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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163642
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】水棲生物飼育装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/00 20170101AFI20221019BHJP
【FI】
A01K63/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068722
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】599072530
【氏名又は名称】株式会社山利製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】山口 誠平
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104AA08
2B104CA03
2B104CB33
2B104CB34
2B104CB41
2B104CB42
2B104CG25
2B104EA05
(57)【要約】
【課題】猫やカラスなどの外敵からメダカや金魚などの水棲生物を保護できる水棲生物飼育装置を提供する。
【解決手段】容器11と、その容器11の上端開口部11a内における容器11の上端よりいくらか低い位置に配置され、開口部11aの大部分を覆う透明な板材からなるカバー12と、そのカバー12を支持する複数本の支持棒13aとからなり、前記カバー12に多数の通気用の開口12aが形成され、支持棒13aの下端が底板15に取り付けられている。カバー12には、給水ボトルBを上下逆にして取り付けるボトル支持筒14が固定され、攪拌機構13の回転軸18が回転自在に設けられている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
その容器の上端開口部内に配置される透明な板材からなるカバーと、
そのカバーを、上面が容器の上端より低い位置になるように支持する支持部材とからなり、
前記カバーに多数の開口が形成されている
水棲生物飼育装置。
【請求項2】
前記支持部材が、上部がカバーの周囲近辺に取り付けられ、下方に延びる複数本の棒である
請求項1記載の水棲生物飼育装置。
【請求項3】
前記容器の内底に底板が配置され、その底板に前記複数本の棒の下部が取り付けられている
請求項2記載の水棲生物飼育装置。
【請求項4】
前記カバーの角または周縁の一部が切り欠かれている
請求項1~3のいずれかに記載の水棲生物飼育装置。
【請求項5】
前記カバーが容器の上端開口部の1/2~2/3を覆う請求項1~4のいずれかに記載の水棲生物飼育装置。
【請求項6】
前記カバーによって回転自在に支持される回転軸と、
その回転軸の上部に取り付けられる風車と、
前記回転軸の下部に取り付けられ、水中で回転する旋回翼
とを備えている請求項1~5のいずれかに記載の水棲生物飼育装置。
【請求項7】
前記カバーによって回転自在に支持される回転軸と、
その回転軸の上部に取り付けられる風車と、
前記回転軸の下部に取り付けられ、水中で回転する旋回翼とを備え、
前記底板が前記回転軸の下端を回転自在に支持している請求項3記載の水棲生物飼育装置。
【請求項8】
前記カバーに、給水ボトルを支持するボトル支持筒が取り付けられている
請求項1~7のいずれかに記載の水棲生物飼育装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水棲生物飼育装置に関し、とくにメダカや金魚などの小型の淡水魚の飼育に適する水棲生物飼育装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水槽などの水面に、下面が水面下となり、上面が空気中に来るように保持される、厚肉の透明な部材を位置させる蓋構造が開示されている。この蓋構造は、水面の光の乱反射、浮遊物、気泡、波などの影響を受けず、水中の動植物を鮮明に鑑賞できるとされている。
【0003】
