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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016365
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20220114BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220114BHJP
【FI】
G06N20/00
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112977
(22)【出願日】2021-07-07
(62)【分割の表示】P 2020117757の分割
【原出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】519451049
【氏名又は名称】株式会社ヒューマノーム研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】瀬々 潤
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096DA02
5L096HA11
5L096KA03
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】学習モデルを効果的に学習させることのできる技術を提供することができるようにする。
【解決手段】情報処理システムであって、第1のユーザの第1のデータを用いて機械学習により学習させた学習モデルを提供する学習モデル提供部と、学習モデルを購入した第2のユーザの第2のデータの入力を受け付ける入力部と、第2のデータを用いた機械学習により学習モデルを更新する更新部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のユーザの第1のデータを用いて機械学習により学習させた学習モデルを提供する学習モデル提供部と、
前記学習モデルを購入した第2のユーザの第2のデータの入力を受け付ける入力部と、
前記第2のデータを用いた機械学習により前記学習モデルを更新する更新部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記第2のユーザから前記学習モデルに対するパラメータの設定を受け付けるパラメータ設定部をさらに備えること、
を特徴とする情報処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理システムであって、
前記第1及び第2のデータは画像データであり、
前記学習モデルは分類器であり、
複数の前記学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、
受け付けた前記第2のデータを前記学習モデルに与えた場合の信頼度を取得する予測試行部と、
をさらに備え、
前記学習モデル提供部は、前記信頼度に応じて前記学習モデルを前記第2のユーザに提示し、前記第2のユーザから前記学習モデルの指定を受け付け、指定された前記学習モデルを提供すること、
をさらに備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理システムであって、
前記第3のデータの入力を受け付け、受け付けた前記第3のデータを、更新された前記学習モデルに適用して予測を行う予測部をさらに備えること、
を特徴とする情報処理システム。
【請求項5】
請求項3に記載の情報処理システムであって、
前記第3のデータを用いた前記予測の実行に応じて前記第2のユーザに課金を行う課金処理部をさらに備えること、
を特徴とする情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
学習済みの学習モデルを提供するシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6695534号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、学習済みモデルでは利用者が希望する精度が担保されない可能性がある。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、学習モデルを効果的に学習させることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、情報処理システムであって、第1のユーザの第1のデータを用いて機械学習により学習させた学習モデルを提供する学習モデル提供部と、前記学習モデルを購入した第2のユーザの第2のデータの入力を受け付ける入力部と、前記第2のデータを用いた機械学習により前記学習モデルを更新する更新部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、学習モデルを効果的に学習させることのできる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るAIシステムの全体構成例を示す図である。
図2】管理サーバ2のハードウェア構成例を示す図である。
図3】管理サーバ2のソフトウェア構成例を示す図である。
図4】アノテーションデータの入力画面11の一例を示す図である。
図5】提供者による学習モデルの提供処理の流れについて説明する図である。
図6】利用者が学習モデルをチューニングする処理の流れについて説明する図である。
図7】予測処理の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<発明の概要>
