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  • 特開-光硬化性材料及び画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163651
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】光硬化性材料及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20221019BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20221019BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20221019BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20221019BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
C08F2/44 Z
G09F9/30 309
G02F1/1339 505
C08F290/06
C08F2/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068732
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友部 彬
(72)【発明者】
【氏名】若色 将克
(72)【発明者】
【氏名】中田 芳昭
【テーマコード(参考)】
2H189
4J011
4J127
5C094
【Fターム(参考)】
2H189DA72
2H189DA73
2H189DA77
2H189EA04Y
2H189HA16
4J011PA13
4J011PA88
4J011PA90
4J011PB16
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA14
4J011QA34
4J011QA45
4J011QB24
4J011SA02
4J011SA06
4J011SA12
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA20
4J011SA22
4J011SA61
4J011SA84
4J011TA02
4J011TA05
4J011TA06
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA10
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD471
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF171
4J127BF17X
4J127BF611
4J127BF61X
4J127BG141
4J127BG14X
4J127CB151
4J127CC011
4J127CC091
4J127CC121
4J127DA12
4J127DA27
4J127DA54
4J127EA12
4J127EA13
4J127FA41
5C094AA10
5C094AA38
5C094BA27
5C094BA43
5C094DA07
5C094EC02
5C094FB01
5C094JA02
5C094JA08
5C094JA20
(57)【要約】
【課題】画像表示装置を製造する際に使用するダム用光硬化性材料に所望のチキソ性と透明性とを付与する。
【解決手段】画像表示パネルと前面パネルとが、フィル部とその外周を囲むダム部とから構成される透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置の当該ダム部を形成するための光硬化性材料は、成分(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーを含む光重合性アクリレートモノマー成分、成分(b)100kHzで4.0以上の比誘電率を有する(メタ)アクリレートオリゴマーを含む光重合性アクリレートオリゴマー成分、成分(c)可塑剤、成分(d)光重合開始剤;及び成分(e)ヘキサデシルシリル化処理されたシリカを含有する。B型粘度系を用い、25℃で回転速度1rpm時の粘度を回転速度10rpm時の粘度で除して得られる数値をチキソ比としたときに、この光硬化性材料のチキソ比は2以上5以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示パネルと前面パネルとが、フィル部とその外周を囲むダム部とから構成される透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置の当該ダム部を形成するための光硬化性材料であって、
以下の成分(a)~成分(e):
成分(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーを含む光重合性アクリレートモノマー成分;
成分(b)100kHzで4.0以上の比誘電率を有する(メタ)アクリレートオリゴマーを含む光重合性アクリレートオリゴマー成分;
成分(c)可塑剤;
成分(d)光重合開始剤;及び
成分(e)ヘキサデシルシリル化処理されたシリカ
を含有し、
B型粘度計を用いて粘度を測定した際に、25℃で回転速度1rpm時の粘度を回転速度10rpm時の粘度で除して得られる数値をチキソ比としたときに、チキソ比が2以上5以下である光硬化性材料。
【請求項2】
成分(a)におけるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーが、4-ヒドロキシブチルアクリレートである請求項1記載の光硬化性材料。
【請求項3】
成分(a)の光重合性アクリレートモノマー成分中のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が、25質量%以上100質量%以下である請求項1又は2記載の光硬化性材料。
【請求項4】
成分(b)における100kHzで4.0以上の比誘電率を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが、2官能のポリエーテル系ウレタンアクリレートオリゴマーである請求項1~3のいずれかに記載の光硬化性材料。
【請求項5】
成分(b)の光重合性アクリレートオリゴマー成分中の100kHzで4.0以上の比誘電率を有する(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量が、20質量%以上40質量%以下である請求項1~4のいずれかに記載の光硬化性材料。
【請求項6】
成分(c)の可塑剤が、ポリエーテル系ポリオール又はポリエステル系ポリオールである請求項1~5のいずれかに記載の光硬化性材料。
