(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163646
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】パレットの載置部構造
(51)【国際特許分類】
B65G 1/14 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
B65G1/14 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068726
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】501055145
【氏名又は名称】株式会社ZMP
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【弁理士】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】谷口 恵恒
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 章
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022EE02
3F022FF02
3F022JJ12
3F022LL06
3F022MM03
3F022MM05
3F022MM11
(57)【要約】
【課題】フォークリフトによる荷取作業を容易に行うことができ、荷取作業の作業性を向上できるパレットの載置部構造を提供する。
【解決手段】フォークリフト10によりパレット30を載置するための載置部構造であって、ベース部43と、ベース部に支持されパレットのフォーク挿入用開口の挿入方向と交差する方向にスライドするスライド機構とを含み、スライド機構は、パレット30を載置しスライド機構によりスライド可能なスライドプレート46と、スライドプレート46のスライドを規制するスライド規制部47と、を備え、フォークリフトのフォーク13をパレットの開口部31に挿入する際フォーク13の挿入方向に対してスライドプレートが交差方向にスライド可能とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役用パレットを載置するパレットの載置部構造であって、
ベース部と、
前記ベース部に支持され前記パレットのフォーク挿入用開口部の挿入方向と交差する方向にスライドするスライド機構と、を含み、
前記スライド機構が、
前記パレットを載置し前記スライド機構によりスライド可能なスライドプレートと、
前記スライドプレートのスライドを規制するスライド規制部と、を備え、
フォークリフトのフォークを前記パレットの開口部に挿入する際フォークの挿入方向に対してスライドプレートが交差方向にスライド可能とした、パレットの載置部構造。
【請求項2】
前記スライド機構が、前記フォークの挿入方向に沿って軸線が配置されるように前記ベース部に回転自在に支持した複数のロッドで構成され、前記スライドプレートが前記複数のロッドの転動面に支持される、請求項1に記載のパレットの載置部構造。
【請求項3】
荷棚の載置部に前記スライド機構が配設される、請求項1又は2に記載のパレット載置部構造。
【請求項4】
貨物自動車における荷台に前記スライド機構が配設される、請求項1又は2に記載のパレットの載置部構造。
【請求項5】
前記ベース部に対して前記スライドプレートを移動しないよう固定するストッパが設けられる、請求項1乃至請求項4の何れかに記載のパレットの載置部構造。
【請求項6】
前記スライド機構が、前記スライドプレートを前記フォークの挿入方向と交差する方向に付勢する付勢手段を備えている、請求項1乃至5の何れかに記載のパレットの載置部構造。
【請求項7】
前記フォークリフトは、車体と前記車体を走行及び操舵する走行部と、前記車体前部に取り付けられたフォークと、前記フォークを上下に昇降させるフォーク駆動部と、前記走行部及びフォーク駆動部を制御する制御部と、を備えた自動運転フォークリフトである、請求項1に記載のパレットの載置部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトのフォークを荷役用パレットの開口部に挿入する際などにフォークに対してパレット開口部を容易に位置合わせできるようにしたパレット載置部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貨物自動車や荷棚等の載置部に貨物を荷積みしたり荷卸ししたりする場合、パレット上に貨物を積載した状態でフォークリフトを用いて荷役作業が行われる。