(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163678
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】核医学診断装置、データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
G01T1/161 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183649
(22)【出願日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】17/230,499
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】リヤン ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】ウエンユエン チー
(72)【発明者】
【氏名】キシャオチュン ライ
(72)【発明者】
【氏名】ペン ペン
【テーマコード(参考)】
4C188
【Fターム(参考)】
4C188EE02
4C188FF04
4C188FF07
4C188GG19
4C188JJ02
4C188KK09
4C188KK15
4C188KK24
4C188KK35
(57)【要約】
【課題】画質を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る核医学診断装置は、第1のガンマ線検出器と、第2のガンマ線検出器と、特定部と、推定部とを備える。第1のガンマ線検出器は、第1の消滅ガンマ線を検出する検出器であって、コンプトン散乱事象を検出する。第2のガンマ線検出器は、第2の消滅ガンマ線を検出する。特定部は、第1のガンマ線検出器および前記第2のガンマ線検出器の間で起こり得る同時計数事象を特定する。推定部は、前記コンプトン散乱事象に基づいて、前記第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の消滅ガンマ線を検出する検出器であって、コンプトン散乱事象を検出する第1のガンマ線検出器と、
第2の消滅ガンマ線を検出する第2のガンマ線検出器と、
前記第1のガンマ線検出器および前記第2のガンマ線検出器の間で起こり得る同時計数事象を特定する特定部と、
前記コンプトン散乱事象に基づいて、前記第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定する推定部と
を備える、核医学診断装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記第2のガンマ線検出器が前記飛来可能方向の範囲に対応する場合は、前記特定された同時計数事象を真の同時計数事象として特定し、前記第2のガンマ線検出器が前記飛来可能方向の範囲に対応しない場合は、前記特定された同時計数事象を真の同時計数事象として特定しない、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記コンプトン散乱事象である第1の事象の位置、前記コンプトン散乱事象のエネルギー、前記コンプトン散乱事象によって引き起こされる第2の事象の位置、および前記第2の事象のエネルギーに基づいて、前記第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定する、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項4】
前記飛来可能方向の範囲は、前記コンプトン散乱事象のエネルギーおよび前記第2の事象のエネルギーの変動性に基づく飛来方向を含み、前記変動性は前記核医学診断装置のエネルギー分解能の限界によって引き起こされる、請求項3に記載の核医学診断装置。
【請求項5】
前記飛来可能方向の範囲は、前記コンプトン散乱事象の位置および前記第2の事象の位置の変動性に基づく飛来方向を含み、前記変動性は前記核医学診断装置の空間分解能の限界によって引き起こされる、請求項3に記載の核医学診断装置。
【請求項6】
前記飛来可能方向の範囲は円錐形のシェル投影に対応し、当該円錐形のシェル投影は、コンプトン散乱事象の位置にある頂点と、前記コンプトン散乱事象の位置と前記第2の事象の位置とを通る直線と前記コンプトン散乱事象のエネルギーおよび前記第2の事象のエネルギーに基づく半角とからなる、請求項3に記載の核医学診断装置。
【請求項7】
前記同時計数事象の3次元位置を特定可能な検出器を前記第1のガンマ線検出器または前記第2のガンマ線検出器として備える、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項8】
前記第1のガンマ線検出器および前記第2のガンマ線検出器は、ルテチウムイットリウムオキシオルトシリケートを含む、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項9】
前記第1のガンマ線検出器および前記第2のガンマ線検出器は、複数のシリコン光電子増倍管を含む、請求項7に記載の核医学診断装置。
【請求項10】