【0011】
<システムの概要>
図1は、本発明の一実施形態に係るAIシステムの全体構成例を示す図である。本実施形態のAIシステムは、管理サーバ2を含んで構成される。管理サーバ2は、提供者端末1及び利用者端末3のそれぞれと通信ネットワーク4を介して通信可能に接続される。通信ネットワーク4は、たとえばインターネットであり、公衆電話回線網や携帯電話回線網、無線通信路、イーサネット(登録商標)などにより構築される。
【0012】
本実施形態のAIシステムは、提供者が学習済みモデルを提供し、その学習モデルを利用者がチューニングしたうえで利用することができるようにしようとするものである。本実施形態では、学習モデルは画像に含まれている特定のオブジェクトを識別する分類器であり、分類器は、多層構造のニューラルネットワーク(ディープラーニング)を利用したFaster RCNNやMask RCNNなどを想定しているが、これに限らず、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、XGBOOSTなどでもよい。また、本実施形態では、あるものの画像を学習させた学習モデルに、他のものの画像を与えてさらなる学習をさせることによりチューニングを行うことができる。例えば、温州ミカンの学習モデルにオレンジの画像を与えることでオレンジの分類器として学習モデルをチューニングすることができる。温州ミカンの画像で学習済みの学習モデルを用いることにより、似て非なるオレンジの画像を用いて、少ない枚数の画像で精度の高いオレンジの分類器を効率良く作成することができる。
【0013】
提供者端末1は、提供者が操作するコンピュータであり、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレットコンピュータなどである。提供者端末1を、クラウド・コンピューティングにより実現される仮想的なコンピュータとすることもできる。提供者は提供者端末1を利用して学習モデルを管理サーバ2に登録する。本実施形態では、提供者は提供者端末1を操作して管理サーバ2にアクセスし、TensorFlow(登録商標)などを用いて記載した学習モデルを登録することができる。また、提供者端末1から、学習モデルへの入力データとなる画像データ(例えば、温州ミカンの画像)を管理サーバ2にアップロードし、各画像について、分類するべきオブジェクト(例えば、温州ミカン)が表されている領域を指定するアノテーションを行い、アノテーションにより指定された領域と画像データとを学習モデルに与えることにより学習モデルを更新し、画像データからオブジェクト(例えば、温州ミカン)の抽出を行うための学習を行うことができる。なお、管理サーバ2以外のコンピュータ(例えば提供者端末1など)で学習処理を行い、学習済みの学習モデルをパラメータとともに管理サーバ2にアップロードするようにしてもよい。
【0014】
利用者端末3は、学習済みの学習モデルを利用しようとする利用者が操作するコンピュータである。利用者端末3は、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレットコンピュータなどである。利用者端末3を、クラウド・コンピューティングにより実現される仮想的なコンピュータとすることもできる。利用者は利用者端末3を操作して管理サーバ2にアクセスして提供者により学習済みの学習モデルを購入し、購入した学習モデル(例えば、温州ミカンの分類器)に、利用者の画像データ(例えば、オレンジの画像)を与えてさらなる学習をさせることでチューニング(例えば、オレンジの分類器の作成)を行うことができる。また、利用者端末3は、利用者の画像によりチューニングした学習モデル(例えば、オレンジの分類器)を用いて、画像からオレンジの抽出及び分類を行うことができる。
【0015】
<管理サーバ>
管理サーバ2は、学習モデルの学習処理と、学習モデルを用いた予測(分類)処理とを行うコンピュータである。管理サーバ2は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、あるいはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0016】
図2は、管理サーバ2のハードウェア構成例を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。管理サーバ2は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入力装置205、出力装置206を備える。記憶装置203は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。通信インタフェース204は、通信ネットワーク4に接続するためのインタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。入力装置205は、データを入力する、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、マイクロフォンなどである。出力装置206は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。後述する管理サーバ3が備える各機能部は、例えば、CPU201が記憶装置203に記憶されるプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより実現され、管理サーバ3が備える各記憶部は、メモリ202及び記憶装置203が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0017】