この場合、貨物自動車や荷棚等に載置されたパレットをフォークリフトにより荷取するには、パレット付近に到達したフォークリフトをゆっくり走行させることで、フォークをパレットの開口部に挿入し、フォークを上昇させてパレットを持ち上げて移動する。その際、パレット付近に到達したフォークリフトの現在位置とパレットの開口部の位置及び向きとの相対関係に応じて車体を走行させることが必要で、短時間でフォークを精度よく対応させてパレットの開口部に挿入するには熟練を要する。また、荷棚の載置部や貨物車両の載置部などにパレットを積み込む場合、隣接するパレットの間隔が例えば2cm程ずれて順次配置されると、横積みされる個数により合計隙間がその分大きくなってしまうため無駄な体積が生じ、荷崩れや荷ずれなどが生じ易く、この隙間を埋めるために緩衝材等の養生物の挿入作業が必要で余分な手間が掛かってしまう。
【0003】
また、最近では自動運転フォークリフトが実用化されつつあり、自動運転フォークリフトによる荷取りを行う技術も特許文献1等に提案されている。特許文献1には、フォークに取り付けられたレーザセンサである二次元センサを第一の方向に走査させると共に、フォークを昇降させることで前方に設定された空間内に存在する物体までの三次元距離データを計測して荷取り対象となる荷又はパレットの位置及び向きを特定し、特定した荷又はパレットの位置及び向きに基づいて算出される荷取り位置まで車体を移動させるための軌道データを生成するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フォークリフトを走行させながらマストから前方に突出しているフォークを、パレットの開口部の位置及び向きに精度よく対応させて開口部内に挿入することは容易でなく、特殊な技能や高度な計算が必要となる。パレット及び貨物の重心と複数のフォークとの位置関係が不適切であると走行時に車体の安定性が確保できず、貨物を積載して大荷重が負荷された状態のパレットにフォークが接触したりすると、パレットや貨物の破損等が生じ得る。そのためパレットの開口部に対するフォークの位置や向きのズレは僅かな許容量になるよう設定しなければならず、フォークリフトによる荷取り作業に手間を要していた。
【0006】
さらに言えば、例えばパレット付近に到達したフォークリフトのフォークの向きがパレットの開口部の向きに対して傾斜している場合、車体を操舵してフォークの位置や向きを合わせる必要があるが、開口部の向きに対してフォークが大きく傾斜している場合は、車体を前後動させて一回乃至複数回の切返しを行うことも必要となる。特に自動運転フォークリフトにより、確実にフォークをパレットの開口部周りの側板と接触しないようスムーズな挿入動作を行うには、複数の検出手段により各部の位置や向きを計測しつつ車体の駆動装置や操舵装置を高度に制御しなければならないため、荷取り作業の処理が複雑化して時間や作業スペースに無駄が生じ易いという課題があった。
【0007】
そこで本発明では、有人であっても無人であっても、フォークリフトによる荷取作業を容易に行うことができ、荷取作業の作業性を向上できるパレットの載置部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパレットの載置部構造は、フォークリフトにより荷役用のパレットを載置するための載置部構造であって、ベース部と、ベース部に支持されパレットのフォーク挿入用開口部の挿入方向と交差する方向にスライドするスライド機構と、を含み、スライド機構は、パレットを載置しスライド機構によりスライド可能なスライドプレートと、スライドプレートのスライドを規制するスライド規制部と、を備え、フォークリフトのフォークをパレットの開口部に挿入する際フォークの挿入方向に対してスライドプレートが交差方向にスライド可能としたことを特徴としている。
【0009】
本発明のパレットの載置部構造では、スライド機構が、フォークの挿入方向に沿って軸線が配置されるようにベース部に回転自在に支持した複数のロッドで構成され、スライドプレートが複数のロッドの転動面に支持される。
【0010】
また本発明のパレットの載置部構造では、荷棚の載置部にスライド機構を設けてもよく、貨物自動車における荷台にスライド機構を設けてもよい。その場合、好ましくは、ベース部に対してスライドプレートを移動しないよう固定するストッパが設けられる。
前記スライド機構は、スライドプレートをフォークの挿入方向と交差する方向に付勢する付勢手段を備えてもよい。
【0011】
