(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163706
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】ラップフィルム
(51)【国際特許分類】
B65D 65/02 20060101AFI20221019BHJP
C08L 27/08 20060101ALI20221019BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20221019BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
B65D65/02 E
C08L27/08
C08K5/1515
C08J5/18 CER
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063007
(22)【出願日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2021068222
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 利采
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB02
3E086AC22
3E086AD13
3E086BA02
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB22
3E086BB58
4F071AA25X
4F071AA42
4F071AA81
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4F071AE04
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4F071BC01
4F071BC12
4J002BD101
4J002EL026
4J002FD036
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】本発明は、冷凍庫内のような低温(例えば、-18℃)で保存しても、冷凍庫から取り出してすぐにラップフィルムをはがした際に裂けトラブルが生じにくいラップフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】塩化ビニリデン系樹脂を含有し、-18℃でのMD方向の引張弾性率をXとし、23℃でのMD方向の引張弾性率をYとしたとき、0.8<X/Y<5.0である、ラップフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニリデン系樹脂を含有し、
-18℃でのMD方向の引張弾性率をXとし、23℃でのMD方向の引張弾性率をYとしたとき、0.8<X/Y<5.0である、ラップフィルム。
【請求項2】
前記ラップフィルムが、エポキシ化脂肪酸エステル系化合物を含有する、請求項1に記載のラップフィルム。
【請求項3】
前記エポキシ化脂肪酸エステル系化合物が、脂環式エポキシ化脂肪酸エステル系化合物である、請求項2に記載のラップフィルム。
【請求項4】
前記脂環式エポキシ化脂肪酸エステル系化合物が、分子内にエポキシ化シクロヘキサン構造を1個有する化合物である、請求項3に記載のラップフィルム。
【請求項5】
前記エポキシ化脂肪酸エステル系化合物の含有量が、ラップフィルムの総量に対して、0.1質量%~7.0質量%である、請求項2に記載のラップフィルム。
【請求項6】
前記エポキシ化脂肪酸エステル系化合物の含有量が、ラップフィルムの総量に対して、0.1質量%~7.0質量%である、請求項3に記載のラップフィルム。
【請求項7】
前記エポキシ化脂肪酸エステル系化合物の含有量が、ラップフィルムの総量に対して、0.1質量%~7.0質量%である、請求項4に記載のラップフィルム。
【請求項8】
厚みが6μm~18μmである、請求項1から7のいずれか1項に記載のラップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニリデン系樹脂は、透明性、耐水性及びガスバリア性等の特性に優れているため、ラップフィルム等の食品包装用材料として使用されている。近年、食品包装用材料は、上記特性だけでなく、成形加工性及び熱安定性等の特性も向上させ、さらに高機能化させることが求められている。食品包装用材料を高機能化させる方法としては、例えば、可塑剤や熱安定剤等の添加剤を配合する方法が挙げられる。このような添加剤としては、例えば、ラップフィルムの色調変化を抑制するために、エポキシ化植物油が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ラップフィルム用の樹脂組成物として、熱可塑性樹脂と、エステル基及びエポキシ基を有する化合物と、を含有し、前記化合物の分子量が300以上1500以下である樹脂組成物が開示されている。また、例えば、特許文献2には、エポキシ化植物油を含有し、10℃における静止摩擦係数が0.3以上0.65以下である塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/217362号
【特許文献2】特開2016-22983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、陶磁器、ガラス、プラスチック、金属、又は木材からなる容器に食品などの内容物を入れたのちに、当該容器の上面にラップフィルムを密着させて、当該容器を密封し、冷凍庫などで内容物を保存することは広く行われている。
【0006】
しかしながら、従来のラップフィルムは、冷凍庫内のような低温(通常、-18℃)では脆くなるため、上記のように、冷凍庫から保存した内容物を取り出した直後に、容器からラップフィルムを剥がす際に、裂けトラブルが発生することがある。
【0007】
特許文献1に記載の樹脂組成物は、耐寒性に優れるラップフィルムを形成可能であるが、0℃での耐寒性しか評価されておらず、冷凍庫(通常、-18℃)で保存した場合の特性は検討していない。
また、特許文献2に記載のラップフィルムも低温下での密着性に優れるが、10℃における静止摩擦係数しか評価されておらず、冷凍庫(通常、-18℃)で保存した場合の特性は検討していない。
このように特許文献1、2ともに、冷凍庫内での使用については考慮されておらず、裂けトラブルについての記載はない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、冷凍庫内のような低温(例えば、-18℃)で保存しても、冷凍庫から取り出してすぐにラップフィルムをはがした際に裂けトラブルが生じにくいラップフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、低温(-18℃)でのMD方向の引張弾性率と、室温(23℃)でのMD方向の引張弾性率との関係を制御することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記の通りである。
[1]
塩化ビニリデン系樹脂を含有し、
-18℃でのMD方向の引張弾性率をXとし、23℃でのMD方向の引張弾性率をYとしたとき、0.8<X/Y<5.0である、ラップフィルム。
[2]
前記ラップフィルムが、エポキシ化脂肪酸エステル系化合物を含有する、[1]に記載のラップフィルム。
[3]
前記エポキシ化脂肪酸エステル系化合物が、脂環式エポキシ化脂肪酸エステル系化合物である、[2]に記載のラップフィルム。
[4]
前記脂環式エポキシ化脂肪酸エステル系化合物が、分子内にエポキシ化シクロヘキサン構造を1個有する化合物である、[3]に記載のラップフィルム。
[5]
前記エポキシ化脂肪酸エステル系化合物の含有量が、ラップフィルムの総量に対して、0.1質量%~7.0質量%である、[2]から[4]のいずれかに記載のラップフィルム。
[6]
