下ダイ40の凹部42に連通すると共に塗工装置20の前面で開口する。連絡部64の後側縁部(凹部42側の縁部)は、左右方向の両端部が下ダイ40の凹部42の壁面44aと上面41との境界に略一致するまたはそれよりも後側に若干突出し、且つ、左右方向の両端部から中央部に向かうに連れて後側に突出するように形成されている。また、連絡部64の後側縁部は、滑らかに湾曲する形状、例えば、円弧状や二次曲線状などに形成されている。
【0017】
こうして構成された実施例の塗工装置20では、図示しない流体供給装置から連通孔45を介して凹部42に流体(スラリー)を流入させ、その流体をスリットSから外部に流出(吐出)して塗工対象に塗布する。上述したように、スリットSは、上ダイ30の下面31と上側シム部材50の一対の前後延在部52a,52bの互いの対向面と下側シム部材60の連絡部64の上面とにより形成されるから、スリットSの幅(左右方向の長さ)ひいてはスリットSから吐出される塗工流体の塗工幅は、一対の前後延在部52a,52bの互いの対向面間の距離により規定され、スリットSの高さ(上下方向の長さ)ひいては塗工流体の高さ(上下方向の長さ)は、上ダイ30の下面31と下側シム部材60の連絡部64の上面との距離すなわち上側シム部材50の板厚により規定される。したがって、上側シム部材50の一対の前後延在部52a,52bの互いの対向面間の距離を調整することにより、スリットSの幅ひいては塗工流体の塗工幅を調整することができ、上側シム部材50の板厚を調整することにより、スリットSの高さひいては塗工流体の高さを調整することができる。そして、実施例では、下側シム部材60の連絡部64の後側縁部が両端部から中央部に向かうに連れて後側に突出するように形成されているから、凹部42からスリットSに流通する流体の圧損は、左右方向における両端部から中央部に向かうに連れて大きくなる。これにより、スリットSから吐出される流体(スラリー)量が左右方向においてバラつく(中央部が両端部よりも十分に多くなる)のを抑制することができ、塗工対象に塗布されたスラリー量が左右方向においてバラつく(中央部が両端部よりも膜厚になる)のを抑制することができる。
【0018】
また、実施例の塗工装置20は、比較例の塗工装置20B,20C,20Dに対して以下の効果も奏する。図4は、比較例の塗工装置20Bの断面図であり、図5は、塗工装置20Bから上ダイ30を除いた状態の上面図である。図6は、比較例の塗工装置20Cの断面図であり、図7は、塗工装置20Cから上ダイ30を除いた状態の上面図である。図8は、比較例の塗工装置20Dの断面図であり、図9は、塗工装置20Dから上ダイ30を除いた状態の上面図である。なお、図5図7図9は、断面図ではないが、見易さを考慮して、図5図7では、上側シム部材50にハッチングを付し、図9では、上側シム部材50およびブロック70にハッチングを付した。以下、図4および図5の塗工装置20B、図6および図7の塗工装置20C、図8および図9の塗工装置20Dの順に説明する。
【0019】
塗工装置20Bは、塗工装置20から下側シム部材60を除いた点で、実施例の塗工装置20とは異なる。したがって、塗工装置20Bのうち、塗工装置20と同一部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。こうして構成された比較例の塗工装置20Bでは、塗工装置20と同様に、図示しない流体供給装置から連通孔45を介して凹部42に流体(スラリー)を流入させ、その流体をスリットSから外部に流出(吐出)して塗工対象に塗布する。しかし、塗工装置20Bでは、凹部42からスリットSに流体が流通する際に左右方向における中央部に両端部よりも流体が流通しやすいため、スリットSから吐出される流体(スラリー)量が左右方向においてバラつきやすく(中央部が両端部よりも十分に多くなりやすく)、塗工対象に塗布されたスラリー量が左右方向においてバラつきやすい(中央部が両端部よりも膜厚になりやすい)。これに対して、塗工装置20では、下側シム部材60の連絡部64の後側縁部の形状を調整することにより、スリットSから吐出される流体(スラリー)量が左右方向においてバラつく(中央部が両端部よりも十分に多くなる)のを抑制することができ、塗工対象に塗布されたスラリー量が左右方向においてバラつく(中央部が両端部よりも膜厚になる)のを抑制することができる。
【0020】