本発明のパレットの載置部構造に用いるフォークリフトは、車体を走行及び操舵する走行部と、車体前部に取り付けたフォークと、フォークを上下に昇降させるフォーク駆動部と、走行部及びフォーク駆動部を制御する制御部と、を備えた自動運転フォークリフトであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る荷役用のパレットの載置部構造によれば、パレットを載置するスライドプレートが、パレットに対するフォークリフトのフォークの挿入方向と交差する方向にスライド機構によりスライドできるようベース部に支持されている。そのためフォークリフトを走行させて、フォークをパレットの開口部に挿入する際、フォークが開口部から若干ずれてパレット開口部周囲の側板などに接触しても、スライドプレートが挿入方向に対して交差する直交方向に容易に変位できる。これによりパレットの開口部に対してフォークの位置及び向きが多少ずれていても、フォークがパレットをスライドしてずらすことで開口部に挿入することができ、パレット付近における開口部に対するフォークの位置及び向きを合わせる動作の自由度やズレの許容量を向上できる。よって、フォークをパレットの開口部に挿入する際のフォークリフトの車体の走行操作や制御を容易化でき、フォークリフトによる荷取作業の作業性を向上できるパレットの載置部構造を提供することができる。
【0013】
本発明においてスライド機構として、軸線がフォークの挿入方向に沿うように複数のロッドがベース部に回転自在に支持され、スライドプレートが複数のロッドの転動面に支持されていれば、パレットに大荷重が負荷された状態でもスライドプレートがパレットをフォークの挿入方向と交差する方向にスライドさせることができる。従って、フォークをパレット開口部に挿入する際の車体の走行操作や制御を極めて容易にできる。
【0014】
本発明において、荷棚の載置部或いは貨物自動車における貨物の載置部(荷台)にスライド機構を設けるとともに、スライドプレートを移動できないよう固定するストッパを設ければ、必要に応じてベース部に対してスライドプレートを変位不能に保持することができ、パレットを積載した荷棚の移動時や傾斜時、貨物自動車の走行時などに積載されたパレットを安定して保持することができる。
【0015】
本発明のスライド機構に、スライドプレートを挿入方向と交差する方向に付勢する付勢手段を備えていれば、フォークがパレットの開口部から逸れて周囲板などに接触しても、スライドプレートが付勢手段の付勢力に抗してスライドして、挿入方向に対して左右何れかに移動することで、フォークを開口部に入り込ませ、開口部の周囲との接触が解除されると、スライドプレートが付勢手段の付勢力によりスライドしてフォークを挿入する前の位置に復帰する。従って、パレットの開口部の位置がスライドプレートの移動により変動することがなく、フォークを挿入する際の目標位置を一定に保つことができ、フォークリフトの車体の操作や制御が容易である。
いずれの場合も、スライド機構を設けることで、荷棚載置部又は貨物の載置部に積載される各パレット間の隙間を極力無くすよう狭く詰めることができる。よって、従来のような緩衝材等の挿入作業が不要となり得ることで、荷取作業の時間や手間が短縮され、作業性を著しく向上することができる。
【0016】
本発明において、フォークリフトが走行部及びフォーク駆動部を制御する制御部を備えた自動運転フォークリフトであれば、パレット付近における車体の動作範囲をフォークと開口部周囲の側板とが接触する範囲まで広げることができ、開口部への多少の挿入誤差が生じても走行部の制御条件を緩和することができる。そのため制御部を簡素化でき、パレット付近での車体の切返し等の走行動作を簡略化でき、荷取動作の処理時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るパレットの載置部構造を採用した荷棚の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る載置部構造を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は底面図である。
【
図3】第1実施形態に係る載置部構造の一部を断面で示す部分斜視図であり、
図2(a)のB-B断面を示している。
【
図4】(a)は
図2(a)のC部を拡大して示す部分平面図、(b)はその側面図である。
【
図5】第1実施形態に係る載置部構造の一方の端部を裏面から見た部分斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る載置部構造におけるスライドプレートの一部を示す斜視図である。