厚みが6μm~18μmである、[1]から[5]のいずれかに記載のラップフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷凍庫内のような低温(例えば、-18℃)で保存しても、冷凍庫から取り出してすぐにラップフィルムをはがした際に裂けトラブルが生じにくいラップフィルムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のラップフィルムの製造工程の一例の概略図である。
【
図2】本発明のラップフィルムの利用形態の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
なお、本実施形態において、「TD方向」とは、製膜ラインの樹脂の幅方向をいい、ラップフィルムとしたときに、巻回体からラップフィルムを引き出す方向に垂直な方向をいう。また、「MD方向」とは、製膜ラインの樹脂の流れ方向をいい、ラップフィルムとしたときに、巻回体からラップフィルムを引き出す方向をいう。
【0015】
〔ラップフィルム〕
本実施形態のラップフィルムは、塩化ビニリデン系樹脂を含有し、-18℃でのMD方向の引張弾性率をXとし、23℃でのMD方向の引張弾性率をYとしたとき、0.8<X/Y<5.0である。本実施形態のラップフィルムは、このような特徴を有することにより、冷凍庫内のような低温(例えば、-18℃)で保存しても、冷凍庫から取り出した直後から常温(例えば、23℃)での使用感とそん色なく、皿などからラップをはがすことができる。同様の観点から、0.8<X/Y<3.0であることが好ましく、0.8<X/Y<1.5であることがより好ましい。0.8<X/Yであることで、皿などからラップをはがした際に、必要以上に伸びることなくラップをはがすことができる。X/Y<5.0であることで、ラップをはがした際の裂けトラブルを軽減することができる。
【0016】
X/Yを前記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニリデン系樹脂の組成、添加剤組成、フィルムの延伸倍率、及び延伸速度等によって調整できる。具体的には、特に限定されないが、例えば、後述するエポキシ化植物油を添加すると、23℃でのMD方向の引張弾性率Yに比べて-18℃でのMD方向の引張弾性率Xが大きくなる傾向にあり、エポキシ化植物油に代えて後述するエポキシ化脂肪酸エステル系化合物を添加すると、23℃でのMD方向の引張弾性率Yに比べて-18℃でのMD方向の引張弾性率Xが大きくならず、そのまま維持される傾向にある。
【0017】
(塩化ビニリデン系樹脂)
塩化ビニリデン系樹脂としては、塩化ビニリデン繰り返し単位(以下「単量体」とも記す)を含むものであれば特に限定されず、例えば、塩化ビニリデン単量体と共重合可能な単量体を含む塩化ビニリデン共重合体が挙げられる。
【0018】
塩化ビニリデン単量体と共重合可能な単量体としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル;メチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル;メチルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート等のメタアクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸;アクリロニトリル;酢酸ビニル等が挙げられる。これら単量体は一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。このなかでも、塩化ビニルがより好ましい。
【0019】
塩化ビニリデン共重合体において、塩化ビニリデン単量体の割合は、特に限定されないが、例えば、72mol%~93mol%であることが好ましく、81mol%~90mol%であることがより好ましい。塩化ビニリデン単量体の割合が72mol%以上であることにより、塩化ビニリデン系樹脂のガラス転移温度が低く、ラップフィルムが軟らかくなる傾向にある。これにより、例えば、冬場等の低温環境下での使用時においてもラップフィルムの裂けを低減できる。一方、塩化ビニリデン単量体の割合が93mol%以下であることにより、結晶性の大幅な上昇を抑制し、フィルム延伸時の成形加工性の悪化が抑制される傾向にある。
また、塩化ビニリデン共重合体において、塩化ビニリデン単量体と共重合可能な単量体の割合は、特に限定されないが、例えば、7mol%~28mol%であることが好ましく、10mol%~19mol%であることがより好ましい。
【0020】
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50,000~250,000であり、より好ましくは60,000~230,000であり、さらに好ましくは80,000~200,000である。塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であることにより、ラップフィルムの機械強度がより向上する傾向にある。重量平均分子量が上記範囲内である塩化ビニリデン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、塩化ビニリデン単量体と塩化ビニル単量体との仕込み比率や、重合開始剤の量、又は重合温度を制御することにより得ることができる。なお、本実施形態において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー法(GPC法)により、標準ポリスチレン検量線を用いて求めることができる。
【0021】
本実施形態のラップフィルムにおいて、塩化ビニリデン系樹脂の含有量は、81質量%~95.5質量%であることが好ましく、85質量%~94質量%であることがより好ましく、90質量%~94質量%であることがさらに好ましい。本実施形態のラップフィルムにおいて、塩化ビニリデン系樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、添加剤等による可塑化効果によって、溶融押し出しのシェアが小さくなるため異物の発生がより抑制される傾向にある。また、塩化ビニリデン系樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、フィルムが伸びやすくなるのを抑制でき、フィルムのカット性が一層向上する傾向にある。
なお、ラップフィルムから各成分の含有量を測定する方法は分析対象物によって異なる。例えば、塩化ビニリデン系樹脂の含有量は、試料0.5gをTHF(テトラヒドロフラン)10mLに溶解し、メタノール約30mLを加えて樹脂分を析出した後、遠心分離にて析出物を分離、乾燥し、重量測定して得ることができる。
【0022】
(添加剤)
本実施形態のラップフィルムは、塩化ビニリデン系樹脂以外に添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ化脂肪酸エステル系化合物、エポキシ化植物油、クエン酸エステル、二塩基酸エステル、及びアセチル化脂肪酸グリセライドが挙げられる。
【0023】
本実施形態のラップフィルムにおいて、エポキシ化脂肪酸エステル系化合物、エポキシ化植物油、クエン酸エステル、二塩基酸エステル、及びアセチル化脂肪酸グリセライドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の合計含有量は、ラップフィルムの総量に対して、好ましくは0質量%~10質量%であり、より好ましくは3質量%~7質量%であり、さらに好ましくは3.5質量%~6.5質量%である。本実施形態のラップフィルムにおいて、上記化合物の合計含有量が前記下限値以上であることにより、ラップフィルムを製造する際、溶融押し出しのシェアを小さくすることができ、原料の組成物がスムーズに押出機を通過することにより、塩化ビニリデン系樹脂の熱分解が抑制される。そのため、得られるラップフィルムは、切れ傷の発生頻度が少なくなり、裂けトラブルが抑制される。また、上記化合物の合計含有量が前記上限値以下であることにより、ラップフィルムの弾性率が適度に大きくなる。そのため、ラップフィルムのカット性がより向上する。
【0024】
(エポキシ化脂肪酸エステル系化合物)
本実施形態のラップフィルムは、エポキシ化脂肪酸エステル系化合物を含有してもよい。
