(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163654
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】看護師用調整可能ズボン
(51)【国際特許分類】
A41D 1/06 20060101AFI20221019BHJP
A41D 27/00 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
A41D1/06 J
A41D27/00 Z
A41D1/06 502K
A41D1/06 502C
A41D1/06 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068735
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】517300682
【氏名又は名称】株式会社KAZEN東京
(74)【代理人】
【識別番号】230106909
【弁護士】
【氏名又は名称】権藤 龍光
(72)【発明者】
【氏名】根本 律子
【テーマコード(参考)】
3B035
【Fターム(参考)】
3B035AA06
3B035AA07
3B035AB05
3B035AB14
3B035AC08
3B035AC24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】少ないサイズ区分で、ほとんど全部の従事者にフィットするとともに看護業務などの院内業務を楽に清潔にしかも品格を保ちながら行うことができる作業衣ズボンを提供する。
【解決手段】ズボン本体のワタリを広めにとるとともに、ズボン本体前身頃の股上を従前に比べて短くとり、後ろ身頃の股上を深くとることにより臀部の容積を収容することを可能とするとともに、ウエスト部をゴム伸縮性とし、紐及びウエスト部または裾部のスナッパでサイズ調整することを可能とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下半身を覆うズボン本体と、前記ズボン本体の上端部を着用者のウエストに係止するウエスト部が設けられている作業衣ズボンであり、前記ズボン本体は、左右前身頃及び左右後身頃を縫製して一体のズボン本体としたものであり、そのズボン本体の ワタリ(股の付け根の一周にあたる部位のことをいう)は従前の貸与用作業衣ズボンのワタリに比べて広めにとるとともに、ズボン本体の股上(着用者がズボンを装着した時の股の付け根からズボン本体の上端までの部位のことをいう)を従前の貸与用作業衣ズボンに比べて短くとるようにすることで、ズボン本体の股ぐり(ヒップラインの縦の部分をいう)の長さを着用者のヒップのボリュームを余裕を持って収容することができ、ウエスト部は生地がウエスト部の上端で折り返されて裏と表とを構成してその端でズボン体の上端と縫合されており、その生地の裏と表の間には長手方向に挿通空間が形成され、挿通空間にはスピンドル紐がウエスト部を一周する長さで挿入されており、ウエスト部の裏生地にはスピンドル紐がウエスト部の内側面に設けられたネムリ穴(スリット上の紐通し穴のことをいう)を通してウエスト部の内側に出ており、裏挿通表側生地には少なくともウエスト部の全周の背面を中心に半分以上の長さに渡って平ゴムが十分に伸びた状態で縫製されており、ズボン体の最後部及び側面部のそれぞれ上端から2cm前後の位置にテーピースナッパのオスまたはメスが設けられ、ウエスト部の対応する位置にテーピースナッパのメスまたはオスがズボン体のテーピースナッパとはオスメスが逆となるように選んで設けられている作業衣ズボン。
【請求項2】
ズボン本体の外側裾端から間隔をおいて上下にオスメスが逆のテーピースナッパを設置することにより裾の長さを調整することを可能とした請求項1の作業衣ズボン。
【請求項3】
ズボン本体の脇線を臀部から膝にかけて絞り込むことを特徴とする請求項1の作業衣ズボン。
【請求項4】
ズボン本体の脇線を臀部から膝にかけて絞り込むことを特徴とする請求項2の作業衣ズボン。
【請求項5】
ズボン本体を構成する左右の後見頃に、撥水ストレッチ素材または生理ショーツ状の素材を用いた裏地を縫合することを特徴とする請求項1乃至4の作業衣ズボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に看護師等が着用する貸与用作業衣ズボンに関する。
【背景技術】
【0002】
看護師や看護助手等の医療従事者が使用する作業衣は、病院内外での感染防止等のため、その着脱は院内で行うこと及び着脱の都度クリーニングすることが求められており、平均して、従事者数の約4倍の作業衣を院内に用意することが求められるのが一般であった。
