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特開2022-163728マイクロ分注機構及び自動マイクロ分注方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163728
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】マイクロ分注機構及び自動マイクロ分注方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20221019BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20221019BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20221019BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
G01N21/85 B
G01N1/00 101K
C12M1/00 A
G01N35/10 D
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110380
(22)【出願日】2022-07-08
(62)【分割の表示】P 2017156707の分割
【原出願日】2017-08-15
(31)【優先権主張番号】10 2016 215 240.8
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クリンガー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ラスケ
(57)【要約】
【課題】パラレル多流路システムにおける液滴又は液体ビームの自動化可能な反復放出のための方法及び手段であって、放出された液体の種類及び品質を進行中に自動的にチェックすることができ、場合によっては規定値へと補償することができる方法及び手段を提供すること。
【解決手段】特殊なライトバリアユニットを用いた、分注された液体の光学チェックによる、生物学的検定のための並びに細胞及び組織の培養のための自動的な方法における用途に適した、多流路マイクロ分注機構による少ない液体量の制御された自動的な分注のための方法及び手段。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多流路マイクロ分注機構(20)で断続的に放出された液滴又は液体ビーム(26)を光学チェックするための光学チェック装置(10)であって、
前記マイクロ分注機構(20)の各々の分注流路(22)に割り当てられており、それぞれ前記分注流路(22)の傍で共通の支持体(30)上に直接的に配置されており、それぞれ、
不均質なビームプロファイルを有する光源(42)と、
前記光源(42)の特色のある光ビーム(44)が投射されるセンサー面(48)を有する光センサー(46)と
から成る少なくとも一つのライトバリアユニット(40)を含んでいる装置において、
前記特色のある光ビーム(44)がそれぞれ、放出された前記液滴又は液体ビーム(26)の伝播方向を横切って延びており、チェックすべき前記液滴又は液体ビームより幅広い、装置。
【請求項2】
各々の分注流路(22)にそれぞれ正確に一つのライトバリアユニット(40)が割り当てられている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各々の分注流路(22)にそれぞれ二つのライトバリアユニット(40)が割り当てられており、前記ライトバリアユニット(40)の光ビーム(44)が互いに対して30°~150°の角度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
少なくともそれぞれの前記光センサー(46)に接続され、前記センサー面(48)に当たっている前記特色のある光ビーム(44)の強度を決定するためのプログラムがされた評価ユニット(60)と、
時間的な強度推移を確定するための、又は前記液滴若しくは液体ビーム(26)が通過する時点と、前記出来事の直前若しくは直後の時点との強度差を確定するための、メモリーユニット(62)及び計算ユニット(64)とを、
さらに含んでいる請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
予め決定可能な時間的な強度推移又は強度差の逸脱を信号で知らせるための、信号機構及び制御機構(66)を、
さらに含んでいる請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記マイクロ分注機構(20)のそれぞれの前記分注流路(22)からの液体の放出を制御又は調節するための、前記マイクロ分注機構(20)の調節要素(28)に接続された信号戻り線(68)をさらに含んでいる請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記ライトバリアユニット(40)が、前記支持体(30)上に規則的に離隔しており、且つ格子(二次元アレイ)又は列(一次元アレイ)の形態で配置されており、且つ前記支持体(30)と一緒に統合センサープレートを形成している、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の前記光学チェック装置(10)を含んでいる、液滴又は液体ビーム(26)の制御可能な断続的な放出のための多流路マイクロ分注機構(20)。
【請求項9】
多流路マイクロ分注機構の分注流路での液滴又は液体ビームの放出をチェックするための方法であって、
- 前記分注流路でのそれぞれ単一の液滴又は液体ビームの短期的な放出を誘発するステップと、
- 不均質なビームプロファイルをもつ光ビームにより、それぞれ放出された前記液滴又は液体ビームを照明し、且つ前記液滴又は液体ビームにより前記光ビームが遮られたときに、前記光ビームの幅にわたって積分された強度の減衰を記録するステップと、
- それぞれの記録された、放出に相関する前記強度推移を自動的に評価するステップと、
- それぞれの前記分注流路からの前記液体の放出を調節するため及び/又は誤った分注を信号で知らせるために、前記評価の結果として制御信号又は警戒信号を発信するステップとを含んでいる方法。
【請求項10】
単一の液滴または液体ビームの放出の開始時に、該放出に相関する減衰強度の平均最大振幅が、理想的な分注量を示し、