【請求項7】
ポリエーテル系ポリオールが、ポリプロピレングリコールである請求項6記載の光硬化性材料。
【請求項8】
成分(d)の光重合開始剤が、光ラジカル重合開始剤である請求項1~7のいずれかに記載の光硬化性材料。
【請求項9】
光ラジカル重合開始剤が、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドである請求項8記載の光硬化性材料。
【請求項10】
成分(e)のヘキサデシルシリル化処理されたシリカが、7nm以上40nm以下の平均粒子径を有する請求項1~9のいずれかに記載の光硬化性材料。
【請求項11】
成分(a)~成分(e)の配合量が以下の範囲;
成分(a)25質量%以上35質量%以下;
成分(b)20質量%以上30質量%以下;
成分(c)40質量%以上50質量%以下;
成分(d)0.5質量%以上1質量%以下;及び
成分(e)5質量%以上10質量%以下。
である請求項1~10のいずれかに記載の光硬化性材料。
【請求項12】
画像表示パネルと前面パネルとが、外周をダム部で囲まれたフィル部とから構成される透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置において、
当該ダム部が、以下の成分(a)~成分(e):
成分(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーを含む光重合性アクリレートモノマー成分;
成分(b)100kHzで4.0以上の比誘電率を有する(メタ)アクリレートオリゴマーを含む光重合性アクリレートオリゴマー成分;
成分(c)可塑剤;
成分(d)光重合開始剤;及び
成分(e)ヘキサデシルシリル化処理されたシリカ
を含有し、B型粘度計を用いて粘度を測定した際に、25℃で回転速度1rpm時の粘度を回転速度10rpm時の粘度で除して得られる数値をチキソ比としたときに、チキソ比が2以上5以下である光硬化性材料を光硬化させたものである画像表示装置。
【請求項13】
フィル部が、成分(a)、成分(b)、成分(c)及び成分(d)を含有する光硬化性組成物を光硬化させたものである請求項12記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性材料及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な画像表示装置は、前面パネルと、偏光板を表面に備えている画像表示パネルとが、外周をダム部で囲まれた透明樹脂層を介して積層された構造を有している。この構造は、画像表示パネル又は前面パネルの外縁に、比較的高粘度で且つ所定のチキソ性を示すダム用光硬化性材料を塗布してダム部を形成し、続いて、ダム部に囲まれた領域に比較的低粘度の紫外線硬化型のフィル用光硬化性材料を塗布した後、画像表示パネルと前面パネルとを貼り合わせ、光硬化処理することで形成している(特許文献1)。ダム用光硬化性材料には、所定のチキソ性を示すように、シリカ等のチキソ性付与剤が添加されている。
【0003】
ところで、特許文献1のような構造の画像表示装置が車に搭載された場合、夏期の屋外での駐車中に高温環境下に放置されることになり、偏光板の変色が生ずる場合がある。このため、偏光板に接している透明樹脂層に比較的良好な透湿性を付与することが提案されている(特許文献2)。透明樹脂層の透湿性が高いと、高温環境下で偏光板から発生した水分が、透明樹脂層を通過して画像表示装置の外部へ排出されやすくなり、結果的に偏光板の変色が防止されると考えられる。
【0004】
従って、特許文献1の画像表示装置を車載用途に適用する場合には、特許文献1のダム用光硬化性材料やフィル用光硬化性材料の構成樹脂材料として高極性の光硬化性材料を採用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-088455号公報
【特許文献2】特開2018-021962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のダム用光硬化性材料やフィル用光硬化性材料として高極性の光硬化性材料を適用した場合、そのような光硬化性材料の光硬化物である透明樹脂層に接触している偏光板の変色が防止されるものの、ダム用光硬化性材料については、ダム状に塗布する際に必要なチキソ性が得られないという問題があった。また、その光硬化物の透明性も低下するという問題もあった。
【0007】
本発明の目的は、以上の従来の問題を解決しようとすることであり、画像表示装置を製造する際に使用するダム用光硬化性材料に、硬化後にも良好な透湿性を確保できる高極性の光硬化性材料を適用した場合であっても、所望のチキソ性と透明性とを付与できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、画像表示装置を製造する際に使用するダム用の光硬化性材料として、特定の配合の材料であって、しかも所定のチキソ比を示す材料を使用することにより、本発明の目的を達成でき、更に、チキソ性付与剤としてヘキサデシルシリル化処理されたシリカ微粒子を使用することにより、本発明の目的をより高いレベルで達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、画像表示パネルと前面パネルとが、フィル部とその外周を囲むダム部とから構成される透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置の当該ダム部を形成するための光硬化性材料であって、以下に示す成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)及び成分(e)を含有し、B型粘度計を用いて粘度を測定した際に、25℃で回転速度1rpm時の粘度を回転速度10rpm時の粘度で除して得られる数値をチキソ比としたときに、チキソ比が2以上5以下を示すものを提供する。
【0010】
成分(a) ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーを含む光重合性アクリレートモノマー成分;
成分(b) 100kHzで4.0以上の比誘電率を有する(メタ)アクリレートオリゴマーを含む光重合性アクリレートオリゴマー成分;
成分(c) 可塑剤;
成分(d) 光重合開始剤;及び
成分(e) ヘキサデシルシリル化処理されたシリカ。
【0011】
