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特開2022-163740合成繊維用処理剤、合成繊維及び合成繊維の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163740
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤、合成繊維及び合成繊維の処理方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/224 20060101AFI20221020BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20221020BHJP
   D06M 15/647 20060101ALI20221020BHJP
   D06M 13/292 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
D06M13/224
D06M13/17
D06M15/647
D06M13/292
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068748
(22)【出願日】2021-04-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】寺田 光良
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB01
4L033AC06
4L033BA14
4L033BA21
4L033BA39
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】合成繊維に良好な制電性を付与し、かつ、エマルション安定性及び低温ハンドリング性に優れる合成繊維用処理剤、かかる処理剤が付着した合成繊維及び、かかる合成繊維用処理剤を合成繊維に付着させる処理方法の提供を課題としている。
【解決手段】上記一般式(1)及び上記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
【化1】
(式中、
環Q:炭素数3~8のシクロアルキレン基
1a:水素原子又は炭素数1~12のアルキル基
2a:炭素数1~12の2価の炭化水素基
:水素原子又は炭素数6~22のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基
1aO:炭素数2~4のアルキレンオキシ基(ただし、当該アルキレンオキシ基が2以上存在する場合は、1種単独又は2種以上でも良い。)
:0~100の整数)
【化2】
(式中、環Q、R1b、R2b、A1bO、mは、式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:炭素数4~12のジカルボン酸から2つの水酸基を除いた残基)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるR1aは水素原子であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)におけるR1bは水素原子であるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるR2aは炭素数2~8の2価の炭化水素基であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)におけるR2bは炭素数2~8の2価の炭化水素基であるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるRは炭素数6~22の脂肪族モノカルボン酸から水酸基を除いた残基であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記合成繊維用処理剤の全質量に対して、前記シクロアルキルアルカノール誘導体を0.01~30質量%含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
更に、非イオン性界面活性剤(但し、前記シクロアルキルアルカノール誘導体を除く)及びイオン性界面活性剤を含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
更に、平滑剤、非イオン性界面活性剤(但し、前記シクロアルキルアルカノール誘導体を除く)及びイオン性界面活性剤を含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項8】
前記イオン性界面活性剤が、下記の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、下記の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び下記の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステルを含有する請求項6又は7に記載の合成繊維用処理剤。
【化3】
(式中、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
n:2~4の整数
:「R1c-環Q-R2c-O-(A1cO)m-」から末端の酸素原子を除いた残基(ただし、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味である。)、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化4】
(式中、環Q、R1d、R2d、A1dO(OA1d)、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化5】
(式中、環Q、R1e、R2e、A1eO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
、M:各々独立してアルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤を合成繊維に対し0.1~5質量%となるように付着させることを特徴とする合成繊維の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤、合成繊維及び合成繊維の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、合成繊維の紡糸工程や仮撚工程、後加工工程においては、高速化が更に一段と進み、これに伴って静電気の発生や生産糸の毛羽がますます発生し易くなっている。かかる静電気や毛羽の発生を防止するため、合成繊維に付着させる合成繊維用処理剤としてこれらを防止するための機能性向上剤の含有割合を増加させたものを使用することや、合成繊維に対する合成繊維用処理剤の付着量を上げることが行われているが、依然として充分な対応ではなく、さらなる制電性の向上が要望されている。
【0003】
一方、合成繊維は様々な国や地域において生産が行われており、それに伴って合成繊維用処理剤の使用条件も多岐にわたり、例えば、温度条件において、非常に広い温度範囲での使用に耐えられる合成繊維用処理剤が望まれている。
しかしながら、ポリエーテル類(PO/EO共重合体)を含有する合成繊維用処理剤(例えば、特許文献1等)が多く知られている一方で、これらの合成繊維用処理剤はエマルションの安定性が不十分である場合があった。
合成繊維用処理剤のエマルション安定性が悪いと、例えば、エマルション調製タンク内で貯蔵している間に含有成分が分離してしまい、これを合成繊維に付着させると合成繊維用処理剤が均一に付着せず、その後の紡糸工程や仮撚工程、後加工工程において問題が多発する原因となる。
また、氷点下の環境下における低温ハンドリング性の低下は、例えば、合成繊維用処理剤の成分が凝固して含有成分が不均一な状態になり十分に機能を発揮できなかったり、エマルション調製のための仕込みに時間を要したりする原因となる。
すなわち、合成繊維用処理剤のエマルション安定性や低温ハンドリング性の向上は、合成繊維の品質を向上させる要因であるため重要な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-245729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、合成繊維に良好な制電性を付与し、かつ、エマルション安定性及び低温ハンドリング性に優れる合成繊維用処理剤、かかる処理剤が付着した合成繊維及び、かかる合成繊維用処理剤を合成繊維に付着させる処理方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、合成繊維に良好な制電性を付与し、かつ、エマルション安定性及び低温ハンドリング性に優れる合成繊維用処理剤とするためには、特定の化学構造を有するシクロアルキルアルカノール誘導体が大きく関与していることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0007】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.下記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
【化1】
(式中、
環Q:炭素数3~8のシクロアルキレン基
1a:水素原子又は炭素数1~12のアルキル基
2a:炭素数1~12の2価の炭化水素基
:水素原子又は炭素数6~22のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基
1aO:炭素数2~4のアルキレンオキシ基(ただし、当該アルキレンオキシ基が2以上存在する場合は、1種単独又は2種以上でも良い。)
:0~100の整数)
【化2】
(式中、環Q、R1b、R2b、A1bO、mは、式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:炭素数4~12のジカルボン酸から2つの水酸基を除いた残基)
2.前記一般式(1)におけるR1aは水素原子であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)におけるR1bは水素原子であるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、1.に記載の合成繊維用処理剤。
3.前記一般式(1)におけるR2aは炭素数2~8の2価の炭化水素基であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)におけるR2bは炭素数2~8の2価の炭化水素基であるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、1.又は2.に記載の合成繊維用処理剤。
4.前記一般式(1)におけるRは炭素数6~22の脂肪族モノカルボン酸から水酸基を除いた残基であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、1.~3.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
5.前記合成繊維用処理剤の全質量に対して、前記シクロアルキルアルカノール誘導体を0.01~30質量%含有する1.~4.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
6.更に、非イオン性界面活性剤(但し、前記シクロアルキルアルカノール誘導体を除く)及びイオン性界面活性剤を含有する1.~5.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
7.更に、平滑剤、非イオン性界面活性剤(但し、前記シクロアルキルアルカノール誘導体を除く)及びイオン性界面活性剤を含有する1.~5.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
8.前記イオン性界面活性剤が、下記の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、下記の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び下記の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステルを含有する6.又は7.に記載の合成繊維用処理剤。
【化3】
(式中、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
n:2~4の整数
:「R1c-環Q-R2c-O-(A1cO)m-」から末端の酸素原子を除いた残基(ただし、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味である。)、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化4】
(式中、環Q、R1d、R2d、A1dO(OA1d)、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化5】
(式中、環Q、R1e、R2e、A1eO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
、M:各々独立してアルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
9.1.~8.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
10.1.~8.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤を合成繊維に対し0.1~5質量%となるように付着させることを特徴とする合成繊維の処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の合成繊維用処理剤、合成繊維及び合成繊維の処理方法は、合成繊維の紡糸工程や仮撚工程、後加工工程における近年の高速化にも対応して、優れた制電性により静電気や毛羽を防止できるという効果を発揮するものである。
また、本発明の合成繊維用処理剤は、エマルション安定性に優れるため、エマルションを長時間貯蔵しても含有成分が分離することなく、合成繊維用処理剤を均一に付着させ得るため有用である。
さらに、本発明の合成繊維用処理剤は、氷点下の環境下における低温ハンドリング性に優れるため、合成繊維用処理剤の成分が凝固するなどの問題が生じることがなく、エマルション調製のための仕込みに時間を要することもない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する合成繊維用処理剤や、かかる処理剤が付着した合成繊維及び、かかる合成繊維用処理剤を合成繊維に付着させる処理方法に関する。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