- 放出に相関する減衰強度が所定の閾値以下に減少すること、
- 放出に相関する減衰強度がないこと、および/または
- 放出に相関する減衰強度の統計的な信号変動が所定の閾値を超えて上昇すること
のいずれの場合も、それぞれの分注流路での不正な分注を示す、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的検定のため並びに細胞及び組織の培養のための自動的な方法における用途に適した、多流路マイクロ分注機構による少ない液体量のチェックされた自動的な分注のための方法及び手段に関する。
【背景技術】
【0002】
自動マイクロ分注ロボットを用いて少ない液体量を自動的に分注することは、それ自体で知られている。このような設備により、液状培地、いわゆる「生体液」、例えば細胞懸濁液、細胞培養培地、作用物質、及び/又はテスト物質が、自動的にターゲット容器又は基質内に分注される。典型的な用途は、生物学的検定並びに自動化された細胞培養及び組織培養である(「単一細胞技術」、「ティッシュエンジニアリング」)。通常、集団検診のため及びハイスループット方法のためのターゲット容器は、たいていはSBSフォーマットでのマルチプル細胞培養容器、いわゆるマイクロタイタープレート又はマルチウェルプレートである。これらは、共通の支持体上に規則的に配置された複数の、たいていは24個又は96個の単一容器(「ウェル」)を有している。既知のマイクロ分注自動機械では、個々のターゲット容器が、ピペッティングロボットを介して連続的に又はその代わりに複数の相並んでいる分注流路からパラレルにアドレッシングされる。各々の分注流路は、マイクロ分注機構での別々に作動可能な針又はノズルによって形成されている。
【0003】
このような多流路マイクロ分注機構の基本的な機能方式は、一定圧力により又は個々の圧力インパルスにより、ノズル、ピペット先端、又は針から、分注すべき液体量を排出することに基づく。これに関しては、それぞれ一つの滴又は液体ビームがノズル先端から離れ落ちる。ピペット、ノズル、又は針は、使用中はたいてい、滴又はビームが垂直に下へ落ちるようにターゲット容器の上で位置決めされている。I-DOTナノ分注技術(「immediate drop on demand technology」、フラウンホーファー生産技術・オートメーション研究所IPA)は、ナノ及びマイクロリットル範囲のボリュームの自動プロセッシング(「リキッドハンドリング」)のためのハイスループット方法である。この場合は、反復的に、直接的に、及び非接触で、例えば96の流路をもつ分注プレートから任意のターゲット基質に、特にその下にあるマイクロタイタープレートに滴を分注する。分注プレートとしては、SBSフォーマットでの例えば96ウェルマイクロタイタープレートを用い、このマイクロタイタープレートは、ウェル底にあるそれぞれ一つの小さな穴を特色とする。この穴がそれぞれ分注ノズルを形成している。穴の直径は、穴内の毛管圧がウェル内の液体の静水圧より高くなる程度に小さい。この穴が閾値弁のように作用する。それぞれのウェル上に気密に装着可能な作動装置(分注ヘッド)により、ウェル内の圧力を短期的に強く上昇させると、液体をノズルから漏出させることができる。例えば8連のパラレル分注ヘッドを用い、一列に相並んでいるウェルから供給物をウェル底によって形成することができ、ただしこれを最高600Hzの繰返し率で反復する。これにより約10nl~100μlのボリューム範囲のスループットを実現することができる。
【0004】
別の技術に基づく多流路マイクロ分注機構(マルチドロップマイクロ分注システム、例えばMultidrop(商標) Combi試薬ディスペンサー、Thermo Scientific社)の場合、相並んでいるパラレルなピペット先端又は中空の分注針が形成されており、これらのピペット先端又は中空の分注針には、それぞれ柔軟な分注チューブを介して供給が行われる。各々の分注チューブは、ステッピングモータを備えた精密な蠕動ポンプと結合しており、蠕動ポンプが分注チューブ内の分注すべき液体を厳密に輸送及び分注する。誘発された分注ステップごとに、例えば0.5μlのボリュームが滴又はビームの形態で放出され、詳しくはトリガー可能に、反復的に、最高20Hzの繰返し率で放出される。有用な分注範囲は0.5μl~約5000μlである。
【0005】
しかしいまや実際の用途では、個々の分注流路、つまりピペット又は針又はノズルに関し、汚染物質に起因して又は損耗若しくは材料欠陥に基づき、分注工程での不均一性及び障害が生じ得ることが分かった。この場合は液滴がきれいに形成されなくなり、滴又は液体ビームが厳密に理想的な方向には、つまり好ましくは垂直には分注ノズルから離れなくなり得る。極端な場合には、一つ以上の誘発された分注が完全に不発であるか、又はその際にターゲット容器にまったく又は完全には当たらなくなる。これは誤った分注になる。このような分注エラーはこれまでは、分注工程の手作業の、したがってただの抜き取り検査にすぎないような観察によって、又はターゲット容器内の分注成果の事後チェックによってしか認識できていない。問題は、自動化されたハイスループット設備ではそのような手作業のチェックが実用的ではないことである。したがってこれまでは、誤った分注をシステム的な不確実性として一緒に考慮しなければならず、これは、培養結果又は試験結果に明らかに影響を及ぼす可能性があり、且つ設備全体の産出量及び効率を下げ、又は生物学的検定の証明力を悪化させる。したがって望ましいのは、液体分注の種類及び品質を完全に監視及び判断することができる全自動システムである。理想的には、液滴又は液体ビームの放出角度の理想的な方向からの逸脱を認識し、よくて定量化するべきである。分注流路での液体放出の一貫した質的及び量的な監視も、運転中の適切な措置を、自動機械の運転者による手作業の介入を必要とせずに可能にするべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基礎となる技術的課題は、パラレル多流路システムにおける液滴又は液体ビームの自動化可能な反復放出のための方法及び手段であって、放出された液体の種類及び品質を進行中に自動的にチェックすることができ、場合によっては規定値へと補償することができる方法及び手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題は、多流路マイクロ分注機構で放出された液滴又は液体ビームを自動的に光学チェックするための請求項1に基づく装置を提供することによって完全に解決される。