【
図7】第1実施形態に係る載置部構造におけるストッパを示し、(a)はストッパピンの斜視図、(b)はストッパクリップの斜視図、(c)はストッパによるベース部とスライドプレートとの固定状態を示す断面図である。
【
図8】本発明で使用されるフォークリフトを示し、(a)は側面図、(b)はブロック図である。
【
図9】制御部における走行データの一つの作成例を説明する概略図で、(a)は自動運転フォークリフトの現在位置と荷取位置との相対位置関係を示し、(b)は前進のみによる走行経路を示す。
【
図10】制御部における走行データの他の作成例を説明する概略図であり、(a)は自動運転フォークリフトの現在位置と荷取り位置との相対位置関係を示し、(b)は後退及び前進を組み合わせた走行経路を示す。
【
図11】第2実施形態に係るパレットの載置部構造を装着した貨物自動車を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態は本発明のパレットの載置部構造が組み込まれた荷棚である。荷棚41は
図1に示すように床面に設置され、載置部42が上下に複数段設けられている。各載置部42は、フォークリフトのフォークをパレット30の開口部31に挿入できるように、パレット30を一つの棚に一段積み或いは複数段積みで多段に、図示の場合3段で積載可能となっている。
【0019】
本実施形態の荷棚41はフレーム45により構成され、このフレーム45は、平面視四角形の枠からなるベース部43と縦支柱44とにより立法形状に組み立てられる。このベース部43は図示では3段に構成され、各ベース部43にスライドプレート46が配設されて複数のパレット30の載置部42を構成する。これらのスライドプレート46はスライド機構により、
図1において左右方向(棚板の長手方向)に適宜の長さでスライドするが、本実施形態の荷棚41はこのスライドプレート46のスライドを規制するスライド規制部47を備えている。
【0020】
図2(a)~(c)及び
図3に示すように、各段の載置部42にはスライド機構として、ベース部43に回転自在に支持されて互いに略平行に配置された複数のロッド48が配置され、スライドプレート46は複数のロッド48の転動面により支持されている。複数のロッド48の軸線Lは、パレット30の開口部31に対するフォーク13の挿入方向D1に沿って配置される。各ロッド48はベース部43の横支柱43a内に配設された軸受49により両端で支持されることで回転自在に配置される。
【0021】
スライドプレート46は、フォーク13の挿入方向D1と交差する方向D2に長い略長方形の板材により形成され、下面には複数本の補強材46cが交差方向D2に沿って固定されている。スライドプレート46は複数のロッド48により下側から支持されることで、パレット30の開口部31に対するフォーク13の挿入方向D1と交差する方向D2、好ましくは直交方向にスライド自在に配置される。
【0022】
横支柱43aはカバー部50により覆われる。カバー部50は枠状のベース部43の外側、上側、内側を覆う外面部50a、上面部50b、内面部50cを有する。上面部50bはスライドプレート46の上面と略同一面に配置される。内面部50cはロッド48を除く位置を覆うとともに上面部50b側がスライドプレート46のスライド時のガイドとなる。
【0023】
スライド規制部47は、
図4(a)、(b)に示すように、略四角形のベース部43の短手方向に配置された一対の横支柱43aに、スライドプレート46の長手方向における両端部46aが移動可能な凹部43bと、四隅付近にスライドプレート46と当接可能な凸部43cと、スライドプレート46の凸部43cに対応する四隅に設けられた切欠部46bと、を有する。このスライド規制部47は、スライドプレート46が所定量以上スライドした際、スライドプレート46の切欠部46bが横支柱43aの凸部43cに当接することで、スライドプレート46の過剰なスライドを規制する。
【0024】
この実施形態の載置部構造には、