第1の消滅ガンマ線を検出する検出器であって、コンプトン散乱事象を検出する第1のガンマ線検出器と、第2の消滅ガンマ線を検出する第2のガンマ線検出器との間で起こり得る同時計数事象を特定し、
前記コンプトン散乱事象に基づいて、前記第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定する、データ処理方法。
【請求項11】
第1の消滅ガンマ線を検出する検出器であって、コンプトン散乱事象を検出する第1のガンマ線検出器と、第2の消滅ガンマ線を検出する第2のガンマ線検出器との間で起こり得る同時計数事象を特定し、前記コンプトン散乱事象に基づいて、前記第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定する処理をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、核医学診断装置、データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
PETシステムは、被検体に陽電子放出元素で標識した薬剤を投与し、放出された陽電子が周囲の物質の電子と相互作用して対消滅した際に放出される対消滅ガンマ線対を検出する。二つのガンマ線はそれぞれ511keVのエネルギーをもち、対消滅点から互いにほぼ180度の向きに放出される。PETシステムは、対消滅点がこれらのガンマ線検出点を結ぶ線分(Line-of-Response:LOR)上にあるとして画像再構成を実行し被検体内での集積や動態を可視化する。二つのガンマ線が同一の対消滅事象から生じたものと同定することを同時計数と呼ぶ。一般にPETシステムは、一方のガンマ線検出をトリガーとする時間ウインドウ内に検出されるガンマ線を対消滅ガンマ線対の他方と同定し同時計数を行う。実際の同時計数には、ひとつの対消滅事象から生じた二つのガンマ線が被検体内の散乱なしに直接検出される真の同時計数、二つのガンマ線のうち一方あるいは両方が被検体内で散乱を経て検出される散乱同時計数、さらに互いに無関係な対消滅事象のガンマ線が対と取り違えられる偶発同時計数がある.散乱同時計数、偶発同時計数は真の対消滅点を通らないLORを与えノイズとなり、再構成画像の画質を劣化させる。
【0003】
一般にPETシステムは、散乱同時計数を減らすために検出ガンマ線のエネルギーを計測し、散乱でエネルギーが低くなった検出事象を棄却する。実際にはエネルギー計測精度は有限であり設定する選別のためのエネルギー窓も有限な幅をもつため、選別を経ても同時計数内に散乱同時計数は多く残存する。また偶発同時計数を減らすために、PETシステムは上記時間ウインドウの時間幅を可能な限り小さく設定する。しかしながら二つの検出器間を光が伝搬する時間が下限であり、この方法では偶発同時計数の完全な除去は原理的に不可能である。これらの困難は、単一ガンマ線の飛来方向の特定がなされないことに原因がある。
【0004】
上記の背景に鑑み、真の同時計数事象と散乱/偶発同時計数事象をより良く選別する方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0239037号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0114100号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0138332号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面の開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、画質を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る核医学診断装置は、第1のガンマ線検出器と、第2のガンマ線検出器と、特定部と、推定部とを備える。第1のガンマ線検出器は、第1の消滅ガンマ線を検出する検出器であって、コンプトン散乱事象を検出する。第2のガンマ線検出器は、第2の消滅ガンマ線を検出する。特定部は、第1のガンマ線検出器および前記第2のガンマ線検出器の間で起こり得る同時計数事象を特定する。推定部は、前記コンプトン散乱事象に基づいて、前記第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、層状積層型PETスキャナシステムの一例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、飛来可能方向の範囲を推定するためにコンプトン散乱を利用する一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の層状積層型PETスキャナシステムにおける飛来可能方向の範囲を推定する一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1の層状積層型PETスキャナシステムにおいて、エネルギー分解能および空間分解能の制限に対応して、可能な飛行方向の範囲を拡大する例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の例示的態様による同時計数データを収集するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、核医学診断装置、データ処理方法及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0010】