この装置は本発明によれば、マイクロ分注機構の各々の分注流路、つまり分注針又は分注ノズルに割り当てられたとりわけ少なくとも一つの、好ましくは正確に一つのライトバリアユニットを含んでいる。ライトバリアユニットは本発明によれば、不均質なビームプロファイルをもつ少なくとも一つの、好ましくは正確に一つの光源と、この光源の特色のある光ビームが投射されるセンサー面を有する少なくとも一つの、好ましくは正確に一つの帰属の光センサーとから成る。光源と光センサーは、分注流路の傍で、それぞれ直接的に、詳しくは支持体上に配置されている。これに関しては、光源と光センサーの間の特色のある光ビームがそれぞれ、分注流路から放出された液滴又は液体ビームの伝播方向、つまり進行方向を実質的に横切って延びるように、ライトバリアユニットを寸法決定及び配置している。さらに本発明によれば、少なくとも伝播方向を横切るこの特色のある光ビームは、そこを通過するチェックすべき液滴又は液体ビームより幅広く寸法決定されている。
【0008】
「不均質なビームプロファイル」をもつ「特色のある光ビーム」とは、本発明の枠内では、とりわけほぼガウス状の又は尖度の大きい強度プロファイルをもつ円錐形の光束のことである(ガウスビーム)。ほかの強度分布を考えることはできるが、好ましいのは、円錐形の光束の光軸で、つまり中心で最高強度をもつ光円錐であり、この強度は、光束の周縁へとそれぞれ低下していく。このような光円錐の生成に何の問題もなく適している光源が、発光ダイオード(LED)及び半導体レーザダイオードの群から選択されることが好ましい。これは第1の形態では、それ自体で知られたやり方で統合された、つまり一般的にはキャスト加工されたコンデンサーレンズを備えた実質的に平坦なLED発光領域である。代替形態では、このビームプロファイルを得るために、ビーム成形用の特殊なマイクロレンズが設けられており、このマイクロレンズは、非球面レンズ及びアキシコンレンズから選択されるのが好ましい。
【0009】
本発明によれば、特色のある光ビームは、向かい合っている光センサーのセンサー面に投射され、センサー面は、当たっている光ビームのビームプロファイル全体を捕捉し、且つ投射面での光ビーム全域の光ビームの強度を積分する。こうして光センサーは、積分されたビーム強度に対応するセンサー電流を生成する。
【0010】
放出された液滴又は液体ビームが、本発明によれば分注流路のすぐ傍に配置されたライトバリアユニットの光ビームを二つに割り、これにより光センサーは、特色のある光ビームによって照明されたそのセンサー面で、光強度の低下を記録する。その際、光の流れの減少、つまりセンサーにおける暗化の度合いは、特色のある光ビーム内の、滴又はビームが光ビームを中断する部位に依存している。とりわけガウス状の又は同等に特色のある強度プロファイルをもつ光ビームの好ましい形態では、最大の暗化、つまり光の流れの最大の減少は、光ビームがその軸で、つまり中心でまっすぐに中断される場合に起こる。この最大の暗化は、本方法の好ましい形態では、放出された液滴又は液体ビームの理想的な方向又は規定位置を特徴づけている。
【0011】
理論に結びついてはいないが、このライトバリアユニットは、放出された液滴又は液体ビームの位置及び方向並びに液体放出の品質を、簡単で同時に十分に正確に監視することができる。プログラムされた評価ユニット(アナログ計算機又はデジタルプログラム計算機)により、液滴又は液体ビームが光ビームを通過する際のセンサー電流の時間的な変化を介して、液体放出の種類及び品質の所望の理想からの逸脱を評価することができる。この分析は、最も簡単な場合には以下のようなものになる。すなわち液滴又は液体ビームが、理想的な中心位置(理想的な方向)から逸脱すればするほど、特色のある光円錐の暗化に基づくセンサー電流の変化がより小さくなる。この機能連関は、図7A図7Dにおいてグラフで説明されている。
【0012】
同時にライトバリアユニットの本発明による構成は、液滴又は液体ビームによりライトバリアユニットの光ビームが暗化されている間のセンサー電流の時間的な推移を記録する場合に、放出された液滴又はとりわけ液体ビームの品質を決定することができる。すなわち誤った分注になり得るビーム障害の場合は、予測された信号推移に関する有意な逸脱が生じる。これは例えば図10A図10Cで図解されており、これらの図は、様々な機能障害のある分注流路を示している。本発明による信号分析のパラメータは、ここでは特に、とりわけ分注される滴又はビームがライトバリアユニットを通過する時間範囲での、センサー信号の時間的な信号変動である。比較的大きな信号変動は、ビーム障害、例えば不均一なビーム形状若しくはビーム方向(中断したビーム、幅が広すぎるビーム、偏向したビーム)又は不均一な滴形成(大きすぎる、不均一な、若しくは「割れた」滴)を通知している。
【0013】
好ましい一実施形態では、マイクロ分注機構の各々の分注流路、つまり各々の針又はノズルに、光源及び光センサーから成るライトバリアユニットが正確に一つずつ直接的に割り当てられており、つまり、特に複数の、好ましくは規則的な列(一次元アレイ)又は格子(二次元アレイ)に配置された分注流路を備えた多流路マイクロ分注機構では、各々の単一の分注流路に、光源及び光センサーから成るライトバリアユニットが一つだけ直接的に割り当てられている。ライトバリアユニットは共通の支持体上に一緒に配置されており、好ましいのは、複数のこのようなライトバリアユニットが、相並んで及び互いに対して好ましくは規則的に離隔して、一列に又は格子に配置されていることである。支持体は、マイクロ分注機構の分注流路の端部、つまり針又はノズルのすぐ傍に配置されるのが好ましい。これは、共通の支持体上に一緒に配置された多数のライトバリアユニットから成る統合「センサープレート」の、コンパクトであると同時に機械的に安定した形態を可能にする。支持体又は支持プレートはそれぞれ、ノズル又は針から出てくる液滴又は液体ビームが通過し得る窓を有することが好ましい。
【0014】
好ましい形態では、不必要なビーム部分を暗化するため、ことにセンサー信号の信号品質を改善するために、ライトバリアユニットごとに、光源と光センサーの間に、ビームを成形する開口又は絞りが配置されている。この絞りは、ちょうど光センサーのセンサー面をカバーする光円錐は維持され続け、その際、放出された液体が通過する部位での光円錐の幅が常に、通過する液滴又は液体ビームの幅又は寸法より大きくなる範囲で、光源から出ている光円錐を遮蔽する(図12を参照)。この絞りは、ライトバリアユニットがそれぞれ上に配置されるハウジング又は支持体の一部として形成することができる。これは、統合「センサープレート」のコンパクトであると同時に機械的に安定した形態を可能にする。