塗工装置20Cは、塗工装置20から下側シム部材60を除いた点や、塗工装置20の下ダイ40を下ダイ40Cに置き換えた点で、実施例の塗工装置20とは異なる。したがって、塗工装置20Cのうち、塗工装置20と同一部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図6図7に示すように、下ダイ40Cでは、凹部42Cは、平坦な上面41Cと、湾曲面状の壁面44Caとを有する。上面41C(上面41における壁面44Caに沿った縁部)および壁面44Caは、左右方向(幅方向)の両端部から中央部に向かうに連れて後側に突出するように形成されている。こうして構成された比較例の塗工装置20Cでは、塗工装置20と同様に、図示しない流体供給装置から連通孔45を介して凹部42Cに流体(スラリー)を流入させ、その流体をスリットSから外部に流出(吐出)して塗工対象に塗布する。塗工装置20Cでは、凹部42Cの壁面44Caが左右方向の両端部から中央部に向かうに連れて後側に突出する湾曲面として形成されているため、塗工装置20と同様に、スリットSから吐出される流体(スラリー)量が左右方向においてバラつく(中央部が両端部よりも十分に多くなる)のを抑制することができ、塗工対象に塗布されたスラリー量が左右方向においてバラつく(中央部が両端部よりも膜厚になる)のを抑制することができる。しかし、塗工装置20Cでは、流体(スラリー)の特性などに応じて、下ダイ40Cの凹部42Cの壁面44Caの形状を調整したり下ダイ40Cを交換したりする必要があり、下ダイ40Cの設計コストや製作コストなどが大きくなり、ひいては、塗工装置20Cのトータルの設計コストや製作コストなどが大きくなる。これに対して、塗工装置20では、下側シム部材60(板状部材)の連絡部64の後側縁部の形状を調整したり下側シム部材60を交換したりすればよいため、塗工装置20Cに比して、こうした負担が大きくなるのを抑制することができる。
【0021】
塗工装置20Dは、塗工装置20から下側シム部材60を除いた点や、塗工装置20の下ダイ40を下ダイ40Dに置き換えた点、ブロック70を更に備える点で、実施例の塗工装置20とは異なる。したがって、塗工装置20Dのうち、塗工装置20と同一部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図8図9に示すように、下ダイ40Dは、上面41の中央部から下側に窪む凹部42Dを有し、凹部42Dは、底面43Dと壁面44Da~44Dfとを有する。底面43Dは、後側および前側でそれぞれ左右方向に延びる辺を「上底」および「下底」としたときに、上底が下底よりも短い等脚台形状で且つ平坦である第1平坦部(塗工装置20の下ダイ40の凹部42の底面43に相当する部分)と、下底を長辺とする長方形状で且つ平坦な第2平坦部と、が面一となるように形成されている。壁面44Daは、底面43Dの第2平坦部の前端から上側に延びるように形成されている。壁面44Db~44Ddは、凹部42の壁面44b~44dと同様に形成されている。壁面44De,44Dfは、底面43Dの第2平坦部の左右端からそれぞれ上側に延びるように形成されている。ブロック70は、例えばステンレス鋼により形成され、凹部42の深さ(開口面と底面43Dとの距離)と同一の高さに形成され、下ダイ40Dの凹部42Dの底面43Dの第2平坦部に整合する(第2平坦部と前後方向および左右方向の長さが略同一の)矩形状の下面と、壁面44Daに整合する形状の前面と、平坦な上面71と、湾曲面状の後側斜面72とを有する。上面71および後側斜面72は、左右方向の両端部から中央部に向かうに連れて後側に突出するように形成される。ブロック70は、下面が凹部42Dの底面43Dの第2平坦部に当接し且つ前面が凹部42Dの壁面44Daに当接した状態で下ダイ40Dに締結される。ブロック70が下ダイ40Dに締結された状態で、ブロック70の上面71は、下ダイ40Dの上面41と面一になっている。また、ブロック70が下ダイ40Dに締結された状態で、底面43Dの第1平坦部と壁面44Db~44Dfとブロック70の後側斜面72とにより、塗工装置20Cの凹部42Cと同様の凹部が形成される。こうして構成された比較例の塗工装置20Dでは、塗工装置20と同様に、図示しない流体供給装置から連通孔45を介して凹部42Dに流体(スラリー)を流入させ、その流体をスリットSから外部に流出(吐出)して塗工対象に塗布する。