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特開2022-163758ガラスを曲面形状に成形する装置及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163758
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ガラスを曲面形状に成形する装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 23/025 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
C03B23/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068789
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】304058974
【氏名又は名称】株式会社武内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100167416
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】武内 隆哲
(72)【発明者】
【氏名】武内 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】辻井 俊之
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015AA04
4G015AB01
4G015AB07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガラスの複雑な曲面化の実現とともに、成形後の光学鏡面を実現するガラス曲面成形装置と成形方法を提供する。
【解決手段】ガラス曲面成形装置は、ガラス板を戴置し該ガラス板を真空引きしうる一又は複数のキャビティを備える下型31と、複数の赤外線ヒータ11を備えるガラス曲面成形装置であって、複数の赤外線ヒータは、下型31の上面に対して長さ方向に並列配置し、並列配置した複数の赤外線ヒータ11を個別に制御することでガラス板の所望の位置が自重により垂れ下がり、ガラス板を所定の曲率に成形することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板を戴置し該ガラス板を真空引きしうる一又は複数のキャビティを備える下型と、複数の赤外線ヒータを備えるガラス曲面成形装置であって、
前記複数の赤外線ヒータは、前記下型の上面に対して長さ方向に並列配置し、並列配置した前記複数の赤外線ヒータを個別に制御することで前記ガラス板の所望の位置が自重により垂れ下がり、前記ガラス板を所定の曲率に成形することを特徴とするガラス曲面成形装置。
【請求項2】
ガラス板を戴置し該ガラス板を真空引きしうる一又は複数のキャビティを備える下型と、該ガラス板を所望の曲げ方向に加圧する一又は複数の押圧ローラと、複数の赤外線ヒータを備えるガラス曲面成形装置であって、
前記押圧ローラは、ローラ外周面が耐熱クロスで被覆され、
前記複数の赤外線ヒータは、前記下型の上面に対して長さ方向に並列配置し、並列配置した前記複数の赤外線ヒータのうち、前記下型に載置された前記ガラス板の所望の箇所を加熱できる任意の赤外線ヒータを選択加熱することで前記ガラス板を所定の曲率に成形することを特徴とするガラス曲面成形装置。
【請求項3】
前記耐熱クロスが、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、セラミックス繊維、アラミド繊維から選択される繊維の織布であることを特徴とする、請求項2に記載のガラス曲面成形装置。
【請求項4】
前記赤外線ヒータが前記ガラス板の所望の箇所を曲げ成形温度まで加熱した状態で、前記一又は複数の押圧ローラは、前記下型の前記所望の湾曲面に沿って転動しながら加圧力を作用させることを特徴とする請求項2又は3に記載のガラス曲面成形装置。
【請求項5】
前記下型において前記一又は複数の押圧ローラが転動した直後の前記キャビティを真空引きすることで前記ガラス板を所定の曲率に成形することを特徴とする請求項4に記載のガラス曲面成形装置。
【請求項6】
ガラス板を戴置し該ガラス板を真空引きしうる一又は複数のキャビティを備える下型と、複数の赤外線ヒータを備えるガラス曲面成形装置において、
前記複数の赤外線ヒータは、前記下型の上面に対して長さ方向に並列配置し、並列配置した前記複数の赤外線ヒータを個別に制御することで、加熱された前記ガラス板の所望の位置を自重により前記下型の曲面に沿って垂れ下げて、前記ガラス板を所定の曲率に成形することを特徴とするガラス曲面成形方法。
【請求項7】
ガラス板を戴置し真空引きする一又は複数のキャビティを備える下型と、該下型の上方に設けられ前記ガラス板を所望の曲げ方向に加圧する一又は複数の押圧ローラと、複数の赤外線ヒータと、を備えるガラス曲面成形装置において、
前記ガラス板を前記下型に戴置する工程と、