【0015】
液滴又は液体ビームの理想的な方向からの、光ビームの軸方向での逸脱は、単独の強度測定によって何の問題もなく認識することはできない。ただし、複数の測定値の合理的な比較により、及び液滴又は液体ビームの主な数が理想的な位置で放出されるという仮定の下では、光ビームの長手方向でも誤った位置決めを逆推理することができる。これができるのは、本発明により、光ビームが拡散して円錐形に伝播するからである。しかしながら好ましい形態ではこの装置は、液滴又は液体ビームの位置逸脱の二つの空間方向をより正確に捕捉できるよう、分注流路ごとに少なくとも二つの独立したライトバリアユニットを有しており、これらのライトバリアユニットの光ビームは互いに対して角度をつけている。この形態では、各々の分注流路に、少なくとも二つの、好ましくは正確に二つの別々のライトバリアユニットが直接的に割り当てられており、この両方のライトバリアユニットはそれぞれ一つずつの光源及び一つずつの光センサーから成っている。両方のライトバリアユニットは、その光ビームが少なくとも、チェックすべき液滴又は液体ビームの伝播方向又は理想的な方向を横切る平面内で互いに対して角度をつけているように、互いに対して配置されている。好ましいのは、この平面内での光ビームの互いに対する角度が約90°、その代わりに好ましくは約60°であることである。さらなる形態では、(この平面内での)光ビームの互いに対する角度は約30°~150°、好ましくは45°~135°、さらに好ましくは60°~120°である。
【0016】
好ましい一形態では、本発明による装置は、マイクロ分注機構のそれぞれの分注流路の放出挙動を評価及びとりわけ制御又は調節するために、少なくともそれぞれの光センサーと結合したプログラムされた評価ユニットを含んでおり、且つ対応する電流-電圧変換機及び計測用アンプ、ハイパスフィルター及び/又はバンドパスフィルターを用いて、プロセッシングされた、処理された、及び好ましくは時間的に分解されたセンサー信号を得るのに適しており、このセンサー信号は、それぞれのセンサー面に当たっているビームプロファイルの積分された強度を表している。評価可能な信号パラメータは、信号プロファイル、すなわちパルス長、パルス高さ、パルススロープ(上昇)、繰返し率、周波数スペクトル、好ましくは適切なフィルターを介して又はフーリエ変換によって確定される特に高周波部分、及び統計学的な信号変動である。センサーでの比較的長期間のドリフト又はライトバリアユニットでの光路の調整不良によって生じ得るオフセット又はバイアスも捕捉することができる。オフセット又はバイアスは、必要に応じて、アナログ計測部におけるフィルター及び/又はスライド式オフセット補償によって補償することができる。
【0017】
プログラムされた評価ユニットは、センサー面での光強度の時間的な推移を確定及び評価するために、並びに/又は一方は液滴若しくは液体ビームが光ビームを通過する時点で、一方はこの出来事の直前若しくは直後の時点(障害のない光ビーム)で、センサー面での強度の差を確定するために、メモリーユニットを備えた計算ユニットをさらに含んでいることが好ましい。
【0018】
さらに評価ユニットは、センサーで測定された光強度の時間的な強度推移の、予め決定可能な若しくは予めメモリーされた「理想的な」強度推移からの逸脱を信号で知らせるために、及び/又は予め決定可能な、予めメモリーされた強度差からの逸脱を信号で知らせるために、及び/又は適切な制御信号を生成するために、特に確認された調節の逸脱を補償するために、信号機構又は制御機構を有することが好ましい。
【0019】
これに関し評価ユニットは、とりわけ計算ユニット及びメモリーユニットと結合しており、それぞれ流路で放出された液滴又は液体ビームの位置をチェックするために、本明細書において述べた基準に基づき、液滴又は液体ビームがそれぞれの光ビームを通過する際の、プロセッシングされたセンサー信号の、つまり強度推移の平均最大ストロークが、液滴又は液体ビームの理想的な位置を通知するように、且つ予め決定可能な閾値未満への、振幅ストロークのそれぞれの減少が、放出された液滴又は液体ビームの、この理想的な位置からの逸脱又は方向変化を通知するように、プログラムされている。
【0020】
その代わりに又はそれに加えて、プログラムされた評価ユニットは、特に計算ユニット及びメモリーユニットと結合しており、それぞれ分注流路で放出された液滴又は液体ビームの品質をチェックするために、本明細書において述べた基準に基づき、すなわち
液滴又は液体ビームがライトバリアユニットのそれぞれの光ビームを通過する際の、プロセッシングされたセンサー信号の、つまり強度推移の平均最大ストローク及び/又は この時点での、プロセッシングされたセンサー信号の、つまり強度推移の最小の信号変動が、
液滴又は液体ビームの理想的な品質を通知するように、且つ
マイクロ分注機構での液滴又は液体ビームの放出が誘発された際の、
予め決定可能な閾値未満への、振幅ストロークの縮小又は
振幅ストロークの不発又は
予め決定可能な閾値を超える、プロセッシングされたセンサー信号の信号変動の上昇が、
それぞれの分注流路での誤った分注を通知するように、プログラムされている。
【0021】
好ましい一形態では、本発明による装置は少なくとも一つの信号戻り線をさらに有しており、これに関しては、放出された液滴又は液体ビームの理想的な位置又は理想的な品質を意味する予め調整された値に基づいて、マイクロ分注機構からの液滴又は液体ビームの放出を調節するために、プログラムされた評価ユニットを、とりわけ信号機構又は制御機構を介してマイクロ分注機構での調節要素と結合している。この調節とは、運転中のそれぞれの分注流路、針、又はノズルでの液体放出の、システムに起因する逸脱を適切な調節要素により自動的に補償する働きのことである。適切な調節変数は、分注流路での液体放出を誘発するそれぞれの作動装置又は分注ヘッドでの振幅及び/又は圧力である。その代わりの又はそれに加える調節変数は、液体放出の誘発の周波数である。その代わりの又はそれに加える調節変数は、液体放出の誘発の継続期間である。その代わりの又はそれに加える調節変数は、ノズル形状である。その代わりの又はそれに加える調節変数は、ノズル又は針を浄化するための、例えば追加的に誘発可能な圧力波を介した誘発可能な措置であり、この圧力波が、ノズル又は針の場合によっては起こり得る汚染物質の蓄積又は詰まりを抜く。適切な作動装置及び調節要素は、圧電作動装置であることが好ましく、その代わりに好ましいのは電磁作動装置である。