以下の開示は、提供された主題の異なる特徴を実施するための、多くの異なる実施形態または実施例を提供する。本開示を簡略化するために、構成要素および配置の特定の例を以下に説明する。勿論、これらは単なる例であり、限定を意図したものではない。さらに、本開示は、様々な例において参照番号および/または文字を繰り返すことがある。この繰り返しは、単純さおよび明確さを目的としており、それ自体は、議論される様々な実施形態および/または構成の間の関係を指示するものではない。
【0011】
本明細書に記載される異なるステップの議論の順序は、明確化のために提示されるものである。一般に、これらのステップは任意の適切な順序で実行できる。さらに、本明細書の異なる特徴、技術、構成等の各々は本開示の異なる場所で議論され得るが、各々の概念は互いに独立して、または互いに組み合わせて実行できることが意図されている。したがって、本発明は、多くの異なる方法で具体化でき、また再検討することができる。本開示は、様々な実施形態を説明するために層状積層型PET検出器を説明するが、これらの概念は、同様のシステムに適用することができる。
【0012】
事象対が真の同時計数であるか、散乱/偶発同時計数であるかを決定することの困難は、入射ガンマ線の方向に関する情報が存在しないことである。そのような情報を導き出すことができれば、真の同時計数事象対を分類することが可能である。ガンマ線は、コンプトン散乱などの幾つかの異なる物理的原理の下で、PET検出器に衝突および相互作用する。PET検出器内の複数の相互作用を捕捉できれば、記録されたエネルギーおよび位置情報を使用して、入射光子の方向を導き出すことができる。この原理に従って、コンプトン散乱下で記録された一連の事象毎に、入射ガンマ線が発生した可能性のある飛来方向の範囲を推定できる。本明細書に開示される技術は、入射光子の方向を予測するために、PET検出器内の複数の相互作用を利用することを含む。このような予測を使用して、PETシステムにおいて散乱同時計数事象および偶発同時計数事象を効率的に排除できる。
【0013】
一実施形態において、本開示は、入射光子の方向を予測するための複数の相互作用エネルギーおよび3D位置を正確に登録できる層状積層型PETスキャナ内に実装し得ることを理解することができる。例えば、(1)Peng Peng et al 2019 Biomed. Phys. Eng. Express 5 015018、および(2)Peng Peng et al 2019 Phys. Med. Biol. 64 10LT01を参照されたい。これらの参考文献の開示は、その全体を本明細書の一部として援用する。
図1は、それぞれが検出器モジュールとして構成された幾つかのガンマ線検出器(Gamma-Ray Detector:GRD)(例えば、GRD1、GRD2、…、GRDN)を含む、層状積層型PETスキャナ100の一実施形態を示す。各GRDは、深さ方向に積み重ねられた結晶スラブ(L1、L2、L3、およびL4)を使用して層状になっているため、各層のガンマ線によって蓄積されたエネルギーを個別に測定できる。そのような層状構造を使用することにより、PETスキャナ100は、コンプトン散乱事象をより正確に検出することができる。
【0014】
一実施形態によれば、ガントリ104の周りに円形ボア102を形成する各PET検出器リングは、多くのGRD(例えば、40個または48個)を含む。各PET検出器リングの移動は、手動操作および/または電動操作によって行うことができる。GRDは、ガンマ線をシンチレーション光子(例えば、光、赤外線、および紫外線波長で)に変換するために、各結晶スラブL1、L2、L3、L4にシンチレータ結晶アレイを含み、当該シンチレーション光子は光検出器によって検出される。各結晶スラブL1、L2、L3、L4は、ルテチウム-イットリウムオキシオルトシリケート(Lutetium-Yttrium Oxyorthosilicate:LYSO)製であり、4×4のシリコン光電子増倍管(Silicon Photomultiplier:SiPM)アレイ(結晶層ピッチに一致)によって読み取られ、各結晶スラブL1、L2、L3、L4内のシンチレーション光を測定できる。強化鏡面反射(Enhanced Specular Reflector:ESR)フィルムを各結晶スラブL1、L2、L3、L4の間に接着できるため、ガンマ線によって結晶スラブL1、L2、L3、L4の各層に蓄積されたエネルギーを個別に測定できる。結晶スラブL1、L2、L3、L4とSiPMの間には、光学グリース(例えばBC-630)を使用できる。当該結晶の4つの側面にある全てのSiPM(4×16)からのアナログ信号を、64チャネルのTOFPET-2モジュールを使用して個別にデジタル化できる。
【0015】
図1は、被検体OBJ(例えば、患者)から放出されたガンマ線を検出するように配置されたGRDを有する、層状積層型PETスキャナ100を示している。GRDは、検出された各ガンマ線に対応するタイミング、位置、およびエネルギーを測定できる。GRDは層状構造を使用しているため、測定された位置は、エネルギーがGRDのどの層に蓄積されたかに関する情報を含むことができる。一実施形態において、ガンマ線検出器はPET検出器リングに配置される。