<シクロアルキルアルカノール誘導体>
本発明の合成繊維用処理剤は、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を必須成分として含有するものである。
【化6】
(式中、
環Q:炭素数3~8のシクロアルキレン基
1a:水素原子又は炭素数1~12のアルキル基
2a:炭素数1~12の2価の炭化水素基
:水素原子又は炭素数6~22のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基
1aO:炭素数2~4のアルキレンオキシ基(ただし、当該アルキレンオキシ基が2以上存在する場合は、1種単独又は2種以上でも良い。)
:0~100の整数)
【化7】
(式中、環Q、R1b、R2b、A1bO、mは、式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:炭素数4~12のジカルボン酸から水酸基を除いた残基)
【0011】
本発明における上記の一般式(1)に示されるシクロアルキルアルカノール誘導体は、炭素数6~22のモノカルボン酸シクロアルキルアルカノールエステル、シクロアルキルアルカノールのアルキレンオキサイド付加重合体又は炭素数6~22のモノカルボン酸とシクロアルキルアルカノールのアルキレンオキサイド付加重合体とのエステルであり、本発明における上記の一般式(2)に示されるシクロアルキルアルカノール誘導体は、炭素数4~12のジカルボン酸シクロアルキルアルカノールジエステル又は炭素数4~12のジカルボン酸とシクロアルキルアルカノールのアルキレンオキサイド付加重合体とのジエステルである。
上記一般式(1)中の環Q、一般式(2)中の環Qは、各々独立して炭素数5~8のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数5又は6のシクロアルキル基であることがより好ましい。
上記一般式(1)のR1a、一般式(2)中のR1bは、各々独立して水素原子又は炭素数6~10のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数6~8のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
上記一般式(1)中のR2a、一般式(2)中のR2bの炭素数1~12の2価の炭化水素基は、各々独立して、直鎖状又は分岐鎖状の何れでも良く、飽和又は不飽和の何れでも良い。中でも、各々独立して直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキレン基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2~8のアルキレン基がより好ましく、直鎖状の炭素数2~8のアルキレン基が特に好ましい。
上記一般式(1)中のRの水素原子又は炭素数6~22のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基におけるモノカルボン酸は、飽和モノカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸の何れでも良い。中でも、水素原子又は飽和/不飽和炭素数8~20のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基であることが好ましく、飽和/不飽和炭素数8~20のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基であることがより好ましい。
上記一般式(2)中のRの炭素数4~12のジカルボン酸から2つの水酸基を除いた残基におけるジカルボン酸は、飽和又は不飽和の脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸の何れでも良い。中でも、炭素数4~12の飽和又は不飽和の脂肪族ジカルボン酸から2つの水酸基を除いた残基が好ましく、炭素数4~12の飽和脂肪族ジカルボン酸から2つの水酸基を除いた残基がより好ましい。
上記一般式(1)中のA1aO、一般式(2)中のA1bOが、炭素数2~4のアルキレンオキシ基が2種以上である場合は、各々独立して、ランダムに分散されていても、ブロックであっても、それらの混合であってもよい。中でも、各々独立して、炭素数2又は3のアルキレンオキシ基が1種単独又は2種であることが好ましい。
上記一般式(1)中のm、一般式(2)中のmは炭素数2~4のアルキレンオキシ基の平均モル数を表し、各々独立して、0~20の整数が好ましく、0~15の整数がより好ましい。
【0012】
本発明における、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体は、例えば、シクロアルキルアルカノールとモノカルボン酸又はジカルボン酸とのエステル化反応、シクロアルキルアルカノールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドをランダム、ブロック又はそれらを混合した方法での付加重合、または上記のシクロアルカノールのアルキレンオキサイド付加重合体とモノカルボン酸又はジカルボン酸とのエステル化反応によって製造されるものである。
【0013】
本発明の合成繊維用処理剤は、その全質量に対して、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体を0.01~30質量%含有することが好ましく、0.1~25質量%含有することがより好ましく、0.2~20質量%含有することがさらに好ましく、0.2~10質量%含有することが特に好ましい。
また、本発明の合成繊維用処理剤は、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
さらに、本発明の合成繊維用処理剤は、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤、平滑剤及びイオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明の合成繊維用処理剤に併用できる、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤、平滑剤及びイオン性界面活性剤について、説明する。
【0014】
<シクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤>
本発明における合成繊維用処理剤に併用できる、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリオキシエチレンオレアート、ポリオキシエチレンメチルエーテルラウラート、ポリオキシエチレンオクチルエーテルラウラート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテルパルミタート、ポリオキシエチレンジオレアート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル等の、有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミド分子に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、(2)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレアート、ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテルトリオレアート等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、(3)ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド、(4)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明では、化合物名の末端にEOおよびPOと記載したものは、それぞれエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの付加物を意味し、後に続く数字はその付加モル数を示す。EOおよびPOの後に記載された数値はそれぞれの平均付加モル数を意味する。
【0015】
<シクロアルキルアルカノール誘導体以外の平滑剤>
本発明の合成繊維用処理剤に併用できる、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体以外の平滑剤としては、(1)ブチルステアラート、オクチルステアラート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソペンタコサニルイソステアラート、オクチルパルミタート、イソトリデシルステアラート、ラウリルオクタート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカノアート、トリメチロールプロパンモノオレアートモノラウラート、ソルビタントリオレアート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリステアラート、ソルビタンジステアラート、ソルビタンモノステアラート、グリセリンモノラウラート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(3)ジラウリルアジパート、ジオレイルアゼラート、ジイソセチルチオジプロピオナート、ビスポリオキシエチレンラウリルアジパート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート及びポリオキシプロピレンベンジルステアラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート、ポリオキシエチレンビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(6)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸とのエステル化合物、(7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂、(8)鉱物油等、合成繊維用処理剤に採用されている公知の平滑剤が挙げられる。これらの平滑剤成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
<イオン性界面活性剤>
本発明の合成繊維用処理剤は、下記の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、下記の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び下記の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステルをイオン性界面活性剤として併用することが好ましい。
【化8】
(式中、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
n:2~4の整数
:「R1c-環Q-R2c-O-(A1cO)m-」から末端の酸素原子を除いた残基(ただし、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味である。)、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化9】
(式中、環Q、R1d、R2d、A1dO(OA1d)、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化10】
(式中、環Q、R1e、R2e、A1eO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
、M:各々独立してアルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【0017】
上記一般式(3)中の環Q、R1c、R2c、A1cO、m、上記一般式(4)中の環Q、R1d、R2d、A1dO(OA1d)、m、上記一般式(5)中の環Q、R1e、R2e、A1eO、mの好適例は、各々独立して、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと同じである。
上記一般式(3)中のRは、「R1c-環Q-R2c-O-(A1cO)m-」から末端の酸素原子を除いた残基(ただし、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味である。)であることが好ましい。
上記一般式(3)中のM、上記一般式(4)中のM、上記一般式(5)中のM、Mは、各々独立してアルカリ金属又は有機アミン塩であることが好ましい。
【0018】
上記一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、上記一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び、上記一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%とする。このとき、一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率は、30~80%であり、35~75%であることが更によく、40~70%であることが特によい。
【0019】
P核NMR積分比率(有機リン酸エステルP1、P2、P3から帰属されるP核NMRの積分比率(%))は、有機リン酸エステルのアルカリ金属塩等に過剰のKOHを加えてpHを12以上にした条件下で、31P-NMR(VALIAN社製の商品名MERCURY plus NMR Spectrometor System、300MHz)に供したときの測定値を用いて、下記の式(a)~式(c)に基づいて算出することができる値を意味する。なお、溶媒は重水/テトラヒドロフラン=8/2(体積比)の混合溶媒を用いることができる。
なお、式(a)~式(c)中、「P化1」は、一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分値を、「P化2」は、一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2に帰属されるP核NMR積分値を、「P化3」は、一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分値を示す。
【0020】
[数1]
有機リン酸エステルP1のP核NMR積分比率(%)=(P化1)÷(P化1+P化2+P化3)×100・・・(a)
[数2]
有機リン酸エステルP2のP核NMR積分比率(%)=(P化2)÷(P化1+P化2+P化3)×100・・・(b)
[数3]
有機リン酸エステルP3のP核NMR積分比率(%)=(P化3)÷(P化1+P化2+P化3)×100・・・(c)