【0022】
この場合、共通の支持体でのそれぞれのライトバリアユニットの設計上単純で統合された構造も、本発明の本質的な態様であり、この構造は、浄化可能性、交換可能性と同時に測定の精密さを容易化する。複雑な光学装置は意識的になくしている。特色のある光ビーム及び積分するセンサー面を有するライトバリアユニットと結合した評価ユニットを合理的にプログラミングすることにより、それぞれの分注流路での液体分注の品質を確実に決定し、その品質を通知し、且つとりわけ適切な戻り線を通して規定状態へと補償することができる単純で、それにもかかわらず精密な測定機器が提供される。
【0023】
この実施形態は、中断のない全自動の分注運転を可能にする全自動で自律型の、とりわけ自己適応性のマイクロ分注機構の提供を可能にすることが有利である。これはとりわけ、細胞及び組織の自動培養のための設備において重要であり、これらの設備では、遵守すべき無菌状態及び清潔さだけに基づいて既に、しかし遵守すべき運転条件、とりわけ周囲空気、曝気、及び温度に基づいても、自動機械運転者による介入が常に回避されるべきである。したがって本発明による光学チェック装置は、反復的に、少量の液体、特に液滴又は液体ビームをチェックし、一定の品質で付与し得る、つまり中断のない自動運転での、多流路マイクロ分注機構の提供を可能にする。
【0024】
それゆえ本発明のさらなる対象は、小さなボリュームの液滴又は液体ビームの反復放出により、ナノ又はマイクロリットル範囲での液体を自動分注するための、中断のない自動運転に適した改善された多流路マイクロ分注機構である。この多流路マイクロ分注機構は、本発明の光学チェック装置を、統合された構成要素として、特に、共通の支持体上で支持された複数のライトバリアユニットを備え、分注流路のすぐ傍に配置された統合センサープレートとして含んでいる。
【0025】
本発明のさらなる対象は、とりわけ本発明に基づく光学チェック装置を使用した、多流路マイクロ分注機構における又はこの機構による液滴又は液体ビームのチェックされた断続的な放出のための方法である。この方法は、少なくとも以下のステップを含んでおり、第1のステップでは、マイクロ分注機構のそれぞれの分注流路、針、又はノズルにおいて、少ないボリュームのそれぞれ一つの液滴又は液体ビームの短期的な放出を誘発する。
【0026】
さらなるステップでは、マイクロ分注機構の流路にそれぞれ割り当てられている光センサーの、不均質なビームプロファイルをもつ光ビームによって照明されたセンサー面での光強度を、放出された液体がそれぞれの光ビームを通過する際の時間的な推移に関して記録する。さらなるステップでは、この時間中ずっと記録された光強度の自動的な評価を、所定の強度値又は強度推移に基づいて行う。さらなるステップでは、閉じた調節回路においてマイクロ分注機構からの液体の放出を調節する、及び/又はマイクロ分注機構のそれぞれの流路での誤った分注を信号で知らせる働きをする、少なくとも一つの制御信号又は警戒信号を放出する。
【0027】
これにより本発明の対象は、特に、多流路マイクロ分注機構の分注流路での液滴又は液体ビームのチェックされた放出のための方法であって、
- 分注流路でのそれぞれ単一の液滴又は液体ビームの短期的な放出を誘発するステップと、
- 不均質なビームプロファイルをもつ光ビームにより、それぞれ放出された液滴又は液体ビームを照明し、且つこの液滴又は液体ビームにより光ビームが暗化する際の、光ビームの幅にわたって積分された強度のそれぞれの弱まりを記録するステップと、
- それぞれ記録された、放出に相関する強度推移を自動的に評価するステップと、
- それぞれの分注流路からの液体の放出を調節するため及び/又は誤った分注を信号で知らせるために、評価の結果としての制御信号又は警戒信号を発信するステップと
を含んでいる方法である。
【0028】
これに関し、評価は以下の条件で行うのが好ましく、すなわち単一の液滴又は液体ビームの放出が誘発された際の、放出に相関する強度弱まりの平均最大振幅が、理想的な分注を通知しており、これに対し、
- 予め決定された閾値未満への、放出に相関する強度弱まりの減少、
- 放出に相関する強度弱まりの不発、及び/又は
- 予め決定された閾値を超える、放出に相関する強度推移の統計的な信号変動の上昇が、
それぞれ、それぞれの分注流路での誤った分注を通知している。
【0029】
好ましいのは、それぞれ流路で放出された液滴又は液体ビームのチェック、つまり特にその理想的な方向からの逸脱のチェックに関して、放出された液体がそれぞれの光ビームを通過する際の強度信号の最大振幅ストロークが、液滴又は液体ビームの理想的な方向を通知し、且つ振幅ストロークの減少、とりわけ平均最大振幅ストロークに対する減少が、液滴又は液体ビームの位置又は方向の理想からの逸脱を通知することである。
【0030】
一形態では、それぞれ流路で放出された液滴又は液体ビームの品質のチェック、つまり特にその理想的な品質からの逸脱のチェックに関して、放出された液体がそれぞれの光ビームを通過する際の強度信号の振幅ストロークの逸脱が、とりわけ平均最大振幅ストロークに対する逸脱が、及びとりわけ、液体放出が誘発された際の強度の振幅ストロークの短期的な減少又は信号振幅の変動又は振幅ストロークの短期的な不発が、それぞれの流路での誤った分注を通知している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】光学チェック装置を備えたマイクロ分注機構の構造全体の概略図。
図2】放出された液体(26)の視線方向での、一対の本発明によるライトバリアユニット(40)の概略図。
図3】それぞれ相並んでパラレルに運転されるべきノズル又は針の形態の複数の分注流路(22)を備えた多流路マイクロ分注機構(20)の特殊な形態の概略図。
図4】それぞれ相並んでパラレルに運転されるべきノズル又は針の形態の複数の分注流路(22)を備えた多流路マイクロ分注機構(20)の特殊な形態の概略図。
図5】本発明による装置の形態の概略的な平面図。
図6】本発明による装置の形態の概略的な平面図。
図7】本発明による装置の特色のある光ビームのビームプロファイルに関する強度分布を、光センサーのセンサー面での切断線に沿って示している図。
