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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163632
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】波動照射装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/10 20060101AFI20221019BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20221019BHJP
   G02B 19/00 20060101ALI20221019BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20221019BHJP
   F21V 7/04 20060101ALI20221019BHJP
   F21V 13/02 20060101ALI20221019BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20221019BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221019BHJP
【FI】
B01J19/10
B01J19/12 Z
G02B19/00
F21S2/00 340
F21V7/04
F21V13/02 400
F21Y101:00 100
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068698
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】502412020
【氏名又は名称】株式会社芝川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拙
【テーマコード(参考)】
2H052
4G075
【Fターム(参考)】
2H052BA03
2H052BA09
2H052BA11
4G075AA03
4G075AA13
4G075BB10
4G075CA23
4G075CA24
4G075DA02
4G075EB21
4G075EB33
4G075FC04
(57)【要約】
【課題】媒質における波動の照射強度分布を三次元的に均一にする技術を提供する。
【解決手段】波動照射装置10は、保持体16に波動12を照射する媒質17が充填されており、この保持体16は波動12の波源11の照射軸18との直交断面(X-Y断面)が多角形である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波動を照射する媒質が充填され、前記波動の波源の照射軸との直交断面が多角形である保持体を持つ波動照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の波動照射装置において、
前記保持体は、前記照射軸に沿って中心軸が配置される筒状体である波動照射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の波動照射装置において、
前記筒状体の一端には、前記波源から放出される前記波動の一部を前記照射軸の方向に反射させるリフレクタが設けられている波動照射装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の波動照射装置において、
前記筒状体は、前記波動に対し伝播能を有する透明部材からなる波動照射装置。
【請求項5】
請求項1に記載の波動照射装置において、
前記保持体は、複数の平面に囲まれて成る多面体である波動照射装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の波動照射装置において、
前記波動は、音波又は電磁波である波動照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒質に波動を三次元的に照射させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒に液体等の媒質を充填しその軸方向に紫外線等の波動を三次元的に照射し媒質に伝播させることで、この媒質を殺菌処理する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-233547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