本発明における、上記一般式(3)~(5)で示される有機リン酸エステルの製造方法は特に制限されないが、例えば、シクロアルキルアルカノール、又はシクロアルキルアルカノールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドをランダム、ブロック又はそれらを混合した方法で付加重合させたものと、無水リン酸に代表されるリン酸化剤とを混合しエステル化して製造されるもの、またはさらにそれを塩基で中和することによって製造されるものである。
【0021】
<その他のイオン性界面活性剤>
本発明の合成繊維用処理剤は、さらにその他のイオン性界面活性剤を含んでいてもよく、繊維用処理剤として使用される公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。具体的には、例えば、アニオン性界面活性剤としては、(1)酢酸カリウム塩、オクタン酸カリウム塩、オレイン酸カリウム塩、オレイン酸ナトリウム塩、アルケニルコハク酸カリウム塩等のカルボン酸石鹸型イオン性界面活性剤、(2)2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩等のスルホン酸エステル型イオン性界面活性剤、(3)ポリオキシエチレンラウリル硫酸エステルナトリウム塩、ヘキサデシル硫酸カリウム塩、牛脂硫化油、ヒマシ油硫化油等の硫酸エステル型イオン性界面活性剤、(4)ドデシルリン酸エステルナトリウム塩、オレイルリン酸エステルカリウム塩、ヘキサデシルリン酸エステルカリウム塩、オクタデシルリン酸エステルカリウム塩、オレイルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステルとポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルとの塩等の有機リン酸エステル塩等が挙げられる。またカチオン性界面活性剤としては、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ジメチルステアリルアミンオキサイド等の有機アミンオキサイド、オクチルジメチルアンモニオアセタート等のベタイン型両性界面活性剤、N,N-ビス(2-カルボキシエチル)-オクチルアミンナトリウム等のアラニン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明の合成繊維用処理剤において、上記一般式(1)及び上記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体と、それ以外の非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤を含有する場合、合成繊維用処理剤の全質量に対して、それ以外の非イオン性界面活性剤は50~99質量%含有することが好ましく、60~99質量%含有することがより好ましく、65~99質量%含有することがさらに好ましく、それ以外のイオン性界面活性剤は0.01~10質量%含有することが好ましく、0.1~10質量%含有することがより好ましく、0.5~5質量%含有することがさらに好ましい。
上記イオン性界面活性剤として、上記一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、上記一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び、上記一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステルを含有する場合、上記一般式(3)~(5)示される有機リン酸エステルの総量は、合成繊維用処理剤の全質量に対して0.01~10質量%含有することが好ましく、0.05~5質量%含有することがより好ましく、0.1~3質量%含有することがさらに好ましい。
【0023】
本発明の合成繊維用処理剤において、上記一般式(1)及び上記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体と、前記シクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤、平滑剤、及びイオン性界面活性剤を含有する場合、それ以外の非イオン性界面活性剤は5~60質量%含有することが好ましく、10~60質量%含有することがより好ましく、10~50質量%含有することがさらに好ましく、それ以外の平滑剤は、30~80質量%含有することが好ましく、30~70質量%含有することがより好ましく、40~70質量%含有することがさらに好ましく、それ以外のイオン性界面活性剤は0.1~25質量%含有することが好ましく、0.5~20質量%含有することがより好ましく、1.0~15質量%含有することがさらに好ましい。
上記イオン性界面活性剤として、上記一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、上記一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び、上記一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステルを含有する場合、上記一般式(3)~(5)示される有機リン酸エステルの総量は、合成繊維用処理剤の全質量に対して0.01~10質量%含有することが好ましく、0.05~5質量%含有することがより好ましく、0.1~3質量%含有することがさらに好ましい。
この組成の合成繊維用処理剤は、紡糸-延伸工程に用いる合成繊維用処理剤として好適である。
【0024】
<その他の成分>
本発明の合成繊維用処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、消泡剤(シリコーン系化合物、鉱物油等)、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常合成繊維の処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0025】
<合成繊維>
本発明の合成繊維は、本発明の合成繊維用処理剤が付着している合成繊維である。本発明の合成繊維用処理剤を付着させる合成繊維としては、特に制限はないが、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレンテレフタラート、ポリ乳酸エステル等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維等が挙げられる。なかでもポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維に付着させる場合に効果の発現が高い。
本発明の合成繊維用処理剤を合成繊維に付着させる割合は、特に制限はないが、本発明の合成繊維用処理剤を合成繊維に対し0.1~3質量%の割合となるよう付着させることが好ましく、0.3~1.2質量%の割合となるよう付着させることがより好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。
また、本発明の合成繊維用処理剤を付着させる工程としては、特に制限はなく、例えば、紡糸工程、紡糸と延伸とを同時に行なう工程等が挙げられる。また、本発明の処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等が挙げられる。さらに、本発明の処理剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、ニート、有機溶剤溶液、水性液等が挙げられるが、水性液が好ましい。本発明の処理剤の水性液を付着させる場合も、合成繊維に対し本発明の処理剤として0.1~3質量%、好ましくは0.3~1.2質量%となるよう付着させると良い。
【0026】
本発明の合成繊維用処理剤は、上記一般式(1)及び上記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体を必須成分として含有することにより、合成繊維の紡糸工程や仮撚工程、後加工工程における近年の高速化にも対応して、静電気や毛羽の発生を充分に防止することができる。
また、本発明の合成繊維用処理剤は、エマルション安定性に優れるため、長時間貯蔵しても含有成分が分離することなく、さらに、氷点下の環境下における低温ハンドリング性に優れるため、合成繊維用処理剤の成分が凝固するなどの問題が生じることがないため、合成繊維用処理剤が均一に付着させ、十分に機能を発揮させ得るために有用であり、エマルション調製のための仕込みに時間を要することもない。
【実施例0027】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術範囲はこれらにより限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0028】
<シクロアルキルアルカノール誘導体の合成>
(A-1)
反応容器に、6-シクロヘキシルヘキシルアルコール184g及びオレイン酸282gを仕込み、窒素ガス下に75℃で溶融した後、触媒としてパラトルエンスルホン酸0.6gを加え、120℃で2mmHgの減圧下で生成する水を反応系外に排出させながら4時間反応させた。次いで、窒素ガス存在下において105℃で常圧に戻し、吸着剤を添加して触媒を処理し、90℃で濾過することでA-1を得た。
この「A-1」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘキシレン基、Rはオレオイル基、mは0であるシクロアルキルアルカノール化合物である。また「A-1」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、ガスクロマトグラフィー質量分析法(以下、「GC-MS」という。)の測定により99%であることを確認した。
【0029】
(A-2)
上記「A-1」の製造方法において、6-シクロヘキシルヘキシルアルコールに代えて、7-シクロヘキシルへプチルアルコールを198g使用した以外は同じようにして、A-2を得た。
この「A-2」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘプチレン基、Rはオレオイル基、mは0であるシクロアルキルアルカノール化合物である。また「A-2」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により98%であることを確認した。
【0030】
(A-3)
7-シクロヘキシルヘプチルアルコール198gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してエチレンオキサイド132gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成したリン酸カリウムを濾別して、7-シクロヘキシルヘプチルアルコールのエチレンオキサイド付加重合物を得た。
得られた付加重合物のうち165gと、オレイン酸141gを窒素ガス存在下において75℃で溶融した後、触媒としてパラトルエンスルホン酸0.3gを加え、120℃で2mmHgの減圧下で生成する水を反応系外に排出させながら4時間反応させた。次いで窒素ガス存在下において105℃で常圧に戻し、吸着剤を添加して触媒を処理し、90℃で濾過することでA-3を得た。
この「A-3」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘプチレン基、Rはオレオイル基、A1aOはEO(エチレンオキシ基)、mは3であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-3」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により97%であることを確認した。
【0031】
(A-4)
上記「A-3」の製造方法において、7-シクロヘキシルヘプチルアルコールに代えて、6-シクロヘキシルへキシルアルコールを184g使用し、エチレンオキサイド132gに代えて、エチレンオキサイド264g、プロピレンオキサイド116gを使用し、オレイン酸141gに代えて、オクタン酸82gを使用した以外は同じようにして、A-4を得た。
この「A-4」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘキシレン基、Rはオクタノイル基、A1aOはEO(エチレンオキシ基)6モル、PO(プロピレンオキシ基)2モル、mは8であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-4」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により95%であることを確認した。
【0032】
(A-5)
6-シクロヘキシルへキシルアルコール184gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してエチレンオキサイド88g、プロピレンオキサイド116gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成したリン酸カリウムを濾別して、7-シクロヘキシルヘプチルアルコールのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加重合物を得た。
得られた付加重合物のうち194gと、アジピン酸37gを窒素ガス存在下において75℃で溶融した後、触媒としてパラトルエンスルホン酸0.3gを加え、120℃で2mmHgの減圧下で生成する水を反応系外に排出させながら4時間反応させた。次いで窒素ガス存在下において105℃で常圧に戻し、吸着剤を添加して触媒を処理し、90℃で濾過することでA-5を得た。
この「A-5」は、一般式(2)中の環Qはシクロへキシレン基、R1bは水素原子、R2bはヘキシレン基、Rはアジポイル基、A1bOはEO(エチレンオキシ基)2モル、PO(プロピレンオキシ基)2モル、mは4であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-5」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により96%であることを確認した。
【0033】
(A-6)
上記「A-3」の製造方法において、7-シクロヘキシルヘプチルアルコールに代えて、2-シクロヘキシルエチルアルコールを128g使用し、オレイン酸141gに代えてステアリン酸142gを使用した以外は同じようにして、A-6を得た。
この「A-6」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはエチレン基、Rはステアロイル基、A1aOはEO(エチレンオキシ基)、mは3であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-6」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により97%であることを確認した。
