(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163665
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】歌唱者、吹奏者又は発話者の呼気中の飛沫及びエアロゾルを、局所排気装置の動力を用いて強制的に及び個人毎に吸引及び捕集する装置及び方法。
(51)【国際特許分類】
A61L 9/16 20060101AFI20221019BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20221019BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20221019BHJP
【FI】
A61L9/16 F
F24F7/06 Z
B01D46/00 E
B01D46/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021092610
(22)【出願日】2021-04-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】520464681
【氏名又は名称】森 一幸
(72)【発明者】
【氏名】森 一幸
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】朴 完圭
【テーマコード(参考)】
3L058
4C180
4D058
【Fターム(参考)】
3L058BA01
3L058BB09
4C180AA07
4C180AA16
4C180BB15
4C180DD09
4C180HH05
4D058JA01
4D058QA01
4D058QA03
4D058QA15
4D058QA21
4D058SA15
4D058TA08
4D058UA18
4D058UA25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新型コロナウイルスのように、世界的感染拡大の下で歌唱、吹奏又は発話を行う場合でも、より厳密で効果的な感染拡大防止が可能で、飛沫等吸引する局所排気装置内の圧力損失を適切な値まで低減し、かつ騒音を適切な値まで低減する方法及び装置を提供する。
【解決手段】吸引部(1)、連結部(2)、減音部(3)、排風機(4)、捕集部(5)及び排気口(6)で構成する飛沫等吸引局所排気装置の動力を用いて、飛沫等の拡散範囲が小さい位置で、歌唱者等の個人毎の呼気中の飛沫等を強制的に吸引及び捕集する方法及び装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発声者等と対面する者又は同部屋に滞在する者の飛沫等の摂取を防ぐため、飛沫等吸引局所排気装置の動力を用いて、飛沫等の発散拡散範囲が小さい位置で、歌唱者等の飛沫等を強制的に及び個人毎に吸引及び捕集する装置及び方法。
【請求項2】
吸引部(1)によって飛沫等を含む空気を吸引し、連結部(2)で搬送し、減音部(3)で減音し、排風機(4)でエネルギーを与え、捕集部(5)で捕集し、排気口(6)で排気する飛沫等吸引局所排気装置。
【請求項3】
飛沫等を発散する口鼻を吸引部に包摂でき、囲い式フードとして使用することができる吸引部の形状。吸引部の圧力損失を減少でき、発声等の音量の減少を低減できる、顔面と吸引部の間に隙間ができる吸引部の形状。均一に吸引することで吸引部内の飛沫等の取り残しがないようにできる吸引部の形状。
【請求項4】
吸引部の顎と鼻に接触する部分からの接触信号によって、口鼻が吸引部内に包摂されるように装着されたかを確かめることができ、警報を発する装置。
【請求項5】
音エネルギーを吸収する面積を増加させ、かつ体積の小さな飛沫等吸引局所排気装置にするための、回廊形式の減音部。減音のためにエネルギー吸収材およびコインシデンス効果を起こさない遮音材を併用使用する方法。
【請求項6】
捕集部のフィルター面積の占める割合を適切なものにし、捕集部の圧力損失を減少させる方法。
【請求項7】
設備の大型化及び設備費の増加を防ぐための、排気口を飛沫等吸引局所排気装置と一体にする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引部、連結部、減音部、排風機、捕集部及び排気部からなる局所排気装置(以下『飛沫等吸引局所排気装置』という)の動力を用いて、歌唱、吹奏又は発話(以下『歌唱等』という)による、同一部屋に滞在する者の飛沫等の摂取を防止のために、歌唱者、吹奏者又は発話者(以下『歌唱者等』という)の呼気中の飛沫及びエアロゾル(以下『飛沫等』という)が広い範囲に拡散する前に、歌唱者等の飛沫等を強制的に及び個人毎に吸引する方法に関することである。