図3は、管理サーバ2のソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ2は、提供者情報記憶部231、学習モデル記憶部232、提供者画像記憶部233、利用者情報記憶部241、予測モデル記憶部242、利用者画像記憶部243、学習モデル作成部211、予測試行部212、学習モデル提供部213、画像データ入力部214、学習モデル更新部215、パラメータ設定部216、予測部217、課金処理部218を備える。
【0018】
提供者情報記憶部231は、提供者に関する情報(以下、提供者情報という。)を記憶する。図3に示すように、提供者情報には、提供者を特定する提供者IDに対応付けて、支払情報を含めることができる。本実施形態では、提供者が提供した学習済みの学習モデルを利用者に販売する。支払い情報は、学習済み学習モデルの販売収益を提供者に支払うための情報であり、例えば、銀行口座に関する情報とすることができる。
【0019】
学習モデル記憶部232は、提供者から提供された学習モデルを含む情報(以下、モデル情報という。)を記憶する。図3に示すように、モデル情報には、学習モデルを特定するモデルIDに対応付けて、当該学習モデルを提供した提供者を示す提供者ID、学習モデル、当該学習モデルによる認識対象、学習手法、販売価格などを含めることができる。上述したように、本実施形態では、学習に用いるデータは画像データであり、学習モデルは分類器であることを想定している。学習モデル記憶部232は、複数の提供者から提供された複数の学習モデルに係るモデル情報を記憶することができる。
【0020】
提供者画像記憶部233は、学習モデルの学習に用いる提供者からの画像データを含む情報(以下、提供者画像情報という。)を記憶する。図3に示すように、提供者画像情報には、画像データの提供者を示す提供者ID及び学習モデルを特定するモデルIDに対応付けて、画像データと、当該画像データに認識対象が表示されている領域を示すアノテーションデータと、認識対象の分類を示す分類情報とを含めることができる。なお、提供者画像情報には、その他提供者及び画像データに関する情報を含めることができる。
【0021】
利用者情報記憶部241は、利用者に関する情報(以下、利用者情報という。)を記憶する。図3に示すように、利用者情報には、利用者を特定する利用者IDに対応付けて、課金情報を含めることができる。課金情報は、利用者が学習モデルを購入した場合の対価や、後述するように、学習モデルを利用して予測処理を行った場合の料金の課金に用いる情報であり、例えば、クレジットカードの番号や認証情報などとすることができる。
【0022】
予測モデル記憶部242は、予測に用いる学習モデルに関する情報(以下、予測モデル情報という。)を記憶する。予測に用いる学習モデルとは、提供者が提供した学習モデルを、利用者の画像を用いて学習させたものである。すなわち、提供者が提供した学習モデル(提供者の画像により学習させた学習モデル)を、利用者の画像によりチューニングした学習モデルである。例えば、温州ミカンの画像を学習させた学習モデルに、オレンジの画像をさらに学習させることで、オレンジの分類器としてチューニングを行ったものである。予測モデル情報には、利用者を示す利用者IDと、利用者が購入した学習モデルを示すモデルIDとに対応付けて、学習モデルとパラメータとを含めることができる。パラメータは、学習モデルのパラメータであってもよいし、ハイパーパラメータであってもよい。
【0023】
利用者画像記憶部243は、利用者からの画像データを含む情報(以下、利用者画像情報という。)を記憶する。図3に示すように、利用者画像情報には、画像データを提供した利用者を示す利用者IDに対応付けて、画像データと、アノテーションデータと、分類情報とを含めることができる。
【0024】
学習モデル作成部211は、利用者に提供する学習モデルを作成する。本実施形態では、学習モデル作成部211は、提供者端末1から送信される学習モデルを受信して学習モデル記憶部232に登録することができる。学習モデル作成部211はまた、提供者から提供された学習モデルの学習処理を行うことができる。学習モデル作成部211は、提供者端末1から学習に用いる複数の画像データを受信し、それぞれについて提供者画像情報を作製して提供者画像記憶部233に登録することができる。なお、学習モデル作成部211は、提供者端末1以外から画像データを取得するようにしてもよい。
【0025】
学習モデル作成部211はさらに、提供者端末1に画像データを表示させ、当該画像に表示されている認識対象を表す領域を示すアノテーションデータと分類情報との入力を受け付けさせ、アノテーションデータ及び分類情報を提供者端末1から取得して、画像データに対応する提供者画像情報を更新することができる。図4は、アノテーションデータの入力画面11の一例を示す図である。学習モデル作成部211は、画面11を表示するための画面データを提供者端末1に送信し、提供者端末1に画面11を表示させることができる。また、提供者端末1では、認識対象(図4の例では温州ミカン)が表示されている画像データ111中の領域112の指定を受け付け、領域112を示すアノテーションデータを管理サーバ2に送信するようにする。また、提供者端末1は、認識対象(温州ミカン)の分類(例えば、完熟、未熟等)を示す分類情報113の入力を受け付け、アノテーションデータとともに管理サーバ2に送信することができる。なお、図4の例では、矩形により領域112を特定しているが、円形や多角形、自由曲線など任意の系上の領域をアノテーションデータとして用いることもできる。
【0026】
加えて、学習モデル作成部211は、画像データ111と、アノテーションデータ112と、分類情報113とを与えて学習モデルに学習させることができる。なお、学習モデルの学習処理(学習モデルのパラメータの更新処理)は、一般的な機械学習の処理を用いることができる。