また、本発明は、画像表示パネルと前面パネルとが、フィル部とその外周を囲むダム部とから構成される透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置を提供する。この画像表示装置は、ダム部が、前述した成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)及び成分(e)を含有し、B型粘度計を用いて粘度を測定した際に、25℃で回転速度1rpm時の粘度を回転速度10rpm時の粘度で除して得られる数値をチキソ比としたときに、チキソ比が2以上5以下である光硬化性材料を光硬化させたものから構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光硬化性材料は、特定の配合の高極性樹脂材料を含有し、所定のチキソ比を示すものとなっているので、画像表示装置の製造の際に、ダム部の形状を保持し易くなり、ダム部内側に所定量のフィル用光硬化性材料を保持することができ、しかも、光硬化後にもダム部に良好な光透過性を維持させることができる。特に、成分(e)のシリカとして、ヘキサデシルシリル化処理されたシリカ微粒子を使用すると、ダムの形状保持性も向上し、光硬化後の光透過性も悪化させないようにできる。また、本発明の光硬化性材料をダムの形成に利用して製造した画像表示装置は、高温環境下に放置されても、偏光板の変色を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、画像表示装置の一態様の概略断面図である。
図2図2は、画像表示装置の別態様の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の画像表示装置に言及しつつ、本発明の光硬化性材料について説明する。
【0015】
図1は、本発明の画像表示装置10の一態様の概略断面図である。この画像表示装置10は、画像表示パネル1と前面パネル2とが、ダム部3とダム部3で囲まれたフィル部4とからなる透明樹脂層5を介して積層された構造を有している。また、図2は、本発明の画像表示装置10の別態様の概略断面図である。この画像表示装置10は、画像表示パネル1と前面パネル2とが、金属ベゼル6の内側に配置された透明樹脂層5を介して積層された構造を有する。透明樹脂層5は、金属ベゼル6上に設けられたダム部3aと、金属ベゼル6と偏光板7との境界に設けられたダム部3bと、ダム部3a、3bの内側に設けられたフィル部4とから構成されている。本発明の光硬化性材料は、ダム部3、3a、3bを形成するために用いられるものである。なお、透明樹脂層5側の画像表示パネル表面には偏光板7が配置されている。なお、本発明の画像表示装置は、図1図2の態様に限定されるものではない。
【0016】
前述したとおり、本発明の光硬化性材料は、図1図2に示されるように、画像表示パネルと前面パネルとが、ダム部とダム部で囲まれたフィル部とからなる透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置の当該ダム部を形成するための光硬化性材料であり、以下に示す成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)及び成分(e)を含有し、且つB型粘度計を用いて粘度を測定した際に、25℃で回転速度1rpm時の粘度を回転速度10rpm時の粘度で除して得られる数値であるチキソ比が2以上5以下を示すものである。先ず成分(a)から順次説明する。
【0017】
<成分(a)>
本発明の光硬化性材料は、光硬化性材料の光硬化成分として光重合性アクリレートモノマー成分を含有する。この光重合性アクリレートモノマー成分は、光硬化性材料に高い極性を付与し、光硬化性材料の硬化物の透湿度を高くするために、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーを含有する。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーは、2以上のヒドロキシ基を含有しても良いが、光硬化物の耐水性や粘着力の低下を避ける点からヒドロキシ基が一つであることが好ましい。なお、“(メタ)アクリレート”は、メタクリレートとアクリレートとを包含する。
【0018】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーの例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、アルキルの炭素数は限定されるものではないが、通常C1~12、好ましくはC1~6であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、secブチル、tertブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルブチル等が挙げられる。具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、光硬化性材料の光硬化物の透湿度を効率よく高めることができる点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや特に4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0019】
成分(a)の光重合性アクリレートモノマー成分中のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、光硬化性材料の硬化物の透湿度を高くするために、好ましくは25質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、100質量%であってもかまわない。
【0020】
なお、成分(a)の光重合性アクリレートモノマー成分は、発明の効果を損なわない限り、ヒドロキシ基を含有しない(メタ)アクリレートモノマーを含有することができる。ヒドロキシ基を含有しない(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、シクロアルキル又はビシクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー、又はヘテロシクロアルキル又はヘテロビシクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、イソステアリルアクリレートモノマー、ラウリルアクリレートモノマーを好ましく挙げることができる。シクロアルキル又はビシクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、好ましくはイソボルニルアクリレートモノマーを挙げることができる。ヘテロシクロアルキル又はヘテロビシクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、好ましくはモルフォリルアクリレートモノマーを挙げることができる。
【0021】
成分(a)の光重合性アクリレートモノマー成分の光硬化性材料中の含有量は、少なすぎると光硬化性材料の取り扱い時に適切な粘度を付与することが難しく、多すぎると光硬化性材料の硬化時の収縮が大きくなりすぎることが懸念されるので、好ましくは20質量%以上40質量%以下、より好ましくは25質量%以上35質量%以下である。