図8】それぞれのセンサー信号の時間的な推移に関して考慮される主要な固有値を示している図。
図9】互いに対して実質的に直角に配置された光ビームを有する、分注流路の傍の一対のライトバリアユニットのセンサー信号を示している図。
図10図9に倣って測定した電気信号を示している図。
図11図6に基づく本発明によるセンサープレートの一部分の概略的な斜視図を示している図。
図12】一つだけのライトバリアユニットの図5図6、及び図11に基づく構成の概略的な平面図。
【0032】
本発明を、以下の例示的実施形態及び図によってより詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、光学チェック装置を備えたマイクロ分注機構の構造全体の概略図を示している。分かりやすく図解するため、複数の分注流路の一つを示している。マイクロ分注機構(20)は、分注流路(22)ごとに一つの推進器又は分注ヘッド(24)を備えている。分注ヘッドは、液体をノズル(23)から放出するために、分注流路(22)の供給された液体(25)に反復的な圧力インパルスを掛けることに適している。分注流路(22)の出口又はノズル(23)のすぐ下には、本発明による光学構成(10)が位置決めされている。この光学構成(10)は、実質的には、センサー(46)のセンサー面(48)に投射される特色のある光ビーム(44)を生成するための光源(42)を備えた支持されたライトバリアユニット(40)から成っている。光源(42)及びセンサー(46)は一緒にライトバリアユニット(40)を形成しており、ライトバリアユニット(40)は、マイクロ分注機構(20)の各々の分注流路(22)に対してそれぞれ少なくとも一個は存在している。ライトバリアユニット(40)は、共通の支持体(30)上に配置されており、とりわけ多流路の実施形態で、本発明による光学装置(10)を形成している。ライトバリアユニット(40)の光ビーム(44)はそれぞれ、マイクロ分注機構(20)から放出可能な液滴又は液体ビーム(26)が光ビーム(44)を横切りながら中断するように方向合わせされている。これに関し、特色のある光ビーム(44)はこの部位で、通過する液滴又は液体ビーム(26)より幅広く、つまりより拡張されている。液滴又は液体ビーム(26)は、重力ベクトルに従って垂直に、鉛直方向に延びているのが好ましい。マイクロ分注機構(20)から放出可能な液体(25)は、バット又は凹部(80)内に分注される。バット又は凹部(80)は、複数の相並んで規則的に配置されたバット又は凹部(80)を有するマイクロタイタープレート又はマルチウェルプレートの構成要素であることが好ましい。各々のライトバリアユニット(40)のセンサー(46)の信号は、それぞれ一本の配線(48)を介して評価ユニット(60)に送られ、評価ユニット(60)は、品質、分注方向、及び/又は誤った分注を判断するために、液滴又は液体ビーム(26)が特色のある光ビーム(44)を通過する際のセンサー(46)のセンサー面での光強度の逸脱を、予め確認された強度値との比較により、及び/又は予め調整された強度値若しくは時間的な強度推移との比較により考慮し得るようにプログラムされている。このために、プログラムされた評価ユニット(60)は、光強度の測定値をメモリーするメモリーユニット(62)が割り当てられた計算ユニット(64)を有することが好ましい。計算ユニット(64)は信号機構(66)と結合しており、信号機構(66)は、予め決定可能な理想値からの、特に予め決定可能な時間的な強度推移又は予め決定可能な強度差からの逸脱、誤った分注を信号で知らせるために特異的に適している。戻り線(68)が設けられているのが好ましく、この戻り線(68)を介して、プログラムされた評価ユニット(60)から、マイクロ分注機構(20)での少なくとも一つの調節要素(28)に、少なくとも一つの調節信号(調節変数)が伝えられ、調節要素(28)は、それぞれの分注流路(22)の液体分注の一つ以上のパラメータを制御し、とりわけ液体放出の検出された品質に応じて自動的に調節する。示した実施形態では調節要素(28)は、分注流路(22)から液体(25)を放出する際の圧力作用の振幅及び周波数を決定する圧力制御機構である。
【0034】
図2は、放出された液体(26)の視線方向での、一対の本発明によるライトバリアユニット(40)の概略図を示している。一方の光源(42)は、それぞれ不均質な、とりわけガウス状の強度プロファイルをもつビーム円錐(44)を生成し、このビーム円錐(44)は、向かい合っているセンサー(46)のセンサー面(48)に投射される。これと同一の第2のライトバリアユニット(40)と一緒に、通過する液滴又は液体ビーム(26)の改善された位置決定のため、実質的に垂直に交差して延びている二つの光ビーム(44)を形成している。
【0035】
図3及び図4はそれぞれ、それぞれ相並んでパラレルに運転されるべきノズル又は針の形態の複数の分注流路(22)を備えた多流路マイクロ分注機構(20)の特殊な形態の概略図を示している。各々の分注流路(22)の先端のすぐ傍では、それぞれ光源(42)及び光センサー(46)から成る少なくとも一つのライトバリアユニットが、それぞれ一緒に支持体(30)上に配置されている。支持体(30)は、示した実施形態では一続きのプレートとして実施されており、このプレートは、放出された液滴又は液体ビームが通過する部位でそれぞれ窓(32)を有している。
【0036】
図5A及び図5B並びに図6はそれぞれ、共通の支持体(30)上での、パラレルに運転されるべき、互いに対して規則的に離隔した、それぞれ一つの光源(42)及び帰属の一つの光センサー(46)から成る複数のライトバリアユニット(40)を備え、並びに光源(42)と帰属の光センサー(46)との間にあり放出された液滴又は液体ビームが通過するための窓(32)を備えた、統合センサープレートとしての好ましい実施形態での本発明による装置の形態の概略的な平面図を示している。
【0037】
図7は、本発明による装置の特色のある光ビームのビームプロファイルに関する強度分布を、光センサーのセンサー面での切断線に沿って示している。このセンサー構成では、当たっている光円錐の幅全体にわたってビーム強度が積分されることが好ましい。測定された光強度は、示した曲線の下の面の積分に相当する。光ビームが二つに割れていない(液体の放出がないか又は液体の放出が不発の)場合、最高の光強度(「intensity」)が記録される(図7A)。放出された液体が、特色のある光ビームを正確に光軸、つまり中心(=理想的な位置)で二つに割る場合、光強度の最大の弱まりが観察され得る(図7B)。液滴の理想的な位置からの逸脱(「displacement」)が増すにつれ、液滴が特色のある光ビームを通過する際の短期的な暗化、つまり強度低下がより少なくなり(図7C及び図7D)、これが、位置決定及び品質判断のために考慮される。