【0034】
(A-7)
2-シクロヘキシルエチルアルコール128gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してエチレンオキサイド352g、プロピレンオキサイド116gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成したリン酸カリウムを濾別して、2-シクロヘキシルエチルアルコールのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加重合物A-7を得た。
この「A-7」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはエチレン基、Rは水素原子、A1aOはEO(エチレンオキシ基)8モル、PO(プロピレンオキシ基)2モル、mは10であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-7」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0035】
(A-8)
上記「A-7」の製造方法において、2-シクロヘキシルエチルアルコールに代えて、7-シクロヘキシルヘプチルアルコールを198g使用し、エチレンオキサイド352g、プロピレンオキサイド116gに代えて、エチレンオキサイド264g、プロピレンオキサイド116gを使用した以外は同じようにして、A-8を得た。
この「A-8」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘプチレン基、Rは水素原子、A1aOはEO(エチレンオキシ基)6モル、PO(プロピレンオキシ基)2モル、mは8であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-8」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0036】
(A-9)
上記「A-7」の製造方法において、2-シクロヘキシルエチルアルコールに代えて、6-シクロヘキシルヘキシルアルコールを184g使用し、プロピレンオキサイド116gに代えて、プロピレンオキサイド638gを使用した以外は同じようにして、A-9を得た。
この「A-9」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘキシレン基、Rは水素原子、A1aOはEO(エチレンオキシ基)8モル、PO(プロピレンオキシ基)11モル、mは19であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-9」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0037】
(A-10)
上記「A-7」の製造方法において、2-シクロヘキシルエチルアルコールに代えて、6-シクロヘキシルヘキシルアルコールを184g使用し、エチレンオキサイド352g、プロピレンオキサイド116gに代えて、プロピレンオキサイド348gを使用した以外は同じようにして、A-10を得た。
この「A-10」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘキシレン基、Rは水素原子、A1aOはPO(プロピレンオキシ基)6モル、mは6であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-10」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0038】
(A-11)
上記「A-7」の製造方法において、2-シクロヘキシルエチルアルコールに代えて、8-(2-オクチルシクロプロピル)オクチルアルコールを282g使用し、エチレンオキサイド352g、プロピレンオキサイド116gに代えて、エチレンオキサイド132g、プロピレンオキサイド174gを使用した以外は同じようにして、A-11を得た。
この「A-11」は、一般式(1)中の環Qは1,2-シクロプロピレン基、R1aはオクチル基、R2aはオクチレン基、Rは水素原子、A1aOはEO(エチレンオキシ基)3モル、PO(プロピレンオキシ基)3モル、mは6であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-11」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0039】
(A-12)
上記「A-7」の製造方法において、2-シクロヘキシルエチルアルコールに代えて、シクロプロピルメチルアルコールを72g使用し、エチレンオキサイド352g、プロピレンオキサイド116gに代えて、エチレンオキサイド440gを使用した以外は同じようにして、A-12を得た。 この「A-12」は、一般式(1)中の環Qはシクロプロピレン基、R1aは水素原子、R2aはメチレン基、Rは水素原子、A1aOはEO(エチレンオキシ基)10モル、mは10であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-12」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0040】
<有機リン酸エステルの合成>
(B-1)
6-シクロヘキシルヘキシルアルコール184gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してエチレンオキサイド220gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成したリン酸カリウムを濾別して6-シクロヘキシルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド付加重合物を得た。
得られた重合物のうち、202gをフラスコに仕込み、65~70℃に保持して、撹拌しながら無水リン酸24gを少量ずつ1時間かけて加えた後、65~70℃で3時間熟成反応させた。室温に冷却後、水酸化カリウム28gを徐々に加えて中和することで、有機リン酸エステルB-1を得た。
この「B-1」は、本願の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、本願の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び本願の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたときの、P1~P3のP核NMR積分比率は、それぞれ0%、48%、52%であった。
【0041】
(B-2)
2-シクロヘキシルエチルアルコール128gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してプロピレンオキサイド174gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成したリン酸カリウムを濾別して2-シクロヘキシルエチルアルコールのプロピレンオキサイド付加重合物を得た。
得られた重合物のうち、151gをフラスコに仕込み、65~70℃に保持して、撹拌しながら無水リン酸22gを少量ずつ1時間かけて加えた後、65~70℃で3時間熟成反応させた。室温に冷却後、ジブチルエタノールアミン87gを徐々に加えて中和することで、有機リン酸エステルB-2を得た。
この「B-2」は、本願の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、本願の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び本願の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたときの、P1~P3のP核NMR積分比率は、それぞれ12%、43%、45%であった。
【0042】
(B-3)
7-シクロヘキシルヘプチルアルコール198gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してエチレンオキサイド264g及びプロピレンオキサイド116gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成したリン酸カリウムを濾別して7-シクロヘキシルヘプチルアルコールのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加重合物を得た。
得られた重合物のうち、289gをフラスコに仕込み、65~70℃に保持して、撹拌しながら無水リン酸23gを少量ずつ1時間かけて加えた後、65~70℃で3時間熟成反応させた。室温に冷却後、水酸化カリウム28gを徐々に加えて中和することで、有機リン酸エステルB-3を得た。
この「B-3」は、本願の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、本願の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び本願の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたときの、P1~P3のP核NMR積分比率は、それぞれ5%、47%、48%であった。
【0043】
(B-4)
6-シクロヘキシルヘキシルアルコール184gをフラスコに仕込み、65~70℃に保持して、撹拌しながら無水リン酸45gを少量ずつ1時間かけて加えた後、65~70℃で3時間熟成反応させた。室温に冷却後、水酸化ナトリウム40gを徐々に加えて中和することで、有機リン酸エステルB-4を得た。
この「B-4」は、本願の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、本願の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び本願の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたときの、P1~P3のP核NMR積分比率は、それぞれ16%、42%、42%であった。
【0044】
本発明の合成繊維用処理剤(実施例1~16)の組成を表1に、その比較例(比較例1~4)の組成を表2に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1、2において、
E-1:2級アルキル(炭素数12~15)スルホン酸ナトリウム
E-2:オレイン酸カリウム
E-3:オレイルアルコールEO2リン酸エステルとラウリルアミンEO2の塩
E-4:ラウリルリン酸エステルカリウム
N-1:硬化ひまし油EO12トリオレアート
N-2:トリデカノールEO3・PO2パルミタート
N-3:オレイン酸EO5
N-4:ノナノールEO6・PO2
N-5:ラウリルアルコールEO6・PO2
N-6:イソトリデカノールEO10・PO15
N-7:ラウリルアルコールEO55・PO40
N-8:テトラデカノールEO15・PO15
N-9:ブタノールEO6・PO10
N-10:グリセリンEO12
L-1:鉱物油(47mm/s)
L-2:オクチルパルミタート
L-3:ラウリルオレアート
L-4:イソトリデシルステアラート
L-5:トリメチロールプロパントリラウラート
L-6:ソルビタンモノオレアート
L-7:なたね油
【0048】
・エマルション安定性評価
合成繊維用処理剤とイオン交換水を均一混合して、濃度15%の合成繊維用処理剤エマルションを調製してふた付きポリビンに入れ密閉し、合成繊維用処理剤エマルションを40℃で7日間静置した後、外観を目視で観察すると共に、透過率の変化を下記基準により評価した。透過率は分光光度計(島津製作所製の紫外可視分光光度計U-1800)を用いて測定し、以下の基準で評価した。結果を表3にまとめて示した。
[エマルション安定性評価基準]
◎◎:エマルション調製直後からの透過率の低下が5%未満
◎:エマルション調製直後からの透過率の低下が5%以上、10%未満
○:エマルション調製直後からの透過率の低下が10%以上、20%未満
×:エマルション調製直後からの透過率の低下が20%以上、又は粒子発生や分離が確認される
【0049】
・低温ハンドリング性評価
30℃まで加温し、撹拌均一化させた合成繊維用処理剤を容量100mLのふた付きポリビン(内径45mm)に60mL入れ、容器を密閉した。設定温度を-5℃にしたインキュベーターに合成繊維用処理剤を入れたポリビンを3日間静置した。静置後、水性液の外観を目視判定し、以下の基準により評価した。下記基準に示される「流動性」とは合成繊維用処理剤を入れたポリビンを横(90°)に傾け、30秒以内に水性液の一部が容器外へ流れ出た場合、流動性ありと判断した。結果を表3にまとめて示した。
[低温ハンドリング性評価基準]
◎◎:外観に曇り、濁りはなく、流動性がある
◎:流動性はあるが外観に曇り、濁りがあり、一部凝固している
○:流動性はあるが外観に曇り、濁りがあり、大半が凝固している
×:完全に凝固しており、流動性がない
【0050】
・延伸糸の製造
固有粘度0.64、酸化チタン含有量0.2%のポリエチレンテレフタラートを常法により乾燥した後、エクストルーダーを用いて295℃で紡糸し、口金から吐出して冷却固化した後の走行糸条に、濃度10%に調製した合成繊維用処理剤の水性液を、計量ポンプを用いたガイド給油法により、合成繊維用処理剤としての付着量が1.0%となるように付着させた後、ガイドで集束させ、表面速度1400m/分で表面温度90℃の第1ゴデットローラーと、表面速度4800m/分で表面温度150℃の第2ゴデットローラーとで延伸後、4800m/分の速度で巻き取り、83デシテックス36フィラメントの延伸糸を得た。
【0051】
・発生電気の評価
前記の延伸糸の製造で得た延伸糸を巻き返し、糸量200gのチーズを得た。このチーズを20℃、相対湿度40%の雰囲気下に3日間調湿し、下記の条件で発生電気の測定と評価を行った。
(条件)
20℃、相対湿度40%の雰囲気下、チーズ20本をクリールスタンドに設置して糸を解舒し、ワッシャーテンサーを通した後、入角度及び出角度ともに10度になるように調整した直径2cmで長さ5cmの3本のアルミナピンに接触走行させ、200m/分の速度で巻き取った。この時、走行する20本のフィラメントから成るシートの静電気(発生電気)を、3番目のアルミナピンを出て20cmの位置にて、集電式電位測定器により測定した。
測定値を下記の基準により評価した。結果を表3にまとめて示した。
[発生電気の評価基準]
◎:発生電気が0.5kV未満であって、制電性が優れている
○:発生電気が0.5kV以上2kV未満であって、制電性は良である
×:発生電気が2kV以上であって、制電性は不良である
【0052】
【表3】
【0053】