図1の単一のPET検出器リングは、PETスキャナ100の軸方向に沿って任意の数のPET検出器リングを含むように外挿できることを理解できる。各結晶スラブL1、L2、L3、L4の検出器結晶は、二次元配列で配置された個々のシンチレータ素子を有するシンチレータ結晶であることができ、当該シンチレータ素子は任意の既知のシンチレータ材料であってよい。結晶スラブL1、L2、L3、L4はLYSOに限定されず、任意の既知のシンチレーション材料で作製することができる。各結晶スラブL1、L2、L3、L4は異なる材料で作製でき、任意の数の結晶スラブを使用できる。光電子増倍管は、各シンチレータ素子からの光が複数の光電子増倍管により検出されて、アンガーの演算およびシンチレーション事象の結晶デコード化を可能にするように配置することができる。
【0016】
図1は、層状積層型PETスキャナ100の配置の一例を示しており、ここでは被検体OBJ(例えば、感染した可能性のある人)がテーブル106上に静止され、GRDモジュールGRD1~GRDNが被検体OBJ(例えば、患者)およびテーブル106回りの周囲に配置される。GRDはPET検出器リングを含むことができ、ガントリ104に固定結合された円筒形ボア102に固定連結され得る。ガントリ104は、層状積層型PETスキャナ100の多くの部分を収容する。層状積層型PETスキャナ100のガントリ104はまた、円筒形ボア102によって定義される開放開口部を含み、そこを通って被検体OBJ(例えば、患者)およびテーブル106が通過でき、消滅事象に起因して被検体OBJ(例えば患者)から反対方向に放出されたガンマ線はGRDによって検出でき、タイミングとエネルギーの情報を使用して、ガンマ線対の同時計数を判断できる。
【0017】
図1には、ガンマ線検出データを取得、保存、処理、および配布するための回路およびハードウェアも示されている。この回路およびハードウェアには、処理回路107、ネットワークコントローラ103、メモリ105、およびデータ取得システム(Data Acquisition System:DAS)108が含まれる。PETスキャナはまた、検出測定結果をGRDからデータ取得システム108、処理回路107、メモリ105、およびネットワークコントローラ103へとルーティングするデータチャネルを含んでいる。データ取得システム108は、検出器からの検出データの取得、デジタル化、およびルーティングを制御することができる。一実施形態において、データ取得システム108は、テーブル106の動きを制御する。処理回路107は、検出データの再構成前処理、画像再構成、および画像データの再構成後処理を含む機能を実行する。1つの例示的態様によれば、処理回路107は、以下で説明する方法500を実行することができる。
【0018】
実施形態では、特定機能、推定機能にて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ105へ記憶されている。処理回路107はプログラムをメモリ105から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路107は、特定機能、推定機能等の各機能を有することになる。なお、特定機能及び推定機能は、それぞれ、特定部、推定部の一例である。
【0019】
図1に注目されたい。
図1は、層状積層型PET検出器の一実施形態を示しており、他の構成は、本開示の核となる概念から逸脱することなく実施できる。構成の微調整の例には以下のものが含まれるが、これらに限定されない。すなわち、結晶スラブL1、L2、L3、L4は、LYSO以外の材料で製作でき、光電子増倍管アレイはシリコン以外の材料で製造でき、各結晶スラブL1、L2、L3、L4は同じ材料または複数の異なる材料で作製でき、各GRDでは4つより多くまたは少ない結晶スラブ層を使用でき、光電子増倍管アレイは任意の次元にすることができる等である。
【0020】
コンプトン散乱は、(同じGRDまたは隣接するGRDの)結晶スラブL1、L2、L3、L4内およびこれら結晶スラブ間で発生する可能性がある。このコンプトン散乱は、PETスキャナ100の構成要素によって検出することができ、入射ガンマ線の飛来可能方向の範囲を予測するために使用できる。コンプトン散乱に際し、入射ガンマ線(つまり入射光子)が電子に当たると、入射光子は異なる波長で散乱し、電子は反跳する。この概念を、
図2Aを使用して説明する。この図は、入射光子201の飛来方向、入射光子が最初に電子に衝突したコンプトン散乱事象の位置202、反跳した電子203、散乱光子205の飛来方向、および散乱光子が被着した位置204を示している。層状積層型PETスキャナ100は、散乱光子205の飛来方向(すなわち、位置202と位置204を結ぶ直線)、反跳電子203のエネルギー、および位置204での散乱光子の被着エネルギーを測定/決定し、以下の式(1)および式(2)を使用して、入射光子についての飛来可能方向の範囲を算出する。
【0021】
【0022】
【0023】
ここで、Eは入射光子エネルギー、E′は位置204での散乱光子の被着エネルギー、Eeは反跳電子203のエネルギー、θは散乱光子205の飛来方向、衝突しなかった場合の入射光子の飛来方向および位置202の間の角度、meは反跳した電子203の質量、cは光速である。