【0038】
図8は、本発明による装置のプログラムされた評価ユニットにおいて、液体分注の品質を決定するために、それぞれのセンサー信号の時間的な推移に関して考慮される主要な固有値を示している。信号電圧の時間的な推移が、反転したセンサー電流に比例していることが示されており、すなわち高い電圧は、センサー面での比較的低い放射強度を通知している。放出された液滴又は液体ビームにより光ビームが二つに割られると、電圧上昇が記録され得る。電圧上昇(a)の急傾斜及び時間的な推移は、とりわけ液体ビームの放出の際の液体分注の品質について直接的に説明しており、ここでは液体ビームの品質、とりわけ均一性を判断することができる。信号振幅の高さ(b)はとりわけ、図7A図7Dに示したような、放出された液滴又は液体ビームの位置を通知している。同時に、理想的な方向での正しい分注の信号振幅(b)について十分な知識又は基本的仮定があれば、液体放出の品質についてのほかのデータを得ることができる。これについて、信号変化の推移及び長さ(c)も、液体放出の種類及び品質を通知している。
【0039】
図9は、互いに対して実質的に直角に配置された光ビームを有する、分注流路の傍の一対のライトバリアユニットのセンサー信号を示している(ライトバリア1=実線、ライトバリア2=点線)。測定構造は、分注流路の下の、三つの空間方向に変位可能なX-Y-Zテーブル上にある検出ユニットの構造である。光軸に対する針位置の調整は、ここでは分注針の影投射に基づいて行われ、すなわち針を最初はライトバリア内に懸架し(センサー信号ではセンサー信号の低下として認識可能)、その後、ライトバリアの光円錐の上縁まで引き上げた。信号はそれぞれ、光ビームを理想的に中心で横切る場合(図9A)の、及び液体ビームが理想的な位置からずれた場合、つまり誤った分注の場合(図9B及び図9C)の、三回誘発された液体放出を示している。図9Dは、液体ビームの位置又は偏向に対する信号振幅の関係性を示している。図9A図9Dは、約90°で、つまり第1のライトバリアユニットの光ビームを横切って、及び約0°で、つまり第2のライトバリアユニットの光ビームの光軸に沿って、液体ビームがずれる場合の状態を示している。液体ビームが、厳密に第2のライトバリアユニットの光ビームの長手軸に沿ってずれるにもかかわらず、図9Dに示したように、第2のユニットの信号振幅も低下する(破線を参照)。図9E図9Hは、第1のライトバリアユニットの光ビームに対して約45°で、第2のライトバリアユニットの光ビームに対して約45°の液体ビームの斜めのずれ、偏向の場合の同じ試験手順を示している。
【0040】
図10は、図9に倣って測定した電気信号を示している。図10Aでは、断続的に放出された液体ビームの、実質的に障害のない理想的なビーム推移が示されている。図10B図10Cは、様々な「欠陥のある」分注流路を示しており、これらの分注流路は、異なる強さで「射出している」。分注される液体の品質、つまり特に持続性及びボリューム不変性が、図10B及び図10Cでは低下している。これは誤った分注を推論させる。図10Dは、信号変動を介して確定される信号品質の関係性を示している。ビーム品質を評価するための重要な信号パラメータは信号変動である(実際にはピークでの乱れ)。
【0041】
図11は、図6に基づく本発明によるセンサープレートの一部分の概略的な斜視図を示しており、すなわち電気コンタクト部及び導体路を同時に含んでいる支持体(30)上に、光源(42)が向かい合っている光センサー(46)と共に、SMD要素として取り付けられている。支持体(30)は、信号処理のためのさらなる電子部品(38)を含んでおり、電子部品(38)は、SMD構造方式で取り付けられているか又はハイブリッド構造方式で支持体(30)に統合されている。支持体(30)は、示した実施形態では、液滴又は液体ビームが通過し得るそれぞれの窓(32)を備えた支持フレーム(34)を含んでいる。この支持フレーム(34)はさらに、センサー(46)の傍で、信号品質を改善するためにビームを暗化するための開口としての働きをもつ。
【0042】
図12は、光源(42)及び向かい合ってセンサー面(48)を有しているセンサー(46)と、その間にあり液滴又は液体ビーム(26)が通過し得る窓(32)を有する支持フレーム(34)とから成る一つだけのライトバリアユニットの図5図6、及び図11に基づく構成の概略的な平面図を示している。支持フレーム(34)はさらに、センサー(46)の傍で、信号品質を改善するためにビームを暗化するための開口としての働きをもつ。開口によって生成されるビーム幅(A)は、通過する液滴又は液体ビーム(26)の幅(B)よりそこでは常に大きい。寸法Aは絞り幅を表している。絞り幅は、予測されるビーム直径又は滴直径(寸法B)の約2~3倍である。センサー(46)及びLED光源(42)は、約2~4mmの間隔をあけて取り付けられている。I-DOTマイクロ分注システムのための図6及び図11に基づく統合センサープレートとしての好ましい一形態では、寸法Aは約0.6mmであり、マルチドロップマイクロ分注システムのための図5A又は図5Bに基づく統合センサープレートとしての好ましい一形態では、寸法Aは約1mmである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多流路マイクロ分注機構(20)で断続的に放出された液滴又は液体ビーム(26)を光学チェックするための光学チェック装置(10)であって、
前記マイクロ分注機構(20)の関連する分注流路(22)に割り当てられ、それぞれ前記分注流路(22)の傍で共通の支持体(30)上に直接的に配置された、各ライトバリアユニット(40)である、複数の前記ライトバリアユニット(40)を含み、
前記ライトバリアユニット(40)は、前記支持体(30)上に規則的に離隔しており、且つ格子(二次元アレイ)又は列(一次元アレイ)の形態で配置され、前記支持体(30)と一緒に統合センサープレートを形成し、前記支持体(30)は、前記液滴又は液体ビーム(26)が通過する各々の窓(32)に支持体枠(34)を担持し、