表3の結果からも明らかなように、本発明の具体例である実施例1~16の合成繊維用処理剤は、エマルション安定性や低温ハンドリング性に優れ、延伸糸の制電性にも優れることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の合成繊維用処理剤、この合成繊維用処理剤が付着した合成繊維及び合成繊維の処理方法は、合成繊維の紡糸工程や仮撚工程、後加工工程における近年の高速化にも対応して、優れた制電性より静電気や毛羽を防止できるという効果を発揮するものである。
また、本発明の合成繊維用処理剤は、エマルション安定性や氷点下の環境下における低温ハンドリング性に優れるため、低温環境下での貯蔵でも含有成分が分離することなく、合成繊維用処理剤が均一に付着させ得るため有用である。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
【化1】
(式中、
環Q:炭素数3~8のシクロアルキレン基
1a:水素原子又は炭素数1~12のアルキル基
2a:炭素数1~12の2価の炭化水素基
:水素原子又は炭素数6~22のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基
1aO:炭素数2~4のアルキレンオキシ基(ただし、当該アルキレンオキシ基が2以上存在する場合は、1種単独又は2種以上でも良い。)
:0~100の整数
ただし、m が0でありR が水素原子である場合を除く。
【化2】
(式中、環Q、R1b、R2b、A1bO、mは、式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:炭素数4~12のジカルボン酸から2つの水酸基を除いた残基
ただし、m が0である場合を除く。
【請求項2】
前記一般式(1)におけるR1aは水素原子であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)におけるR1bは水素原子であるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるR2aは炭素数2~8の2価の炭化水素基であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)におけるR2bは炭素数2~8の2価の炭化水素基であるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるRは炭素数6~22の脂肪族モノカルボン酸から水酸基を除いた残基であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記合成繊維用処理剤の全質量に対して、前記シクロアルキルアルカノール誘導体を0.01~30質量%含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
更に、非イオン性界面活性剤(但し、前記シクロアルキルアルカノール誘導体を除く)及びイオン性界面活性剤を含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
更に、平滑剤、非イオン性界面活性剤(但し、前記シクロアルキルアルカノール誘導体
を除く)及びイオン性界面活性剤を含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項8】
前記イオン性界面活性剤が、下記の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、下記の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び下記の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステルを含有する請求項6又は7に記載の合成繊維用処理剤。
【化3】
(式中、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
n:2~4の整数
:「R1c-環Q-R2c-O-(A1cO)m-」から末端の酸素原子を除いた残基(ただし、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味である。)、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化4】
(式中、環Q、R1d、R2d、A1dO(OA1d)、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化5】
(式中、環Q、R1e、R2e、A1eO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
、M:各々独立してアルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤を合成繊維に対し0.1~5質量%となるように付着させることを特徴とする合成繊維の処理方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤、合成繊維及び合成繊維の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、合成繊維の紡糸工程や仮撚工程、後加工工程においては、高速化が更に一段と進み、これに伴って静電気の発生や生産糸の毛羽がますます発生し易くなっている。かかる静電気や毛羽の発生を防止するため、合成繊維に付着させる合成繊維用処理剤としてこれらを防止するための機能性向上剤の含有割合を増加させたものを使用することや、合成繊維に対する合成繊維用処理剤の付着量を上げることが行われているが、依然として充分な対応ではなく、さらなる制電性の向上が要望されている。
【0003】
一方、合成繊維は様々な国や地域において生産が行われており、それに伴って合成繊維用処理剤の使用条件も多岐にわたり、例えば、温度条件において、非常に広い温度範囲での使用に耐えられる合成繊維用処理剤が望まれている。
しかしながら、ポリエーテル類(PO/EO共重合体)を含有する合成繊維用処理剤(例えば、特許文献1等)が多く知られている一方で、これらの合成繊維用処理剤はエマルションの安定性が不十分である場合があった。
合成繊維用処理剤のエマルション安定性が悪いと、例えば、エマルション調製タンク内で貯蔵している間に含有成分が分離してしまい、これを合成繊維に付着させると合成繊維用処理剤が均一に付着せず、その後の紡糸工程や仮撚工程、後加工工程において問題が多発する原因となる。
また、氷点下の環境下における低温ハンドリング性の低下は、例えば、合成繊維用処理剤の成分が凝固して含有成分が不均一な状態になり十分に機能を発揮できなかったり、エマルション調製のための仕込みに時間を要したりする原因となる。
すなわち、合成繊維用処理剤のエマルション安定性や低温ハンドリング性の向上は、合成繊維の品質を向上させる要因であるため重要な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-245729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、合成繊維に良好な制電性を付与し、かつ、エマルション安定性及び低温ハンドリング性に優れる合成繊維用処理剤、かかる処理剤が付着した合成繊維及び、かかる合成繊維用処理剤を合成繊維に付着させる処理方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、合成繊維に良好な制電性を付与し、かつ、エマルション安定性及び低温ハンドリング性に優れる合成繊維用処理剤とするためには、特定の化学構造を有するシクロアルキルアルカノール誘導体が大きく関与していることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0007】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.下記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
【化1】
(式中、
環Q:炭素数3~8のシクロアルキレン基
1a:水素原子又は炭素数1~12のアルキル基
2a:炭素数1~12の2価の炭化水素基
:水素原子又は炭素数6~22のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基
1aO:炭素数2~4のアルキレンオキシ基(ただし、当該アルキレンオキシ基が2以上存在する場合は、1種単独又は2種以上でも良い。)
:0~100の整数
ただし、m が0でありR が水素原子である場合を除く。
【化2】
(式中、環Q、R1b、R2b、A1bO、mは、式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:炭素数4~12のジカルボン酸から2つの水酸基を除いた残基
ただし、m が0である場合を除く。
2.前記一般式(1)におけるR1aは水素原子であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)におけるR1bは水素原子であるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、1.に記載の合成繊維用処理剤。
3.前記一般式(1)におけるR2aは炭素数2~8の2価の炭化水素基であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)におけるR2bは炭素数2~8の2価の炭化水素基であるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、1.又は2.に記載の合成繊維用処理剤。
4.前記一般式(1)におけるRは炭素数6~22の脂肪族モノカルボン酸から水酸基を除いた残基であるシクロアルキルアルカノール誘導体及び、前記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する、1.~3.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
5.前記合成繊維用処理剤の全質量に対して、前記シクロアルキルアルカノール誘導体を0.01~30質量%含有する1.~4.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
6.更に、非イオン性界面活性剤(但し、前記シクロアルキルアルカノール誘導体を除く)及びイオン性界面活性剤を含有する1.~5.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
7.更に、平滑剤、非イオン性界面活性剤(但し、前記シクロアルキルアルカノール誘導体を除く)及びイオン性界面活性剤を含有する1.~5.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
8.前記イオン性界面活性剤が、下記の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、下記の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び下記の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステルを含有する6.又は7.に記載の合成繊維用処理剤。
【化3】
(式中、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
n:2~4の整数
:「R1c-環Q-R2c-O-(A1cO)m-」から末端の酸素原子を除いた残基(ただし、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味である。)、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化4】
(式中、環Q、R1d、R2d、A1dO(OA1d)、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化5】
(式中、環Q、R1e、R2e、A1eO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
、M:各々独立してアルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
9.1.~8.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
10.1.~8.のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤を合成繊維に対し0.1~5質量%となるように付着させることを特徴とする合成繊維の処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の合成繊維用処理剤、合成繊維及び合成繊維の処理方法は、合成繊維の紡糸工程や仮撚工程、後加工工程における近年の高速化にも対応して、優れた制電性により静電気や毛羽を防止できるという効果を発揮するものである。
また、本発明の合成繊維用処理剤は、エマルション安定性に優れるため、エマルションを長時間貯蔵しても含有成分が分離することなく、合成繊維用処理剤を均一に付着させ得るため有用である。
さらに、本発明の合成繊維用処理剤は、氷点下の環境下における低温ハンドリング性に優れるため、合成繊維用処理剤の成分が凝固するなどの問題が生じることがなく、エマルション調製のための仕込みに時間を要することもない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を含有する合成繊維用処理剤や、かかる処理剤が付着した合成繊維及び、かかる合成繊維用処理剤を合成繊維に付着させる処理方法に関する。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
<シクロアルキルアルカノール誘導体>
本発明の合成繊維用処理剤は、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体から選択される1種以上を必須成分として含有するものである。
【化6】
(式中、
環Q:炭素数3~8のシクロアルキレン基
1a:水素原子又は炭素数1~12のアルキル基
2a:炭素数1~12の2価の炭化水素基
:水素原子又は炭素数6~22のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基
1aO:炭素数2~4のアルキレンオキシ基(ただし、当該アルキレンオキシ基が2以上存在する場合は、1種単独又は2種以上でも良い。)
:0~100の整数
ただし、m が0でありR が水素原子である場合を除く。
【化7】
(式中、環Q、R1b、R2b、A1bO、mは、式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:炭素数4~12のジカルボン酸から水酸基を除いた残基
ただし、m が0である場合を除く。
【0011】