【0002】
本発明は、飛沫等吸引局所排気装置内の圧力損失を適切な値まで低減し、かつ騒音を適切な値まで低減する装置及び方法に関することである。
【背景技術】
【0003】
従来の同一部屋に滞在する者へのウイルス等の感染を防止のための装置又は方法は、先行技術文献1,2では、機械排気又は窓等の開口部を開放して行う部屋の全体換気によって、呼気中の飛沫等の濃度を希釈する方法が示されている。特許文献1では、呼気中の飛沫等を効果的に捕集するための密着式マスクが開示されている。特許文献2では呼気中の飛沫等の移動を遮断し、対面する者に到達させないパーテションが開示されている。特許文献3では、飛沫等の移動方向を、顔面の垂直方向から他の方向に変えることで、対面する者に到達させないエアーカーテンが開示されている。
【0004】
先行技術文献3で、風量が多く、静圧が高く、かつ騒音量が少ない送風機の性能を実現するのは難しいことが示されている。
【0005】
先行技術文献4で、各場面での適切な騒音レベルが示されている。
【0006】
先行技術文献5で、局所排気装置の各部で発生する圧力損失が示されている。またフード内の発生源からフードの開口部入口方向に漏出させないための、吸引部開口面で必要とされる風速の基準である、有機溶剤中毒予防規則に掲げる囲い式フードの制御風速が先行技術文献6で示されている。
【0007】
先行技術文献7で、捕集部で必要とされるフィルターの性能の基準である、医療用サージカルマスクの捕集性能を示す圧力損失の最低値が示されている。
【先行技術文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-7691号公報
【特許文献2】実願2020-2359(U2020-2359)
【特許文献3】実願2020-2698(U2020-2698)
【先行技術文献1】
『新型コロナウイルス感染対策としての空調設備を中心とした設備の運用について』(改定2版) 2020年9月7日 公益社団法人 空気調和・衛生工学会 新型コロナウイルス対策特別委員会
【先行技術文献2】
『11月末までの催物の開催制限等について』 内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長 事務連絡 令和2年9月11日
【先行技術文献3】
『押さえておきたい換気の基礎』初級編▲2▼ dl.mitsubishielectric.co.jp
【先行技術文献4】
環境基本法の騒音にかかる環境基準
【先行技術文献5】
『やさしい局排設計教室』沼澤雄志
【先行技術文献6】
有機溶剤中毒予防規則
【先行技術文献7】
日本不織布協会『マスク用フィルターに関する自主基準』
米国試験材料協会 ASTM F2100-02
【先行技術文献8】
『富岳、カラオケや居酒屋などのマスクの防護効果を解析』(大河原克行 2020年10月14日 06:10)
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1282701.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来から、感染の拡大防止のため三密(密閉、密集、密接)を避け、換気又はマスクの装着が行われてきた。世界的感染拡大に至っていない場合は従来からの方法で感染が収束した。しかし新型コロナウイルスのように世界的感染拡大の下で歌唱等を行う場合は、より厳密で効果的な感染拡大防止方法が必要である。先行技術文献8で示すように、個々の呼気中の飛沫等の発散範囲は飛散距離とともに大きくなる。本発明が解決しようとする課題は、機械排気又は窓等の開口部を開放して行う部屋の全体換気による方法では、先行技術文献1及び先行技術文献2で示すように、呼気中の飛沫等が空気流通の下流方向に拡散し、同部屋の下流方向に滞在する者が摂取する可能性があることである。また、全体換気は発生源以外の個所の空気も含めて排気するため、設備が大型になり、設備費及び維持費が大きくなることである。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、密着式マスクを装着した場合でも装着状態によって隙間が生じ飛沫等の漏れが起きる可能性があることである。パーテションやエアーカーテンは飛沫の移動方向を遮断又は変えることによって、対面する者の飛沫等の摂取は防止できるが、他の方向に飛沫等が拡散し、また一度付着した飛沫等の再飛散の可能性があるため、同一部屋に滞在する対面者以外の者の摂取の可能性があることである。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、マスク、パーテションやエアーカーテンを用いる場合は、歌唱等の音圧が減少し、周りの騒音の音圧と識別が困難になり聴きとり難くなることである。