円筒に内部充填された媒質に三次元的に照射された波動は、照射軸に近いほど高強度になる照射強度分布を示す。その結果、媒質における波動の照射強度分布が三次元的に不均一となり、相対的に照射強度の低い領域における媒質の処理が不十分となる可能性があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、媒質における波動の照射強度分布を三次元的に均一にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る波動照射装置において、波動を照射する媒質が充填され前記波動の波源の照射軸との直交断面が多角形である保持体を持つことを特徴とする。そして、前記保持体は、前記照射軸に沿って中心軸が配置される筒状体であったり、複数の平面に囲まれて成る多面体であったりする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により媒質における波動の照射強度分布を三次元的に均一にする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)(B)(C)本発明の第1実施形態に係る波動照射装置のX-Y断面図及びZ-X断面図。
図2】(A)第1実施形態の実施例として四角断面を持つ波動照射装置における波動の照射強度分布を示すグラフ、(B)第1実施形態の比較例として円形断面を持つ波動照射装置における波動の照射強度分布を示すグラフ。
図3】本発明の第2実施形態において四面体及び六面体である波動照射装置の斜視図及び各断面における波動の照射強度分布を示すグラフ。
図4】本発明の第2実施形態において八面体である波動照射装置の側面図及び斜視図並びに各断面における波動の照射強度分布を示すグラフ。
図5】本発明の第2実施形態において十二面体である波動照射装置の側面図及び斜視図並びに各断面における波動の照射強度分布を示すグラフ。
図6】本発明の第2実施形態において二十面体である波動照射装置の側面図及び斜視図並びに各断面における波動の照射強度分布を示すグラフ。
図7】第2実施形態の比較例として球体で表面特性が完全拡散である波動照射装置の斜視図及び各断面における波動の照射強度分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る波動照射装置10(10a,10b,10c)のX-Y断面図及びZ-X断面図である。このうち図1(A)は波動12の波源11の照射軸18との直交断面(X-Y断面)が四角形を持つものである。そして図1(B)はX-Y断面が六角形を持つものである。さらに図1(C)はX-Y断面が八角形を持つものである。
【0010】
このように、第1実施形態の波動照射装置10(10a,10b,10c)は、保持体16に、波動12を照射する媒質17が充填されている。そして、この保持体16は、波動12の波源11の照射軸18との直交断面(X-Y断面)が多角形であり、照射軸18に沿って中心軸が配置される筒状体である。
【0011】
なお図1において、第1実施形態の波動照射装置10は、X-Y断面が八角形以下の偶数角形のものを例示しているが、X-Y断面が奇数角形のものも含まれる。また、図1は、X-Y断面が正多角形のものを例示しているが、辺の長さが等しくない多角形も含まれる。
【0012】
さらに、第1実施形態の波動照射装置10は、保持体16である筒状体の一端には、波源11から放出される波動12の一部を照射軸18の方向Zに反射させるリフレクタ15が設けられている。このリフレクタ15は、照射軸18に対して大きく偏向して波源11から放出される一部の波動12を、その内周面において反射させ照射軸18の方向Zに進行させるものである。このリフレクタ15は、保持体16の筒状体の一端の周縁から内径を絞って形成した頭頂部の内側に、波源11を配置している。
【0013】
波動12としては、電磁波もしくは音波が想定される。電磁波としては、可視光領域及びその両端の赤外線領域及び紫外線領域に含まれる波長の光線が該当する。波動12がこのような電磁波である場合の波源11としては、発光ダイオード(LED)や白熱電球等が挙げられる。
【0014】
音波としては、動物の可聴周波数を持ち気体や液体を伝播する弾性波や、この可聴周波数よりも高い周波数の弾性波(超音波)や、この可聴周波数よりも低い周波数の弾性波(超低周波音)等が挙げられる。波動12がこのような音波である場合の波源11としては、スピーカ、超音波振動子や低周波発生器等が挙げられる。
【0015】
また、照射された波動12が伝播する媒質17としては、気体や液体が考えられるが、波動12が電磁波の場合は真空も媒質17として概念する。
【0016】
波源11から直接放出されたりリフレクタ15で反射したりして筒状体の内周面に到達した殆ど全ての波動12は、入射角が臨界角を超えている。このため波動12は、この内周面で全反射し、筒状体の外側に漏洩しない。さらに保持体16の中心軸は、多角形の断面を持つ筒状体の回転対称軸となっている。このため波動12は、筒状体の内周面で規則的な正反射を繰り返し、筒状体の内側における波動12の照射強度分布が三次元的に均一となる。これにより、例えば、細菌を含む液体(もしくは空気)等の媒質17を、紫外線等の波動12で殺菌する場合、筒状体の内側に紫外線の照射強度分布が均一に形成される。このため、局所的に照射強度が相対的に低い領域が形成されることが無く、媒質17の全体を漏れなく殺菌できる。
