(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163668
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】モンキーレンチ
(51)【国際特許分類】
B25B 13/18 20060101AFI20221019BHJP
B25B 13/20 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
B25B13/18
B25B13/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021093283
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】520017018
【氏名又は名称】遠藤 洋二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋二
(57)【要約】
【課題】 ナット等を瞬時に挟持し、連続して締めたり、緩めたりする作業を行うことができるモンキーレンチを提供する。
【解決手段】 モンキーレンチ1の固定顎4に対して接離方向に往復動可能な底面に係合ラック2bを有する可動顎2と係合ラック2bと噛み合う上面に係止ラック6aを有した、駆動リンク7と従動リンク8を軸支する係止リンク6を備え、スプリング10で可動顎2と相互に付勢し、従節7cを有した駆動リンク7と従節8cを有した従動リンク8を軸支した締め込リンク9を備え、ハウジング5に形成した締め込リンク9の滑動溝5bでスライドを可能にし、レバー3に形成した溝状のカム3aに駆動リンク7の従節7cを、逃げ溝3bに従動リンク8の従節8cをそれぞれ插入し、カム3aとカム3cにそれぞれ当接させ、レバー3は係止リンク6とスプリング11で相互に付勢し、レバー3を回転させて係止リンク機構を揺動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モンキーレンチにおいて固定顎を有し、可動顎の摺動溝を備えたハウジングと、固定顎に対して接離方向に摺動自在に配設された前記可動顎と、該可動顎の底面に係合ラックを有し、この可動顎と平行に噛合する係止ラックを上面に有した係止リンクを備え、前記係合ラックとの噛合状態と非噛合状態とを可能とする係止リンクを作動するリンク機構を備えることを特徴とするモンキーレンチ。
【請求項2】
前記係止リンクは駆動リンクと従動リンクを軸支し平行リンク機構を構成し、係止リンクの係合ラックと可動顎の係合ラックと噛合する方向にスプリングが可動顎と係止リンクと相互に付勢することを特徴とするモンキーレンチ。
【請求項3】
前記平行リンク機構の静止節となる部分が締め込リンクとなり、該締め込リンクは従節を備えた駆動リンクと該駆動リンクと同調する従節を備えた従動リンクを軸支し、ハウジングに形成された滑動溝に収容し、それぞれの従節をレバーに形成したカムと当接し、該レバーは駆動リンクの従節が可動顎の接離方向と平行に作動し、従動リンクの従節が前記接離方向とほぼ交差する方向に作動するカム形状とし、連結軸を配置する。
また、レバーはスプリングによって対象物を回転させようとする方向に付勢していることを特徴とするモンキーレンチ。
【請求項4】
前記請求項1及び請求項2の係止リンク機構と前記請求項3の締め込み機構が連動して可動顎を固定顎に押し圧し、ロックしたり、解放したりすることでラチェット効果が得られるようにしたことを特徴とするモンキーレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやナット等の締緩に用いられるモンキーレンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からボルト及びナット等の締込や緩め作業に普く使用されているモンキーレンチは固定顎を有するレンチ本体と、固定顎に対して接離方向に往復動可能な可動顎と接離方向に歯が並ぶラックギアと噛み合う状態で本体に接離方向に軸支されているウォームギアを回転することで可動体を往復動させナットを挟持する手段とされていることが知られている。
【0003】
また、前記モンキーレンチにラチェット機能を持たせた物、例えば特許文献8,9及び10が知られている。
【0004】
モンキーレンチの可動顎の調整をラックの噛み合わせにより行う、例えば特許文献1,2及び3が知られているがラック歯の一個に力が集中し噛み合わせる歯の強度に課題が残る。また、これらの歯は大きくなるため、対象ナット等を挟持した場合、微調整ができないためガタが出やすく作動するとナットをナメたりしてナットの破損につながることがある。
【0005】
モンキーレンチの顎の部分をスライドする方法、例えば特許文献4が知られているが挟持物の選択幅が狭くモンキーレンチ本来の大小サイズのナットに対応することができない。
【0006】
モンキーレンチの顎の形状で往復操作を行う方法、例えば特許文献5や顎部の挟持面のスライド等でラチェット機能を備える、例えば特許文献6及び7が知られているがいずれもウォームを回す手間が残る。
【先行技術文献】
【0007】
【特許文献1】実登3095318
【特許文献2】実全昭52-156398
【特許文献3】実全昭57-170961
【特許文献4】実登3221512