【0012】
先行技術文献5で示すように、飛沫等吸引局所排気装置内で空気の移動によって圧力損失が生じ、特に捕集部で飛沫等を捕集するために、先行技術文献7に掲げる39.2パスカル以上の圧力損失値のフィルターを用いる必要がある。また、吸引部の形状または装着状況によって飛沫等吸引局所排気装置内で発生する乱流によって、飛沫等が吸引と反対方向に移動し、吸引部入口から漏出する可能性がある。そして、飛沫等を吸引し捕集するために、飛沫等吸引局所排気装置内で空気を移動させるためには、排気口の静圧が大気圧以上である必要がある。更に、先行技術文献3で示すように、一般的に静圧又は風量を大きくすることができる動力の大きな排風機は騒音の音圧も大きいため、騒音の減少も同時に実現する場合、用いることのできる排風機の静圧又は風量には限度がある。本発明が解決しようとする課題は、これらの条件下で、飛沫等吸引局所排気装置内で発生した飛沫等を吸引と反対方向に漏出させずに吸引及び捕集するための、吸引部開口部で一定以上の風速を実現する必要があることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
吸引部(1)、連結部(2)、減音部(3)、排風機(4)、捕集部(5)及び排気口(6)で構成する飛沫等吸引局所排気装置の動力を用いて、飛沫等の拡散範囲が小さい位置で、歌唱者等の個人毎の呼気中の飛沫等を強制的に吸引及び捕集する。
【0014】
捕集部のフィルター面積の占める割合を適切なものにする。
【0015】
フィルターの種類は先行技術文献7に掲げる医療用サージカル不織布フィルターとする。
【0016】
吸引部の形状は、底面の長軸を顎から目と鼻の間まで、短軸を顔面の幅以上の地点の間とする楕円底面円錐型とする。
【0017】
吸引部の顎と鼻に接触する部分の、2か所に接触信号の接点を設け、警報信号を発出する。
【0018】
飛沫等吸引局所排気装置の体積を小さくし、かつ音エネルギーを吸収する面積を増加させるために、減音部を回廊形式にする。また減音のためにエネルギー吸収材およびコインシデンスを起こさない遮音材を併用する。
【0019】
排気部(6)の排気口は、フィルター外面とする。
【発明の効果】
【0020】
発散拡散範囲が小さい発生源を含む位置で、動力を用いて強制的及び個別に吸引することによって、飛沫等を効果的に吸引でき、対面する者はもちろん、同一部屋に滞在する者の飛沫等の摂取を効果的に防止できるため、ライブでの歌唱等、複数人でのカラオケ、合唱等が飛沫等の摂取の心配が少なくできる。
【0021】
全体換気に比べて限定された領域から飛沫等を含んだ空気を吸引する飛沫等吸引局所排気装置を用いることで、設備及び維持管理費用が全体換気に比べて小さくできる。したがって十分な全体換気が行えない小規模施設でも飛沫等の効果的な捕捉が可能であり、また全体換気が行われている大規模施設でも飛沫等吸引局所排気装置と併用することによって全体換気にかかる費用を少なくすることができる。
【0022】
捕集部のフィルター面積の占める割合を適切なものにし、吸引部の形状を円錐形とすることによって空気抵抗を少なくし、また吸引部の形状によって顔面と吸引部の間に隙間ができることで、飛沫等吸引局所排気装置内の圧力損失を減少させることができる。
【0023】
フィルターの種類は医療用サージカル不織布フィルターとすることによって、飛沫等の大きさのものを捕集できるため、それに付着したウイルス等を捕集できる。
【0024】
吸引部の円錐の底面の形状が、飛沫等を発散する口鼻を包摂することができるため、飛沫等吸引局所排気装置を先行文献5に掲げる囲い式フードとして使用することができる。
【0025】
飛沫等吸引局所排気装置内の圧力損失を減少させることによって吸引部の開口面における風速を増加させ、先行技術文献5、6に掲げる囲い式フードの要件である制御風速以上にすることができる。
【0026】
吸引部の円錐状の形状によって、吸引部内での空気の乱流を減少させることができるため、吸引部内の飛沫等を一様に吸引し、取り残し部分がないようにできる。
【0027】