これまで、エポキシ化植物油が、塩化ビニリデン系樹脂押出加工用安定剤として広く知られ、フィルムの色調変化の抑制の点から塩化ビニリデン系樹脂を用いたフィルム中に添加することが行われている。しかしこれらのエポキシ化植物油は、分子量が大きいため、低温下においては、固化が進む。そのため、ラップフィルムにエポキシ化植物油を添加すると、その添加量によっては低温でのラップフィルムの弾性率を大幅に大きくする場合がある。
【0025】
本実施形態のラップフィルムは、エポキシ化植物油に代えてエポキシ化脂肪酸エステル系化合物を含有することで、フィルムの色調変化を抑制しつつ、低温でのラップフィルムの弾性率を上昇させることなく、引き裂きトラブルを抑制できる傾向にある。この理由は明確でないが、本発明者は以下のとおり推定している。すなわち、エポキシ化脂肪酸エステル系化合物の分子量が、一般に用いられるエポキシ化植物油と比べて小さいため、低温でも固化せず、低温でのラップフィルムの弾性率を上昇させないと考えられる。また、特に脂環式エポキシ化脂肪酸エステル系化合物は、塩化ビニリデン系樹脂との相溶性に優れ、低温でも固化せず、低温でのラップフィルムの弾性率を上昇させないと考えられる。
【0026】
エポキシ化脂肪酸エステル系化合物としては特に限定されないが、例えば、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル、エポキシ化脂肪酸イソブチル、3-(2-キセノキシ)-1,2-エポキシプロパン、エポキシ化処理されたトール油脂肪酸の2-エチルヘキシルエステル、エポキシ化処理されたブタジエンを主な構成成分とする重合体、エポキシステアリン酸アルキルなどが挙げられる。
【0027】
また、エポキシ化脂肪酸エステル系化合物のなかでも、脂環式エポキシ化脂肪酸エステル系化合物が上記理由のためより好ましい。脂環式エポキシ化脂肪酸エステル系化合物としては特に限定されないが、例えば、分子内にエポキシ化シクロアルカン構造を少なくとも1個有する化合物であることが好ましく、より具体的には、分子内にエポキシ化シクロヘキサン構造を有する化合物又は分子内にエポキシ化シクロペンタン構造を有する化合物が好ましく挙げられる。このような化合物は、特に限定されないが、例えば、少なくとも1個のシクロヘキサン又はシクロペンタン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる。これらの中で、分子内にエポキシ化シクロアルカン構造を1個有する化合物であることがより好ましい。分子内にエポキシ化シクロアルカン構造を1個有する化合物である場合、低温でのラップフィルムの弾性率が上昇することを抑制する効果が高く好ましい。同様の観点から、脂環式エポキシ化脂肪酸エステル系化合物は、分子内にエポキシ化シクロヘキサン構造を1個有する化合物であることがさらに好ましい。
【0028】
分子内にエポキシ化シクロヘキサン構造を有する化合物としては特に限定されないが、例えば、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル))、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-n-オクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ビス(9、10-エポキシステアリル)(4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ビス(9,10-エポキシステアリル))、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-アリル、エポキシヘキサヒドロフタル酸無水物、エポキシビニルシクロヘキサン、4,5-エポキシシクロヘキサン1,2-ジカルボン酸ジオクチル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0029】
本実施形態のラップフィルムにおいて、前記エポキシ化脂肪酸エステル系化合物の含有量は、ラップフィルムの総量に対して、好ましくは0.1質量%~7.0質量%であり、より好ましくは0.1質量%~5.0質量%であり、より好ましくは0.1質量%~2.0質量%である。本実施形態のラップフィルムにおいて、エポキシ化脂肪酸エステル系化合物の含有量が0.1質量%以上であることにより、色調変化を抑制できる傾向にある。また、本実施形態のラップフィルムにおいて、エポキシ化脂肪酸エステル系化合物の含有量が7.0質量%以下であることにより、低温でのラップフィルムの弾性率を上昇させることなく、これにより引き裂きトラブルを抑制できる傾向にある。
なお、本実施形態において、エポキシ化脂肪酸エステル系化合物の含有量の測定方法は例えばプロトンNMRにより測定することができる。
【0030】
(エポキシ化植物油)
本実施形態のラップフィルムは、前記エポキシ化脂肪酸エステル系化合物の他に、本発明の効果を阻害させない範囲で、エポキシ化植物油を含有してもよい。エポキシ化植物油としては、特に限定されないが、一般的に、食用油脂をエポキシ化して製造されるものが挙げられる。具体的には、エポキシ化植物油は、特に限定されないが、例えば、エポキシ化大豆油(以下「ESO」とも記す)、エポキシ化アマニ油が挙げられる。これらのなかでも、エポキシ化大豆油が好ましい。このようなエポキシ化植物油を用いることにより、ラップフィルムの木製容器及びプラスチック製容器に対する密着性がより向上する傾向にある。
【0031】
本実施形態のラップフィルムは、エポキシ化脂肪酸エステル系化合物、エポキシ化植物油のほかに、クエン酸エステル、二塩基酸エステル、及びアセチル化脂肪酸グリセライドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んでもよい。なお、クエン酸エステルが取り扱い性の点から好ましく、特にアセチルクエン酸トリブチルが好ましい。
【0032】
(クエン酸エステル)
クエン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル(以下「ATBC」とも記す)、アセチルクエン酸トリ-n-(2-エチルヘキシル)などが挙げられる。
【0033】
これらのなかでも、アセチルクエン酸トリブチルが好ましい。本実施形態のラップフィルムは、アセチル化クエン酸トリブチルを含有することにより、塩化ビニリデン系樹脂が可塑化され、成形加工性がより向上する傾向にあり、また、切れ傷の発生頻度が少なくなり、裂けトラブルが抑制され、かつ、カット性もより向上する傾向にある。
【0034】
本実施形態のラップフィルムにおいて、クエン酸エステルの含有量は、ラップフィルムの総量に対して、好ましくは0質量%~8質量%であり、より好ましくは0質量%~7質量%であり、さらに好ましくは0質量%~6.5質量%である。本実施形態のラップフィルムにおいて、クエン酸エステルの含有量が上記範囲内であることにより、成形加工性がより向上する傾向にあり、また、切れ傷の発生頻度が少なくなり、裂けトラブルが抑制され、かつ、カット性もより向上する傾向にある。なお、ラップフィルムから各成分の含有量を測定する方法は分析対象物によって異なる。本実施形態において、クエン酸エステルの含有量は、アセトン等の有機溶媒を用いて、抽出溶媒の沸点より5℃~10℃低い温度にてラップフィルムから添加剤を抽出し、ガスクロマトグラフィー分析して得ることができる。
【0035】
(二塩基酸エステル)
二塩基酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ-n-ヘキシル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸エステル;アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、アゼライン酸オクチル等のアゼライン酸エステル;セバシン酸ジブチル(以下「DBS」とも記す)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等のセバシン酸エステル;フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステルが挙げられる。
【0036】