特許文献2には、水面近くに水没させた開閉可能な波動減衰用の内蓋を設けたウナギの稚魚などを搬送する搬送用水槽が開示されている。さらに空気の取り入れなどのため、内蓋にフィルタで封止した透孔を設けることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、植物栽培容器(植木鉢など)を浮き支持体(浮きと錘で構成)によって支持し、その浮き支持体を水槽内の水中に浮かせることにより、植物栽培容器に自動的に長期間給水する方法が開示されている。特許文献4には繊維絡合体などの浮上性材料よりなる浮上部材で植木鉢を支持する特許文献3と同様の養液栽培装置が開示されている。特許文献5には、給水ボトルを上下逆に支持する植物栽培用の給水装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3-114949号公報
【特許文献2】特開2003-144002号公報
【特許文献3】特開2002-119158号公報
【特許文献4】実開昭63-42049号公報
【特許文献5】特開2020-22399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メダカや金魚などの鑑賞用の小型の淡水魚を屋外やベランダで飼育する場合、飼育用の水槽として、プランタや収納ケースなどのケースを水槽に転用することがある。このような容器は上端に開口を備えた箱状であり、給水やえさやりには便利であるが、猫やカラスなどから保護するため、ネットや金網で開口部を覆うことがある。しかしネットや金網は鑑賞の邪魔になる。
【0007】
特許文献1では水面に配置した透明の部材越しに水中の生物を鮮明に鑑賞できるが、人工物である透明な部材が目に入る。また、見る向きによっては反射や屈折で見にくくなる。さらに透明な部材が水面を塞ぐので、水中に酸素が溶け込む妨げになる。特許文献2の波動減衰用の開閉自在の内蓋は、水面近辺で水没させており、しかもフィルタを設けた透孔と通じて水が連通自在であるため、水面への空気の溶け込みが容易である。しかし内蓋は透明ではなく、水中の魚を見るためには内蓋を開く必要がある。
【0008】
特許文献3の補水方法に用いる浮き支持体や、特許文献4の浮上部材は、水面の上下に応じて上下動するので、水中で水棲生物を飼育するのに適せず、透明でないので鑑賞に適しない。特許文献5の給水ボトルは植物栽培用であり、水棲生物の飼育用に用いるものではない。
【0009】
本発明は、メダカや金魚などの水棲生物を飼育するための水棲生物飼育装置であって、水棲生物を外敵から安全に保護することができ、上面から水中の水棲生物を鑑賞するときに邪魔にならず、水面での空気の混入を妨げない水棲生物飼育装置を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水棲生物飼育装置10は、容器11と、その容器11の上端開口部11a内に配置される透明な板材からなるカバー12と、そのカバー12を、上面が容器11の上端より低い位置になるように支持する支持部材13、52とからなり、前記カバー12に多数の開口12aが形成されていることを特徴としている。
【0011】
このような水棲生物飼育装置10では、前記支持部材13が、上部がカバーの周囲近辺に取り付けられ、下方に延びる複数本の棒13aであるものが好ましい。その場合、前記容器11の内底に底板15が配置され、その底板15に前記複数本の棒13aの下部が取り付けられているものが好ましい。また、前記カバー12の角または周縁の一部が切り欠かれ(12b)ているものが好ましい。前記カバー12が容器11の上端開口部11aの1/2~2/3を覆うものでもよい。
【0012】
本発明の水棲生物飼育装置では、前記カバー12によって回転自在に支持される回転軸18と、その回転軸18の上部に取り付けられる風車19と、前記回転軸18の下部に取り付けられ、水中で回転する旋回翼20とを備えているものであってもよい。前記底板15を備えて場合は、その底板15で回転軸18の下端18aを回転自在に支持してもよい。
【0013】