吸引部の顎と鼻に接触する部分からの接触信号によって、口鼻が吸引部内に包摂されるように、吸引部が装着されたかを確かめることができる。
【0028】
飛沫等吸引局所排気装置内の空間を伝搬する吸引部での排風機の騒音の音圧を、先行技術文献4に掲げる騒音にかかる環境基準の最低値である55dB以下にでき、また飛沫等吸引局所排気装置周辺の騒音も55dB以下にできるため、騒音が歌唱等の妨げにならない。吸引部の形状が顔面と吸引部の間に隙間を設けることができることによって、発声等の音量の減少を低減できる。
【0029】
排気口を飛沫等吸引局所排気装置と一体にすることによって、排気ダクトを設置する必要がなく、設備の大型化及び設備及び維持管理費の増加を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】本発明の一実施例の構成図中の吸引部である。
【
図3】本発明の一実施例の構成図中の減音部の断面図である。
【
図4】本発明の一実施例の構成図中の捕集部及び排気部である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の飛沫等吸引局所排気装置は、吸引部(1)、連結部(2)、減音部(3)、排風機(4)、捕集部(5)及び排気部(6)で構成し、歌唱者等の飛沫等を飛沫等吸引局所排気装置の動力を用いて強制的に及び個人毎に吸引及び捕集ができる。
図2は、本発明の一実施例の構成図中の吸引部(1)及び連結部(2)である。
【0032】
本発明の吸引部(1)は、吸引部を囲い式フィードとして使用するのが最適であるが、フィード外の乱れ気流が少なく、かつ捕捉点における制御風速を満足する場合は、先行技術文献5,6に掲げる外付けフードとして使用することができる。
【0033】
本発明の吸引部(1)は、底面楕円形円錐の形状が最適であるが、口鼻を包摂でき、顔面との間に隙間があり、かつ空気抵抗の少ない形状であるならそれ以外でもよい。また、透明な素材が最適であるが、減音効果の少ない場合有色の素材のものでもよい。吸引部(1)に、吸引部の顎と鼻に接触する部分の、2か所に接触信号の接点を設けるのが最適であるが、口鼻が吸引部内に包摂されるように吸引部が装着されたかを確かめることができるならば、接点の個所または個数はそれ以外でもよい。マイク取り付け口は常時閉めておくが、マイク使用時は開口しマイクを取り付ける。吸引部(1)及び連結部(2)の個数は、吸引部での吸引風量を大きくできる場合は複数でもよい。
図3は、本発明の一実施例の構成図中の減音部(3)である。
【0034】
本発明の減音部(3)は送風機(4)及び回廊をケーシング材、吸音材及び遮音材で3重に囲うのが最適であるが、吸引部(1)及び飛沫等吸引局所排気装置の周囲で55dB以下の騒音の音圧を実現するならば、3重以外でもよい。また回廊は1重が最適であるが、吸引部(1)及び飛沫等吸引局所排気装置の周囲で55dB以下の騒音の音圧を実現するためには1重以外でもよい。
図4は、本発明の一実施例の構成図中の捕集部(5)及び排気部(6)である。
【0035】
本発明の捕集部(5)は、フィルター部分とケーシングの部分で構成するのが最適である。フィルター部分の割合を大きくする場合はケーシングの部分をフィルター部分に変えることによって行う。フィルターの種類は、医療用サージカル不織布マスクが最適であるが、捕集性能が同等以上のフィルター等の捕集材又は装置を用いることができる。排気部(6)の排気口は、排気ダクトを設置することでの設備の大型化及び設備及び維持管理費の増加を防ぐため、フィルター外面とするのが最適であるが、排気口を部屋内に別個に設けること、また排気ダクトを通じて部屋外に設置してもよい。
【符号の説明】
【0036】
吸引部(1)によって飛沫等を含む空気を捕捉し、連結部(2)で搬送し、減音部(3)で減音し、排風機(4)で飛沫等を含む空気にエネルギーを与え、捕集部(5)で飛沫等を捕集し、排気口(6)で空気を排気する。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歌唱者と同部屋に滞在する者の飛沫等の摂取を防ぐため、飛沫等吸引局所排気装置の動力を用いて、飛沫等の発散拡散範囲が小さい位置で、歌唱者の飛沫等を強制的に及び個人毎に吸引及び捕集する方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歌唱者と同部屋に滞在する者の飛沫等の摂取を防ぐため、飛沫等吸引局所排気装置の吸引部によって、飛沫等の発散拡散範囲が小さい位置で、歌唱者の飛沫等を強制的に及び個人毎に吸引及び捕集する方法。