【0017】
ところで、波動12が可視光線である場合、保持体16の筒状体をこの可視光線の伝播能を有する透明部材で形成しても、この波動12は内側で正反射して外部に散逸することがない。その一方で、保持体16の外部から小さな入射角で入射した可視光線は、筒状体を内部通過するか存在物に反射するために、この内部を直接的に目視観察することができる。
【0018】
リフレクタ15とは反対側の保持体16の筒状体の他端は、閉止されている場合も、開放されている場合も、両方取り得る。また、この筒状体を透明硝子材にすることにより、臨界角の作用で、蒸着コートやメッキ塗装をすることなく、高い反射率の正反射にすることができる。このように蒸着コートやメッキ塗装をなくす事により、コストダウンをはかることができる。さらに、蒸着コートやメッキの腐食や内部物質への溶出を回避できる。なお、内部光線や外部光線が漏れ出る可能性があるので、問題がある場合は遮光する必要がある。
【0019】
また、保持体16の筒状体の一端がリフレクタ15で閉止されている形態を示したが、波源11が設置される筒状体の一端を開放端にすることもできる。この場合、筒状体の両端を開放端にして、一端から他端に、媒質17を連続的に通過させながら保持体16に保持させることができる。
【0020】
図2(A)は第1実施形態の実施例として四角断面を持つ波動照射装置10aにおける波動12の照射強度分布を示すグラフを示している。図2(B)は第1実施形態の比較例として円形断面を持つ波動照射装置19における波動12の照射強度分布を示すグラフを示している。なお、本実施形態における照射強度分布のグラフは、全て、波源11に発光ダイオード(LED)を採用し、保持体16の内周面における反射は正反射である条件の下でのシミュレーション結果である。
【0021】
図2(B)に示す比較例のように、X-Y断面が円形の保持体16xにおける波動12の照射強度分布は、周縁部分よりも中心部分が7倍程度も高強度である。このため、比較例においては、筒状体の内側における波動12の照射強度分布が三次元的に不均一である。
【0022】
これに対し実施例のように、X-Y断面が多角形(図示は四角形)の保持体16において、照射軸18の直交断面における波動12の照射強度分布は、二次元的に均一であるといえる。さらに、図示を省略するが、この照射軸18を含むX-Z断面においても、実施例は比較例よりも照射強度分布が二次元的に均一であることが確認された。これより実施例では、筒状体の内側における波動12の照射強度分布が三次元的に均一であるといえる。
【0023】
(第2実施形態)
次に図3から図6を参照して本発明における第2実施形態について説明する。なお、図3から図6において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。なお、第2実施形態の説明において参照される各断面(I,II,III,IV)は、それぞれ、波源11を始端とし保持体26と照射軸18の交点を終端とする線分の3/4高さ、2/4高さ(中心高さ)、1/4高さ、0/4高さ(もしくはその近傍)における直交断面を示している。
【0024】
図3は四面体の波動照射装置20a及び六面体の波動照射装置20bの斜視図及び各断面(I,II,III,IV)における波動12の照射強度分布を示すグラフである。図4は八面体である波動照射装置20cの側面図及び斜視図並びに各断面(I,II,III,IV)における波動12の照射強度分布を示すグラフである。
【0025】
図5は十二面体である波動照射装置20dの側面図及び斜視図並びに各断面(I,II,III,IV)における波動12の照射強度分布を示すグラフである。図6は二十面体である波動照射装置20eの側面図及び斜視図並びに各断面(I,II,III,IV)における波動12の照射強度分布を示すグラフである。
【0026】
このように、第2実施形態の波動照射装置20(20a,20b,20c,20d,20e)において、波動12を照射する媒質17が充填される保持体26(26a,26b,26c,26d,26e)は、この波動12の波源11の照射軸18との直交断面(I,II,III,IV)が多角形である。なお、図3から図6に示す保持体26(26a,26b,26c,26d,26e)は、全ての面が同一の多面体で構成されている正多面体のものを例示している。しかし、保持体26は、異なる多角形で構成される多面体も含まれる。
【0027】