【特許文献5】実登3152369
【特許文献6】実登3190709
【特許文献7】特開2013-063503
【特許文献8】実登3162960
【特許文献9】実登3183139
【特許文献10】特開2017-030118
【特許文献11】実全平02-031668
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
モンキーレンチは、一本で種々のサイズのボルト及びナット等を締緩することができる工具であるが対象物に対応するために、その都度、ウォームを回転させて可動顎を微調整しなければならない。
また、サイズの異なる対象物を挟持する際にウォームギアを複数回回転させて可動顎を調整する必要があり、対象物のサイズが変わる度にウォームギアによる間隔調整をしなければならない煩わしさが生じる。
【0009】
そこでモンキーレンチの可動顎をナットのサイズに調整せずに瞬時にナットをつかみ更にモンキーレンチをその都度ナットから外すことなくレバーを往復回転させることで連続した作業を行なう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のモンキーレンチは固定顎4を有するハウジング5と該固定顎4に対して接離方向に往復動可能な可動顎2を備え、該可動顎2の底面に摺動方向に対して交差する係合ラック2bとスプリング溝2cを有しナット等を挟持する方向にスプリング10で付勢される。
(請求項1)
【0011】
前記可動顎2を固定顎4にロックする係止リンク6に係止ラック6aを有し対称性を持って揺動する駆動リンク7と従動リンク8の軸7aと8aを軸支する軸受部6c及び軸受部6dが設けられ、駆動リンク7と従動リンク8を軸支し、前記係止ラック6が平行に移動させる平行リンク機構を構成し、平行に複数のラックどうしが相互に噛合することを可能にする。
(請求項2)
【0012】
前記平行リンク機構の静止節となり、静止節部の作動のための従節7cを備えた駆動リンク7と、ラックの噛合を解放するための従節8cを備えた従動リンク8を軸支する締込リンク9を備えハウジング5に形成された可動顎2と固定顎4の接離方向に滑動可能にする滑動溝5bに收容する。
(請求項3)
【0013】
前記締込リンク9はレバー3に、駆動リンク7及び従動リンク8の作動用のカム3a及びカム3cと逃げ溝3bが形成され、駆動リンク7と従動リンク8のそれぞれの従節7cと8cを收容し、該レバー3は連結軸12を支点にして作動可能にし、締込リンク9に軸支した駆動リンク7の従節7cと従動リンク8の従節8cとそれぞれ当接し、係止リンク6を作動させる。即ちレバー3のカム3aはリンクの支点を移動させ、カム3cは係止リンク6を可動顎2から解放するため従動リンク8を作動させる。
更にレバー3は溝3dに挿入したスプリング11で係止リンク6のラック6aの噛合方向に付勢されている。
(請求項4)
【0014】
前記平行リンク機構と締め込み機構の連動によりレバー3を往復作動し、固定顎4にロックする可動顎2の係合ラック2bと係止ラック6aの噛合状態と非噛合状態が繰り返され連続してナット等の回転作業が可能となる。
(請求項5)
【発明の効果】
【0015】
本発明のモンキーレンチはナット等を挟持するためのサイズ調整にウォームを回転する手間を省略でき、一度掴んだナット等を連続して回転させることができるため、格段に作業時間を短縮できる。
また、単純な構造の実現で部材コストの節減やモンキーレンチのメンテナンスが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】 本発明のモンキーレンチの要部の断面模式図である。
【
図3】 本発明のモンキーレンチの分解斜視図である。
【
図4】 本発明のモンキーレンチの組立構成の斜視図である。
【
図5】 本発明のモンキーレンチを使用する場合の説明のための模式図である。
【
図6】 本発明のモンキーレンチのラチェット機能の説明のための模式図である。
【
図7】 本発明のモンキーレンチの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面に基づいて実施の形態を説明する。
【0018】
本発明の
図7のモンキーレンチ1は
図4の固定顎4が設けられたハウジング5と、底面に係合ラック2bを形成した可動顎2と、該可動顎2と噛合し、固定顎4に可動顎2をロックする上面に係止ラック6aを形成した係止リンク6と該係止リンク6を作動させるリンク機構とリンク機構を作動させる形状を備えたレバー3とから主に構成される。
【0019】
前記固定顎4が設けられたハウジング5は可動顎2の摺動溝5aと締込リンク9の滑動溝
図3の5bを接離方向に設け、連結軸孔5cが設けられている。
【0020】
前記可動顎2は、ハウジング5の摺動溝5aに対応する摺動体2aが形成され、ハウジング5の摺動溝5aに收容され移動を可能にする。可動顎2の底部には係止リンク6の係止ラック6aと噛合する係合ラック2bが形成され、スプリング溝2cを備える。スプリング10は末端を該スプリング溝2cと、もう一端を係止リンク6のスプリング溝6eに収め、可動顎2を固定顎4方向に、係止リンク6は可動顎2ロック方向にそれぞれ付勢する。
【0021】
前記係止リンク6を作動するリンク機構は主に
図4係止リンク6と駆動リンク7と従動リンク8と締込リンク9とレバー3及びスプリング11で構成される。