任意の前記赤外線ヒータで前記ガラス板の所望の箇所が自重で曲がる軟化点まで選択加熱する工程と、
前記赤外線ヒータが上方に移動すると、前記押圧ローラが前記赤外線ヒータと前記ガラス板との間に介入する工程と、
前記一又は複数の押圧ローラが前記下型の前記湾曲面に沿って前記ガラス板の所望の箇所を転動しながらそれに向かう加圧力を作用させる工程と、
を備えるガラス曲面成形方法。
【請求項8】
ガラス板を戴置し真空引きする一又は複数のキャビティを備える下型と、該下型の上方に設けられ前記ガラス板を所望の曲げ方向に加圧する一又は複数の押圧ローラと、複数の赤外線ヒータと、を備えるガラス曲面成形装置において、
前記ガラス板を前記下型に戴置する工程と、
任意の前記赤外線ヒータで前記ガラス板の所望の箇所が自重で曲がる軟化点まで選択加熱する工程と、
前記赤外線ヒータが上方に移動すると、前記押圧ローラが前記赤外線ヒータと前記ガラス板との間に介入する工程と、
前記一又は複数の押圧ローラが前記下型の前記湾曲面に沿って前記ガラス板の所望の箇所を転動しながらそれに向かう加圧力を作用させる工程と、
さらに、前記下型において前記一又は複数の押圧ローラが転動した直後の前記キャビティを真空引きすることで所定の曲率に成形する成形工程と、
から構成されることを特徴とするガラス曲面成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスを曲面形状に成形する装置及びその方法に関し、特に複雑な曲面形状を実現するためのガラスを曲面形状に成形する装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチメディアの進展により、ディスプレイ装置に使用されるガラスは様々な形状、曲率が求められている。特に、自動車にはHMI(ヒューマンマシンインターフェース)を満足するための情報表示装置が設けられているが、車載型のナビゲーションシステムやオーディオ装置等の普及はめざましく、これらの装置によって提供される映像や画像を表示する車載用ディスプレイ装置がある。このような車載用ディスプレイ装置等を薄板ガラスで実現するとなると、より複雑な曲面化が要求される。また、ガラスの複雑な曲面化の実現とともに、成形後の光学鏡面が要求される。
【0003】
一般に、自動車用のガラスを成形する方法に、ガラスを軟化点以上に加熱し、自重あるいはプレスして曲げる、自重曲げやプレス曲げといった方法がある。特に深く湾曲したガラスや馬蹄形をしたガラスの成形には、プレス成形法が用いられる。特許文献1に係る発明は、成形型を用いてプレス曲げするプレス曲げ成形方法において、プレス曲げによってガラス板に生じる応力を計算し、応力の計算で求められた応力が面内圧縮応力であって、該面内圧縮応力が座屈理論で計算される許容値以下となるプレス曲げ条件でガラス板のプレス曲げを行う方法を提案している。このような成形方法は、生産効率に優れるものの、特にガラスの複雑な曲面化の実現には難があり、高精度な光学鏡面となると技術的な課題が残る。また、上型と下型とを強くプレスすれば、ガラスの複雑な曲面化は実現できるかもしれないが、成形後のガラスが白く混濁し、ガラス周辺部にしわが生じることも多く、ガラスの表面を通常のプレス後よりもより時間をかけて研磨しなければ高精度な光学鏡面の実現はままならないという問題がある。さらに、CID(Center Information Display)やClusterと呼ばれる車載用ディスプレイ装置用のガラスを成形するための金型作成には費用が多大であり、またガラスの曲面化に対応することも困難である。
【0004】
別の方法として、ローラアッセンブリによる曲げ加工の方法が知られている。特許文献2に係る発明は、加熱炉において軟化点近くまで加熱したガラス板を、湾曲した複数のローラからなるローラコンベアで搬送することによって、ガラス板を曲げ成形する方法を提案している。この方法によれば、軟化したガラス板はその自重により垂れ下がるので、ガラス板はローラの曲率に倣うように曲げられる。この場合、ガラス板は搬送方向に直交する方向に曲げ成形される。特許文献3に係る発明は、特許文献2に係るローラアッセンブリにおいて、搬送ローラをガラスの搬送に伴い上下動させながらガラス板に押圧することでガラス板を曲げることを提案している。
ところが、特許文献1の方法では、型式毎にその型式に対応した曲率のローラに交換する必要があり、交換に時間がかかり、型式毎に求められる曲率のローラを用意する必要があった。また、ローラのガラス板への接触による筋状のローラ歪が組付け状態における鉛直方向に形成され、ローラによる筋状の歪が目立ちやすい問題があった。また、特許文献2又は3の方法では、大型のガラス成形の場合に膨大な数の搬送ローラを上下動させる必要があり、制御が複雑になる上にガラス板への傷の発生が懸念されるという問題がある。さらに、特許文献1~3の方法では、車載用ディスプレイ装置に用いられるやや大型ガラスの複雑な曲面化に対応することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-154164号公報
【特許文献2】米国特許4,123,246号明細書