前述のいずれの水棲生物飼育装置においても、前記カバー12に、給水ボトルBを支持するボトル支持筒14が取り付けられているものが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水棲生物飼育装置は、容器内に水を入れて水中で水棲生物を飼育する。水はカバーのいくらか上まで入れる。透明なカバーは水に紛れて上から見たときにほとんど視認できない。そのため、メダカなどの水棲生物の鑑賞が妨げられることがなく、猫やカラスなどの外敵から水棲生物を保護することができる。カバーには多数の開口が形成されており、カバーは水面を塞いでいないので、空気が水中に溶け込むのを邪魔しない。さらに多数の開口があるため、カバーの下側に気泡が溜まりにくい。
【0015】
前記支持部材が、上部がカバーの周囲近辺に取り付けられ、下方に延びる複数本の棒である場合は、棒を介して容器の底部によってカバーを支持できるので、容器の側壁で保持しなくてもよい。そのため、市販のプランタや収納ボックスなど、シンプルな形態の容器を採用することができる。前記容器の内底に底板が配置されており、その底板に前記複数本の棒の下部が取り付けられている場合は、棒が傾きにくく、安定してカバーを保持することができる。
【0016】
前記カバーの角または周縁の一部が切り欠かれている場合は、容器に装着したとき、切り欠かれた部位から餌を入れることができる。前記カバーが容器の上端開口部の1/2~2/3を覆うものである場合は、給餌や清掃が容易になる。外敵が接近したときは、水棲生物がカバーの下方に逃げ込めるので安全である。前記カバーによって回転自在に支持される回転軸と、その回転軸の上部に取り付けられる風車と、前記回転軸の下部に取り付けられ、水中で回転する旋回翼とを備えている場合は、風を受けて風車が回転し、回転軸を介して水中の旋回翼が回転する。それにより水が攪拌され、メダカや金魚などの水棲生物が流れによる刺激を受けて活発に泳ぎ回り、看者に興趣をもたらすと共に、水棲生物の健康維持に寄与する。また、水を攪拌することにより、餌の残りかすや糞を流し出しやすくなる。さらに風車の回転が害獣の接近を防止する。
【0017】
前記カバーによって回転自在に支持される回転軸と、その回転軸の上部に取り付けられる風車と、前記回転軸の下部に取り付けられ、水中で回転する旋回翼とを備え、前記底板が前記回転軸の下端を回転自在に支持している場合は、回転軸がカバーと底板の2か所で支持されるので、風車や旋回翼の回転が安定する。前記カバーに、給水ボトルを支持するボトル支持筒が取り付けられている場合は、給水ボトルから容器に給水できるので、水面の高さ維持が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の水棲生物飼育装置の一実施形態を示す一部切り欠き斜視図である。
図2図1の水棲生物飼育装置の一部切り欠き平面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図4A図1の水棲生物飼育装置におけるボトル支持筒の平面図、図4B図4AのIV-IV線断面図である。
図5図1の水棲生物飼育装置における旋回翼の平面図および正面図である。
図6図1の水棲生物飼育装置における風車の平面図である。
図7図7Aおよび図7Bは、容器の他の実施形態を示す平面図および要部断面図である。
図8】軸受け部材の他の実施形態を示す要部断面図である。
図9】水棲生物飼育装置の他の実施形態を示す平面図である。
図10】水棲生物飼育装置のさらに他の実施形態を示す要部縦断面図である。
図11】支持部材の他の実施形態を示す断面図である。
図12図12は水棲生物飼育装置のさらに他の実施形態を示す平面図である。
図13図13Aは水棲生物飼育装置のさらに他の実施形態を示す平面図、図13B図13AのXIII-XIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示す水棲生物飼育装置10は、容器11と、その容器11の上端開口部11a内に配置され、開口部11aの大部分を覆う透明なカバー12と、そのカバー12を支持する支持部材13とからなる。カバー12は容器11の上端からいくらか低い位置、たとえば5~10mm程度低い位置になるように、支持部材13によって支持されている。カバー12よりたとえば5mm程度上まで水を入れることにより、カバー12は光の反射や屈折が抑制され、ほとんど見えなくなる。カバー12には、給水ボトルBを支持するボトル支持筒14が設けられている。