【0022】
<成分(b)>
本発明の光硬化性材料は、成分(b)として光重合性アクリレートオリゴマー成分を含有する。このような光重合性アクリレートオリゴマー成分は、光重合成分であり、100kHzで4.0以上の比誘電率を有する(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する。比誘電率が4.0未満であると、光硬化性材料の硬化物の透湿性が低くなりすぎる傾向がある。なお、比誘電率は一般的なLCRメーターにより測定することができる。
【0023】
100kHzで4.0以上の比誘電率を有する(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエーテル系ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステル系ウレタンオリゴマー、多価ヒドロキシ基含有オリゴマー等を好ましく挙げることができる。中でも、光硬化性材料の硬化物に良好な透湿性を付与できる点からポリエーテル系ウレタンアクリレートオリゴマーが好ましい。
【0024】
また、成分(b)の光重合性アクリレートオリゴマー成分は、光硬化性材料の接着性及び反応性の観点から架橋成分としての性質を有することが好ましいことから、多官能、好ましくは2官能であること、即ち、二つの(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。従って、(成分b)における100kHzで4.0以上の比誘電率を有する(メタ)アクリレートオリゴマーとして、2官能のポリエーテル系ウレタンアクリレートオリゴマーが特に好ましい。
【0025】
成分(b)の光重合性アクリレートオリゴマー成分の重量平均分子量は、小さすぎると光硬化性材料の硬化物が硬くなりすぎて表示装置に適用した場合に表示ムラが発生し、大きすぎても光硬化性材料の取り扱い時に適切な粘度を付与することができなることが懸念されるので、好ましくは20000以上50000以下、より好ましくは30000以上40000以下である。この重量平均分子量は一般的なゲル浸透クロマトグラフィー装置(GPC装置)を用いて測定することができる。また、粘度は、低すぎると光硬化性材料の硬化物が硬くなりすぎて表示装置に適用した場合に表示ムラが発生し、高すぎると光硬化性材料の取り扱い時に適切な粘度を付与することができなる傾向があるので、60℃で好ましくは20000mPa・s以上60000mPa・s以下、より好ましくは30000mPa・s以上50000mPa・s以下である。粘度は一般的なB型粘度計を用いて測定することができる。ガラス転移温度は、低すぎると光硬化性材料に良好な接着性を付与することができず、高すぎると光硬化性材料の硬化物が硬くなりすぎて表示装置に適用した場合に表示ムラが発生する傾向があるので、好ましくは-30℃以上10℃以下、より好ましくは-20℃以上0℃以下である。ガラス転移温度は一般的な示差走査熱量測定装置を用いて測定することができる。
【0026】
成分(b)の光重合性アクリレートオリゴマー成分中の100kHzで4.0以上の比誘電率を有する(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、光硬化性材料の接着性及び反応性の観点から好ましくは20質量%以上40質量%以下、より好ましくは20質量%以上30質量%以下である。
【0027】
成分(b)の光重合性アクリレートオリゴマーの光硬化性材料中の含有量は、少なすぎると光硬化性材料に十分な接着力を付与できない可能性があり、多すぎると光硬化性材料の取り扱い時に適切な粘度を付与することができなることが懸念されるので、好ましくは20質量%以上40質量%以下、より好ましくは20質量%以上30質量%以下である。
【0028】
<成分(c)>
本発明の光硬化性材料は、成分(c)として可塑剤を含有する。可塑剤は、光照射によりそれ自身が光硬化をせず、光硬化後の光硬化物に柔軟性を付与するものである。このような可塑剤は、他の成分との相溶性の観点から、好ましくはポリエーテル系ポリオール及びポリエステル系ポリオールの1種を含有することが好ましい。ポリエーテル系ポリオールを含有することがより好ましい。
【0029】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の開始剤に、アルキレンオキシドを付加重合することにより得られる一般的なポリエーテル系ポリオールを用いることができる。アルキレンオキシドは、特に限定されず、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。特に好ましいポリエーテル系ポリオールとしてはポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0030】
ポリエーテル系ポリオールの市販品としては、例えば(株)ADEKA製の「アデカポリエーテル」が挙げられる。より具体的には、ポリプロピレングリコールである「Pシリーズ」、ビスフェノールAのポリプロピレングリコール付加物である「BPXシリーズ」、グリセリンのポリプロピレングリコール付加物である「Gシリーズ」、トリメチロールプロパンのポリプロピレングリコール付加物である「Tシリーズ」、エチレンジアミンのポリプロピレングリコール付加物である「EDPシリーズ」、ソルビトールのポリプロピレングリコール付加物である「SPシリーズ」、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダムコポリマーである「PRシリーズ」、プロピレングリコールにプロピレンオキシド-エチレンオキシドブロックコポリマーを付加させた「CMシリーズ」等が挙げられる。
【0031】
ポリエーテル系ポリオールの数平均分子量は、例えば500以上8000以下が好ましく、1000以上5000以下がより好ましい。数平均分子量は、GPC装置を用いて測定することができる。
【0032】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えばジカルボン酸とジオールとを縮合重合することにより得られる一般的なポリエステル系ポリオールを用いることができる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール等の直鎖構造のジオール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等が挙げられる。
【0033】