図5に示すように、略四角形状のベース部43における交差方向D2の両端側に、補助的なスライド機構として、スライドプレート46を挿入方向D1と交差する方向D2に付勢する引張りバネなどからなる付勢手段51が備えられている。付勢手段51は両端がベース部43とスライドプレート46とに固定して設けられる。この付勢手段51によれば、スライドプレート46に交差方向D2の力が作用してスライドした後、解除されることでスライドプレート46が所定位置に復元する。本実施形態では、スライドプレート46を長手方向両端部46aで付勢することで、開放状態のベース部43が交差方向D2の中央位置に復元する。これにより、フォーク13がパレット30の開口部31の周囲に接触して、スライドプレート46が挿入方向に対して交差方向に変位しても、その後、フォーク13と開口部31の周囲との接触が解除されると、スライドプレート46が付勢手段51の付勢力によりスライドしてフォーク13を挿入する前の位置に復元できる。そのため開口部31の位置がスライドプレート46の変位により変動することがなく、フォーク13を挿入する際の目標位置を一定に保つことができ、フォークリフトの車体の操作や制御をより容易にできる。従って、荷棚載置部又は貨物の載置部に積載された各パレット30の隙間を極力無くすことができる。
本発明の載置部構造によれば、隣接するパレット30の間隔を、1cm程度、好ましくは、5mmから1cm程度に減少することができるので、従来のような緩衝材等の養生物の挿入作業が不要となり、荷取作業の時間や手間が短縮されるので作業性が著しく向上する。また、パレット30の間に5mm程度の隙間が生じた場合には、必要によりダンボール板等の挿入だけで隙間を無くすことができ、作業性を著しく向上する。
本実施例では、メインのスライド機構としてロッド48を用い、補助的に付勢手段51としてバネを用いたが、ロッド48に代えて、バネ51のみでスライド機構を構成することもできる。この場合は、スライドプレート46に対してバネ51を連結することでスライド機構とする。なお、図示を省略するが、ゴムなどの他の弾性部材を用いてもよく、或いは電動式のスライド機構を採用することも可能であろう。
【0025】
さらにこの実施形態の載置部構造には、
図5及び
図6に示すように、ベース部43に対してスライドプレート46を移動不能に固定するためのストッパ56が設けられている。ストッパ56は、
図7(c)に示すように、ベース部43の横支柱43aの貫通孔43dと、スライドプレート46の端部46aに設けられた切欠46dとに、ストッパピン56a(
図7(a)参照)を貫通させて、ストッパクリップ56b(
図7(b)参照)をストッパピン56aに嵌合させて抜け防止する構造としている。このストッパ56は作業者が必要に応じて着脱可能であり、装着することでスライドプレート46をベース部43に対して移動不能に固定することができる。
【0026】
荷積作業や荷卸作業に使用される本実施形態のフォークリフトは、人が運転する有人のフォークリフトに限らず、
図8(a)、(b)に示す自動運転フォークリフト10を使用してもよい。自動運転フォークリフト10は、車体11と、車体11を自動で前後に走行させると共に自動操舵する走行部12と、車体11の前部に設けられたフォーク13と、フォーク13を上下に昇降させるフォーク駆動部14と、各種情報を取得する検出部15と、車体11内に設けられた制御部16と、対象物検出部20と、を備える。
【0027】
車体11はほぼ直方体状の外形を有し、左右両側から前方に延びる張出部11aを備え、各張出部11aの先端付近には一対の前輪11bを、車体11の後端付近には後輪11cを備える。後輪11cは操舵輪として垂直軸の周りに揺動可能に支持される。
【0028】
走行部12は、前輪11b又は後輪11cを回転駆動して自動運転フォークリフト10を前後に走行させ、後輪11cを操舵して左右に転回させる。フォーク13は、車体11の前部に配置された一対のマスト13aに沿って上下方向に移動可能に支持され、フォーク駆動部14により移動する。検出部15は、車体11の上方に設けた位置センサ15aと、車体11の下部に設けた障害物センサ15b,バンパーセンサ15cを含む。
【0029】
位置センサのレーザーナビゲータ15aは例えばレーザースキャナ及び受光部から構成され、レーザースキャナによりレーザービームを放射して、作業領域内の壁面等の各所に配置された複数個の反射部で反射されたレーザービームを受光部で収集することにより、現在位置及び方向を決定する。
【0030】
障害物センサ15bは、例えば二次元ライダーから構成され、自動運転フォークリフト10の車体11の後方にある障害物を検出して検出信号を送出する。バンパーセンサ15cは、障害物に接触したとき障害物を検出して検出信号を送出する。さらに、自動運転フォークリフト10は、より安全性を高めるために安全部17として緊急停止ボタン17a,音声・パトランプ17b及びウィンカー17cを備えている。
【0031】