【0020】
容器11は上面が開口した合成樹脂製の薄肉の箱体である。側壁11bは抜き勾配やデザインのため、上に向かって拡がっているものが好ましい。上端には補強を兼ねるフランジ11cが設けられている。市販のプランタや収納ボックスを利用することもできる。容器11の大きさは、飼育する水棲生物の種類や大きさ、数によって異なるが、たとえば前後200~400mm、左右300~500mm、高さ100~200mm程度とする。容器11はたとえばポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどの耐候性を有する合成樹脂で形成するのが好ましい。金属製やコンクリート製など、他の材料で成形することもできる。
【0021】
カバー12は、たとえば厚さ0.1~2mm程度の透明な合成樹脂、とくにPET樹脂板から製造するのが好ましい。厚さが厚い場合は、支持部材13の本数を少なくすることができ、薄い場合は製造が容易で材料費が安価である。PET樹脂のほか、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなども採用できる。ガラスなど他の透明な材質でもよい。カバー12には多数の開口12aが形成されている。
【0022】
カバー12は平坦で、容器11の開口部11aの形状に合わせて矩形状にしている。1個所のコーナーは斜めに切り欠かれた切り欠き部12bとしており、その斜めの縁に沿って立ち上がり片12cを立ち上げている。切り欠き部は直線状の側縁に矩形や半円形などの形状に形成してもよいが、コーナーで三角形に形成する方が容易に製造できる。カバー12は容器10内で飼育されるメダカなどの水棲生物を猫やカラスなどの外敵から保護するものであり、破られたり曲げられたりしないような強度を要する。カバー12に取り付けたボトル支持筒14で給水ボトルBを支持する場合は、その重量に耐える強度が必要である。
【0023】
開口12aは、水面近くと深部との水Wの流通を容易にすると共に、水中への空気の混入や水中の空気やガスの放出の妨げにならないようにするための水や空気の流通穴である。この実施形態では抜き加工などで形成しやすいように円形にしているが、矩形状など他の形状でもよい。開口12aの直径はたとえば10~30mm程度で、外敵の前足や嘴が入らない程度とする。開口12aの数はとくに制限はないが、カバーの面積の1/10~1/5程度が好ましい。開口12aはたとえば格子状に前後左右に等間隔で配列する。
【0024】
コーナーの切り欠き部12bは、給餌のための口としての役割があり、一辺がたとえば50~100mm程度とする。斜めの立ち上げ片12cは給餌のときに水面で浮遊する餌が広がらないようにする仕切りである。それにより、メダカなどの水棲生物が切り欠き部12bの位置に集まり、見ている人を楽しませることができる。水中に隠れている切り欠き部12bの位置を見つけやすくする、カバー12の強度・剛性アップなどの機能もある。カバー12の周縁全体を立ち上げて、強度アップするようにしてもよい。立ち上げ片12cは、たとえばPET樹脂板を温水や温風などで加熱しながら湾曲させることで形成しうる。切り欠き部12bに雨除けなどの蓋を着脱自在に設けることもできる。
【0025】
前記支持部材13は、上端近辺がカバー12の周囲近辺に取り付けられた複数本の支持棒13aと、それらの支持棒13aの上端近辺をカバー12に固定する上下のナット13b、13cとからなる。カバー12に貫通孔を形成し、その貫通孔に通した支持棒13aに形成したネジに螺合したナット13b、13cでカバー12を締め付けるのが好ましい。支持棒13aとしては市販の金属製のネジ棒、たとえば径3~5mmのネジ棒を所定の長さに切断したものを用いることができる。金属の線材の一端に雄ネジを形成したものでもよい。支持部材13は外敵からの防御および給水ボトルBなどを安定保持するための強度を要する。
【0026】
この実施形態ではさらに容器11の内底に底板15が配置されており、その底板15に前記複数本の支持棒13aの下端が取り付けられている。それにより複数本の支持棒13aの全体でカバー12や給水ボトルBの重量を支えることができ、安定する。底板15を設けずに、支持棒13aの下端をそのまま容器11の内底の上に載置することもできるが、支持棒13aの下部を底板15に形成した貫通孔に通し、ナット13dなどで固定するほうが安定する。