本発明における上記の一般式(1)に示されるシクロアルキルアルカノール誘導体は、炭素数6~22のモノカルボン酸シクロアルキルアルカノールエステル、シクロアルキルアルカノールのアルキレンオキサイド付加重合体又は炭素数6~22のモノカルボン酸とシクロアルキルアルカノールのアルキレンオキサイド付加重合体とのエステルであり、本発明における上記の一般式(2)に示されるシクロアルキルアルカノール誘導体は、炭素数4~12のジカルボン酸シクロアルキルアルカノールジエステル又は炭素数4~12のジカルボン酸とシクロアルキルアルカノールのアルキレンオキサイド付加重合体とのジエステルである。
上記一般式(1)中の環Q、一般式(2)中の環Qは、各々独立して炭素数5~8のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数5又は6のシクロアルキル基であることがより好ましい。
上記一般式(1)のR1a、一般式(2)中のR1bは、各々独立して水素原子又は炭素数6~10のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数6~8のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
上記一般式(1)中のR2a、一般式(2)中のR2bの炭素数1~12の2価の炭化水素基は、各々独立して、直鎖状又は分岐鎖状の何れでも良く、飽和又は不飽和の何れで
も良い。中でも、各々独立して直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキレン基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2~8のアルキレン基がより好ましく、直鎖状の炭素数2~8のアルキレン基が特に好ましい。
上記一般式(1)中のRの水素原子又は炭素数6~22のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基におけるモノカルボン酸は、飽和モノカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸の何れでも良い。中でも、水素原子又は飽和/不飽和炭素数8~20のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基であることが好ましく、飽和/不飽和炭素数8~20のモノカルボン酸から水酸基を除いた残基であることがより好ましい。
上記一般式(2)中のRの炭素数4~12のジカルボン酸から2つの水酸基を除いた残基におけるジカルボン酸は、飽和又は不飽和の脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸の何れでも良い。中でも、炭素数4~12の飽和又は不飽和の脂肪族ジカルボン酸から2つの水酸基を除いた残基が好ましく、炭素数4~12の飽和脂肪族ジカルボン酸から2つの水酸基を除いた残基がより好ましい。
上記一般式(1)中のA1aO、一般式(2)中のA1bOが、炭素数2~4のアルキレンオキシ基が2種以上である場合は、各々独立して、ランダムに分散されていても、ブロックであっても、それらの混合であってもよい。中でも、各々独立して、炭素数2又は3のアルキレンオキシ基が1種単独又は2種であることが好ましい。
上記一般式(1)中のm、一般式(2)中のmは炭素数2~4のアルキレンオキシ基の平均モル数を表し、各々独立して、0~20の整数が好ましく、0~15の整数がより好ましい(ただし、m が0でありR が水素原子である場合、m が0である場合を除く。)
【0012】
本発明における、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体は、例えば、シクロアルキルアルカノールとモノカルボン酸又はジカルボン酸とのエステル化反応、シクロアルキルアルカノールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドをランダム、ブロック又はそれらを混合した方法での付加重合、または上記のシクロアルカノールのアルキレンオキサイド付加重合体とモノカルボン酸又はジカルボン酸とのエステル化反応によって製造されるものである。
【0013】
本発明の合成繊維用処理剤は、その全質量に対して、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体を0.01~30質量%含有することが好ましく、0.1~25質量%含有することがより好ましく、0.2~20質量%含有することがさらに好ましく、0.2~10質量%含有することが特に好ましい。
また、本発明の合成繊維用処理剤は、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
さらに、本発明の合成繊維用処理剤は、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤、平滑剤及びイオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明の合成繊維用処理剤に併用できる、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤、平滑剤及びイオン性界面活性剤について、説明する。
【0014】
<シクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤>
本発明における合成繊維用処理剤に併用できる、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリオキシエチレンオレアート、ポリオキシエチレンメチルエーテルラウラート、ポリオキシエチレンオクチルエーテルラウラート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテルパルミタート、ポリオキシエチレンジオレアート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル等の、有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミド分子に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、(2)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレアート、ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテルトリオレアート等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、(3)ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド、(4)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明では、化合物名の末端にEOおよびPOと記載したものは、それぞれエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの付加物を意味し、後に続く数字はその付加モル数を示す。EOおよびPOの後に記載された数値はそれぞれの平均付加モル数を意味する。
【0015】
<シクロアルキルアルカノール誘導体以外の平滑剤>
本発明の合成繊維用処理剤に併用できる、上記一般式(1)及び一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体以外の平滑剤としては、(1)ブチルステアラート、オクチルステアラート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソペンタコサニルイソステアラート、オクチルパルミタート、イソトリデシルステアラート、ラウリルオクタート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカノアート、トリメチロールプロパンモノオレアートモノラウラート、ソルビタントリオレアート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリステアラート、ソルビタンジステアラート、ソルビタンモノステアラート、グリセリンモノラウラート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(3)ジラウリルアジパート、ジオレイルアゼラート、ジイソセチルチオジプロピオナート、ビスポリオキシエチレンラウリルアジパート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート及びポリオキシプロピレンベンジルステアラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート、ポリオキシエチレンビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(6)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸とのエステル化合物、(7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂、(8)鉱物油等、合成繊維用処理剤に採用されている公知の平滑剤が挙げられる。これらの平滑剤成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
<イオン性界面活性剤>
本発明の合成繊維用処理剤は、下記の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、下記の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び下記の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステルをイオン性界面活性剤として併用することが好ましい。
【化8】
(式中、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
n:2~4の整数
:「R1c-環Q-R2c-O-(A1cO)m-」から末端の酸素原子を除いた残基(ただし、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味である。)、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化9】
(式中、環Q、R1d、R2d、A1dO(OA1d)、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
:アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【化10】
(式中、環Q、R1e、R2e、A1eO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味であり、
、M:各々独立してアルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、又は水素原子)
【0017】
上記一般式(3)中の環Q、R1c、R2c、A1cO、m、上記一般式(4)中の環Q、R1d、R2d、A1dO(OA1d)、m、上記一般式(5)中の環Q、R1e、R2e、A1eO、mの好適例は、各々独立して、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと同じである。
上記一般式(3)中のRは、「R1c-環Q-R2c-O-(A1cO)m-」から末端の酸素原子を除いた残基(ただし、環Q、R1c、R2c、A1cO、mは、一般式(1)の環Q、R1a、R2a、A1aO、mと各々独立して同じ意味である。)であることが好ましい。
上記一般式(3)中のM、上記一般式(4)中のM、上記一般式(5)中のM、Mは、各々独立してアルカリ金属又は有機アミン塩であることが好ましい。
【0018】
上記一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、上記一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び、上記一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%とする。このとき、一般式(5)で示され
る有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率は、30~80%であり、35~75%であることが更によく、40~70%であることが特によい。
【0019】
P核NMR積分比率(有機リン酸エステルP1、P2、P3から帰属されるP核NMRの積分比率(%))は、有機リン酸エステルのアルカリ金属塩等に過剰のKOHを加えてpHを12以上にした条件下で、31P-NMR(VALIAN社製の商品名MERCURY plus NMR Spectrometor System、300MHz)に供したときの測定値を用いて、下記の式(a)~式(c)に基づいて算出することができる値を意味する。なお、溶媒は重水/テトラヒドロフラン=8/2(体積比)の混合溶媒を用いることができる。
なお、式(a)~式(c)中、「P化1」は、一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分値を、「P化2」は、一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2に帰属されるP核NMR積分値を、「P化3」は、一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分値を示す。
【0020】
[数1]
有機リン酸エステルP1のP核NMR積分比率(%)=(P化1)÷(P化1+P化2+P化3)×100・・・(a)
[数2]
有機リン酸エステルP2のP核NMR積分比率(%)=(P化2)÷(P化1+P化2+P化3)×100・・・(b)
[数3]
有機リン酸エステルP3のP核NMR積分比率(%)=(P化3)÷(P化1+P化2+P化3)×100・・・(c)
本発明における、上記一般式(3)~(5)で示される有機リン酸エステルの製造方法は特に制限されないが、例えば、シクロアルキルアルカノール、又はシクロアルキルアルカノールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドをランダム、ブロック又はそれらを混合した方法で付加重合させたものと、無水リン酸に代表されるリン酸化剤とを混合しエステル化して製造されるもの、またはさらにそれを塩基で中和することによって製造されるものである。
【0021】
<その他のイオン性界面活性剤>