【0027】
予測試行部212は、利用者から受け付けた画像を用いて予測(分類)の試行を行う。予測試行部212は、利用者端末3から1枚又は複数枚の画像データを受信し、受信した画像データを、学習モデルに適用して予測結果(分類)とその信頼度とを取得することができる。予測試行部212は、予測の試行に用いる学習モデルの指定を受け付けるようにしてもよいし、学習モデル記憶部232に記憶されている一部又は全ての学習モデルを選択して予測を行うようにすることができる。
【0028】
学習モデル提供部213は、提供者の画像データを用いて機械学習により学習させた学習モデルを利用者に提供する。学習モデル提供部213は、予測試行部212が試行した予測結果の信頼度に応じて学習モデルを利用者端末3に送信することができる。学習モデル提供部213は、例えば、学習モデルの認識対象、学習手法、販売価格とともに、予測試行部212による予測結果及び信頼度を利用者端末3に送信してもよい。利用者は、予測試行部212による予測結果を用いて、及び/又は、認識対象、学習手法、販売価格などを参考に、購入する学習モデルを選択することができる。学習モデル提供部213はまた、利用者端末3から学習モデルの指定を受け付け、指定された学習モデルを利用者に販売することができる。利用者への販売処理については一般的なオンラインショッピングなどによる手法を用いることができる。
【0029】
画像データ入力部214は、学習モデルを購入した利用者から画像データの入力を受け付ける。画像データ入力部214は、利用者端末3から画像データを受信し、受信した画像データを含む利用者画像情報を作成して利用者画像記憶部243に登録することができる。
【0030】
画像データ入力部214は、利用者からアノテーションデータ及び分類情報の入力も受け付けることができる。上述した学習モデル作成部211と同様に、利用者端末1に対して図4に示す画面11を表示させて、画像データ111内の領域112を示すアノテーションデータと分類情報113とを取得し、取得したアノテーションデータ及び分類情報により、画像データに対応する利用者画像情報を更新することができる。
【0031】
学習モデル更新部215は、利用者が提供した画像データ(利用者画像情報の画像データ)を用いた機械学習により学習モデルを更新する。学習モデル更新部215は、利用者に対応する予測モデル情報の学習モデルに、利用者に対応する利用者画像情報の画像データ、アノテーションデータ及び分類情報を与えて学習モデルを更新することができる。学習モデルの更新はチューニングともいう。
【0032】
パラメータ設定部216は、利用者から学習モデルに対するパラメータの設定を受け付ける。パラメータには、例えば、学習率、ステップ数、アーリーストッピングの有無、物体を認定する際のしきい値(その値以上の確度のものを「存在する」と認定するようにすることができる)などのハイパーパラメータが含まれうる。
【0033】
予測部217は、チューニング済みの学習モデル(予測モデル記憶部242に登録されている学習モデル)を用いて予測処理を行う。予測部217は、利用者端末3から画像データの入力を受け付け、受け付けた画像データを利用者に対応する学習モデルに与えることにより予測(認識対象の分類)を行うことができる。
【0034】
課金処理部218は、予測部217による予測処理の実行に応じて利用者に課金を行う。課金処理部218は、例えば、定額の利用料を利用者に課金するようにしてもよいし、予測処理の実行数や画像データのサイズなどに応じた従量料金を利用者に課金するようにしてもよい。なお、利用者以外のユーザからの画像の入力に応じて予測処理を行った場合には、学習モデルに対応する利用者ではなく、ユーザに課金をするようにしてもよい。
【0035】
<動作>
以下、本実施形態のAIシステムの動作について説明する。
【0036】
図5は、提供者による学習モデルの提供処理の流れについて説明する図である。
【0037】
提供者端末1は、提供者からの画像データを管理サーバ2にアップロードし(S401)、図4に示す画面11を表示してアノテーションデータと分類情報との入力を受け付け、受け付けたアノテーションデータと分類情報とを管理サーバ2に送信する(S402)。提供者端末1は管理サーバ2に対して学習の指示を送信し(S403)、管理サーバ2は、画像データ、アノテーションデータ及び分類情報を用いて学習モデルの学習を行う(S404)。このようにして、提供者による学習済みの学習モデルが管理サーバ2に登録される。
【0038】
図6は、利用者が学習モデルをチューニングする処理の流れについて説明する図である。
【0039】
提供者端末1は、学習済みの学習モデルについて販売指示を行い(S421)、管理サーバ2は、指示された学習モデルを利用者に販売可能に管理することができる。利用者端末3は、管理サーバ2から学習モデルを購入し(S422)、管理サーバ2は、購入に応じた代金を提供者に支払う(S423)。
【0040】
利用者端末3は、利用者の画像データを管理サーバ2にアップロードするとともに(S424)、図4に示す画面11を表示してアノテーションデータと分類情報との入力を受け付け、受け付けたアノテーションデータと分類情報とを管理サーバ2に送信する(S425)。利用者端末3から学習の指示が管理サーバ2に送信されると(S426)、管理サーバ2は、利用者端末3から受信した画像データ、アノテーションデータ及び分類情報を用いて学習モデルの追加学習を行う(S427)。これにより、提供者により学習済みの学習モデルが、利用者からの画像データにより追加的に学習されて、利用者の用途に合わせた分類を精度良く行うようにチューニングすることができる。