【0024】
E′は層状積層型PETスキャナ100によって測定され、Eeは層状積層型PETスキャナ100によって測定され、me=9.10938356×10-31キログラム、およびc=299,792,458メートル/秒と仮定すると、式(1)および式(2)はθおよびEを解くために使用できる。
【0025】
換言すれば、検出器が、本明細書で事象1(すなわち、コンプトン散乱事象)と称する反跳電子203のエネルギーおよび位置202、ならびに本明細書で事象2(すなわち、第2の事象)と称する散乱光子エネルギー(コンプトン散乱事象のコンプトン散乱が第2の事象を引き起こす)および位置204を記録できるならば、当該入射光子についての飛来可能方向の範囲を予測することができる。
【0026】
入射光子の飛来可能方向の範囲は、位置202、位置204、およびθを使用して作成できる。飛来可能方向の範囲は、真の同時計数事象が発生し得た領域として定義できる。一実施形態において、飛来可能方向の範囲は、入射光子が潜在的にとることができた飛来方向を示す円錐形のシェル投影の壁によって定義することができ、それによって、消滅事象により引き起こされる事象対が真であるか、または散乱/偶発同時計数であるかを決定できる。例えば、
図2Bに示されるように、飛来可能方向の範囲は、位置202の頂点、散乱光子205の飛来方向と一致する軸207、および半角θを有する円錐形のシェル投影206を形成する。円錐形シェル投影206の壁上にあるGRDは、飛来可能方向の範囲内にあると見なすことができる。入射光子201の実際の飛来方向は、円錐形のシェル投影206内にあり、したがって、飛来可能方向の推定範囲内にあることに留意されたい。
【0027】
PETスキャナ100は、上記の技術を使用して、同時計数事象が真であるかどうかを決定することができる。
図3を使用して1つの例が示される。OBJにおける消滅事象310により、第1の入射光子が最初にGRD1に被着し、第2の入射光子が最初にGRD22に向かうが、その後散乱してGRD16に被着する。したがって、GRD1とGRD16の間で(分散された/真ではない)同時計数事象が検出される。
【0028】
事象1(302)およびコンプトン散乱事象2(304)は、それぞれGRD1のL1およびL2で検出される。GRD16では、第1の事象309のみがL3で検出される(コンプトン散乱なし)。処理回路107は、事象1(302)および事象2(304)の収集された情報を上記の技術と共に使用して、円錐形のシェル投影306によって示される飛来可能方向の範囲を推定することができる。飛来可能方向は、GRDと重なる円錐形のシェル投影306の壁(すなわち、外側領域)によって示される。円錐形のシェル投影306内のGRDは、飛来可能方向として含まれていない。このシナリオでは、飛来可能方向の範囲にはGRD22およびGRD28が含まれる。したがって、GRD16は飛来可能方向の範囲内にはない(すなわち、円錐形のシェル投影306上にあるGRDの1つではない)ので、GRD1とGRD16との間の同時計数事象は、真の事象として記録されない。第2の入射光子が散乱しなかった場合、それは飛来可能方向の範囲内にあるGRD22に被着し、したがって真の同時計数事象として記録されたことに留意されたい。
【0029】
図3の例は、同じGRD(GRD1)で発生する事象1(302)および事象2(304)があったが、他の実施形態では、事象1(302)および事象2(304)がお互いにコンプトン散乱事象である限り、事象1(302)および事象2(304)は異なるGRDで発生することができる。例えば、事象1(302)がGRD1のL1で発生し、事象2(304)がGRD2のL2で発生した場合でも、上記の手法はやはり機能する。
【0030】
幾つかの場合に、事象2の後に別のコンプトン散乱事象が続く可能性があることに留意すべきである。後続の事象を使用して、飛来可能方向の範囲が正しいことを確認することができる。例えば、事象2とそれに続くコンプトン散乱事象は、上記の手法を使用して、事象1を捕捉する必要がある第2の円錐形のシェル投影を作成することにより、事象1の位置が正確であることを確認できる。
【0031】
偶発および散乱同時計数事象は、上記の手法を使用して排除できる。さらに、飛来可能方向の範囲は、画像再構成の事前情報として使用できる。真実であることが判明していない同時計数事象は画像に含まれず、これにより画像の全体的な品質が向上する可能性がある。
【0032】
層状積層型PETスキャナ100の制限されたエネルギー解像度および/または制限された空間解像度に対応するために、飛来可能方向の範囲を拡大することができる。言い換えれば、
図3からの円錐形シェル投影306の壁は厚くしてもよい。
図4に示すように、角度の不確実性Δθおよび位置の不確実性Δrにより、飛来可能方向の範囲を拡大して、より厚い円錐形のシェル投影406が作成される。これらの不確実性要素の片方または両方は、飛来可能方向の範囲を決定する際に、処理回路107によって計算される。このシナリオでは、飛来可能方向の範囲にはGRD22およびGRD28が含まれる。
【0033】