本発明の合成繊維用処理剤は、さらにその他のイオン性界面活性剤を含んでいてもよく、繊維用処理剤として使用される公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。具体的には、例えば、アニオン性界面活性剤としては、(1)酢酸カリウム塩、オクタン酸カリウム塩、オレイン酸カリウム塩、オレイン酸ナトリウム塩、アルケニルコハク酸カリウム塩等のカルボン酸石鹸型イオン性界面活性剤、(2)2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩等のスルホン酸エステル型イオン性界面活性剤、(3)ポリオキシエチレンラウリル硫酸エステルナトリウム塩、ヘキサデシル硫酸カリウム塩、牛脂硫化油、ヒマシ油硫化油等の硫酸エステル型イオン性界面活性剤、(4)ドデシルリン酸エステルナトリウム塩、オレイルリン酸エステルカリウム塩、ヘキサデシルリン酸エステルカリウム塩、オクタデシルリン酸エステルカリウム塩、オレイルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステルとポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルとの塩等の有機リン酸エステル塩等が挙げられる。またカチオン性界面活性剤としては、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ジメチルステアリルアミンオキサイド等の有機アミンオキサイド、オクチルジメチルアンモニオアセタート等のベタイン型両性界面活性剤、N,N-ビス(2-カルボキシエチル)-オクチルアミンナトリウム等のアラニン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく
、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明の合成繊維用処理剤において、上記一般式(1)及び上記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体と、それ以外の非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤を含有する場合、合成繊維用処理剤の全質量に対して、それ以外の非イオン性界面活性剤は50~99質量%含有することが好ましく、60~99質量%含有することがより好ましく、65~99質量%含有することがさらに好ましく、それ以外のイオン性界面活性剤は0.01~10質量%含有することが好ましく、0.1~10質量%含有することがより好ましく、0.5~5質量%含有することがさらに好ましい。
上記イオン性界面活性剤として、上記一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、上記一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び、上記一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステルを含有する場合、上記一般式(3)~(5)示される有機リン酸エステルの総量は、合成繊維用処理剤の全質量に対して0.01~10質量%含有することが好ましく、0.05~5質量%含有することがより好ましく、0.1~3質量%含有することがさらに好ましい。
【0023】
本発明の合成繊維用処理剤において、上記一般式(1)及び上記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体と、前記シクロアルキルアルカノール誘導体以外の非イオン性界面活性剤、平滑剤、及びイオン性界面活性剤を含有する場合、それ以外の非イオン性界面活性剤は5~60質量%含有することが好ましく、10~60質量%含有することがより好ましく、10~50質量%含有することがさらに好ましく、それ以外の平滑剤は、30~80質量%含有することが好ましく、30~70質量%含有することがより好ましく、40~70質量%含有することがさらに好ましく、それ以外のイオン性界面活性剤は0.1~25質量%含有することが好ましく、0.5~20質量%含有することがより好ましく、1.0~15質量%含有することがさらに好ましい。
上記イオン性界面活性剤として、上記一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、上記一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び、上記一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3から選ばれる少なくとも1つの有機リン酸エステルを含有する場合、上記一般式(3)~(5)示される有機リン酸エステルの総量は、合成繊維用処理剤の全質量に対して0.01~10質量%含有することが好ましく、0.05~5質量%含有することがより好ましく、0.1~3質量%含有することがさらに好ましい。
この組成の合成繊維用処理剤は、紡糸-延伸工程に用いる合成繊維用処理剤として好適である。
【0024】
<その他の成分>
本発明の合成繊維用処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、消泡剤(シリコーン系化合物、鉱物油等)、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常合成繊維の処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0025】
<合成繊維>
本発明の合成繊維は、本発明の合成繊維用処理剤が付着している合成繊維である。本発明の合成繊維用処理剤を付着させる合成繊維としては、特に制限はないが、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレンテレフタラート、ポリ乳酸エステル等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維等が挙げられる。なかでもポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維に付着させる場合に効果の発現が高い。
本発明の合成繊維用処理剤を合成繊維に付着させる割合は、特に制限はないが、本発明の合成繊維用処理剤を合成繊維に対し0.1~3質量%の割合となるよう付着させること
が好ましく、0.3~1.2質量%の割合となるよう付着させることがより好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。
また、本発明の合成繊維用処理剤を付着させる工程としては、特に制限はなく、例えば、紡糸工程、紡糸と延伸とを同時に行なう工程等が挙げられる。また、本発明の処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等が挙げられる。さらに、本発明の処理剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、ニート、有機溶剤溶液、水性液等が挙げられるが、水性液が好ましい。本発明の処理剤の水性液を付着させる場合も、合成繊維に対し本発明の処理剤として0.1~3質量%、好ましくは0.3~1.2質量%となるよう付着させると良い。
【0026】
本発明の合成繊維用処理剤は、上記一般式(1)及び上記一般式(2)で示されるシクロアルキルアルカノール誘導体を必須成分として含有することにより、合成繊維の紡糸工程や仮撚工程、後加工工程における近年の高速化にも対応して、静電気や毛羽の発生を充分に防止することができる。
また、本発明の合成繊維用処理剤は、エマルション安定性に優れるため、長時間貯蔵しても含有成分が分離することなく、さらに、氷点下の環境下における低温ハンドリング性に優れるため、合成繊維用処理剤の成分が凝固するなどの問題が生じることがないため、合成繊維用処理剤が均一に付着させ、十分に機能を発揮させ得るために有用であり、エマルション調製のための仕込みに時間を要することもない。
【実施例0027】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術範囲はこれらにより限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0028】
<シクロアルキルアルカノール誘導体の合成>
(A-1)
反応容器に、6-シクロヘキシルヘキシルアルコール184g及びオレイン酸282gを仕込み、窒素ガス下に75℃で溶融した後、触媒としてパラトルエンスルホン酸0.6gを加え、120℃で2mmHgの減圧下で生成する水を反応系外に排出させながら4時間反応させた。次いで、窒素ガス存在下において105℃で常圧に戻し、吸着剤を添加して触媒を処理し、90℃で濾過することでA-1を得た。
この「A-1」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘキシレン基、Rはオレオイル基、mは0であるシクロアルキルアルカノール化合物である。また「A-1」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、ガスクロマトグラフィー質量分析法(以下、「GC-MS」という。)の測定により99%であることを確認した。
【0029】
(A-2)
上記「A-1」の製造方法において、6-シクロヘキシルヘキシルアルコールに代えて、7-シクロヘキシルへプチルアルコールを198g使用した以外は同じようにして、A-2を得た。
この「A-2」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘプチレン基、Rはオレオイル基、mは0であるシクロアルキルアルカノール化合物である。また「A-2」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により98%であることを確認した。
【0030】
(A-3)
7-シクロヘキシルヘプチルアルコール198gをオートクレーブに仕込み、触媒とし
て水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してエチレンオキサイド132gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成したリン酸カリウムを濾別して、7-シクロヘキシルヘプチルアルコールのエチレンオキサイド付加重合物を得た。
得られた付加重合物のうち165gと、オレイン酸141gを窒素ガス存在下において75℃で溶融した後、触媒としてパラトルエンスルホン酸0.3gを加え、120℃で2mmHgの減圧下で生成する水を反応系外に排出させながら4時間反応させた。次いで窒素ガス存在下において105℃で常圧に戻し、吸着剤を添加して触媒を処理し、90℃で濾過することでA-3を得た。
この「A-3」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘプチレン基、Rはオレオイル基、A1aOはEO(エチレンオキシ基)、mは3であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-3」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により97%であることを確認した。
【0031】
(A-4)
上記「A-3」の製造方法において、7-シクロヘキシルヘプチルアルコールに代えて、6-シクロヘキシルへキシルアルコールを184g使用し、エチレンオキサイド132gに代えて、エチレンオキサイド264g、プロピレンオキサイド116gを使用し、オレイン酸141gに代えて、オクタン酸82gを使用した以外は同じようにして、A-4を得た。
この「A-4」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘキシレン基、Rはオクタノイル基、A1aOはEO(エチレンオキシ基)6モル、PO(プロピレンオキシ基)2モル、mは8であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-4」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により95%であることを確認した。
【0032】
(A-5)
6-シクロヘキシルへキシルアルコール184gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してエチレンオキサイド88g、プロピレンオキサイド116gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成したリン酸カリウムを濾別して、7-シクロヘキシルヘプチルアルコールのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加重合物を得た。
得られた付加重合物のうち194gと、アジピン酸37gを窒素ガス存在下において75℃で溶融した後、触媒としてパラトルエンスルホン酸0.3gを加え、120℃で2mmHgの減圧下で生成する水を反応系外に排出させながら4時間反応させた。次いで窒素ガス存在下において105℃で常圧に戻し、吸着剤を添加して触媒を処理し、90℃で濾過することでA-5を得た。
この「A-5」は、一般式(2)中の環Qはシクロへキシレン基、R1bは水素原子、R2bはヘキシレン基、Rはアジポイル基、A1bOはEO(エチレンオキシ基)2モル、PO(プロピレンオキシ基)2モル、mは4であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-5」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により96%であることを確認した。
【0033】
(A-6)
上記「A-3」の製造方法において、7-シクロヘキシルヘプチルアルコールに代えて
、2-シクロヘキシルエチルアルコールを128g使用し、オレイン酸141gに代えてステアリン酸142gを使用した以外は同じようにして、A-6を得た。
この「A-6」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはエチレン基、Rはステアロイル基、A1aOはEO(エチレンオキシ基)、mは3であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-6」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により97%であることを確認した。
【0034】
(A-7)
2-シクロヘキシルエチルアルコール128gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してエチレンオキサイド352g、プロピレンオキサイド116gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成したリン酸カリウムを濾別して、2-シクロヘキシルエチルアルコールのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加重合物A-7を得た。