これらのなかでも、脂肪族二塩基酸エステルが好ましく、セバシン酸ジブチルがより好ましい。本実施形態のラップフィルムは、このような二塩基酸エステルを含有することにより、塩化ビニリデン系樹脂が可塑化され、成形加工性がより向上する傾向にあり、また、切れ傷の発生頻度が少なくなり、裂けトラブルが抑制され、かつ、カット性もより向上する傾向にある。
【0037】
本実施形態のラップフィルムにおいて、二塩基酸エステルの含有量は、ラップフィルムの総量に対して、好ましくは0質量%~8質量%であり、より好ましくは0質量%~7質量%であり、さらに好ましくは0質量%~6.5質量%である。本実施形態のラップフィルムは、二塩基酸エステルの含有量が上記範囲内であることにより、成形加工性がより向上する傾向にあり、また、切れ傷の発生頻度が少なくなり、裂けトラブルが抑制され、かつ、カット性もより向上する傾向にある。なお、ラップフィルムから各成分の含有量を測定する方法は分析対象物によって異なる。本実施形態において、二塩基酸エステルの含有量は、アセトン等の有機溶媒を用いて、抽出溶媒の沸点より5~10℃低い温度にてラップフィルムから添加剤を抽出し、ガスクロマトグラフィー分析して得ることができる。
【0038】
(アセチル化脂肪酸グリセライド)
アセチル化脂肪酸グリセライドとしては、特に制限されないが、例えば、アセチル化カプリル酸グリセライド、アセチル化カプリン酸グリセライド、アセチル化ラウリン酸グリセライド、アセチル化ミリスチン酸グリセライド、アセチル化パーム核油グリセライド、アセチル化ヤシ油グリセライド、アセチル化ヒマシ油グリセライド、アセチル化硬化ヒマシ油グリセライドが挙げられる。
【0039】
上記アセチル化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸のアセチル化モノグリセライド、脂肪酸のアセチル化ジグリセライド、脂肪酸のアセチル化トリグリセライドのいずれであってもよい。例えば、上記アセチル化ラウリン酸グリセライドには、ラウリン酸のアセチル化モノグリセライド、ラウリン酸のアセチル化ジグリセライド(DALG:ジアセチルラウロイルグリセロール、以下、単に「DALG」とも記す)、ラウリン酸のアセチル化トリグリセライドが含まれる。このなかでも、アセチル化ラウリン酸グリセライドが好ましく、ラウリン酸のアセチル化ジグリセライドがより好ましい。本実施形態のラップフィルムは、このようなアセチル化脂肪酸グリセライドをエポキシ化脂肪酸エステル系化合物と併用することにより、切れ傷の発生頻度が少なくなり、裂けトラブルが抑制され、かつ、カット性もより向上する傾向にある。
【0040】
本実施形態のラップフィルムにおいて、アセチル化脂肪酸グリセライドの含有量は、ラップフィルムの総量に対して、好ましくは0質量%~8質量%であり、より好ましくは0質量%~7質量%であり、さらに好ましくは0質量%~6.5質量%である。本実施形態のラップフィルムは、アセチル化脂肪酸グリセライドの含有量が上記範囲内であることにより、成形加工性がより向上する傾向にあり、また、切れ傷の発生頻度が少なくなり、裂けトラブルが抑制され、かつ、カット性もより向上する傾向にある。なお、ラップフィルムから各成分の含有量を測定する方法は分析対象物によって異なる。本実施形態において、アセチル化脂肪酸グリセライドの含有量は、アセトン等の有機溶媒を用いて、抽出溶媒の沸点より5~10℃低い温度にてラップフィルムから添加剤を抽出し、ガスクロマトグラフィー分析して得ることができる。
【0041】
(その他の添加剤)
本実施形態のラップフィルムは、上記以外の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、特に限定されないが、例えば、上記以外の可塑剤、上記以外の安定剤、耐候性向上剤、染料又は顔料等の着色剤、防曇剤、抗菌剤、滑剤、核剤、ポリエステル等のオリゴマー、MBS(メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体)等のポリマー等が挙げられる。
【0042】
上記以外の可塑剤としては、特に限定されないが、具体的には、グリセリン、グリセリンエステル、ワックス、流動パラフィン、及びリン酸エステル等が挙げられる。可塑剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0043】
上記以外の安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、2,5-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4’-チオビス-(6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)ブロピオネート、及び4,4’-チオビス-(6-t-ブチルフェノール)等の酸化防止剤;ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、オレイン酸塩、リシノール酸塩、2-エチル-ヘキシル酸塩、イソデカン酸塩、ネオデカン酸塩、及び安息香酸カルシウム等の熱安定剤が挙げられる。安定剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0044】
耐候性向上剤としては、特に限定されないが、具体的には、エチレン-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾリトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、及び2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。耐候性向上剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0045】
染料又は顔料等の着色剤としては、特に限定されないが、具体的には、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、及びベンガラ等が挙げられる。着色剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0046】
防曇剤としては、特に限定されないが、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。防曇剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0047】
抗菌剤としては、特に限定されないが、具体的には、銀系無機抗菌剤等が挙げられる。抗菌剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0048】
滑剤としては、特に限定されないが、具体的には、エチレンビスステロアミド、ブチルステアレート、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル等の脂肪酸炭化水素系滑剤、高級脂肪酸滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、及び脂肪酸エステル滑剤等が挙げられる。滑剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0049】
核剤としては、特に限定されないが、具体的には、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。核剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0050】
本実施形態のラップフィルムにおいて、その他の添加剤の含有量は、ラップフィルムの総量に対して、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。また、その他の添加剤の含有量の下限は、特に限定されないが、ラップフィルムの総量に対して、0質量%以上である。
【0051】
(23℃でのMD方向の引張弾性率)