特に大病院においては、特定の従事者毎にその従事者専用の作業衣を貸与することは収納場所の観点等からも困難であり、看護師等の医療従事者は入れ替わりの激しい職種であることからその従事者のための特寸品を用意したりすることは無駄が多く避けるべきことであった。 また、股下長を調整するための裾上げに時間を取られると、その間、それを待つ新規従事者を業務につかせることができないという時間的なロスも看過できない問題であった。
そこで、作業衣のサイズをいくつかの区分に分けて用意し、従事者はその作業衣を着用する度に自分にあったサイズ区分の作業衣を選んで着用する必要が生じていた。
ところが、従事者の体型は様々であることから、特にズボン部分については従事者にフィットする作業衣を用意するためには、従前、ヒップサイズ及びウエストサイズの区分において8パターン、そのそれぞれに股下長の長短の最低2パターンの計16パターンもの貸与用作業衣を用意する必要があった。
なお、この16パターンに集約する方法が一部の大病院で普及する前は、従事者のヒップサイズ、ウエストサイズ及び股下長を1cm単位で採寸し、個別に貸与する方法が取られており、従事者が離職するたびに無駄が生じる状況であり、しかも看護師用のロッカーが必要などの問題があったのであり、16パターンに集約できただけでも、大きな進歩ではあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従前のサイズのパターンでは16種類もの作業衣ズボンを用意せざるを得ず、そのために必要な在庫の数、それを収容するスペースとも過多となっていた。
これをできるだけ少ないパターン、できればほとんどの場合を4つのパターンでカヴァーできることが望まれていた。
【0004】
また、このパターンに収まりきれない股下サイズの場合でも、スナップボタンの着脱といった簡単な調整で、ほとんど全ての場合をカヴァーできることが望まれていた。
【0005】
ところが、ウエストを2/3以上ゴム式にし、採寸基準をHIP寸にし、無理やりに少ないサイズ区分に集約すると、看護師等がお尻まわりのサイズがきつく、腰を曲げての作業を求められることが多い看護師の仕事上、身体的に負担になる恐れがあった。
他方で、ウエストゴム部分を増やすことで、ウエストサイズがゆるすぎると、ズボンがずり下がって裾が床について汚染される恐れがあり、病院内で使用される作業衣ズボンにとって絶対にあってはならないことであった。
かといって、このような問題を解決するためにウレタン生地などの伸縮性のある生地を用いた場合においては、洗濯を繰り返すことや、繰り返しの使用によって形状安定性が損なわれ、生地がへたってしまい、見かけが悪くなり、看護師のユニフォームとしてふさわしくないだらしない、看護師としての品格に欠ける見かけになってしまうという問題があった。
【0006】
この発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、少ないサイズ区分で、ほとんど全部の従事者にフィットするとともに看護業務などの院内業務を楽に清潔にしかも品格を保ちながら行うことができる作業衣ズボンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下半身を覆うズボン本体と、前記ズボン本体の上端部を着用者のウエストに係止するウエスト部が設けられている作業衣ズボンであり、前記ズボン本体は、左右前身頃及び左右後身頃を縫製して一体のズボン本体としたものであり、そのズボン本体の ワタリ(股の付け根の一周にあたる部位のことをいう)は従前の貸与用作業衣ズボンのワタリに比べて広めにとるとともに、ズボン本体の股上(着用者がズボンを装着した時の股の付け根からズボン本体の上端までの部位のことをいう)を従前の貸与用作業衣ズボンに比べて短くとるようにすることで、ズボン本体の股ぐり(ヒップラインの縦の部分をいう)の長さを着用者のヒップのボリュームを余裕を持って収容することができ、ウエスト部は生地がウエスト部の上端で折り返されて裏と表とを構成してその端でズボン体の上端と縫合されており、その生地の裏と表の間には長手方向に挿通空間が形成され、挿通空間にはスピンドル紐がウエスト部を一周する長さで挿入されており、ウエスト部の裏生地にはスピンドル紐がウエスト部の内側面に設けられたネムリ穴(スリット上の紐通し穴のことをいう)を通してウエスト部の内側に出ており、裏挿通表側生地には少なくともウエスト部の全周の背面を中心に半分以上の長さに渡って平ゴムが十分に伸びた状態で縫製されており、ズボン体の最後部及び側面部のそれぞれ上端から3cm前後の位置にテーピースナッパのオスまたはメスが設けられ、ウエスト部の対応する位置にテーピースナッパのメスまたはオスがズボン体のテーピースナッパとはオスメスが逆となるように選んで設けられているものである。
【0008】
前記ズボン本体の脇線は、ワタリから膝までの部分が従前の貸与型作業衣に比較して脇線のラインが絞込んであるものであってもよい。