【0027】
支持棒13aの位置や本数は、給水ボトルBなどの位置を考慮して選択する。この実施形態では、図2および図3に示すように、6本の支持棒13aを用いている。底板15の輪郭は容器11の底部の輪郭に合わせている。底板15の厚さや材料は、カバー12と同様である。底板15には多数の開口15aが形成されている。開口15aは底板15aの上側に餌の残渣が残らないように、また、下側に空気やガスが溜まらないようにするためである。ただし必須ではない。その開口15aの大きさはメダカなどを通さない程度とするのが好ましい。
【0028】
つぎに図4A図4Bを参照して給水ボトルBを上下を逆にして保持できるボトル支持筒14を説明する。ボトル支持筒14は、有底筒状の本体14aと、その本体14a内に設けられ、給水ボトルBのキャップB1と嵌合する内筒14bとを有する。内筒14bには、本体14a内と連通する縦方向のスリット14cが複数個所形成されている。内筒14bと本体14aの間には補強リブ14dが設けられており、それにより、重量がある水を入れた状態の給水ボトルBをしっかり支持することができる。
【0029】
なお、給水ボトルBのキャップB1には、給水ボトルBを上下を逆にしたときに口部を閉じ、内筒14bに装着したときに口部を開く給水弁B2を設けるのが好ましい。給水弁B2は、キャップB1に上下自在に設けられる軸B3と、その軸B3のボトル内の端部に取り付けられる閉鎖部B4と、軸B3を常時突出する方向に付勢するバネ(図示しない)とからなる公知のものを採用し得る。それにより、水道水などを充填した給水ボトルBを上下逆にしたときに水がこぼれない。そして給水ボトルBをボトル支持筒14に装着すると、給水弁B2が開く。そのため、給水ボトルBの水の交換が容易である。
【0030】
ボトル支持筒14の前記本体14aの外面には、上下に貫通するコ字状の保護枠14eが突設されている。そして本体14aを構成する側壁の保護枠14eと対応する位置の下端から底部にかけて、本体14aと容器11内と連通して水を自由に出入りさせる連通孔14fが形成されている。他方、カバー12における、保護枠14eの下端開口と対応する部位には、給水開口12dが形成されている。それにより本体14a内の水位と容器11内の水位が同一になり、容器11内の水位が低下して給水ボトルBの口部と水面の間に隙間があくと、給水ボトルB内に空気が入るので、給水ボトルBから水が流出し、容器11の水位がカバー12より一定の高さに維持される。
【0031】
保護枠14eは、毛細管現象により水を徐々に放出するための繊維質の毛細管シートを通す部位である。そのため、水棲生物飼育装置では、とくに設ける必要はない。保護枠14eを設けない場合は、連通孔14fから水が入ってくるので、カバー12の給水開口12dは不要である。ボトル支持筒14の外面の対向する2か所には、ボトル支持筒14をカバー12に固定するネジを収容する取り付け筒14gが突設されている。ボトル支持筒14の本体14a、内筒14b、保護枠14eなどは、ナイロン(ポリアミド(PA))、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンなどの硬質の合成樹脂によって一体に成形することができる。
【0032】
図1の水棲生物飼育装置10では、メダカなどの水棲生物の健康維持などのため、容器11内の水を攪拌して水流を生じさせるための攪拌機構16が設けられている。攪拌機構16は、カバー12に取り付けた支持パイプ21と底板15に取り付けた軸受け部材17によって回転自在に支持される回転軸18と、その回転軸18の上端に設けられた風車19と、回転軸18の下端近辺に固定した旋回翼20とからなる。支持パイプ21の上端には回転軸18を通す孔を有する支持キャップ22が設けられている。支持パイプ21の下端はねじソケット23とナット24でカバー12に取り付けている。支持パイプ21を設けず、カバー12に形成した孔で回転軸18を回転自在に支持することもできるが、支持パイプ21を設けると、上下の支え位置の距離が大きくなるため、回転軸18を安定して支持することができる。
【0033】