この「A-7」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはエチレン基、Rは水素原子、A1aOはEO(エチレンオキシ基)8モル、PO(プロピレンオキシ基)2モル、mは10であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-7」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0035】
(A-8)
上記「A-7」の製造方法において、2-シクロヘキシルエチルアルコールに代えて、7-シクロヘキシルヘプチルアルコールを198g使用し、エチレンオキサイド352g、プロピレンオキサイド116gに代えて、エチレンオキサイド264g、プロピレンオキサイド116gを使用した以外は同じようにして、A-8を得た。
この「A-8」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘプチレン基、Rは水素原子、A1aOはEO(エチレンオキシ基)6モル、PO(プロピレンオキシ基)2モル、mは8であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-8」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0036】
(A-9)
上記「A-7」の製造方法において、2-シクロヘキシルエチルアルコールに代えて、6-シクロヘキシルヘキシルアルコールを184g使用し、プロピレンオキサイド116gに代えて、プロピレンオキサイド638gを使用した以外は同じようにして、A-9を得た。
この「A-9」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原子、R2aはヘキシレン基、Rは水素原子、A1aOはEO(エチレンオキシ基)8モル、PO(プロピレンオキシ基)11モル、mは19であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-9」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0037】
(A-10)
上記「A-7」の製造方法において、2-シクロヘキシルエチルアルコールに代えて、6-シクロヘキシルヘキシルアルコールを184g使用し、エチレンオキサイド352g、プロピレンオキサイド116gに代えて、プロピレンオキサイド348gを使用した以外は同じようにして、A-10を得た。
この「A-10」は、一般式(1)中の環Qはシクロへキシレン基、R1aは水素原
子、R2aはヘキシレン基、Rは水素原子、A1aOはPO(プロピレンオキシ基)6モル、mは6であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-10」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0038】
(A-11)
上記「A-7」の製造方法において、2-シクロヘキシルエチルアルコールに代えて、8-(2-オクチルシクロプロピル)オクチルアルコールを282g使用し、エチレンオキサイド352g、プロピレンオキサイド116gに代えて、エチレンオキサイド132g、プロピレンオキサイド174gを使用した以外は同じようにして、A-11を得た。
この「A-11」は、一般式(1)中の環Qは1,2-シクロプロピレン基、R1aはオクチル基、R2aはオクチレン基、Rは水素原子、A1aOはEO(エチレンオキシ基)3モル、PO(プロピレンオキシ基)3モル、mは6であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-11」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0039】
(A-12)
上記「A-7」の製造方法において、2-シクロヘキシルエチルアルコールに代えて、シクロプロピルメチルアルコールを72g使用し、エチレンオキサイド352g、プロピレンオキサイド116gに代えて、エチレンオキサイド440gを使用した以外は同じようにして、A-12を得た。 この「A-12」は、一般式(1)中の環Qはシクロプロピレン基、R1aは水素原子、R2aはメチレン基、Rは水素原子、A1aOはEO(エチレンオキシ基)10モル、mは10であるシクロアルキルアルカノール誘導体化合物である。また「A-12」の純度は、本発明のシクロアルキルアルカノール誘導体として、GC-MSの測定により100%であることを確認した。
【0040】
<有機リン酸エステルの合成>
(B-1)
6-シクロヘキシルヘキシルアルコール184gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してエチレンオキサイド220gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成したリン酸カリウムを濾別して6-シクロヘキシルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド付加重合物を得た。
得られた重合物のうち、202gをフラスコに仕込み、65~70℃に保持して、撹拌しながら無水リン酸24gを少量ずつ1時間かけて加えた後、65~70℃で3時間熟成反応させた。室温に冷却後、水酸化カリウム28gを徐々に加えて中和することで、有機リン酸エステルB-1を得た。
この「B-1」は、本願の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、本願の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び本願の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたときの、P1~P3のP核NMR積分比率は、それぞれ0%、48%、52%であった。
【0041】
(B-2)
2-シクロヘキシルエチルアルコール128gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してプロピレンオキサイド174gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成した
リン酸カリウムを濾別して2-シクロヘキシルエチルアルコールのプロピレンオキサイド付加重合物を得た。
得られた重合物のうち、151gをフラスコに仕込み、65~70℃に保持して、撹拌しながら無水リン酸22gを少量ずつ1時間かけて加えた後、65~70℃で3時間熟成反応させた。室温に冷却後、ジブチルエタノールアミン87gを徐々に加えて中和することで、有機リン酸エステルB-2を得た。
この「B-2」は、本願の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、本願の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び本願の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたときの、P1~P3のP核NMR積分比率は、それぞれ12%、43%、45%であった。
【0042】
(B-3)
7-シクロヘキシルヘプチルアルコール198gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.3gを加えた後、オートクレーブ内を窒素で十分に置換した。撹拌しながら、ゲージ圧力0.0~0.4MPa、反応温度110~120℃に維持してエチレンオキサイド264g及びプロピレンオキサイド116gを圧入して、約5時間付加重合反応を行った。その後得られた反応物をフラスコに移し、触媒の水酸化カリウムをリン酸で中和した。中和により生成したリン酸カリウムを濾別して7-シクロヘキシルヘプチルアルコールのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加重合物を得た。
得られた重合物のうち、289gをフラスコに仕込み、65~70℃に保持して、撹拌しながら無水リン酸23gを少量ずつ1時間かけて加えた後、65~70℃で3時間熟成反応させた。室温に冷却後、水酸化カリウム28gを徐々に加えて中和することで、有機リン酸エステルB-3を得た。
この「B-3」は、本願の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、本願の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び本願の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたときの、P1~P3のP核NMR積分比率は、それぞれ5%、47%、48%であった。
【0043】
(B-4)
6-シクロヘキシルヘキシルアルコール184gをフラスコに仕込み、65~70℃に保持して、撹拌しながら無水リン酸45gを少量ずつ1時間かけて加えた後、65~70℃で3時間熟成反応させた。室温に冷却後、水酸化ナトリウム40gを徐々に加えて中和することで、有機リン酸エステルB-4を得た。
この「B-4」は、本願の一般式(3)で示される有機リン酸エステルP1、本願の一般式(4)で示される有機リン酸エステルP2、及び本願の一般式(5)で示される有機リン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたときの、P1~P3のP核NMR積分比率は、それぞれ16%、42%、42%であった。
【0044】
本発明の合成繊維用処理剤(実施例1~16)の組成を表1に、その比較例(比較例1~4)の組成を表2に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1、2において、
E-1:2級アルキル(炭素数12~15)スルホン酸ナトリウム
E-2:オレイン酸カリウム
E-3:オレイルアルコールEO2リン酸エステルとラウリルアミンEO2の塩
E-4:ラウリルリン酸エステルカリウム
N-1:硬化ひまし油EO12トリオレアート
N-2:トリデカノールEO3・PO2パルミタート
N-3:オレイン酸EO5
N-4:ノナノールEO6・PO2
N-5:ラウリルアルコールEO6・PO2
N-6:イソトリデカノールEO10・PO15
N-7:ラウリルアルコールEO55・PO40
N-8:テトラデカノールEO15・PO15
N-9:ブタノールEO6・PO10
N-10:グリセリンEO12
L-1:鉱物油(47mm/s)
L-2:オクチルパルミタート
L-3:ラウリルオレアート
L-4:イソトリデシルステアラート
L-5:トリメチロールプロパントリラウラート
L-6:ソルビタンモノオレアート
L-7:なたね油
【0048】
・エマルション安定性評価
合成繊維用処理剤とイオン交換水を均一混合して、濃度15%の合成繊維用処理剤エマルションを調製してふた付きポリビンに入れ密閉し、合成繊維用処理剤エマルションを40℃で7日間静置した後、外観を目視で観察すると共に、透過率の変化を下記基準により評価した。透過率は分光光度計(島津製作所製の紫外可視分光光度計U-1800)を用いて測定し、以下の基準で評価した。結果を表3にまとめて示した。
[エマルション安定性評価基準]
◎◎:エマルション調製直後からの透過率の低下が5%未満
◎:エマルション調製直後からの透過率の低下が5%以上、10%未満
○:エマルション調製直後からの透過率の低下が10%以上、20%未満
×:エマルション調製直後からの透過率の低下が20%以上、又は粒子発生や分離が確認される
【0049】
・低温ハンドリング性評価
30℃まで加温し、撹拌均一化させた合成繊維用処理剤を容量100mLのふた付きポリビン(内径45mm)に60mL入れ、容器を密閉した。設定温度を-5℃にしたインキュベーターに合成繊維用処理剤を入れたポリビンを3日間静置した。静置後、水性液の外観を目視判定し、以下の基準により評価した。下記基準に示される「流動性」とは合成繊維用処理剤を入れたポリビンを横(90°)に傾け、30秒以内に水性液の一部が容器外へ流れ出た場合、流動性ありと判断した。結果を表3にまとめて示した。
[低温ハンドリング性評価基準]
◎◎:外観に曇り、濁りはなく、流動性がある
◎:流動性はあるが外観に曇り、濁りがあり、一部凝固している
○:流動性はあるが外観に曇り、濁りがあり、大半が凝固している
×:完全に凝固しており、流動性がない
【0050】
・延伸糸の製造
固有粘度0.64、酸化チタン含有量0.2%のポリエチレンテレフタラートを常法により乾燥した後、エクストルーダーを用いて295℃で紡糸し、口金から吐出して冷却固化した後の走行糸条に、濃度10%に調製した合成繊維用処理剤の水性液を、計量ポンプを用いたガイド給油法により、合成繊維用処理剤としての付着量が1.0%となるように付着させた後、ガイドで集束させ、表面速度1400m/分で表面温度90℃の第1ゴデットローラーと、表面速度4800m/分で表面温度150℃の第2ゴデットローラーとで延伸後、4800m/分の速度で巻き取り、83デシテックス36フィラメントの延伸糸を得た。
【0051】
・発生電気の評価
前記の延伸糸の製造で得た延伸糸を巻き返し、糸量200gのチーズを得た。このチーズを20℃、相対湿度40%の雰囲気下に3日間調湿し、下記の条件で発生電気の測定と評価を行った。
(条件)
20℃、相対湿度40%の雰囲気下、チーズ20本をクリールスタンドに設置して糸を解舒し、ワッシャーテンサーを通した後、入角度及び出角度ともに10度になるように調整した直径2cmで長さ5cmの3本のアルミナピンに接触走行させ、200m/分の速度で巻き取った。この時、走行する20本のフィラメントから成るシートの静電気(発生電気)を、3番目のアルミナピンを出て20cmの位置にて、集電式電位測定器により測定した。
測定値を下記の基準により評価した。結果を表3にまとめて示した。
[発生電気の評価基準]
◎:発生電気が0.5kV未満であって、制電性が優れている
○:発生電気が0.5kV以上2kV未満であって、制電性は良である
×:発生電気が2kV以上であって、制電性は不良である
【0052】
【表3】
【0053】
表3の結果からも明らかなように、本発明の具体例である実施例1~16の合成繊維用処理剤は、エマルション安定性や低温ハンドリング性に優れ、延伸糸の制電性にも優れることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の合成繊維用処理剤、この合成繊維用処理剤が付着した合成繊維及び合成繊維の処理方法は、合成繊維の紡糸工程や仮撚工程、後加工工程における近年の高速化にも対応して、優れた制電性より静電気や毛羽を防止できるという効果を発揮するものである。
また、本発明の合成繊維用処理剤は、エマルション安定性や氷点下の環境下における低温ハンドリング性に優れるため、低温環境下での貯蔵でも含有成分が分離することなく、合成繊維用処理剤が均一に付着させ得るため有用である。