塗工装置20Dでは、凹部42Dに締結されるブロック70が左右方向(幅方向)の両端部から中央部に向かうに連れて後側に突出する後側斜面72を備えるため、塗工装置20と同様に、スリットSから吐出される流体(スラリー)量が左右方向においてバラつく(中央部が両端部よりも十分に多くなる)のを抑制することができ、塗工対象に塗布されたスラリー量が左右方向においてバラつく(中央部が両端部よりも膜厚になる)のを抑制することができる。しかし、塗工装置20Dでは、流体(スラリー)の特性などに応じて、ブロック70の後側斜面72の形状を調整したりブロック70を交換したりする必要があり、ブロック70の設計コストや製作コストなどが大きくなり、ひいては、塗工装置20Dのトータルの設計コストや製作コストなどが大きくなる。これに対して、塗工装置20では、下側シム部材60(板状部材)の連絡部64の後側縁部の形状を調整したり下側シム部材60を交換したりすればよいため、塗工装置20Dに比して、こうした負担が大きくなるのを抑制することができる。
【0022】
図10は、実施例の塗工装置20と比較例の塗工装置20B,20C,20Dとを比較した説明図である。図示するように、比較例の塗工装置20Bでは、設計コストや製作コストが小さいが、凹部42からスリットSに流体が流通する際に左右方向における中央部に両端部よりも流体が流通しやすいため、スリットSから吐出される流体(スラリー)量が左右方向においてバラつきやすく(中央部が両端部よりも十分に多くなりやすく)、塗工対象に塗布されたスラリー量が左右方向においてバラつきやすい(中央部が両端部よりも膜厚になりやすい)。また、塗工装置20C,20Dでは、流体(スラリー)量の左右方向におけるバラつきを抑制することができるが、下ダイ30Cやブロック70の設計コストや製作コストなどが大きくなり、塗工装置20C,20Dのトータルの設計コストや製作コストなどが大きくなる。これらに対して、実施例の塗工装置20では、スリットSから吐出される流体(スラリー)量が左右方向においてバラつく(中央部が両端部よりも十分に多くなる)のを抑制することができ、且つ、塗工装置20の設計コストや製作コストなどが大きくなるのを抑制することができる。
【0023】
以上説明した実施例の塗工装置20では、上ダイ30と下ダイ40との間に配置され、スリットSの一部を形成する連絡部64を有する板状の下側シム部材60を備え、連絡部64の開口側とは反対側の縁部は、両端部から中央部に向かうに連れて突出するように形成されている。これにより、流体の圧損は、スリットSの両端部から中央部に向かうに連れて大きくなる。この結果、下側シム部材60の形状を調整することにより、塗工対象に吐出される流体量が塗工装置20の左右方向においてバラつくのを抑制することができる。また、下側シム部材60の連絡部64の後側縁部の形状の調整や下側シム部材60の交換により流体の特性などに対応することができるため、塗工装置20の設計コストや製作コストなどが大きくなるのを抑制することができる。
【0024】
実施例の塗工装置20では、上側シム部材50を備えるものとした。しかし、上側シム部材50を備えないものとしてもよく、例えば、上ダイは、実施例の上ダイ30および上側シム部材50が一体になった形状として形成されるものとしてもよい。
【0025】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、上ダイ30が「第1ダイ」に相当し、下ダイ40が「第2ダイ」に相当し、下側シム部材60が「シム部材」に相当する。
【0026】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0027】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、塗工装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
20,20B,20C,20D 塗工装置、30 上ダイ、31 下面、40,40C,40D 下ダイ、40a 後面、41 上面、42,42C,42D 凹部、43,43D 底面、44a~44f,44Ca,44Da~44Df 壁面、45 連通孔、50 上側シム部材、51 左右延在部、52a,52b 前後延在部、60 下側シム部材、62 左右延在部、63a,63b 前後延在部、64 連絡部、70 ブロック、71 上面、72 後側斜面、S スリット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10