本実施形態のラップフィルムは、23℃でのMD方向の引張弾性率が、好ましくは250MPa~600MPaであり、より好ましくは350MPa~500MPaであり、さらに好ましくは350MPa~470MPaである。本実施形態のラップフィルムは、23℃でのMD方向の引張弾性率が250MPa以上であることにより、切断刃でフィルムをカットするために力を加える際、フィルムのMD方向への延びを抑制でき、切断刃がフィルムに食い込みやすくでき、カット性が向上する傾向にある。一方、本実施形態のラップフィルムは、23℃でのMD方向の引張弾性率が600MPa以下であることにより、フィルムが軟らかく、切断刃の形状に沿ってフィルムをきれいにカットでき、切断端面に多数の裂け目が発生するのを抑制できる傾向にある。その結果、巻回体からフィルムを引き出す際、及び化粧箱の中に巻き戻ったフィルム端部を摘み出す際、切断端面からフィルムが裂けるトラブルが発生するのを抑制できる傾向にある。
【0052】
23℃でのラップフィルムのMD方向の引張弾性率は、特に限定されないが、例えば、塩化ビニリデン系樹脂の組成、添加剤組成、フィルムの延伸倍率、及び延伸速度等によって調整できる。具体的には、特に限定されないが、例えば、23℃でのラップフィルムのMD方向の引張弾性率は、延伸倍率を高くしたり、添加剤量を低減することによって、向上する傾向にあり、延伸倍率を低くしたり、添加剤量を増加することによって、低下する傾向にある。なお、本実施形態において、引張弾性率は、後述の実施例に記載の方法によって測定される。
【0053】
(-18℃でのMD方向の引張弾性率)
本実施形態のラップフィルムは、-18℃でのMD方向の引張弾性率は、好ましくは200MPa~2000MPaであり、より好ましくは250MPa~1000MPaであり、さらに好ましくは350MPa~700MPaである。本実施形態のラップフィルムは、-18℃でのMD方向の引張弾性率が200MPa以上であることにより、ラップが適度な硬さを持つために、-18℃の冷凍庫から出した直後のラップを容器からはがす際に、ラップが伸びることなく容易にはがすことができる。一方、本実施形態のラップフィルムは、-18℃でのMD方向の引張弾性率が2000MPa以下であることにより、フィルムが軟らかく、-18℃の冷凍庫から出した直後のラップを容器からはがす際に、ラップが裂けるトラブルを低減させることができる。その結果、-18℃の冷凍庫から取り出した直後であっても、常温での使用感と遜色のなく、ラップフィルムを容器からはがすことができる。
【0054】
-18℃でのラップフィルムのMD方向の引張弾性率は、特に限定されないが、例えば、塩化ビニリデン系樹脂の組成、添加剤組成、フィルムの延伸倍率、及び延伸速度等によって調整できる。具体的には、特に限定されないが、例えば、-18℃でのラップフィルムのMD方向の引張弾性率は、延伸倍率を高くしたり、添加剤量を低減することによって、向上する傾向にあり、延伸倍率を低くしたり、添加剤量を増加することによって、低下する傾向にある。なお、本実施形態において、引張弾性率は、後述の実施例に記載の方法によって測定される。
【0055】
(ラップフィルムの厚み)
本実施形態のラップフィルムの厚みは、好ましくは6μm~18μmであり、より好ましくは9μm~12μmである。ラップフィルムの厚みが上記範囲内であることにより、フィルム切れのトラブルが抑制され、カット性がより向上し、密着性もより向上する傾向にある。
【0056】
より具体的には、ラップフィルムの厚みが6μm以上であることにより、ラップフィルムのTD方向及びMD方向における引裂強度がより向上し、使用時のフィルム切れがより抑制される傾向にある。また、ラップフィルムの厚みが6μm以上であることにより、引裂強度の著しい低下が少ない傾向にある。そのため、巻回体からラップフィルムを引き出す際、及び化粧箱の中に巻き戻ったフィルム端部を摘み出す際において、化粧箱付帯の切断刃でカットされた端部からラップフィルムが裂けるトラブルがより抑制される。
【0057】
一方、ラップフィルムの厚みが18μm以下であることにより、化粧箱付帯の切断刃でラップフィルムをカットするのに必要な力を低減することができ、カット性がより向上する傾向にある。また、ラップフィルムの厚みが18μm以下であることにより、ラップフィルムが容器形状にフィットしやすく、容器への密着性がより向上する傾向にある。
【0058】
〔ラップフィルムの製造方法〕
本実施形態のラップフィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、塩化ビニリデン系樹脂を溶融押し出しして、フィルム状にする工程と、得られたフィルムをMD方向及びTD方向に延伸する工程と、を有する方法が挙げられる。以下、ラップフィルムの製造方法を例示する。
【0059】
(混合工程)
図1に、ラップフィルムの製造工程の一例の概略図を示す。まず、混合機により、塩化ビニリデン系樹脂と、各種添加剤を混合して組成物を得る。混合機は、特に限定されないが、例えば、リボンブレンダー又はヘンシェルミキサー等を用いることができる。得られた組成物は、1時間~30時間程度熟成させて次の工程に用いることが好ましい。
【0060】
(溶融押出工程)
次いで、得られた組成物を押出機1により溶融し、ダイ2のダイ口3から管状のフィルムを押出し、ソック4(パイルとも呼ぶ)を形成する。
【0061】
(冷却工程)
ソック4の内側にソック液5を注入し、ソック4の外側は冷水槽6の冷水に接触させる。これにより、ソック4は、内側と外側の両方から冷却され、ソック4を構成するフィルムは固化する。固化したソック4は、第1ピンチロール7により折り畳まれ、パリソン8を成形する。
【0062】
(延伸工程)
続いて、パリソン8の内側にエアを注入することにより、パリソン8を開口し、環状のフィルムを形成する。このとき、ソック4の内面に当たる部分に塗布されたソック液5はパリソン8の開口剤としての効果を発揮する。次いで、パリソン8は、開口した状態で、温水により延伸に適した温度まで再加熱される。パリソン8の外側に付着した温水は、第2ピンチロール9にて搾り取られる。
【0063】
上記のようにして適温まで加熱されたパリソン8の内側にエアを注入してバブル10を成形する。このエアが内側からパリソンを押し広げることで、フィルムが延伸され、延伸フィルムが得られる。主にTD方向のフィルムの延伸は、エアの量により行われ、MD方向のフィルムの延伸は、第2ピンチロール9と第3ピンチロール11等を用いてフィルムの流れ方向に張力を掛けることにより行われる。
【0064】
第1ピンチロール7から第3ピンチロール11までの工程を延伸工程という。本実施形態の延伸工程におけるMD方向及びTD方向の延伸倍率は、各々独立して、好ましくは4倍~6倍であり、より好ましくは4.5倍~5.5倍である。ここで、MD方向の延伸倍率は、パリソン8をMD方向に伸ばした延伸比をいい、例えば、
図1においては、第1ピンチロール7の回転速度に対する第3ピンチロール11の回転速度の比によって算出することができる。TD方向の延伸倍率は、パリソン8をTD方向に伸ばした延伸比をいい、例えば、
図1においては、パリソン8の幅の長さに対するダブルプライフィルム12の幅の長さの比によって算出することができる。MD方向の延伸倍率は、例えば、第1ピンチロール7と第3ピンチロール11の回転速度比により調整することができ、TD方向の延伸倍率は、例えば、パリソン8の延伸温度やバブル10の大きさで調整することができる。
【0065】
また、本実施形態に用いる延伸工程におけるMD方向の延伸速度は、好ましくは0.09倍/秒~0.12倍/秒である。MD方向の平均延伸速度は、パリソンが第1ピンチロール7と第3ピンチロール11の間を通過する時間に対するMD方向への延伸倍率をいい、例えば、
図1においては、第1ピンチロール7の回転速度、第3ピンチロール11の回転速度、及びパリソン8が第1ピンチロール7と第3ピンチロール11間を通過するのに要する時間によって算出することができる。MD方向の延伸速度は、例えば、第1ピンチロール7や第3ピンチロール11の回転速度、又は、第1ピンチロール7と第3ピンチロール11の間の距離により、調整することができる。
【0066】
さらに、本実施形態に用いる延伸工程におけるTD方向の延伸速度は、好ましくは3.1倍/秒~4.0倍/秒である。TD方向の平均延伸速度は、パリソン8がバブル10まで膨らむのに要する時間に対するTD方向への延伸倍率をいい、例えば、