【特許文献3】特開2000-72460号公報
【特許文献4】特開2019-189512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願出願人は、上記問題に鑑み、ガラスの複雑な曲面化の実現とともに、成形後の光学鏡面を実現するガラス曲面成形装置とその方法を、特許文献4において提案している。すなわち、所望の湾曲面が形成されガラス板を戴置し、真空引きする複数のキャビティを備える下型と、該ガラスを所望の曲げ方向に加圧する一又は複数の押圧ローラと、を備えるガラス曲面成形装置であって、曲げ成形温度まで加熱したガラス板を下型に戴置した状態で、一又は複数の押圧ローラは、下型の所望の湾曲面に沿って転動しながら加圧力を作用させるとともに、下型において一又は複数の押圧ローラが転動した直後のキャビティを真空引きすることでガラス板を所定の曲率に成形するというものである。
しかしながら、加熱されたガラスに冷えたローラを押し当てるとサーマルショックによりガラスが割れてしまうので、ローラの中にヒータを仕込んで加熱していたところ、加熱されたローラは金属の熱膨張により動きが悪くなってしまうという問題があった。また、軟化したガラスに金属のローラを押し当てることで傷が付くという問題もあった。さらに、赤外線ヒータでガラス板を加熱するにしても、ガラス板の曲げたい箇所のみをより細かく選択的に加熱しなければ所望の曲率を得られないという課題があった。
本発明は、このような問題を解決すべく、ローラの構造や赤外線ヒータの配列を工夫することで、ガラスの複雑な曲面化の実現とともに、成形後の光学鏡面を実現するガラス曲面成形装置とその方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明に係るガラス曲面成形装置は、ガラス板を戴置し該ガラス板を真空引きしうる一又は複数のキャビティを備える下型と、複数の赤外線ヒータを備えるガラス曲面成形装置であって、複数の赤外線ヒータは、下型の上面に対して長さ方向に並列配置し、並列配置した複数の赤外線ヒータを個別に制御することでガラス板の所望の位置が自重により垂れ下がり、ガラス板を所定の曲率に成形することを特徴とする。
【0008】
ガラス板を戴置し該ガラス板を真空引きしうる一又は複数のキャビティを備える下型と、該ガラス板を所望の曲げ方向に加圧する一又は複数の押圧ローラと、複数の赤外線ヒータを備えるガラス曲面成形装置であって、押圧ローラは、ローラ外周面が耐熱クロスで被覆され、複数の赤外線ヒータは、下型の上面に対して長さ方向に並列配置し、並列配置した複数の赤外線ヒータのうち、下型に載置されたガラス板の所望の箇所を加熱できる任意の赤外線ヒータを選択加熱することでガラス板を所定の曲率に成形することを特徴とする。
耐熱クロスについて、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、セラミックス繊維から選択される繊維の織布にするとよい。なお、耐熱性・加工性・質感などを考慮すれば、最も適したシリカ繊維クロスもしくはアラミド繊維が好適である。また、耐炎繊維を選択してもよい。これら耐熱クロスをローラ外周面に施すことによりサーマルショックが起こらない上、ガラスへの傷防止にも繋がる。さらに、ローラの材質は金属またはセラミックスが好適である。
【0009】
本発明に係るガラス曲面成形装置において、赤外線ヒータがガラス板の所望の箇所を曲げ成形温度まで加熱した状態で、一又は複数の押圧ローラは、下型の所望の湾曲面に沿って転動しながら加圧力を作用させるようにするとよい。また、下型において前記一又は複数の押圧ローラが転動した直後のキャビティを真空引きすることでガラス板を所定の曲率に成形するようにしてもよい。
【0010】
本発明に係るガラス曲面成形方法は、ガラス板を戴置し該ガラス板を真空引きしうる一又は複数のキャビティを備える下型と、複数の赤外線ヒータを備えるガラス曲面成形装置において、複数の赤外線ヒータは、下型の上面に対して長さ方向に並列配置し、並列配置した複数の赤外線ヒータを個別に制御することで、加熱されたガラス板の所望の位置を自重により下型の曲面に沿って垂れ下げて、ガラス板を所定の曲率に成形することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るガラス曲面成形方法は、ガラス板を戴置し真空引きする一又は複数のキャビティを備える下型と、該下型の上方に設けられガラス板を所望の曲げ方向に加圧する一又は複数の押圧ローラと、複数の赤外線ヒータと、を備えるガラス曲面成形装置において、ガラス板を下型に戴置する工程と、任意の赤外線ヒータでガラス板の所望の箇所が自重で曲がる軟化点まで選択加熱する工程と、赤外線ヒータが上方に移動すると、押圧ローラが赤外線ヒータとガラス板との間に介入する工程と、一又は複数の押圧ローラが下型の湾曲面に沿ってガラス板の所望の箇所を転動しながらそれに向かう加圧力を作用させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明に係るガラス曲面成形方法は、上記工程に続き、さらに、下型において一又は複数の押圧ローラが転動した直後のキャビティを真空引きすることで所定の曲率に成形する成形工程とから構成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るガラスの曲面成形方法及びその装置によれば、複数配列した加熱素子である赤外線ヒータを個別に制御することでガラス板の曲げたい位置を自重により下型の曲面に垂れ下げることが可能となる。