それぞれ、
不均質なビームプロファイルを有する光源(42)と、
前記光源(42)の特色のある光ビーム(44)が投射されるセンサー面(48)を有する光センサー(46)と
から成る複数のライトバリアユニット(40)を含んでいる装置において、
前記特色のある光ビーム(44)がそれぞれ、放出された前記液滴又は液体ビーム(26)の伝播方向を横切って延びており、チェックすべき前記液滴又は液体ビームより幅広い、装置。
【請求項2】
各々の分注流路(22)にそれぞれ正確に一つのライトバリアユニット(40)が割り当てられている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
それぞれのライトバリアユニット(40)は、一つの前記分注流路(22)から液滴又は液体ビーム(26)の測定のみを行う、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
各々の分注流路(22)にそれぞれ二つのライトバリアユニット(40)が割り当てられており、前記ライトバリアユニット(40)の光ビーム(44)が互いに対して30°~150°の角度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
少なくともそれぞれの前記光センサー(46)に接続され、前記センサー面(48)に当たっている前記特色のある光ビーム(44)の強度を決定するためのプログラムがされた評価ユニット(60)と、
時間的な強度推移を確定するための、又は前記液滴若しくは液体ビーム(26)が通過する時点と、前記出来事の直前若しくは直後の時点との強度差を確定するための、メモリーユニット(62)及び計算ユニット(64)とを、
さらに含んでいる請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
予め決定可能な時間的な強度推移又は強度差の逸脱を信号で知らせるための、信号機構及び制御機構(66)を、
さらに含んでいる請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記マイクロ分注機構(20)のそれぞれの前記分注流路(22)からの液体の放出を制御又は調節するための、前記マイクロ分注機構(20)の調節要素(28)に接続された信号戻り線(68)をさらに含んでいる請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
反対側に面する光センサーを備える前記光源(42)は、電気接点と導体トラックとを同時に有する、前記共通支持体(30)上にSMD素子として取り付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記共通支持体(30)は、さらに、電子部品が、前記共通支持体(30)上にSMD構造により取り付けられ、又は前記支持体にハイブリッド構造により統合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
それぞれの前記ライトバリアユニット(40)に対して、望まれない前記光ビームの部分を遮蔽する目的で、前記光ビームを整形する開口部又はスクリーンが前記高原(42)と前記光センサー(46)の間に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記開口部が、前記光センサー(46)のセンサー面(48)をちょうど覆うように、光源(42)から放射する光円錐が残るように制限し、それによって、吐出された液体の位置における光円錐の前記幅が、そこを通過する液滴又は液体ビーム(26)の幅又は寸法より常に広くされている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記開口部は、それぞれ、配置された前記ライトバリアユニット(40)の上方で、共通支持体(30)の部分として設計された、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記支持体枠(34)が光ビーム遮蔽のための開口部として提供されている、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記開口部の幅は、想定する液体ビーム又は液滴の直径の約2~3倍である、請求項10から13までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記開口部の幅は、約0.6mmから約1mmである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記光センサー(46)と前記光源(42)は、約2~4mmの間隔をもって据え付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記分注流路(22)は、分注ニードル又は分注ノズルである、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の前記光学チェック装置(10)を含んでいる、液滴又は液体ビーム(26)の制御可能な断続的な放出のための多流路マイクロ分注機構(20)。
【請求項19】
請求項18に記載の多流路マイクロ分注機構の分注流路での液滴又は液体ビームの放出をチェックするための方法であって、
- 前記分注流路でのそれぞれ単一の液滴又は液体ビームの短期的な放出を誘発するステップと、
- 不均質なビームプロファイルをもつ光ビームにより、それぞれ放出された前記液滴又は液体ビームを照明し、且つ前記液滴又は液体ビームにより前記光ビームが遮られたときに、前記光ビームの幅にわたって積分された強度の減衰を記録するステップと、
- それぞれの記録された、放出に相関する前記強度推移を自動的に評価するステップと、
- それぞれの前記分注流路からの前記液体の放出を調節するため及び/又は誤った分注を信号で知らせるために、前記評価の結果として制御信号又は警戒信号を発信するステップとを含んでいる方法。
【請求項20】
単一の液滴または液体ビームの放出の開始時に、該放出に相関する減衰強度の平均最大振幅が、理想的な分注量を示し、
- 放出に相関する減衰強度が所定の閾値以下に減少すること、
- 放出に相関する減衰強度がないこと、および/または
- 放出に相関する減衰強度の統計的な信号変動が所定の閾値を超えて上昇すること
のいずれの場合も、それぞれの分注流路での不正な分注を示す、請求項19に記載の方法。