図1においては、パリソン8及びバブル10の静止画像を利用して測定した延伸長と第3ピンチロール11の回転速度から算出したTD方向の延伸に要する時間と、TD方向の延伸倍率から算出できる。TD方向の延伸速度は、例えば、第3ピンチロール11の回転速度により調整することができる。
【0067】
延伸時の樹脂温度は、特に限定されないが、好ましくは30℃~50℃である。
【0068】
上記延伸工程後、延伸フィルムは、第3ピンチロール11で折り畳まれ、ダブルプライフィルム12となる。ダブルプライフィルム12は、巻き取りロール13にて巻き取られる。
【0069】
(緩和工程)
本実施形態のラップフィルムの製造方法においては、延伸直後のラップフィルムを緩和する緩和工程を有することが好ましい。ラップフィルムの製造方法において比較的一般に行われる緩和方法は、延伸後に赤外ヒーター等の熱を利用してフィルムを緩和させるものである。しかしながら、本実施形態においては、この緩和工程に代えて、第3ピンチロール11より巻き取りロール13の回転速度を遅くすることで、延伸フィルムを緩和させること方法を用いることが好ましい。これは、本実施形態において、従来の熱を利用した緩和方法を利用した場合、熱により微結晶の形成・成長が起こり、微結晶を起点とするフィルムの裂けの原因になるためである。
【0070】
第3ピンチロール11と巻き取りロール13を用いた緩和工程における緩和比率は、好ましくは7%~15%であり、より好ましくは9%~13%である。緩和比率が15%以下であることにより、第3ピンチロール11と巻き取りロール13間でフィルムの弛みの発生により、シワの発生をより抑制できる傾向にある。また、緩和比率が7%以上であることにより、ラップフィルムを十分に緩和させることができ、高温に晒された場合であっても、分子鎖の再配列が発生するのを抑制し、裂けトラブルを低減できる傾向にある。ここで、「緩和比率」とは、第3ピンチロール11と巻き取りロール13との間でダブルプライフィルム12を収縮させた比率をいい、例えば
図1の場合、第3ピンチロール11の回転速度に対する巻き取りロール13の比率を利用して算出できる。
【0071】
また、第3ピンチロール11と巻き取りロール13とを用いた緩和工程の雰囲気温度は、好ましくは25℃~35℃である。雰囲気温度が上記範囲内であることにより、微結晶の形成・成長が抑制され、微結晶の形成・成長を原因とする裂けトラブルを抑制する傾向にある。
【0072】
(スリット工程)
上記のようにして巻き取られたラップフィルムは、スリットされて、1枚のラップフィルムになるように剥がしながら巻き取られ、一時的に1日~3日間原反の状態で保管される。最終的には原反から紙管に巻き返され、化粧箱に詰められることで、化粧箱に収納されたラップフィルム巻回体が得られる。
【0073】
(保管工程)
本実施形態のラップフィルムの製造方法においては、ラップフィルムをスリットした後、原反の状態で保管する保管工程を行ってもよい。保管温度は、好ましくは19℃以下であり、より好ましくは5℃~19℃であり、さらに好ましくは5℃~15℃である。また、保管時間は、好ましくは20時間~50時間であり、より好ましくは24時間~40時間である。
【0074】
保管の際の雰囲気温度により、フィルム裂けトラブル増加を誘発する微結晶の形成・成長を抑制することができる。一般に、原反の保管場所は、ラップフィルムの製造工程に隣接していたり、温調管理されていたりしない等のため、比較的高温下であることが多い。
【0075】
これに対して、スリット原反保管時の雰囲気温度を19℃以下とすることにより、分子鎖の再配列によるフィルムの物理劣化を抑制できる傾向にある。これにより、巻回体からラップフィルムを引き出す際や、化粧箱の中に巻き戻ったフィルム端部を摘み出す際において、化粧箱付帯の切断刃でカットした端部からラップフィルムが裂けやすくなるのを抑制できる傾向にある。
【0076】
また、スリット原反保管時の雰囲気温度が5℃以上であることにより、ラップフィルムを十分に緩和し、その後の流通・保管時に19℃以上に晒された場合、分子鎖の再配列が起こりにくくなる傾向にある。
【0077】
そのため、スリット原反を上記保管条件ですることが好ましく、これにより、微結晶の形成・成長を抑制しつつ、非晶部の分子鎖を配向緩和させたフィルムが得られる。このように、原反保管時に分子鎖の配向を緩和させることにより、フィルムの流通及び保管時に高温下に晒されても微結晶が形成・成長しにくくなり、裂けトラブルを抑制することができる。
【0078】
スリット原反は、保管後、特に限定されないが、例えば紙管等に巻き返され、巻回体16として、
図2に示すようなフィルム切断刃15を備える化粧箱14収納される。
図2に例示するように、ラップフィルム17は、使用時に引き出されて使用される。
【実施例0079】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0080】
[ラップフィルムの厚み]
ダイアルゲージ(テクロック社製)を利用し、23℃、50%RHの雰囲気中でラップフィルムの厚みの測定を行った。
【0081】
[引張弾性率]
23℃でのラップフィルムの引張弾性率測定はオートグラフAG-IS(島津製作所製)を使用し、23℃、50%RHの雰囲気中にて評価した。常温での引張弾性率を再現するために、測定前にラップフィルムのサンプルを3時間23℃、RH50%に保管し、その後、引張弾性率の測定を行った。5mm/分の引張速度、チャック間距離100mm、フィルム幅10mmの条件で2%伸長時の荷重を測定し、測定サンプルの断面積で割り返してから、50倍にして引張弾性率を測定した。
-18℃でのラップフィルムの引張弾性率測定はオートグラフAG-IS(島津製作所製)及び恒温槽ThearmostaticChamber TCR1-200SP(島津製作所製)を使用した。ラップフィルムのサンプルを恒温槽内にチャッキング後、3時間-18℃に保管し、その後、引張弾性率の測定を行った。5mm/分の引張速度、チャック間距離100mm、フィルム幅10mmの条件で2%伸長時の荷重を測定し、測定サンプルの断面積で割り返してから、50倍にして引張弾性率を測定した。
測定の際には、試験機の軸にラップフィルムのサンプル(試験片)のMD方向が一致するように、つかみ具に取り付けた。ラップフィルムのサンプル(試験片)は、滑りを防ぐために、かつ、試験中につかみ部分がずれないように、つかみ具で均等にしっかりと締めた。また、つかみ具間の圧力によって、ラップフィルムのサンプル(試験片)の割れ、及び、圧延が起きてはならない。また、測定結果は有効数字を2桁として、3桁目を四捨五入した。
【0082】
[低温での密着性評価]
冷凍庫内でのラップフィルムの密着性の評価をするために、以下評価を行った。
作成したラップフィルムを220mm×220mm四方にカットし、米あぶらねんど(クツワ社、2.5×7.5×15cm)を2分割したもの(2.5×7.5×7.5cm)をラップフィルムの中央に置き、上包みを折るように、巻き三つ折りをしてから上端・下端を二つ折りにして包んだものをサンプルとした。このサンプルを50個作成し、24時間、-18℃の冷凍庫で保管した。その際に、折り返した上端・下端の部分が天面になるように、また、サンプルの上に別のサンプルを載せたり、重ねたりしないよう注意して庫内に設置した。
24時間後、サンプルを取り出し、最後に折り返した折り返し部分のフィルム端部のねんど天面からの垂直距離を測定し、以下の基準によりラップフィルムの密着性を評価した。
[評価基準]
◎:ねんど天面からフィルム端部の距離が15mm以上のものが10個以下
○:ねんど天面からフィルム端部の距離が15mm以上のものが11個以上20個以下
△:ねんど天面からフィルム端部の距離が15mm以上のものが21個以上30個以下
×:ねんど天面からフィルム端部の距離が15mm以上のものが31個以上
【0083】
[裂けトラブル率]
常温及び冷凍庫内でのラップフィルムの裂けトラブル率の評価をするために、以下評価を行った。
作成したラップフィルムを220mm×220mm四方にカットし、丸皿(直径12cm)に張り付けた。このサンプルを100個作成し、うち50個は24時間、23℃、50%RHに静置した。残りの50個は-18℃の冷凍庫で24時間保管した。皿の上に別の皿を載せないよう注意して庫内に設置した。
24時間後、皿を取り出し、ただちにフィルムをはがして、以下の基準により常温及び低温でのラップフィルムの裂けトラブルを評価した。