図7は比較例として球体で表面特性が完全拡散である波動照射装置29の斜視図及び各断面(II,III,IV)における波動12の照射強度分布を示すグラフである。第2実施形態の波動照射装置20(図3から図6)の説明に先立って、図7の比較例に係る波動照射装置29を説明する。この比較例に係る波動照射装置29において、媒質17が充填される保持体26xは、波動12の波源11の照射軸18との直交断面(I,II,III,IV)が全て円形である。なお、この比較例に係る波動照射装置29は、均一な照射強度分布を得るために広く用いられている積分球をモデル化したものである。この積分球は、その内周面に沿って二次元的に均一な照射強度分布を得るのに止まり、三次元的に均一な照射強度分布は得られないことが判明した。
【0028】
比較例に係る波動照射装置29では、照射軸18の中心高さにおける直交断面(II)における波動12の照射強度分布は、対応するグラフが示すように、その中心部分が周縁部分よりも2倍程度も高強度である。このため、比較例においては、球体の保持体26xの内側における波動12の照射強度分布が三次元的に不均一である。
【0029】
図3における波動照射装置20aは、保持体26aが複数の三角形の平面に囲まれて成る四面体である。その結果、四面体の波動照射装置20aでは、照射軸18の中心高さにおける直交断面(II)における波動12の照射強度分布は、対応するグラフが示すように、その中心部分と周縁部分と強度差は15%以内である。さらに直交断面(II,III,IV)の中心部分の照射強度の強度差も最大で15%以内である。このため四面体の波動照射装置20aは、比較例よりも、保持体26aの内側における波動12の照射強度分布が三次元的に均一であるといえる。なお直交断面(I)において中央に強い強度分布を持つ理由は、波源11に近いためである。
【0030】
図3における波動照射装置20bは、保持体26bが複数の四角形の平面に囲まれて成る六面体である。その結果、六面体の波動照射装置20bでは、直交断面(II,III,IV)における波動12の照射強度分布において、対応するグラフが示すように、その中心部分と周縁部分と強度差が殆んど無い。さらに直交断面(II,III,IV)の中心部分の照射強度も、強度差が殆んど無い。このため、保持体26aの内側における波動12の照射強度分布は、三次元的に高度に均一であるといえる。
【0031】
図4における波動照射装置20cは、保持体26cが複数の三角形の平面に囲まれて成る八面体である。その結果、八面体の波動照射装置20cでは、直交断面(II,III,IV)における波動12の照射強度分布において、対応するグラフが示すように、三次元的に強度差が最大で20%程度である。さらに直交断面(II,III,IV)の中心部分の照射強度も強度差は殆ど無い。このため八面体の波動照射装置20cは、比較例よりも、保持体26cの内側における波動12の照射強度分布が三次元的に均一であるといえる。
【0032】
図5における波動照射装置20dは、保持体26dが複数の五角形の平面に囲まれて成る十二面体である。その結果、十二面体の波動照射装置20dでは、照射軸18の中心高さにおける直交断面(II)における波動12の照射強度分布は、対応するグラフが示すように、その中心部分と周縁部分と強度差は20%以内である。このため十二面体の波動照射装置20dは、比較例よりも、保持体26dの内側における波動12の照射強度分布が三次元的に均一であるといえる。
【0033】
図6における波動照射装置20eは、保持体26eが複数の三角形の平面に囲まれて成る二十面体である。その結果、二十面体の波動照射装置20eでは、直交断面(II,III,IV)における波動12の照射強度分布において、対応するグラフが示すように、その中心部分と周縁部分と強度差が最大で20%程度である。さらに直交断面(II,III,IV)の中心部分の照射強度も、強度差が最大で20%程度である。このため、比較例よりも、保持体26eの内側における波動12の照射強度分布が三次元的に均一であるといえる。
【0034】
なお第2実施形態において、波源11は、波動照射装置20(20a,20b,20c,20d,20e)の内壁面に設けられ、反対側の内壁面に向かって波動12を照射する場合(直接照射)を例示した。しかし、このような直接照射に限定されることはなく、波源11は、波動照射装置20(20a,20b,20c,20d,20e)の内壁面に対向して設けられ、この直近の内壁面に向かって波動12を照射する場合(間接照射)もあり得る。
【0035】
また、本発明に係る波動照射装置は、植物栽培に適用することで、光照射を均一化し、植物の成長を均一化する効果が期待される。
【符号の説明】
【0036】
10(10a,10b,10c)…波動照射装置、11…波源、12…波動、15…リフレクタ、16…保持体(筒状体)、17…媒質、18…照射軸、19…波動照射装置(比較例)、20(20a,20b,20c,20d,20e)…波動照射装置、26(26a,26b,26c,26d,26e)…保持体(多面体)、29…波動照射装置(比較例)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7