軸受け部材17は、この実施形態では六角穴付きのビスを利用しており、図5Bに示すように、ビスのネジ部17aを底板15にねじ込み、頭部17bの凹部17cで回転軸18の下端18aを受けている。凹部17cの中心には、回転軸18の針状の先端を受ける円錐状の受け部が形成されている。
【0034】
前記回転軸18は、針金ないし鋼線から形成されている。そのため、軽量である。耐水性が高いステンレス鋼線が好ましい。回転軸18の中間部はカバー12に形成した貫通孔12eによって回転自在に支持されている。そのため構成がシンプルである。なお、パイプ状の軸受けをカバー12に取り付けてもよい。回転軸18の下端18aは針状に尖っており、前述の軸受け部材17によって回転自在に支持される。軸受け部材17もステンレス製とするのが好ましい。回転軸18の下端18aよりかなり上で、カバー12の下方に旋回翼20が固定されている。このような構成により、回転軸18、風車19および旋回翼20の全体が鉛直軸回りに回転自在に支持される。
【0035】
図5A図5Bに示すように、旋回翼20は、翼部材25と、その翼部材25の下部または上部に重ねて固定した円柱状の固定部26とからなる。翼部材25は、円板状の基部25aと、その基部25aから半径方向外向きに延びる枝部25bと、枝部25bの一方の側縁(回転の後側)から斜め上向きに延びる上向き翼片27と、他方の側縁(回転の前側)から斜め下向きに延びる下向き翼片28とからなる。
【0036】
翼部材25の回転方向は図5Aでは時計方向(矢印P)であり、前下がりの斜めに延びる翼片27、28には、回転によって水を上向きに押し上げ、水からの反力が下向きに加わる。そのため、回転体13は軸受け部材17に押し付けられ、軸受け部材17の凹部17cから外れにくい。上向きに押し上げられた水はカバー12の開口12aを通ってカバー12の上まで流れる。それによりカバー12の上側に水が滞留せず、汚れが残らない。翼部材25は合成樹脂シートから形成することができる。固定部26は合成樹脂製またはゴム製とすることができる。両者はねじ26aなどで結合されている。固定部26は翼部材25と回転軸18とを結合する部材である。
【0037】
この実施形態では、枝部25bは120°間隔で3か所に設けられており、上向き翼片27は円弧状の切れ目によって4枚の湾曲した細片27a、27b、27c、27dに分離されている。そして最も外側の細片27aと3番目の細片27dの傾斜角度は同一(たとえば40~60°)とされ、2番目の細片27bと4番目の細片27dの角度は同一の角度で、前述の最も外側の細片の角度より急な角度(たとえば70~90°)としている。なお、最も外側の細片27aと3番目の細片27cの角度を急角度とし、2番目の細片27bと4番目の細片27dの角度を緩い傾斜とすることもできる。
【0038】
下向き翼片28には切れ目を入れておらず、略三角形ないし扇状を呈している。下向き翼片28は、枝部25bの前進側の端縁から、たとえば40~60°の角度で斜め下向きに延びている。下向き翼片28は設けなくてもよく、その場合は枝部25bの前進側の端縁で切断するか、あるいは切断したり折り曲げたりせずに、枝部25bを略扇状とすることができる。
【0039】
このような翼部材25は、PET樹脂などの合成樹脂シートを所定の形状に切断し、折り目で折り曲げることにより製造することができる。合成樹脂材料としては、PET樹脂のほか、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニルなども採用できる。それぞれの切れ目は輪郭の切断の時に同時に設けてもよく、輪郭を抜き落とした後、切れ目を入れてもよい。
【0040】
この実施形態では枝部25bは3か所としているが、2か所でもよく、4か所以上とすることもできる。また、上向き翼片27の細片27a~dは4枚としているが、3枚でもよく、5枚以上とすることもできる。切れ目を設けなくてもよい。ただし上向き翼片27を複数の細片27a~dで構成し、細片27a~dの角度に変化をつけることにより、中央から半径方向外側に向けて充分に水を攪拌することができる。
【0041】
旋回翼20の基部25aは固定部26に固定するため、平坦にしている。また、枝部25bも基部25aと面一で平坦にされている。図5Bでは固定部26を旋回翼20の下面側に設けているが、旋回翼20の上面側に設けてもよく、上下両側に設けてもよい。