[評価基準]
◎:ラップフィルムの裂けが発生する確率が10%以下
○:ラップフィルムの裂けが発生する確率が10%超20%以下
△:ラップフィルムの裂けが発生する確率が20%超30%以下
×:ラップフィルムの裂けが発生する確率が30%超
【0084】
[実施例1]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.4質量部、アセチルクエン酸トリブチル(以下「ATBC」とも記す、田岡化学工業(株)製)5.3質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(以下「添加剤A」とも記す、商品名:サンソサイザーE-PS、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
【0085】
得られた組成物を溶融押出機に供給して溶融し、押出機の先端に取り付けられた環状ダイから溶融押出してソックを形成した。この際、環状ダイのスリット出口における溶融樹脂温度が170℃になるように押出機の加熱条件を調節し、環状に10kg/時間の押出速度で押出した。
【0086】
これをソック液と冷水槽で冷却した後、パリソンを開口してバブルを形成し、インフレーション延伸を行った。この際、MD方向は平均延伸速度0.12倍/秒で4.1倍に延伸し、TD方向は平均延伸速度3.5倍/秒で5.8倍に延伸して、筒状フィルム(バブル)を形成した。
【0087】
得られた筒状フィルムをニップして扁平に折り畳んだ後、ピンチロールと巻き取りロールの速度比の制御によって、MD方向にフィルムを10%緩和させ、折幅280mmの2枚重ねのフィルムを巻取速度18m/分にて巻き取った。このフィルムを、220mmの幅にスリットし、1枚のフィルムに剥がしながら外径92mmの紙管に巻き直した。その後、17℃で24時間保管したのち、外径36mm、長さ230mmの紙管に20m巻き取ることで、ラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0088】
[実施例2]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)92.8質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)5.3質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(商品名:サンソサイザーE-PS、新日本理化(株)製)1.9質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0089】
[実施例3]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.4質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)0.7質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(商品名:サンソサイザーE-PS、新日本理化(株)製)5.9質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0090】
[実施例4]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.0質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(商品名:サンソサイザーE-PS、新日本理化(株)製)7.0質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0091】
[実施例5]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.6質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)2.3質量部、ジアセチルラウロイルグリセロール(以下「DALG」とも記す、商品名:PL004、理研ビタミン(株)製)2.8質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(商品名:サンソサイザーE-PS、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0092】
[実施例6]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.4質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)1.3質量部、DALG(商品名:PL004、理研ビタミン(株)製)4.0質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(商品名:サンソサイザーE-PS、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0093】
[実施例7]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)91.7質量部、DALG(PL004、理研ビタミン(株)製)7.0質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(商品名:サンソサイザーE-PS、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0094】
[実施例8]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)90.0質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)7.0質量部、DALG(PL004、理研ビタミン(株)製)1.5質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(商品名:サンソサイザーE-PS、新日本理化(株)製)1.5質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0095】
[実施例9]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.4質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)5.3質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(9,10-エポキシステアリル)(以下「添加剤B」とも記す、商品名:サンソサイザーE-PO、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0096】
[実施例10]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)92.8質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)5.3質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(9,10-エポキシステアリル)(商品名:サンソサイザーE-PO、新日本理化(株)製)1.9質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0097】
[実施例11]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.4質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)0.7質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(9,10-エポキシステアリル)(商品名:サンソサイザーE-PO、新日本理化(株)製)5.9質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0098】