ポリエステル系ポリオールの市販品としては、「P-1010」、「P-2010」、「P-3010」、「P-2050」(以上、(株)クラレ製)、「OD-X-102」、「OD-X-668」、「OD-X-2068」(以上、DIC(株)製)、「NS-2400」、「YT-101」、「F7-67」、「#50」、「F1212-29」、「YG-108」、「V14-90」、「Y65-55」(以上、(株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0034】
ポリエステル系ポリオールの数平均分子量は、小さすぎると光硬化性材料の硬化物からしみ出しが発生する場合があり、大きすぎると光硬化性材料の取り扱い時に適切な粘度を付与することができなることが懸念されるので、好ましくは500以上8000以下、より好ましくは1000以上5000以下である。
【0035】
成分(c)の可塑剤の光硬化性材料中の含有量は、少なすぎると光硬化性材料の硬化物を画像表示装置用の貼合剤として適用する場合に必要な十分な柔軟性が得られず、多すぎると光硬化性材料に十分な接着力を付与できないことが懸念されるので、好ましくは30質量%以上60質量%以下、より好ましくは40質量%以上50質量%以下ある。
【0036】
<成分(d)>
本発明の光硬化性材料は、成分(d)として重合形式に応じた光重合開始剤を含有する。中でも、光硬化性材料に高反応性を付与する点から、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン系光重合開始剤及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の少なくとも1種を含有することがより好ましい。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(イルガキュア184、BASFジャパン(株)製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2一ヒドロキシ-2-メチル-プロピロニル)ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア127、BASFジャパン(株)製)等を用いることができる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.社製)等を用いることができる。その他、光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン等を用いることもできる。特に、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを好ましく使用することができる。
【0037】
本発明の光硬化性材料における成分(d)の光重合開始剤の含有量は、光ラジカル重合開始剤である場合、上述の成分(a)の光重合性アクリレートモノマー成分と成分(b)の光重合性アクリレートオリゴマー成分との合計100質量部に対し、0.2質量部以上2質量部以下が好ましく、0.5質量部以上1質量部以下がより好ましい。このような範囲にすることにより、光照射時に硬化不足となるのをより効果的に防ぐとともに、重合反応によるアウトガスの増加をより効果的に防ぐことができる。光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の光重合開始剤を併用する場合、その合計量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0038】
<成分(e)>
本発明の光硬化性材料は、成分(e)としてヘキサデシルシリル化処理されているシリカを含有する。このようなシリカを含有することにより、光硬化性材料に所定のチキソ性を実現することができるだけでなく、光硬化性材料の硬化物の透明性や更に透湿性を低下させないことができる。
【0039】
このようなシリカの平均粒子径は、小さすぎると光硬化性材料中で2次凝集するリスクが高くなり、大きすぎると光硬化性材料に十分なチキソ性を付与できない可能性があるので、好ましくは7nm以上40nm以下、より好ましくは10nm以上20nm以下である。平均粒子径は一般的なレーザー回折粒度分布計を用いて測定することができる。
【0040】
成分(e)のヘキサデシルシリル化処理されているシリカにおけるヘキサデシルシリル化処理は常法に従って行うことができる。例えば、未処理表面を有するシリカフィラの表面に存在する水酸基に、ヘキサデシル基を有するシラノールを重縮合反応させることにより行うことができる。
【0041】
また、成分(e)のシリカのBET比表面積は、小さすぎると光硬化性材料に十分なチキソ性を付与できない可能性があり、大きすぎると光硬化性材料中で2次凝集するリスクが高くなる傾向があるので、好ましくは100m/g以上300m/g以下、より好ましくは130m/g以上200m/g以下である。BET比表面積は、所謂BET法により測定することができる。
【0042】
成分(e)のシリカの光硬化性材料中の含有量は、少なすぎると十分なチキソ性が得られなくなり、多すぎると硬化物の透明性が維持できないことが懸念されるので、好ましくは5質量%以上15質量%以下、より好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
【0043】
<光硬化性材料のチキソ比>
本発明の光硬化性材料は、以下で定義されるチキソ比が、小さすぎると光硬化性材料の形状保持が困難となり、大きすぎると光硬化性材料のディスペンサー等からの吐出性が低下するので、2以上5以下、好ましくは2.5以上3.5以下であることが好ましい。
【0044】
<光硬化性材料の他の成分>
本発明の光硬化性材料は、上述した成分(a)~(e)の他、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、溶剤、紫外線吸収剤、着色剤、有機または無機フィラー等の公知の樹脂用添加剤を含有することができる。
【0045】
(光硬化性材料の粘度・屈折率)
本発明の光硬化性材料は、取り扱い時の便宜から常温で液状であることが好ましい。例えば、B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.01Pa・s以上100Pa・s以下を示すことが好ましい。また、光硬化性材料は、画像表示装置に適用した場合に表示画像の品質の劣化を防ぐために、画像表示パネルや前面パネルの屈折率とほぼ同等の屈折率を有することが好ましく、例えば1.45以上1.55以下であることが好ましい。これにより、画像表示パネルからの映像光の輝度やコントラストを高め、視認性を向上させることができる。
【0046】
(光硬化性材料中の各成分の質量%)
本発明の光硬化性材料中の成分(a)~成分(e)の好ましい配合量を一覧すると以下のように表すことができる。
【0047】
成分(a)25質量%以上35質量%以下;
成分(b)20質量%以上30質量%以下;