また、ローラを使用する場合、耐熱クロスをローラ外周面に施すことによりサーマルショックが起こらない上、ガラスへの傷防止にも繋がる。また、ガラスのやや複雑な曲面化の実現とともに、成形後の光学鏡面を実現することが可能になる。また、ガラス板の厚みやガラス板の曲げ形状も多様にわたるため、押圧ローラによる曲げ成形は融通が効き、さらに、上型と下型とによるプレス成形よりもコスト面で優位である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形装置100を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施例1に係るローラ装置20の一部を示す図である。
図3】本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法において、押圧ローラ21を使用しない場合の工程を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法において、押圧ローラ21を使用しない場合のガラスの曲面成形の様子を示す図である。
図5】本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法において、押圧ローラ21の転動と押圧によるガラスの曲面成形の工程を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形において、押圧ローラ21の転動と押圧を簡単に示す図である。
図7】本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形において、図6に続く押圧ローラ21の転動と押圧を簡単に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。各図において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は、本発明を理解するために誇張して表現している場合もあり、必ずしも縮尺どおり精緻に表したものではないことに留意されたい。なお、本発明は下記に示される実施例に限られるものではない。
【実施例0016】
実施例1を図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形装置100を示す概略構成図である。図1を参照しながら詳細に説明する。ガラスの曲面成形装置100は、概して、加熱部1、成形部2が互いに接続して構成され、型台30に載った下型31を有する構造である。
【0018】
図1に示すとおり、加熱部1は、赤外線ヒータ11とヒータ支持部材12とからなる。ヒータ11はヒータ支持部材12により支持され、サーボ制御により上下駆動するように構成されるとよい。また、同様に、成形部2は、ローラ装置20が軌道体23に設置され、サーボ制御により駆動するように構成されるとよい。
複数の赤外線ヒータ11は、下型31の上面に対して長さ方向に並列配置し、並列配置した複数の赤外線ヒータ11のうち、下型31に載置されたガラス板の所望の箇所を加熱できる任意の赤外線ヒータ11を選択加熱することでガラス板を所定の曲率に成形することができる。
【0019】
図2は、本発明の実施例1に係るローラ装置20の一部を示す図である。図1と2(a)を参照しながらローラ装置20を詳細に説明する。ローラ装置20は、概して押圧ローラ21とローラシャフト22とからなる。押圧ローラ21は、ローラシャフト22に回転自在に軸支され、軌道体23に取り付けられ、軌道体23の軌道に沿って摺動シリンダで動作する。成形条件として、重要な圧力、速度及び位置合せの制御はサーボモータにより行う。押圧ローラ21は転動しながら、後述する下型31に載置したガラス板Gを押圧する。
押圧ローラ21の素材は、耐熱性の金属又はセラミックスを採用するとよい。また、実施例1において、押圧ローラ21は、円筒体を採用しているが、球体や円錐体を採用してもよい。
【0020】
図2(b)を参照する。押圧ローラ21は、ローラ外周面210が耐熱クロス211で被覆される。耐熱クロス211について、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、セラミックス繊維から選択される繊維の織布にするとよい。なお、耐熱性・加工性・質感などを考慮すれば、最も適したシリカ繊維もしくはアラミド繊維クロスが好適である。また、耐炎繊維を選択してもよい。これら耐熱クロス211をローラ外周面210に施すことによりサーマルショックが起こらない上、ガラスへの傷防止にも繋がる。
【0021】