[実施例12]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.0質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(9,10-エポキシステアリル)(商品名:サンソサイザーE-PO、新日本理化(株)製)7.0質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0099】
[実施例13]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)94.9質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)2.3質量部、DALG(PL004、理研ビタミン(株)製)2.8質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(9,10-エポキシステアリル)(商品名:サンソサイザーE-PO、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0100】
[実施例14]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)94.7質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)1.3質量部、DALG(PL004、理研ビタミン(株)製)4.0質量部、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(9,10-エポキシステアリル)(商品名:サンソサイザーE-PO、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0101】
[実施例15]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.6質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)2.3質量部、DALG(PL004、理研ビタミン(株)製)2.8質量部、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル(以下「添加剤C」とも記す、商品名:サンソサイザーE-6000、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0102】
[実施例16]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.4質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)1.3質量部、DALG(PL004、理研ビタミン(株)製)4.0質量部、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル(商品名:サンソサイザーE-6000、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0103】
[実施例17]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)91.7質量部、DALG(商品名:PL004、理研ビタミン(株)製)7.0質量部、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル(商品名:サンソサイザーE-6000、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0104】
[実施例18]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)90.0質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)7.0質量部、DALG(商品名:PL004、理研ビタミン(株)製)1.5質量部、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル(商品名:サンソサイザーE-6000、新日本理化(株)製)1.5質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0105】
[実施例19]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.6質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)2.3質量部、DALG(PL004、理研ビタミン(株)製)2.8質量部、エポキシ化脂肪酸イソブチル(以下「添加剤D」とも記す、商品名:サンソサイザーE-4030、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0106】
[実施例20]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)93.4質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)1.3質量部、DALG(PL004、理研ビタミン(株)製)4.0質量部、エポキシ化脂肪酸イソブチル(商品名:サンソサイザーE-4030、新日本理化(株)製)1.3質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0107】
[実施例21]
ラップフィルムの厚みを8μmとしたこと以外は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0108】
[実施例22]
ラップフィルムの厚みを15μmとしたこと以外は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0109】
[比較例1]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)92.4質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)2.3質量部、DALG(商品名:PL004、理研ビタミン(株)製)2.7質量部、エポキシ化大豆油(以下「ESO」とも記す、商品名「ニューサイザー510R」、日本油脂株式会社製)2.6質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0110】
[比較例2]
重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン単量体の含有量が88mol%、塩化ビニル単量体の含有量が12mol%)79.0質量部、アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製)1.5質量部、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル(商品名:サンソサイザーE-6000、新日本理化(株)製)19.5質量部を、ヘンシェルミキサーにて5分間混合した。
混合後、24時間以上熟成して組成物を得た。
それ以降の押出、成膜、巻き取り工程は[実施例1]と同様の方法にてラップフィルムの巻回体を得た。得られたラップフィルムの巻回体を用いて各評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0111】
【0112】
【0113】
【表3】
添加剤A:4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)
添加剤B:4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2ジカルボン酸ビス(9,10-エポキシステアリル)
添加剤C:エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル
添加剤D:エポキシ化脂肪酸イソブチル
本発明のラップフィルムは、冷凍庫内のような低温(例えば、-18℃)で保存しても、冷凍庫から取り出してすぐにラップフィルムをはがした際に裂けトラブルを生じにくく、食品包装用等の用途として有効に利用可能である。