制御部16は、車体外面に設けられた操作部16aで入力された荷取り位置及び荷卸し位置に基づいて走行データを作成し、この走行データに基づいて走行部12を制御する。即ち、制御部16は、自動運転フォークリフト10を作業領域に予め設定された基本経路に沿って走行させることで、自動運転フォークリフト10を指定された荷取位置付近まで移動させ、当該荷取位置でフォーク13にパレット30を搭載した後、同様にして基本経路に沿って指定された荷卸し位置付近まで移動させ、当該荷卸し位置でフォーク13からパレット30を荷卸しする。
【0032】
制御部16は作業領域のマップデータを備え、各荷取位置又は荷卸し位置を結ぶように基本経路及びマーカーの位置も登録している。基本経路は作業領域内を移動するために予め設定されている経路であって、自動運転フォークリフト10は、基本経路に沿って作業領域内を大きく移動すると共に、個々の荷取位置又は荷卸し位置を示すマーカーに対して、基本経路からそれぞれ枝分かれしてアクセスする。
【0033】
対象物検出部20は、センサ部22及び高さセンサ部23と、これらを移動させる移動部21と、形状認識部24を備え、センサ部22は車体11に取り付けられ、前方の三次元点群を取得するセンサから成る。形状認識部24はセンサ部22で取得された情報から前方に位置する物体の形状及び位置を認識する。
【0034】
上述のような荷棚41が複数所定位置に設置された作業領域において、荷積作業や荷卸作業を行うには、荷取するパレット30が積載された荷棚41の載置部42の位置及び向きと荷卸し位置などを操作部16aへ入力する。
【0035】
これにより制御部16では、走行データが作成され、走行データに基づいて基本経路に沿って荷取位置付近に自動運転フォークリフト10が移動する。荷棚41のパレット30付近に到着したとき、対象物検出部20よってパレット30及びその開口部31の形状及び位置を検出し、自動運転フォークリフト10の現在位置との相対位置関係を演算する。制御部16は、この相対位置関係に基づいて、フォーク13の先端がパレット30の開口部31に対向する荷取位置までの走行データを作成し、この走行データに基づいて走行部12を制御する。これにより、自動運転フォークリフト10の車体11は、フォーク13を荷取位置に配置されたパレット30の開口部31に挿入するように走行する。
【0036】
自動運転フォークリフト10の現在位置と荷取位置との相対位置関係に対応して、
図9(a)に示すようにそのまま前進しただけでは、荷取位置のパレット30の開口部31に対して真っ直ぐに正対することができない場合には、制御部16は
図9(b)に示すように、回り込んで前進するような走行データを作成する。また、
図10(a)に示すように、パレット30に対する角度が大きくずれていて、前進のみでは回り込んでも荷取位置のパレット30の開口部31に対して真っ直ぐに正対できない場合には、制御部16は、
図10(b)に示すように一旦後退したのち操舵を切り返して前進するような走行データを作成する。
【0037】
そして、フォーク13の高さ位置をパレット30の高さ位置に対応させるとともに、作成された走行データに従って自動運転フォークリフト10を走行させることで、フォーク13をパレット30の開口部31に挿入する。このとき、自動運転フォークリフト10が荷取位置でパレット30の開口部31に対してフォーク13が真っ直ぐに正対する状態、即ち、フォーク13全体が開口部31の延長領域内に配置されるとともにフォーク13の向きが開口部31の向きに一致する状態であれば、そのまま車体11を前進させることで、フォーク13をパレット30の開口部31内に挿入すればよい。
【0038】
一方、フォーク13の位置と開口部31の位置とが多少ずれていたり、フォーク13の向きが開口部31の向きと多少ずれていて、そのまま車体11を前進させてフォーク13をパレット30の開口部31内に挿入すると、フォーク13がパレット30の開口部31にスムーズに挿入できずその周囲に接触するような状態であっても、本実施形態ではスライド機構により、フォーク13と開口部31との相対位置や相対角度が過剰に異ならなければ、そのまま車体11を操舵しつつ前進させて、フォーク13を開口部31内に挿入することができる。
【0039】
即ち、本実施形態では、貨物及びパレット30を積載したスライドプレート46が多数のロッド48にスライド可能に支持されているため、フォーク13がパレット30の開口部31の周囲に接触して、フォーク13によりパレット30が押圧されると、スライドプレート46が挿入方向D1と交差する方向D2にスライドする。そのため、スライドプレート46がスライド可能な範囲であれば、そのまま車体11の前進を継続することで、フォーク13全体をパレット30の開口部31内に挿入することができ、挿入したままフォーク13を上昇させて再度車体11を走行させることで、パレット30の荷取作業を行うことができる。