層状積層型PETスキャナ100における制限されたエネルギー分解能によって引き起こされるエネルギーの変動性を考慮することによって飛来可能方向の範囲を拡大することは、角度の不確実性(Δθ)を特定することを含み得る。限られたエネルギー分解能によって引き起こされる角度の不確実性(Δθ)は、以下の式(3)によって決定できる。
【0034】
【0035】
ここで、Eeは反跳電子エネルギー、Eは入射ガンマ線エネルギー、α=E/mec2である。511keVのガンマ線の場合、α=1である。
【0036】
PETスキャナ100の限られた空間分解能により引き起こされる位置の変動性を考慮することによって飛来可能方向の範囲を拡大することは、位置の不確実性(Δr)を特定することを含み得る。この限られた空間分解能によって引き起こされる位置の不確実性(Δr)は、以下の式(4)を使用して決定できる。
【0037】
【0038】
ここで、x1、y1及びz1は、事象1が発生したシンチレータ結晶の寸法であり、x2、y2及びz2は、事象2が発生したシンチレータ結晶の寸法である。
【0039】
当業者が理解し得るように、本開示は、方法として具体化することができる。
図5は、本開示の例示的態様による1つの方法500のフローチャートである。方法500のステップ501において、処理回路107は、特定機能により、第1の消滅ガンマ線を検出するための第1のガンマ線検出器と、第2の消滅ガンマ線を検出するための第2のガンマ線検出器との間で起こり得る同時計数事象を特定する。ここで、第1のガンマ検出器は、コンプトン散乱事象を検出する。1つの例示的態様によれば、当該第1および第2のガンマ線検出器は当該層状積層型PET検出器の一部であり、ルテチウムイットリウムオキシオルトシリケート等のイットリウムオキシオルトシリケートを含み、複数のシリコン光電子増倍管を含み、またはそれらの任意の組み合わせを含む。実施形態に係る核医学診断装置であるPETスキャナ100は、例えば同時計数事象の3次元位置(空間的位置)を特定可能な検出器を、第1のガンマ線検出器または第2のガンマ線検出器として備える。
【0040】
方法500のステップ503において、処理回路107は、推定機能により、第1のガンマ線検出器によって検出されるコンプトン散乱事象に基づいて、第1のガンマ線検出器において検出される第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定しており、ここでの可能な同時計数事象には第1のガンマ線検出器によって検出されたコンプトン散乱事象が含まれる。第1のガンマ線検出器で検出された第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲は、第1のガンマ線検出器でのコンプトン散乱事象である第1の事象の位置、第1のガンマ線検出器でのコンプトン散乱事象のエネルギー、第2の事象の位置、および第2の事象のエネルギーに基づくことができ、当該第2の事象は当該コンプトン散乱事象によって引き起こされたものである。先に説明したように、飛来可能方向の範囲は、1つの例示的実施形態によれば、円錐形のシェル投影に対応することができる。当該円錐形のシェル投影は、コンプトン散乱事象の位置にある頂点と、コンプトン散乱事象の位置と第2の事象の位置とを通る直線と、コンプトン散乱事象のエネルギーおよび第2の事象のエネルギーに基づく半角とからなる。
【0041】
当該飛来可能方向の範囲は、コンプトン散乱事象のエネルギーおよび当該第2の事象のエネルギーの変動性に基づく飛来方向を含むことができ、当該変動性は、前述のように、核医学診断装置のエネルギー分解能の限界によって引き起こされる。
【0042】
当該飛来可能方向の範囲は、コンプトン散乱事象の位置および第2の事象の位置の変動性に基づく飛来方向を含むことができ、この変動性は、前述のように、核医学診断装置の空間分解能の限界によって引き起こされる。
【0043】
方法500のステップ505は、第2のガンマ線検出器が当該飛来可能方向の範囲に対応するかどうかを決定する。
【0044】
ステップ505に対する答えが「はい」であれば、ステップ507では、起こり得る同時計数事象を真の同時計数事象として特定することになる。ステップ505の答えが「いいえ」であれば、ステップ509は、起こり得る同時計数事象を真の同時計数事象として特定しないことになる。換言すると、処理回路107は、特定機能により、第2のガンマ線検出器が飛来可能方向の範囲に対応する場合は、同時計数事象を真の同時計数事象として特定し、第2のガンマ線検出器が飛来可能方向の範囲に対応しない場合は、同時計数事象を真の同時計数事象として特定しない
【0045】