【0022】
前記係止リンク6はハウジング5より外側にはみ出るリリースボタン6bが備えられ駆動リンク7の軸受6cと従動リンク8の軸受6dが設けられている。
前記可動顎2と係止リンク6の噛合するラックの形状は、ノコギリ型、波型等、任意とし、相互に噛合する形状とする。
前記係止リンク6に收容される駆動リンク7は軸7aと軸7bと従節7cで形成され、従動リンク8は軸8aと軸8bと従節8cで形成され係止リンク6に軸7aと軸8aが軸支される。
前記駆動リンク7の従節7cは
図6のレバー3のカム3aと当接し、従動リンク8の従節8cはレバー3のカム3cと当接する。
【0023】
前記従節7cは係止リンク6と締込リンク9を作動させ、 前記従節8cは係止リンク6の噛合を解放させる。
【0024】
前記締込リンク9は
図3駆動リンク7及び従動リンク8を軸支する軸穴9aと軸穴9bが設けられ、軸7bと軸8bを軸支し、ハウジング5の滑動溝5bに収容し往復スライドさせ、軸支部分の移動を可能とさせる。締込リンク9の作動は
図6のレバー3に形成された駆動リンク7の従節7cを収容するカム3aを該レバー3の連結軸12を支点にして回転して作動する。
【0025】
前記レバー3はカム3aと逃げ溝3bとカム3c及びスプリング溝3dが形成され、連結軸穴3eを備える。
前記レバー3のカム3aは駆動リンク7の従節7cを収容し、カム3cは従動リンク8の従節8cと当接し、逃げ溝3bは従節8cの作動時の逃げ空間となる。
前記レバー3のスプリング溝3dはスプリング11の末端を挿入し、もう一端は係止リンク6のスプリング溝6eに挿入し、レバー3の締め込む回転方向に付勢されている。
【0026】
前記レバー3のカム3cは従動リンク8の従節8cと当接し、レバー3のナット20を緩める方向に回転すると駆動リンク7の従節7cカム3aと当接しているから、駆動リンク7を作動し締込リンク9を移動させ、駆動リンク7とリンクしている従動リンク8の支点が移動し、可動顎2の係合ラック2bと押圧噛合している係止リンク6の係止ラック6aの押圧を緩め、同時に従動リンク8の従節8cと当接しているカム3cが従動リンク8の従節8cと当接し従節8cを押し上げる。この結果、従動リンク8が駆動するリンクに変わり、更に係止リンク6の係止ラック6aの噛合が緩み分離し、可動顎2はスプリング10で付勢されているが移動は自由となる。
【0027】
前記レバー3を往復回転すると挟持したナットの連続した
図1の締込作業や
図6の緩め作業を行なうことができる。
尚、レバー3は逆回転が不可であり、要すれば該モンキーレンチを反転して使用する。
【実施例0028】
本発明のモンキーレンチの使用方法と機能について任意の6角ナットを用いて説明する。
【0029】
前記モンキーレンチ
図5の1を使用してナット20を締め込む場合はレバー3を握り親指または人差し指でリリースボタン6b押すと係止リンク6が押され可動顎2の係合ラック2bと係止リンク6の係止ラック6aの噛合が外れ可動顎2はフリーになる。
次にフリー状態の可動顎2を指でつまんで開いた状態で対象のナット20に固定顎4をあてるか、ナット20の角に可動顎2の先端部分を当てて可動顎2を引っ掛けるように開放して固定顎4との間にナット20を挟持したら、指をはなせば可動顎はスプリング10で付勢されているので、ナット20を瞬時に挟み、リリースボタン6bから親指を離すと、スプリング10と11で付勢されている係止リンク6とスプリング11で付勢されているレバー3が相互に作用し、該係止リンク6はラックの噛合方向に、レバー3はスプリング11に付勢され、レバー3のカム3aが駆動リンク7に当接している従節7cに作用し締込リンク9が作動し、可動顎2の押し圧固定する準備状態となる。
次にレバー3をナット締め込み方向に回すと、係止リンク6が可動顎2を押し圧状態になりナット20を締め込むことができる。
【0030】
前記ナット20からモンキーレンチを外さずに連続してナット20を締め込む場合は
図6レバー3をそのまま逆方向に60度以上一旦戻し、再度締め込む。即ちレバー3を往復回転して連続してナット20を締め込むことが可能となる。ナット20を締め込んでいたレバー3を逆方向に戻すと駆動リンク7の従節7cがカム3aにより作動し、可動顎2を押し圧固定している係止リンク6の係止ラック6aの押し圧を緩め、同時に従動リンク8の従節8cがカム3cによりスプリング11に抗し係止リンク6が可動顎2から離れ可動顎2はフリーの状態になる。このとき可動顎2はフリー状態であるがスプリング10で付勢されているので、ナット20は掴んだ状態にある。
したがつて、そのままレバー3を60度以上で往復回転させることで連続してナット20の締め込みが可能である。
しかしながら、レバー3の回転を戻す場合、締めたナット20にたいし30度以上、戻し回転すると、六角ナット20の頂点を過ぎた段階から固定顎4と可動顎2のナット20の締め込みのための挟持が始まるので、完全に60度、戻さなくてもナット20の頂点部分を挟持して、締め込むことが可能である。本締めでないことに限定すれば狭いスペースでの作業には有効である。
【0031】
前記ナット20を緩める場合はモンキーレンチ1の本体を反転して行なう。
【0032】
尚、上記実施例は本発明を限定するものではなく、説明のものであり各部の構成や構造は技術的に想定する範囲で種々の変更が可能である。