【0040】
その後、制御部16は、走行データに基づいて基本経路に沿って荷卸し位置付近に移動し、到着したとき、荷取時と同様に現在位置と荷卸し位置との相対位置関係を演算し、相対位置関係に基づいて走行データを作成して車体11を走行させる。荷卸し位置ではパレット30の底面が床面に接するまでフォーク13を下降させ、後退することによりパレット30の開口部31からフォーク13を完全に引き抜いて荷卸しを完了する。
【0041】
以上のような第1実施形態のパレット30の載置部構造によれば、パレット30を積載するスライドプレート46が、パレット30の開口部31に対する自動運転フォークリフト10のフォーク13の挿入方向D1と交差する方向D2にスライド可能となるようにベース部43に支持される。そのため自動運転フォークリフト10を走行させて、車体11の前方に突出したフォーク13をパレット30の開口部31に挿入する際、フォーク13が開口部31から若干ずれて開口部31周囲の側板などに接触しても、スライドプレート46が挿入方向D1に対して交差する方向D2に容易に変位できる。これによりパレット30の開口部31に対してフォーク13の位置及び向きが多少ずれていてもフォーク13を開口部31に挿入することができ、開口部31に対するフォーク13の位置及び向きを合わせる動作の自由度やズレの許容量を向上できる。従ってフォーク13を開口部31に挿入する際の自動運転フォークリフト10の車体11の走行制御を容易にでき、自動運転フォークリフト10による荷取作業の作業性を向上することができる。
【0042】
この第1実施形態では、荷棚41に複数段設けられた各載置部42にベース部43が設けられているので、所定位置に設置された荷棚41の各段の載置部42に積載されたパレット30を容易に荷取りすることができる。
【0043】
特に、ロッド48の軸線Lがフォーク13の挿入方向D1に沿うように複数のロッド48がベース部43に回転自在に支持されていて、スライドプレート46が複数のロッド48の転動面に支持されているので、大荷重が負荷された状態でもスライドプレート46がフォーク13の挿入方向D1と交差する方向D2に容易にスライドすることができる。そのためフォーク13を開口部31に挿入する際の車体11の走行制御をより容易にすることができる。
【0044】
また、この第1実施形態では、スライドプレート46を挿入方向D1と交差する方向D2に付勢する付勢手段51を備えているので、フォーク13がパレット30の開口部31の周囲に接触して、スライドプレート46が挿入方向D1に対して交差方向D2に変位しても、その後にフォーク13と開口部31の周囲との接触が解除されると、スライドプレート46が付勢手段51の付勢力によりスライドしてフォーク13を挿入する前の位置に復元できる。そのため開口部31の位置がスライドプレート46の変位により変動することがなく、フォーク13を挿入する際の目標位置を一定に保つことができ、自動運転フォークリフト10の車体11の制御をより容易にできる。
自動運転フォークリフト10において、パレット30の開口部31に対するフォーク13は、例えば5cm程度の誤差が生じ得る。しかしながら、自動運転フォークリフト10に本発明の載置部構造を用いた場合は、隣接するパレット30の間隔を1cm程度、好ましくは5mm程度に緻密に詰めることができるので、従来のような緩衝材等の養生物の挿入作業が不要となり、荷取作業の時間や手間が短縮され作業性が著しく向上する。また、パレット30の間に5mm程度の隙間が生じた場合には、必要によりダンボール板等の挿入だけで隙間を無くすことができ、作業性が著しく向上する。
【0045】
また、第1実施形態では、スライドプレート46をベース部43に移動不能に固定可能なストッパ56を設けているので、必要に応じてベース部43に対してスライドプレート46を変位不能に保持することができ、例えば荷棚41を移動させたり傾斜させるような場合でも、スライドプレート46や積載されたパレット30を安定して保持することができる。
【0046】
一方、第1実施形態では、走行部12及びフォーク駆動部14を制御する制御部16を備えた自動運転フォークリフト10を用いるので、パレット30付近での車体11の動作範囲をフォーク13と開口部31の周囲とが接触する範囲まで広げることができ、制御部16における走行部12の制御条件を緩和できる。そのため制御部16を簡素化できるとともに、パレット30付近における自動運転フォークリフト10の車体11の切返し等の走行動作を簡略化でき、荷取動作の処理時間の短縮などを図ることができる。