【0009】
前記ズボン本体の裾最下部付近及びそれから少し離れた部分に複数のテーピースナッパがそれぞれ対応する位置にオスメスを逆に設置されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の作業衣ズボンは、わずか4つのヒップサイズしか用意されていないにもかかわらず、看護師等が自らそのヒップサイズに合うサイズのズボンを選ぶことによって、そのほかのウエストサイズまたは股下長に相違があるにもかかわらず、ウエスト部に伸縮性のあるゴムが設けられていることによりフィットさせるとともに、浅い股上であるにもかかわらずズボンがずり下がることを防ぐことを多くの場合において可能にするものである。
【0011】
しかも、この効果を、生地に伸縮性が大きな素材を用いたり、あるいはギャザーを入れるなどの加工をしたり、複雑な縫製加工をしたりすることなく、伸縮性という点では一般的な素材を用い、ズボン本体は4枚の左右前後の身頃を縫合するというシンプルな構成で実現しており、コスト的にも利点が多く、美的にも優れている。
【0012】
なお、ウエスト部のゴムだけではサイズ調整に不足がある場合であっても、ウエスト部に挿通されたスピンドル紐を妥当な長さで締めることにより、ウエストサイズを調整するとともに、股下長をも調整するとともに、ズボンのずり落ちを防ぐことを更に多くの場合に可能とするものである。
【0013】
それですら調整に不足がある場合であっても、ウエスト部の少なくとも後半分を折り返してウエスト部の背面部と側面部及びズボン本体の対応する部分に設けられたテーピースナッパにより固定することにより股下長を調整するとともに、ズボンの後ろ裾が下がって、病院の床に接触し汚染されることを防ぐことを更に多くの場合に可能とするものである。 この三段構えの調整により、わずか4サイズ区分の貸与服であるにもかかわらず、女子の看護師等においては、9割を超える範囲をカヴァーすることを可能とするものである。
【0014】
例外的に短躯または長身といった理由(これは男子看護師等の場合には女子に比べれば生じやすい)で上記の標準タイプでカヴァーできない場合であっても、標準タイプの裾近くにテーピースナッパを設けたタイプにおいては、テーピースナッパにより裾を上げてとめるという簡単な操作で、そのほとんど全部をカヴァーすることを可能とするものである。
しかも、この裾上げ可能タイプは、標準タイプに裾近くにテーピースナッパを設けるという最小限度の付加加工で実現できており、製造コスト的な負担は非常に軽くすんでいる。
【0015】
本件発明は、そのズボン本体のワタリを従前の貸与用作業衣ズボンのワタリに比べて広めにとるとともに、ズボン本体前身頃の股上を従前の貸与用作業衣ズボンに比べて短くとり、後ろ身頃の股上を深くとるようにすることで、ズボン本体の履き込み股ぐりの長さを従前どおりに確保することが可能となり、着用者のヒップのボリュームを余裕を持って収容することができ、かつウエストラインが従前の作業衣ズボンに比べて低くなっていることで適度なフィット感が生まれ、余分なもたつき感をなくしシルエット的にも要望を叶え美観がたもてることとなった。
【0016】
さらに、ヒップラインが臀部に近づきすぎることによって、下着のラインが外に出ることを防ぐため、ヒップ寸(腰回りの最大値)の位置を調節し、尻まわりに適度なゆとりをもたせ、下着のアタリが表出しないように工夫されている。
【0017】
さらに、下着のラインが外にでることを防止することを徹底させるとともに、女子看護師の生理的な問題(不意の出血等)に対処するため、ズボン本体を構成する左右の後見頃に、撥水ストレッチ素材または生理ショーツ状の素材を用いた裏地を縫合する形状とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1ないし
図3は、本件発明を実施する一形態である。
図1のズボン本体1及び
図3のウエスト部3の生地は、いずれもポリエステル生地(アレニエ素材)などの標準的な伸縮性を有する生地を用いている。
【0020】
図3のウエスト部3は、ウエスト部の上端で折り返されて裏と表とを構成する生地で形づくられており、ズボン本体と縫合9されている。
【0021】
図3のウエスト部3には、平ゴム4がウエスト部を構成する生地に縫合8されている。
【0022】
図3のウエスト部3には、裏と表を構成する生地の間に長手方向に挿通空間が設けられており、そこにスピンドル紐5が挿入されて腰回りを一周している。
【0023】
図1のズボン本体上端近くとウエスト部にそれぞれテーピースナッパ6及び7が設けられている。
【符号の説明】
【0024】
1 作業衣ズボン本体
2 作業衣ズボン左後見頃
3 ウエスト部
4 平ゴム
5 スピンドル紐
6 作業衣ズボン本体側テーピースナッパ
7 ウエスト部テーピースナッパ
8 平ゴム縫合線
9 ウエスト部ズボン本体縫合線