成分(c)40質量%以上50質量%以下;
成分(d)0.5質量%以上1質量%以下;及び
成分(e)5質量%以上10質量%以下。
【0048】
<光硬化性材料の製造方法>
本発明の光硬化性材料は、上述した各成分を、公知の混合手法に従って均一に混合することにより調製することができる。
【0049】
<光硬化性材料の光硬化物>
本発明の光硬化性材料の光硬化は、重合成分の種類や重合開始剤の種類による重合形式に応じて、公知の手法に従って適宜実施することができる。光硬化は、0.3mm厚の光硬化性材料に対して、通常、メタルハライドランプからの紫外線を、積算光量が1000mJ/cm以上5000mJ/cm以下となるように照射することで行うことができる。この場合、光硬化物は、その全体の平均的な反応率(硬化率)が90%以上(好ましくは97%以上)となるように硬化させたものをいう。光硬化性材料の光硬化物全体の反応率は、例えば厚さ0.3mmに成膜した硬化物について測定した反応率を意味する。
【0050】
なお、反応率とは、光硬化前の光硬化性材料中の(メタ)アクリロイル基の存在量に対する、光硬化前後の(メタ)アクリロイル基の存在量の割合の差(消費量割合)で定義される数値である。反応率の数値が大きい程、反応がより進行していることを示す。具体的には、反応率は、光硬化前の光硬化性材料のFT-IR測定チャートにおけるベースラインからの1640~1620cm-1の吸収ピーク高さ(X)と、光硬化後の光硬化性材料(光硬化層)のFT-IR測定チャートにおけるベースラインからの1640~1620cm-1の吸収ピーク高さ(Y)とを、下記式に代入することにより算出することができる。
【0051】
【数1】
【0052】
<光硬化性材料の光硬化物の透湿性及び光透過性>
(透湿性)
本発明の光硬化性材料の光硬化物(厚さ0.3mm)は、40℃における相対湿度90%環境下で、好ましくは400g/m/day以上、より好ましくは500g/m/day以上であり、更に好ましくは600g/m/day以上、特に好ましくは700g/m/day以上であるが、経年劣化防止の観点から、1000g/m/dayを超えないことが好ましい。なお、透湿度は、JISZ0208に準拠して、40℃、相対湿度90%の雰囲気で測定することができる。光硬化物がこのような透湿度を示す光硬化物を与える光硬化性材料を、図1、2の画像表示装置10における透明樹脂層5に適用することにより、偏光板7の変色を抑制できる。
【0053】
(透明性)
光硬化性材料の光硬化物の透明性を光透過性で評価する。本発明では、可視光領域の光透過率が90%以上であることが好ましい。これにより、硬化樹脂層を形成したときに、画像表示部材に形成された画像の視認性をより良好にすることができる。光透過率は、一般的な分光光度計を用いて測定することができる。
【0054】
<画像表示装置>
本発明の光硬化性材料は、図1又は図2に示すような、画像表示パネル1と前面パネル2とが、フィル部4とその外周を囲むダム部3(金属ベゼル6が配置されている場合にはダム部3a、3b)とから構成された透明樹脂層5を介して積層されてなる画像表示装置10の当該ダム部3(3a、3b)を形成するための材料として好ましく適用できる。透明樹脂層5に接する画像表示パネル表面には偏光板7が配置されている。この画像表示装置10も本発明の一態様である。なお、本発明の画像表示装置は、図1図2の態様に限定されるものではない。
【0055】
即ち、本発明の画像表示装置10は、透明樹脂層5のダム部3が、以下の成分(a)~成分(e)を含有し且つB型粘度計を用いて粘度を測定した際に、25℃で回転速度1rpm時の粘度を回転速度10rpm時の粘度で除して得られる数値であるチキソ比が2以上5以下である光硬化性材料を光硬化させたものであることを特徴としている。これらの特徴については、本発明の光硬化性材料に関連して既に説明したとおりである。
【0056】
成分(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーを含む光重合性アクリレートモノマー成分;
成分(b)100kHzで4.0以上の比誘電率を有する(メタ)アクリレートオリゴマーを含む光重合性アクリレートオリゴマー成分;
成分(c)可塑剤;
成分(d)光重合開始剤;及び
成分(e)ヘキサデシルシリル化処理されたシリカ。
【0057】
また、本発明の画像表示装置10は、透明樹脂層5を構成するフィル部4が、既に説明した成分(a)、成分(b)、成分(c)及び成分(d)を含有する光硬化性組成物を光硬化させたものであることが好ましい。ダム部3を構成する光硬化性材料と、成分(e)を含有していないこと以外、共通しているので、フィル部4とダム部3との間で良好な密着性を示し、しかも境界での透明性の低下を抑制することができる。
【0058】
(画像表示パネル1)
本発明の画像表示装置10を構成する画像表示パネル1としては、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、タッチパネル等が挙げられる。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子とタッチパッドのような位置入力装置とを組み合わせた画像表示・入力パネルを意味する。
【0059】
(前面パネル2)
本発明の画像表示装置10を構成する前面パネル2は、画像表示パネル1の保護パネルとして機能するものである。前面パネル2としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の板状材料やシート状材料が挙げられる。これらの材料には、片面又は両面にハードコート処理、反射防止処理などが施されていてもよい。前面パネル2の厚さや弾性率などの物性は、使用目的に応じて適宜決定することができる。なお、前面パネル2には、上記のような比較的構成の簡単な部材だけでなく、タッチパネルモジュールのような各種シート又はフィルム材が積層されたものも含まれる。
【0060】
前面パネル2の周縁部には、画像のコントラスト向上のために遮光層が設けられていてもよい(図示せず)。遮光層は、例えば、黒色等に着色された塗料をスクリーン印刷法などで塗布し、乾燥・硬化させて形成することができる。遮光層の厚さは、通常5~100μmである。
【0061】
(透明樹脂層5)
本発明の画像表示装置10の透明樹脂層5は、画像表示パネル1と前面パネル2とを隔て、厚さ0.3mmのときの透湿度が、40℃、相対湿度90%の環境下で好ましくは400g/m/day以上のものである。透明樹脂層5の透湿度の好ましい範囲は、上述した本発明の光硬化性材料の光硬化物の透湿度の範囲と同様である。この透明樹脂層5は、ダム部3(3a、3b)とそれらに囲まれたフィル部4とから構成される。ダム部3(3a,3b)は、本発明のチキソ性を有する光硬化性材料の光硬化物から形成される。ダム部3(3a,3b)は、光硬化前でも保形性を有するために、フィル部4を形成するために、光硬化前のダム部3(3a,3b)で囲われた領域に光硬化性組成物を充填してもダム部3(3a)の外側に流出させないようにすることができる。