【0042】
図6に示すように、風車19は、略円形の基材32と、その基材32の周縁部に固定された複数の風受け33と、基材32の中央部の下面に取り付けた固定部(図3の符号34)とからなる。基材32と風受け33は合成樹脂製のシートからなる。固定部34は合成樹脂製またはゴム製の円柱である。この実施形態では、風受け33は等角度で6個所に設けている。ただし2個所~5個所でもよく、7個所以上でもよい。
【0043】
風受け33は、可撓性を有するシートを扇状に切断し、円錐状に湾曲形成したものである(図1参照)。シートの厚さは0.01~0.5mm程度、好ましくは0.03~0.05mm程度と薄い。それにより、風受け33が先端側で風を受けたとき、いくらか扁平に変形して風圧を弱めることができ、後端側で風を受けたとき、拡がって充分に風圧を受けることができる。ただし硬質の樹脂シートを採用することもできる。
【0044】
扇状に切断したシートは、半径方向に延びる両端縁に折り曲げ片35を設けており、それらの折り曲げ片35で基材32を挟み、両面テープで基材32に固定している。鋲やリベットで固定することもできる。折り曲げ片35は基材32の中心を囲む略六角形を形成するように配置する。ただし放射状に配列するなど、他の形状に配置することもできる。前記固定部34は、回転軸18と基材32を結合する部材である。
【0045】
この実施形態では、風受け33は円錐の頂点37が時計方向に向けられ、円錐の底38側が反時計方向に向けられている。そのため、頂点37側に向かう風による反時計方向の回転トルクより、底38側に向かう風による時計方向の回転トルクが大きい。そのため、風車18は時計方向(矢印P方向)に回転する。風車18の回転により、害獣や害鳥が接近するのを抑制することができる。
【0046】
図2に示すように、前記容器11の下部には、水を排出するためのドレン口45が設けられ、そのドレン口45に排水用ホース46の一端が固定されている。排水用ホース46の他端は、ホース保持具47によって容器11の上部に保持させている。そのため、必要に応じて排水用のホース46の他端をホース保持具47から取り外し、下方に延ばすことにより、容器11内の水を重力で排水することができる。
【0047】
図7A図7Bに示す容器50は、底部50aに餌の食べ残しや糞などのゴミないし汚れを溜める溝51を設けると共に、その溝51の端部にドレン口45を設けている。ドレン口45は側壁50bに設けるほか、底部50aに設けることもできる。溝51は底部50aを構成する板を下向きに突出・湾曲させることにより形成できる。このように構成することにより、容器50の底部50aに残ったエサや糞は水の攪拌によって溝51内に溜まるので、排水時に水と一緒に流れ出ていく。そのため容器11内を清潔に保ちやすくなる。
【0048】
図3の実施形態では、容器11の内底に底板15を設けているが、底板15を省略することもできる。また、図8に示すように、容器11の底部11aに有底筒状の厚肉部11a1を一体に成形し、その厚肉部11a1に軸受け部材17をねじ込むネジ穴11a2を形成してもよい。ネジ穴11a2は容器11の底部11aを貫通していない。厚肉部11a1は底部11aの上面側に設けてもよい。底板15には軸受け部材17を避けるための開口15bを形成している。
【0049】
前記実施形態ではカバー12は容器11の開口部11aのほぼ全体を覆っているが、図9に示すように、開口部11aの略半分程度を覆うようにすることもできる。このようにすると、カバー12で覆われていない広いスペースSから容易に給餌をすることができる。なおこの場合でも、外敵が近づくと水棲生物はカバー12の下に隠れることができる。また、支持棒13aがあるので、外敵はカバー12の下方まで手を入れることができない。この実施形態では、カバー12の端縁に、ゴム板などで形成した立ち上げ片12c1を取り付けている。この立ち上げ片12c1も、図1の立ち上げ片12cと同様に、水面上に散らばる餌が開口している範囲にとどまるように、餌をせき止めるものである。
【0050】