本明細書に記載の方法およびシステムは多くの技術で実施することができるが、一般には、本明細書に記載のプロセスを実行するためのイメージング装置および処理回路に関する。一実施形態において、処理回路(例えば、画像処理回路およびコントローラ回路)は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、ジェネリック論理アレイ(Generic Array Of Logic:GAL)、プログラム可能な論理アレイ(Programmable Array Of Logic:PAL)、論理ゲート、または1回限りのプログラム可能性を可能にする論理ゲート(例えば、ヒューズを使用)または再プログラム可能な論理ゲートを可能にする回路のうちの1つまたは組合せとして実装される。さらに、処理回路は、コンピュータプロセッサを含むことができ、本明細書に記載のプロセスを実行するように当該コンピュータプロセッサを制御するためのコンピュータ命令(バイナリ実行可能命令および/または解釈されたコンピュータ命令)を格納する埋込型および/または外部不揮発性のコンピュータ読み取り可能メモリ(例えば、RAM、SRAM、FRAM(登録商標)、PROM、EPROM、および/またはEEPROM)を有する。コンピュータプロセッサ回路は、各々が単一のスレッドまたは複数のスレッドをサポートし、また各々が単一のコアまたは複数のコアを有する単一のプロセッサまたは複数のプロセッサを実装することができる。ニューラルネットワークが使用される実施形態において、人工ニューラルネットワークを訓練するために使用される処理回路は、本明細書で説明された較正を実行する訓練された人工ニューラルネットワークを実装するために使用される処理回路と同じである必要はない。例えば、プロセッサ回路およびメモリを使用して、訓練された人工ニューラルネットワーク(例えば、その相互接続および重みによって定義される)を生成することができ、FPGAを使用して訓練された人工ニューラルネットワークを実装することができる。さらに、訓練された人工ニューラルネットワークの訓練および使用は、(例えばグラフィックプロセッサアーキテクチャなどの並列プロセッサアーキテクチャ上に訓練されたニューラルネットワークを実装することによって)性能を向上させるためのシリアル実装または並列実装を使用することができる。
【0046】
開示されたのは、PETシステム内の入射光子の方向を直接決定することを目的としたシステムおよび方法である。これは、検出されたコンプトン事象のエネルギーおよび3D位置を利用して実装される。一実施形態では、層状積層型PET検出器をこの実装に使用することができる。提案された方法は、入射光子の方向を円錐形シェルに制限することができる。円錐形シェルの厚さは、PET検出器のエネルギーと位置分解の精度を考慮して調整できる。この開示は、各(または幾つかの)同時計数対を真のまたは散乱/偶発の同時計数としてラベル付けする直接的な方法を提供する。プライムエネルギーウィンドウ内の散乱の大部分は、入射角に応じて直接除去できる。さらに、偶発同時計数の大部分は、当該事象の入射角に従って直接排除できる。
【0047】
層状積層型PETシステムを組み込むことは多くの利点を与える。ここで説明する層状積層型PETシステムは、LYSO/SiPMベースの層状積層型検出器であり、一般的なPETイメージング品質と、散乱および偶発の同時計数排除の追加の利点の両方を保証できる。さらに、このシステムでは、複数のGRDに亘るコンプトン散乱からの事象の検出のような幅広い構成が可能である。最後に、入射光子の方向は、画像再構成に役立つ事前情報として使用できる。
【0048】
本開示の実施形態はまた、以下の括弧内に記載の通りであり得る。
【0049】
(1)核医学診断装置であって、それぞれ第1および第2の消滅ガンマ線を検出するための第1および第2のガンマ線検出器と、前記第1のガンマ線検出器および前記第2のガンマ線検出器の間で起こり得る同時計数事象を特定するように構成され、前記第1のガンマ線検出器によって検出されるコンプトン散乱事象に基づいて、前記第1のガンマ線検出器で検出される第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定するように構成された処理回路とを具備し、前記同時計数事象は前記第1のガンマ線検出器によって検出されるコンプトン散乱事象を含む、核医学診断装置。
【0050】
(2)前記処理回路は、前記第2のガンマ線検出器が前記飛来可能方向の範囲に対応する場合は、前記可能な同時計数事象を真の同時計数事象として特定し、前記第2のガンマ線検出器が前記飛来可能方向の範囲に対応しない場合は、前記可能な同時計数事象を真の同時計数事象として特定しないようにさらに構成される、(1)に記載の装置。
【0051】
(3)前記飛来可能方向の範囲を推定するように構成された前記処理回路は、前記第1のガンマ線検出器におけるコンプトン散乱事象の位置、前記第1のガンマ線検出器におけるコンプトン散乱事象のエネルギー、前記第2の事象の位置、および前記第2の事象のエネルギーに基づいて、前記第1のガンマ線検出器で検出された第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定するように構成された処理回路を含み、前記第2の事象は前記コンプトン散乱事象によって引き起こされる、(1)~(2)の何れかに記載の装置。
【0052】
(4)前記飛来可能方向の範囲は、前記コンプトン散乱事象のエネルギーおよび前記第2の事象のエネルギーの変動性に基づく飛来方向を含み、前記変動性は核医学診断装置の限られたエネルギー分解能によって引き起こされる、(1)~(3)の何れかに記載の装置。
【0053】
(5)前記飛来可能方向の範囲は、前記コンプトン散乱の位置および前記第2の事象の位置の変動性に基づく飛来方向を含み、前記変動性は前記核医学診断装置の限られた空間分解能によって引き起こされる、(1)~(4)の何れかに記載の装置。
【0054】