【0062】
(ダム部3、3a、3b)
ダム部3(3a)は、画像表示パネルの外周に設けられ、その内側にフィル部4が充填されるものである。ダム部3、3aは、通常、幅0.3mm以上3mm以下で高さ0.1mm以上2mm以下の大きさの連続した構造物である。また、金属ベゼル6が画像表示パネル1の外縁に設けられている場合も、金属ベゼル6と画像表示パネル1の境界に、通常、幅0.3mm以上3mm以下で高さ0.1mm以上2mm以下の大きさの連続した構造物であるダム部3bが設けられる。
【0063】
(フィル部4)
フィル部4は、ダム部3(3a、3b)の内側に設けられる透明樹脂層5の主体となるものである。前述したとおり、成分(e)以外の(成分a)、(成分b)、(成分c)及び(成分d)を含有する光硬化性組成物を光硬化させたものである。
【0064】
(金属ベゼル6)
金属ベゼル6は、画像表示パネル1の表面に設けられた偏光板7の固定枠として機能するものであり、ステンレススチール等から形成されるものである。その幅は通常2mm以上10mm以下であり、厚みは通常1mm以上3mm以下である。
【0065】
(偏光板7)
偏光板7は、偏光子(図示せず)を一対の保護層(図示せず)で挟持したものである。挟持する際、接着剤を用いてもよい。また、偏光板7は、偏光子と保護層以外の他の光学層(例えば位相差板)をさらに備えていてもよい。偏光板7の厚みは、通常0.1mm以上0.3mm以下である。
【0066】
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂に、二色性物質(例えばヨウ素化合物)による染色処理と、延伸処理とを施すことによって得られる、周知の構成の偏光板を用いることができる。
【0067】
偏光子を挟持する保護層としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れた熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0068】
<画像表示装置の製造方法>
図1に示す本発明の画像表示装置は、以下に説明するように製造することができる。
【0069】
まず、画像表示パネルの片面に偏光板を常法に従って設置し、その周囲に本発明の光硬化性材料をディスペンサー等によりダム状に塗布し、紫外線の照射により仮硬化させることにより光硬化性ダムを形成する。
【0070】
次に、光硬化性ダムで囲まれた領域に、フィル部を形成するための光硬化性組成物をディスペンサー等により塗布し乾燥して光硬化性樹脂層を形成する。
【0071】
次に、光硬化性樹脂層上に前面パネルを積層する。
【0072】
続いて、前面パネルを介して紫外線を光硬化性樹脂層に照射することにより光硬化させ、それにより光硬化した透明樹脂層を形成し、図1の画像表示装置が得られる。
【0073】
また、図2に示す本発明の画像表示装置は、以下に説明するように製造することができる。
【0074】
まず、画像表示パネルの片面に金属ベゼルと偏光板とを常法に従って設置し、金属ベゼルと偏光板との境界と金属ベゼルの周囲とに本発明の光硬化性材料をディスペンサー等により塗布し、紫外線の照射により仮硬化させることにより2つの光硬化性ダムを形成する。
【0075】
次に、二つの光硬化性ダムで囲まれた領域に、フィル部を形成するための光硬化性組成物をディスペンサー等により塗布し、乾燥して光硬化性樹脂層を形成する。
【0076】
次に、光硬化性樹脂層上に前面パネルを積層する。
【0077】
続いて、前面パネルを介して紫外線を光硬化性樹脂層に照射することにより光硬化させ、それにより光硬化した透明樹脂層を形成し、図2の画像表示装置が得られる。
【実施例0078】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。以下の実施例及び比較例において用いた化合物は以下のとおりである。
【0079】
成分(a)光重合性アクリレートモノマー成分
*4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)
*ラウリルアクリレート(LA)
*ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(n=1)アクリレート(アロニックスM-111、東亞合成(株))
成分(b)光重合性アクリレートオリゴマー成分
*ポリエーテル系ウレタンアクリレートオリゴマー(UV3700B、三菱ケミカル(株))(100kHzでの比誘電率=5.3)
成分(c)可塑剤
*ポリエーテルポリオール(P-3000、(株)ADEKA)
成分(d)光重合開始剤
*ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.)
成分(e)シリカ
*シリカ1 比較例1で使用した疎水化処理されていないフュームドシリカ(AEROSIL FWCJ、EVONIK(株))平均一次粒子径7nm以上40nm以下
(以下のシリカ2、4、5は、シリカ1を疎水化処理したものであり、いずれもEVONIK(株)から入手可能である。シリカ3は、キャボットジャパン(株)から入手可能である。)
*シリカ2 比較例2で使用した表面処理シリカ(AEROSIL R974(メチルシリル化処理))
*シリカ3 比較例3で使用した表面処理シリカ(CAB-O-SIL TS720(ジメチルシリル化処理))
*シリカ4 比較例4で使用した表面処理(AEROSIL R711(メタクリルシリル化処理))
*シリカ5 実施例1で使用した表面処理(AEROSIL VPNKC130(ヘキサデシルシリル化処理))
(その他の成分)
酸化防止剤: Irganox 1520L、BASFジャパン(株)
UV吸収剤: TinuvinPS、BASFジャパン(株)
【0080】
実施例1、比較例1~4、参考例1
(ダム部用光硬化性材料の調製)
以下の成分を均一に混合することによりダム部用光硬化性材料を調製した。なお、参考例1として成分(e)シリカを使用しないダム部用光硬化性材料を調製した。
【0081】
<成分(a)>
光重合性アクリレートモノマー成分として4-ヒドロキシブチルアクリレート 5.9質量部と、ラウリルアクリレート 5質量部と、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(n=1)アクリレート 13.4質量部;
<成分(b)>
光重合性アクリレートオリゴマー成分としてポリエーテル系ウレタンアクリレートオリゴマー 27.2質量部;
<成分(c)>
可塑剤としてポリエーテルポリオール 45質量部;
<成分(d)>