【0041】
図7は、予測処理の流れを説明する図である。利用者端末3から画像データが管理サーバ2に送信されると(S441)、管理サーバ2は、利用者IDに対応する学習モデルを予測モデル記憶部242から読み出し、読み出した学習モデルに画像データを適用して分類情報を得ることができる(S442)。管理サーバ2は、予測結果(分類情報)を利用者端末3に送信する(S443)。また、管理サーバ2は、予測処理に応じて利用者に対して課金処理を行うことができる(S444)。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のAIシステムによれば、提供者により学習済みの学習モデルを、利用者の画像により追加学習を行うことで、利用者の認識したい対象向けにチューニングを行ったうえで、学習モデルを予測に用いることができる。したがって、利用者としては、データ量が少なくても学習を行うことが可能であり、学習にかかる費用を減らすことができ、学習にかかる時間を減らすことができる。例えば、温州ミカンの画像により学習済みの学習モデルに早生ミカンの画像で早生ミカン向けにチューニングした学習モデルを作る場合のように、似た画像に関する追加学習を行う場合には、学習率を小さい値にすることが可能であり、収束がはやく、エポック数(ステップ数・学習回数)も少なくてもすむため、効率的な学習を行うことができる。
【0043】
また、本実施形態のAIシステムによれば、提供者にとっては、自身で学習させた学習モデルの二次利用を促進することができる。例えば、提供者は、不要になった学習結果を販売することが可能である。また、提供者は自身でサーバ管理をすることなく、管理サーバ2を用いて学習モデルの構築をすることができる。
【0044】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0045】
例えば、本実施形態では、提供者端末1及び利用者端末3はそれぞれ1台のみの場合を記載していたが、提供者端末1及び利用者端末3はいずれも複数台あってよい。
【0046】
また、本実施形態では、温州ミカンの画像により学習済みの学習モデルにオレンジの画像で追加学習を行うことを一例として取り上げたが、これに限らず、例えば、ビルのヒビ画像により学習させた学習モデルに、橋桁のひび割れ画像を追加学習させることも有効であるし、皮膚の炎症などの画像で学習した学習モデルを用いてアトピー皮膚炎の学習、大腸内視鏡などの画像で学習したモデルを用いて胃がんの学習を行うことも有効である。
【0047】
また、同じ認識対象であっても、異なる撮影場所や異なる撮影主体の画像を追加学習させることも有効である。例えば、ある病院の画像で学習させた学習モデルに、他の病院での画像を与えて追加学習を行うことで、他の病院向けにチューニングを行うことも可能である。
【0048】
また、本実施形態では、モデル情報には、学習モデル以外に、学習手法及び販売価格を含めることを記載したが、これに限らず、アーキテクチャ+手法、1枚あたりの判定時間、画像サイズ、認識対象のドメイン、認識精度(AUCなど)、学習させた画像の枚数、アノテーションの数、購入数、作成者、作成者のレーティング、口コミ、利用した画像のサンプル、クラス数、ラベル名、画像のフォーマット、登録日、最終更新日などを含めることもできる。利用者はこれらの情報を参考に、学習モデルを選択することができる。
【0049】
また、本実施形態では、予測部217は、利用者から画像データを受け付けて予測を行うものとしたが、利用者とは異なる他のユーザからの画像データの入力を受け付けて予測を行うようにしてもよい。この場合、他のユーザは、予測モデル記憶部242に記憶されているチューニング済みの学習モデルの指定とともに画像データを管理サーバ2に送信し、予測217は、指定された学習モデルに、受信した画像データを与えて分類情報を求めることができる。この場合、利用者に課金するようにしてもよいし、他のユーザに課金するようにしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、学習モデルは画像に含まれている特定のオブジェクトを識別する分類器であるものとしたが、これに限らず、画像データ以外の入力データを受け付ける学習モデルであってよいし、分類器ではなく予測器であってもよい。入力データとしては、例えば、特徴量ベクトルとして表現可能な任意のデータとすることができる。また、入力データとして、例えば、表計算ソフトウェアのデータのように複数の特徴量ベクトルを並べたデータを受け付けるようにし、各行(各ベクトル)について学習を行うようにすることもできる。またこの場合に、アノテーションデータとして数値を与えるようにすることもできる。また、分類情報に代えて連続値を示す教師データを与えるようにすることもできる。
【0051】
また、本実施形態では、学習モデルは多層構造のニューラルネットワーク(ディープラーニング)を想定していたが、これに限るものではなく、各種の手法の学習モデルを採用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 提供者端末
2 管理サーバ
3 利用者端末
231 提供者情報記憶部
232 学習モデル記憶部
233 提供者画像記憶部
241 利用者情報記憶部
242 予測モデル記憶部
243 利用者画像記憶部
211 学習モデル作成部
212 予測試行部
213 学習モデル提供部
214 画像データ入力部
215 学習モデル更新部
216 パラメータ設定部
217 予測部
218 課金処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7