(6)前記飛来可能方向の範囲は円錐形のシェル投影に対応し、当該円錐形のシェル投影は、コンプトン散乱事象の位置にある頂点、前記コンプトン散乱事象および前記第2の事象の位置と一致する軸、前記コンプトン散乱事象のエネルギーおよび前記第2の事象のエネルギーに基づく半角を有する、(1)~(5)の何れかに記載の装置。
【0055】
(7)前記核医学診断装置が層状積層型PET検出器である、(1)~(6)の何れかに記載の装置。
【0056】
(8)前記第1のガンマ線検出器および前記第2のガンマ線検出器がルテチウムイットリウムオキシオルトシリケートを含む、(1)~(7)の何れかに記載の装置。
【0057】
(9)前記第1のガンマ線検出器および前記第2のガンマ線検出器が1つまたは複数のシリコン光電子増倍管を含む、(1)~(8)の何れかに記載の装置。
【0058】
(10)第1および第2の消滅ガンマ線をそれぞれ検出するための第1および第2のガンマ線検出器を有する核医療診断装置において同時計数データを収集するための方法であって、前記第1のガンマ線検出器と前記第2のガンマ線検出器との間で起こり得る同時計数事象を特定することと、前記第1のガンマ線検出器によって検出されたコンプトン散乱事象に基づいて、前記第1のガンマ線検出器で検出された第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定することと、を含み、前記可能な同時計数事象は前記第1のガンマ線検出器により検出されたコンプトン散乱事象を含む方法。
【0059】
(11)前記第2のガンマ線検出器が前記飛来可能方向の範囲に対応する場合は、前記可能な同時計数事象を真の同時計数事象として特定し、前記第2のガンマ線検出器が前記飛来可能方向の範囲に対応しない場合は、前記可能な同時計数事象を真の同時計数事象として特定しないことをさらに含む、(10)に記載の方法。
【0060】
(12)前記飛来可能方向の範囲を推定することは、前記第1のガンマ線検出器におけるコンプトン散乱事象の位置、前記第1のガンマ線検出器におけるコンプトン散乱事象のエネルギー、前記第2の事象の位置、および前記第2の事象のエネルギーに基づいて、前記第1のガンマ線検出器で検出された前記第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定することを含み、前記第2の事象は前記コンプトン散乱事象によって引き起こされる、(10)~(11)の何れかに記載の方法。
【0061】
(13)前記飛来可能方向の範囲は、前記コンプトン散乱事象のエネルギーおよび前記第2の事象のエネルギーの変動性に基づく飛来方向を含み、当該変動性は前記核医学診断装置の限られたエネルギー分解能によって引き起こされる、(10)~(12)の何れかに記載の方法。
【0062】
(14)前記飛来可能方向の範囲は、前記コンプトン散乱事象の位置および前記第2の事象の位置の変動性に基づく飛来方向を含み、当該変動性は前記核医学診断装置の限られた空間分解能によって引き起こされる、(10)~(13)の何れかに記載の方法。
【0063】
(15)前記飛来可能方向の範囲は円錐形のシェル投影に対応し、当該円錐形のシェル投影は、前記コンプトン散乱事象の位置にある頂点と、前記コンプトン散乱事象の位置および前記第2の事象の位置に一致する軸と、前記コンプトン散乱事象のエネルギーおよび前記第2の事象のエネルギーに基づく半角を有する、(10)~(14)の何れかに記載の方法。
【0064】
(16)前記核医学診断装置が層状積層型PET検出器である、(10)~(15)の何れかに記載の方法。
【0065】
(17)前記第1のガンマ線検出器および前記第2のガンマ線検出器が、ルテチウムイットリウムオキシオルトシリケートを含む、(10)~(16)の何れかに記載の方法。
【0066】
(18)前記第1のガンマ線検出器および前記第2のガンマ線検出器が、1つまたは複数のシリコン光電子増倍管を含む、(10)~(17)の何れかに記載の方法。
【0067】
(19)コンピュータ可読命令を含む非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ可読命令は、コンピューティングシステムによって実行されたときに、
第1の消滅ガンマ線を検出するための第1のガンマ線検出器と、第2の消滅ガンマ線を検出するための第2のガンマ線検出器との間で生じ得る同時計数事象を特定することと、
前記第1のガンマ線検出器によって検出されたコンプトン散乱事象に基づいて、前記第1のガンマ線検出器で検出された第1の消滅ガンマ線の飛来可能方向の範囲を推定することと、を含み、前記可能な同時計数事象は前記第1のガンマ線検出器により検出されたコンプトン散乱事象を含む方法を実行することによって前記コンピューティングシステムにデータをソートさせる、コンピュータ可読媒体。
【0068】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、画質を向上させることができる。
【0069】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
GRD1 ガンマ線検出器
GRD2 ガンマ線検出器
GRDN ガンマ線検出器
103 ネットワークコントローラ
104 ガントリ
105 メモリ
107 処理回路
108 データ取得システム