光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド 0.5質量部;
<成分(e)>
表1のシリカ 6質量部;
<酸化防止剤>
Irganox1520L 0.2質量部;及び
<UV吸収剤>
TinuvinPS 0.2質量部。
【0082】
(フィル部用光硬化性材料の調製)
成分(e)のシリカを用いない事以外は、ダム部用光硬化性材料と同様にフィル部用光硬化性組成物を調製した。
【0083】
<ダム部用光硬化性材料のチキソ性の測定>
各ダム部用硬化性材料について、B型粘度計(商品名:HAAKE ReoStress600、Thermo Electron Corporation製)を用いて、25℃で回転速度1rpm時の粘度を回転速度10rpm時の粘度で除して得られた数値をチキソ比とし、表1に示す。チキソ比が3以上の場合を極めて良好(AA)と評価し、2.5以上3未満の場合を良好(A)と評価し、1.5以上2.5未満の場合を普通(B)と評価し、1.5未満の場合を不良(C)と評価した
【0084】
<ダム部用光硬化性材料の硬化物の光透過性>
各ダム部用硬化性材料を、剥離ポリエチレンフタレート(剥離PET)フィルム上に、硬化後の厚さが0.5mmとなるようにディスペンサーを用いて塗布し、紫外線を積算光量が5000mJ/cmとなるように照射して硬化物層を得た。この硬化物層を剥離PETフィルムから剥がし、ヘイズメーターにてヘイズの値を測定した。ヘイズの値が0.5未満の場合を極めて良好(AA)と評価し、0.5以上1未満の場合を良好(A)と評価し、1以上1.5未満の場合を普通(B)と評価し、1.5以上の場合を不良(C)と評価した。
【0085】
<ダム部用光硬化性材料の硬化物の透湿性>
各ダム部用硬化性材料の硬化物について、JISZ0208の透湿度試験(透湿カップ法)に準拠して透湿度を測定した。具体的には、ダム部用光硬化性材料に対して、積算光量が5000mJ/cmとなるように紫外線を照射して厚さ0.3mmの硬化樹脂層を準備した。この硬化樹脂層を、塩化カルシウムを入れたカップにセットし、40℃、相対湿度90%の恒温機に入れ、24時間放置した後の塩化カルシウムの重量増加を測定することで、硬化樹脂層の透湿度を求めた。透湿度が、1000g/m/day以上の場合を極めて良好(AA)と評価し、500g/m/day以上1000g/m/day未満の場合を良好(A)と評価し、100g/m/day以上500g/m/day未満の場合を普通(B)と評価し、100g/m/day未満の場合を不良(C)と評価した。
【0086】
<画像表示装置における偏光板の変色の有無>
(画像表示装置の作成)
厚さ80μmのトリアセチルセルロース層と、厚さ30μmのポリビニルアルコール層と、厚さ80μmのトリアセチルセルロース層と、厚さ25μmのアクリル系粘着剤層とがこの順に積層されてなる偏光板((株)ポラテクノ製)を用意した。この偏光板の粘着剤層を、画像表示パネルの代替物である厚さ1.1mmのガラスベース板に貼合せた。続いて、ガラスベース板上に偏光板上の外周に硬化後に幅3mm、高さ0.3mmとなるようにダム部用光硬化性材料をディスペンサーにより塗布した後、そのダム部で囲まれたフィル部に硬化後の厚さが0.3mmとなるようにフィル部用硬化性材料をディスペンサーにより塗布し、その塗布膜上に前面パネルの代替物である厚さ1.1mmの前面ガラス板を貼り付け、ガラス接合体を得た。
【0087】
得られたガラス接合体(画像表示装置の代替物の前駆体に相当)に対し、積算光量が5000mJ/cmとなるように、ガラス接合体の前面ガラス板側から紫外線を照射して光硬化性材料を硬化させて透明樹脂層を形成することにより、図1に示す試験用の画像表示装置を得た。透明樹脂層の反応率は、FT-IR分析により90%以上であることが確認できた。
【0088】
(偏光板の変色の有無)
試験用の画像表示装置を100℃の環境下に240時間放置した。240時間放置後の画像表示装置における偏光板の変色の有無を目視で確認した。偏光板の変色なしと判断した場合を良好と評価し、表1に「未発生」と記載した。反対に、偏光板の変色ありと判断した場合を不良と評価し、表1に「発生」と記載した。
【0089】
【表1】
【0090】
(評価結果の考察)
疎水化処理されていないシリカを使用した比較例1の光硬化性材料は、構成樹脂成分の透湿性が良好であるため、画像表示装置を組み上げた場合に偏光板の変色は観察されなかったが、チキソ比がB評価であり、透明性もB評価であった。
【0091】
疎水化処理シリカとして、メチルシリル化処理されたシリカを使用した比較例2の光硬化性材料は、比較例1の場合と同様に構成樹脂成分の透湿性が良好であるため、画像表示装置を組み上げた場合に偏光板の変色は観察されず、透明性はAA評価であったが、チキソ比がC評価であった。
【0092】
疎水化処理シリカとして、ジメチルシリル化処理されたシリカを使用した比較例3の光硬化性材料は、比較例1の場合と同様に構成樹脂成分の透湿性が良好であるため、画像表示装置を組み上げた場合に偏光板の変色は観察されなかったが、チキソ比がB評価であり、透明性はC評価であった。
【0093】
疎水化処理シリカとして、メタクリルシリル化処理されたシリカを使用した比較例4の光硬化性材料は、比較例1の場合と同様に構成樹脂成分の透湿性が良好であるため、画像表示装置を組み上げた場合に偏光板の変色は観察されなかったが、チキソ比がB評価であり、透明性はC評価であった。
【0094】
なお、参考例1の光硬化性材料は、シリカを使用しなかったためチキソ比がC評価であった。このため、透明性、透湿性、変更板の変色の各項目の評価は行わなかった。
【符号の説明】
【0095】
1 画像表示パネル
2 前面パネル
3、3a、3b ダム部
4 フィル部
5 透明樹脂層
6 金属ベゼル
7 偏光板
10 画像表示装置
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
成分(a)25質量%以上35質量%以下;
成分(b)20質量%以上30質量%以下;
成分(c)40質量%以上50質量%以下;
成分(d)成分(a)と成分(b)との合計100質量部に対し、0.5質量以上1質量以下;及び
成分(e)5質量%以上10質量%以下。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項11
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項11】
成分(a)~成分(e)の配合量が以下の範囲;
成分(a)25質量%以上35質量%以下;
成分(b)20質量%以上30質量%以下;
成分(c)40質量%以上50質量%以下;
成分(d)成分(a)と成分(b)との合計100質量部に対し、0.5質量以上1質量以下;及び
成分(e)5質量%以上10質量%以下。
である請求項1~10のいずれかに記載の光硬化性材料。