【0047】
[第2実施形態]
第2実施形態では、貨物自動車の荷台にパレットの載置部構造を設けた例について説明する。
図11に示すように、第2実施形態の貨物自動車52には、運転室53から後方に延びるシャーシ54上に、貨物を積載するための荷台からなる貨物の載置部42が設けられている。載置部42はパネル55により外部と仕切られ、図示しない側面パネル全体が大きく開閉することで、自動運転フォークリフト10により貨物及びパレットを出し入れ可能である。載置部42の床面上には、第1実施形態と同様の構成を有するパレットの載置部構造が設けられている。
【0048】
第2実施形態の貨物自動車52の貨物の載置部42であっても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。しかも、貨物自動車52の載置部42にベース部43が設けられているので、貨物自動車52により搬送された積荷を自動運転フォークリフト10により荷取りする際、貨物自動車52の停車位置や停車向きにバラつきが生じても、自動運転フォークリフト10のフォーク13をパレット30の開口部31に容易に挿入することができ、自動運転フォークリフト10による荷取作業を容易に行うことができる。
【0049】
また第2実施形態では、スライドプレート46を移動不能にベース部43に固定可能なストッパ56を備えているので、必要に応じてベース部43に対してスライドプレート46を変位不能に保持することができ、例えば貨物自動車52が走行する場合に、貨物に前後方向或いは左右方向の加速度が負荷されても、積載されたパレット30を安定して保持することができる。
【0050】
以上のような第1実施形態及び第2実施形態は、本発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば、上記各実施形態では自動運転フォークリフト10によりパレット30を荷取りする例について説明したが、荷取作業に使用されるフォークリフトは何ら限定されない。例えば作業者がフォークリフトを運転操作して走行させることで、フォーク13をパレット30の開口部31に挿入する場合であっても、本発明のパレットの載置部構造を用いることができる。
【0051】
また、上記各実施形態では、スライドプレート46がパレット30の開口部31に対するフォーク13の挿入方向D1と交差する方向D2にスライド可能に支持された例について説明したが、交差方向D2に加えてフォーク13の挿入方向D1にも所定量スライド可能に支持されていてもよい。さらにベース部43に対してスライドプレート46を回動方向に所定量スライド可能に設けることも可能である。
さらに、スライド機構において、スライド規制部47及びストッパ56の構成は特に限定されるものではなく、スライドプレート46のスライドを規制したり、スライドプレート46を移動不能に固定したりすることが可能な構成であれば、適宜選択可能である。例えばスライドプレート46に接触して摩擦力を負荷するような構成であってもよい。
【0052】
また、上記第2実施形態では、貨物自動車52のコンテナ等の貨物の載置部42内にパレット30の載置部構造を設けた例について説明したが、例えば貨物自動車52のシャーシ54にベース部43を設けて、貨物自動車52と貨物の載置部42との間にパレット30の載置部構造を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 自動運転フォークリフト
11 車体
11a 張出部
11b 前輪
11c 後輪
12 走行部
13 フォーク
13a マスト
14 フォーク駆動部
15 検出部
15a 位置センサ(レーザーナビゲータ)
15b 障害物センサ
15c バンパーセンサ
16 制御部
16a 操作部
17 安全部
17a 緊急停止ボタン
17b 音声・パトランプ
17c ウィンカー
20 対象物検出部
21 移動部
22 センサ部
23 高さセンサ
24 形状認識部
30 パレット
31 開口部 41 荷棚
42 載置部
43 ベース部
43a 横支柱
43b 凹部
43c 凸部
43d 貫通孔
44 縦支柱
45 フレーム
46 スライドプレート
46a 端部
46b 切欠部
46c 補強材
46d 切欠
47 スライド規制部
48 ロッド
49 軸受
50 カバー部
50a 外面部
50b 上面部
50c 内面部
51 付勢手段
52 貨物自動車
53 運転室
54 シャーシ
55 パネル
56 ストッパ
56a ストッパピン
56b ストッパクリップ
L ロッドの軸線
D1 フォークの挿入方向
D2 交差する方向