下型31は、ガラス板を戴置し該ガラス板を真空引きしうる複数のキャビティを備える。なお、下型31の素材は、金属又はセラミックスが好適であるが、セラミックスの場合、耐火性があり、加工後の鏡面性に優れ、高温下にあってガラスとの離型性が良いものが好ましい。
【0022】
図3図4を参照する。図3は、本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法において、押圧ローラ21を使用しない場合の工程を示すフローチャートである。図4は、本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法において、押圧ローラ21を使用しない場合のガラスの曲面成形の様子を示す図である。
【0023】
ガラス板の所望の曲面成形において、曲率が浅い場合においては、図4に示すような下型31を用いる。この場合、任意の赤外線ヒータ11の選択的加熱によりガラス板が自重で下型31の曲面に沿わせることにより成形が可能である。実施例1においては、図4に示すとおり、赤外線ヒータ11は、12の赤外線ヒータ(イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、ヲ)が、下型31あるいは載せ置かれたガラス板Gの上方に並列して配置されている。なお、赤外線ヒータの数量は特に限定されず、成形するガラス板の寸法や曲面成形の設計状況に合わせて、適宜決定することができる。
【0024】
図4を参照しながら、図3の工程を説明する。まず、ガラス板を図4(a)に示すように、下型31の上面に載せ置き、複数の赤外線ヒータ11にてガラス板Gを全体的に加熱する(S01)。次に、図4(b)に示すように、赤外線ヒータ11の加熱出力を上げ、ガラス板GのA領域を軟化点近傍までさらに加熱し、自重で下型31の曲面に沿わせる(S02)。そして、図4(c)に示すように、赤外線ヒータ11のホの加熱出力を上げ、ガラス板GのB領域を軟化点近傍までさらに加熱し、続けて図4(d)に示すように、赤外線ヒータ11のロ、ハ、ニの加熱出力を上げ、ガラス板GのC領域を軟化点近傍までさらに加熱し、自重で下型31の曲面に沿わせる(S03、S04)。必要に応じて、下型31のキャビティを真空引きしてもよい(S05)。なお、下型31のキャビティは、一又は複数備えるように設計されると好適である。
【0025】
図5と、図6及び7を参照する。図5は、本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形方法において、押圧ローラ21を使用する場合の工程を示すフローチャートである。図6及び7は、本発明の実施例1に係るガラスの曲面成形において、ガラス板Gの加熱から押圧ローラ21の転動と押圧の様子を簡単に示す図であり、(a)~(c)は時系列で示されており、図7(a)は図6(c)の次に行われた状態を示す図として理解されたい。
【0026】
図6及び7を参照しながら、図5の工程を説明する。まず、ガラス板を図6(a)に示すように、下型32の上面に載せ置き、複数の赤外線ヒータ11にてガラス板Gを全体的に加熱する(S11)。次に、図6(b)に示すように、赤外線ヒータ11の加熱出力を上げ、ガラス板GのA領域を軟化点近傍までさらに加熱し、自重で下型32の曲面に沿わせる(S12)。そして、図6(c)に示すように、赤外線ヒータ11のホの加熱出力を上げ、ガラス板GのB領域を軟化点近傍までさらに加熱する(S13)。
ガラス板GのA及びB領域を選択的に加熱し自重で下型32に沿わせた後、図7(a)に示すように、赤外線ヒータ11を上方に移動させる(S14)。赤外線ヒータ11が上方に移動すると、図7(b)に示すとおり、押圧ローラ21が赤外線ヒータ11とガラスGとの間に侵入し、ガラス板Gの上面の所定位置にスタンバイする(S15)。そして、図7(c)に示すとおり、押圧ローラ21が下型32の起伏に沿って回転しながらガラス板Gを押圧する(S16)。必要に応じて、下型32のキャビティを真空引きしてもよい(S17)。なお、下型32のキャビティは、一又は複数備えるように設計されると好適である。
【0027】
以上、本発明に係るガラスの曲面成形装置及びその方法における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係るガラスの曲面成形方法及びその装置は、複数配列した加熱素子である赤外線ヒータを個別に制御することでガラス板の曲げたい位置を自重により下型の曲面に垂れ下げることが可能となる。また、ローラを使用する場合、耐熱クロスをローラ外周面に施すことによりサーマルショックが起こらない上、ガラスへの傷防止にも繋がる。結果として、ガラス板を高品位な面性状を持つ曲面と光学鏡面を実現するので、成形ガラスは車載用ディスプレイ装置等に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100 ガラスの曲面成形装置
1 加熱部
11 ヒータ
12 ヒータ支持アーム
2 成形部
20 ローラ装置
21 押圧ローラ
210 ローラ外周面
211 耐熱クロス
22 ローラシャフト
23 軌道体
31 32 下型
G ガラス板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7