前記実施形態では支持部材13として金属製の支持棒13aとナット13b~dを採用しているが、図10に示すように、合成樹脂製のパイプからなる支持棒13aと、その端部にカバー12や底板15を挟んでねじ込んだビス13eとからなる支持部材13でカバー12を支持することもできる。その場合はカバー12と、支持部材13と、底板15をしっかりと結合することができ、取り扱いが容易になる。
【0051】
パイプ製の支持棒13aはカバー12が開口部11aの半分程度を覆うときは10~15本程度、開口部11aの全体を覆うときは20~30本程度用いるのが好ましい。ビス13eは合成樹脂製のものが好ましい。支持部材13の本数が多い場合は、カバー12を構成する合成樹脂シートを薄くすることができる。なお、図10の場合は、支持棒13aのいくつかは、底板15を貫通して下方に延ばしている。そして支持棒13aの下端を容器11の底部11dに形成した溝51に係合させて、底板15がずれないようにしている。また、カバー12の上に岩53や植木鉢を載せると、カバー12や底板15が安定する。さらに水棲生物が隠れる陰をつくることができる。
【0052】
前記実施形態ではカバー12を多数本の支持棒13aで支持しているが、図11に示すように、容器11に段部52を設け、その段部52でカバー12を支持するようにしてもよい。この場合は、支持部材はその段部52である。
【0053】
図2ではカバー12の開口12aは正方形の頂点ないし格子の交点の位置に配列されているが、図12の実施形態のように、カバー12の開口12aを菱形の頂点の位置に配置してもよい。なお、図12では、カバー12の端の開口12aは円の一部を切り欠いた形状にしている。
【0054】
前記実施形態では容器11の下部にドレン口45を設け、そのドレン口45に排水用ホース46を取り付けているが、図13A図13Bに示すように、ドレン口45にエルボ54を介して排水パイプ55を回転自在に取り付けてもよい。排水パイプ55の上端には、他のエルボ56を取り付ける。この実施形態では、通常の使用形態では排水パイプ55を直立させておく。そして排水パイプ55を水平まで回動させると容器11内の水を全量排水することができ、傾きの角度に応じて水位を調節することができる。一端を容器11内の底部近辺に保持したチューブの他端を容器11の外に垂らすことにより、サイホンの原理で排水することもできる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されない。前記実施形態では、カバー12は一枚の板で容器11の開口のほぼ全体を覆っているが、2枚あるいは3枚以上に分離することもできる。その場合は給水ボトルBや攪拌機構16を動かさずに水棲生物の出し入れをすることができる。前記実施形態では容器11の平面形状は矩形状であるが、円形や楕円など、他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 水棲生物飼育装置
11 容器
11a 開口部
11b 側壁
11c フランジ
11d 底部
W 水
12 カバー
12a 開口
12b 切り欠き部
12c 立ち上げ片
12c1 立ち上げ片
12d 給水開口
12e 貫通孔
13 支持部材
13a 支持棒
13b、13c、13d ナット
13e ビス
B 給水ボトル
14 ボトル支持筒
14a 本体
14b 内筒
14c スリット
14d 補強リブ
14e 保護枠
14f 連通孔
14g 取り付け筒
15 底板
15a 開口
15b 開口
16 攪拌機構
17 軸受け部材
17a ネジ部
17b 頭部
17c 凹部
18 回転軸
18a 下端
19 風車
20 旋回翼
21 支持パイプ
22 支持キャップ
23 ねじソケット
24 ナット
25 翼部材
25a 基部
25b 枝部
26 固定部
26a ねじ
27 上向き翼片
27a、27b、27c、27d 細片
28 下向き翼片
P 回転方向
32 基材
33 風受け
34 固定部
35 折り曲げ片
37 頂点
38 底
B1 キャップ
B2 給水弁
B3 軸
B4 閉鎖弁
45 ドレン口
46 排水用ホース
47 ホース保持具
50 容器
50a 底部
50b 側壁
51 溝
11a1 厚肉部
11a2 ネジ穴
S スペース
52 段部
53 岩
54 エルボ
55 排水パイプ
56 エルボ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13